(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
(ハイブリッド駆動装置の構成)
以下に、本発明の実施形態(第一の実施形態)のハイブリッド駆動装置100を図面に基づいて説明する。なお、
図1において、破線は各種情報の伝達経路を示し、一点鎖線は電力の伝達経路を示している。ハイブリッド車両(以下、単に車両と省略する)は、ハイブリッド駆動装置100を備えている。本実施形態のハイブリッド駆動装置100は、エンジンEG、第一モータジェネレータMG1、第二モータジェネレータMG2、遊星歯車機構10、クラッチ20、第一インバータ31、第二インバータ32、バッテリ33、アクチュエータ50、及び制御部40を有している。なお、以下の説明において、切断状態にあるクラッチ20が接続状態になるまでのクラッチ20の状態を、クラッチ20の係合中と表現する。
【0031】
エンジンEGは、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であり、駆動輪Wl、Wrに回転駆動力を付与するものである。エンジンEGは、制御部40から出力される制御信号に基づいて、出力軸EG−1に回転駆動力を出力する。出力軸EG−1の近傍には、レゾルバ等で構成されたエンジン回転速度センサEG−2が配設されている。エンジン回転速度センサEG−2は、出力軸EG−1の回転速度であるエンジン回転速度ωeを検出して、その検出信号を制御部40に出力する。エンジンEGには、エンジンEGを冷却する冷却水の水温teを計測し、その検出信号を制御部40に出力する水温センサEG−3が設けられている。また、エンジンEGは、吸気ポートや各シリンダに燃料を噴射する燃料噴射装置(不図示)が設けられている。また、エンジンEGがガソリンエンジンである場合には、各シリンダには点火プラグ(不図示)が設けられている。
【0032】
クラッチ20は、出力軸EG−1と遊星歯車機構10の入力軸51との間に設けられ、出力軸EG−1と入力軸51を断接し、出力軸EG−1と入力軸51間の伝達トルクを電子制御可能な任意のタイプのクラッチである。本実施形態では、クラッチ20は、乾式単板ノーマルクローズクラッチであり、フライホイール21、クラッチディスク22、クラッチカバー23、プレッシャープレート24、ダイヤフラムスプリング25を有している。フライホイール21は、所定の質量を有する円板であり、出力軸EG−1が接続し、出力軸EG−1と一体回転する。クラッチディスク22は、その外縁部に摩擦部材22aが設けられた円板状であり、フライホイール21と離接可能に対向している。クラッチディスク22は、入力軸51と接続し、入力軸51と一体回転する。
【0033】
クラッチカバー23は、フライホイール21の外縁と接続しクラッチディスク22の外周側に設けられた円筒部23aと、フライホイール21との接続部と反対側の円筒部23aの端部から径方向内側に延在する円環板状の側周壁23bとから構成されている。プレッシャープレート24は、円環板状であり、フライホイール21との対向面と反対側のクラッチディスク22に離接可能に対向して配設されている。
【0034】
ダイヤフラムスプリング25は、所謂皿バネの一種で、その厚さ方向に傾斜するダイヤフラムが形成されている。ダイヤフラムスプリング25の径方向中間部分は、クラッチカバー23の側周壁23bの内縁と当接し、ダイヤフラムスプリング25の外縁は、プレッシャープレート24に当接している。ダイヤフラムスプリング25は、プレッシャープレート24を介して、クラッチディスク22をフライホイール21に押圧している。この状態では、クラッチディスク22の摩擦部材22aがフライホイール21及びプレッシャープレート24によって押圧され、摩擦部材22aとフライホイール21及びプレッシャープレート24間の摩擦力により、クラッチディスク22とフライホイール21が一体回転し、出力軸EG−1と入力軸51が接続されている。
【0035】
クラッチ20を収納するハウジング(不図示)内には、温度センサ26が取り付けられている。温度センサ26で検出されたハウジング内温度Thは、制御部40に入力される。
【0036】
アクチュエータ50は、制御部40の指令に基づいて、ダイヤフラムスプリング25の内縁部を、フライホイール21側に押圧又は当該押圧を解除し、クラッチ20伝達トルクを可変とするものである。アクチュエータ50は、本実施形態では、電動式である。アクチュエータ50が、ダイヤフラムスプリング25の内縁部を、フライホイール21側に押圧すると、ダイヤフラムスプリング25が変形して、ダイヤフラムスプリング25の外縁が、フライホイール21から離れる方向に変形する。すると、当該ダイヤフラムスプリング25の変形によって、フライホイール21及びプレッシャープレート24がクラッチディスク22を押圧する押圧力が徐々に低下し、クラッチディスク22とフライホイール21間の伝達トルクも徐々に低下し、出力軸EG−1と入力軸51が切断される。このように、制御部40は、アクチュエータ50を駆動することにより、クラッチディスク22とフライホイール21間の伝達トルクを任意に可変させる。
【0037】
第一モータジェネレータMG1は、駆動輪Wl、Wrに回転駆動力を付与するモータとして作動するとともに、車両の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても作動するものである。第一モータジェネレータMG1は、図示しないケースに固定された第一ステータSt1と、この第一ステータSt1の内周側に回転可能に設けられた第一ロータRo1とから構成されている。なお、第一ロータRo1の近傍には、第一モータジェネレータMG1(第一ロータRo1)の回転速度ωMG1rを検出し、検出した検出信号を制御部40に出力するレゾルバ等で構成された回転速度センサMG1−1が設けられている。
【0038】
第一インバータ31は、第一ステータSt1及びバッテリ33と電気的に接続されている。また、第一インバータ31は、制御部40と通信可能に接続されている。第一インバータ31は、制御部40からの制御信号に基づいて、バッテリ33から供給される直流電流を、昇圧するとともに交流電流に変換したうえで第一ステータSt1に供給し、第一モータジェネレータMG1で回転駆動力発生させ、第一モータジェネレータMG1をモータとして機能させる。また、第一インバータ31は、制御部40からの制御信号に基づいて、第一モータジェネレータMG1を発電機として機能させ、第一モータジェネレータMG1で発電された交流電流を、直流電流に変換するとともに、電圧を降下させて、バッテリ33を充電する。
【0039】
第二モータジェネレータMG2は、駆動輪Wl、Wrに回転駆動力を付与するモータとして作動するとともに、車両の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても作動するものである。第二モータジェネレータMG2は、図示しないケースに固定された第二ステータSt2と、この第二ステータSt2の内周側に回転可能に設けられた第二ロータRo2とから構成されている。
【0040】
第二インバータ32は、第二ステータSt2及びバッテリ33と電気的に接続されている。また、第二インバータ32は、制御部40と通信可能に接続されている。第二インバータ32は、制御部40からの制御信号に基づいて、バッテリ33から供給される直流電流を、昇圧するとともに交流電流に変換したうえで第二ステータSt2に供給し、第二モータジェネレータMG2で回転駆動力発生させ、第二モータジェネレータMG2をモータとして機能させる。また、第二インバータ32は、制御部40からの制御信号に基づいて、第二モータジェネレータMG2を発電機として機能させ、第二モータジェネレータMG2で発電された交流電流を、直流電流に変換するとともに、電圧を降下させて、バッテリ33を充電する。
【0041】
遊星歯車機構10は、エンジンEGの回転駆動力を、第一モータジェネレータMG1と後述のデファレンシャルDF側に分割するものであり、サンギヤ11、プラネタリギヤ12、キャリア13、及びリングギヤ14とから構成されている。サンギヤ11は、第一ロータRo1に接続され、第一ロータRo1と一体回転する。プラネタリギヤ12は、サンギヤ11の周囲に複数配設され、サンギヤ11と噛合している。キャリア13は、複数のプラネタリギヤ12を回転可能(自転可能)に軸支し、入力軸51に接続され、入力軸51と一体回転する。リングギヤ14は、リング状であり、その内周側にインナーギヤ14aが形成され、その外周側にアウトプットギヤ14bが形成されている。インナーギヤ14aは、複数のプラネタリギヤ12と噛合している。
