特許第5892935号(P5892935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892935
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】脆弱線を有する研磨物品
(51)【国際特許分類】
   B24D 11/00 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   B24D11/00 B
   B24D11/00 Q
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-526973(P2012-526973)
(86)(22)【出願日】2010年8月26日
(65)【公表番号】特表2013-503050(P2013-503050A)
(43)【公表日】2013年1月31日
(86)【国際出願番号】US2010046770
(87)【国際公開番号】WO2011025864
(87)【国際公開日】20110303
【審査請求日】2013年8月22日
(31)【優先権主張番号】61/237,947
(32)【優先日】2009年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー, ティモシー, ティー.
(72)【発明者】
【氏名】モーゲンバーグ, ブラント, エー.
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン, マーク, エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュネクト, ショーン, エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォールド, チャールズ, アール.
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3051625(JP,U)
【文献】 特開2008−087082(JP,A)
【文献】 特開2004−195590(JP,A)
【文献】 特開2000−246473(JP,A)
【文献】 豪国特許出願公開第2004100059(AU,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 11/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に研磨コーティングを有する裏材を含むとともに前記裏材のもう一方の側に取付層を含み、前記研磨コーティングの外層を貫通しない脆弱線が研磨物品中に形成され、前記脆弱線が前記研磨物品の一部を別の部分から分離できるようにし、前記取付層が前記脆弱線に沿って切断されているとともにループ状の材料を含み、前記脆弱線が、前記取付層を通る連続的切断部と、前記裏材中に設けられ前記研磨コーティングの外層を貫通しない複数の穿孔と、を含む、コーティングされた研磨物品。
【請求項2】
前記脆弱線が前記研磨コーティングの反対側から前記裏材へ向けたレーザービームを用いて形成される、請求項に記載の研磨物品を製造する方法。
【請求項3】
前記レーザービームを制御して、前記裏材中に前記研磨コーティングの外層を貫通しない複数の穿孔を作製する工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の穿孔が前記研磨コーティングを貫通せずに前記裏材に作製される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記脆弱線が前記研磨コーティングの反対側から前記裏材へ向けたレーザービームを用いて形成され、前記取付層を切断し、かつ前記裏材中に前記研磨コーティングの外層を貫通しない複数の穿孔を作製する、請求項1に記載の研磨物品を製造する方法。
【請求項6】
前記レーザービームが、コーティングされた研磨材のウェブから物品を切り取るため、及び/又は前記研磨物品に複数の開口部を切削するためにも用いられる、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願番号第61/237947号(2009年8月28日出願)の利益を主張し、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、研磨物品、具体的にはコーティングされた研磨物品、及びかかる物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コーティングされた研磨物品は、少なくとも片面に研磨コーティングを有する裏材を含む。研磨コーティングは、典型的には裏材に研磨粒子を結合する働きをする樹脂マトリックス中に研磨粒子を含み、1つ以上の層を含むことができる。
