(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレートと共に、更に当該ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基含有化合物および光重合開始剤を含有する請求項4に記載の光硬化性樹脂組成物。
請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレート、当該ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基含有化合物および光重合開始剤の合計質量に基づいて、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン(メタ)アクリレートを35〜95質量%、当該ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基含有化合物を3〜60質量%および光重合開始剤を0.1〜20質量%の割合で含有する、請求項5に記載の光硬化性樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、非晶性ポリオレフィンなどの透明なプラスチックからなるフィルムは、光学用途をはじめとして広範な用途に用いられているが、これらのプラスチックフィルムは、表面の硬度が低く、耐傷つき性に劣っているため、硬い物質との接触、引っ掻きなどによって表面に傷がつき易い。このため、これらのプラスチックフィルムの表面に、耐傷つき性や耐摩耗性に優れるハードコート層(ハードコート膜)を設けることが広く行なわれている。
ハードコート層を設けたハードコートフィルムの代表的な用途の1つとして、各種ディスプレイの表面保護フィルムが挙げられるが、表面保護フィルムとして用いられるハードコートフィルムに対しては、表面硬度が高くて耐傷つき性に優れること、低カール性で反りがないこと、伸びがあり亀裂などが生じず破損しにくいこと、耐候性に優れていて黄変などの変色が生じないことなどが求められている。
【0003】
ハードコートフィルムは、一般に、上記で挙げたようなプラスチックからなる基材フィルムの表面に、多官能(メタ)アクリレートモノマーを主体とする光硬化性樹脂組成物や多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する光硬化性樹脂組成物の硬化膜層を形成することにより製造されているが、硬化時の収縮や熱による収縮が大きく、得られるハードコートフィルムに反り(カール)が発生し易かったり、また光硬化性樹脂組成物の種類などによっては黄変などの変色が生じ易かったり、硬さ、耐傷つき性、耐亀裂性などが十分でないという問題があった。
【0004】
ハードコートフィルムでは、ハードコート層の厚さが小さくなるにつれてハードコート層の硬度が低くなる傾向がある。ハードコートフィルムの硬度を上げるためにハードコート層の厚さを大きくすることが考えられるが、ハードコート層の厚さを大きくすると、ハードコート層の形成時にハードコート層の収縮が生じたり、基材の湾屈曲時にハードコート層が追従できずに割れてしまうなどの問題が生じ易く、そのようなハードコートフィルムは曲げ加工などを伴う成形用途には適さない。
かかる点から、近年、成形加工を行うのに適したハードコートフィルムが開発され、それを用いた携帯電話およびパソコンなどの製品が上市されている。しかし、ハードコートフィルムを用いた製品に対してはより高い意匠性が求められており、それに伴って微細な模様などをも確実に再現できる成形加工性により優れるハードコートフィルム、それに用いるためのハードコート剤の開発が急務である。
【0005】
例えば、2,4−トリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートにペンタエリスリトールトリアクリレートを反応させて得られるアクリロイルオキシ基を6個有するウレタンアクリレートを含むハードコート膜用光硬化性樹脂組成物が知られており、この光硬化性樹脂組成物から形成された硬化膜は硬度が高く、基材との密着性に優れているとされている(特許文献1)。しかし、この硬化膜は伸びが小さいため、破損しやすく、またトルエンジイソシアネートに由来するウレタン化アクリレートを含む光硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜は耐候性に劣り、黄変などの変色が生じやすい。
【0006】
また、表面硬度が高く、反りの生じないハードコート膜を形成することを目的として、6官能ウレタンアクリレート、4官能以上の(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリレート基を有するシランカップリング剤で表面処理されたコロイダルシリカ、光重合開始剤および希釈溶媒を含有するハードコート用組成物が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、このハードコート用組成物では、(メタ)アクリレート基を有するシランカップリング剤で表面処理されたコロイダルシリカの製造に当って、水混和性アルコールと水を共沸によって留去するなどの工程が必要であるため、ハードコート用組成物の製造に手間がかかり、生産性などの点で問題がある。
【0007】
また、近年、アイフォンに代表されるスマートフォンの需要が高まっており、今後ますます需要の増加が見込まれている。スマートフォンの表示部材および外装に対しては高級化および高品質化が求められており、特に干渉縞(モアレ)の抑制に対する要求が高まってきている。干渉縞の発生を防ぐための改善策として、ポリエステルフィルムなどの基材フィルム上に易接着層を形成し、その上にハードコート層を更に形成し、その際に、易接着層を、基材フィルムと屈折率が近く且つ基材フィルムと良く密着するものを用いることが知られている。しかし、そのような従来技術による場合は、易接着層はポリエステルフィルムなどからなる基材フィルムとの密着性を有しているが、ハードコート層との密着性に劣っていることが多く、そのため、基材フィルムとハードコート層が剥離する現象が起こり易いというのが実情であった。
【0008】
上記のような状況下において、本発明者らは、各種基材との接着性に優れ、硬度が高くて耐傷つき性に優れ、低カール性で反りが生じにくく、しかも耐候性に優れていて黄変などの変色の生じない硬化膜を形成することのできる光硬化性樹脂組成物およびそれに用いるウレタン(メタ)アクリレートを提供すべく研究を行ってきた。そして、そのような研究の結果、(メタ)アクリロイルオキシ基を4個以上有する従来にない新規なウレタン(メタ)アクリレート、当該ウレタン(メタ)アクリレートを含有する光硬化性樹脂組成物、および当該光硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜を開発して先に出願した(特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)は、下記の一般式(I)で表され、アクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を両者の合計で1分子当り4個以上有する。
