(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物Aにおいて、混合有機溶媒は、電子供与性有機溶媒を3〜90重量%含有し、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物は混合有機溶媒に4〜12質量%の範囲の濃度で含有される請求項1記載の製造方法。
前記組成物Bにおいて、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物の部分加水分解は、電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を溶解した溶液に水を添加することで行う請求項1記載の製造方法。
前記組成物Bにおいて、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を、電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に、4〜12質量%の範囲の濃度に溶解した溶液を部分加水分解する請求項4記載の製造方法。
前記組成物Bにおいて、前記部分加水分解は、前記有機亜鉛化合物に対するモル比が0.05〜0.8の範囲になるよう水を添加して行う、請求項4または5記載の製造方法。
前記組成物Dにおいて、部分加水分解は、電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物および一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物を溶解した溶液に水を添加することで行う請求項1記載の製造方法。
前記組成物Dにおいて、前記有機亜鉛化合物および前記3B族元素化合物の、電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒における濃度は、4〜12質量%の範囲である請求項8記載の製造方法。
前記組成物Dにおいて、前記部分加水分解は、前記有機亜鉛化合物および前記3B族元素化合物に対するモル比が0.05〜0.8の範囲になるよう水を添加して行う請求項8または9記載の製造方法。
前記の電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒がヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンのうち少なくとも一つを含む請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
前記一般式(2)の3B族元素化合物がトリメチルインジウム、トリエチルインジウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトガリウム、トリスアセチルアセトナトインジウム、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリイソプロポキシインジウム、トリイソプロポキシガリウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリtert−ブトキシインジウム、トリtert−ブトキシガリウムのうち少なくとも一つを含む請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
前記電子供与性有機溶媒が1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンのいずれか1つを含む請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
請求項1に記載の組成物A、B、CまたはDを、水蒸気を含有する不活性ガス雰囲気下、加熱された基板表面にスプレー塗布することを含む、可視光線に対して80%以上の平均透過率を有する酸化亜鉛薄膜の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、特許文献1に記載の3B族元素化合物と有機亜鉛化合物からなる溶液を用いたスピンコート法による製膜、非特許文献2に記載の有機亜鉛化合物と有機溶媒からなる溶液を用いたディップコート法による製膜、さらに、非特許文献3、4に記載の3B族元素化合物と酢酸亜鉛の溶液を用いたスプレー熱分解法による製膜を試みた。しかし、スピンコート法、ディップコート法の場合体積抵抗率が1×10
-1Ω・cm以上の酸化亜鉛薄膜しか得られず、スプレー熱分解法においても体積抵抗率が1×10
-3Ω・cm以上の酸化亜鉛薄膜しか得られず、それぞれより低抵抗な酸化亜鉛薄膜は得られなかった。
【0010】
さらに、スピンコート法、ディップコート法、スプレー熱分解法のいずれの場合においても、製膜時の基板の加熱温度が300℃以下の場合は、低抵抗かつ透明な酸化亜鉛薄膜を得ることが困難であった。
【0011】
また、本発明者らは、ジエチル亜鉛を部分加水分解した組成物、または、3B族元素化合物とジエチル亜鉛を部分加水分解した組成物の溶液を用いたスピンコート法による製膜を試み、可視光線に対して80%以上の平均透過率を有する酸化亜鉛薄膜が得られ、特許出願した(特許文献2、3)。
特許文献2、3の発明においては、溶媒として電子供与性有機溶媒のみを用いているが、本発明の組成物の塗布法による成膜等の工業的な使用における適用範囲をより広くするためには、電子供与性有機溶媒以外にも炭化水素溶媒等の工業的に一般的に用いられているその他の溶媒の使用が望ましく、さらなる工夫が必要と考えた。
【0012】
そこで、本発明は、ジエチル亜鉛またはジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物の部分加水分解物をベースとした組成物から、製膜時の基板の加熱温度が300℃以下の低温成膜においても可視光線に対して80%以上の平均透過率と、帯電防止薄膜などに利用可能な程度に低い体積抵抗率を有する酸化亜鉛薄膜を調製すること、さらには、この新たな手段を用いて帯電防止薄膜、紫外線カット薄膜、透明電極薄膜を提供することを目的とする。
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物を電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合溶媒に溶解して得られる生成物およびジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物と水との部分加水分解によって得られる生成物が電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合溶媒に溶解した有機亜鉛化合物と水との部分加水分解物を含む組成物は、塗布することで、可視光線に対して80%以上の平均透過率と、帯電防止薄膜などに利用可能な程度に低い体積抵抗率を有する酸化亜鉛薄膜が得られることを見出して本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下のとおりである。
(請求項1)
下記組成物A、B、CまたはDを、不活性ガス雰囲気下、基板表面に塗布し、次いで、得られた塗布膜を加熱する操作を少なくとも1回行うことを含む、可視光線に対して80%以上の平均透過率を有する酸化亜鉛薄膜の製造方法。
組成物A:
下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合溶媒に溶解した溶液である組成物。
組成物B:
下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を水で少なくとも部分加水分解して得られる部分加水分解物および電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合有機溶媒を含む組成物。
組成物C:
上記組成物AまたはBに、下記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物を前記有機亜鉛化合物に対するモル比が0.005〜0.1の割合になるよう添加して得られる組成物。
組成物D:
