(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のスケールから第1の検出ヘッドにより第1の測長目盛を読み取ることにより得られる第1の波長の検出信号から、上記第1の波長の1波長を内挿した最小分解能単位の第1の位置信号を生成して出力する第1の信号処理部と、
第2のスケールから第2の検出ヘッドにより第2の測長目盛を読み取ることにより得られる第2の波長の検出信号から第2の位置信号を生成して出力する第2の信号処理部と、
上記第1の検出ヘッドにより得られる上記第1の波長の検出信号から第3の位置信号を生成して出力する第3の信号処理部と、
上記第2の信号処理部より得られる第2の位置信号と上記第3の信号処理部より得られる第3の位置信号とを比較する第1の比較処理部と
を備え、
上記第1の比較処理部による比較結果に基づいて異常を検出することを特徴とする位置検出装置。
上記第2の信号処理部では、上記第2の検出ヘッドにより得られる上記第2の波長の検出信号について、自然数で上記第2の波長を除した単位長さ毎に第1のカウント値を累積加算することにより上記第2の位置信号を生成し、
上記第3の信号処理部では、上記第1の検出ヘッドにより得られる上記第1の波長の検出信号について、自然数で上記第1の波長を除した単位長さ毎に第2のカウント値を累積加算することにより上記第3の位置信号を生成し、
上記第1のカウント値に対応する単位長さを該第1のカウント値で除した結果得られた長さと、上記第2のカウント値に対応する単位長さを該第2のカウント値で除した結果得られた長さとが同一となる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の位置検出装置。
上記第3の信号処理部では、上記第1の検出ヘッドにより得られる上記第1の波長の検出信号について、上記第1の波長を自然数で除した長さ毎に第2のカウント値を累積加算することにより上記第3の位置信号を生成し、
上記第2の比較処理部では、上記第1の信号処理部による上記第1の位置信号の最小分解能単位毎のカウント結果と上記第3の信号処理部より得られる第3の位置信号の累積加算結果とを比較し、
上記第2のカウント値に対応する単位長さを該第2のカウント値で除した結果得られた長さが上記最小分解能の整数倍と同一となることを特徴とする請求項2記載の位置検出装置。
【背景技術】
【0002】
近年、計算機内蔵の数値制御装置(CNC)を用いた工作機械(数値制御工作機械)が普及し、加工分野における自動化、省力化が推進されている。
【0003】
数値制御工作機械は、対象物を移動させる駆動機構と、その対象物の現在位置を測定するポジションセンサと、その位置情報により駆動機構を制御するCNCコントローラで構成されている。
【0004】
ポジションセンサには、直線位置や移動距離を検出するリニアエンコーダと回転角度を検出するロータリーエンコーダがある。
【0005】
磁気式スケールを例にすると、スケール材の磁気パターン上に磁界強度で抵抗値が変化するMR素子を設けた検出ヘッドを配置し移動させる。検出ヘッドには、移動方向判別のため1/4波長離して2つのMR素子が設けられる。この二つの信号出力は正弦波と余弦波の関係を持ち、XY軸にプロットすると磁気パターン一目盛分の移動距離で一周する円を描く。この円の回転方向で移動方向を検出し、累積回転数で移動距離を検出することができる。
【0006】
また更に円周上の現在角度をデジタル信号処理による内挿処理で求めることで、目盛間の更に詳細な位置検出が可能となり、分解能をあげている。この内挿処理の分割数によって、最少分解能=磁気パターン1目盛/分割数 が決定される。
【0007】
近年の重大危険事故回避/機能安全/信頼性向上の要求により、特に位置決め制御の基本情報となるポジションセンサ(位置検出装置)には、検出動作とその位置情報に対する機能安全/信頼性確保が必要となっている。
【0008】
電気機器の異常動作は重大な事故につながる場合があるので、各メーカは安全機能の充実が求められている。また、製品の開発,設計,生産,保守,廃棄の各段階において人体への危険性を許容範囲内に抑えるために厳しい安全規格が設けられている。例えば、IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)により制定された機能安全規格(IEC61508)などが策定されている。
【0009】
そこで、産業機械や工作機械などに装備される位置決め機構では、機能安全/信頼性を確保するために、ポジションセンサの内部処理を2重化し、それぞれの位置検出結果を比較して異常検出を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、産業機械や工作機械などに装備される位置決め機構において、機能安全/信頼性を確保するために、ポジションセンサの内部処理を2重化する場合、ヘッドから内挿処理回路、カウンタ、通信制御部まですべてを2重化するのが理想的だが内挿処理回路から通信制御部は規模が大きくコストも高いので、2重化はポジションセンサの大きさと価格に大きく影響する。