【0021】
上記の一般式(I)で表されるウレタン(メタ)アクリレート(I)において、R
1およびR
2は、1個または2個以上のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有する1価の有機基であり、R
1およびR
2は同じであってもまたは互いに異なっていてもよい。ウレタン(メタ)アクリレート(I)の製造の容易性、反応性などの点からは、R
1とR
2が同じ基であることが好ましい。
【0022】
そのうちでも、原料の入手容易性、ウレタン(メタ)アクリレート(I)の製造の容易性、反応性などの点から、ウレタン(メタ)アクリレート(I)におけるR
1およびR
2は、それぞれ独立して、1個または2個以上のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有する1価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、1個または2個以上のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有するアルキル基(すなわち、アルキル基の水素原子の1個または2個以上がアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基で置換されたアルキル基)であることが好ましい。
その際のアルキル基は、鎖状アルキル基または分岐したアルキル基のいずれであってもよい。
限定されるものではないが、R
1およびR
2の好ましい具体例としては、以下の式(a)〜(d)で表される、1個または2個以上のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基を有するアルキル基(1個または2個以上のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基で置換されたアルキル基)を挙げることができる。
【0023】
【化4】
[上記の式(a)中、Eはアルキレン基であり、式(a)〜(d)中、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基である。]
【0024】
上記の式(a)で表される1個のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有するアルキル基において、式(a)中のアルキレン基Eは、炭素数2〜10の鎖状または分岐したアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4の鎖状または分岐したアルキレン基であることがより好ましい。アルキレン基Eは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基の他に、場合によりフェノキシ基、アルコキシ基、アリルオキシ基などで置換されていてもよい。アルキレン基Eの具体例としては、エチレン基、鎖状のプロピレン基(トリメチレン基)、分岐したプロピレン基、鎖状のブチレン基(テトラメチレン基)、分岐したブチレン基、鎖状のペンチレン基(ペンタメチレン基)、分岐したペンチレン、フェノキシプロピレン基などを挙げることができる。そのうちでも、アルキレン基Dは、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基であることが、ウレタン(メタ)アクリレート(I)を製造するための原料の入手性、反応性などの点から好ましい。
【0025】
上記の一般式(I)で表されるウレタン(メタ)アクリレート(I)において、R
3およびR
4は、下記の一般式(II);
【0026】
【化5】
で表される基[以下、「基(II)」ということがある]である。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレート(I)が、R
3およびR
4としてその両末端に有する2個の基(II)は、同じであってもまたは異なっていてもよく、製造の容易性の点からR
3とR
4が同じであることが好ましい。
基(II)において、R
5は水素原子またはメチル基であり、Dは2価の脂肪族炭化水素基であり、aは1〜10の数であり、nは1〜5の数である。原料化合物の入手容易性、ウレタン(メタ)アクリレート(I)の製造の容易性、取り扱い性などの点から、基(II)においては、Dは、炭素数2〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基或いは炭素数5〜10の脂環式アルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、またaは2〜8の数であることが好ましく、2〜6の数であることがより好ましく、nは1〜5の数であることが好ましく、1〜4の数であることがより好ましい。
【0028】
上記の一般式(I)で表されるウレタン(メタ)アクリレート(I)において、mは1〜10の数であり、ウレタン(メタ)アクリレート(I)を製造するための原料の入手性、取り扱い、反応性などの点から、mは1〜5の数であることが好ましく、mは1であることがより好ましい。
【0029】
限定されるものではないが、ウレタン(メタ)アクリレート(I)の具体例としては、以下の式(I−1)で表される化合物を挙げることができる。ここで、下記の式(I−1)中、Aはアクリロイルオキシ基を示し、R
3およびR
4は基(II)を示す。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリレート(I)は、下記の一般式(α)で表される、2個以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有するジイソシアネート化合物[以下「ジイソシアネート化合物(α)」という]に、下記の一般式(β)で表される化合物[以下、「ラクトン変性(メタ)アクリレート(β)」という]を反応させることによって製造することができる。
【0032】
【化7】
[式(α)および式(β)中、R
1、R
2、R
5およびDは上記したのと同じ基であり、a、mおよびnは上記したのと同じ数を示す。]
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレート(I)の製造に当たっては、ジイソシアネート化合物(α)の1種または2種以上と、ラクトン変形(メタ)アクリレート(β)の1種または2種以上を用いることができる。
ウレタン(メタ)アクリレート(I)を製造する際のジイソシアネート化合物(α)とラクトン変性(メタ)アクリレート(β)の反応割合は、一般に、(α):(β)=1:2〜1:4のモル比、特に1:2〜1:2.5のモル比であることが、目的とするウレタン(メタ)アクリレート(I)を円滑に製造できる点から好ましい。
【0034】
