(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、C
1〜6アルキル基としては、炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル及びn−ヘキシルを挙げることができる。シクロアルキル基はC
3〜6シクロアルキル基であり得る。シクロアルキル基の例としては、炭素原子数3〜6の基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを挙げることができる。シクロアルキルアルキル基としては、炭素原子数4〜8の基を挙げることができる。シクロアルキルアルキル基の例としては、炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基と、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基との組み合わせを挙げることができる。シクロアルキルアルキル基の例としては、例えばメチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロプロピル、エチルシクロブチル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、プロピルシクロプロピル、プロピルシクロブチル及びプロピルシクロペンチルを挙げることができる。
【0019】
C1〜6アルキル基及びC3〜8シクロアルキル基は、C1〜4アルコキシ基及びヒドロキシ基から選択される群の1つ又は複数の成員によって任意で置換されていてもよい。C1〜4アルキル基の例としては、炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルを挙げることができる。C1〜4アルコキシ基の例としては、炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ及びtert−ブトキシを挙げることができる。
【0020】
本発明による歯科用セメント組成物は、ポリマー骨格内に、以下の式(I)、式(II)及び/又は式(III):
【化8】
によって表される繰り返し単位を有する重合性ポリ酸ポリマーを含む。
【0021】
第1の具体的な実施形態では、重合性ポリ酸ポリマーは、ポリマー骨格内に、上記の式(I)、式(II)又は式(III)のうち1つのみによって表される繰り返し単位のみを含有する。
【0022】
第2の具体的な実施形態では、重合性ポリ酸ポリマーは、ポリマー骨格内に、上記の式(I)、式(II)又は式(III)のうち2つによって表される繰り返し単位を含有する。
【0023】
第3の具体的な実施形態では、重合性ポリ酸ポリマーは、ポリマー骨格内に、上記の式(I)、式(II)及び式(III)によって表される繰り返し単位を含有する。
【0024】
上記の式(I)、式(II)及び式(III)において、XはO、S又はNR’を表し、ここでR’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基、C
3〜C
6シクロアルキル基、又はC
4〜C
8シクロアルキルアルキル基を表す。好ましくは、XはO又はNR’を表し、ここでR’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基を表す。
【0025】
上記の式(I)、式(II)及び式(III)において、Yは以下の式(IV):
【化9】
の基を表す。
【0026】
式(I)、式(II)、式(III)及び(IV)のいずれにおいても、L
1、L
2、L
3及びL
4は各々、互いに独立して、単結合、直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキレン基、直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルケニレン、又は酸素原子及び硫黄原子から選択される1個〜8個の原子を含む直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
20アルキレン基を表し得る。単結合、直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキレン基、又は酸素原子及び硫黄原子から選択される1個〜8個の原子を含む直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
20アルキレン基が好ましい。
【0027】
式(IV)において、X’はO、S又はNR’’を表し、ここでR’’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基、C
3〜C
6シクロアルキル基、又はC
4〜C
8シクロアルキルアルキル基を表す。好ましくは、X’はO又はNR’’を表し、ここでR’’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基を表す。
【0028】
式(IV)において、mは0〜3、好ましくは0、1又は2である。
【0029】
上記の式(IV)において、nは1、2又は3である。
【0030】
ポリマー骨格内に、以下の式(I)及び/又は式(II)によって表される繰り返し単位を有する重合性ポリ酸ポリマーは、
(i)アクリル酸と無水マレイン酸及びイタコン酸無水物の群から選択される1つ又は複数のモノマーとを含有する混合物を共重合する工程と、
(ii)(i)の反応生成物をHXY(式中、X及びYは上記で規定されるとおりである)と反応させる工程と
を含む方法によって製造することができる。
【0031】
ポリマー骨格内に、式(III)によって表される繰り返し単位を有する重合性ポリ酸ポリマーは、YCOOH(式中、Yは上記で規定されるとおりである)のカルボン酸無水物を、以下の式(V):
【化10】
(式中、Xは上記で規定されるとおりである)の繰り返し単位を含有するポリマー又はコポリマーと反応させる工程を含む方法によって製造することができる。
【0032】
歯科用セメント組成物は好ましくは、反応性粒子状ガラスと、反応性アイオノマーとしてポリマー骨格内に特定の繰り返し単位を有する重合性ポリ酸ポリマーとを含む水性歯科用グラスアイオノマー組成物である。本発明による重合性ポリ酸ポリマーは、好ましくはカルボン酸基を含有し得る。ただし、カルボン酸基の一部は塩の形態で存在する場合もある。好適なカルボン酸塩はアルカリ金属イオン及びアンモニウムイオンをベースとする。
【0033】