【0004】
コーティングされた研磨物品は、シート、ディスク、及びベルトなどの様々な形態で入手可能である。コーティングされた研磨物品の一部は手持ち式で使用する(手持ち式研磨ブロックでの使用を含む)ためのものであり、他は動力式研磨工具で使用するためのものである。製造の観点から言えば、エンドユーザが求める様々な形状や大きさのコーティングされた研磨物品を適正価格で供給するように製造プロセスを適合させることは困難な場合がある。したがって、一部の製造業者は最も広く使用される形態のコーティングされた研磨物品のみの製造に専念し、その結果、他の製品が入手しにくい、及び/又は比較的高価である。
【0005】
エンドユーザへの、コーティングされた研磨シートの供給簡略化を目的として、任意の必要な長さで切断できるコーティングされた研磨シート材のロールの供給が既知である。またAU 2004100059A(Cetram Pty Limited)では、より小さい所定の大きさに紙を小さく破くめの穿孔横線を含む、研磨紙のロールの供給も提案されている。コーティングされた研磨材の分野以外では、米国特許第5 712 210号(Minnesota Mining and Manufacturing Company、Windischら)から、ウェブを複数の研磨表面処理材料のシートに分割させる、長手方向に間隔を置き、横断方向に配置された複数の穿孔を有する、そびえた不織布表面処理材料のウェブの提供が既知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、物品が使用されることができる形状の選択肢をエンドユーザに提供し、その結果、1つを超える研磨作業で使用するのに好適な、コーティングされた研磨物品の提供に関する。
【0007】
本発明は、片面に研磨コーティングを有する裏材を含むコーティングされた研磨物品を提供し、脆弱線が物品中に形成されることにより物品をその本来の目的で使用できるようにするが、更に物品の一部を別の部分から分離できるようにする。更に具体的には、本発明は、片面に研磨コーティングを有する裏材を含むコーティングされた研磨物品を提供し、研磨コーティングの外層を貫通しない脆弱線が物品中に形成され、この脆弱線は研磨物品の一部を別の部分から分離できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による研磨物品は、それ自体として使用できる又は顧客が小さい製品に分離できる、より大きい研磨製品を提供することにより、様々な研磨製品に対する要求への対応を可能にする。より大きい製品は低コストで製造でき、その結果、梱包材料の使用が少なく、在庫品数が少なくなり、流通が容易になる。更に、製品の厚さ全体を突き抜け、したがって研磨コーティングの外面を貫通する穿孔が設けられるコーティングされた研磨物品と比較すると、本発明による研磨物品はいくつかのデメリットを回避できる。例えば、研磨コーティングの外層を貫通する穿孔は、製品の耐用年数を制限し得る粉塵負荷点を作ることにより、コーティングの研磨機能に影響する場合がある。また、研磨材が破断される線をそれらが画定する場合、穿孔により縁部が粗くなることもあり、研磨コーティングを損傷し、これもまた製品の耐用年数を制限し得る。
【0009】
本発明による研磨物品の研磨コーティングは、樹脂マトリックス中に研磨粒子を含んでよい。より詳細には、研磨コーティングは、研磨粒子が少なくとも部分的に埋め込まれているメイクコート樹脂層、又は研磨粒子が均一に分布している樹脂層、又は樹脂マトリックス中に研磨粒子の複数の成形複合体を含む層を含んでよい。
【0010】
本発明による研磨物品の裏材は、多層材料であってよく、紙、フィルム、発泡体、又は布地の層を含み得る。
【0011】
また、本発明による研磨物品は、研磨コーティングから離れた裏材側に、研磨物品を工具に取り付けるのに用いる取付材料の層も含んでよい。取付層は接着層、又はフック・ループ式取付システムの一部であってよい。取付層がループ状の材料である実施形態では、裏材の一体部分であってもよく、又は接着剤で裏材に固定された別の層であってもよい。
【0012】
研磨物品の脆弱線は、裏材中に、場合によっては研磨コーティングに及ぶことがあるものの、研磨コーティングの前面を貫通しない穿孔を含んでよい。裏材中の穿孔は円形などの任意の好適な形状であってよく、任意の適当な間隔で配置されてよく、ここで形状及び間隔は、研磨物品がその本来の目的に好適なままだが、穿孔を含む脆弱線に沿って物品の一部をもう一方の部分から分離することにより形状を変更できるように選択される。
【0013】
研磨物品が取付材料の層を含むとき、取付材料は脆弱線に沿って完全に切断されてよい。
【0014】