ジイソシアネート化合物(α)とラクトン変性(メタ)アクリレート(β)を反応させるに当たっては、触媒を使用しなくてもウレタン(メタ)アクリレート(I)を円滑に製造することができるが、必要に応じて、反応時間の短縮などを目的として触媒を用いてもよい。触媒としては、塩基性触媒または酸性触媒のいずれかを用いることができる。
塩基性触媒としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン類、トリブチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィンなどのフォスフィン類を挙げることができる。
また、酸性触媒としては、例えば、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリブトキシアルミニウム、トリチタニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラブトキシドなどの金属アルコキシド類、塩化アルミニウムなどのルイス酸類、2−エチルヘキサン錫、オクチル錫トリラウレート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫ジアセテートなどの錫化合物を挙げることができる。
そのうちでも、少量にて反応を加速しうる点から、酸性触媒が好ましく用いられ、特に前記した錫化合物の1種または2種以上がより好ましく用いられる。
触媒の使用量は、ジイソシアネート化合物(α)およびラクトン変性(メタ)アクリレート(β)の合計質量に対して0.01〜1質量%が好ましく、0.02〜0.5質量%がより好ましい。
【0035】
ジイソシアネート化合物(α)とラクトン変性(メタ)アクリレート(β)を反応させる際の温度は、反応速度を上げて効率よく目的とするウレタン(メタ)アクリレートを得るという点から、10〜100℃が好ましく、50〜95℃がより好ましい。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレート(I)の製造に用いられるジイソシアネート化合物(α)は、BASF社製「Laromer LR9000」などとして市場で販売されている。また、ウレタン(メタ)アクリレート(I)の製造に用いられるラクトン変性(メタ)アクリレート(β)は、ダイセル株式会社製の「PLACCEL FAIDDM」(ε―カプロラクトン1モル変性2−ヒドロキシエチルアクリレート)、「PLACCEL FA2D」(ε―カプロラクトン2モル変性2−ヒドロキシエチルアクリレート)などとして市場で販売されている。かかる点から、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)の製造に当たっては、市場で販売されているそのようなジイソシアネート化合物(α)およびラクトン変性(メタ)アクリレート(β)を用いることができる。
しかしながら、それに限定されず、ジイソシアネート化合物(α)およびラクトン変性(メタ)アクリレート(β)を合成し、それらを用いて本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)を製造してもよい。
【0037】
例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(I)の製造に用いられるラクトン変性(メタ)アクリレート(β)は、下記の一般式(γ)で表される水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル[以下、「水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(γ)」という]に、下記の一般式(δ)で表されるラクトン[以下、「ラクトン(δ)」ということがある]を付加反応させることによって製造することができる。
【0038】
【化8】
[式(γ)および式(δ)中、R
5およびDは上記したのと同じ基であり、aは上記したのと同じ数を示す。]
【0039】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(γ)とラクトン(δ)の反応割合は、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(γ)1モルに対してラクトン(δ)が1〜5モル付加するような量で用いることが必要であり、一般的には、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(γ)1モルに対して、ラクトン(δ)を1〜4モルの割合で用いることによって、ラクトン変性(メタ)アクリレート(β)を円滑に製造することができる。
【0040】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(γ)が有する水酸基は、ラクトンとの反応性、ラクトンとの反応により得られるラクトン変性(メタ)アクリレート(β)とジイソシアネート化合物(α)との反応性の点から、1級水酸基または2級水酸基であることが好ましく、1級水酸基であることがより好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(γ)の好ましい例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキサンアクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキサンメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレートなどを挙げることができる。ラクトン変性(メタ)アクリレート(β)の製造に当たっては、前記した水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
また、ラクトン変性(メタ)アクリレート(β)の製造に用いるラクトン(δ)としては、例えば、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、ε―カプロラクトンなどを挙げることができ、ラクトン変性(メタ)アクリレート(β)の製造に当たっては、前記したラクトンの1種または2種以上を用いることができる。
【0042】
ジイソシアネート化合物(α)と(メタ)アクリレート化合物(β)との反応によって得られる本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)は、粘度が低くて取り扱い性に優れており、光硬化したときに、反りが極めて小さく、しかも伸びがあって耐破損性に優れる硬化膜やその他の硬化物を形成する。その上、ウレタン(メタ)アクリレート(I)の硬化物は、耐候性に優れ、各種材料との接着性にも優れている。
そのため、ウレタン(メタ)アクリレート(I)は、光重合開始剤などを添加して光硬化性樹脂組成物にして、種々の用途に有効に使用することができる。
ウレタン化アクリル(I)を含有する本発明の光硬化性樹脂組成物は、光重合性化合物(活性エネルギー線重合性化合物)として、ウレタン(メタ)アクリレート(I)のみを含有していてもよいし、またはウレタン(メタ)アクリレート(I)と共に他のエチレン性不飽和基含有化合物を含有していてもよい。ウレタン(メタ)アクリレート(I)と共に他のエチレン性不飽和基含有化合物を含有することにより、一般に光硬化性樹脂組成物の粘度がより低下し、取り扱い性が一層良好になることが多い。