【0012】
また、機能安全の見地からはマイクロメートルオーダの誤差が人体に危険を及ぼすことは無く、ミリメートルオーダの異常検知で十分である。
【0013】
そこで、本発明は、上述の如き従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機能安全性を確保し、しかも、異常検出を行うための回路構成を簡略化した位置検出装置を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、第1のスケールから第1の検出ヘッドにより第1の測長目盛を読み取ることにより得られる第1の波長の検出信号から、上記第1の波長の1波長を内挿した最小分解能単位の第1の位置信号を生成し、第2のスケールから第2の検出ヘッドにより第2の測長目盛を読み取ることにより得られる第2の波長の検出信号から第2の位置信号を生成するとともに、上記第1の検出ヘッドにより得られる第1の波長の検出信号から第3の位置信号を生成して上記第2の位置信号と上記第3の位置信号とを比較することにより異常検出を行う。
【0016】
すなわち、本発明に係る位置検出装置は、第1のスケールから第1の検出ヘッドにより第1の測長目盛を読み取ることにより得られる第1の波長の検出信号から、上記第1の波長の1波長を内挿した最小分解能単位の第1の位置信号を生成して出力する第1の信号処理部と、第2のスケールから第2の検出ヘッドにより第2の測長目盛を読み取ることにより得られる第2の波長の検出信号から第2の位置信号を生成して出力する第2の信号処理部と、上記第1の検出ヘッドにより得られる上記第1の波長の検出信号から第3の位置信号を生成して出力する第3の信号処理部と、上記第2の信号処理部より得られる第2の位置信号と上記第3の信号処理部より得られる第3の位置信号とを比較する第1の比較処理部とを備え、上記第1の比較処理部による比較結果に基づいて異常を検出することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る位置検出装置は、例えば、上記第1の信号処理部より得られる第1の位置信号と上記第3の信号処理部より得られる第3の位置信号とを比較する第2の比較処理部を備え、上記第1の信号処理部により得られる第1の位置信号と上記第2の信号処理部により得られる第2の位置信号を出力するとともに、上記第1の比較処理部及び第2の比較処理部による両比較結果に基づいて異常を検出するものとすることができる。
【0018】
また、本発明に係る位置検出装置において、上記第2の信号処理部では、上記第2の検出ヘッドにより得られる上記第2の波長の検出信号について、自然数で上記第2の波長を除した単位長さ毎に第1のカウント値を累積加算することにより上記第2の位置信号を生成し、上記第3の信号処理部では、上記第1の検出ヘッドにより得られる上記第1の波長の検出信号について、自然数で上記第1の波長を除した単位長さ毎に第2のカウント値を累積加算することにより上記第3の位置信号を生成し、上記第1のカウント値に対応する単位長さを該第1のカウント値で除した結果得られた長さと、上記第2のカウント値に対応する単位長さを該第2のカウント値で除した結果得られた長さとが同一となるものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る位置検出装置において、上記第3の信号処理部では、上記第1の検出ヘッドにより得られる上記第1の波長の検出信号について、上記最小分解能単位の倍数となるように上記第1の波長を自然数で除した波長毎に当該第1の波長を除した該自然数を累積加算することにより上記第3の位置信号を生成し、上記第2の比較処理部では、上記第1の信号処理部による上記第1の位置信号の最小分解能単位毎のカウント結果と上記第3の信号処理部より得られる第3の位置信号の累積加算結果とを比較するものとすることができる。
上記第3の信号処理部では、上記第1の検出ヘッドにより得られる上記第1の波長の検出信号について、上記第1の波長を自然数で除した長さ毎に第2のカウント値を累積加算することにより上記第3の位置信号を生成し、上記第2の比較処理部では、上記第1の信号処理部による上記第1の位置信号の最小分解能単位毎のカウント結果と上記第3の信号処理部より得られる第3の位置信号の累積加算結果とを比較し、上記第2のカウント値に対応する単位長さを該第2のカウント値で除した結果得られた長さが上記最小分解能の整数倍と同一となるものとすることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る位置検出装置において、各信号処理部は、2進数の位置情報