(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
−150℃および500℃での圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’が、いずれも、25℃での圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’の0.01倍〜100倍の範囲内にある、請求項1に記載の粘弾性体。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪粘弾性体≫
本発明の粘弾性体は、−150℃から500℃の温度領域において、圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’が1.0×10
6Pa以下である。上記G’は、好ましくは1.0×10
2Pa〜5.0×10
5Paであり、より好ましくは1.0×10
3Pa〜5.0×10
5Paであり、さらに好ましくは1.0×10
4Pa〜1.0×10
5Paである。
【0020】
−150℃から500℃の温度領域において、圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’が上記範囲に収まることにより、本発明の粘弾性体は、低温から高温に至る広温度領域において優れた粘弾性を示すことができる。
【0021】
本発明の粘弾性体は、−150℃および500℃での圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’が、いずれも、25℃での圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’の0.01倍〜100倍の範囲内にあることが好ましい。この範囲は、より好ましくは0.1倍〜50倍の範囲であり、さらに好ましくは1倍〜10倍の範囲である。−150℃および500℃での圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’が、いずれも、25℃での圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’に対して上記範囲内に収まることにより、本発明の粘弾性体は、低温から高温に至る広温度領域において優れた粘弾性を示すことができる。
【0022】
本発明の粘弾性体は、プローブタック試験におけるプローブタックが、25℃において、好ましくは200gf以下であり、より好ましくは10gf〜200gfであり、さらに好ましくは20gf〜195gfであり、特に好ましくは30gf〜190gfである。本発明において、上記プローブタックが上記範囲内にあることにより、本発明の粘弾性体は、適度なタックを有し、取り扱い性が良好となる。
【0023】
本発明の粘弾性体は、好ましくは、特定の粒径の粒子を選択的に採取できる。ここで、本発明において「粒径」とは、粒子の直径の最も小さい部分をいう。
【0024】
本発明の粘弾性体は、好ましくは、粒径500μm未満の粒子を選択的に粘着採取することができる。ここで、本発明において「粘着採取」とは、被着体である粒子に対して本発明の粘弾性体を圧着することによって、該粒子を該粘弾性体に粘着させて採取することをいう。圧着の程度は、目的に応じて適宜設定し得るが、例えば、5kgローラーで一往復させることによる圧着が挙げられる。
【0025】
本発明の粘弾性体は、好ましくは、粒径200μm以下の粒子を選択的に吸着採取することができる。ここで、本発明において「吸着採取」とは、被着体である粒子に対して本発明の粘弾性体を圧着させることなく、該粒子を該粘弾性体に吸着させて採取することをいう。具体的には、例えば、被着体である粒子を、小さい衝突速度(例えば、1m/s)にて粘弾性体に接触させることにより、該粒子を該粘弾性体に吸着させる。
【0026】
本発明の粘弾性体は、好ましくは、繊維状柱状構造体を含む。
【0027】
上記繊維状柱状構造体の材料としては、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、アルミ、鉄などの金属;シリコンなどの無機材料;カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどのカーボン材料;エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどの高モジュラスの樹脂;などが挙げられる。樹脂の具体例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられる。樹脂の分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成しうる範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。
【0028】
上記繊維状柱状構造体の長さは、好ましくは1μm〜10000μmであり、より好ましくは10μm〜5000μmであり、さらに好ましくは30μm〜3000μmであり、特に好ましくは50μm〜2000μmであり、最も好ましくは100μm〜2000μmである。上記繊維状柱状構造体の長さが上記範囲内に収まることにより、タックが小さくて取り扱い性に優れ、低温から高温に至る広温度領域において優れた粘弾性を示す、粘弾性体を提供することができる。
【0029】
上記繊維状柱状構造体の直径は、好ましくは0.3nm〜2000nmであり、より好ましくは1nm〜1000nmであり、さらに好ましくは2nm〜500nmである。上記繊維状柱状構造体の直径が上記範囲内に収まることにより、タックが小さくて取り扱い性に優れ、低温から高温に至る広温度領域において優れた粘弾性を示す、粘弾性体を提供することができる。
【0030】
本発明においては、上記繊維状柱状構造体は、好ましくは、複数のカーボンナノチューブを備えるカーボンナノチューブ集合体である。
【0031】
本発明の粘弾性体は、カーボンナノチューブ集合体のみからなっていても良いし、カーボンナノチューブ集合体と任意の適切な部材からなっていても良い。
【0032】
本発明の粘弾性体は、基材を含んでいても良い。このとき、本発明の粘弾性体が複数のカーボンナノチューブを備えるカーボンナノチューブ集合体を含む場合は、該カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されていても良い。
【0033】
上記基材としては、目的に応じて、任意の適切な基材を採用し得る。例えば、石英ガラス、シリコン(シリコンウェハなど)、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックの具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドなどが挙げられる。これらの基材の分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。
【0034】
上記基材の厚みは、目的に応じて、任意の適切な値に設定され得る。例えば、シリコン基板の場合は、好ましくは100μm〜10000μmであり、より好ましくは100μm〜5000μmであり、さらに好ましくは100μm〜2000μmである。例えば、ポリプロピレン基板の場合は、好ましくは1μm〜1000μmであり、より好ましくは1μm〜500μmであり、さらに好ましくは5μm〜100μmである。
【0035】
上記基材の表面は、隣接する層との密着性,保持性などを高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理,下塗剤(例えば、上記粘着性物質)によるコーティング処理が施されていてもよい。
【0036】
上記基材は単層であっても良いし、多層体であっても良い。
【0037】
本発明の粘弾性体が複数のカーボンナノチューブを備えるカーボンナノチューブ集合体を含む場合であって、基材を含む場合、該カーボンナノチューブを基材に固定する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、カーボンナノチューブ集合体の製造に使用した基板を基材としてそのまま用いてもよい。また、基材に接着層を設けてカーボンナノチューブに固定してもよい。さらに、基材が熱硬化性樹脂の場合は、反応前の状態で薄膜を作製し、カーボンナノチューブの一端を薄膜層に圧着させた後、硬化処理を行って固定すれば良い。また、基材が熱可塑性樹脂や金属などの場合は、溶融した状態で繊維状柱状構造体の一端を圧着させた後、室温まで冷却して固定すれば良い。
