【課題を解決するための手段】
【0018】
第一の特徴に従うと、本発明は、医療用デバイス、特に移植可能であり、磁気共鳴画像において見え、より特に永久に見える医療用デバイスを製造及び/又はコーティングするのに特に有用である疎水性ポリマーにおいて、該ポリマーは少なくとも1のモノマー単位を含み、該モノマー単位に常磁性イオンをキレート化する配位子がグラフト化され、該常磁性イオンと錯体化され、該モノマー単位は少なくとも1のカルボニル基を有し、該モノマー単位はグラフト化前に、該少なくとも1のカルボニル基のα位に少なくとも1の水素原子を有し、該キレート化配位子の該グラフト化は、該少なくとも1のカルボニル基のα位における該少なくとも1の水素原子のレベルにおいて起きることを特徴とする前記ポリマーに関する。
【0019】
その別の特徴に従うと、本発明は、疎水性ポリマー、特に医療用デバイス、特に移植可能であり、磁気共鳴画像において見え、より特に永久に見える医療用デバイスを製造及び/又はコーティングするのに有用である疎水性ポリマーにおいて、該ポリマーは少なくとも1のモノマー単位を含み、常磁性イオンをキレート化する配位子が該モノマー単位上においてグラフト化され、該常磁性イオンと錯体化され、該モノマー単位は少なくとも1のカルボニル基を有し、該モノマー基はグラフト化前に、該少なくとも1のカルボニル基のα位に少なくとも1の水素原子を有することを特徴とする前記ポリマーに関する。
【0020】
また、上で定義された該ポリマーを製造する方法において、(i)少なくとも1のカルボニル基を有し、かつ該少なくとも1のカルボニル基のα位に少なくとも1の水素原子を含む少なくとも1のモノマー単位を含む疎水性ポリマーを活性化して、該少なくとも1のカルボニル基のα位における炭素上に位置するプロトンの脱離によりカルバニオンを保持する少なくとも1のモノマー単位を有するポリマー鎖を形成する少なくとも1の段階、(ii)カルバニオンを有する少なくとも1のモノマー単位を有する該ポリマー上で常磁性イオンのキレート化配位子とグラフト化させる少なくとも1の段階、及び(iii)例えば、前の段階において得られたポリマーの、少なくとも1の常磁性イオンを含む溶媒中における溶解により、常磁性イオンと該キレート化剤との錯体化の少なくとも1の段階を含む、該方法にもまた関する。
【0021】
また、そのバルク中に及び/又はコーティングとして及び/又はマーカーとして、特に下記において記載されるような追跡性の目的のために、上記の少なくとも1のポリマーを含むことを特徴とする、医療用デバイスにも関する。
【0022】
本発明は、医療用デバイス、特に、移植可能であり、磁気共鳴画像において検出可能であるもの、を製造する方法において、特に本発明に従う該ポリマーを含む溶液中に浸漬すること又は噴霧することにより、上で定義されたポリマーでコーティングする少なくとも1の段階を含むことを特徴とする該方法にもまた関する。
【0023】
本発明の文脈において、以下の定義が使用される。
【0024】
該ポリマーを「そのバルク中に」含む、は、問題の物体がその中に該ポリマーを含む、例えば、実質的に又は部分的に該ポリマーから構成されていることを意味する。
【0025】
用語「ポリマー鎖」は、2つの制限的な連続単位、それらのうちのそれぞれは末端基、分岐点、又は巨大分子の特徴であることができる、の間に位置する連続単位の直線的又は分岐状の配列(sequence)を有する巨大分子又は巨大分子の一部を意味する。
【0026】
用語「主ポリマー鎖」は、上で定義されたポリマーの直線部分を意味する。
【0027】
用語「モノマー」は、それ自身と又は同じタイプの他の分子と組み合わせることによりポリマーに転化されることのできる分子を包含する。
【0028】
「モノマー単位」又は「モノマー状単位」は、繰り返しが通常の巨大分子をもたらす最小の構成単位を意味する。
【0029】
「加水分解的に分解可能」である物質は、加水分解によるエステル結合の切断に従って、水の存在において分解し、そのことについて、該物質の分解の生成物は、出発物質のポリマー鎖の数平均分子量より低い数平均分子量を有するという証拠がある物質である。
【0030】
「生体吸収性」又は「吸収性」物質は、酵素的又は加水分解的に分解し、分解の生成物が、バイオマスに統合される及び/又は代謝又は腎臓ろ過により体から除去されるという証拠がある物質である。
【0031】