として表現した位置信号を出力し、上記比較部は、上記2進数の位置情報として表現した位置信号の最上位から所定の桁数のみを抽出した数値に位置信号の比較を行うものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、第1のスケールから第1の検出ヘッドにより第1の測長目盛を読み取ることにより得られる第1の波長の検出信号から、第1の信号処理部により上記第1の波長の1波長を内挿した最小分解能単位の第1の位置信号を生成し、第2のスケールから第2の検出ヘッドにより第2の測長目盛を読み取ることにより得られる第2の波長の検出信号から第2の信号処理部により第2の位置信号を生成するとともに、上記第1の検出ヘッドにより得られる第1の波長の検出信号から第3の信号処理部により第3の位置信号を生成して上記第2の位置信号と上記第3の位置信号とを第1の比較部で比較することにより異常検出を行うので、異常検出を行うための回路構成を簡略化することができる。さらに、上記第1の信号処理部より得られる第1の位置信号と上記第3の信号処理部より得られる第3の位置信号とを比較する第2の比較処理部を備え、上記第1の比較処理部及び第2の比較処理部による両比較結果に基づいて異常を検出することができ、簡単な構成で機能安全性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、例えば
図1のブロック図に示すような構成の位置検出装置100に適用される。
【0024】
この位置検出装置100は、スケール部10の第1のスケール10Aに記録されている第1の測長目盛をヘッド部20の第1の検出ヘッド20Aにより読み取って信号処理部30により第1の位置信号POS1を生成し、生成した第1の位置信号POS1を位置情報として外部のCNCコントローラ200に送るもので、上記第1のスケール10Aから第1の測長目盛を第1の検出ヘッド20Aにより読み取ることにより得られる第1の波長λ1の検出信号S1から、上記第1の波長λ1の1波長をN分割内挿して最小分解能単位λ1/Nの第1の位置信号POS1を生成する第1の信号処理部31Aを上記信号処理部30に備える。
【0025】
そして、この位置検出装置100は、2重化により機能安全性を確保するようにしたもので、上記スケール部10には、第2の測長目盛が記録された第2のスケール10Bが上記第1のスケール10Aと併設されており、また、上記ヘッド部20には、上記第2のスケール10Aに記録されている測長目盛を読み取る第2の検出ヘッド20Bが設けられている。さらに、上記信号処理部30には、上記第2の検出ヘッド20Bにより上記第2のスケール10Bから上記第2の測長目盛を読み取ることにより得られる第2の波長λ2の検出信号S2から第2の位置信号POS2を生成して出力する第2の信号処理部31Bと、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1から第3の位置信号POS3を生成して出力する第3の信号処理部31Cと、上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1、第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2、第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が供給される位置情報比較部32と、生成した第1の位置信号POS1と第2の位置信号POS2を外部のCNCコントローラ200に送る通信制御部33を備える。
【0026】
この位置検出装置100における信号処理部30では、上記第1の信号処理部31Aにより、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1からN分割内挿処理を施して最少分解能λ1/Nの精密位置情報である第1の位置信号POS1を生成し、また、上記第2の信号処理部31Bにより、上記第2の検出ヘッド20Bにより得られる上記第2の波長λ2の検出信号S2からラフなリダンダント位置情報である第2の位置信号POS2を生成するととともに、第3の信号処理部31Cにより、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1からラフなリダンダント位置情報である第3の位置信号POS3を生成する。
【0027】
そして、生成した第1の位置信号POS1、第2の位置信号POS2、第3の位置信号POS3に基づいて、位置情報比較部32において、機能安全に求められる誤差範囲であることを検証して、精密位置情報である第1の位置信号POS1とリダンダント位置情報である第2の位置信号POS2を通信制御部33を経由してシリアル通信により外部のCNCコントローラ200に送る。
【0028】