【0038】
≪カーボンナノチューブ集合体≫
本発明の粘弾性体が繊維状柱状構造体を含む場合、該繊維状柱状構造体は好ましくはカーボンナノチューブ集合体である。本発明の粘弾性体がカーボンナノチューブ集合体を含む場合、本発明の粘弾性体は、タックが小さくて取り扱い性に一層優れ、低温から高温に至る広温度領域において一層優れた粘弾性を示す。
【0039】
図1は、本発明の好ましい実施形態における粘弾性体がカーボンナノチューブ集合体である場合の一例の概略断面図(各構成部分を明示するために縮尺は正確に記載されていない)である。カーボンナノチューブ集合体10は、基材1と、カーボンナノチューブ2を備える。カーボンナノチューブ2の片端2aは、基材1に固定されている。カーボンナノチューブ2は、長さ方向Lに配向している。カーボンナノチューブ2は、好ましくは、基材1に対して略垂直方向に配向している。本図示例とは異なり、カーボンナノチューブが基材を備えない場合であっても、カーボンナノチューブは互いにファンデルワールス力によって集合体として存在し得るので、本発明のカーボンナノチューブ集合体は、基材を備えない集合体であっても良い。
【0040】
カーボンナノチューブ集合体においてカーボンナノチューブが基材を備える場合、該基材としては、目的に応じて、任意の適切な基材を採用し得る。このような基材としては、例えば、本発明の粘弾性体が含み得る基材として上記で説明したものが挙げられる。
【0041】
<第1の好ましい実施形態>
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の好ましい実施形態の1つ(以下、第1の好ましい実施形態と称することがある)は、複数のカーボンナノチューブを備え、該カーボンナノチューブが複数層を有し、該カーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、該カーボンナノチューブの長さが10μmより大きい。
【0042】
上記カーボンナノチューブの層数分布の分布幅は10層以上であり、好ましくは10層〜30層であり、より好ましくは10層〜25層であり、さらに好ましくは10層〜20層である。
【0043】
上記カーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。カーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。
【0044】
上記カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブを取り出してSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0045】
上記カーボンナノチューブの層数の最大層数は、好ましくは5層〜30層であり、より好ましくは10層〜30層であり、さらに好ましくは15層〜30層であり、特に好ましくは15層〜25層である。
【0046】
上記カーボンナノチューブの層数の最小層数は、好ましくは1層〜10層であり、より好ましくは1層〜5層である。
【0047】
上記カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。
【0048】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、25%以下であり、好ましくは1%〜25%であり、より好ましくは5%〜25%であり、さらに好ましくは10%〜25%であり、特に好ましくは15%〜25%である。上記層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。
【0049】
上記層数分布の最頻値は、好ましくは層数2層から層数10層に存在し、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。上記層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。
【0050】
上記カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0051】
上記カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0052】
<第2の好ましい実施形態>
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の好ましい実施形態の別の1つ(以下、第2の好ましい実施形態と称することがある)は、複数のカーボンナノチューブを備え、該カーボンナノチューブが複数層を有し、該カーボンナノチューブの層数分布の最頻値が層数10層以下に存在し、該最頻値の相対頻度が30%以上であり、該カーボンナノチューブの長さが10μmを超えて500μm未満である。
【0053】
上記カーボンナノチューブの層数分布の分布幅は、好ましくは9層以下であり、より好ましくは1層〜9層であり、さらに好ましくは2層〜8層であり、特に好ましくは3層〜8層である。
【0054】
上記カーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。カーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。
【0055】
上記カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブを取り出してSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0056】
上記カーボンナノチューブの層数の最大層数は、好ましくは1層〜20層であり、より好ましくは2層〜15層であり、さらに好ましくは3層〜10層である。
【0057】
上記カーボンナノチューブの層数の最小層数は、好ましくは1層〜10層であり、より好ましくは1層〜5層である。
【0058】
上記カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。
【0059】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、30%以上であり、好ましくは30%〜100%であり、より好ましくは30%〜90%であり、さらに好ましくは30%〜80%であり、特に好ましくは30%〜70%である。上記層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。
【0060】
上記層数分布の最頻値は、層数10層以下に存在し、好ましくは層数1層から層数10層に存在し、より好ましくは層数2層から層数8層に存在し、さらに好ましくは層数2層から層数6層に存在する。本発明において、上記層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。
【0061】
上記カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0062】
上記カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0063】
≪カーボンナノチューブ集合体の製造方法≫
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の製造方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。
【0064】
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の製造方法としては、例えば、平滑な基板の上に触媒層を構成し、熱、プラズマなどにより触媒を活性化させた状態で炭素源を充填し、カーボンナノチューブを成長させる、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)によって、基板からほぼ垂直に配向したカーボンナノチューブ集合体を製造する方法が挙げられる。この場合、基板を取り除けば、長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体が得られる。
【0065】
上記基板としては、任意の適切な基板を採用し得る。例えば、平滑性を有し、カーボンナノチューブの製造に耐え得る高温耐熱性を有する材料が挙げられる。このような材料としては、例えば、石英ガラス、シリコン(シリコンウェハなど)、アルミニウムなどの金属板などが挙げられる。上記基板は、そのまま、本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体が備え得る基材として用いることができる。