粒子状反応性ガラスは、水の存在下でアイオノマーと反応してヒドロゲルを形成することが可能な、粉末状の金属酸化物若しくは金属水酸化物、ケイ酸金属塩(mineral silicate)又はイオン浸出性のガラス若しくはセラミックである。粒子状ガラスは、Ca、Ba、Sr、Al、Si、Zn、Na、K、B、Ag又はPの混合酸化物を含有し得る。粒子状反応性ガラス材料の例としては、カルシウム又はストロンチウム含有材料及びアルミニウム含有材料等といった、グラスアイオノマーセメントの技術分野で一般に知られる材料が挙げられる。好ましくは、粒子状反応性充填剤は浸出性のフッ化物イオンを含有する。
【0034】
粒子状反応性ガラスの具体例は、カルシウムアルミノケイ酸塩ガラス、カルシウムアルミニウムフルオロケイ酸塩ガラス、カルシウムアルミニウムフルオロホウケイ酸塩ガラス、ストロンチウムアルミノケイ酸塩ガラス、ストロンチウムアルミノフルオロケイ酸塩ガラス、ストロンチウムアルミノフルオロホウケイ酸塩ガラスから選択される。
【0035】
好適な粒子状反応性ガラスには、例えば特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18及び特許文献19に記載されているような、酸化亜鉛及び酸化マグネシウム等の金属酸化物、並びにイオン浸出性のガラスが更に含まれる。好ましい実施形態では、粒子状ガラスはバリウムフルオロアルミノケイ酸塩ガラス及び/又はストロンチウムフルオロアルミノケイ酸塩ガラスである。
【0036】
好ましい実施形態によると、反応性粒子状ガラスは、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、リン及びフッ素を必須要素として含有するが、ケイ素、アルミニウム、亜鉛及びリンは組成物中に主に酸化物として含有される。具体的には、前記反応性粒子状ガラスが、
a.10重量%〜35重量%のシリカ、
b.10重量%〜35重量%のアルミナ、
c.3重量%〜30重量%の酸化亜鉛、
d.4重量%〜30重量%のP
2O
5、
e.3重量%〜25重量%のフッ化物
を含み得る。
【0037】
シリカ(SiO
2として計算される)は、ガラス組成物中に好ましくは10重量%〜35重量%の量で含有される。より好ましい実施形態では、シリカは20重量%〜25重量%の量で含有される。アルミナ(Al
2O
3として計算される)は、好ましくは10重量%〜35重量%の量で含有される。より好ましい実施形態では、アルミナは20重量%〜25重量%の量で含有される。シリカとアルミナとの間の重量比は、好ましくは1.2〜0.8の範囲内、より好ましくは1.15〜1.0の範囲内である。
【0038】
酸化亜鉛(ZnOとして計算される)は、本発明に従って使用されるガラス組成物中に好ましくは3重量%〜30重量%の量で含有される。より好ましい実施形態では、酸化亜鉛は13重量%〜18重量%の量で含有される。
【0039】
五酸化リン(P
2O
5として計算される)は、本発明に従って使用されるガラス組成物中に好ましくは4重量%〜30重量%の量で含有される。好ましい実施形態では、五酸化リンは14重量%〜18重量%の量で含有される。
【0040】
フッ化物は、本発明によるガラス組成物中に好ましくは3重量%〜25重量%の量で含有される。好ましい実施形態では、フッ化物は4重量%〜7重量%の量で含有される。
【0041】
好ましい必須要素に加えて、本発明の粒子状ガラス組成物は、18重量%〜21重量%の酸化カルシウム及び酸化ストロンチウムを更に含み得る。
【0042】
粒子状ガラス組成物は、本質的にいかなるアルカリ金属酸化物も含有しないのが好ましい。特に、ガラス組成物は多くとも2重量%、好ましくは多くとも1.5重量%のアルカリ金属酸化物M
2O(式中、MはLi、Na又はKである)しか含有しない。好ましい実施形態では、粒子状ガラス中のNa
2Oの含有量は1重量%未満である。
【0043】
粒子状反応性ガラスは表面改質剤によって表面改質されていてもよい。改質化合物は、粒子状反応性ガラスの表面原子と反応し、それにより粒子状反応性ガラスの表面原子と改質化合物との間に共有結合を形成することが可能である。
【0044】
表面改質剤は、二重の機能をもたらす改質化合物を含有していてもよい。例えば、改質化合物は、架橋反応に関与することが可能な1つ又は複数の官能基を含有することによって更なる架橋を促進することができ、それにより硬化したセメントは改善された曲げ強度及び破壊靱性を有する。改質剤は1つ又は複数の改質化合物を含有していてもよい。
【0045】
好ましくは、表面改質剤は、加水分解性の有機官能性ケイ素化合物を含有する。加水分解性の有機官能性ケイ素化合物は、以下の式(II’)、式(III’)及び式(IV’):
X’
mR
3−mSiL (II’)
X’
mR
2−mSiL’L’’ (III’)
X’
mSiL’L’’L’’’ (IV’)
(式中、
X’は加水分解性基を表し、
Rはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
L、L’、L’’及びL’’’は同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1つ又は複数の−SxH基(式中、xは1〜6の整数である)を含有する有機基を表し、
mは少なくとも1の整数であり、
X、R、L、L’、L’’及びL’’’の和は式(II’)、式(III’)及び式(IV’)の各々について4である)
のうち1つの化合物、又はその加水分解生成物であり得る。
【0046】
好ましくは、Xはハロゲン原子又はOR
1であり、R
1はアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。より好ましくは、R又はR
1は独立してアルキル基である。
【0047】
有機官能性ケイ素化合物に架橋能力を付与するために、L、L’、L’’及びL’’’は、−S
xH基(式中、xは1〜6の整数、好ましくは1である)、又は(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基若しくはビニル基等の重合性基を含有していてもよい。
【0048】
好ましい実施形態では、L、L’、L’’及びL’’’は、以下の式:
−[(CH
2)oZ’]q(CH
2)pL
iv
(式中、
Z’は同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、−NR’−、−O−、S又はPR’(式中、R’は独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す)を表し、
L
ivは、ポリマー骨格内に上記で規定されるような特定の繰り返し単位(I)、(II)及び/又は(III)を含む直鎖状若しくは分岐状のポリマー部分、又はSxH、又は(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基若しくはビニル基等の重合性二重結合、又は以下の式(IV):
【化11】
(式中、L
3及びL