外部のCNCコントローラ200では、精密位置情報である第1の位置信号POS1とリダンダント位置情報である第2の位置信号POS2で異常判定を行うことができる。
【0029】
この位置検出装置100における信号処理部30には、例えば、
図2のブロック図に示すような構成の信号処理部30Aを用いることができる。
【0030】
この信号処理部30Aにおいて、上記第1の信号処理部31Aは、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1から、上記第1の波長λ1の1波長をN分割内挿して最小分解能単位λ1/Nの第1の位置信号POS1を生成して出力する内挿処理回路311Aからなる。
【0031】
また、上記第2の信号処理部31Bは、上記第2の検出ヘッド20Bにより得られる上記第2の波長λ2の検出信号S2から上記第2の波長λ2の1波長当たり1回の第1のトリガ信号TG1を生成して出力する第1のトリガ信号生成部311Bと、この第1のトリガ信号生成部311Bから出力される第1のトリガ信号TG1をカウントすることにより上記第2の波長λ2を分解能単位とする第2の位置信号POS2を生成して出力する第1のカウンタ312Bからなる。
【0032】
さらに、上記第3の信号処理部31Cは、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1から上記第1の波長λ1の1波長当たり1回の第2のトリガ信号TG2を生成して出力する第2のトリガ信号生成部311Cと、この第2のトリガ信号生成部311Cから出力される第2のトリガ信号TG2をカウントすることにより上記第1の波長λ1を分解能単位とする第3の位置信号POS3を生成して出力する第2のカウンタ32Cからなる。
【0033】
また、この信号処理部30Aにおいて、上記位置情報比較部32は、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が供給される第1の比較処理部321Aと、上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1が供給される第1の位置信号出力部322Aと、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2が供給される第2の位置信号出力部322Bとを備え、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が一致している場合に上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1を第1の位置信号出力部322Aから出力する。
【0034】
上記第1の比較処理部321Aは、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が不一致の場合に異常状態と判断して、異常状態を示す異常検出信号を上記第1の位置信号出力部322Aに出力して、上記第1の位置信号出力部322Aから上記第1の位置信号POS1が出力されるのを防止する。
【0035】
上記第1の位置信号出力部322Aは、上記第1の比較処理部321Aにより得られる異常検出信号が異常状態を示していない場合に、上記第1の信号処理部31Aより得られる第1の位置信号POS1を上記通信制御部33に出力する。また、上記第2の位置信号出力部322Bは、上記第2の信号処理部31Bより得られる第2の位置信号POS2を上記通信制御部33に出力する。
【0036】
ここで、λ1=λ2、すなわち、上記第1のスケール10Aと第2のスケール10Bに記録されている各測長目盛の波長が等しい場合には、上記第2のスケール10Bから第1のカウンタ312Bまでの系及び上記第1のスケール10Aから第2のカウンタ312Cまで系に異常がなければ、上記第1のカウンタ312Bと第2のカウンタ312Cの各カウント結果は一致するので、上記第1の比較処理部321Aは、上記第2の信号処理部31Bより得られる第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部31Cより得られる第3の位置信号POS3とを直接比較して、不一致の場合に異常検出信号を出力することができる。
【0037】
また、λ1≠λ2、すなわち、上記第1のスケール10Aと第2のスケール10Bに記録されている各測長目盛の波長が等しくない場合には、例えば、α=λ2/λ1として、第2のカウンタ312Cによるカウント結果に乗算器313により係数α乗じた結果を上記第1のカウンタ312Bによるカウント結果と比較することにより、不一致の場合に異常検出信号を出力することができる。
【0038】
また、