「ブロック」は、複数の同一又は異なる成分単位を含む巨大分子の一部であり、該単位は、構造(constitution)又は構成(configuration)の少なくとも1の特徴的な特色を有しており、あるブロックが、該ブロックに隣接する部分から区別されることを可能にする。
【0032】
用語「常磁性イオンの錯体化剤」、「常磁性イオンのキレート化剤」又は「常磁性イオンのキレート化配位子」は、同じである。
【0033】
用語「〜」及び「〜から〜まで変化する」は、範囲の限界点が含まれることを意味する。
【0034】
「疎水性ポリマー」は、例えば下記において記載される測定プロトコルに従うと、40°〜180°、より好ましくは50°〜150°の、測定された接触角を有するポリマーを意味する。
【0035】
言い換えると、本発明に従うポリマーは生物学的流体物には不溶である。
【0036】
接触角を測定するためのプロトコル
接触角は、表面張力計、例えばKRUSS社により販売されているKRUSS K100で測定されることができる。
【0037】
Wihelmyの方法に従って、清浄な乾燥した顕微鏡のスライドガラスが、テトラヒドロフラン(THF)に溶解された5g/Lの濃度を有する置換されたポリマーの溶液に浸され(水において1cmの液浸に相当する)、該操作は20℃において行われる。
【0038】
表面張力計は、水とポリマーでコーティングされたスライドガラスとの間の表面張力を測定し、得られる、水との接触角を計算する。
【0039】
新規な疎水性ポリマー
本発明に従う疎水性ポリマーは、少なくとも1のモノマー単位を有し、該単位上には常磁性イオンと錯体化された常磁性イオンのキレート化配位子がグラフト化されており、該モノマー単位は、少なくとも1の、特に1〜3の、カルボニル基を有し、該モノマー単位は、グラフト化の前に、少なくとも1の水素化原子を該少なくとも1のカルボニル基のα位に有していることを特徴とする。
【0040】
本発明は、種々の分解プロフィールを有することができる、上で定義された疎水性ポリマーに関する。言い換えると、想定されるポリマーの性質に依存して、下記において詳細が述べられるように、それは生体吸収性又は加水分解的に分解性であってもなくてもよい。即ち、この性質は、想定される用途に依存して容易に調節されることができ、このことは本発明の利点の一つを構成する。有利に、この性質は以下の分解試験を使用して評価されることができる。
【0041】
分解試験
この試験は、あるポリマーが、上に与えられた定義に従って生体吸収性又は加水分解的に分解性であるか否かを決定することを可能にする。この試験は、例えばサイズ排除クロマトグラフィーにより、生理学的な状況を模倣する条件(pH7.4におけるPBSバッファー、37℃における機械的撹拌)における数平均分子量の変化を調査することからなる。
【0042】
異なる時における数平均分子量の減少の百分率は以下の式により表わされる。
【0043】
指針として、本発明に従うと
T=2月の場合、数平均分子量における減少の百分率は、0〜50%、好ましくは0〜25%であることができ、
T=6月の場合、数平均分子量における減少の百分率は、0〜75%、好ましくは5〜50%であることができ、
T=1年の場合、数平均分子量における減少の百分率は、5〜100%、好ましくは10〜80%であることができ、
T=2年の場合、数平均分子量における減少の百分率は、10〜100%、好ましくは20〜90%であることができる。
【0044】
該試験の適用の説明は、本発明に従うポリマーについての以下の実施例において与えられる。
【0045】
出発ポリマー
本発明に従うポリマーを与えることのできるポリマー鎖は、以下に記載される。
【0046】
本発明の一つの変形に従うと、少なくとも1のカルボニル基を有し、かつ該カルボニル基のα位に少なくとも1の水素原子を有するモノマー単位は、2〜12の炭素原子、特に2〜7の炭素原子を有する。
【0047】
別の変形に従うと、該モノマー単位は一つのカルボニル基を有する。
【0048】
第一の実施態様に従うと、カルボニル基は主ポリマー鎖の外に位置する。そのようなポリマーの例として、同一又は異なるモノマー単位から全体的に又は部分的になり、該単位のそれぞれは以下の式(I)
【化1】
ここで、R
1は、任意的に(C
1〜C
4)アルキル基で置換されていてもよい、(C
1〜C
12)のアルキル基又は(C
1〜C
8)の環状アルキル基を表わす、
を有する、ポリアクリレートを挙げ得る。
【0049】