4は各々、互いに独立して、単結合、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキレン基、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルケニレン基を表し、X’はO、S又はNR’’を表し、ここでR’’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基、C
3〜C
6シクロアルキル基、又はC
4〜C
8シクロアルキルアルキル基を表す)の基を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表し、
xは1〜6の整数である)
によって表すことができる。
【0049】
更に好ましい実施形態では、L、L’、L’’及びL’’’は、以下の式:
−[(CH
2)oNR’]q(CH
2)pL
iv
(式中、
R’は同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
L
ivは、酸性基を含み、上記で規定されるような特定の繰り返し単位(I)、(II)及び/又は(III)を含有するポリマー骨格を有する直鎖状若しくは分岐状のポリマー部分、又はSxH、又は(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基若しくはビニル基等の重合性二重結合、又は以下の式(IV):
【化12】
(式中、L
3、L
4及びX’は各々、上記で規定されるとおりである)の基を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表し、
xは1〜6の整数である)
によって表すことができる。
【0050】
また更に好ましい実施形態では、L、L’、L’’及びL’’’は、以下の式:
−[(CH
2)
oZ’’]
q(CH
2)
pL
iv
(式中、
Z’’は酸素原子又は硫黄原子を表し、
L
ivは、酸性基を含み、上記で規定されるような特定の繰り返し単位(I)、(II)及び/又は(III)を含むポリマー骨格を有する直鎖状又は分岐状のポリマー部分を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表す)
によって表すことができる。
【0051】
本発明において使用される表面改質剤中に含有される改質化合物の具体例は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルエトキシシランである。この化合物は単独で、又は2つ以上の異なる化合物の組み合わせで使用することができる。
【0052】
界面活性剤での粒子状反応性ガラスの処理によって、反応性充填剤の表面は、更なる硬化反応(α,β−不飽和エステル基に対するSxH基のマイケル付加、SxH基の酸化カップリング反応、エン型(ene-type)反応、縮合反応又はラジカル重合等)に使用することのできるL
iv基又は式(IV)の基等の官能基を提示し得る。
【0053】
表面改質剤はそのまま、又は好適な溶媒中に溶解若しくは分散させて使用することができる。好適な溶媒の例はトルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び酢酸エチルである。
【0054】
粒子状反応性ガラスは、例えば電子顕微鏡法によって、又は従来のレーザー回折式粒度測定法(MALVERNのMastersizer S装置又はMALVERNのMastersizer 2000装置によって具体化されるようなもの)を用いて測定されるような平均粒度が、通常は0.005μm〜100μm、好ましくは0.01μm〜40μmである。粒子状反応性ガラスは、平均粒度の異なる2つ以上の粒子画分の混合物である多モードの(multimodal)粒子状反応性ガラスであってもよい。粒子状反応性ガラスはまた、化学組成の異なる粒子の混合物であってもよい。特に、粒子状反応性材料と粒子状非反応性材料との混合物を使用することが可能である。
【0055】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、組成物全体の重量に基づいて、好ましくは20重量パーセント〜80重量パーセント、より好ましくは40重量パーセント〜70重量パーセントの反応性粒子状ガラスを含む。
【0056】
さらに、本発明の歯科用セメント組成物は、酸性基を含み、ポリマー骨格を有するグラフト化した直鎖状又は分岐状のポリマー鎖を含む分散ナノ粒子を任意で更に含んでいてもよい。ポリマー骨格は、上記で規定されるような式(I)、式(II)及び/又は式(III)によって表されるポリマー骨格内の繰り返し単位を含んでいてもよく、セメント反応において粒子状ガラスと反応性である。
【0057】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、セメント反応において粒子状ガラスと反応性である、上記で規定されるような式(I)、式(II)及び/又は式(III)によって表される繰り返し単位をポリマー骨格内に有する重合性ポリ酸ポリマーを更に含む。
【0058】
第1の好ましい実施形態では、重合性ポリ酸ポリマーは、ポリマー骨格内に、式(I)によって表される繰り返し単位を含有する。
【0059】
第2の好ましい実施形態では、重合性ポリ酸ポリマーは、ポリマー骨格内に、式(II)によって表される繰り返し単位を含有する。
【0060】
第3の好ましい実施形態では、重合性ポリ酸ポリマーは、ポリマー骨格内に、式(I)及び式(II)によって表される繰り返し単位を含有する。
【0061】
第4の好ましい実施形態では、重合性ポリ酸ポリマーは、ポリマー骨格内に、式(III)によって表される繰り返し単位を含有する。
【0062】
重合性ポリ酸ポリマーは直鎖状又は分岐状のポリマーであってもよく、酸性基を含んでいてもよい。重合性ポリ酸ポリマーは、ポリマー骨格及び任意で更なるペンダント基を有する。骨格が酸性基を含んでいてもよく、任意でペンダント基が酸性基を含んでいてもよい。酸性基は好ましくはカルボン酸基である。
【0063】
ポリマー骨格内に、上記で規定されるような式(I)及び/又は式(II)によって表される繰り返し単位を有する重合性ポリ酸ポリマーは、
(i)アクリル酸と無水マレイン酸及びイタコン酸無水物の群から選択される1つ又は複数のモノマーとを含有する混合物を共重合する工程と、
(ii)(i)の反応生成物をHXY(式中、X及びYは上記で規定されるとおりである)と反応させる工程と
を含む方法によって調製することができる。
【0064】