下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物および、前記有機亜鉛化合物に対するモル比が0.005〜0.09の割合の下記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物を水で部分加水分解して得られる部分加水分解物および電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合有機溶媒を含む組成物。
R
1−Zn−R
1 (1)
(式中、R
1は炭素数1〜7の直鎖または分岐したアルキル基である。)
(式中、Mは3B族元素であり、R
2、R
3、R
4は独立に、水素、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル、カルボン酸、または、アセチルアセトナート基であり、Lは窒素、酸素、またはリンを含有した配位性有機化合物であり、nは0〜9の整数である。)
M
cX
d・aH
2O (3)
(式中、Mは3B族元素であり、Xは、ハロゲン原子、硝酸または硫酸であり、Xがハロゲン原子または硝酸の場合、cは1、dは3、Xが硫酸の場合、cは2、dは3、aは0〜9の整数である。)
(請求項2)
前記組成物Aにおいて、混合有機溶媒は、電子供与性有機溶媒を3〜90重量%含有し、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物は混合有機溶媒に4〜12質量%の範囲の濃度で含有される請求項1記載の製造方法。
(請求項3)
前記組成物Bにおいて、混合有機溶媒は電子供与性有機溶媒を3〜90重量%含有する請求項1記載の製造方法。
(請求項4)
前記組成物Bにおいて、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物の部分加水分解は、電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を溶解した溶液に水を添加することで行う請求項1記載の製造方法。
(請求項5)
前記組成物Bにおいて、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を、電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に、4〜12質量%の範囲の濃度に溶解した溶液を部分加水分解する請求項4記載の製造方法。
(請求項6)
前記組成物Bにおいて、前記部分加水分解物は、前記有機亜鉛化合物に対するモル比が0.05〜0.8の範囲になるよう水を添加して行う、請求項4または5記載の製造方法。
(請求項7)
前記組成物Dにおいて、前記混合有機溶媒は電子供与性有機溶媒を3〜90重量%含有する請求項1記載の製造方法。
(請求項8)
前記組成物Dにおいて、部分加水分解は、電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物および一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物を溶解した溶液に水を添加することで行う請求項1記載の製造方法。
(請求項9)
前記組成物Dにおいて、前記有機亜鉛化合物および前記3B族元素化合物の、電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒における濃度は、4〜12質量%の範囲である請求項8記載の製造方法。
(請求項10)
前記組成物Dにおいて、前記部分加水分解は、前記有機亜鉛化合物および前記3B族元素化合物に対するモル比が0.05〜0.8の範囲になるよう水を添加して行う請求項8または9記載の製造方法。
(請求項11)
前記電子供与性有機溶媒の沸点が230℃以下である請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
(請求項12)
前記の電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒が、直鎖、分岐炭化水素化合物、または環状炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物およびそれらの混合物のうち少なくとも一つを含む請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
(請求項13)
前記の電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒がヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンのうち少なくとも一つを含む請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
(請求項14)
前記有機亜鉛化合物がジエチル亜鉛である請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
(請求項15)
前記一般式(2)の3B族元素化合物がトリメチルインジウム、トリエチルインジウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトガリウム、トリスアセチルアセトナトインジウム、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリイソプロポキシインジウム、トリイソプロポキシガリウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリtert−ブトキシインジウム、トリtert−ブトキシガリウムのうち少なくとも一つを含む請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
(請求項16)
前記電子供与性有機溶媒が1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンのいずれか1つを含む請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法。
(請求項17)
前記不活性ガス雰囲気が水蒸気を含有する、請求項1〜16のいずれかに記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
(請求項18)
水蒸気を含有する不活性ガス雰囲気は、相対湿度2〜15%の範囲である請求項17に記載の製造方法。
(請求項19)
請求項1に記載の組成物A、B、CまたはDを、水蒸気を含有する不活性ガス雰囲気下、加熱された基板表面にスプレー塗布することを含む、可視光線に対して80%以上の平均透過率を有する酸化亜鉛薄膜の製造方法。
(請求項20)
水蒸気を含有する不活性ガス雰囲気は、大気圧または加圧下で、基板表面付近に水蒸気を供給することで形成する、請求項19に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
(請求項21)
基板表面の加熱温度が400℃以下である請求項19に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
(請求項22)
前記水蒸気の供給量は、供給された前記組成物中の亜鉛に対する水のモル比が0.1〜5の範囲になるように行う請求項20または21に記載の酸化亜鉛薄膜の製造方法。
(請求項23)
請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法を用いて製造した酸化亜鉛薄膜からなる帯電防止薄膜。
(請求項24)
請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法を用いて製造した酸化亜鉛薄膜からなる紫外線カット薄膜。
(請求項13)