【0043】
本発明の光硬化性樹脂組成物に用い得る他のエチレン性不飽和基含有化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート(I)以外の、エチレン性不飽和基を有する化合物であればいずれでもよく、そのうちでも、ウレタン(メタ)アクリレート(I)以外の、分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレートが、ウレタン(メタ)アクリレート(I)との共重合性が良好で、相溶性に優れる点から好ましく用いられる。
【0044】
分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドまたはε−カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(I)以外のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、または2種以上を組わせて用いてもよい。
なお、本明細書中における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方を意味する。
【0045】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)は、本出願人が先に出願した特許文献3に記載されている下記の一般式《i》;
【0046】
【化9】
(式中、R
a、R
b、R
cおよびR
dはそれぞれ独立して1個または2個以上のアクリロイルオキシおよび/またはメタクリロイルオキシ基を有する1価の有機基であり、mは1〜5の数を示す。)
で表されるウレタン(メタ)アクリレート[以下、ウレタン(メタ)アクリレート《i》」ということがある]と相容性に優れており、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)と当該ウレタン(メタ)アクリレート《i》の両方を含む光硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート《i》に基づく高い硬度と本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)に基づく極めて小さな反りと優れた伸びを兼ね備える硬化膜などの光硬化物を形成する。
【0047】
光硬化性樹脂組成物中に、ウレタン(メタ)アクリレート(I)と共に他のエチレン性不飽和基含有化合物を含有させる場合は、光硬化性樹脂組成物の低粘度化(塗工性の向上)、伸びのある硬化物の形成、硬化膜の基材への接着性などの点から、ウレタン(メタ)アクリレート(I)、他のエチレン性不飽和基含有化合物および光重合開始剤の合計質量に基づいて、ウレタン(メタ)アクリレート(I)を35〜95質量%、更には40〜90質量%、特に45〜85質量%の割合で含有し、他のエチレン性不飽和基含有化合物を3〜60質量%、更には5〜55質量%、特に10〜50質量%の割合で含有することが好ましい。
【0048】
本発明の光硬化性樹脂組成物中に含有させる光重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によって光重合開始作用を示す公知の光重合開始剤のいずれもが使用でき、そのうちでも、光硬化性樹脂組成物および硬化膜の可視領域における透明性を確保するために、UV吸収の最大波長ピークが400nm以下のものが好ましく用いられる。
【0049】
本発明の光硬化性樹脂組成物で用い得る光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどを挙げることができ、また、ベンゾフェノンおよび/または2−イソプロピルチオキサントンと重合促進剤の2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートおよび/またはエチル−4−ジメチルアミノベンゾエートといった組み合わせも使用できる。
本発明で、これらの光重合開始剤を単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そのうちでも、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンおよび2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンのうちの1種または2種以上が、硬化物の黄変が少なく、硬化性に優れる点から好ましく用いられる。
【0050】
光硬化性樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート(I)、他のエチレン性不飽和基含有化合物および光重合開始剤の合計質量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。光重合開始剤の含有量が少なすぎると硬化不良となることがあり、一方多すぎると硬化物に臭気が残ったり、硬化物の硬度が低下することがある。
【0051】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を4個以上有する従来のウレタン(メタ)アクリレートに比べて粘度が大幅に低い。そのため、ウレタン(メタ)アクリレート(I)に対して適当な他のエチレン性不飽和基含有化合物を組み合わせることで、溶剤を配合しなくても塗工が十分に可能な、低い粘度を有する、ウレタン(メタ)アクリレート(I)を含有する無溶剤型の本発明の光硬化性樹脂組成物を調製することができる。
かかる点から、本発明の光硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有しても、または溶剤を含有しなくてもいずれでもよいが、光硬化性樹脂組成物の粘度を一層低下させて、取り扱い性、塗工性、基材との接着性などを一層向上させるために、必要に応じて溶剤、特に有機溶剤を含有していてもよい。
溶剤としては、ウレタン(メタ)アクリレート(I)、他のエチレン性不飽和基含有化合物および光重合開始剤を均一に溶解することができ、さらに光硬化性樹脂組成物を塗布する基材を膨潤させ得る溶剤が好ましく用いられる。また、光硬化性樹脂組成物を基材などに塗布した後、活性エネルギー線によって硬化を行なう前に溶剤を揮発させる必要があることから、溶剤の沸点は200℃以下であることが好ましい。
【0052】
本発明の光硬化性樹脂組成物に用い得る溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール系溶剤、前記グリコール系溶剤のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤、前記グリコール系溶剤のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテルなどのポリエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤を挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