共重合条件は特に限定されない。好ましくは、工程(i)において、重合性モノマーを含有する混合物を蒸留水等の好適な溶媒、又はエタノール等の水混和性アルコールを含有する水性混合物に溶解させ、窒素でフラッシュした後、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等の開始剤分子を添加する。混合物は必要に応じて更なるモノマーを含有してもよい。好ましいコモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、スチレン、8−メチルスチレン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸エチルトリエチレングリコール、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸1−テトラデシル、アクリル酸1−ヘキサデシル、メタクリル酸1−ヘキサデシル、アクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸n−オクタデシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロピラニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、ポリ(エチレングリコール)(n)モノメタクリレート(n=200及び400)、ポリ(エチレングリコール)(n)モノメチルエーテルモノメタクリレート(n=200、400及び1000)、アクリル酸2−イソシアナトエチル、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−スルホエチル、アクリル酸3−スルホプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、スチレン、α−メチルスチレン、4−シアノスチレン、4−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、酢酸ビニル及びN−ビニルピロリドンである。
【0065】
重合性化合物は、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、スチレン、8−メチルスチレン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン及びアクリロニトリルの群から選択することができる。
【0066】
反応時間は、反応を完了させるためには5分間〜120時間、好ましくは2時間〜48時間であり得る。反応温度は室温から溶媒の沸点までであり得る。反応が終了した後、反応生成物をアセトン中での沈殿によって単離してもよい。コポリマーを水に溶解させ、凍結乾燥することによって精製してもよい。
【0067】
続いて、コポリマーをHXY(式中、X及びYは上記で規定されるとおりである)と反応させる。したがって、コポリマーをジクロロメタン等の好適な溶媒中のHXYの溶液に、N−エチル−ジイソプロピルアミン等の好適な触媒及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール(BHT)等の阻害剤の存在下で添加することができる。反応を好ましくは、マイクロ波エネルギー、好ましくは0.5ワット〜100ワット、より好ましくは1ワット〜10ワットのエネルギーを照射することによって促進する。反応時間は、反応を完了させるためには1分間〜12時間、好ましくは2分間〜30分間であり得る。反応温度は室温から溶媒の沸点までであり得る。好ましくは、マイクロ波エネルギーの照射は、室温及び大気圧下で以下の式に従う。
5W・分≦(照射エネルギー(W))(照射時間(分))≦100W・分
【0068】
好ましくは、マイクロ波エネルギーの照射は80W・分以下である。合成は非特許文献5に従って行うことができる。
【0069】
生成物を水への溶解によって単離してもよく、アセトン中での再沈殿によって精製してもよい。精製を凍結乾燥によって行ってもよい。
【0070】
ポリマー骨格内に、式(III)によって表される繰り返し単位を有する重合性ポリ酸ポリマーは、YCOOH(式中、Yは上記で規定されるとおりである)のカルボン酸無水物を、以下の式(V):
【化13】
(式中、Xは上記で規定されるとおりである)の繰り返し単位を含有するポリマー又はコポリマーと反応させる工程を含む方法によって製造することができる。
【0071】
式(I)、式(II)及び式(III)のいずれにおいても、XはO、S又はNR’を表し、ここでR’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基、C
3〜C
6シクロアルキル基、又はC
4〜C
8シクロアルキルアルキル基を表す。好ましい実施形態によると、良好な水溶性を有する重合性ポリ酸ポリマーを提供するためには、XはO又はNHを表す。
【0072】
カルボン酸基又はカルボン酸無水物基の一部を、組成物中に存在する−SxH基とのエン型反応に関与することのできる炭素−炭素二重結合を含有する更なる二官能性モノマー、及び/又は組成物中に存在する−SxH基とのマイケル付加反応、及び任意でラジカル重合反応に関与することのできる反応性α,β−不飽和部分を含有する二官能性モノマーと反応させることによって、最終的なアイオノマーセメント組成物に更なる強度を付与する更なる共有結合架橋源を作り出すことが可能である。
【0073】
式(I)、式(II)及び式(III)のいずれにおいても、XはO、S又はNR’を表し、ここでR’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基、C
3〜C
6シクロアルキル基、又はC
4〜C
8シクロアルキルアルキル基を表す。
【0074】
好ましくは、XはO又はNR’を表し、ここでR’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基を表す。
【0075】
式(I)、式(II)及び式(III)のいずれにおいても、Yは式(IV)の基を表し、L
1、L
2、L
3及びL
4は各々、互いに独立して、単結合、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキレン基、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルケニレン基を表し、X’はO、S又はNR’’を表し、ここでR’’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基、C
3〜C
6シクロアルキル基、又はC
4〜C
8シクロアルキルアルキル基を表す。
【0076】
好ましくは、Yは式(IV)の基を表し、L
1、L
2、L
3及びL
4は各々、互いに独立して、単結合、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキレン基を表し、X’はO又はNR’’を表し、ここでR’’は水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1〜C
6アルキル基を表す。
【0077】