請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法を用いて製造した酸化亜鉛薄膜からなる透明電極薄膜。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、酸化亜鉛薄膜製造用組成物においては電子供与性有機溶媒以外の炭化水素溶媒等の工業的に一般的に用いられているその他の溶媒の使用が可能であり組成物の塗布法による成膜等の工業的な使用における適用範囲をより広くすることができる。また本発明の組成物を用いることで、スピンコート法、ディップコート法においては、可視光線に対して80%以上の平均透過率を有し導電性も備えた酸化亜鉛薄膜を製造することができる。
【0016】
また、本発明においては、上記酸化亜鉛薄膜製造用組成物を用いれば、スプレー熱分解法においては、可視光線に対して80%以上の平均透過率を有し導電性も備えた酸化亜鉛薄膜を製造することができる。さらに、製造された酸化亜鉛薄膜は、上記のように優れた透明性と導電性を有することから、帯電防止薄膜、紫外線カット薄膜、透明電極薄膜などに適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[酸化亜鉛薄膜製造用組成物]
本発明の製造方法で用いる酸化亜鉛薄膜製造用組成物は、以下の(i)〜(v)に示す5つの態様を含む。
【0019】
(i)下記一般式(1)で表される電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合溶媒に溶解して得られる生成物(以下、組成物1と呼ぶことがある)
【0020】
組成物1の具体例として以下の組成物aを挙げることができる。
組成物a:
電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒において電子供与性有機溶媒が3〜90重量%含有する混合有機溶媒に、下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を4〜12質量%の範囲の濃度に溶解した溶液に、溶解して得られる生成物
【0021】
(ii)下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合溶媒に溶解した後、前記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物の少なくとも1種を添加して得られる生成物(以下、組成物2と呼ぶことがある)
【0022】
組成物2の具体例として以下の組成物bおよびcを挙げることができる。
組成物b:
電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒において電子供与性有機溶媒が3〜90重量%含有する混合有機溶媒に、上記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を4〜12質量%の範囲の濃度に溶解した後、前記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物の少なくとも1種を添加して得られる生成物
【0023】
組成物c:
電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒において電子供与性有機溶媒が3〜90重量%含有する混合有機溶媒に、前記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物と前記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物の少なくとも1種とを4〜12質量%の範囲の濃度に溶解して得られる生成物
【0024】
(iii)下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に溶解した溶液に、水を添加して、前記有機亜鉛化合物を少なくとも部分的に加水分解して得られる生成物(以下、部分加水分解物1と呼ぶことがある)であり、電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合溶媒に溶解したものとして調製した組成物。
【0025】
部分加水分解物1の具体例として以下の組成物dを挙げることができる。
組成物d:
電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒において電子供与性有機溶媒が3〜90重量%含有する混合有機溶媒に、前記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を4〜12質量%の範囲の濃度に溶解した溶液に、水を前記有機亜鉛化合物に対するモル比が0.05〜0.8の範囲になるよう添加して、前記有機亜鉛化合物を少なくとも部分的に加水分解して得られる生成物
【0026】
(iv)下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に溶解した溶液に、水を添加して、前記有機亜鉛化合物を少なくとも部分的に加水分解した後、前記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物の少なくとも1種を添加して得られる生成物(以下、部分加水分解物2と呼ぶことがある) であり、電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合溶媒に溶解したものとして調製した組成物。
【0027】
部分加水分解物2の具体例として以下の組成物eを挙げることができる。
組成物e:
電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒において電子供与性有機溶媒が3〜90重量%含有する混合有機溶媒に、前記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物を4〜12質量%の範囲の濃度に溶解した溶液に、水を前記有機亜鉛化合物に対するモル比が0.05〜0.8の範囲になるよう添加して、前記有機亜鉛化合物を少なくとも部分的に加水分解した後、前記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物の少なくとも1種を添加して得られる生成物
【0028】
(v)下記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物と下記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物の少なくとも1種とを電子供与性有機溶媒、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒またはそれらを混合した有機溶媒に溶解した溶液に、水を添加して、少なくとも前記有機亜鉛化合物を少なくとも部分的に加水分解して得られる生成物(以下、部分加水分解物3と呼ぶことがある) であり、電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒との混合溶媒に溶解したものとして調製した組成物。
【0029】
R
1−Zn−R
1 (1)
(式中、R
1は炭素数1〜7の直鎖または分岐したアルキル基である)
(式中、Mは3B族元素であり、R
2、R
3、R
4は独立に、水素、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、カルボン酸基、もしくはアセチルアセトナート基であり、さらに、Lは窒素、酸素、リンいずれかを含有した配位性有機化合物であり、nは0〜9の整数である。)
M
cX
d・aH
2O (3)
(式中、Mは3B族元素であり、Xは、ハロゲン原子、硝酸または硫酸であり、Xがハロゲン原子または硝酸の場合、cは1、dは3、Xが硫酸の場合、cは2、dは3、aは0〜9の整数である。)
【0030】
部分加水分解物3の具体例として以下の組成物fを挙げることができる。
組成物f:
電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒において電子供与性有機溶媒が3〜90重量%含有する混合有機溶媒に、前記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物と前記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物の少なくとも1種とを4〜12質量%の範囲の濃度に溶解した溶液に、水を前記有機亜鉛化合物に対するモル比が0.05〜0.8の範囲になるよう添加して、少なくとも前記有機亜鉛化合物を少なくとも部分的に加水分解して得られる生成物