【0042】
減速ギヤ60は、第一ギヤ61、第二ギヤ62、接続軸63とから構成されている。第一ギヤ61は、リングギヤ14のアウトプットギヤ14bと噛合するとともに、第二ロータRo2と一体回転する出力ギヤ71と噛合している。第二ギヤ62は、接続軸63によって第一ギヤ61と接続し、第一ギヤ61と一体回転する。なお、第二ギヤ62は、第一ギヤ61よりも径が小さく、歯数も少なく設定されている。第二ギヤ62は、入力ギヤ72と噛合している。
【0043】
デファレンシャルDFは、入力ギヤ72に伝達された回転駆動力を、駆動輪Wl、Wrにそれぞれの接続されたドライブシャフト75、76に分配するものである。以上説明した構成により、入力軸51は、遊星歯車機構10、減速ギヤ60、デファレンシャルDF、ドライブシャフト75、76を介して、駆動輪Wl、Wrに回転連結されている。なお、エンジンEGとクラッチ20との間には、クラッチ20とは別の第二のクラッチは存在しない。また、クラッチ20と駆動輪Wl、Wrとの間には、クラッチ20とは別の第二のクラッチは存在しない。
【0044】
制御部40は、ハイブリッド駆動装置100を統括制御するものであり、ECUを有している。ECUは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM及び不揮発性メモリー等の「記憶部」を備えている。CPUは、
図3〜
図9に示すフローチャートに対応したプログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、「記憶部」は各種センサからの検出値を記憶し前記プログラムを記憶している。なお、制御部40は、単体のECUで構成されていてもいいし、複数のECUで構成されていてもよい。
【0045】
制御部40は、アクセルペダル81の操作量を検出するアクセルセンサ82から、前記操作量の相対値を意味するアクセル開度Acの情報を取得する。また、制御部40は、車輪Wl、Wr(駆動輪に限らない)の回転速度を検出する車輪速センサ85、86から車輪速度Vr、Vlを取得し、当該車輪速度Vr、Vlに基づいて、車両の車速Vを算出する。そして、制御部40は、アクセル開度Ac及び車速Vに基づいて、「要求駆動力」を算出する。更に、制御部40は、ブレーキペダル83の操作量を検出するブレーキセンサ84から、前記操作量の相対値を意味するブレーキ開度Bkの情報を取得する。そして、制御部40は、ブレーキ開度Bkに基づいて、「要求制動力」を算出する。制御部40は、回転速度センサMG1−1から入力された第一モータジェネレータMG1の回転速度ωMG1r、第二モータジェネレータMG2の回転速度ωMG2r(車速Vから算出)、及びサンギヤ11とキャリア13間のギヤ比に基づいて、入力軸51(キャリア13)の回転速度である入力軸回転速度ωiを算出する。
【0046】
(電動走行モード及びスプリット走行モードの説明)
次に、
図2の共線図を用いて、「電動走行モード」及び「スプリット走行モード」を説明する。車両は、「電動走行モード」又は「スプリット走行モード」で走行し、両走行モードは走行中に切替可能となっている。「電動走行モード」は、第一モータジェネレータMG1及び第二モータジェネレータMG2の少なくとも一方のみの回転駆動力により走行するモードである。「スプリット走行モード」は、第一モータジェネレータMG1及び第二モータジェネレータMG2少なくとも一方の回転駆動力とエンジンEGの回転駆動力により走行するモードである。
【0047】
図2の共線図において、縦軸は、各回転要素の回転速度に対応している。
図2に示す0よりも上方の領域は正回転であり、0よりも下側の領域は負回転である。
図2において、sはサンギヤ11の回転速度、caはキャリア13の回転速度、rはリングギヤ14の回転速度を表している。つまり、sは第一モータジェネレータMG1の回転速度を表し、caは入力軸51の回転速度を表し、rは第二モータジェネレータMG2の回転速度や駆動輪Wl、Wr(車速)に比例する回転速度を表している。なお、クラッチ20が完全に係合すると、caの回転速度は、エンジンEGの出力軸EG−1の回転速度と同一の回転速度となる。また、sとcaの縦線の間隔を1とすると、caとrの縦線の間隔は遊星歯車機構10のギヤ比λ(サンギヤ11とインナーギヤ14aとの歯数比(サンギヤ11の歯数/インナーギヤ14aの歯数))となっている。このように、第一モータジェネレータMG1(第一ロータRo1)、入力軸51、及び第二モータジェネレータMG2は、相互に回転連結され、相互に関連して回転する。
【0048】
バッテリ33の残量が十分な場合において、第一モータジェネレータMG1及び第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみで、「要求駆動力」に達する場合には、車両は、「電動走行モード」で走行する。
【0049】
「電動走行モード」において、車両が第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみで走行する場合には、制御部40は、クラッチ20が切断状態となるようにアクチュエータ50を制御する。これにより、エンジンEGと入力軸51とが切断される。そして、制御部40は、第二インバータ32に制御信号を出力し、「要求駆動力」となるように、第二モータジェネレータMG2を駆動させる。この状態では、
図2(A)の実線で示すように、第二モータジェネレータMG2が正回転する。そして、エンジンEGは入力軸51から切断されているので、停止している(回転速度が0)(
図2(A)の(1)の状態)。この、第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみにより車両が走行する場合には、クラッチ20が切断状態にあるので、入力軸51が自由に回転できる状態となっている。(
図2(A)の(5))。このため、リングギヤ14に伝達される第二モータジェネレータMG2の回転駆動力が、入力軸51の自由な回転により、遊星歯車機構10内において空転し、第一モータジェネレータMG1に伝達されず、第一モータジェネレータMG1が回転しない(回転速度ωMG1rが0)(
図2(A)の(6))。このように、第一モータジェネレータMG1が回転しないので、第一モータジェネレータMG1の回転に伴う損失(第一ロータRo1のイナーシャトルク)の発生が防止され、車両の電費が向上する。
【0050】
車両が「電動走行モード」で走行中に、第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみでは、「要求駆動力」に達しない場合には、制御部40は、アクチュエータ50に制御信号を出力することにより、クラッチ20を係合させて、出力軸EG−1と入力軸51を接続させたうえで、第一インバータ31及び第二インバータ32に制御信号を出力し、「要求駆動力」となるように、第一モータジェネレータMG1及び第二モータジェネレータMG2を駆動させる。この状態では、
図2(A)の破線に示すように、第一モータジェネレータMG1が逆回転し(
図2(A)の(2)の状態)、第二モータジェネレータMG2が正回転し、エンジンEGが停止している(
図2(A)の(3)の状態)。この状態では、負トルクであるエンジンEGのフリクショントルクが、キャリア13を支持する反力受けとして機能している。このため、第一モータジェネレータMG1が出力することができる最大の回転駆動力は、第一モータジェネレータMG1の回転駆動力により入力軸51に伝達される回転トルクが、エンジンEGのフリクショントルク以下となる回転駆動力に限定される。
【0051】
第一モータジェネレータMG1及び第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみでは、「要求駆動力」に達しない場合や、バッテリ33の残量が少ない場合には、車両は「スプリット走行モード」で走行する。
【0052】
「スプリット走行モード」では、制御部40は、クラッチ20が係合状態となるように、アクチュエータ50を制御するとともに、エンジンEGで所定の回転駆動力が発生するように、エンジンEGを制御する。これにより、エンジンEGと入力軸51とが接続され、エンジンEGの回転駆動力が、キャリア13に入力される。そして、キャリア13に入力されたエンジンEGの回転駆動力は、サンギヤ11とリングギヤ14に分配されて伝達される。つまり、エンジンEGの回転駆動力は、第一モータジェネレータMG1と駆動輪Wr、Wlに分配される。