【0066】
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体を製造するための装置としては、任意の適切な装置を採用し得る。例えば、熱CVD装置としては、
図2に示すような、筒型の反応容器を抵抗加熱式の電気管状炉で囲んで構成されたホットウォール型などが挙げられる。その場合、反応容器としては、例えば、耐熱性の石英管などが好ましく用いられる。
【0067】
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の製造に用い得る触媒(触媒層の材料)としては、任意の適切な触媒を用い得る。例えば、鉄、コバルト、ニッケル、金、白金、銀、銅などの金属触媒が挙げられる。
【0068】
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体を製造する際、必要に応じて、基板と触媒層の中間にアルミナ/親水性膜を設けても良い。
【0069】
アルミナ/親水性膜の作製方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、基板の上にSiO
2膜を作製し、Alを蒸着後、450℃まで昇温して酸化させることにより得られる。このような作製方法によれば、Al
2O
3が親水性のSiO
2膜と相互作用し、Al
2O
3を直接蒸着したものよりも粒子径の異なるAl
2O
3面が形成される。基板の上に、親水性膜を作製することを行わずに、Alを蒸着後に450℃まで昇温して酸化させても、粒子径の異なるAl
2O
3面が形成され難いおそれがある。また、基板の上に、親水性膜を作製し、Al
2O
3を直接蒸着しても、粒子径の異なるAl
2O
3面が形成され難いおそれがある。
【0070】
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の製造に用い得る触媒層の厚みは、微粒子を形成させるため、好ましくは0.01nm〜20nmであり、より好ましくは0.1nm〜10nmである。本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の製造に用い得る触媒層の厚みが上記範囲内にあることによって、該カーボンナノチューブ集合体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブ集合体は優れた粘着特性を示し得る。したがって、このようなカーボンナノチューブ集合体を用いて、優れた粘弾性を発現できる粘弾性体を提供できる。触媒層の形成方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、金属触媒をEB(電子ビーム)、スパッタなどにより蒸着する方法、金属触媒微粒子の懸濁液を基板上に塗布する方法などが挙げられる。
【0071】
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の製造に用い得る炭素源としては、任意の適切な炭素源を用い得る。例えば、メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素;メタノール、エタノールなどのアルコール;などが挙げられる。
【0072】
本発明の粘弾性体が含み得るカーボンナノチューブ集合体の製造における製造温度としては、任意の適切な温度を採用し得る。たとえば、本発明の効果を十分に発現し得る触媒粒子を形成させるため、好ましくは400℃〜1000℃であり、より好ましくは500℃〜900℃であり、さらに好ましくは600℃〜800℃である。
【0073】
≪粘弾性体の用途≫
本発明の粘弾性体は、各種用途に用い得る。本発明の粘弾性体は、特に、タックが小さくて取り扱い性に優れ、低温から高温に至る広温度領域において優れた粘弾性を示す。このため、本発明の粘弾性体は、分析分野、超電導分野などで、好ましく用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各種評価や測定は、以下の方法により行った。
【0075】
<カーボンナノチューブ集合体におけるカーボンナノチューブの層数・層数分布の評価>
本発明のカーボンナノチューブ集合体におけるカーボンナノチューブの層数および層数分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)および/または透過電子顕微鏡(TEM)によって測定した。得られたカーボンナノチューブ集合体の中から少なくとも10本以上、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMおよび/またはTEMにより観察し、各カーボンナノチューブの層数を調べ、層数分布を作成した。
【0076】
<プローブタック試験>
下記の条件によってプローブタック試験を行い、粘着力の最大値を測定した。
装置:タッキング試験機(RESCA製)
プローブ:SUS5mmφ
Preload:500gf
Press Speed:1mm/min
Press Time:5s
Test Speed:2.5mm/min
【0077】
<圧着式の粘弾性スペクトル評価におけるG’の測定>
下記の条件によって圧着式の粘弾性スペクトル評価を行い、G’を測定した。
(測定条件)
装置:TAインスツルメント歪制御型レオメータ「ARES−G2」
治具:8mmφの圧縮治具
測定モード:温度分散、引張粘弾性
温度:−150℃〜500℃
周波数:1Hz
ひずみ:1%
【0078】
[実施例1]
基板としてのシリコンウェハ(シリコンテクノロジー製)上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した。このAl薄膜上に、さらにスパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてFe薄膜(厚み0.35nm)を蒸着した。
その後、この基板を30mmφの石英管内に載置し、水分600ppmに保ったヘリウム/水素(90/50sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させ、1分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(1)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(1)が備えるカーボンナノチューブの長さは30μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(1)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は1層に存在し、相対頻度は61%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(1)を粘弾性体(1)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0079】
[実施例2]
Fe薄膜の厚みを1nmとした以外は、実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(2)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(2)が備えるカーボンナノチューブの長さは30μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(2)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は2層に存在し、相対頻度は75%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(2)を粘弾性体(2)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0080】
[実施例3]
