(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
<太陽電池用インターコネクタ材料>
図1は、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ材料100の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ材料100は、Al基材10の両面に、Niめっき層20、およびSnめっき層30を、この順に形成されてなる。
【0017】
本実施形態においては、Al基材10としては、引張強度が81〜100N/mm
2の範囲、好ましくは引張強度が87〜95N/mm
2の範囲にあるものを用いる。Al基材10として、引張強度が81N/mm
2未満のものを用いると、太陽電池用インターコネクタ材料100が柔らかくなり過ぎてしまい、ボビンやリールへの巻き付け性が低下するおそれがある。すなわち、太陽電池用インターコネクタ材料100が柔らか過ぎる場合には、ボビンやリールに巻き付ける際に大きな張力をかけることができず、得られる太陽電池用インターコネクタをボビンやリールに巻いた状態で運搬する場合に、巻ズレやほどけが生じるおそれがある。また、巻ズレやほどけを防止するために過度の張力を加えると、太陽電池用インターコネクタ材料100は、容易に塑性変形し、加工硬化や破断を引き起こすおそれもある。あるいは、ボビンやリールに巻きつけた際に、巻き癖がついてしまい、太陽電池セルへの接合が困難になるおそれもある。これらにより、太陽電池用インターコネクタ材料100が柔らか過ぎる場合には、巻き付け性が低下することとなる。一方、Al基材10として、引張強度が100N/mm
2を超えるものを用いると、太陽電池用インターコネクタ材料100が硬くなり過ぎてしまい、太陽電池セルにはんだ付けした際に、過度の応力がかかってしまい、太陽電池セルに反りが発生するという不具合や、太陽電池セルが割れてしまうという不具合が発生してしまう。
【0018】
なお、Al基材10の引張強度は、たとえば、25℃で、引張速度5mm/minの条件で測定することができる。
【0019】
また、本実施形態で用いるAl基材10としては、引張強度が上記範囲にあるものであればよく特に限定されないが、Alを主成分とし、Alに加えてCuを好ましくは0.05〜0.20重量%、特に0.10〜0.18重量%の割合で含有していることが好ましい。Cuを上記含有割合で含有していることにより、後述するNiめっき層20を形成する場合に、前処理であるZnの置換処理においてAl基材10にZnが付着しやすくなり、Niめっき層20や、Niめっき層20上に施されるSnめっき、およびはんだめっきを良好に形成することができる。そして、その結果としてAl基材10のはんだ濡れ性を高めることができる。また、Cuを上記含有割合で含有していることにより、固溶体強化、析出硬化による強度の向上や、耐熱性の向上、などの理由から、Al基材10として、引張強度が81N/mm
2以上と比較的高いものを用いた場合であっても、太陽電池用インターコネクタ材料100を太陽電池セルにはんだ接合する際に加わる応力を緩和することができ、接合時における太陽電池セルの変形および破損を有効に防止することができる。Cuの含有割合が少なすぎると、Al基材10にZnが付着し難くなることでAl基材10のはんだ濡れ性が低下し、また、太陽電池用インターコネクタ材料100を太陽電池セルに接合する際の応力緩和効果が低下する傾向にある。一方、Cuの含有割合が多すぎると、含有割合を増加させたことによる、Al基材10へのZnの付着性の向上効果、および太陽電池用インターコネクタ材料100を太陽電池セルに接合する際の応力緩和効果が飽和してしまうため、コスト的に不利になる傾向にある。
【0020】
さらに、本実施形態で用いるAl基材10は、Alの含有割合が99.0〜99.6重量%であることが好ましい。Alの含有割合を上記範囲とすることにより、太陽電池セルへの接合性を高めることができる。Alの含有割合が少なすぎると、太陽電池用インターコネクタ材料100が硬くなり過ぎ、接合時に太陽電池セルに過度の応力がかかってしまう傾向にあり、一方、Alの含有割合が多すぎると、太陽電池用インターコネクタ材料100が柔らかくなり過ぎ、ボビンやリールへの巻き付け性が低下するおそれがある。
【0021】
また、本実施形態で用いるAl基材10は、Al,Cuに加えて、Si,Fe,Mn,Cr,Zn,Tiなど他の成分が含有されていてもよく、これらの含有量は、通常、Al,Cuの含有量に対する残部となる。このような他の成分の含有量は、好ましくは0.10重量%以下である。他の成分の含有割合が多すぎると、太陽電池用インターコネクタ材料100が硬くなり過ぎてしまい、太陽電池セルへの接合性が低下する傾向にある。