図3に示す信号処理部30Bのように、上記第2の信号処理部31Bでは、上記第2の検出ヘッド20Bにより得られる上記第2の波長λ2の検出信号S2について、第1のトリガ信号生成部311Bにおいて、上記第2の波長λ2を自然数mで除した単位長さλ2/m毎に第1のトリガ信号TG1を生成し、第1のトリガ信号TG1毎に第1のカウント値(例えば自然数m)を累積加算して上記第2の位置信号POS2を生成し、第3の信号処理部31Cでは、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1について、第2のトリガ信号生成部311Cにおいて、上記第1の波長λ1を自然数nで除した単位長さλ1/n毎に第2のトリガ信号TG2を生成し、第2のトリガ信号TG2毎に第2のカウント値(例えば自然数n)を累積加算して上記第3の位置信号POS3を生成することにより、第1の比較処理部321Aにおいて、上記第2の信号処理部31Bより得られる第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部31Cより得られる第3の位置信号POS3とを比較して、不一致の場合に異常検出信号を出力することができる。
【0039】
上記信号処理部30A,30Bでは、上記第1の信号処理部31Aにより生成される最小分解能単位λ1/Nの第1の位置信号POS1よりも粗い上記第2の波長λ2及びその自然数分の1を分解能単位とする第2の位置信号POS2と上記第1の波長λ1及びその自然数分の1を分解能単位とする第3の位置信号POS3を上記第1の比較処理部321Aで比較することにより、異常検出を行うことができ、機能安全性を確保し、しかも、異常検出のための構成を簡略化することができる。
【0040】
ここで、信号処理部30Aにおける乗算器313による乗算処理には膨大な乗算器を必要とするが、この信号処理部30Bでは、膨大な乗算器を必要とすることなく、異常検出を行うことができ、異常検出のための構成をさらに簡略化することができる。
【0041】
なお、機能安全の見地からはマイクロメートルオーダの誤差が人体に危険を及ぼすことは無く、ミリメートルオーダの異常検知で十分である。したがって、上記信号処理部30A,30Bのように、内挿回路を省いた測長目盛の変化点をカウントすることにより得られる第2の位置信号POS2と第3の位置信号POS3の比較で機能安全を満たせばよい。この場合、危険側故障率低減を目的とする機能安全では、第2の位置信号POS2と第3の位置信号POS3の生成と比較の単純化と簡単化を求めるので、測長目盛の波長の選択範囲は大きくなく、殆どの場合、同一波長を採用することになる。
【0042】
しかしながら、一般にポジションセンサの最少分解能は1、2、5、10といった切りの良い数字が求められ、精密位置情報である第1の位置信号POS1の数値表現は、最少分解能単位のバイナリカウントとなる一方で、測長目盛の波長は、そのポジションセンサの方式、信頼性、使用環境、製造都合など別の要因で決定されるため、測長目盛のカウント値である第2の位置信号POS2の最少分解能は第1の位置信号POS12のべき乗の関係となるとは限らない。
【0043】
したがって、
図4に示すように、内挿処理の最小分解能からくる第1の位置信号POS1のバイナリカウント表現と、測長目盛のカウント値である第2の位置信号POS2の表現単位が異なることになり、その数値比較には、数値単位の統一が必要となりポジションセンサまたはCNCコントローラでの乗算または除算の数学的処理が必要になる。
【0044】
この位置検出装置100では、上記信号処理部30として、例えば
図5のブロック図に示すような構成の信号処理部30Cを用いることにより、第1の位置信号POS1のバイナリカウント表現と、測長目盛のカウント値である第2の位置信号POS2の表現単位を統一することができる。
【0045】
この信号処理部30Cにおいて、第1の信号処理部31Aは、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる第1の波長λ1の検出信号S1から、上記第1の波長λ1の1波長をN分割内挿して最小分解能単位λ1/Nの第1の位置信号POS1を生成して出力する内挿処理回路311Aからなる。
【0046】
また、第2の信号処理部31Bは、上記第2の検出ヘッド20Bにより得られる上記第2の波長λ2の検出信号S2から上記第2の波長λ2の1波長当たり1回の第1のトリガ信号TG1を生成して出力する第1のトリガ信号生成部311Bと、この第1のトリガ信号生成部311Bから出力される第1のトリガ信号TG1毎に、上記第2の波長λ2を上記最小分解能単位λ1/Nの波長で除した数Kを加算値として累積加算することにより上記第2の位置信号POS2を生成して出力する第1のカウンタ312Bからなる。
【0047】
この第2の信号処理部31Bでは、上記第1のトリガ信号TG1毎に、上記加算値Kを累積加算することにより、上記第2の検出ヘッド20Bにより得られる上記第2の波長λ2の検出信号S2から、上記第2の波長λ2を上記最小分解能単位λ1/Nの波長で除した数Kの倍数で位置情報を表現した第2の位置信号POS2を生成する。