本発明による研磨物品は、シートを複数の別の研磨物品に分離できる複数の脆弱線が中に形成される研磨材シートを含んでよい。これらの研磨物品のうち少なくとも1つは、かかる脆弱線のうち少なくとも1つを含んでよい。研磨物品は、例えば、シートをより小さい方形シートに分離できる少なくとも1つの脆弱線を有する方形の研磨シートの形態であってよい。本発明による研磨物品は、コーティングされた研磨材のウェブの形態であってよく、これはロール状で提供され得る。
【0015】
好ましくは、かかる脆弱線(複数の場合は各脆弱線)は、研磨コーティングの反対側から裏材へ向けたレーザービームを用いて形成される。脆弱線(複数の場合は各脆弱線)の形成に用いられるのと同じレーザー装置を、材料ウェブからコーティングされた研磨物品を切断するのに、及び/又は、研磨物品中に開口部を切削するのに用いてもよく、これにより研磨物品を迅速かつ効率的に製造することができる。
【0016】
特に材料シートから特定の形状の物品を切り出すために、コーティングされた研磨材に切れ目を印付け又は形成するためのレーザーを使用することは、既に知られている。例えば、国際公開第01/24971号(3M Innovative Properties Company、Carpentierら)では、コーティングされた研磨物品の研磨コーティングの一部を除去して物品上に検出可能な印を刻印するためのレーザーの使用について記載しており、国際公開第2004/012906号(3M Innovative Properties Company、Paxtonら)は、研磨コーティングの反対側の裏材の表面上に接着剤取付層及び取り外し可能なライナーを有する、コーティングされた研磨物品の製造でのレーザー切削の利用に言及しており、国際公開第2007/021636号(3M Innovative Properties Company、Minickら)は、可撓性を増すためにレーザー切削により裏材層にスリットが形成される、研磨面を有する裏材層を含む可撓性手持ち式研磨物品について記載している。
【0017】
本発明による研磨物品の製造にレーザー装置を使用することで、1つの製品から別の製品へ製造を簡単に切り換えられるようになり、これにより、比較的少量の任意の製品を経済的に製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
一例として、本発明による研磨物品は、添付図面を参照して記載される。
図1】本発明による研磨物品の研磨側からの平面図。
図2図1の研磨物品の反対側からの平面図。
図3図1の矢印III方向に図1及び2の研磨物品の中央部を拡大した側面図。
図4図1〜3の物品の製造に用いられるのと同じ装置を用いるプロセスで製造できる、本発明による別の研磨物品の平面図。
図5A】本発明による他の研磨物品。
図5B】本発明による他の研磨物品。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜3に示す研磨物品1は、方形のコーティングされた研磨シートである。物品1は、複数の層、主に(図3参照)裏材層3、裏材層の片面の研磨コーティング層5、及び裏材層の反対面の取付層7を含む。
【0020】
裏材層3は、コーティングされた研磨物品での使用に好適であることがわかっている任意のシート材料を含み、多層材料であってよい。好適な材料として、適当な厚さを有する紙、フィルム、布地、及び発泡体が挙げられる。
【0021】
研磨コーティング5は、裏材層3に粒子を結合する働きをする任意の好適な樹脂マトリックス5B中に、任意の好適な研磨粒子5Aを含む。研磨粒子5Aは任意の材料であってよく、コーティングされた研磨物品での使用に好適であることがわかっている大きさであってよい。研磨コーティング5の樹脂マトリックス5Bは、研磨粒子が少なくとも部分的に埋め込まれる従来のメイクコート、及び任意の従来のサイズコートを含んでよい。コーティングされた研磨材で従来用いられるその他の層は、メイクコート又はサイズコートに任意に適用し得る。あるいは、研磨コーティング5の研磨粒子は、樹脂マトリックス全体に実質的に均一に分布されてよく、こうした研磨コーティングは、研磨粒子のスラリー及び樹脂を裏材層3に適用することにより達成され得る。更に別の選択肢として、研磨コーティング5は、樹脂マトリックス中に研磨粒子の複数の成形複合体を含んでよい。かかる成形複合体の例は、米国特許第5 152 917号(Pieperら)に記載されている。
【0022】
周知の通り、研磨シート1の本来の目的を考慮して、研磨粒子及び樹脂マトリックスの両方が選択されるであろう。
【0023】
取付層7は、手持ち式ブロック又は動力式研磨工具などの工具に研磨物品1を取り付けるのに好適な任意の材料を含む。かかる取付材料は周知である。図示されるように、層7はフック・ループ式取付システムのループ部分であるが、例えば、感圧性接着剤の層、又は噛合式取付システムの一部分であってもよい。今回の場合、ループ取付層7は接着層7Aにより裏材層3に積層される別の層であるが、別の方法として裏材層の一体部分であってもよい。