【0022】
Al基材10の厚みは、特に限定されず、太陽電池用インターコネクタとして十分な導電性が確保できるような厚みとすればよいが、好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0023】
Niめっき層20は、Al基材10上に、Niめっきを施すことにより形成される。Al基材10上に、Niめっき層20を形成する方法としては、特に限定されないが、Al表面上に、Niめっき層を直接設けることは困難であるため、あらかじめ、Zn層を置換めっきによって形成した後、その上にNiめっき層20を形成するのが好ましい。以下、下地層としてZn層を形成する方法について、説明する。
【0024】
まず、Al基材10を構成するアルミニウム板について、脱脂処理を行ない、次いで、酸性エッチングおよびスマット除去を行った後、Znの置換めっきを行なう。Znの置換めっきは、硝酸浸漬処理、Zn置換処理の工程を経る、シングルジンケート処理を施すことにより行なわれる。この場合、各工程の処理後には水洗処理を実施する。なお、Zn置換処理により形成されるZn層は、Niめっきを施す際にわずかに溶解する。この際において、Al基材10として、Cuの含有割合が上記範囲にあるものを用いることにより、Al基材10にZnが付着しやすくなり、良好なZn層を形成することができ、さらにZn層の上に良好なNiめっき層20を形成することができることとなる。一方、Al基材10として、Cuの含有割合が上記範囲外にあるものを用いると、Al基材10にZnが付着し難くなり、Zn層上のNiめっき層20のめっき性が悪くなる。
【0025】
また、Zn層は、Niめっき後の状態における皮膜量が、好ましくは5〜500mg/m
2の範囲、より好ましくは30〜300mg/m
2の範囲となるように形成することが望ましい。なお、Zn層の皮膜量は、処理液中のZnイオンの濃度および浸漬する時間を適宜選択することで調整することができる。また、Znの置換めっきは、硝酸浸漬処理、Zn置換処理の工程を経て、再度Zn置換処理の工程を経る、ダブルジンケート処理を施すことにより行ってもよい。
【0026】
次いで、下地層としてのZn層の上に、Niめっきを施すことで、Niめっき層20を形成する。Niめっき層20は、電気めっき法または無電解めっき法のいずれのめっき法を用いて形成してもよい。Niめっき層20の厚みは、好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.2〜3.0μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmである。Niめっき層20は、後述するように、太陽電池用インターコネクタ材料100を構成するSnめっき層30上に、はんだ層を形成した際に、はんだ層を形成する際における熱により、Snめっき層30と拡散することで、Ni−Sn合金層を形成することとなる層である。
【0027】
Snめっき層30は、Niめっき層20上に、Snめっきを行なうことにより形成される。Snめっき層30は、電気めっき法または無電解めっき法のいずれのめっき法を用いて形成してもよい。Snめっき層30の厚みは、好ましくは0.5〜3.0μmである。Snめっき層30の厚みが薄すぎると、Snめっき層30上にはんだ層を形成する際における、はんだ濡れ性が低下し、良好なはんだ層を形成し難くなる。一方、Snめっき層30の厚みが厚すぎると、厚みを増加させることによる、はんだ濡れ性の向上効果が飽和してしまうため、コスト的に不利となる。また、Al基材10として、Cuの含有割合が上記範囲にあるものを用いると、Al基材10上に、Niめっき層20およびSnめっき層30が良好に形成され、これにより、はんだ濡れ性が向上し、これにより、はんだ層をより良好に形成することができる。
【0028】
<太陽電池用インターコネクタ>
図2は、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200の構成を示す図である。本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200は、
図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を用い、太陽電池用インターコネクタ材料100のSnめっき層30上に、はんだ層50を形成することにより製造され、
図2に示すように、Al基材10の両面に、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50を、この順に形成されてなる。
【0029】
はんだ層50は、