【0048】
また、第3の信号処理部31Cは、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1から上記第1の波長λ1の1波長当たり1回の第2のトリガ信号TG3を生成して出力する第2のトリガ信号生成部311Cと、この第2のトリガ信号生成部311Cから出力される第2のトリガ信号TG2毎に、加算値Nを累積加算することにより上記第3の位置信号POS3を生成して出力する第2のカウンタ312Cからなる。
【0049】
この第3の信号処理部31Cでは、上記第2のトリガ信号生成部311Cから出力される第2のトリガ信号TG2毎に、上記第2のカウンタ312Cにより、上記第1のカウンタ312Aにおける上記第1の波長λ1の1波長当たりのカウント値N、すなわち、上記第1の信号処理部31Aにおける上記第1の波長λ1の1波長の分割内挿数Nを累積加算して上記第3の位置信号POS3を生成する。
【0050】
すなわち、上記第3の信号処理部31Cでは、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1から、上記第1の波長λ1を上記最小分解能単位λ1/Nの波長で除した数Nの倍数で位置情報を表現した第3の位置信号POS3を生成する。
【0051】
さらに、この信号処理部30Aにおいて、上記位置情報比較部32は、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が供給される第1の比較処理部321Aと、上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1と上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が供給される第2の比較処理部321Bと、上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1が供給される第1の位置信号出力部322Aと、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2が供給される第2の位置信号出力部322Bとを備え、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が一致している場合に上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1を第1の位置信号出力部322Aから出力する。
【0052】
上記第1の比較処理部321Aは、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が不一致の場合に異常状態と判断して、異常状態を示す異常検出信号を上記第1の位置信号出力部322Aに出力して、上記第1の位置信号出力部322Aから上記第1の位置信号POS1が出力されるのを防止する。
【0053】
なお、この位置検出装置100において、第1、第2のスケール10A,10Bの測長目盛は、完全に正しく作成することは不可能で極微小な誤差を持って作成されている。さらに、検出ヘッド20A,20Bの側にも測定時の姿勢の変化などから完全な測定を行うことはできないという誤差要因がある。この位置検出装置100における異常検出では、これらの製造上、測定機構の構成の変化要因等を加味した想定の範囲内で一致するかどうかを比較する。また、波長λ1,λ2の異なる例の場合、2つの波長λ1,λ2は比較する時点でのトリガ位置が異なることになるため、測定の場所によっては値がずれるのが正常であり、この方法の場合はその範囲も設定しての異常検出になる。しかしながら、冒頭に説明したように機能安全上必要なレベルからは十分に小さい範囲での設定となる。
【0054】
上記第2の比較処理部321Bは、上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1と上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3が不一致の場合に異常状態と判断して、異常状態を示す異常検出信号を上記第1の位置信号出力部322Aに出力して、上記第1の位置信号出力部322Aから上記第1の位置信号POS1が出力されるのを防止する。
【0055】
上記第1の位置信号出力部322Aは、上記第1の比較処理部321A及び第2の比較処理部321Bにより得られる各異常検出信号がともに異常状態を示していない場合に、上記第1の信号処理部31Aより得られる第1の位置信号POS1を上記通信制御部33に出力する。また、上記第2の位置信号出力部322Bは、上記第2の信号処理部31Bより得られる第2の位置信号POS2を上記通信制御部33に出力する。
【0056】