【0053】
「スプリット走行モード」では、エンジンEGは、効率が高い状態(燃料消費率の効率が高い状態)に維持される。この状態では、
図2(A)の一点鎖線で示すように、第一モータジェネレータMG1は、エンジンEGの回転駆動力が分配されて伝達して、正回転し(
図2(A)の(4))、発電する。これにより、第一モータジェネレータMG1は、負方向のモータジェネレータトルクTMG1をサンギヤ11に出力する。即ち、第一モータジェネレータMG1は、エンジントルクTEの反力を支持する反力受けとして機能し、これにより、エンジンEGの回転駆動力がリングギヤ14に分配されて、駆動輪Wl、Wrに伝達される。そして、第二モータジェネレータMG2は、第一モータジェネレータMG1が発電した電流や、バッテリ33から供給される電流によって駆動し、駆動輪Wl、Wrを駆動する。
【0054】
なお、車両が走行中に、制御部40が、アクセルペダル81が離された(アクセル開度Acが0)と判断した場合や、ブレーキペダル83が踏まれた(ブレーキ開度Bkが0より大きい)と判断した場合には、「回生制動」を実行する。「回生制動」では、原則的に、制御部40は、クラッチ20が切断状態となるようにアクチュエータ50を制御する。そして、制御部40は、第二インバータ32に制御信号を出力して、第二モータジェネレータMG2において回生制動力を発生させて発電させる。この際に、第二モータジェネレータMG2では、負方向の回転トルクを発生する。第二モータジェネレータMG2で発電された電流は、バッテリ33で充電される。このように、クラッチ20が切断されている状態で回生制動を実行するので、車両の運動エネルギーが、エンジンEGのフリクショントルクにより無駄に消費されない。なお、バッテリ33がフル充電である場合には、制御部40は、クラッチ20が接続状態となるようにアクチュエータ50を制御し、エンジンEGを回転させて、エンジンEGのフリクショントルク(所謂エンジンブレーキ)を車両の減速に利用する。
【0055】
(第一タッチ点検出開始処理)
次に、
図3のフローチャートを用いて、「第一タッチ点検出開始処理」について説明する。車両が走行可能な状態になると、S11において、制御部40は、車両の走行モードが「電動走行モード」であり、且つ、車両が第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみで走行又は車両が停車していると判断した場合には(S11:YES)、プログラムをS12に進め、車両が第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみで走行していないと判断した場合には(S11:NO)、S11の処理を繰り返す。
【0056】
S12において、制御部40は、「第一タッチ点検出開始処理」において、前回「タッチ点」(後述の「第二タッチ点検出開始処理」において検出することが決定された「タッチ点」を含む)を検出した時から、所定の経過時間である「第一規程時間」以上経過したと判断した場合には(S12:YES)、プログラムをS13に進め、前回「タッチ点」を検出した時から、「第一規程時間」以上経過していない判断した場合には(S12:NO)、プログラムをS11に戻す。
【0057】
S13において、制御部40は、エンジンEGの状態が起動状態であろうと停止状態であろうと関係無く、「タッチ点検出処理」を実行し、プログラムをS14に進める。なお、「タッチ点検出処理」については、
図7や
図8のフローチャートを用いて後で説明する。
S14において、制御部40は、後述するように「タッチ点」から所定量(例えば1.5mm)解放側に戻した「スタンバイ位置」に、クラッチ20を解放し、プログラムをS11に戻す。
【0058】
このように、第一タッチ点検出開始処理では、エンジンEGが停止状態であったとしても、「タッチ点」の検出を行うことができる。
【0059】
(第二タッチ点検出開始処理)
次に、
図4のフローチャートを用いて、「第二タッチ点検出開始処理」について説明する。車両が走行可能な状態になると、S21において、制御部40は、エンジンEGの始動条件が成立したと判断した場合には(S21:YES)、プログラムをS22に進め、エンジンEGの始動条件が成立していないと判断した場合には(S21:NO)、プログラムをS21の処理を繰り返す。なお、制御部40は、バッテリ33の残量が低下したと判断した場合や、「要求駆動力」が第一モータジェネレータMG1及び第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみでは不足すると判断した場合に、エンジンEGの始動条件が成立したと判断する。
【0060】
S22において、制御部40は、「第二タッチ点検出開始処理」において、前回「タッチ点」(上述の「第一タッチ点検出開始処理」において検出することが決定された「タッチ点」を含む)を検出した時から、所定の経過時間である「第二規程時間」以上経過したと判断した場合には(S22:YES)、プログラムをS23に進め、前回「タッチ点」を検出した時から、「第二規程時間」以上経過していないと判断した場合には(S22:NO)、プログラムをS24に進める。なお、S22における「第二規定時間」は、
図3の12における「第一規定時間」よりも短い時間に設定されている。
【0061】
S23において、「タッチ点検出処理」を実行し、プログラムをS24に進める。なお、「タッチ点検出処理」については、
図7や
図8のフローチャートを用いて後で説明する。
【0062】
S24において、制御部40は、クラッチ20の係合時における許容クラッチ発熱量Qtmax、エンジンEGのフリクショントルクTe、エンジンイナーシャIe、及び目標クラッチ同期時間tstに基づいて、係合開始時許容クラッチ差回転速度Δω_0maxを算出する。なお、係合開始時許容クラッチ差回転速度Δω_0maxとは、クラッチ20の係合開始時に許容されるクラッチ20の差回転速度(入力軸51と出力軸EG−1の差回転速度)である。なお、エンジンEG始動開始時には、エンジンEGは停止している(エンジンEGの回転速度が0)ので、係合開始時許容クラッチ差回転速度Δω_0maxは、入力軸51の回転速度を表している。以下の説明において、適宜、係合開始時許容クラッチ差回転速度Δω_0maxのことを、係合開始時の目標入力軸回転速度ωit_0と称す。
【0063】
なお、許容クラッチ発熱量Qtmaxは、クラッチ20の係合時に、許容されるクラッチ20の総発熱量であり、温度センサ26で検出されたハウジング内温度Thに基づいて算出される。また、エンジンEGのフリクショントルクTeは、水温センサEG−3が検出したエンジンEGの冷却水の水温teによって推定された油温に基づいて、算出される。また、エンジンイナーシャIeは、エンジンEGの回転部材の慣性モーメントであり、エンジンEGの回転部材には、クランクシャフト、コンロッド、ピストン、出力軸EG−1、フライホイール21、クラッチカバー23、プレッシャープレート24、ダイヤフラムスプリング25が含まれる。そして、エンジンイナーシャIeは、予め設定されている。また、目標クラッチ同期時間tstは、目標とするクラッチ20での同期時間であり、クラッチ20の係合開始時から出力軸EG−1と入力軸51の同期が完了するまでの経過時間tである。目標クラッチ同期時間tstは、クラッチ20の係合に伴うショックを考慮して、予め設定されている。
S24が終了すると、プログラムは、S25に進む。
【0064】
S25において、制御部40は、第一インバータ31に制御信号を出力し、入力軸回転速度ωiが係合開始時の目標入力軸回転速度ωit_0(係合開始時許容クラッチ差回転速度Δω_0max)となるように、第一モータジェネレータMG1の回転を回転制御する。まず、制御部40は、入力軸回転速度ωiが係合開始時の目標入力軸回転速度ωit_0となる第一モータジェネレータMG1の目標回転速度ωMG1tを算出する。具体的には、制御部40は、係合開始時の目標入力軸回転速度ωit_0及びリングギヤ14の回転速度ωrを、下式(1)に代入することにより、目標回転速度ωMG1tを算出する。
ωMG1t={(λ+1)×ωit_0−ωr}/λ…(1)
ωMG1t:第一モータジェネレータMG1の目標回転速度
λ:遊星歯車機構10のギヤ比((サンギヤ11の歯数)/(インナーギヤ14aの歯数))