図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を構成するSnめっき層30上に、溶融はんだめっきを施すことにより形成することができる。なお、本実施形態においては、溶融はんだめっきにより、はんだ層50を形成することにより、はんだ層50を形成した際における熱により、
図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を構成するNiめっき層20とSnめっき層30との間で拡散が起こり、これにより、
図2に示すように、はんだ層50の下に、Sn−Ni合金層40が形成されることとなる。
【0030】
なお、はんだ層50を形成する際における、溶融はんだめっきの浴温は、好ましくは140〜350℃であり、より好ましくは180〜300℃である。また、溶融はんだめっきを行なう際における浸漬時間は、好ましくは3〜15秒である。溶融はんだめっきの浴温が低すぎる場合や、溶融はんだめっきを行なう際における浸漬時間が短すぎる場合には、はんだ層50の形成が不十分となり、一方、溶融はんだめっきの浴温が高すぎる場合や、溶融はんだめっきを行なう際における浸漬時間が長すぎる場合には、はんだ層50に含まれるSn成分が、Al基材10まで拡散してしまい、AlとSnとの間で固溶硬化が起こってしまい、Sn−Ni合金層40の割れや、剥離が発生してしまう場合がある。
【0031】
はんだ層50の厚みは、特に限定されないが、好ましくは片面あたり10〜50μm、より好ましくは15〜40μmである。
【0032】
Sn−Ni合金層40は、上述したように、はんだ層50を形成する際に、
図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を構成するNiめっき層20とSnめっき層30との間で拡散が起こることにより形成される合金層である。本実施形態においては、Sn−Ni合金層40を構成することとなる熱拡散前のNiめっき層20の厚みは、好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.2〜3.0μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmであり、熱拡散前のNiめっき層20の厚みをこのような範囲とすることにより、熱拡散後のSn−Ni合金層40を、Al基材10の表面を覆うように、連続的に形成することが可能となる。すなわち、熱拡散後のSn−Ni合金層40を途切れ部分の無いような態様で形成することができる。そして、これにより、途切れ部分を起点として、Al基材10とSn−Ni合金層40との密着性が低下してしまい、Sn−Ni合金層40の割れや剥離が生じやすくなるという不具合や、加工時等に発生したクラックを介して、腐食物が進入した場合に、この途切れ部分41において腐食物に起因する電位差が生じてしまい、腐食が進行してしまうという不具合を有効に防止することができる。
【0033】
また、本実施形態においては、高周波グロー放電発光分光分析法により分析した際のSn−Ni合金層40のNi強度が、熱拡散前のNiめっき層20のNi強度に対して、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率で、0.15以上であることが好ましく、0.18以上であることがより好ましく、0.34以上であることがさらに好ましい。なお、該比率の上限は、特に限定されないが、通常、1以下である。
【0034】
「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率を上記範囲とすることにより、Sn−Ni合金層40中のSn成分が、Al基材10中に拡散することで発生するAlとSnとの間での固溶硬化を防止し、Sn−Ni合金層40の割れや剥離を防止することができる。
【0035】
なお、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率を上記範囲とする方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、熱拡散前のNiめっき層20の厚みを0.2μm以上とし、はんだ層50を形成する際における、溶融はんだめっきの浴温、および溶融はんだめっきを行なう際における浸漬時間を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
【0036】
なお、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200としては、