この信号処理部30Cにおいて、上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1の位置情報のバイナリ表現と、上記第2の信号処理部31Bにより得られる第2の位置信号POS2の位置情報のバイナリ表現は統一されたものとなっている。また、上記第1の信号処理部31Aにより得られる第1の位置信号POS1の位置情報のバイナリ表現と、上記第3の信号処理部31Cにより得られる第3の位置信号POS3の位置情報のバイナリ表現は統一されたものとなっている。そして、上記位置情報比較部32は、上記第1の信号処理部31Aにより生成した第1の位置信号POS1、上記第2の信号処理部31Bにより生成した第2の位置信号POS2、上記第3の信号処理部31Cにより生成した第3の位置信号POS3に基づいて、機能安全に求められる誤差範囲であることを検証する。そして、精密位置情報である第1の位置信号POS1とリダンダント位置情報である第2の位置信号POS2を上記通信制御部33を経由してシリアル通信により外部のCNCコントローラ200に送る。
【0057】
ここで、上記信号処理部30Cにおける具体的な処理内容を付して
図6のブロック図に示すように、この位置検出装置100において、第1のスケール10Aと第2のスケール10Bに異なる波長λ1,λ2の測長目盛が記録されており、例えば、第1の波長λ1が160μmで第2の波長λ2が80μmであるとし、第1の信号処理部30Aにおける分割内挿数Nを16000として16000分割内挿処理を施して、第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1から、最小分解能λ1/N=160μm/16000=10nmの第1の位置信号POS1を生成するものとした場合、
上記信号処理部30Cでは、上記各加算値N,Kを
N=16000
K=8000
として、上記第2の信号処理部30Bにより第2の位置信号POS2を生成し、上記第3の信号処理部30Cにより第3の位置信号POS3を生成する。
【0058】
すなわち、上記第3の信号処理部30Cにおいて、例えば、上記第2のトリガ信号生成部311Cから上記第1の波長λ1の1波長毎に第2のトリガ信号TG2を1回出力し、上記第1の波長λ1の1波長毎に加算値N=16000を第2のカウンタ312Cにより累積加算して上記第3の位置信号POS3を生成することにより、上記第3の信号処理部30Cにより生成される上記第3の位置信号POS3と上記第1の信号処理部30Cにより生成される上記最小分解能単位の第1の位置信号POS1の単位表現を一致させることができ、上記第2の比較処理部40Bでは、上記第1の信号処理部30Aによる最小分解能単位のカウント結果として得られる上記第1の位置信号POSの最小分解能単位毎のカウント結果と上記第3の信号処理部30Cよる累積加算結果と得られる第3の位置信号POS3を比較することにより、異常検出信号を生成して出力することができる。
【0059】
また、上記第2の信号処理部30Bでは、上記第1のトリガ信号生成部311Bから上記第2の波長λ2の1波長毎に第1のトリガ信号TG1を1回出力し、上記第2の波長λ2の1波長毎に加算値K=8000を第1のカウンタ312Bにより累積加算して上記第2の位置信号POS2を生成することにより、上記第3の信号処理部30Cにより生成される上記第3の位置信号POS3と単位表現を一致させることができ、上記第1の比較処理部40Bにおいて、上記第2の信号処理部30Bにより得られる上記第2の位置信号POS2と上記第3の信号処理部30Cより得られる第3の位置信号POS3を比較することにより、異常検出信号を生成して出力することができる。
【0060】
ここで、上記第3の信号処理部30Cでは、倍数を2として、上記第2の信号生成部311Cから上記第1の波長λ1の1波長毎に第2のトリガ信号を2回出力し、上記第1の波長λ1の1/2波長毎に自然数8000を第2のカウンタ312Cにより累積加算することにより上記第3の位置信号POS3を生成するようにしても、上記第3の信号処理部30Cにより生成される上記第3の位置信号POS3と上記第1の信号処理部30Cにより生成される上記最小分解能単位の第1の位置信号POS1の単位表現を一致させることができ、上記第1の検出ヘッド20Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号について、上記最小分解能単位の倍数となるように上記第1の波長λ1を自然数で除した波長毎に上記最小分解能単位の倍数を累積加算することにより上記第3の位置信号POS3を生成することにより、上記第3の信号処理部30Cにより生成される上記第3の位置信号POS3と上記第1の信号処理部30Cにより生成される上記最小分解能単位の第1の位置信号POS1の単位表現を一致させて、上記第2の比較処理部40Bにおいて、上記第1の信号処理部30Aによる上記第1の位置信号POSの最小分解能単位毎のカウント結果と上記第3の信号処理部30Cより得られる第3の位置信号POS3の累積加算結果とを比較することができる。