ヘリウム/水素/エチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させた後の放置時間を3分間とした以外は、実施例2と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(3)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(3)が備えるカーボンナノチューブの長さは50μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(3)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は2層に存在し、相対頻度は75%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(3)を粘弾性体(3)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0081】
[実施例4]
Fe薄膜の厚みを2nmとし、ヘリウム/水素/エチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させた後の放置時間を5分間とした以外は、実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(4)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(4)が備えるカーボンナノチューブの長さは70μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(4)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は7−8層に存在し、相対頻度は66%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(4)を粘弾性体(4)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0082】
[実施例5]
エチレンの代わりにアセチレンを用い、ヘリウム/水素/アセチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させた後の放置時間を7分間とした以外は、実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(5)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(5)が備えるカーボンナノチューブの長さは100μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(5)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は7−8層に存在し、相対頻度は66%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(5)を粘弾性体(5)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0083】
[実施例6]
ヘリウム/水素/エチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させた後の放置時間を10分間とした以外は、実施例2と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(6)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(6)が備えるカーボンナノチューブの長さは200μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(6)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は2層に存在し、相対頻度は75%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(6)を粘弾性体(6)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0084】
[実施例7]
ヘリウム/水素/エチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させた後の放置時間を20分間とした以外は、実施例1と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(7)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(7)が備えるカーボンナノチューブの長さは400μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(7)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は1層に存在し、相対頻度は61%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(7)を粘弾性体(7)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0085】
[実施例8]
ヘリウム/水素/エチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させた後の放置時間を20分間とした以外は、実施例2と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(8)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(8)が備えるカーボンナノチューブの長さは500μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(8)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は2層に存在し、相対頻度は75%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(8)を粘弾性体(8)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0086】
[実施例9]
ヘリウム/水素/エチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させた後の放置時間を40分間とした以外は、実施例4と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(9)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(9)が備えるカーボンナノチューブの長さは800μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(9)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は3層に存在し、相対頻度は72%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(9)を粘弾性体(9)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0087】
[実施例10]
ヘリウム/水素/エチレン(85/50/5sccm、水分率600ppm)混合ガスを管内に充填させた後の放置時間を60分間とした以外は、実施例2と同様に行い、カーボンナノチューブが長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体(10)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(10)が備えるカーボンナノチューブの長さは1200μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(10)が備えるカーボンナノチューブの層数分布において、最頻値は2層に存在し、相対頻度は75%であった。
得られたカーボンナノチューブ集合体(10)を粘弾性体(10)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0088】
[比較例1]
両面粘着テープ(日東電工株式会社製、No.5000N)を粘弾性体(C1)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0089】
[比較例2]
3Mポリイミド両面テープ(住友3M製、4390)を粘弾性体(C2)として、各種評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0090】
【表1】