該ポリアクリレートはアクリレートモノマーから形成される。
【0050】
該アクリレートモノマーの中で、特にブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート及びエチルアクリレートを挙げ得る。
【0051】
これらのポリマーは、非吸収性及び非加水分解性とみなされる性質を有する。言い換えると、それらはヒトの体の中にそのままに留まることができ、生物学的環境との接触において分解しない。
【0052】
一般的に、式(I)のポリアクリレートは、上で定義されたアクリレートモノマーの重合により得られることができる。
【0053】
第二の実施態様に従うと、カルボニル基は、主ポリマー鎖中に位置する。この実施態様の例として、同一又は異なるモノマー単位から全体的に又は部分的になり、該単位のそれぞれは以下の式(II)
【化2】
ここで、
R
2、R
3、及びR
4は、独立して水素原子、任意的に(C
1〜C
12)アルキル基で置換されていてもよい、(C
1〜C
12)のアルキル基又は(C
1〜C
8)の環状アルキル基を表わし
xは、0〜12の整数、例えば0〜6の整数を表わし、かつ
yは0〜8の整数、例えば0〜6の整数を表わし、x及びyは同時にゼロではないことが理解される、
を有するポリエステルポリマーを特に挙げ得る。
【0054】
一般的に、式(II)のポリエステルは、
a)ヒドロキシ酸自身の重縮合により又は
b)ラクトンの開環重合により
得られることができる。
【0055】
式(II)のモノマー単位を有するこれらのポリマーの中で、同一又は異なるモノマー単位から全体的に又は部分的になり、該単位のそれぞれは以下の式(III)
【化3】
ここでR
3は、(C
1〜C
12)のアルキル基である、
を有するポリエステルを特に挙げ得る。
【0056】
ポリエステルを製造するために使用されることのできるモノマーの中で、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシヘキサン酸及びヒドロキシオクタン酸を特に挙げることができる。
【0057】
以下の表は、R
3基の意味と式(III)のポリマーの完全な名前との間の対応を示す。
【0058】
式(II)のモノマー単位を含む他のポリエステルの例として、式(IV)
【化4】
ここで、
qは、2〜9で変化する整数を表わし、
R
5は、(C
1〜C
12)のアルキル基を表わし、かつ
nは0〜2の整数を表わし、nか2に等しいとき、二つのR
5基は異なることができるだけでなく、同じ又は2つの異なる炭素原子上に位置することができる、
のラクトン環の開環によって得られるポリエステルを挙げ得る。
【0059】
qが5に等しく、かつnが0に等しいとき、それはカプロラクトン又はε―カプロラクトンである。
【0060】
即ち、該ポリエステルは、ポリカプロラクトン又はポリ(ε−カプロラクトン)である。本発明に適切であることができる式(IV)のラクトンの中では、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ピバロラクトン及びジエチルプロピオラクトンをさらに挙げ得る。
【0061】
式(II)のモノマー単位を含む他のポリエステルの例として、同一又は異なるモノマー単位から全体的に又は部分的になり、該単位のそれぞれは以下の式:
【化5】
を有する、乳酸のポリマー(PLA)を挙げ得る。
【0062】
一般的に、乳酸のポリマーは、ラクチドモノマーから、例えば開環重合により、又は乳酸又は乳酸の誘導体から重縮合により得られる。乳酸の対掌性のために、ポリ−L−ラクチド(PLLA)及びポリ−D−ラクチド(PDLA),ポリ(D、Lラクチド)、ポリ−メソ−ラクチド及び本発明に従うポリマーの一部を形成する全ての立体異性体がある。
【0063】
式(II)のさらに他のポリエステルの例として、同一又は異なるモノマー単位から全体的に又は部分的になり、該単位のそれぞれは以下の式
【化6】
からなるグリコール酸又はポリ(グリコリド)のポリマーを挙げ得る。
【0064】
本発明の文脈において使用可能な、式(II)のモノマー単位を含むポリエステルの中で、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);1,4−ジオキセパン−2−オン(その1,5,8,1ダイマー2−テトラオキサシクロテトラデカン−7,1 4−ジオンを含む),1,4−ジオキセパン−5−オン;1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1;4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン及びそれらのポリマー混合物のホモポリマー及びコポリマーを挙げ得る。