溶剤の使用の有無、溶剤を使用する場合はその使用量は、光硬化性樹脂組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート(I)や他のエチレン性不飽和基含有化合物の種類や粘度、それらの含有量、光硬化性樹脂組成物の用途などに応じて決めるとよい。
光硬化性樹脂組成物を用いて塗膜を形成する場合は、光硬化性樹脂組成物の常温(25℃)における粘度が1〜20000mPa・sであることが好ましく、1〜10000mPa・sであることがより好ましく、1〜5000mPa・sであることがさらに好ましい。光硬化性樹脂組成物の粘度が前記範囲になるようにして、溶剤の使用の有無、溶剤の種類、溶剤の使用量などを決めるとよい。
【0054】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、所望により、レベリング剤、消泡剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光増感剤、重合禁止剤、顔料、染料などの各種添加成分を適宜配合することができる。
【0055】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(I)および光重合開始剤、場合により更に他のエチレン性不飽和基含有化合物、溶剤、さらには必要により前記した各種添加成分を所定の割合で配合し、均一に混合することによって調製することができる。
【0056】
本発明の光硬化性樹脂組成物は種々の用途に用いることができ、例えば、成形体の製造用、立体造形物の製造用、硬化膜の形成用、基材上にハードコート層を形成する際の基材とハードコート層との間の中間層の形成用、光硬化性樹脂組成物を光硬化して硬化物を製造する際に硬化物の反りを低減するための反り低減用配合成分、硬化物の伸びを増加させるための伸び増加用配合成分などとして有効に用いることができる。
例えば、ポリエステルフィルムなどの基材上に、特許文献3に記載されている前記したウレタン(メタ)アクリレート《i》またはその他の光硬化性成分を含有する光硬化性樹脂組成物を用いてハードコート層を形成する際に、基材層と当該ハードコート層との間に本発明のウレタン化アクリル(I)を含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化膜層を中間層として形成させると、本発明の光硬化性樹脂組成物から形成された中間層は、ハードコート層および基材層の両方に対して良好に接着し、しかも硬化時の反りが極めて小さく且つ硬化物(硬化した中間層)の伸びがよいため、ハードコート層/中間層/基材層からなる積層体の反りを防止しながら、当該積層体に曲げ加工やエンボス加工などを施した際にハードコート層における破損や亀裂の発生などを防いで、目的とする加工品を円滑に製造することができる。
【0057】
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて基材上に硬化膜層を形成するに当っては、液状にした本発明の光硬化性樹脂組成物を基材上に施して、光硬化性樹脂組成物が溶剤を含有している場合には溶剤を揮発させて、基材上に溶剤を含まない光硬化性樹脂組成物層を形成し、次いで紫外線などの活性エネルギー線を照射して硬化させて基材上に硬化膜層を形成する方法が好ましく採用される。
その際の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂などからなるフィルム、シート、板状体、場合によって所定の形状を有するブロック状体などの成形体を挙げることができ、基材の形状やサイズ、厚さなどは特に限定されない。また、基材の表面は、平面状、曲面状、その他の形状であってもよく、更に平滑であってもまたは粗面化されていてもよい。
本発明の光硬化性樹脂組成物を基材上に施すに当っては、塗工法(バーコーター、メイヤーバー、エアナイフなどを用いるもの)、印刷法(グラビア印刷、リバースグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など)、ディップ法、スピンコート法のいずれもが採用できる。
基材上に形成させる硬化膜層の厚さ(硬化後の膜厚)は、活性エネルギー線を照射して形成される硬化膜層の反り防止(カール防止)、充分な膜強度、生産コストなどの観点から、0.5〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましく、1〜20μmであることが更に好ましい。
【0058】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて成形体を製造する場合は、光硬化性樹脂組成物を用いて成形体を製造するために従来から採用されている方法および装置のいずれもが採用できる。
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて立体造形物を製造する場合は、光硬化性樹脂組成物を用いて光造形して立体造形物を製造するために従来から採用されている光造形方法および光造形装置のいずれもが採用できる。
【0059】
本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化させる際に照射する活性エネルギー線は、光重合開始剤を活性化できるエネルギー量を有するエネルギー光線であれば限定されず、例えば、可視光線、紫外線、電子線、X線、放射線などを挙げることができる。そのうちでも、取り扱い性、経済性、工業化適正などの点から紫外線が好ましく使用され、その線源としては、紫外線レーザー(半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He−Cdレーザーなど)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED(発行ダイオード)、蛍光灯などを用いることができる。紫外線の照射量は、10〜5000mJ/cm
2が好ましく、100〜2000mJ/cm
2がより好ましい。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例、比較例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の例中、ウレタン(メタ)アクリレートの粘度の測定、光硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜層を有するポリエステルフィルムの耐カール性(反りの高さ)、硬化膜層の伸び率、鉛筆硬度、接着性および外観は、次のようにして測定または評価した。
【0061】
(1)ウレタン(メタ)アクリレートの粘度:
JIS K7117−2に準じて、測定試料の温度制御が可能な恒温水槽を付属した円錐−平板型回転粘度計(コーン・プレート型粘度計)を使用して、25℃における粘度を測定し、3回測定の平均値をその粘度の値とした。