本発明による特定のポリマー骨格をアイオノマーセメントに組み込むことによって、脆弱性を更に改善することができるだけでなく、機械的強度及び物理的性質が改善され、同時に重合性ポリ酸ポリマーの水溶性は、酸性基に結合した重合性部分を含有しない対応するポリ酸ポリマーと比較して損なわれない。
【0078】
酸性基を含む直鎖状又は分岐状のポリマーは、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは5000〜400000の範囲の分子量Mwを有する。
【0079】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、酸性基を含有する直鎖状又は分岐状のポリマーを、組成物全体の重量に基づいて、好ましくは10重量パーセント〜80重量パーセント、より好ましくは15重量パーセント〜55重量パーセント含む。
【0080】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、組成物全体の重量に基づいて0重量パーセント〜75重量パーセントの分散ナノ粒子を含み得る。好ましくは、組成物は、組成物全体の重量に基づいて5重量パーセント〜50重量パーセントの分散ナノ粒子を含有する。好ましい実施形態では、分散ナノ粒子は、1nm〜100nmの平均粒度を有する。
【0081】
本発明のグラスアイオノマー組成物は、任意で低分子化合物を更に含有していてもよい。低分子化合物は、100〜5000の範囲、好ましくは200〜2000の範囲の分子量Mwを有し得る。低分子化合物は1つ又は複数の−SxH基(式中、xは1〜6の整数である)を含有してもよい。代替的には、低分子化合物は、エン型反応又はマイケル付加反応においてグラスアイオノマー組成物中に存在する−SxH基と反応することのできる部分を含有してもよい。好適なポリチオール化合物の具体例は、PEGジチオール(例えばAldrichの704369、平均分子量:1500;Aldrichの704539、平均分子量:3400)、1,16−ヘキサデカンジチオール、Asn−Arg−Cys−Ser−Gln−Gly−Ser−Cys−Trp−Asn(還元型=85%(HPLC)C44H67N17O16S2、1154.24)等のペプチド、トリチオシアヌル酸、テトラチオール及びテトラピロールで置換されたテトラチアフルバレン誘導体、ペンタエリスリチルテトラチオール、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール並びにペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)である。
【0082】
本発明のグラスアイオノマー組成物は、粒子状ガラス、及び/又は酸性基を含む直鎖状ポリマー、及び/又は任意の分散ナノ粒子、及び/又は低分子化合物を架橋する−SxH基(式中、xは1〜6の整数である)を含み得る。−SxH基(式中、xは1〜6の整数である)はスルファン基又はポリスルファン基であり、xは好ましくは1〜3である。具体的には、−SxH基は好ましくはチオール基(−SH)、ジスルファン基(−S−SH)又はトリスルファン基(−S−S−SH)である。より好ましい実施形態では、−SxH基はチオール基であり、第一級チオール基であっても、又は第二級チオール基であってもよい。
【0083】
架橋反応が−SxH基の酸化カップリングに基づく場合、−SxH基(式中、xは1〜6の整数である)は反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する直鎖状若しくは分岐状のポリマー、任意の分散ナノ粒子のいずれか、又は組成物中に存在する任意の低分子化合物に存在し得る。好ましくは、酸化カップリングは酸化剤の存在下での金属触媒酸化カップリングである。このため、組成物は好ましくは遷移金属イオン及び酸化剤を含有する。遷移金属イオンの例は鉄イオン及びマンガンイオンである。また、組成物は好ましくは酸化剤を含有する。好適な酸化試薬の例は、過酸化水素等の過酸化物、又はフリーラジカル重合開始剤として一般に使用される過酸物化合物(peroxide compound)である。
【0084】
第1の好ましい実施形態では、−SxH基は反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する直鎖状若しくは分岐状のポリマー、又は任意の分散ナノ粒子のいずれかにのみ存在する。−SxH基が組成物中に存在する任意の更なる低分子成分にのみ存在する場合、反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する直鎖状若しくは分岐状のポリマー、及び/又は任意の分散ナノ粒子は、−SxH基とのエン型反応又はマイケル付加に関与することのできる反応性炭素−炭素二重結合を含有することが必要であろう。具体的には、−SxH基は酸性基を含有する直鎖状又は分岐状のポリマーに存在し得る。
【0085】
第2の好ましい実施形態では、−SxH基は反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する直鎖状若しくは分岐状のポリマー、任意の分散ナノ粒子又は任意の低分子化合物のいずれかの群から選択される少なくとも2つの成員に存在する。この基から選択される任意の他の成員が、−SxH基とのエン型反応又はマイケル付加に関与することのできる反応性炭素−炭素二重結合を含有してもよい。
【0086】
第3の好ましい実施形態では、反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する直鎖状若しくは分岐状のポリマー、任意の分散ナノ粒子又は任意の低分子化合物の群から選択される成員の各々が、−SxH基、又は−SxH基とのエン型反応に関与することのできる反応性炭素−炭素二重結合のいずれかを含有する。
【0087】
このため、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物では、−SxH基は酸化カップリングによって、粒子状ガラス、及び/又は酸性基を含有する直鎖状若しくは分岐状のポリマー、及び/又は任意の分散ナノ粒子を架橋することができる。
【0088】
更なる好ましい実施形態では、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物のスルファン基又はポリスルファン基は、粒子状ガラス、及び/又は酸性基を含有する直鎖状ポリマー、及び/又は任意の分散ナノ粒子を酸素の非存在下で架橋する。好ましくは、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物中の−SxH基は、−SxHエン型反応又はマイケル付加によって架橋される。
【0089】