【0031】
本発明の組成物では、有機溶媒としては電子供与性有機溶媒と電子供与性有機溶媒と異なる種類の有機溶媒との混合有機溶媒を用いる。このような溶媒を用いることで、80%以上の平均透過率を有し、導電性も備えた酸化亜鉛薄膜が形成されることを本発明者らは見出した。さらに、混合有機溶媒における電子供与性有機溶媒の含有量は、3〜90重量%の範囲であることが、上記本発明の効果を得るという観点から好ましい。
【0032】
電子供与性有機溶媒は、沸点が230℃以下であることが好ましく、それ以外に、組成物1においては、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物に対して溶解性を有するものであること、組成物2においては、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物および一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物に対して溶解性を有するものであること、部分加水分解物1においては、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物及び水に対して溶解性を有するものであること、部分加水分解物2および3においては、一般式(1)で表される有機亜鉛化合物、一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物及び水に対して溶解性を有するものであればよい。そのよう有機溶媒の例として、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、またはジn−ブチルエーテル(沸点142.4℃)、ジヘキシルエーテル(沸点226.2℃)、アニソール(沸点153.8℃)、フェネトール(沸点172℃)、ブチルフェニルエーテル(沸点210.3℃)、ペンチルフェニルエーテル(沸点214℃)、メトキシトルエン(沸点171.8℃)、ベンジルエチルエーテル(沸点189℃)、ジフェニルエーテル(沸点258.3℃)、ベラトロール(沸点206.7℃)、トリオキサン(沸点114.5℃)そして、1,2−ジエトキシエタン(沸点121℃)、1,2−ジブトキシエタン(沸点203.3℃)等のグライム、また、ビス(2−メトキシエテル)エーテル(沸点162℃)、ビス(2−エトキシエテル)エーテル(沸点188.4℃)、ビス(2−ブトキシエテル)エーテル(沸点254.6℃)等のジグライム、さらに、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン(沸点216℃)、ビス[2−(2−メトキシエトキシエチル)]エーテル(沸点275℃)等のトリグライム、等のエーテル系溶媒、トリ−n−プロピルアミン(沸点150〜156℃)、トリ−n−ペンチルアミン(沸点130℃)、N,N−ジメチルアニリン(沸点193℃)、N,N−ジエチルアニリン(沸点217℃)、ピリジン(沸点115.3℃)等のアミン系溶媒等を挙げることができる。電子供与性有溶媒としては、グライムの一種である1、2−ジエトキシエタン(沸点121℃)が、組成物調製時のゲルの抑制と溶媒自身の揮発性の両方の観点から好ましい。電子供与性有溶媒の沸点の上限は、特にないが、得られた組成物を塗布した後に溶媒が除去されて塗膜となる際の乾燥時間が比較的短くなると言う観点からは、230℃以下であることが好ましい。
【0033】
本発明では、溶媒として電子供与性有機溶媒ともに、電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒を混合して用いることを特徴とする。
【0034】
電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒は本発明の前記組成物1、2、および部分加水分解物1、2、3を含有する組成物の各成分が溶解するものであれば特に制限は無いが、特に工業的に広く利用されている有機溶媒である炭化水素化合物を用いることが出来る。前記炭化水素化合物としては、炭素数5〜20のより好ましくは炭素数6〜12の直鎖、分岐炭化水素化合物または環状炭化水素化合物、炭素数6〜20の、より好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素化合物およびそれらの混合物を例示することが出来る。
【0035】
これら炭化水素化合物の具体的な例として、ペンタン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソヘキサン、メチルペンタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)、n−ノナン、n−デカン、n−ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルオクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン、石油エーテル等の炭化水素系溶媒を上げることが出来る。
【0036】
上記の電子供与性有機溶媒とは異なる種類の有機溶媒、炭化水素化合物の沸点の上限は、特にないが、得られた組成物を塗布した後に溶媒が除去されて塗膜となる際の乾燥時間が比較的短くなると言う観点からは、電子供与性化合物と同様に230℃以下であることが好ましい。
【0037】
前記一般式(1)で表される化合物を前記電子供与性有機溶媒または前記電子供与性有機溶媒を含有する混合有機溶媒に溶解した溶液における、前記一般式(1)で表される化合物の濃度は、4〜12質量%の範囲とすることが好ましい。電子供与性有機溶媒を用いても、前記一般式(1)で表される化合物の濃度が4質量%未満及び12質量%を超える場合には、所望の透明性と導電性を有する酸化亜鉛薄膜の形成が難しくなる傾向があるからである。前記有機溶媒に溶解した溶液における一般式(1)で表される化合物の濃度は、好ましくは6〜10質量%の範囲である。
【0038】
前記水の添加量は、部分加水分解物1、2においては、前記有機亜鉛化合物に対するモル比を0.05〜0.8の範囲とし、部分加水分解物3においては、前記有機亜鉛化合物と3B族元素化合物の合計量に対するモル比を0.05〜0.8の範囲とする。水の添加量をこれらの範囲にすることで、スピンコート法、ディップコート法の場合、得られる部分加水分解物を含む反応生成物は、体積抵抗率が8×10
-2Ω・cm未満の特性を有する酸化亜鉛薄膜を形成することができ、スプレー熱分解法の場合、体積抵抗率が1×10
-3Ω・cm未満の特性を有する酸化亜鉛薄膜を形成することができる。
【0039】
さらに、水の添加量をモル比で0.4以上にすることにより、原料中に含有する亜鉛を基準として90%以上の高収率で有機亜鉛化合物を部分加水分解した生成物を含む有機亜鉛組成物を得ることができる。また、部分加水分解物3においては、3B族元素化合物も適量が部分加水分解される。水の添加量をモル比で0.4以上にすることで、部分加水分解物1、2の場合は、未反応の原料である有機亜鉛化合物の残量を、部分加水分解物3の場合は、有機亜鉛化合物と3B族元素化合物の残存量を抑えることができ、その結果、安全に取り扱える有機亜鉛組成物を得ることができる。また、水の添加量をモル比で0.8以下にすることにより加水分解反応中のゲルの発生を抑制できる。加水分解反応中にゲルが発生すると、溶液の粘度が上がり、その後の操作が困難になる場合がある。水の添加モル比は、上記観点から、好ましくは0.6〜0.8の範囲、より好ましくは0.6〜0.75の範囲である。
【0040】