【0065】
その特徴の一つに従うと、本発明は、疎水性ポリマー、特に医療用デバイス、特に移植可能であり、磁気共鳴画像において見える医療用デバイスを製造及び/又はコーティングするのに有用である疎水性ポリマーにおいて、該ポリマーは少なくとも1のモノマー単位を含み、該モノマー単位上で常磁性イオンと錯体化された常磁性イオンのキレート化配位子がグラフト化され、該モノマー単位は少なくとも1のカルボニル基を有し、該モノマー基はグラフト化前に、該カルボニル基のα位に少なくとも1の水素原子を有することを特徴とし、それはヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシヘキサン酸、及びヒドロキシオクタン酸、δ−バレロラクトン、γ―ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ピバロラクトン、ジエチルプロピオラクトン、グリコール酸、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン);1,4−ジオキセパン−2−オン;1,4−ジオキセパン−5−オン;1,5−ジオキセパン−2−オン;6,6−ジメチル−1;4−ジオキサン−2−オン;2,5−ジケトモルホリン;3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン;6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン及びそれらの混合物から選択された少なくとも1のモノマーの重合から生じることを特徴とする前記疎水性ポリマーに関する。
【0066】
式(II)のポリマーは、吸収性又は加水分解的に分解性であるとみなされるが、長期にわたった場合である。即ち、上記の分解試験に従うと、数平均分子量の変化は1週〜10年の期間に観察可能である。
【0067】
実際には、ポリエステルの性質に依存して、吸収は1月〜10年かかることができる。本発明は、1月超又は6月超さえの、上に示されたプロトコルに従って測定された吸収時間を有するポリエステルに、より特に関する。
【0068】
主ポリマー鎖においてカルボニル基を有する他のポリマーとしてポリエーテルケトン及びポリアミドエステルを挙げ得る。
【0069】
本発明の文脈において、カルボニル基は二価の−CO−基を意味する。
(C
t−C
z)、ここでt及びzは2〜12の値を取ることができる、は、t〜zの炭素原子を有することができる炭素含有単位を意味し、例えば(C
2〜C
3)は、2〜3の炭素原子を有することができる、炭素含有単位を意味する。
アルキル基は、飽和、直鎖又は分岐状の脂肪族基である。例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tertブチル、ペンチル基等を挙げ得、及び
シクロアルキル基は、環状アルキル基であり、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等を挙げ得る。
【0070】
特定の実施態様に従うと、ラクチド、グリコリド、及びε−カプロラクトンホモポリマー及びコポリマーが出発ポリマーとして使用される。
【0071】
さらにより特定の実施態様に従うと、本発明の文脈において使用可能なポリマーは、ε−カプロラクトンのホモポリマー又はコポリマー、より特に、ε―カプロラクトンのホモポリマー、特に、5000〜500000、特に5000〜100000の数平均分子量を有するε−カプロラクトンのホモポリマーである。
【0072】
本発明の意味において、該疎水性ポリマーは、ホモポリマー以外にコポリマー(ランダム、くし型配列又は交互のブロック、グラフト)をもまた含む。
【0073】
特に、本発明は、本発明に従う、つまり上で定義されたようにカルボニル基を有する、少なくとも1のモノマー単位を含む少なくとも1のブロック、並びに種々のタイプの生体適合性ブロック(以降、便宜のため、追加のブロックと呼ぶ)から選択されることのできる少なくとも1の他のブロックを含むジー、トリ−、又はマルチブロックポリマーに関する。