本発明の歯科用グラスアイオノマー組成物は、架橋反応触媒、遅延剤、フリーラジカル重合開始剤、安定剤、非反応性充填剤、溶媒、顔料、非ガラス質(nonvitreous)充填剤、フリーラジカル捕捉剤、重合防止剤、反応性希釈剤及び非反応性希釈剤、充填剤の反応性を高めるカップリング剤、レオロジー調整剤並びに界面活性剤(防止剤の溶解度を高めるため等、例えばポリオキシエチレン)を更に含有していてもよい。
【0090】
好適な架橋反応触媒は、金属カチオン、金属錯体、及び/又は金属粉末若しくは金属コロイド等の金属粒子を単独で、又は酸素、過酸化物及び/又は酸化性金属錯体等の酸化剤と組み合わせて含んでいてもよい。一態様では、触媒及び酸化剤は同じ材料を含み得る。金属カチオン、金属錯体及び/又は金属粒子は鉄原子、ニッケル原子、銅原子、コバルト原子若しくは白金原子、又は対応するそのイオンを含み得る。過酸化物は過酸化水素、過酸化尿素、エチルメチルケトンペルオキシド又は過酸化ベンゾイルを含み得る。
【0091】
好適な遅延剤は、酒石酸等の複数のカルボン酸基を有する低分子量化合物である。
【0092】
好適なラジカル重合開始剤は、以下の種類の開始剤系から選択することができる。
有機過酸化物とアミンとの組み合わせ。有機過酸化物は、過酸化ベンゾイル、又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルアミルペルオキシド、ジ−(tert−ブチル)ペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチル−ペルオキシ−(3,5,5−トリメチルヘキサノエート)、tert−ブチルペルオキシベンゾエート及びtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等の熱的により安定な過酸化物であり得る。アミン化合物はDMABE等の芳香族アミン化合物であり得る。
有機過酸化物と、還元剤と、好適な金属イオンとの組み合わせ。過酸化物は、過酸化ベンゾイル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルアミルペルオキシド、ジ−(tert−ブチル)ペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチル−ペルオキシ−(3,5,5−トリメチルヘキサノエート)、tert−ブチルペルオキシベンゾエート及びtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートから選択され得る。還元剤は、特許文献20に開示されるように活性還元剤を形成する不活性形態の保護還元剤であり得る。金属イオンは、酢酸塩、サリチル酸塩、ナフテン酸塩、チオ尿素錯体、アセチルアセトネート又はエチレンテトラミン酢酸として存在し得る金属の塩又は有機金属化合物であり得る。好適な金属イオンは銅、鉄及び銀から選択される。
ヒドロペルオキシドと金属イオンとの組み合わせ。好適なヒドロペルオキシドは過酸化水素である。好適な金属は鉄及び銅から選択され得る。
ラジカル種を形成し得るオクタカルボニル二銅錯体等の遷移金属カルボニル化合物。
アルキルボラン等のアルキルホウ素化合物。
ペルオキソ二硫酸塩とチオール化合物との組み合わせ。
【0093】
歯科用修復材組成物が薄層として塗布される場合、又は重合性基質及び充填剤の屈折率が同様である場合には、光重合開始剤を使用することが可能である。好適な光重合開始剤としては、アミンと組み合わせたカンファーキノンを挙げることができる。
【0094】
好適な安定剤は、ビタミンC、無機硫化物及びポリスルフィド等の還元剤から選択することができる。
【0095】
好適な非反応性充填剤は、歯科用修復材組成物に現在使用されている充填剤から選択することができる。充填剤は微粉化されているものとし、好ましくは約100μm未満の最大粒径及び約10μm未満の平均粒径を有する。充填剤は単峰性又は多峰性(例えば二峰性)の粒度分布を有し得る。充填剤は無機材料であってもよい。充填剤は、重合性樹脂に不溶性であり、任意で無機充填剤で充填された架橋有機材料であってもよい。充填剤は放射線不透過性、放射線透過性又は非放射線不透過性であり得る。
【0096】
好適な非反応性無機充填剤の例は、石英、窒化ケイ素等の窒化物、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、Ba及びAlから誘導されたガラス、コロイドシリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、タルク、チタニア及び亜鉛ガラス、並びに焼成シリカ等のサブミクロンシリカ粒子等のような天然材料又は合成材料である。
【0097】
好適な非反応性有機充填剤粒子の例としては、充填又は無充填の微粉ポリカーボネート又はポリエポキシドが挙げられる。
【0098】
好ましくは、充填剤粒子の表面は、充填剤と基質との間の結合を増強するためにカップリング剤で処理されている。好適なカップリング剤の使用には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が含まれる。
【0099】
好適な溶媒又は非反応性希釈剤としては、エタノール及びプロパノール等のアルコールが挙げられる。好適な反応性希釈剤は、靱性、付着性及び凝結時間等の性質を変化させるα,β−不飽和モノマー、例えばメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピルである。
【0100】
好適なα,β−不飽和モノマーは、水溶性、水混和性又は水分散性であり得る。水溶性、水混和性又は水分散性のアクリレート及びメタクリレート、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ビス−フェノールAのメタクリル酸ジグリシジル(「bis−GMA」)、モノアクリル酸グリセロール及びジアクリル酸グリセロール、モノメタクリル酸グリセロール及びジメタクリル酸グリセロール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する)、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する)、特にジメタクリル酸トリエチレングリコール(「TEGDMA」)、ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、ジメタクリル酸ネオペンチルグリコール、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールのモノアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート及びテトラアクリレート、ジアクリル酸1,3−ブタンジオール、ジメタクリル酸1,3−ブタンジオール、ジアクリル酸1,4−ブタンジオール、ジメタクリル酸1,4−ブタンジオール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサンエチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−アクリロキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−メタクリレート]プロパン、並びに2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−アクリレート]プロパンに言及することができる。