部分加水分解物2においては、有機亜鉛化合物に水を添加した後に、3B族元素化合物を添加することから、水の添加量等によるが、添加した水が有機亜鉛化合物の加水分解に消費された後に3B族元素化合物が添加される場合には、前記生成物は、通常、前記3B族元素化合物の加水分解物は含まない。3B族元素化合物は、加水分解されず、原料のままで含有されるか、あるいは、有機亜鉛化合物の部分加水分解物が有する有機基と3B族元素化合物の有機基(配位子)が交換(配位子交換)したものになる可能性もある。部分加水分解物3においては、有機亜鉛化合物と3B族元素化合物の混合溶液に水を添加するので、前記生成物は、通常、前記3B族元素化合物の加水分解物を含む。3B族元素化合物の加水分解物は、水の添加量等によるが、部分加水分解物であることができる。
【0041】
水の添加は、水を他の溶媒と混合することなく水のみで行うことも、水を他の溶媒と混合して得た混合溶媒を用いて行うこともできる。局所的な加水分解の進行を抑制するという観点からは、混合溶媒を用いることが好ましく、混合溶媒中の水の含有率は、例えば、1〜50質量%の範囲であることができ、好ましくは2〜20質量%である。水との混合溶媒に用いることができる溶媒は、例えば、上記電子供与性有機溶媒であることができる。さらに、電子供与性有機溶媒としては、沸点が110℃以上の有機溶媒であっても、沸点が110℃未満の有機溶媒であってもよい。但し、ジエチル亜鉛に対して不活性かつ水の溶解性が高い必要があるという観点からは、沸点が110℃未満の有機溶媒であることが好ましい。
【0042】
水の添加は、反応の規模にもよるが、例えば、60秒〜10時間の間の時間をかけて行うことができる。生成物の収率が良好であるという観点から、原料である前記一般式(1)の有機亜鉛化合物に水または水との混合溶媒を滴下することにより添加することが好ましい。水の添加は、一般式(1)で表される化合物と電子供与性有機溶媒との溶液を攪拌せずに(静置した状態で)または攪拌しながら実施することができる。添加時の温度は、−90〜150℃の間の任意の温度を選択できる。−15〜30℃であることが水と有機亜鉛化合物の反応性という観点から好ましい。
【0043】
水の添加後に、水と一般式(1)で表される化合物と一般式(2)または(3)で表される化合物、もしくは、水と一般式(1)で表される化合物との反応を進行させるために、例えば、1分から48時間、攪拌せずに(静置した状態で)置くか、または攪拌する。反応温度については、−90〜150℃の間の任意の温度で反応させることができる。反応温度は、5〜80℃の範囲であることが部分加水分解物を高収率で得るという観点から好ましい。反応圧力は制限されない。通常は、常圧(大気圧)で実施できる。水と一般式(1)で表される化合物との反応の進行は、必要により、反応混合物をサンプリングし、サンプルをNMRあるいはIR等で分析、もしくは、発生するガスをサンプリングすることによりモニタリングすることができる。
【0044】
前記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物におけるR
1として表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−ヘキシル基、およびヘプチル基を挙げることができる。一般式(1)で表される化合物は、R
1が炭素数1、2、3、4、5、または6の化合物であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物は、特にR
1が炭素数2である、ジエチル亜鉛であることが好ましい。
【0045】
前記一般式(3)で表される3B族元素化合物におけるMとして表される金属の具体例としては、B、Al、Ga、Inを挙げことができる。また、Xとして表される塩の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硝酸、硫酸を挙げることができる。一般式(2)で表される3B族元素化合物は、特に、フッ化ホウ素、塩化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム6水和物、硝酸アルミニウム9水和物、塩化ガリウム、硝酸ガリウム水和物、塩化インジウム、塩化インジウム4水和物、硝酸インジウム5水和物を挙げることができる。
【0046】
前記一般式(2)で表される3B族元素化合物におけるMとして表される金属の具体例としては、B、Al、Ga、Inを挙げことができる。また、R
2、R
3、及びR
4は水素であることが好ましい。あるいは、R
2、R
3、及びR
4はアルキル基であることも好ましく、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−ヘキシル基、およびヘプチル基を挙げることができる。R
2、R
3、及びR
4は、少なくとも1つが水素であり、残りがアルキル基であることも好ましい。また、アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシド基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。
【0047】
Lとして表される配位子は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ピリジン、モノフォリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、トリフェニルフォスフィン、ジメチル硫黄、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランを挙げることができる。一般式(2)で表される3B族元素化合物は、特に、ジボラン、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体、トリエチルボラン、トリブチルボラン、アラン−トリメチルアミン錯体、アラン−トリエチルアミン錯体、トリメチルアルミニウム、ジメチルアミルニウムヒドリド、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリイソプロポキシインジウム、トリイソプロポキシガリウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリtert−ブトキシインジウム、トリtert−ブトキシガリウムを挙げることができる。価格が安く入手が容易であるという点から、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリイソプロポキシインジウム、トリイソプロポキシガリウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリtert−ブトキシインジウム、トリtert−ブトキシガリウムが特に好ましい。
【0048】
本発明で用いる組成物2及び部分加水分解物2及び3においては、前記一般式(1)で表される有機亜鉛化合物と有機亜鉛化合物に対する前記一般式(2)または(3)で表される3B族元素化合物のモル比は、0.005〜0.1の割合で添加することが、3B族元素の添加効果が適度に発現した酸化亜鉛薄膜を得るという観点から適当である。但し、組成物2及び部分加水分解物2においては、有機亜鉛化合物を含有する溶液に水を添加して部分加水分解物を得、その上で、上記モル比で3B族元素化合物を添加する。また、組成物3及び部分加水分解物3においては、上記モル比で有機亜鉛化合物と3B族元素化合物を含有する溶液に水を添加して部分加水分解物を得る。
【0049】
前記の有機溶媒、原料である前記一般式(1)の有機亜鉛化合物、及び水または水との混合溶媒は、あらゆる慣用の方法に従って反応容器に導入することができる。これらの反応工程は回分操作式、半回分操作式、連続操作式のいずれでもよく、特に制限はないが、回分操作式が望ましい。
【0050】
上記反応により、前記一般式(1)の有機亜鉛化合物と前記一般式(2)または(3)の3B族元素化合物、または、前記一般式(1)の有機亜鉛化合物は、水により部分的に加水分解されて、部分加水分解物を含む生成物が得られる。一般式(1)の有機亜鉛化合物がジエチル亜鉛である場合、水との反応により得られる生成物についての解析は古くから行われているが、報告により結果が異なり、生成物の組成が明確に特定されている訳ではない。また、水の添加モル比や反応時間等によっても、生成物の組成は変化し得る。
【0051】
