特許第5892968号(P5892968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5892968
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】巻取り機構
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/48 20060101AFI20160310BHJP
   D06F 57/12 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   B65H75/48 A
   D06F57/12 Q
   D06F57/12 D
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-77101(P2013-77101)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-201386(P2014-201386A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年2月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 商談の日 平成25年3月13日 場所 バイワールド株式会社 東京支店(東京都中央区日本橋蛎殻町1−13−7 日本橋岡村ビル5F)
(73)【特許権者】
【識別番号】392005469
【氏名又は名称】モリテックスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】服部 正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄治
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−134495(JP,U)
【文献】 実開昭48−096474(JP,U)
【文献】 特開2011−125444(JP,A)
【文献】 特開2012−205622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/48
D06F 57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り本体と、前記巻取り本体へ引き寄せられる被巻取り物とを備え、
前記巻取り本体は、引き寄せられた被巻取り物と当接する当接面を備え、
前記被巻取り物は、前記当接面と当接する被当接面を備え、
前記当接面と前記被当接面の夫々は、巻取り本体への接近方向に対し傾斜する斜面であり、前記斜面同士が当接することにより、巻取り本体への被巻取り物の前記接近方向と直交する平面における位置決めを行うものであり、
前記巻取り本体に巻き取られる紐状体を備え、巻取り方向について前記紐状体の後端側に前記被巻取り物が設けられており、
前記紐状体の前記巻取りにより、前記被巻取り物は巻取り本体へ引き寄せられるものであり、
前記斜面同士が当接状態のときの前記被巻取り物における横方向の幅を前記被巻取り物の横幅とし、
前記巻取り本体と前記被巻取り物のうちの一方は、初期当接面を備え、
前記巻取り中、前記初期当接面は、前記巻取り本体と前記被巻取り物のうちの前記一方が備える前記当接面又は前記被当接面の斜面の頂部よりも相対的に前記接近方向の前方へ位置し当該斜面よりも先に巻取り本体被と巻取り物のうちの他の一方と接触し、巻取りの進行に従い、前記初期当接面に沿って前記接触の位置が移動して行くことにより、前記接触の位置は前記頂部へ案内されるものであり、案内後前記頂部を支点として被巻取り物が巻取り本体に対し相対的に回転することにより、前記被当接面が前記当接面へ向けられ、確実に被巻取り物の前記横幅の方向が水平状態となるまで前記巻取りを行うことができるようにした巻取り機構。
【請求項2】
前記初期当接面は、前記巻取り本体と前記被巻取り物のうち初期当接面を有する前記一方が備える当接面又は被当接面の斜面の前記頂部を挟んで当該当接面又は被当接面の斜面に隣接する湾曲面であることを特徴とする請求項1記載の巻取り機構。
【請求項3】
前記当接面と前記被当接面の、一方へ磁石を設け他の一方へ当該磁石に引き寄せられる磁石又は金属を設けて前記位置決めを確定させる磁力位置確定機構と、前記当接面と前記被当接面の、一方へ凹部を設け他の一方へ凸部を設けて前記凸部の前記凹部への挿入により前記位置決めを確定させる凹凸位置確定機構の、両方又は何れか一方の位置確定機構を採用したことを特徴とする請求項1又は2記載の巻取り機構。
【請求項4】
巻取り本体は、ゼンマイバネと、ダンパーとを備え、
前記被巻取り物を前記ゼンマイバネの弾力で巻き寄せるものであり、前記ダンパーは巻取り本体にゆっくり巻取り動作を行わせ且つ最後はトルクを維持して前記水平状態まで被巻取り物を持ち上げるようにした請求項1乃至3の何れかに記載の巻取り機構。