重合性成分の他の好適な例は、イソプロペニルオキサゾリン、ビニルアズラクトン、ビニルピロリドン、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸ウレタン又はメタクリル酸ウレタン、エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレート、及びアクリル酸ポリオール又はメタクリル酸ポリオールである。
【0101】
また、更に好ましい化合物群は、ジアリルアミン等のジアリル化合物である。
【0102】
α,β−不飽和モノマーの混合物を所望に応じて添加することができる。好ましくは、混合済みであるが未凝結の本発明のセメントは、混合済みであるが未凝結のセメント成分の全重量(水、溶媒、希釈剤及びα,β−不飽和モノマーを含む)に基づいて、約0.5%〜約40%、より好ましくは約1%〜約30%、最も好ましくは約5%〜20%の総重量の水、溶媒、希釈剤及びα,β−不飽和モノマーを含有する。
【0103】
好適なフリーラジカル捕捉剤の一例は4−メトキシフェノールである。
【0104】
好適な重合防止剤は、ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、1,4−ベンゾキノン、tert−ブチルピロカテコール、トルヒドロキノン及び3,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールから選択することができる。防止剤の量は、コポリマー/コモノマー/水混合物の全重量に基づいて、0.001%〜2%、好ましくは0.02%〜0.5%から選択することができる。
【0105】
酸化カップリングによって−SxH基を架橋するために、外部エネルギーを代替的又は付加的に利用することができる。外部エネルギー源は、熱エネルギー源、超音波エネルギー源、及び/又は紫外線ランプ若しくは可視光ランプ等の光エネルギー源等といった放射エネルギー源から選択することができる。酸化カップリングによって−SxH基を架橋するために光エネルギーを利用する場合には、歯科用グラスアイオノマー組成物は、分子状酸素、α−ジケトン、オルトキノン、有機色素、蛍光色素若しくは着色剤等の光開始剤及び/又は光増感剤、及び/又はアゾビスイソブチロニトリル及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物を更に含み得る。
【0106】
歯科用グラスアイオノマー組成物は、歯科用アイオノマーセメントに使用することができる。かかるセメントは2つの主要な群に分類することができる。第1の群は、その主成分として、α,β−不飽和カルボン酸のホモポリマー又はコポリマー(例えばポリアクリル酸、コポリ(アクリル酸、イタコン酸)等)、改質フルオロアルミノケイ酸塩ガラス等の改質粒子状反応性充填剤、水、及び酒石酸等のキレート剤を利用する従来のグラスアイオノマーに関する。かかる歯科用アイオノマーセメントは、使用直前に混合される粉末形態/液体形態で供給することができる。この混合物は、ポリカルボン酸の酸性基とガラスから浸出したカチオンとの間のイオン反応、並びに−SxH基に基づく架橋反応のために暗所で自己固化する。第2の主要な群は樹脂改質グラスアイオノマーセメントに関する。従来のグラスアイオノマーと同様、樹脂改質グラスアイオノマーセメントも、本発明の方法に従って取得可能な改質粒子状反応性充填剤を用いるが、樹脂改質グラスアイオノマーセメントの有機部は異なる。或るタイプの樹脂改質グラスアイオノマーセメントでは、例えば特許文献21に記載のように、酸性繰り返し単位の一部をペンダント硬化性基で置き換えるか、又はエンドキャップするようにポリカルボン酸が修飾され、光開始剤を添加することで第2の硬化機構がもたらされる。アクリレート基又はメタクリレート基をペンダント硬化性基として利用することができる。例えば特許文献8に記載のように、レドックス硬化系を添加して第3の硬化機構をもたらすことができる。別のタイプの樹脂改質グラスアイオノマーセメントでは、例えば非特許文献6、並びに特許文献22、特許文献23、特許文献24及び特許文献25に記載のように、セメントはポリカルボン酸、アクリレート機能性又はメタクリレート機能性モノマー、及び光開始剤を含む。様々なモノマー含有セメント又は樹脂含有セメントが、特許文献7、特許文献26、特許文献27及び特許文献28にも示されている。樹脂改質グラスアイオノマーセメントは粉末/液体系又はペースト/ペースト系として配合することができ、混合及び適用の溶媒として水を含有してもよい。樹脂改質グラスアイオノマーセメントは、ポリカルボン酸の酸性基とガラスから浸出したカチオンとの間のイオン反応、並びに水性歯科用グラスアイオノマー組成物のpHが、粒子状ガラスと反応性の直鎖状ポリカルボン酸の主要な凝結反応の終了時に少なくとも6である場合に、粒子状ガラス及び/又は直鎖状ポリカルボン酸及び/又は任意の分散ナノ粒子の架橋反応のために暗所で固化する。また、樹脂改質グラスアイオノマーセメントは、セメントを歯科用硬化ランプからの光に暴露することによっても硬化する。
【0107】
グラスアイオノマー組成物を製造する方法は既知である(非特許文献7)。歯科用アイオノマーセメントは、アイオノマーを粒子状反応性充填剤及び任意でナノ粒子と水の存在下で混合することによって製造される。アイオノマーセメント系の成分を様々な方法及び量で(例えば混合するか又は混和させることによって)組み合わせることによって、本発明のアイオノマーセメントを形成することができる。例えば、アイオノマーの濃縮水溶液を、使用時に改質粒子状反応性充填剤及び任意で更なる成分と混合することができる。得られるアイオノマーと、改質粒子状反応性充填剤と、水との組み合わせによって凝結反応が開始する。代替的には、アイオノマー及び改質粒子状反応性充填剤は、凝結反応を進行させるのに十分な水が存在しない条件下では、フリーズドライ又は凍結乾燥させた粉末状の混和物として提供される。その後、かかる系を使用時に水と組み合わせることによって、凝結反応を開始させることができる。凝結反応が開始した後、得られる混合物をその所望の形状に形成し、その後硬化させて混合物を完全に固化することができる。概して、アイオノマー対水の重量/重量比は約1:10〜約10:1である。概して、水中のアイオノマーの濃度は、25重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜65重量%の範囲である。得られる水溶液の液体に対するポリマーの比は概して、約1.5〜8の範囲である。