ωit_0:係合開始時の目標入力軸回転速度(キャリア13の回転速度)
ωr:リングギヤ14の回転速度
なお、リングギヤ14の回転速度ωrは、車速Vや第二モータジェネレータMG2の回転速度に比例するので、制御部40は、車速V又は第二モータジェネレータMG2の回転速度に基づいて、リングギヤ14の回転速度ωrを算出する。或いは、直接リングギヤ14の回転速度ωrを検出することにしても差し支え無い。
【0065】
次に、制御部40は、回転速度センサMG1−1で検出される第一モータジェネレータMG1の回転速度ωMG1rに基づいて、第一インバータ31に制御信号を出力することにより、第一モータジェネレータMG1の回転速度ωMG1rが、上記算出した目標回転速度ωMG1tとなるようにフィードバック(PID)制御する。例えば、
図2(B)の実線で示すように、第一モータジェネレータMG1が停止(回転速度が0)している状態で(
図2(B)の(1)示)、現在の入力軸回転速度ωiが(
図2(B)の(2)示)、係合開始時の目標入力軸回転速度ωit_0(
図2(B)の(3)示)より大きい場合には、制御部40は、キャリア13の回転速度が係合開始時の目標入力軸回転速度ωit_0(
図2(B)の(3)示)となるように、第一モータジェネレータMG1の回転速度ωMG1rを、負回転側の目標回転速度ωMG1t(
図2(B)の(4)示)に制御する。これにより、クラッチ20が、係合開始時許容クラッチ差回転速度Δω_0maxに制御される。S25が終了するとプログラムをS26に進める。
【0066】
S26において、制御部40は、係合中におけるクラッチ20の目標となる伝達トルクである目標クラッチ伝達トルクTctを算出する。具体的には、制御部40は、下式(2)に、エンジンEGのフリクショントルクTe、エンジンイナーシャIe、係合開始時の目標入力軸回転速度ωit_0、目標クラッチ同期時間tstを代入することにより、目標クラッチ伝達トルクTctを算出する。
Tct=Te+Ie・ωit_0/tst…(2)
Tct:目標クラッチ伝達トルク
Te:エンジンEGのフリクショントルク
Ie:エンジンイナーシャ
ωit_0:係合開始時の目標入力軸回転速度(係合開始時許容クラッチ差回転速度)
tst:目標クラッチ同期時間
S26が終了すると、プログラムは、S27に進む。
【0067】
S27において、制御部40は、アクチュエータ50に制御信号を出力することにより、クラッチ20で発生するクラッチ伝達トルクが、S26で算出した目標クラッチ伝達トルクTctとなるように、フィードバック制御する。なお、制御部40は、温度センサ26によって検出されたハウジング内温度Thや、摩擦部材22aの発熱量の積算値、摩擦部材22aやクラッチ20全体の放熱量の積算値等に基づいて、現在の摩擦部材22aの温度であるクラッチ温度Tcrtを推定して取得する。そして、制御部40は、当該クラッチ温度Tcrtと、エンジン回転速度ωeと入力軸回転速度ωiとの差回転速度、及び、クラッチ押し付け荷重から、摩擦部材22aとフライホイール21間の摩擦力を算出し、当該摩擦力の変化に基づいて、アクチュエータ50に制御信号を出力して、クラッチ伝達トルクをフィードバック制御する。なお、クラッチ押し付け荷重は、クラッチディスク22がフライホイール21に押し付けられる荷重であり、制御部40は、アクチュエータ50に出力している制御信号により、クラッチ押し付け荷重を認識することができる。S27が終了すると、S28に進む。
【0068】
S28において、制御部40は、下式(3)に、係合開始時の目標入力軸回転速度ωit_0、目標クラッチ同期時間tst、クラッチ20の係合開始時からの経過時間t、現在のエンジン回転速度ωeを代入することにより、クラッチ20の係合中の目標入力軸回転速度ωitを更新する。
ωit=−ωit_0/tst・t+ωe+ωit_0…(3)
ωit:係合中の目標入力軸回転速度
ωit_0:係合開始時の目標入力軸回転速度
tst:目標クラッチ同期時間
t:クラッチ係合開始時からの経過時間
ωe:エンジン回転速度
S28が終了すると、プログラムはS29に進む。
【0069】
S29において、まず、制御部40は、S25と同様の手法により、キャリア13の回転速度がS28で算出した係合中の目標入力軸回転速度ωitとなる第一モータジェネレータMG1の目標回転速度ωMG1tを算出する。次に、制御部40は、回転速度センサMG1−1で検出される第一モータジェネレータMG1の回転速度ωMG1rに基づいて、第一インバータ31に制御信号を出力することにより、第一モータジェネレータMG1の回転速度が、上記算出した目標回転速度ωMG1tとなるようにフィードバック(PID)制御する。
S29が終了すると、プログラムは、S30に進む。
【0070】
S30において、制御部40は、「第一エンジン始動処理」を開始させる。この「第一エンジン始動処理」については、
図5のフローチャートを用いて説明する。
「第一エンジン始動処理」が開始すると、S30−1において、制御部40は、エンジンEGが始動済みと判断した場合には(S30−1:YES)、「第一エンジン始動処理」が終了し(
図4のS30が終了し)、プログラムを
図4のS31に進め、エンジンEGが始動済みで無いと判断した場合には(S30−1:NO)、プログラムをS30−2に進める。
【0071】
S30−2において、制御部40は、エンジン回転速度ωeが、エンジンEGを始動開始させるのに必要な回転速度である「始動開始回転速度」以上であると判断した場合には(S30−2:YES)、プログラムをS30−3に進め、エンジン回転速度ωeが「始動開始回転速度」より小さいと判断した場合には(S30−2:NO)、「第一エンジン始動処理」が終了し(
図4のS30が終了し)、プログラムを
図4のS31に進める。
【0072】
S30−3において、制御部40は、燃焼噴射装置で燃料を噴射させるとともに、点火プラグで点火させて、エンジンEGを始動させる。S30−3が終了すると、「第一エンジン始動処理」が終了し(
図4のS30が終了し)、プログラムは
図4のS31に進む。
【0073】
S31において、制御部40は、エンジン回転速度ωeと入力軸回転速度ωiが一致したと判断した場合には(S31:YES)、プログラムをS32に進め、エンジン回転速度ωeと入力軸回転速度ωiが一致していないと判断した場合には(S31:NO)、プログラムをS27に戻す。なお、エンジン回転速度ωeと入力軸回転速度ωiが一致している状態とは、エンジン回転速度ωeと入力軸回転速度ωiが同期している状態であり、クラッチ20が同期している状態を指す。
【0074】
S32において、制御部40は、アクチュエータ50に制御信号を出力して、クラッチ20を完全に係合させて、出力軸EG−1と入力軸51を完全に接続し、プログラムをS33に進める。
【0075】
S33において、制御部40は、「第二エンジン始動処理」を開始させる。この「第二エンジン始動処理」については、
図6のフローチャートを用いて説明する。「第二エンジン始動処理」が開始すると、S33−1において、制御部40は、エンジンEGが始動済みと判断した場合には(S33−1:YES)、「第二エンジン始動処理」が終了し(
図4のS33が終了し)、プログラムは
図4のS21に戻る。制御部40が、エンジンEGが始動済みで無いと判断した場合には(S33−1:NO)、プログラムをS33−2に進める。
【0076】
S33−2において、制御部40は、エンジン回転速度ωeが、上述した「始動開始回転速度」以上であると判断した場合には(S33−2:YES)、プログラムをS33−3に進め、エンジン回転速度ωeが「始動開始回転速度」より小さいと判断した場合には(S33−2:NO)、プログラムをS33−4に進める。
【0077】
S33−3において、制御部40は、燃焼噴射装置で燃料を噴射させるとともに、点火プラグで点火させて、エンジンEGを始動させる。S33−3が終了すると、「第二エンジン始動処理」が終了し(
図4のS33が終了し)、プログラムは
図4のS21に戻る。
【0078】
S33−4において、制御部40は、第一インバータ31に制御信号を出力することにより、第一モータジェネレータMG1の回転速度を増加させて、エンジン回転速度ωeを増加させる。S33−4が終了すると、プログラムは、S33−2に戻る。
【0079】