【0062】
(2)耐カール性(反りの高さ):
試験片(表面に硬化膜層を形成したポリエステルフィルム、縦×横=10cm×10cm)を80℃の乾燥炉に1時間放置した後、23℃、50%RHの条件下で24時間養生した。水平な台上で、試験片の4辺の台から浮き上がった高さ(反りの大きさ)をそれぞれ測定して(単位;mm)、その平均値を採って耐カール性の評価を行った。当該平均値が大きい程、反りが大きく、耐カール性に劣っていることを示す。実用的には当該平均値が3.5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることが更に好ましい。
【0063】
(3)硬化膜の鉛筆硬度:
JIS K5600−5−4に準じ、芯の硬度が2B〜4Hの鉛筆を使用し、鉛筆を45度の角度に傾けて、鉛筆の上から750gの荷重をかけて、30mm/分の速度で、試験片(硬化膜を形成したポリエステルフィルム、縦×横=10cm×15cm)上の硬化膜を10mm程度引っ掻き(鉛筆を硬化膜上で10mm程度走行させ)、傷の付き具合を目視により確認した。同じ硬化膜に対して同じ硬さの鉛筆を使用して同じ試験を5回行って、5回のうち、1回も傷が付かないかまたは1回のみで傷が付いた時の鉛筆芯の硬さを、その硬化膜の鉛筆硬度とした。硬化膜の鉛筆硬度はHB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることが更に好ましく、2H以上であることが一層好ましい。
【0064】
(4)伸び率:
引張試験機(インストロン社製「5569型万能材料試験機」)を使用して、JIS K7127に準じて、試験片(硬化膜を形成したポリエステルフィルムを打抜きダイを用いて、チャック間距離が50mmで試験片タイプ5の形状に打抜いたもの)の縦方向の両端から20mmの位置で把持して、20mm/分の引張り測度で引っ張って、試験片の硬化膜層に亀裂が生じた際の伸び率(元の縦方向の寸法に対する伸びた寸法)(%)を測定した。亀裂が生じた際の伸び率の値が大きいほど硬化膜層の破損が生じにくいことを示す。
【0065】
(5)接着性:
試験片(硬化膜を形成したポリエステルフィルム、縦×横=10cm×15cm)の硬化膜層に、JIS K5600−5−6に準じて、1mm間隔で縦および横共に11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を形成し、碁盤目を形成した部分の全体を覆うようにしてセロハンテープ(幅×長さ=24mm×70mm)を表面に密着させた後、
セロハンテープを一気に剥がし、その時に剥離せずに基材(ポリエステルフィルム)上に残存したマス目の個数を数えて接着性の評価を行った。基材への接着性の点からは、ポリエステルフィルム上に残存したマス目の個数が95個以上であることが好ましく、98個以上であることがより好ましい。
【0066】
(6)外観:
試験片(硬化膜層を形成したポリエステルフィルム)の硬化膜層の状態を目視により観察して、下記の評価基準によって評価した。
[硬化膜層の外観の評価基準]
○:透明性が高く、バーコーターによる縦筋やクラックがなく、良好。
×:バーコーターによる縦筋および/またはクラックがあり、不良。
【0067】
《実施例1》[ウレタンアクリレート(I−1)の製造]
(1) 冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、BASF社製「Laromer LR9000」[上記の一般式(α)で表されるジイソシアネート化合物(α)においてR
1およびR
2がいずれも2−アクリロイルオキシエチル基であり、mがほぼ1であるジイソシアネート化合物][以下「ジイソシアネート化合物(α−A)」という]51.7質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、50℃に昇温した後、ε−カプロラクトン1mol変性2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学株式会社製「PLACCEL FA1DDM」)[上記の一般式(β)で表されるラクトン変性(メタ)アクリレート(β)においてR
5が水素原子、Dがエチレン基、aが5、nが1である化合物]48.2質量部を1時間かけて滴下した後、90℃で5時間攪拌して反応を行った。この反応液中の残存イソシアネート量をフーリエ変換赤外光度計(FT−IR)(SHIMAZU社製「IRAffinity−1」)を使用して測定したところ、ウレタン化反応が定量的に行われ、最終的にはイソシアネート量がほぼゼロになり、アクリロイル基とウレタン結合が分子内に導入されたことが確認されて、上記の一般式(I)で表されるウレタン(メタ)アクリレート(I)において、R
1およびR
2が2−アクリロイルオキシエチル基であり、mがほぼ1であり、R
3およびR
4が式:−O−(CH
2)
5−CO−O−CH
2CH
2−O−CO−CH=CH
2で表される基であるウレタンアクリレート[以下「ウレタンアクリレート(I−1)」という]が99.9質量部得られた。
(2) 上記(1)で得られたウレタンアクリレート(I−1)の粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、13.6Pa・s/25℃であった。
【0068】
《実施例2》[ウレタンアクリレート(I−2)の製造]
(1) 冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、実施例1で使用したのと同じジイソシアネート化合物(α−A)(BASF社製「Laromer LR9000」)41.7質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、50℃に昇温した後、ε−カプロラクトン2mol変性2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学株式会社製「PLACCEL FA2D」)[上記の一般式(β)で表されるラクトン変性(メタ)アクリレート(β)においてR
5が水素原子、Dがエチレン基、nが2である化合物]58.2質量部を1時間かけて滴下した後、90℃で5時間攪拌して反応を行った。この反応液中の残存イソシアネート量をFT−IRを使用して測定したところ、ウレタン化反応が定量的に行われ、最終的にはイソシアネート量がほぼゼロになり、アクリロイル基とウレタン結合が分子内に導入されたことが確認されて、上記の式(I)で表されるウレタン(メタ)アクリレート(I)において、R
1およびR
2が2−アクリロイルオキシエチル基であり、mがほぼ1であり、R
3およびR
4が式:−[O−(CH
2)
5−CO]
2−O−CH
2CH
2−O−CO−CH=CH
2で表される基であるウレタンアクリレート[以下「ウレタンアクリレート(I−2)」という]が99.9質量部得られた。
(2) 上記(1)で得られたウレタンアクリレート(I−2)の粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、10.2Pa・s/25℃であった。