【0108】
特許文献29、特許文献30、特許文献31及び特許文献32に記載されているように、セメントを調製する際の作業時間及び凝結時間をそれぞれ製造するために、反応混合物は酒石酸等の遅延剤又は改質剤を更に含んでいてもよい。概して、作業時間の増加は凝結時間の増加にもつながる。「作業時間」は、アイオノマー及び改質粒子状反応性充填剤を水の存在下で組み合わせた際の凝結反応の開始と、その意図する歯科用途又は医学的用途のために更なる物理的作業を系に対して行うこと、例えばそれをスパチュラで扱う(spatulate)か又は再形成することが実際的でなくなる時点まで凝結反応が進行した時点との間の時間である。「凝結時間」は、修復物における凝結反応の開始から、その後の臨床処置又は外科処置を修復物の表面に対して行うのに十分な固化が起こった時点までに測定される時間である。
【0109】
凝結反応においては、改質粒子状反応性ガラスは塩基として振る舞い、酸性アイオノマーと反応して、結合基質として働く金属ポリ塩を形成する(非特許文献8)。また、−SxH基の存在のために、粒子状ガラスと反応性の直鎖状ポリカルボン酸の反応中に水性歯科用グラスアイオノマー組成物のpHが少なくとも6である場合、粒子状ガラス及び/又は直鎖状ポリカルボン酸及び/又は任意の分散ナノ粒子の架橋が起こる。このため、セメント内の結合は、機械的性質に関して問題となるイオン性塩架橋だけでなく、共有結合及び錯体結合にも依存する。凝結反応はしたがって、水の存在下で自動的に進行する二重化学硬化系とみなされる。セメントは数分以内にゲル様状態まで凝結し、急速に固化して強度を発現する。更なる反応は重合反応及び重付加反応である。
【0110】
歯科用組成物はマルチパック(multi-pack)組成物、好ましくは2パック(two-pack)組成物である。組成物はペースト/ペースト系、粉末/液体系又は液体/ペースト系であり得る。組成物は成分の早期硬化を回避するように設計される。この目的で、反応性無機充填剤成分及び任意の酸基含有成分を、早期セメント反応を回避するように配合しなくてはならない。第1の実施形態では、反応性無機ガラスが第1のパックに含有され、任意の酸基含有成分が第2のパックに含有される。第1のパックは粉末又はペーストであり得る。第2のパックは液体又はペーストであり得る。第2の実施形態では、第1のパックは反応性無機充填剤及びポリアクリル酸等の固体ポリ酸ポリマーを含む粉末であり、第2のパックはペースト又は液体であり、更なる酸基含有成分を含有する。
【0111】
粉末対液体の比は混合したアイオノマーセメント系の加工性に影響を及ぼす。20:1より高い重量比は加工性の低下を示す傾向があり、1:1を下回る比率は機械的性質、例えば強度の低下を示す傾向があるため、好ましくない。好ましい比率は約1:3〜約6:1、好ましくは約1:1〜4:1程度である。
【0112】
ここで、本発明を以下の実施例によって更に説明する。全ての百分率は、特に指定のない限り重量百分率を指す。
【実施例】
【0113】
[実施例1]
非特許文献9に従うヒドロキシメチルアクリレートの合成
10.0g(100.0mmol)のアクリル酸エチルエステル、2.2g(72.0mmol)のパラホルムアルデヒド及び0.8g(7.2mmol)の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を混合し、溶液が透明になるまで室温で撹拌した。酢酸エチル及びn−ヘキサン(1:1)を溶離液として用いるカラムクロマトグラフィーによって、3.0g(23%)のヒドロキシメチルアクリレートを単離した。
1H−NMR[ppm]:δ(500MHz,CDCl
3)=1.3(CH
3−CH
2);3.2(HO−CH
2);4.2(HO−CH
2);4.3(CH
3−CH
2−O);5.85(=CH
2);6.25(=CH
2)
【0114】
[実施例2]
ヒドロキシメチルアクリル酸の合成
1.0g(7.7mmol)のヒドロキシメチルアクリレートを、1.5molの5重量%水酸化ナトリウム溶液(0.46g;11.6mmolのNaOH)に溶解させ、室温で4時間撹拌した。ジエチルエーテルで数回抽出した後、エーテル相を水で洗浄し、塩化カルシウムで乾燥させて、生成物を真空乾燥させた。収量:0.47g(60%)
1H−NMR[ppm]:δ(500MHz,CDCl
3)=3.2(HO−CH
2);4.2(HO−CH
2);5.85(=CH
2);6.25(=CH
2);12.5(O=C−OH)
【0115】
[実施例3]
アクリル酸(AA)及びイタコン酸無水物(IA)の共重合
1.0g(13.9mmol)のアクリル酸及び1.56g(13.9mmol)のイタコン酸無水物を蒸留水に溶解させた。窒素で30分間フラッシュした後、0.4494g(0.139mmol)の2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドを開始剤として添加した。これを60℃で24時間、窒素下で撹拌した。このポリマーをアセトン中で再び沈殿させ、水に溶解させて凍結乾燥した。残留物を全て除去するために、このポリマー粉末をクロロホルム中で1時間撹拌し、濾過して、真空乾燥させた。収量:2.23g
13C−NMR[ppm]:δ(500MHz,D
2O)=33.4〜47.5(CH/CH
2);174.4(C=O無水物);177〜180(C=O酸)
【0116】
[実施例4]
アクリル酸とイタコン酸無水物とのコポリマー中のイタコン酸無水物の開環
0.20g(1.62mmol)の4−ジメチルアミノピリジン、1.40g(10.86mmol)のN−エチル−ジイソプロピルアミン、0.55g(5.4mmol)のヒドロキシメチルアクリル酸及び0.04g(0.18mmol)の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール(BHT)を、2.80gのジクロロメタンに溶解させた。1.00gのアクリル酸とイタコン酸無水物とのコポリマーを添加し、ジクロロメタンを真空下で除去した。反応混合物をバイアルに入れ、マイクロ波反応のために密閉した。これに5Wで10分間照射した。その後、生成物を水に溶解させ、アセトン中で再び沈殿させた後、凍結乾燥のために水に溶解させた。このポリマー粉末をイソプロパノール中で1時間撹拌し、真空乾燥させた。収量:0.83g
13C−NMR[ppm]:δ(500MHz,D
2O)=33.4〜47.5(CH/CH
2骨格);174.4(C=O無水物);177〜180(C=O酸);モノマー:62(O−CH
2−C=);127(CH
2=C);142(C=CH
2);173(C=O)