【0024】
これまで説明したように、研磨物品1は、例えば表面を研磨するための手持ち式での使用に好適な従来の研磨シートである。研磨シートは手で直接握ってもよく、又は任意の好適な種類の手持ち式研磨ブロックに取り付けてもよい。
【0025】
研磨シート1の汎用性を高めるため、シートの中間点で取付層7側にシートの一方の縁部からもう一方までシートを横切って延びる脆弱線9が設けられる。取付層7の内部で、脆弱線9は、取付層を完全に貫通して延びる切断部11の形状を有するが、一方、裏材層3の内部では、脆弱線9は、好ましくは研磨コーティング5を貫通しない穿孔13の線(すなわち、裏材層中の間隔があいた貫通孔の線)の形状を有する。脆弱線9が存在するにも関わらず(この詳細は以下で更に説明する)、研磨シート1は、これまで説明した本来の手持ち式用途に依然として好適である。一方、研磨シートが脆弱線9に沿って180°折り畳まれて、シートの2つの部分に共に研磨コーティング5をもたらす場合、2つのより小さい方形シートにきれいに分離でき、それぞれもまた直接又はより小さい手持ち式研磨ブロックにおいて手持ち式の用途に好適である。
【0026】
したがって、研磨シート1は、2つの製品、すなわち、示されるように大きい研磨シート1、又は2つのより小さい研磨シートを効果的に提供する。これにより、製造業者は、1つの製品を製造し提供するだけで、両製品に対する需要を満たすことができる。
【0027】
脆弱線9は、コーティングされた研磨材内の一定の深さだけに貫入するように集光又は調整されるレーザーエネルギーのビームを用いて、研磨シート1に効果的に形成され、この深さは、特定のいかなる材料に対しても実験的に容易に決定することができ、必要に応じて、レーザーの出力を調整して変更できる。
【0028】
レーザービームを用いて脆弱線9を形成する好ましい方法は、(i)研磨シート1の裏材層3を貫通せずに取付層7を切断すること、及び(ii)取付層7を切断し、研磨コーティング5を貫通せずに裏材層3中に穿孔を作ること、に必要なレーザー操作パラメーターを決定することである。操作パラメーターは、例えば、レーザービームの出力又はレーザービームの出力の組み合わせ、及び研磨シート1に対して移動する速度であり得る。その後、取付層7に向かってシート1の幅を横断するようにレーザービームを移動させ、対応する適切な距離x及びy上で操作パラメーター(i)及び(ii)を交互に用いることにより、脆弱線9が作製される。この結果、シート1の取付層7を通る連続的切断部11、及び裏材層3中に距離xの間隔で配置される長さyの穿孔13になる。上記のように、シート1を2部に分割できるようにするのに必要な距離x及びyは、特定のいかなる種類の研磨シートに対しても実験的に容易に決定できる。あるいは、脆弱線9は、複数の重畳レーザービームを同時に又は順次に用いて作製できる。例えば、シート1の幅を横断するレーザービームの第1の移動中に取付層7の連続的切断部11を作製し、シートを横断するレーザービームの後続の移動中に穿孔13を作製することができる。
【0029】
場合によっては、研磨シート1の性質に応じて、連続的切断部11及び/又は穿孔13が、研磨コーティング5の前面は貫通しないけれども、シートを2部にきれいに分割できるようにするために、シート中により深く貫入することが必要だと判明することがある。例えば、連続的切断部11は、取付層7を裏材層3に固定する接着層内まで、又はそれを貫通して延びてよく、更に裏材層中に部分的に延びてもよい。同様に、研磨コーティング5の前面を貫通しないように注意が必要であるが、裏材層3中の穿孔13は、研磨コーティング5中に部分的に延びてよい。一般に、脆性が高くなる傾向がある粗いグレードの研磨シートは、脆弱線に沿ってより簡単に分離し、切断部11及び/又は穿孔13がシート内にあまり深く延びていなくてもいいことが観察されている。
【0030】
取付層7を研磨シート1から省く場合、脆弱線9がシートの裏材層3中の穿孔13のみから構成される(場合により、上述のように前面を貫通することなく研磨コーティング5中を延びる)ことで十分であり得る。
【0031】
必要に応じて、コーティングされた研磨材のウェブから複数の研磨シート1を切り取るのに、及び/又は研磨シートに1つ以上の開口部を切削するのにも、上記プロセスの実行に用いられるレーザー装置を用いることができる。レーザー装置に対してコーティングされた研磨材のウェブが1回通過する間に全てのレーザー切削操作を実行し、それにより、研磨シートの素早く効率的な製造を可能にしてよい。図4は、例として、脆弱線9の作製に用いられるレーザー装置により山形の開口部15もシート中に切削されている、図1に類似する研磨シートを示す。
【0032】