【0069】
《比較例1》[ウレタンアクリレート(B−1)の製造]
(1) 冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体43.0質量部質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、50℃に昇温した後、実施例1で使用したのと同じε−カプロラクトン1mol変性2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学株式会社製「PLACCEL FA1DDM」)56.6質量部を1時間かけて滴下した後、90℃で5時間攪拌して反応を行なった。この反応液中の残存イソシアネート量をFT−IRを使用して測定したところ、ウレタン化反応が定量的に行われ、最終的にはイソシアネート量がほぼゼロになり、下記の化学式(B−1)で表されるウレタンアクリレート[以下「ウレタンアクリレート(B−1)」という]99.6質量部が得られた。
【0070】
【化10】
(式中、Aはアクリロイルオキシ基を示す。)
(2) 上記(1)で得られたウレタンアクリレート(B−1)の粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、14.8Pa・s/25℃であった。
【0071】
《比較例2》[ウレタンアクリレート(B−2)の製造]
(1) 冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体33.8質量部質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、50℃に昇温した後、実施例2で使用したのと同じε−カプロラクトン2mol変性2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学株式会社製「PLACCEL FA2D」)66.1質量部を1時間かけて滴下した後、90℃で5時間攪拌して反応を行なった。この反応液中の残存イソシアネート量をFT−IRを使用して測定したところ、ウレタン化反応が定量的に行われ、最終的にはイソシアネート量がほぼゼロになり、下記の化学式(B−2)で表されるウレタンアクリレート[以下「ウレタンアクリレート(B−2)」という]99.9質量部が得られた。
【0072】
【化11】
(式中、Aはアクリロイルオキシ基を示す。)
(2) 上記(1)で得られたウレタンアクリレート(B−1)の粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、5.8Pa・s/25℃であった。
【0073】
《比較例3》[ウレタンアクリレート(C−1)の製造]
(1) 冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、イソホロンジイソシアネート31.5質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、50℃に昇温した後、実施例1で使用したのと同じε−カプロラクトン1mol変性2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学株式会社製「PLACCEL FA1DDM」)68.4質量部を1時間かけて滴下した後、90℃で10時間攪拌して反応を行った。この反応液中の残存イソシアネート量をFT−IRを使用して測定したところ、ウレタン化反応が定量的に行われ、最終的にはイソシアネート量がほぼゼロになり、下記の化学式(C−1)で表されるウレタンアクリレート[以下「ウレタンアクリレート(C−1)」という]99.9質量部が得られた。
【0074】
【化12】
(式中、Aはアクリロイルオキシ基を示す。)
(2) 上記(1)で得られたウレタンアクリレート(C−1)の粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、15.3Pa・s/25℃であった。
【0075】
《比較例4》[ウレタンアクリレート(C−2)の製造]
(1) 冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、イソホロンジイソシアネート23.1質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、50℃に昇温した後、実施例2で使用したのと同じε−カプロラクトン2mol変性2−ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学株式会社製「PLACCEL FA2D」)76.8質量部を1時間かけて滴下した後、90℃で10時間攪拌して反応を行った。この反応液中の残存イソシアネート量をFT−IRを使用して測定したところ、ウレタン化反応が定量的に行われ、最終的にはイソシアネート量がほぼゼロになり、下記の化学式(C−2)で表されるウレタンアクリレート[以下「ウレタンアクリレート(C−2)」という]99.9質量部が得られた。
【0076】
【化13】
(式中、Aはアクリロイルオキシ基を示す。)
(2) 上記(1)で得られたウレタンアクリレート(C−2)の粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように、9.1Pa・s/25℃であった。
【0077】
《比較例5》[ウレタンアクリレート(D−1)の製造]
(i) 冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、実施例1で使用したのと同じジイソシアネート化合物(α−A)(BASF社製「Laromer LR9000」)70.0質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、50℃に昇温した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート29.9質量部を1時間かけて滴下した後、90℃で10時間攪拌して反応を行った。この反応液中の残存イソシアネート量をFT−IRを使用して測定したところ、ウレタン化反応が定量的に行われ、最終的にはイソシアネート量がほぼゼロになり、下記の化学式(D−1)で表されるウレタンアクリレート[以下「ウレタンアクリレート(D−1)」という]99.9質量部が得られた。
【0078】
【化14】
(式中、Aはアクリロイルオキシ基を示し、mはほぼ1である。)
(2) 上記(1)で得られたウレタンアクリレート(D−1)の粘度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すように27.5Pa・s/25℃であった。
【0079】
【表1】
【0080】
上記の表1にみるように、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)の範疇に含まれる実施例1のウレタンアクリレート(I−1)および実施例2のウレタンアクリレート(I−2)は、アクリロイルオキシ基を1分子中に4個も有しているにも拘わらず、粘度が低くて取り扱い性に優れている。