なお、エンジンEGが始動すると、制御部40は、エンジンEGに制御信号を出力して、エンジンEGにおいて所望の回転駆動力を発生されるとともに、第一インバータ31に制御信号を出力して、第一モータジェネレータMG1において発電を開始させることにより、車両は上述した「スプリット走行モード」で走行する。なお、上述した「第一タッチ点検出開始処理」と「第二タッチ点検出開始処理」は、車両が走行可能な状態となった場合に、それぞれ平行して実行される。
【0080】
このように、第二タッチ点検出開始処理では、「タッチ点」の検出のために、わざわざ第一モータジェネレータMG1を回転させることが無く、エンジンEGの始動の際に「タッチ点」を検出することにしているので、タッチ点の検出のために、無駄なエネルギーが消費されることが抑止される。
【0081】
(第一タッチ点検出開始処理と第二タッチ点検出開始処理を併せたタッチ点検出開始処理)
以下に、
図10のタイムフローを用いて、上述した「第一タッチ点検出開始処理」と「第二タッチ点検出開始処理」を併せたタッチ点検出開始処理について説明する。なお、
図10において、黒点は、タッチ点検出の実行を示している。
車両が「電動走行モード」で走行している又は車両が停車していると、
図3のS11でYESと判定され、前回の「タッチ点」検出から「第一規程時間」が経過すると(
図10の(1))、S12でYESと判定されて、「タッチ点」が検出される。
【0082】
前回「タッチ点」が検出されてから(
図10の(1))、「第二規程時間」が経過しても(
図10の(2))、車両が「電動走行モード」で走行又は車両が停車していると、エンジンEGの始動条件が成立しないので、
図4のS21でNOと判定され、「タッチ点」の検出は実行されない。
【0083】
前回「タッチ点」が検出されてから(
図10の(1))、「第一規程時間」が経過すると(
図10の(3))、
図3のS12でYESと判定されて、「タッチ点」が検出される。
【0084】
走行モードが「スプリット走行モード」に切り替わり(
図10の(4))、「第二規定時間」が経過しても(
図10の(5))、既にエンジンEGは起動しているので、
図4のS21でNOと判定され、「タッチ点」の検出は実行されない。
【0085】
前回「タッチ点」が検出されてから(
図10の(3))、「第一規程時間」が経過しても(
図10の(6))、車両が「スプリット走行モード」で走行又は停車しているので、
図3のS11でNOと判定され、「タッチ点」の検出は実行されない。
【0086】
走行モードが「電動走行モード」に切り替わると(
図10の(7))、
図3のS11でYESと判定され、既に前回「タッチ点」が検出されてから(
図10の(3))、「第一規程時間」が経過しているので、
図3のS12でYESと判定され、「タッチ点」が検出される。
【0087】
前回「タッチ点」が検出されてから(
図10の(7))、「第二規程時間」が経過しても(
図10の(8))、車両が「電動走行モード」で走行又は停車し、エンジンEGの始動条件が成立しないので、
図4のS21でNOと判定され、「タッチ点」の検出は実行されない。
【0088】
前回「タッチ点」が検出されてから(
図10の(7))、「第一規程時間」が経過すると(
図10の(9))、
図3のS11でYESと判定されて、S12でYESと判定されて、「タッチ点」が検出される。
【0089】
前回「タッチ点」が検出されてから(
図10の(9))、「第二規程時間」が経過しても(
図10の(10))、車両が「電動走行モード」で走行又は停車し、エンジンEGの始動条件が成立しないので、
図4のS21でNOと判定され、「タッチ点」の検出は実行されない。
【0090】
走行モードが、「スプリット走行モード」に切り替わると(
図10の(11))、エンジンEGの始動条件が成立するので、
図4のS21でYESと判定され、既に前回「タッチ点」が検出されてから(
図10の(9))、「第二規程時間」が経過しているので、
図4のS22でYESと判定されて、「タッチ点」が検出される。
【0091】
(第一の実施形態のタッチ点検出処理)
次に、
図7のフローチャートを用いて、「第一の実施形態のタッチ点検出処理」について説明する。
図3のS13や
図4のS23において、「タッチ点検出処理」の処理が開始すると、S51において、制御部40は、目標入力軸回転速度ωi2を設定する。この目標入力軸回転速度ωi2は、「タッチ点」を精度高く検出可能な入力軸51の回転速度である「許容回転速度」(例えば、400r.p.m.〜2000r.p.m.)の範囲内に設定される。本実施形態では、目標入力軸回転速度ωi2は、「許容回転速度」の平均(例えば、1200r.p.m.)に設定される。S51が終了すると、プログラムは、S52に進む。
【0092】
S52において、制御部40は、上述した
図4のS25と同様の処理により、第一モータジェネレータMG1の回転速度が、S51で設定した目標入力軸回転速度ωi2となるように、第一モータジェネレータMG1の回転速度を制御する。なお、入力軸51の回転速度は、車両の車速Vの変化によって変化する。つまり、
図2に示すように、入力軸51の回転速度は、車速Vと比例関係にある第二モータジェネレータMG2の回転速度と関連が有り、車速Vの変化により、入力軸51の回転速度が変化する。このS52において、入力軸51の回転速度が、目標入力軸回転速度ωi2となるように制御される。S52が終了すると、S53に進む。
【0093】
S53において、制御部40が、入力軸51の回転速度が、S51で設定した目標入力軸回転速度ωi2になっていると判断した場合には(S53:YES)、プログラムをS54に進め、入力軸51の回転速度が、目標入力軸回転速度ωi2になっていないと判断した場合には(S53:NO)、プログラムをS52に戻す。
【0094】
S54において、制御部40は、アクチュエータ50に制御信号を出力することにより、クラッチ20を所定量だけ係合側に制御する。なお、クラッチ20を所定量だけ係合側に制御するとは、クラッチディスク22とフライホイール21が離間している状態において、クラッチ20が完全に係合しない範囲で、クラッチディスク22をフライホイール21側に徐々移動させることをいう。S54が終了すると、プログラムはS55に進む。
【0095】
S55において、制御部40は、入力軸51の回転速度が、所定の回転速度の幅をもった「許容回転速度」の範囲内であると判断した場合には(S55:YES)、プログラムをS56に進め、入力軸51の回転速度が、「許容回転速度」の範囲外であると判断した場合には(S55:NO)、「第一の実施形態のタッチ点検出処理」が終了する。なお、S55において、制御部40が、入力軸51の回転速度が「許容回転速度」の範囲内であるか否かを判断しているのは、S53の処理の後に、上述したように車両の車速Vが変化し、入力軸51の回転速度が変化する可能性が有るからである。
【0096】
S56において、制御部40が、第一モータジェネレータMG1の状態の変化を検出した場合には(S56:YES)、プログラムをS57に進め、第一モータジェネレータMG1の状態の変化を検出しない場合には(S56:NO)、プログラムをS54に戻す。なお、第一モータジェネレータMG1の状態の変化とは、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化や、第一モータジェネレータMG1が発生している回転駆動力のトルクの変化である。つまり、このような第一モータジェネレータMG1の状態の変化は、クラッチディスク22がフライホイール21に接触し、第一モータジェネレータMG1の第一ロータRo1に、エンジンEGのフリクショントルクTeやエンジンイナーシャIeが作用することに起因している。従って、上記したような第一モータジェネレータMG1の状態の変化を検出することにより、クラッチディスク22がフライホイール21に接触する「タッチ点」を検出することにしている。なお、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化は、回転速度センサMG1−1によって検出される。また、第一モータジェネレータMG1が発生している回転駆動力のトルクの変化は、第一インバータ31によって、第一モータジェネレータMG1に印加する駆動電流の電流値の変化(電流のデューティー比の変化を含む)によって検出される。なお、制御部40は、第一モータジェネレータMG1の回転速度を目標とする回転速度となるように制御しているので、クラッチディスク22がフライホイール21に接触すると、第一モータジェネレータMG1の負荷が変化するため、第一モータジェネレータMG1に印加する駆動電流の電流値が変化する。
【0097】