部分加水分解物1、2については、下記一般式(4)で表される化合物であるか、あるいは、mが異なる複数種類化合物の混合物であると推定される。
R
1−Zn−[O−Zn]
p−R
1 (4)
(式中、R
1は一般式(1)におけるR
1と同じであり、pは2〜20の整数である。)
【0052】
本発明においては、生成物の主成分は、部分加水分解物3については、下記一般式(5)および(6)で表される構造単位と下記一般式(7)で表される構造単位を組み合わせた化合物であるか、あるいはmが異なる複数種類の化合物の混合物であると推察される。
(R
1−Zn)− (5)
−[O−Zn]
m− (6)
(式中、R
1は一般式(1)におけるR
1と同じであり、mは2〜20の整数である。)
(式中、Mは一般式(2)または(3)におけるMと同じであり、Qは一般式(2)または(3)におけるX、R
2、R
3、R
4のいずれかと同じであり、mは2〜20の整数である。)
【0053】
前記有機亜鉛化合物の加水分解の際に、前記3B族元素化合物を共存させていない部分加水分解物2の場合、反応終了後、前記一般式(2)または(3)の3B族化合物を添加することにより組成物を製造する。前記3B族元素化合物の添加量は、前述のように、前記有機亜鉛化合物の仕込み量に対して0.005〜0.09が適当である。
【0054】
加水分解反応終了後、例えば、ろ過、濃縮、抽出、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって、上記生成物の一部または全部を回収及び精製することができる。また、加水分解反応終了後に3B族元素化合物を添加する場合には、ろ過によって、上記生成物の一部または全部を回収及び精製することができる。反応生成物中に、原料である一般式(1)の有機亜鉛化合物が残存する場合には、上記方法で回収することもでき、回収することが好ましい。
【0055】
上記方法で調製した溶液は、酸化亜鉛薄膜形成用の塗布用の溶液としてそのまま使用できる。あるいは、適宜希釈または濃縮することもできるが、製造工程を簡素化できるという観点からは、上記方法で調製した溶液が、そのまま酸化亜鉛薄膜形成用の塗布用の溶液として使用できる濃度であることが好ましい。
【0056】
[酸化亜鉛薄膜の製造方法]
本発明は、酸化亜鉛薄膜の製造方法に関する。この製造方法は、前記組成物A、B、CまたはDを基板表面に塗布し、次いで、得られた塗布膜を加熱して酸化亜鉛薄膜を得る方法である。より具体的には、本発明の製造方法では、不活性ガス雰囲気下、基板表面に上記組成物A〜Dのいずれかを塗布し、次いで、得られた塗布物を加熱する操作を少なくとも1回行うことを含む。塗布および得られた塗布物の加熱操作は、導電性など所望の物性を得るために必要な回数を適宜行なうことができるが、好ましくは1回〜50回、より好ましくは、1回〜30回さらに好ましくは1回〜10回等の範囲で適宜実施できる。
【0057】
基板表面への塗布は、ディップコート法、スピンコート法、スプレー熱分解法、インクジェット法、スクリーン印刷法等の慣用手段により実施できる。
【0058】
組成物の基板表面への塗布は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、空気雰囲気下、水蒸気を多く含有した相対湿度が高い空気雰囲気下、酸素等の酸化ガス雰囲気下、水素等の還元ガス雰囲気下、もしくは、それらの混合ガス雰囲気下等のいずれかの雰囲気下、かつ、大気圧または加圧下で実施することができる。
【0059】
スピンコート法、ディップコート法においては、不活性ガス雰囲気下で形成しても良く、さらには、不活性ガスと水蒸気を混合させることにより相対湿度2〜15%にした雰囲気下で行っても良い。
【0060】
スプレー熱分解法は、基板を加熱しながらできる方法であり、そのため、塗布と並行して溶媒を乾燥させることができ、条件によっては、溶媒乾燥のための加熱が不要である場合もある。さらに、条件によっては、乾燥に加えて、有機亜鉛化合物の部分加水分解物の酸化亜鉛への反応も少なくとも一部、進行する場合もある。そのため、後工程である、所定の温度での加熱による酸化亜鉛薄膜形成をより容易に行える場合もある。基板の加熱温度は、例えば、50〜550℃の範囲であることができる。
【0061】
図1に、本発明のスプレー熱分解法で用いることができるスプレー製膜装置を示す。図中、1は塗布液を充填したスプレーボトル、2は基板ホルダ、3スプレーノズル、4はコンプレッサ、5は基板、6は水蒸気導入用チューブを示す。スプレー塗布は、基板を基板ホルダ2に設置し、必要によりヒーターを用いて所定の温度まで加熱し、その後、所定の雰囲気中で、基板の上方に配置したスプレーノズル3から圧縮した不活性ガスと塗布液を同時供給し、塗布液を霧化、噴霧させることにより基板上に酸化亜鉛薄膜を形成することができる。酸化亜鉛薄膜は、スプレー塗布することで、追加の加熱等することなしに形成される。
【0062】
塗布液のスプレー塗布は、塗布液をスプレーノズルより液滴の大きさが1〜15μmの範囲になるように吐出し、かつスプレーノズルと基板との距離を50cm以内として行うことが、良好な膜特性を有する酸化亜鉛薄膜を製造することができるという観点から好ましい。
【0063】
基板への付着性、溶媒の蒸発の容易性等を考慮すると、スプレーノズルより吐出される液滴の大きさについては、全ての液滴の大きさが1〜30μmの範囲にあることが好ましい。液滴の大きさは、より好ましくは3〜20μmの範囲にある。
【0064】
スプレーノズルから基板に到達するまでに溶媒が幾分蒸発し液滴の大きさが減少すること等を考慮すると、スプレーノズルと基板との距離は50cm以内であることが好ましい。スプレーノズルと基板との距離は、酸化亜鉛薄膜の形成が良好にできるという観点から、好ましくは2〜40cmの範囲である。
【0065】
スプレー熱分解法においては、不活性ガス雰囲気下で水蒸気導入用チューブ6から水蒸気を導入して組成物の分解を促進させることが、体積抵抗率がより低い酸化亜鉛薄膜を形成するという観点から好ましい。例えば、水蒸気の導入量は、供給される前記組成物が部分加水分解物(部分加水分解物1〜3)を含む物であるか、あるいは部分加水分解を受けていない物(組成物1〜2)であるかによって異なる場合があるが、供給された前記組成物中の亜鉛に対するモル比で0.1〜5であることが好ましく、体積抵抗率がより低い酸化亜鉛薄膜を得るという観点から、0.3〜2であることがさらに好ましい。水蒸気の導入量が上記モル比で0.3〜2の範囲であれば、導電性のよい良好な膜特性を有する酸化亜鉛薄膜を形成することができる。
【0066】
水蒸気の導入方法は、あらゆる慣用の方法に従って酸化亜鉛薄膜製造容器に導入することができる。水蒸気と組成物は加熱された基板付近で反応することが好ましく、例えば、水を不活性ガスでバブリングすることにより作製された水蒸気を含有する不活性ガスを加熱された基板付近に管で導入することが挙げられる。
【0067】
基板表面へ塗布液を塗布した後、必要により基板を所定の温度とし、溶媒を乾燥した後、所定の温度で加熱することにより酸化亜鉛薄膜を形成させる。
【0068】
溶媒を乾燥する温度は、例えば、20〜200℃の範囲であることができ、共存する有機溶媒の種類に応じて適時設定することができる。溶媒乾燥後の酸化亜鉛形成の為の加熱温度は、例えば、50〜550℃の範囲であり、好ましくは50〜500℃の範囲である。溶媒乾燥温度とその後の酸化亜鉛形成の為の加熱温度を同一にし、溶媒乾燥と酸化亜鉛形成を同時に行うことも可能である。
【0069】
必要に応じて、さらに、酸素等の酸化ガス雰囲気下、水素等の還元ガス雰囲気下、水素、アルゴン、酸素等のプラズマ雰囲気下で、上記加熱を行うことにより酸化亜鉛の形成を促進、または、結晶性を向上させることも可能である。酸化亜鉛薄膜の膜厚には特に制限はないが、実用的には0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。本発明の製造方法によれば、スプレー熱分解法以外の場合、上記塗布(乾燥)加熱を1回以上繰り返すことで、上記範囲の膜厚の薄膜を適宜製造することができる。
【0070】