【0074】
定義により、これらの追加のブロックは、α位にHを有するカルボニル基を有するモノマー単位を必ずしも有しない。後者の中では、以下のポリマーブロックを挙げ得る。
−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)又はポロクサマー。
【0075】
本発明の変形に従うと、該追加のブロックは、ポリ(エチレングリコール)又は式H(OCH
2CH
2)
pOHのPEGブロックであり、pは10〜600で変化する。
【0076】
本発明に従うポリマー
【0077】
本発明の文脈において、本発明に従うポリマーは、1000〜500000、特に5000〜100000、例えば10000〜50000の数平均分子量を有することができる。
【0078】
本発明の文脈において使用される錯体化剤は少なくとも1のカルボン酸官能基を有する。これに関連して、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA),テトラアザシクロドダカンテトラ酢酸(DOTA)及びテトラアザシクロテトラデカンテトラ酢酸(TETA)を挙げ得る。
【0079】
本発明に適切である常磁性イオンは、多価常磁性金属であって、例えばランタニド、遷移金属、例えば鉄、マンガン、クロム、コバルト及びニッケルを包含するがこれらに制限されない。
【0080】
好ましくは、該常磁性イオンは、非常に常磁性であるランタニド、さらにより好ましくはそれはガドリニウム(III)イオンである。
【0081】
第一の変形に従うと、キレート化配位子は、ポリマー上において直接グラフト化されることができる。
【0082】
第二の変形に従うと、グラフト化はポリマーを結合するリンカー及びキレート化剤上で実行されることができる。本発明に従う文脈において使用されることのできるリンカーの中で、錯体化剤のカルバニオン及び酸塩化物と反応することができる少なくとも2の官能基を含む誘導体を特に挙げ得る。例えば、錯体化剤上で反応するためのアルコール、アミン、又はチオール官能基及びカルバニオン上で反応するためのハロゲン化物又は酸ハロゲン化物を挙げ得る。
【0083】
常磁性のキレート化配位子をグラフト化する方法
製造方法は、一般的に、非救核的な塩基でのアニオン性活性化による主ポリマー鎖の官能化からなる。
【0084】
より特に、本発明に従うポリマーを製造する方法は、
(i)少なくとも1のカルボニル基を有し、かつ該少なくとも1のカルボニル基のα位に少なくとも1の水素原子を含む少なくとも1のモノマー単位を含む疎水性ポリマーを活性化して、該少なくとも1のカルボニル基のα位における炭素上に位置するプロトンの脱離によりカルバニオンを保持する少なくとも1のモノマー単位を有するポリマー鎖を形成する少なくとも1の段階、
(ii)カルバニオンを有する少なくとも1のモノマー単位を有する該ポリマー上において、常磁性のキレート化配位子でグラフト化する少なくとも1の段階、及び
(iii)例えば、前の段階において得られたポリマーの、少なくとも1の常磁性イオンを含む溶媒中における溶解により、常磁性イオンのキレート化剤による錯体化の少なくとも1の段階
を含む。
【0085】
式(I)又は(II)のモノマー単位をそれぞれ含む、上で定義された出発ポリマーから出発する一般的なスキームが、以下のスキーム1により示されることができる。
【化7】
【0086】
活性化の第一の段階(i)は、強塩基、例えばリチウムジイソプロピルアミド(LDA)を例えば無水の有機溶媒中で使用することにより得られる。中間体例えばカルバニオン及び/又はエノレートが主ポリマー鎖上に得られる。例えば上記スキーム(I)に従う式(I’)又は(II’)のこれらの中間体は以降、カルバニオンと呼ばれる。
【0087】
この第一の段階(i)は、上記の記載から明らかなように、エステル官能基が主ポリマー鎖にあろうとなかろうと又は側鎖にあろうとなかろうと、同じ方法で使用されることができる。
【0088】
典型的には、上記の反応の第一の段階(i)は、5〜60分、例えば15〜45分、かかることができる
【0089】
この第一の段階(i)に従う反応は、−70〜30℃、例えば−60〜0℃の範囲の温度において行われることができる。
【0090】