特定の製品を製造するために慎重に構築されたダイの使用を必要とする機械的切削操作と比較して、レーザー装置は、1つの製品から別の製品へ製造を容易に切り換えることができ、それにより、比較的少量である任意の1製品を経済的に製造することができる。しかしながら、レーザー装置の利用は有利であるが、本発明による研磨物品の製造するための機械的切削装置の利用は除外されない。
【0033】
例えば、既知のCOレーザーなどの任意の好適なレーザー装置を用いて、上記プロセスを実施することができる。迅速な加工をもたらすために、加工される材料を考慮して、装置が操作される出力及び/又は速度を最適化する必要がある。好適なレーザー装置の例は、直径約0.25mmの集光レーザービームを提供する、ROFIN−SINAR Technologies,Inc.(Plymouth,MI 48170,USA)から商品名「SCX600」で入手できるものである。その種の装置を用いて、3M Company(St.Paul,Minnesota,U.S.A.)から商品名「Hookit(商標)334U」で入手できる(紙の裏材層3に接着剤で付着しているループ状の編地である取付層7、及び酸化アルミニウム研磨粒子を含む研磨コーティング5を有する)、3つの異なるグレードの研磨シート(P400、P180、及びP80)に脆弱線を作製した。約1.5mmの距離の低出力パルス、及び約0.75mmの距離の高出力パルスを交互に使用して、取付層7に向かって速度約380cm/sでシートの幅を横断するようにレーザービームを移動させた。パルスはそれぞれ、P400グレードのシートに対しては27%及び35%の出力、P180グレードのシートに対しては27%及び46%の出力、並びに、P80グレードのシートに対しては25%及び27%の出力に設定した。研磨シートの寸法は40.64cm(16インチ)×7.0cmであり、各シートに作製された脆弱線はそれぞれ20.32cm(8インチ)×7.0cmの2つのシートに分離できるようにした。シートの寸法は両方とも、手で、及び適切な寸法の手持ち式研磨ブロックでの使用に好適であることがわかった。特に、大きい方のシートは、脆弱線においてシートを損傷させずに、手で、及び/又は研磨ブロックで使用できた。
【0034】
上述の脆弱線を有する他のコーティングされた研磨物品を形成できることが理解されるであろう。例えば、長手方向に延びる少なくとも1つの脆弱線が設けられる適切な形状の研磨シートは、既知の方法でシートの2つの自由端を互いに結合することにより、研磨ベルトに形成できる。その場合、適切に配置された脆弱線が、異なるベルトの幅を選択できるようにする。
【0035】
図5A及び5Bは、本発明によるその他のコーティングされた研磨物品を示す。両物品とも動力式研磨工具に取り付けるのに好適な研磨ディスクの形態である。図5Aの研磨ディスク20は、取り除かれてディスクの中央部に穴をもたらし得る円形領域を画定する円形脆弱線22を有し、図5Bの研磨ディスク24は、取り除かれてより小さい直径のディスクを形成し得る周縁部を画定する脆弱線24を有する。更なる選択肢として、複数の円形脆弱線が、取り除かれて研磨ディスクに集塵孔をもたらし得る円形領域を画定し得る。更に別の選択肢として、コーティングされた研磨材のウェブ(ロール状で提供され得る)が、シートを複数の研磨物品に分離できる複数の脆弱線を含んでもよい。それらの研磨物品のうち少なくとも1つは、それ自身が少なくとも1つの脆弱線を含んでよい。全ての場合において、脆弱線は、それが形成される研磨物品を本来の目的で使用できるようにするが、この研磨物品の一部を別の部分から分離できるようにもする。
【0036】
コーティングされた研磨材の厚さ全体を貫通する穿孔と比較すると、上述の脆弱線9は特定の利点を提供する。研磨コーティングの前面を貫通する穿孔は、コーティングの作業領域中に存在する場合、研磨製品の耐用年数を制限し得る粉塵負荷点を作り得る。一方、上述の脆弱線9は、この影響を回避できるようにする。更に、研磨材が、材料の深さ全体を貫通する従来の穿孔線に沿って破断される場合、粗い縁部が形成される可能性が高く、研磨コーティング5を損傷し、これもまた製品の耐用年数を制限し得る。一方、上述の脆弱線9は、研磨材をきれいに分離できるようにする。
【0037】
上述の脆弱線を有する研磨物品は、それ自体が使用に便利である、又は顧客が小さい製品に分離できる、より大きい研磨製品を提供することにより、顧客の要求への対応を可能にする。より大きい製品は低コストで製造でき、その結果梱包材料の使用が少なく、在庫数が少なくなり、流通が容易になる。
【0038】
本発明を、一実施形態及びその考えられる変更形態を参照して説明してきた。本発明の範疇から逸脱することなく、多数の変更が、説明した実施形態においてなされ得ることが、当業者には明らかとなろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B