本発明の製造方法により形成される酸化亜鉛薄膜は、塗布方法及びその後の乾燥条件や加熱条件により変化する。体積抵抗率は単位体積当りの抵抗であり、表面抵抗と膜厚を掛けることにより求められる。表面抵抗は例えば四探針法により、膜厚は例えばSEM測定、触針式段差膜厚計等により測定される。体積抵抗率は、スプレー塗布時もしくは塗布後の加熱による酸化亜鉛の生成の程度により変化(増大)するので、薄膜の体積抵抗率が所望の数値になるよう考慮して、スプレー塗布時もしくは塗布後の加熱条件(温度及び時間)を設定することが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法により形成される酸化亜鉛薄膜は、好ましくは可視光線に対して80%以上の平均透過率を有するものであり、より好ましくは可視光線に対して85%以上の平均透過率を有する。「可視光線に対する平均透過率」とは、以下のように定義され、かつ測定される。可視光線に対する平均透過率とは、380〜780nmの範囲の光線の透過率の平均を云い、紫外可視分光光度計により測定される。尚、可視光線に対する平均透過率は、550nmの可視光の透過率を提示することによっても表現できる。可視光線に対する透過率は、スプレー塗布時もしくは塗布後の加熱による酸化亜鉛の生成の程度により変化(増大)するので、薄膜の可視光線に対する透過率が80%以上になるよう考慮してスプレー塗布時もしくは塗布後の加熱条件(温度及び時間)を設定することが好ましい。
【0072】
本発明において基板として用いられるのは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、透明基材フィルムであることができ、透明基材フィルムはプラスチックフィルムであることができる。但し、これら例示の材料に限定される意図ではない。
【0073】
[酸化亜鉛薄膜の用途]
上記方法により作製した酸化亜鉛薄膜は、優れた透明性と導電性を有することから、帯電防止膜、紫外線カット膜、透明導電膜等として使用できる。帯電防止膜は、例えば、固体電界コンデンザ、化学増幅系レジスト、窓ガラス等の建材等の分野に利用できる。紫外線カット膜は、例えば、画像表示装置の前面フィルター、ドライブレコーダー等の撮像装置、高圧放電ランプ等の照明器具、時計用カバーガラス、窓ガラス等の建材等の分野に利用できる。さらに、透明導電膜は、例えば、FPD、抵抗膜式タッチパネルおよび静電容量式タッチパネル、薄膜シリコン太陽電池および化合物(CdTe、CIS)系薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機系薄膜太陽電池等の分野に利用できる。但し、これらの分野に限定される意図ではない。
【実施例】
【0074】
以下に本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。全ての有機亜鉛化合物からの部分加水分解物を含む生成物の調製およびそれを用いた成膜は窒素ガス雰囲気下で行い、溶媒は全て脱水および脱気して使用した。
【0075】
[実施例1]
テトラヒドロフラン30重量%およびn−ヘキサン70重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、トリメチルインジウム(TMI)を、仕込んだジエチル亜鉛に対してモル比で0.04になるよう添加し、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、インジウムを含有する溶液を56.4g得た。真空乾燥により溶媒等を除去した後のNMR(THF−d8,ppm)測定により
図2のスペクトルを得た。
【0076】
上述のようにして得た塗布液を、
図1のスプレー製膜装置中スプレーボトルに充填した。18mm角のコーニング1737ガラス基板を基板ホルダに設置した。窒素ガス雰囲気下で、ガラス基板を200℃に加熱した後、35℃の水を毎分10Lでバブリングした窒素ガスを水蒸気導入用チューブ6で基板付近に導入することにより水を導入した。その後、スプレーノズルより塗布液を4ml/minで8分間噴霧した。スプレーノズルより吐出する液滴の大きさは、3〜20μmの範囲であり、かつスプレーノズルと基板との距離を30cmとして行った。形成された薄膜は、表1のようになった。さらにXRD(
図3参照)により酸化亜鉛であることが確認された。
【0077】
[実施例2]
実施例1のようにして得た塗布液を、
図1のスプレー製膜装置中スプレーボトルに充填した。18mm角のコーニング1737ガラス基板を基板ホルダに設置した。窒素ガス雰囲気下で、ガラス基板を300℃に加熱した後、35℃の水を毎分10Lでバブリングした窒素ガスを水蒸気導入用チューブ6で基板付近に導入することにより水を導入した。その後、スプレーノズルより塗布液を4ml/minで8分間噴霧した。スプレーノズルより吐出する液滴の大きさは、3〜20μmの範囲であり、かつスプレーノズルと基板との距離を30cmとして行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0078】
[実施例3]
テトラヒドロフラン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、トリメチルインジウム(TMI)を、仕込んだジエチル亜鉛に対してモル比で0.04になるよう添加し、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、インジウムを含有する溶液を56.4g得た。
【0079】
上述のようにして得た塗布液を、
図1のスプレー製膜装置中スプレーボトルに充填した。18mm角のコーニング1737ガラス基板を基板ホルダに設置した。窒素ガス雰囲気下で、ガラス基板を200℃に加熱した後、実施例1と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0080】
[実施例4]
実施例3のようにして得た塗布液を、ガラス基板の加熱温度を300℃として、実施例2と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。表1のようになった。
【0081】
[実施例5]
テトラヒドロフラン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、トリメチルガリウム(TMG)を、仕込んだジエチル亜鉛に対してモル比で0.04になるよう添加し、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、ガリウムを含有する溶液を56.4g得た。
【0082】
上述のようにして得た塗布液を、ガラス基板の加熱温度を200℃として、実施例1と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0083】
[実施例6]
実施例5のようにして得た塗布液を用い、ガラス基板の加熱温度を300℃として、実施例2と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0084】
[実施例7]
テトラヒドロフラン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、三塩化ガリウム(GaCl
3)を、仕込んだジエチル亜鉛に対してモル比で0.04になるよう添加し、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、ガリウムを含有する溶液を56.4g得た。
【0085】
上述のようにして得た塗布液を、ガラス基板の加熱温度を300℃として、実施例2と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0086】
[実施例8]
1,2−ジエトキシエタン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、溶液を56.2g得た。
【0087】
上述のようにして得た塗布液を、ガラス基板の加熱温度を200℃として、実施例1と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0088】