【0061】
すなわち、この第3の信号処理部30Cでは、上記位置情報比較部40において、上記第1の位置信号POS1、第2の位置信号POS2、第3の位置信号POS3が機能安全に求められる誤差範囲であることの検証のため各位置信号POS1、POS2、POS3の比較を実施するに当り、本来の装置制御に使用される最少分解能からくる上記第1の位置信号POS1の数値単位と、機能安全のため測長目盛のカウント数値で表現された第2の位置信号POS2及び第3の位置信号POS3の単位を統一するために、波長λ1、λ2そのものをカウントして第2の位置信号POS2及び第3の位置信号POS3を生成するのではなく、測長目盛の波長を上記第1の位置信号POS1の最少分解能の倍数K(=N×λ2/λ1)および倍数N(=N×λ1/λ1)で表現し、測長目盛を検出する度に、その倍数Kまたは倍数Nを累積加減算させることで、第2の位置信号POS2及び第3の位置信号POS3の位置情報を得る処理を行うことにより、
図7に示すように、第1の位置信号POS1、第2の位置信号POS2、第3の位置信号POS3の単位表現を統一でき、その後の正常運転を判断するための位置情報比較を単純な回路で容易に行い、機能安全性を確保することができる。
【0062】
なお、上記位置検出装置100における測長方式には、従来より知られている光学/磁気/誘導/レーザなどの各種方式を採用することができる。その測長方式によらず、測長目盛と内挿処理をもつ測長システムであれば本発明を適用することができる。また、この発明の実施の形態における実施例の説明においては、異常検出の際に、第1の位置信号POS1、第2の位置信号POS2が出力されるのを防止する構成を用いて説明したが、信号の出力を防止せず、別途アラーム信号を出力するなど他の方法にて異常検出を後段のCNCコントローラ200に情報出力するなど、本発明は上記実施例に限定されず機能安全の要求仕様、CNCコントローラとの通信仕様等により決定すればよい。また、測長目盛が記録されたトラックすなわち上記スケール部10に備えられるスケールの数、測長目盛を検出するヘッドの数すなわち上記ヘット部20に備えられる検出ヘッド数は、限定されることは無く、機能安全の要求仕様により決定すれば良い。
【0063】
さらに、トリガ信号の生成に関しては、一波長あたりトリガ信号を一回生成するだけでなく、測長回路構成によって、多くのトリガ数/波長を生成することも可能である。
【0064】
例えば、上記第3の信号処理部30Cは、上記第1の検出ヘッド10Aにより得られる上記第1の波長λ1の検出信号S1について、上記最小分解能単位λ1/Nの倍数となるように上記第1の波長λ1の1波長を自然数nで除した波長毎λ1/nに該自然数nを累積加算することにより上記第3の位置信号POS3を生成することにより、上記第2の比較処理部30Bにおいて、上記第1の信号処理部30Aによる上記第1の位置信号POS1の最小分解能単位毎のカウント結果と上記第3の信号処理部30Cより得られる第3の位置信号POS3の累積加算結果とを比較することができる。
【0065】
また、測長目盛が複数の場合、その波長は同一のものである必要はなく、第1の位置信号POS1の最少分解能単位の倍数であれば良く、機能安全用累積カウンタにおいて、その波長ごとにその倍数を加減算すれば良い。この加減算される倍数が2のM乗の最大公約数を持つ時は、加減算の数値の下位Mビットと累積カウンタの下位Mビットが常に0となるので、加減算の数値と累積カウンタ下位Nビットを省略しても良い。すなわち、上記第1の波長λ1は、上記最小分解能の波長λ0の整数N倍の波長であり、上記第2の波長λ2は、上記最小分解能の波長λ0の整数M倍の波長であり、N/Mは2のべき乗とすることにより、第1の位置信号POS1、第2の位置信号POS2、第3の位置信号POS3の単位表現を簡単な処理で統一して比較することができる。したがって、上記第1の信号処理部30A、第2の信号処理部30B及び第3の信号処理部30Cから、それぞれ2進数の位置情報としてバイナリ表現した第1の位置信号POS1、第2の位置信号POS2及び第3の位置信号POS3を出力し、上記位置情報比較部32において、第2の比較処理部321Bにより、上記2進数の位置情報として表現した第1の位置信号POS1の最上位から所定の桁数のみを抽出した数値と上記2進数の位置情報として表現した第3の位置信号POS3とを比較して、不一致の場合に異常検出信号を出力することができる。
【0066】
また、通信制御部33からCNCコントローラ200に送る第2の位置信号POS2の分解能は第1の位置信号POS1と同一である必要はなく、量子化誤差として±1ビットを容認できれば、CNCコントローラ200との通信負荷と、機能安全要求仕様に応じて第2の位置信号POS2の下位ビットを省略しても良い。