本発明に従うポリマーの製造のこの第一の段階(i)は、特に、論文、S.Ponsartら、「アニオン性誘導体を介するポリ(ε−カプロラクトン)をベースとするコポリマーへの新規なルート」、Biomacromolecules、2000年、第1巻、275〜281頁に記載された手順に従って行われることができる。
【0091】
キレート化配位子によるポリマーの置換の程度又は範囲は、この第一の段階(i)に大きく依存することを理解されたい。特に導入された強塩基の量はこの、置換の程度に影響を及ぼす。しかし、強塩基が過剰に導入されたときでさえ、該置換の程度は出発ポリマーに依存してある値において天井に到達する。
【0092】
同様に、この第一段階(i)の反応温度もまた、該置換の程度に影響を及ぼす。上記の天井値より下のままで、反応温度が高められれば高められるほど、置換の程度もまた増加する。
【0093】
他のパラメーター、特に塩基の性質及び反応時間、もまた置換の程度に影響を及ぼし得る。
【0094】
第二段階(ii)に従って、我々は、カルバニオンの形の少なくとも1のポリマー単位を含むポリマー上で錯体化剤のグラフト化を続ける。
【0095】
この錯体化剤は、ポリマーと同じ溶媒中に可溶であり、グラフト化のための反応性官能基を有する生成物を得るように、前もって化学的に変性されていることができる。
【0096】
この方法に従って、次にグラフト化は、カルバニオンの形の少なくとも1のポリマー単位を含むポリマー間で得られることができる。グラフト化は、例えば溶媒例えばテトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼンの芳香族誘導体、ジオキサン及び、−70℃〜30℃、例えば−40℃において、5〜60分間、例えば30分間、反応のために選択された塩基又はカルバニオンと反応しない任意の溶媒において一般的に行われることができる。
【0097】
第三の段階(iii)に従って、本発明に従うポリマーは、前の段階に従って得られた生成物の、常磁性イオン例えばガドリニウム三塩化物を含む溶媒、例えばDMSO又は溶媒の混合物例えば水/アセトン中での、1時間〜10日間、例えば2日間の、例えば室温においての撹拌する反応により最終的に得られることができる。
【0098】
この方法の最後に得られるポリマーは、疎水性であり、水性溶媒、例えば生物学的流動体に不溶であるという特徴を有する。このようにして得られたポリマーは、MRIにおいて該ポリマーを見えるようにする置換基(錯体化剤+常磁性イオン)をその鎖上に有している。
【0099】
一般的に、キレート化剤の置換の程度は0.01〜40%の範囲で変化する。
【0100】
より特に、ポリマーが少なくとも1のカルボニル基を主ポリマー鎖に有しているときに得られる置換の程度は、0.01〜10%の範囲であることができ、例えば10%未満であり得る。
【0101】
さらに、置換の程度は、少なくとも1のカルボニル基が主ポリマー鎖の外にあるとき、言い換えるとカルボニル基が主ポリマー鎖に対する側鎖に含まれるときは、0.01〜40%の範囲、例えば30%未満であることができる。
【0102】
医療用デバイス
本発明は、本発明に従う少なくとも1のポリマーを含む医療用デバイスを包含する。
【0103】
本発明に従うポリマーは、医療用デバイス自体の完全な部分を形成することができる。言い換えると、本発明に従うポリマーは、そのバルクに含まれ又はそうでなければ該医療用デバイスを磁気共鳴画像において見えるようにするような厚さのコーティングの形で該デバイスの表面に位置する。
【0104】
典型的には、コーティングは、1〜1000μmの厚さ、例えば10〜100μmの厚さを形成することができる。
【0105】
医療用デバイスをコーティングすることからなる変形において、当業者に自体公知である種々の方法が使用されることができる。これに関連して、エレクトロスピニング、ディッピング、スプレー乾燥又はアエログラフィ又は噴霧の使用を挙げ得る。
【0106】
もちろん、本出願は、本発明において考慮されたのとは異なる種類のバルク及び/又は表面処理の他のタイプを受けた医療用デバイスに及ぶ。例として、バクテリア及び菌の抗付着処理、活性成分例えば抗生物質、抗細菌性物質、抗菌性物質、抗炎症剤、及びインシチューで放出されることのできる活性成分の全ての種類の放出を許す処理を挙げ得る。
【0107】
本発明に特に適切である医療用デバイスとして、例えば生殖脱肛(genital prolapse)のためのメッシュ又は人工器官のために、婦人科の分野において用途をより特に見出す医療用デバイスを挙げ得る。