[実施例9]
テトラヒドロフラン10重量%およびトルエン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、溶液を56.2g得た。
【0089】
上述のようにして得た塗布液を、ガラス基板の加熱温度を200℃として、実施例1と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0090】
[実施例10]
テトラヒドロフラン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、12℃まで冷却した。5.0%水を含有したテトラヒドロフラン溶液を、水のジエチル亜鉛に対するモル比が0.3になるように滴下した。その後、室温(22℃)まで昇温し室温で18時間反応させた後、トリメチルインジウム(TMI)を、仕込んだジエチル亜鉛に対してモル比で0.04になるよう添加し、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、インジウムを含有する溶液を56.7g得た。
【0091】
上述のようにして得た塗布液を、ガラス基板の加熱温度を200℃として、実施例1と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0092】
[実施例11]
実施例10のようにして得た塗布液を、ガラス基板の加熱温度を300℃として、実施例2と同様の装置および成膜条件でスプレー成膜を行った。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0093】
[実施例12]
テトラヒドロフラン24重量%およびn−ヘキサン76重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、12℃まで冷却した。5.0%水を含有したテトラヒドロフラン溶液を、水のジエチル亜鉛に対するモル比が0.6になるように滴下した。その後、室温(22℃)まで昇温し室温で18時間反応させた後、トリメチルインジウム(TMI)を、仕込んだジエチル亜鉛に対してモル比で0.04になるよう添加し、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、インジウムを含有する溶液を56.8g得た。
【0094】
上述のように得た生成物含有塗布液をスピンコート法により18mm角のコーニング1737ガラス基板表面上に塗布した。その後、基板を500℃、5分加熱することで溶媒を乾燥させると同時に酸化亜鉛を形成させた。以上の操作をさらに5回繰り返した。形成された薄膜は、表1のようになった。さらにXRD(
図4参照)により酸化亜鉛であることが確認された。
【0095】
[実施例13]
テトラヒドロフラン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、12℃まで冷却した。5.0%水を含有したテトラヒドロフラン溶液を、水のジエチル亜鉛に対するモル比が0.3になるように滴下した。その後、室温(22℃)まで昇温し室温で18時間反応させた後、以上のようにして得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、溶液を56.5g得た。
【0096】
上述のように得た生成物含有塗布液をスピンコート法により18mm角のコーニング1737ガラス基板表面上に実施例12と同様の条件で塗布成膜し、酸化亜鉛を形成させた。形成された薄膜は表1のようになった。
【0097】
[実施例14]
テトラヒドロフラン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、12℃まで冷却した。5.0%水を含有したテトラヒドロフラン溶液を、水のジエチル亜鉛に対するモル比が0.6になるように滴下した。その後、室温(22℃)まで昇温し室温で18時間反応させた後、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、溶液を56.6g得た。
【0098】
上述のように得た生成物含有塗布液をスピンコート法により18mm角のコーニング1737ガラス基板表面上に実施例12と同様の条件で塗布成膜し、酸化亜鉛を形成させた。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0099】
[実施例15]
テトラヒドロフラン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、12℃まで冷却した。5.0%水を含有したテトラヒドロフラン溶液を、水のジエチル亜鉛に対するモル比が0.8になるように滴下した。その後、室温(22℃)まで昇温し室温で18時間反応させた後、得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、溶液を56.8g得た。
【0100】
上述のように得た生成物含有塗布液をスピンコート法により18mm角のコーニング1737ガラス基板表面上に実施例12と同様の条件で塗布成膜し、酸化亜鉛を形成させた。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0101】
[実施例16]
テトラヒドロフラン10重量%およびn−ヘキサン90重量%の混合溶媒51.7gにジエチル亜鉛4.5g(8.0重量%相当)を加えた。十分攪拌した後、12℃まで冷却した。5.0%水を含有したテトラヒドロフラン溶液を、水のジエチル亜鉛に対するモル比が0.3になるように滴下した。その後、室温(22℃)まで昇温し室温で18時間反応させた後、トリメチルインジウム(TMI)を仕込んだジエチル亜鉛に対してモル比で0.02になるよう添加した。以上のようにして得た溶液をメンブレンフィルターでろ過することにより、インジウムを含有する溶液を56.5g得た。
【0102】
上述のように得た生成物含有塗布液をスピンコート法により18mm角のコーニング1737ガラス基板表面上に塗布した。その後、基板の加熱温度を350℃としたこと以外は、実施例12と同様の条件で塗布成膜し、酸化亜鉛を形成させた。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0103】
[実施例17]
実施例16のように得た生成物含有塗布液をスピンコート法により18mm角のコーニング1737ガラス基板表面上に実施例12と同様の条件で塗布成膜し、酸化亜鉛を形成させた。形成された薄膜は、表1のようになった。
【0104】
【表1】
【0105】
[参考例1]
2−メトキシエタノール24.12gに、酢酸亜鉛二水和物1.23gと助剤としてエタノールアミン0.34g、さらに、トリスアセチルアセナトアルミニウムを酢酸亜鉛二水和物に対してモル比0.02の割合で加え、十分攪拌することでアルミニウムを含有する塗布液を得た。
【0106】
そのように得た塗布液を空気中にて用いた以外実施例1と同様な操作を実施して薄膜を得た。550nmの可視光透過率は75%であり、透過率80%以下の不透明な薄膜しか得られなかった。さらに、膜は不均一であり、XRDからは酸化亜鉛由来のピークは確認されなかった(図示せず)。
【0107】
[参考例2]
トリスアセチルアセナトアルミニウムを塩化ガリウムに変更した以外は、比較例1と同様にしてガリウムを含有する塗布液を得た。
【0108】
そのように得た塗布液を比較例1と同様な操作を実施して薄膜を得た。また、550nmの可視光透過率は66%であり、透過率80%以下の不透明な薄膜しか得られなかった。さらに、膜は不均一であり、XRDからは酸化亜鉛由来のピークは確認されなかった(図示せず)。
【0109】
[参考例3]
トリスアセチルアセナトアルミニウムを塩化インジウム四水和物に変更した以外は、比較例1と同様にしてインジウムを含有する塗布液を得た。
【0110】
そのように得た塗布液を比較例1と同様な操作を実施して薄膜を得た。また、550nmの可視光透過率は71%であり、透過率80%以下の不透明な薄膜しか得られなかった。さらに、膜は不均一であり、XRDからは酸化亜鉛由来のピークは確認されなかった(図示せず)。