図2に示すように、Al基材10の上に、直接、Sn−Ni合金層40が形成されている構成に代えて、Al基材10の上に、Niめっき層20を介して、Sn−Ni合金層40が形成されているような構成であってもよい。特に、熱拡散前のNiめっき層20の厚みや、はんだ層50を形成する際における、溶融はんだめっきの浴温、および溶融はんだめっきを行なう際における浸漬時間によっては、Niめっき層20中へのSn成分の拡散が完全に進行しない場合もある。そのため、このような場合には、Al基材10と、Sn−Ni合金層40との間に、Niめっき層20が残存することとなる。
【0037】
なお、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200は、0.2%耐力が、好ましくは40〜80N/mm
2であり、より好ましくは、40〜70N/mm
2である。0.2%耐力が上記範囲にあることにより、接合時に太陽電池セルに加わる応力を緩和し、はんだ濡れ性を高め、太陽電池セルへの接合性を高めることができる。なお、0.2%耐力は、たとえば、25℃で、引張速度5mm/minの条件で測定することができる。
【0038】
本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200は、Al基材10として、引張強度が81〜100N/mm
2であるものを用いるものであるため、そのため、次のような効果を奏するものである。すなわち、本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200によれば、引張強度が81N/mm
2以上であることから、ボビンやリールへの巻き付け性の低下を有効に防止することができる。加えて、本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200によれば、引張強度が100N/mm
2以下であることから、接合時に太陽電池セルに加わる応力を緩和することができるため、接合時における太陽電池セルの変形および破損を有効に防止することができる。
【0039】
加えて、本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200は、はんだ層50を形成した際における熱により、Niめっき層20と、Snめっき層30との間で拡散が起こることにより形成されるSn−Ni合金層40を備えるものであるため、はんだ付けの熱履歴による、Sn−Ni合金層40の割れや剥離などの不具合の発生を有効に防止することができる。
【0040】
そのため、本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200を用い、太陽電池用インターコネクタ200と、太陽電池セルとをはんだ付けにより接続することにより得られるインターコネクタ付き太陽電池セルは、品質的に良好であり、しかも、コスト的にも優れたものである。
【0041】
なお、このような本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200としては、たとえば、長尺のAl板(コイル)の両面に、上述した方法にしたがい、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50を、この順に形成したものを、必要な幅にスリットすることにより得ることができる。このようにして得られる太陽電池用インターコネクタ200は、上下面に、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50が形成されている一方で、厚み方向を形成する面(スリット面)には、これらSn−Ni合金層40、およびはんだ層50が形成されていないこととなる。
【0042】
あるいは、本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200としては、たとえば、平角Al線の表面全面に、上述した方法にしたがい、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50を形成することにより得ることもできる。そして、この場合には、得られる太陽電池用インターコネクタ200は、上述した方法とは異なり、スリット工程を経ないため、上述した特許文献1(特開2006−49666号公報)に記載のインターコネクタと同様に、上下面および厚み方向を形成する面のいずれにも、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50が形成されたものとなる。
【0043】