S57において、制御部40は、クラッチ20の状態値を、今回の「タッチ点」における検出値として「記憶部」に記憶する。なお、クラッチ20の状態値とは、例えば、アクチュエータ50のストローク量や、アクチュエータ50に印加する駆動電流の電流値や電圧値、上述したクラッチ押し付け荷重である。S57が終了すると、プログラムは、S58に進む。
【0098】
S58において、制御部40は、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を、「記憶部」に更新記憶する。本実施形態では、前回までの「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値と、今回検出された「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を加重平均(重み付け平均)することにより、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を更新する。例えば、前回までのクラッチ20の状態値の割合を8として、今回検出された「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値の割合を2として、加重平均を行う。S58が終了すると、「第一の実施形態のタッチ点検出処理」が終了する。
【0099】
(第二の実施形態のタッチ点検出処理)
次に、
図8のフローチャートを用いて、「第二の実施形態のタッチ点検出処理」について説明する。
図3のS13や
図4のS23において、「タッチ点検出処理」の処理が開始すると、S61において、制御部40は、目標入力軸回転速度ωi2を設定し、プログラムをS61に進める。このS61の処理は、上述した
図7のS51の処理と同一である。なお、
図8のS62、S63、S64の処理は、ぞれぞれ、上述した
図7のS52、S53、S54の処理と同一であるので、その説明を省略する。S64が終了すると、プログラムは、S65に進む。
【0100】
S65において、制御部40は、入力軸51の回転速度が、上述した「許容回転速度」の範囲内であると判断した場合には(S65:YES)、プログラムをS66に進め、入力軸51の回転速度が、「許容回転速度」の範囲外であると判断した場合には(S65:NO)、「第二の実施形態のタッチ点検出処理」が終了する。なお、S65において、制御部40が、入力軸51の回転速度が「許容回転速度」の範囲内であるか否かを判断しているのは、S63の後に、車両の車速Vが変化し、入力軸51の回転速度が変化する可能性が有るからである。
【0101】
S66において、制御部40が、第一モータジェネレータMG1の状態量Aが所定の規程量以上変化したと判断した場合には(S66:YES)、プログラムをS67に進め、第一モータジェネレータMG1の状態量Aが規定量以上変化していない判断した場合には(S66:NO)、プログラムをS64に戻す。なお、第一モータジェネレータMG1の状態量Aとは、例えば、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化や、第一モータジェネレータMG1が発生している回転駆動力のトルクの変化である。
【0102】
S67において、制御部40は、第一モータジェネレータMG1の状態量Bの変化が、所定の制限量の範囲内であると判断した場合には(S67:YES)、プログラムをS68に進め、第一モータジェネレータMG1の状態量Bの変化が、制限量の範囲内でないと判断した場合には(S66:NO)、「第二の実施形態のタッチ点検出処理」が終了する。なお、第一モータジェネレータMG1の状態量Bとは、例えば、第一モータジェネレータMG1が発生している回転駆動力のトルクの変化や、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化であり、上述した第一モータジェネレータMG1の状態量Aとは、異なるものである。
【0103】
S68において、制御部40は、今回検出された「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を、検出値として「記憶部」に記憶する。例えば、制御部40は、S66において、第一モータジェネレータMG1の状態量Aが変化した際のクラッチ20の状態値を、今回検出された「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値として記憶する。或いは、制御部40は、現在の「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値から、S66における第一モータジェネレータMG1の状態量Aの所定量の変化量を減算して、今回検出された「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値として記憶する。S68が終了すると、プログラムは、S69に進む。
【0104】
S69において、制御部40は、
図7のS58と同様の処理を実行して、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を、「記憶部」に更新記憶する。S69が終了すると、「第二の実施形態のタッチ点検出処理」が終了する。
【0105】
(スタンバイ位置変更処理)
次に、
図9のフローチャートを用いて、「スタンバイ位置変更処理」について説明する。車両が走行可能な状態になると、S91において、制御部40は、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値が更新された(
図7のS58や
図8のS69の処理)と判断した場合には(S91:YES)、プログラムをS92に進め、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値が更新されていないと判断した場合には(S91:NO)、S91の処理を繰り返す。
【0106】
S92において、制御部40は、更新された「タッチ点」から、所定量(例えば1.5mm)解放側に戻したクラッチ20の位置を「スタンバイ位置」として、当該「スタンバイ位置」におけるクラッチ20の状態値を「記憶部」に更新記憶し、プログラムをS91に戻す。
【0107】
なお、クラッチ20が切断状態にある場合には、クラッチ20は、上記変更されたスタンバイ位置における状態値にされて、クラッチディスク22は、上記変更されたスタンバイ位置に位置される。
【0108】
(本実施形態の効果)
上述した説明から明らかなように、制御部40(タッチ点検出手段)は、切断状態にあるクラッチ20が係合する際に、回転速度センサMG1−1や第一インバータ31(状態変化検出手段)によって第一モータジェネレータMG1の状態変化が検出された時(
図7の56や
図8のS66でYESと判断)のクラッチ20の状態を、クラッチ20が係合を始める「タッチ点」として検出する(
図7のS57、
図8のS68)。切断状態にあるクラッチ20が係合する際には、エンジンEGのフリクショントルクTeやエンジンイナーシャIeが第一モータジェネレータMG1に作用し、第一モータジェネレータMG1の回転速度やトルクが変化するので、第一モータジェネレータMG1の回転速度やトルクの変化を検出することにより、切断状態にあるクラッチ20が係合し始める「タッチ点」を検出することができる。また、第一モータジェネレータMG1の状態変化に基づいて、「タッチ点」を検出している。このため、エンジンEGは停止し、第一モータジェネレータMG1が回転しても、殆ど振動が発生しないので、エンジンEGの振動により、「タッチ点」の検出精度が悪化すること無く、精度高く「タッチ点」の検出を行うことができる。つまり、クラッチ20に振動が付与されないので、クラッチディスク22とフライホイール21の離間距離が振動により変わらないので、精度高く「タッチ点」の検出を行うことができる。
【0109】
また、
図7のS51や
図8のS61において、制御部40(タッチ点検出手段)は、「タッチ点」を精度高く検出可能な入力軸51の回転速度である目標入力軸回転速度ωi2を設定する。そして、
図7のS52や
図8のS62において、制御部40は、第一モータジェネレータMG1の回転速度が、目標入力軸回転速度ωi2となるように、第一モータジェネレータMG1の回転速度を制御し、
図7のS57や