【0108】
他の特徴に従うと、本発明は、医療用デバイスに印をつける方法において、本発明に従うポリマーを材料の表面、特に医療用デバイスのターゲット領域の上に付着させる少なくとも1の段階を含むことを特徴とする該方法にまで及ぶ。
【0109】
この特徴に従うと、即ち、本発明に従うポリマーは、手術後の監視が材料上の直接の印に基づいて行われることができるように、特に記入の形で人工器官上に付着される。
【0110】
より特に、印づけは該医療用デバイスの追跡可能性のために意図されることができる。即ち、該医療用デバイスは、製造、頒布の間、又はひとたび本来の場所に置かれたであろうとなかろうと、その寿命を通して識別され得る。即ち、印づけは該医療用デバイス上の如何なる形又は表面を受け入れる。
【0111】
さらにより特に、記入は数字、文字、又は追跡可能性に有用である文字の任意のタイプの形をとることができる。
【0112】
例として、印づけは以下の方法の一つに従って行われることができる。
− 文字が記された、材料の表面への、本発明に従うポリマーの均一な表面の付着。
− 本発明に従うポリマーがインクであるマイクロ印刷の技術による、材料の表面への文字の付着。
【0113】
本発明のこの特徴は通常そうであるように、すなわち、印づけがそのパッケージとよりもむしろ医療用デバイスと統合される点において特に有利である。
【0114】
本発明は、本発明に従うポリマーにより作られた印を備えられた医療用デバイスまでもまた及ぶ。
【0115】
本発明に従うポリマーは、MRIが使用される内科(medicine)の分野においてもまた用途を見出すことができる。
【0116】
これらの種々の分野は、外科の分野又は材料のタイプ、特に内科の複数の分野において使用される特に移植可能なものにより分類されることができる。
【0117】
内科−外科分野による分類
婦人科
・泌尿生殖器及び直腸脱肛の処置における支持メッシュ(膣及び腹部手術)
・避妊術のためのクリップ
・腔内のルートによる卵管閉塞のためのデバイス
・頸管縫縮術のためのリング
・腹腔及び子宮内の抗付着デバイス
【0118】
泌尿器学
・人工尿括約筋
・人工陰茎
・海綿体の補強のためのパッチ(陰茎の湾曲の処置、ラペロニー病)
・尿道周囲バルーン
・尿道周囲注入デバイス
・尿道下バンド
・尿道内ステント、人工器官
・尿道バイパスカテーテル(経皮的及び自然のルート)
【0119】
整形外科
・合成靭帯
・新軟骨又は関節
・合成椎間板
・大腿骨頭
・臼蓋窩(大腿骨及び上腕)
・脛骨プラトー
・上腕頭
【0120】
耳鼻咽喉科学
・人工内耳
・内耳人工器官、骨の代替物
内分泌学
・移植可能なポンプ
【0121】
血管
・血管内人工器官
・動脈及び静脈人工器官
・閉鎖及び止血、肝動脈血管アクセスのためのデバイス
・チャンバーのケース及びカテーテル、移植可能な血管アクセス
【0122】
神経学
・血管ステント
・動脈瘤の閉塞及び動脈の血管の切開のためのデバイス
・電気刺激プローブ
・硬膜及び髄膜のパッチ及び補強
【0123】
眼科学
・合成角膜
【0124】
消化管手術
・ヘルニア補強板(メッシュ)(隔膜、体腔壁、鼠径、脚)
・胃バンディング
・脾臓の糸
・食道の人工器官
・胆管及び消化管(小腸、大腸、直腸)のためのステント
内人工器官
・非経口の栄養のためのチューブ
・人口肛門括約筋
【0125】
心臓学
・冠状動脈ステント
・ペースメーカーのケース及びチューブ
・収縮のペーシングカテーテル
【0126】
放射線学
・末梢血管塞栓、血管閉塞のための剤(動脈又は静脈の)(一時的又は永久)
【0127】
複数の医療分野において使用される移植可能な材料
・外科縫合糸
・静脈及び動脈カテーテル(中枢及び末梢)
・体内の熱プローブ
・外科用ドレーン、管状及び板、ドレナージチャンネル
・消化吻合及び人工器官固定のための近似、配置のための合成クランプ
・再生医療:再建手術において幹細胞を支持するためのマトリックス
【0128】
本発明に従うポリマーは、MRI装置の実際の筺体において、用途を最終的に見出すことができる。
【0129】
MRI室における作業環境は、MRIの磁場を撹乱することのできる金属の不存在を要求する。この環境は換気及び蘇生のために、金属フリーである、MRIと両立する装置の開発を特に要求する。これに関連して、以下の装置を挙げ得る:テーブル、ヘッドレスト、首支え、添え木、とじ金、MRIに配置及び設置するための支持物及び固定する物。