なお、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200のサイズは、特に限定されないが、厚みが、通常、0.1〜0.7mm、好ましくは0.1〜0.5mmであり、幅が、通常、0.5〜10mm、好ましくは1〜6mmであり、また、長さについては、太陽電池の配列等に応じて適宜設定すればよい。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0045】
<実施例1>
Al基材10を形成するための材料として、Cuの含有割合が0.05重量%であり、Alの含有割合が99.6重量%、残部がMn、Zn、Si、Fe等であるアルミニウム板を準備した(厚さ0.3mm、幅40mm、長さ120mm)。そして、Al基材10を、アルカリ液で脱脂し、次いで硫酸中でエッチング処理を施し、次いで硝酸中で脱スマット処理を施した後、水酸化ナトリウム:150g/L、ロッシェル塩:50g/L、酸化亜鉛:25g/L、塩化第一鉄1.5g/Lを含む処理液中に浸漬してZn置換処理を行うことで、100mg/m
2の皮膜量で、Al基材上にZn層を形成した。
【0046】
次いで、Zn層を形成したAl基材10について下記条件にてニッケルめっきを行い、Zn層上に、厚さ0.5μmのNiめっき層20を形成した。
浴組成:硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル45g/L、ほう酸30g/L
pH:3〜5
浴温:60℃
電流密度:1〜5A/dm
2
【0047】
本実施例においては、Niめっき層20が形成されたAl基材10を用いて、Niめっき層20のめっき剥離性の評価を行った。めっき剥離性の評価は、具体的には、Niめっき層20上に、カッターナイフを用いてAl基材10に達するまで1.0mm間隔の碁盤目の疵を入れ、次いで碁盤目模様の中心にエリクセン試験機で7mmの張り出しを行い、セロテープ(登録商標)を用いて碁盤目張り出し部のフイルムの剥離状態を観察し、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。なお、Niめっき層20を形成した後にめっき剥離性の評価を行うのは、Niめっき層20が定着していなければ、Niめっき層20に重ねるSnめっき層30およびはんだ層50も定着しないためである。
○:Niめっき層20の剥離が確認できなかった。
×:Niめっき層20の剥離が発生した。
【0048】
次いで、Niめっき層20を形成したAl基材10について、下記条件にてスズめっきを行い、Niめっき層20上に、厚さ0.5μmのSnめっき層30を形成することで、
図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を得た。
浴組成:硫酸第一錫30g/L、硫酸70ml/L、適量の光沢剤および酸化防止剤
pH:1〜2
浴温:40℃
電流密度:2.5〜10A/dm
2
【0049】
次いで、得られた太陽電池用インターコネクタ材料100を、浴温を200℃に調整したSn−40%Pbはんだからなる溶融はんだめっき槽に、3秒間浸漬することで、厚み20μmのはんだ層50を形成することで、
図2に示す太陽電池用インターコネクタ200を製造した。なお、本実施例で製造した太陽電池用インターコネクタ200は、スリット前のものであり、太陽電池の配列等に併せて、スリットすることにより、太陽電池用インターコネクタとして適宜使用可能なものである。そして、得られた太陽電池用インターコネクタ200を用いて、引張強度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
引張強度は次の方法により測定した。すなわち、テンシロン(RTC−1350A、ORIENTEC社製)を用いて、25℃で、引張速度5mm/minの条件で、太陽電池用インターコネクタ200の最大引張荷重を平行部の断面積で除した値を引張強度として検出した(試験片はプレスで打ち抜いたJIS Z2241記載の5号試験片を用いた)。なお、本実施例の太陽電池用インターコネクタ200の構成においては、Al基材10が大部分を占めているため、太陽電池用インターコネクタ200の引張強度は、Al基材10単体の引張強度とほぼ等しい値となり、そのため、本評価により得られる引張強度は、Al基材10の引張強度と判断することができる。
【0051】
<実施例2〜7>
Al基材10を形成するための材料として、Cuの含有割合およびAlの含有割合が、それぞれCu:0.12重量%、Al:99.2重量%(実施例2)、Cu:0.07重量%、Al:99.2重量%(実施例3)、Cu:0.11重量%、Al:99.1重量%(実施例4)、Cu:0.14重量%、Al:99.0重量%(実施例5)、Cu:0.18重量%、Al:99.3重量%(実施例6)、およびCu:0.20重量%、Al:99.2重量%(実施例7)であるアルミニウム板を用いた以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用インターコネクタ200を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、これら実施例2〜7で用いたアルミニウム板は、Al,Cuの含有量に対する残部が、いずれもSi、Mn、Zn、Fe等で構成されたものであった。