図8のS68において、「タッチ点」を検出する。これにより、入力軸51の回転速度を「タッチ点」の検出を行うのに適切な回転速度にすることができ、精度高く「タッチ点」を検出することできる。また、入力軸51の回転速度は、エンジンEGからの回転動力が伝達されているか否か、第一モータジェネレータMG1で発電が行われているか否か、車両が停車中であるか否か、車両の車速の変化によって変化する。しかし、入力軸51の回転速度が、第一モータジェネレータMG1によって目標入力軸回転速度ωi2となるように制御されるので、車両がいかなる状態であったとしても、「タッチ点」の検出を行うことができる。
【0110】
また、
図1に示すように、遊星歯車機構10の3つの要素を、相対回転速度比を直線で表すことができる共線図(
図2示)におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第一要素、第二要素及び第三要素とした場合において、第一要素であるサンギヤ11には第一モータジェネレータMG1が回転連結され、第二要素であるキャリア13には入力軸51が接続され、第三要素であるリングギヤ14には駆動輪Wl、Wr及び第二モータジェネレータMG2が回転連結されている。これにより、
図7のS51や
図8のS61において、第一モータジェネレータMG1を回転制御することにより、入力軸51の回転速度を任意の回転速度にすることができ、入力軸51の回転速度を「タッチ点」の検出を行うのに適切な回転速度にすることができ、精度高く「タッチ点」を検出することできる。また、エンジンEGが停止中であったとしても、第一モータジェネレータMG1を回転させることにより、車両がどのような車速で走行していても、或いは、車両が停車している状態であったとしても、入力軸51を回転させて、「タッチ点」の検出を行うことができる。更に、エンジンEGが回転している状態で、車両がどのような車速で走行していても、或いは、車両が停車している状態であっても、第一モータジェネレータMG1を回転させることにより、「タッチ点」の検出を行うのに適した、入力軸51と出力軸EG−1の差回転速度にすることができる。
【0111】
また、
図7のS55や
図8のS65において、制御部40は、入力軸51の回転速度が、所定の回転速度の幅をもった「許容回転速度」の範囲内にある場合に限り、「タッチ点」の検出を行う。つまり、入力軸51の回転速度は、車両の車速の変化によって変化するが、入力軸51の回転速度が「許容回転速度」より遅い場合には(
図7のS55や
図8のS63でNOと判断)、入力軸51と出力軸EG−1との回転速度差が小さいことから、第一モータジェネレータMG1の状態変化が乏しく、第一モータジェネレータMG1の状態変化を検出することによる「タッチ点」の検出が困難であり、精度高く「タッチ点」を検出することが困難であることから、「タッチ点」の検出を行わないことにしている。一方で、入力軸51の回転速度が「許容回転速度」より速い場合には、入力軸51に接続するクラッチ20の部材であるクラッチディスク22の芯ブレが発生しまう可能性があり、本来の「タッチ点」よりも、クラッチ20が解放している位置で「タッチ点」が検出されてしまうおそれがある。しかし、本実施形態では、入力軸51の回転速度が「許容回転速度」より速い場合には(
図7のS55や
図8の63でNOと判断)、「タッチ点」の検出を行わないので、「タッチ点」の検出精度の悪化が防止され、精度高く「タッチ点」を検出することができる。
【0112】
また、
図7のS56や
図8のS66において、制御部40は、第一モータジェネレータMG1の状態変化として、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化を検出する。これにより、切断状態にあるクラッチ20が係合する際には、エンジンEGのフリクショントルクTeやエンジンイナーシャIeが第一モータジェネレータMG1に作用し、第一モータジェネレータMG1の回転速度が変化するので、「タッチ点」を確実に検出することができる。
【0113】
また、
図7のS56や
図8のS66において、制御部40は、第一モータジェネレータMG1の状態変化として、第一モータジェネレータMG1が発生している回転駆動力のトルク変化を検出する。これにより、切断状態にあるクラッチ20が係合する際には、エンジンEGのフリクショントルクTeやエンジンイナーシャIeが第一モータジェネレータMG1に作用し、第一モータジェネレータMG1のトルクが変化するので、「タッチ点」を確実に検出することができる。
【0114】
また、制御部40は、
図8のS66において、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化に基づいて「タッチ点」を検出するとともに、
図8のS67において、第一モータジェネレータMG1のトルク変化に基づいて検出された「タッチ点」の誤検出を検出する。つまり、第一モータジェネレータMG1の回転速度が変化したとしても(
図8のS66:YES)、第一モータジェネレータMG1トルクが回転速度の変化に対応していない場合には(
図8のS67:NO)、「タッチ点」の誤検出とされる。つまり、第一モータジェネレータMG1の回転速度は、電圧の変動等の外乱や電気的ノイズ等により変化する場合がある。しかし、第一モータジェネレータMG1のトルク変化が、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化と対応しない場合には、クラッチ20の係合開始によるもので無いので、「タッチ点」の誤検出とされる。このため、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化のみで、「タッチ点」を検出する場合と比較して、第一モータジェネレータMG1に入力する外乱等に起因する「タッチ点」の誤検出が排除されるので、より精度高く「タッチ点」を検出することができる。
【0115】
或いは、制御部40は、
図8のS66において、第一モータジェネレータMG1のトルク変化に基づいて「タッチ点」を検出するとともに、
図8のS67において、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化に基づいて検出された「タッチ点」の誤検出を検出する。つまり、第一モータジェネレータMG1のトルクが変化したとしても、第一モータジェネレータMG1の回転速度がトルクの変化に対応していない場合には、「タッチ点」の誤検出とされる。つまり、第一インバータ31で検出される第一モータジェネレータMG1のトルクは、車両に制動力が付与された場合や、車両の走行状況(坂道走行中等)の変化等の外乱によって変化する。しかし、第一モータジェネレータMG1の回転速度の変化が、第一モータジェネレータMG1のトルクの変化と対応しない場合には、クラッチ20の係合開始によるもので無いので、「タッチ点」の誤検出とされる。このため、第一モータジェネレータMG1のトルクの変化のみで、「タッチ点」を検出する場合と比較して、「タッチ点」の誤検出が排除されるので、より精度高く「タッチ点」を検出することができる。
【0116】
また、
図7のS54や
図8のS64において、制御部40は、切断状態にあるクラッチ20を徐々に係合させることにより、第一モータジェネレータMG1の状態を変化させて、「タッチ点」を検出し、当該「タッチ点」の検出後に、
図3のS14において、クラッチ20を解放させる。このため、クラッチ20が切断状態にある場合である場合、即ち、車両が第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみで走行中又は車両が停車中の場合には(
図3のS11でYESと判断)、任意の時期に、「タッチ点」を検出することができる。
【0117】
また、制御部40は、エンジンEGを始動させるために、切断状態にあるクラッチ20が係合する際に(
図4のS21でYESと判断)、
図7のS56や
図8のS66において、第一モータジェネレータMG1の状態の変化を検出することにより、「タッチ点」を検出する。このため、エンジンEGの始動時等において、切断状態にあるクラッチ20が係合する際に、「タッチ点」が検出される。このため、「タッチ点」の検出のために、わざわざ、アクチュエータ50を駆動させてクラッチ20を係合させる必要が無く、「タッチ点」の検出のために、無駄なエネルギーが消費されることが抑止される。
【0118】
また、制御部40は、クラッチ20が切断している状態において、「第一タッチ点検出開始処理」において、前回の「タッチ点」(後述の「第二タッチ点検出開始処理」において検出することが決定された「タッチ点」を含む)の検出時から所定の「第一規定時間」以上経過したと判断した場合に(