【0081】
《実施例3》[ウレタンアクリレート(I−1)を含有する光硬化性樹脂組成物]
(1) 冷却管、攪拌装置及び温度計を取り付けた反応容器に、実施例1で得られたウレタンアクリレート(I−1)100質量部、光重合開始剤[1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製「イルガキュア184」]5質量部およびメチルエチルケトン105質量部を仕込み、40〜50℃で1時間撹拌して光硬化性樹脂組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を、バーコーターNo.4を用いて易接着処理ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「コスモシャインA−4300」、厚み=125μm)に塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、空気中で、高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「UVL−7000N」)を使用し、光量500mJ/cm
2で紫外線を照射して光硬化させて、表面に膜厚約3μmの硬化膜層(コート層)を有する表面コートポリエステルフィルムを製造した。
(3) 上記(2)で得られた表面コートポリエステルフィルムについて、光硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜層を有するポリエステルフィルムの耐カール性(反りの高さ)並びに硬化膜層の伸び率、鉛筆硬度、接着性および外観を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0082】
《実施例4》[ウレタンアクリレート(I−2)を含有する光硬化性樹脂組成物]
(1) ウレタンアクリレート(I−1)の代わりに、実施例2で得られたウレタンアクリレート(I−2)を用いた以外は実施例3の(1)と同じ操作を行って光硬化性樹脂組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例3の(2)と同様にして表面に膜厚約3μmの硬化膜層(コート層)を有する表面コートポリエステルフィルムを製造し、それにより得られた表面コートポリエステルフィルムについて、光硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜層を有するポリエステルフィルムの耐カール性(反りの高さ)並びに硬化膜層の伸び率、鉛筆硬度、接着性および外観を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0083】
《比較例6〜10》
(1) ウレタンアクリレート(I−1)の代わりに、比較例1で得られたウレタンアクリレート(B−1)、比較例2で得られたウレタンアクリレート(B−2)、比較例3で得られたウレタンアクリレート(C−1)、比較例4で得られたウレタンアクリレート(C−2)または比較例5で得られたウレタンアクリレート(D−1)を用いた以外は、実施例3の(1)と同じ操作を行ってそれぞれの光硬化性樹脂組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例3の(2)と同様にして表面に膜厚約3μmの硬化膜層(コート層)を有する表面コートポリエステルフィルムを製造し、それにより得られた表面コートポリエステルフィルムについて、光硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜層を有するポリエステルフィルムの耐カール性(反りの高さ)並びに硬化膜層の伸び率、鉛筆硬度、接着性および外観を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0084】
【表2】
【0085】
上記の表2にみるように、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(I)に属するウレタンアクリレート(I−1)またはウレタンアクリレート(I−2)を含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化膜層をポリエステルフィルム上に有する実施例3および実施例4の表面コートフィルムは、反りの高さが0.5mmと極めて小さくて耐カール性に極めて優れている。
しかも、ウレタンアクリレート(I−1)またはウレタンアクリレート(I−2)を含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化膜層をポリエステルフィルム上に有する実施例3および4の表面コートフィルムでは、硬化膜層の碁盤目試験の結果がいずれも100/100であって基材(ポリエステルフィルム)への接着性に優れている。
さらに、ウレタンアクリレート(I−1)またはウレタンアクリレート(I−2)を含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化膜層をポリエステルフィルム上に有する実施例3および4の表面コートフィルムは、硬化膜層の伸び率が45%または52%と高くて硬化膜層は破損しにくく、しかもその硬化膜層の鉛筆硬度がHB以上であって耐傷つきに優れ、外観にも優れている。
【0086】
それに対して、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を用いて製造したウレタンアクリレート(B−1)またはウレタンアクリレート(B−2)を含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化膜層をポリエステルフィルム上に有する比較例6および7の表面コートフィルムは、伸び率が59%以上であるが、硬化膜層の鉛筆硬度が2B以下であって硬度が低く、耐傷つき性に劣っている。
【0087】
また、イソホロンジイソシアネートを用いて製造したウレタンアクリレート(C−1)またはウレタンアクリレート(C−2)を含有する含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化膜層をポリエステルフィルム上に有する比較例8および9の表面コートフィルムも、伸び率が59%以上であるが、硬化膜層の鉛筆硬度が2B以下であって硬度が低く、耐傷つき性に劣っている。
【0088】
また、実施例1で使用したのと同じジイソシアネート化合物(α−A)(BASF社製「Laromer 9000」に2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られたウレタンアクリレート(D−1)を含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化膜層をポリエステルフィルム上に有する比較例10の表面コートフィルムは、鉛筆硬度がHであるものの、実施例3および4の表面コートフィルムに比べて、反りが大幅に高く、硬化膜層の伸び率が小さい。