【0052】
<比較例1〜4>
Cuの含有割合およびAlの含有割合を、それぞれCu:0.21重量%、Al:96.7重量%(比較例1)、Cu:0.24重量%、Al:96.0重量%(比較例2)、Cu:0.05重量%、Al:96.5重量%(比較例3)、Cu:0.03重量%、およびAl:99.6重量%(比較例4)であるアルミニウム板を用いた以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用インターコネクタ200を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、これら比較例1〜4で用いたアルミニウム板は、Al,Cuの含有量に対する残部が、いずれもSi、Mn、Zn、Fe等で構成されたものであった。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に、引張強度と、めっき剥離性の結果とを示した。引張強度が81〜100N/mm
2であり、かつ、Cuの含有割合が0.05〜0.20重量%であり、かつ、Alの含有割合が99.0〜99.6重量%であるAl基材を用いた実施例1〜7では、Niめっき層20の剥離は発生せず、Niめっき層20の形成性に優れていると判断できる。そして、実施例1〜7においては、Niめっき層20の形成性に優れていることから、その上に形成するSnめっき層30の形成性、およびさらにこの上に形成するはんだめっきの濡れ性にも優れるものと判断することができる。一方、引張強度が81N/mm
2未満、または、100N/mm
2を超えており、かつ、Cuの含有割合が0.05重量%未満である比較例4のAl基材を用いた場合には、Niめっき層20の剥離が発生する結果となり、Niめっき層20の形成性に劣る結果であった。そして、この結果より、比較例4においては、Niめっき層20の形成性に劣るため、その上に形成するSnめっき層30の形成性、およびさらにこの上に形成するはんだめっきの濡れ性に劣る結果となると判断することができる。
【0055】
<シリコン結晶ウェハの破損確認試験、およびAl基材10の0.2%耐力の測定>
引張強度が100N/mm
2である実施例5の太陽電池用インターコネクタ200を、幅2.0mmでスリットすることにより、太陽電池用インターコネクタ200のスリットサンプルを得た。そして、得られたスリットサンプルを用いて、太陽電池セルを構成するシリコン結晶ウェハにはんだ接合し、シリコン結晶ウェハの変形および破損を目視にて確認したところ、変形および破損が全く発生しておらず、良好な結果であった。
また、得られたスリットサンプルについて、テンシロン(RTC−1350A、ORIENTEC社製)を用いて、25℃で、引張速度5mm/minの条件で、0.2%耐力を測定したところ、77.2N/mm
2であった。
【0056】
ここで、用いるAl基材10の引張強度が高いほど、得られる太陽電池用インターコネクタ200は硬くなり、そのため、接合時にシリコン結晶ウェハにかかる応力が大きくなる傾向にあり、逆に、用いるAl基材10の引張強度が低いほど、接合時にシリコン結晶ウェハにかかる応力は小さくなることとなる。そのため、引張強度が100N/mm
2未満である実施例1〜4,6,7も、引張強度が100N/mm
2である実施例5と同様に、接合時における、シリコン結晶ウェハの変形および破損は発生しないものと予想される。
一方で、Al基材10として、引張強度が100N/mm
2を超えたものを用いている比較例1〜3においては、得られる太陽電池用インターコネクタ200は硬くなり過ぎてしまい、これにより、接合時にシリコン結晶ウェハにかかる応力が高くなり過ぎてしまい、シリコン結晶ウェハの変形、さらには破損が発生してしまうものと予想される。
【0057】
<巻き付け性>
また、実施例1〜7は、Al基材10の引張強度が、いずれも81N/mm
2以上(かつ、100N/mm
2以下)であり、ボビンやリールに巻き付けた際に、巻ズレ、ほどけ、巻き癖などの発生や、破断が起こらず、巻き付け性が高いと予想される。その一方で、Al基材10の引張強度が81N/mm
2未満である比較例4は、ボビンやリールに巻き付けた際に、巻ズレ、ほどけ、巻き癖などが発生するおそれや、破断するおそれがあり、巻き付け性が低いと予想される。