図3のS12でYESと判断)、
図7のS54や
図8のS64において、切断状態にあるクラッチ20を徐々に係合させることにより、
図7のS56や
図8のS66において、「タッチ点」を検出する。そして、これに加えて、切断状態にあるクラッチ20が係合する際に、「第二タッチ点検出開始処理」において、前回の「タッチ点」(前述の「第一タッチ点検出開始処理」において検出することが決定された「タッチ点」を含む)の検出時から所定の「第二規定時間」以上経過したと判断した場合に(
図4のS22でYESと判断)、
図7のS56や
図8のS66において、第一モータジェネレータMG1の状態の変化を検出することにより、「タッチ点」を検出する。そして、「第二規定時間」は、「第一規程時間」よりも短く設定されている。「スプリット走行モード」中は、クラッチ20は、係合状態にあるため「タッチ点」を検出する機会は制限されるが、「第二規定時間」を、「第一規程時間」よりも短く設定しているので、「スプリット走行モード」に移行する際における「タッチ点」を検出する機会がより多くなり、より現状に近い「タッチ点」を検出することができる。また、「第一規定時間」が「第二規程時間」よりも長く設定されているので、
図3の「第一タッチ点検出開始処理」において、頻繁に「タッチ点」の検出を開始する決定がなされることが抑制され、「タッチ点」の検出のために、無駄なエネルギーが消費されることが抑止される。
【0119】
また、「第一規定時間」や「第二規程時間」を適切な時間に設定することにより、車両の走行中のクラッチ20の温度が変化に起因する「タッチ点」の変化に対応することができ、車両の走行中における「タッチ点」のズレを防止することができる。
【0120】
また、
図7のS58や
図8のS69において、前回までの「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値と、今回検出された「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を加重平均(重み付け平均)することにより、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を更新している。これにより、もし仮に「タッチ点」が誤検出された場合であっても、前回までの「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値も、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値の更新値に考慮されるので、「タッチ点」の誤検出による悪影響を低減することができる。
【0121】
(別の実施形態)
以上説明した
図4に示す「第二タッチ点検出開始処理」では、エンジンEGの始動条件が成立した際に(S21:YES)、前回の「タッチ点」を検出した時から「第二規定時間」以上経過したと判断した場合に(S22:YES)、S23において「タッチ点」の検出を実行する決定をしている。しかし、エンジンEGの始動に限らず、切断状態にあるクラッチ20を係合する際に、前回の「タッチ点」の検出から「第二規定時間」以上経過したと判断した場合に「タッチ点」を検出する実施形態であっても差し支え無い。切断状態にあるクラッチ20を係合させる状況には、上述したように、車両が「電動走行モード」で走行中に、第二モータジェネレータMG2の回転駆動力のみでは、「要求駆動力」に達しない場合に、第一モータジェネレータMG1及び第二モータジェネレータMG2の回転駆動力によって車両を走行させるために、クラッチ20を係合させる状況や、第二モータジェネレータMG2で回生制動中において、エンジンEGのフリクショントルクを車両の減速に利用するために、クラッチ20を係合させる状況が含まれる。
【0122】
また、以上説明した実施形態では、
図4に示す「第二タッチ点検出開始処理」のS22の処理では、制御部40は、「第二タッチ点検出開始処理」において、前回「タッチ点」を検出した時から、所定の経過時間である「第二規程時間」以上経過したと判断した場合には(S22:YES)、S23において「タッチ点」の検出を実行する決定をしている。しかし、S21において、エンジンEGの始動条件が成立したと判断された場合に(S21:YES)(「第二規程時間」を0に設定)、必ずS23において「タッチ点」の検出を実行する実施形態であっても差し支え無い。
【0123】
また、「第一タッチ点検出開始処理」における前回の「タッチ点」が、前回「第一タッチ点検出開始処理」で検出した「タッチ点」であり、「第二タッチ点検出開始処理」における前回の「タッチ点」が、前記「第二タッチ点検出開始処理」で検出した「タッチ点」である実施形態であっても差し支え無い。
【0124】
また、以上説明した実施形態では、
図7のS58や
図8のS69の処理において、制御部40は、前回までの「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値と、今回の「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を加重平均(重み付け平均)することにより、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値を更新している。しかし、制御部40が、単に、今回の「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値に更新する実施形態であっても差し支え無い。
【0125】
また、以上説明した実施形態では、制御部40は、回転速度センサMG1−1から入力された第一モータジェネレータMG1の回転速度、第二モータジェネレータMG2の回転速度ωMG2r(車速Vから算出)、及びサンギヤ11とキャリア13間のギヤ比に基づいて、入力軸51の回転速度である入力軸回転速度ωiを算出している。しかし、入力軸51の回転速度を検出する入力軸回転速度検出センサを、入力軸51の近傍に設け、入力軸回転速度ωiを直接検出することにしても差し支え無い。
【0126】
また、以上説明した実施形態では、アクチュエータ50は電動式であり、制御部40は、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値として、アクチュエータ50のストローク量や、アクチュエータ50に印加する駆動電流の電流値や電圧値、上述したクラッチ押し付け荷重を検出して、「記憶部」に記憶している。しかし、アクチュエータ50は、油圧式や空気圧式のものであっても差し支え無い。この実施形態の場合には、制御部40は、「タッチ点」におけるクラッチ20の状態値として、アクチュエータ50の油圧、空気圧、クラッチ押し付け荷重等を検出して、「記憶部」に記憶する。
【0127】
以上説明した実施形態では、遊星歯車機構10の3つの要素を、相対回転速度比を直線で表すことができる共線図(
図2示)におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に第一要素、第二要素及び第三要素とした場合において、第一要素であるサンギヤ11には第一モータジェネレータMG1が回転連結され、第二要素であるキャリア13には入力軸51が接続され、第三要素であるリングギヤ14には駆動輪Wl、Wr及び第二モータジェネレータMG2が回転連結されている。しかし、第一要素をリングギヤ14、第二要素をキャリア13とし、第三要素をサンギヤ11とし、第一要素であるリングギヤ14に第一モータジェネレータMG1が回転連結され、第二要素であるキャリア13に入力軸51が接続され、第三要素であるサンギヤ11には駆動輪Wl、Wr及び第二モータジェネレータMG2が回転連結されている実施形態であっても差し支え無い。
【0128】
また、以上説明した実施形態の遊星歯車機構10では、リングギヤ14には、その内周側にインナーギヤ14aが形成されている。しかし、インナーギヤ14aに代わりに、その外周側にアウターギヤが形成され、キャリア13に自転可能に軸支されたプラネタリギヤが前記アウターギヤ及びサンギヤ11に噛合する実施形態であっても差し支え無い。
【0129】
以上説明した実施形態では、
図3に示す「第一タッチ点検出開始処理」と
図4に示す「第二タッチ点検出開始処理」の両方を実行する実施形態について本発明を説明した。しかし、「第一タッチ点検出開始処理」と「第二タッチ点検出開始処理」の一方のみを実行する実施形態であっても差し支え無い。