【請求項5】
被巻取り物が物干し竿の挿通具であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の巻取り機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、巻取り機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紐やコードなどの長尺状体の巻取りにおいて、リールなどの巻取り装置が広く普及している。
例えば、特許文献1に見られるように、室内に洗濯物を干すため、天井に巻取り装置を設置し、当該巻取り装置から引き出して垂れ下げた紐にて物干し竿を吊るすものが提案されている。
天井を利用して室内に洗濯物を干す場合、紐を利用する以外にも、物干し竿を天井に支持させる提案が種々なされている。しかし、特許文献2に見られるように、物干し竿を支持する支持部材を出没させるのに天井へ大掛かりな施工を必要とするものが多く、既に建てられた家屋に後から簡単に設置できるものではない。この点、上記の通り紐で物干し竿を吊るすものは、比較的小型の巻取り装置を天井に取り付ければよく、簡単に利用できるメリットが大きい。
【0003】
上記の特許文献1について更に詳しく説明すると、特許文献1に示されたものは、浴室の壁面若しくは天井に取り付けられる左右の荷重支持部と、この荷重支持部から下方に垂下される左右の紐状体と、左右の紐状体に両端が接続される物干し竿と、左右の紐状体を上方に巻き上げることにより物干し竿を上昇させる巻き上げ装置とを備え、巻き上げ装置が、紐状体の巻取り用ドラムと、このドラムに回転力を付与するゼンマイバネとを備えた浴室用ハンガーである。
【0004】
特許文献1の図4には、浴室の天井に上記の荷重支持部(荷重支持部12)が取り付けられたものが示されている。
特許文献1に示されたものは、紐(紐状体)の下端に物干し竿が固定されており、物干し竿を使用しないときは、荷重支持部内のドラム22に紐が巻き取られ、物干し竿は、天井に寄せられ荷重支持部に保持される。
一方、物干し竿を使用しないときは、物干し竿自体をハンガー即ち吊下げ固定部材から取り外して天井をすっきりとさせておきたいとの要請がある。このため、特許文献3において、上記紐の下端には物干し竿を抜き差し自在に保持する物干し竿の挿通具を取り付け、直接当該日紐に物干し竿を固定しないでおくことが可能な吊下げ固定部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−181023号公報
【特許文献2】特開平11−333197号公報
【特許文献3】特開2007−44219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、物干し竿を取り外し可能とした場合、使用をしないときは、物干し竿が外された上記の挿通具即ち被巻取り物を、荷重支持部即ち巻取り本体の定位置に寄せて、荷重支持の定位置に配置保持させ、天井をよりすっきりと見栄え良くさせておきたいものである。
一方上述の物干し竿が取り外せないハンガーの場合、使用しないときは、特許文献1の図6において二点鎖線で示される通り、物干し竿14は、巻取り本体のケーシングの凹部へ収められる。物干し竿14の左右両端がハンガーにて吊るされるため、このような物干し竿端部の上記凹部への収容は比較的確実に行なうことができる。
しかし、物干し竿を外すことができる、特許文献3へ示す吊り下げ固定部材において、物干し竿が取り外された紐下端の挿通具は、紐の自由端として何ら規制が無くなるので、紐の巻取りによって、上記の挿通具といった被巻取り物を巻取り本体の定位置へ毎回同じ向きに寄せるのは困難である。このように位置が定まらないため、巻取り後巻取り本体から被巻取り物が下方へ不規則に突出し天井を見苦しいものとしてしまう。
【0007】
上記の事情に鑑み、本願発明は、被巻取り物を巻取り本体へ巻取る巻取り機構において、巻取り後の被巻取り物を巻取り本体の定位置に配置することができるものの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、巻取り本体と、前記巻取り本体へ引き寄せられる被巻取り物とを備え、前記巻取り本体は、引き寄せられた被巻取り物と当接する当接面を備え、前記被巻取り物は、前記当接面と当接する被当接面を備え、前記当接面と前記被当接面の夫々は、巻取り本体への接近方向に対し傾斜する斜面であり、前記斜面同士が当接することにより、巻取り本体への被巻取り物の前記接近方向と直交する平面(仮想面)における位置決めを行うものであり、前記巻取り本体に巻き取られる紐状体を備え、巻取り方向について前記紐状体の後端側に前記被巻取り物が設けられており、前記紐状体の前記巻取りにより、前記被巻取り物は巻取り本体へ引き寄せられるものであり、前記斜面同士が当接状態のときの前記被巻取り物における横方向の幅を前記被巻取り物の横幅とし、前記巻取り本体と前記被巻取り物のうちの一方は、初期当接面を備え、前記巻取り中、前記初期当接面は、前記巻取り本体と前記被巻取り物のうちの前記一方が備える前記当接面又は前記被当接面の斜面の頂部よりも相対的に前記接近方向の前方へ位置し当該斜面よりも先に巻取り本体被と巻取り物のうちの他の一方と接触し、巻取りの進行に従い、前記初期当接面に沿って前記接触の位置が移動して行くことにより、前記接触の位置は前記頂部へ案内されるものであり、案内後前記頂部を支点として被巻取り物が巻取り本体に対し相対的に回転することにより、前記被当接面が前記当接面へ向けられ、確実に被巻取り物の前記横幅の方向が水平状態となるまで前記巻取りを行うことができるようにした巻取り機構を提供するものである。
特に、本願発明では、前記初期当接面は、前記巻取り本体と前記被巻取り物のうち初期当接面を有する前記一方が備える当接面又は被当接面の斜面の前記頂部を挟んで当該当接面又は被当接面の斜面に隣接する湾曲面である巻取り機構を提供できたものである。
また、本願発明は、前記当接面と前記被当接面の、一方へ磁石を設け他の一方へ当該磁石に引き寄せられる磁石又は金属を設けて前記位置決めを確定させる磁力位置確定機構と、前記当接面と前記被当接面の、一方へ凹部を設け他の一方へ凸部を設けて前記凸部の前記凹部への挿入により前記位置決めを確定させる凹凸位置確定機構の、両方又は何れか一方の位置確定機構を採用した巻取り機構を提供する。
更に、本願発明は、前記巻取り本体に巻き取られる紐状体を備え、巻取り方向について前記紐状体の後端側に前記被巻取り物が設けられており、前記紐状体の前記巻取りにより、前記被巻取り物は巻取り本体へ引き寄せられるものであり、前記斜面同士が当接状態のときの前記被巻取り物における横方向の幅を前記被巻取り物の横幅とし、前記当接面と前記被当接面のうちの一方の斜面に隣接する初期当接面を備え、前記初期当接面は、当該斜面の頂部を挟んで当該斜面に隣接する湾曲面であり、 前記巻取り中、前記初期当接面は、前記頂部よりも相対的に前記接近方向の前方へ位置し当該斜面よりも先に巻取り本体又は被巻取り物と接触し、巻取りの進行に従い、前記湾曲面に沿って前記接触の位置が移動して行くことにより、前記接触の位置は前記頂部へ案内されるものであり、案内後前記頂部を支点として被巻取り物が巻取り本体に対し相対的に回転することにより、前記被当接面が前記当接面へ向けられ、確実に被巻取り物の前記横幅の方向が水平状態となるまで前記巻取りを行うことができるようにした巻取り機構を提供する。
また更に、本願発明では、巻取り本体が、ゼンマイバネとダンパーとを備え、前記被巻取り物を前記ゼンマイバネの弾力で巻き寄せるものであり、前記ダンパーは巻取り本体にゆっくり巻取り動作を行わせ且つ最後はトルクを維持して前記水平状態まで被巻取り物を持ち上げるようにした巻取り機構を提供できた。
更にまた、本願発明では、被巻取り物が物干し竿の挿通具である巻取り機構を提供した。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、巻取り機構において、巻取り本体の前記当接面と、被巻取り物の前記被当接面とを、斜面にして、巻取り本体に対する平面的な位置決め、即ち巻取り本体に対する被巻取り物の接近方向と直交する平面における位置決めをすることにより、巻取り後の被巻取り物を巻取り本体の定位置に配置することができるものとした
特に、本願発明では初期接触面を設けた結果、巻き取り動作の進行により、当接面に対する被当接面の回転の支点まで円滑に初期接触面と被巻取り物又は巻取り本体との接触位置を案内することができる。そして、当該支点を中心に当接面に対し被当接面を回転させることにより、確実に被巻取り物が水平状態となるまで巻取りを行うことができる。
また、本願発明では、前記当接面又は被当接面に隣接する初期接触面を湾曲面とすることにより巻取り中被巻取り物の向きの変更を円滑に行えるものとした。
更にまた本願発明は、磁力位置確定機構と凹凸位置確定機構の少なくとも一方により、上記の平面的な位置を確定させることができる。
更に、本願発明では、本願発明は、被巻取り物をゼンマイバネの弾力で引き寄せる際に、ダンパーを設けてゆっくり巻取りを行い且つ最後はトルクを維持して水平まで被巻取り物を持ち上げることで、安定した動作を可能とした。これにて、より確実に被巻取り物を所定の位置に収めることができる。また、被巻取り物の急激な動作を防止し、更に、巻取り本体と被巻取り物との激突を回避した。この急激な動作の防止や激突の回避にて、大きな音を発することを防止したり装置や紐状体の耐久性を向上させることができる。
巻取り機構は、物干し竿を吊るすものに限定するものではないが、本願発明において被巻取り物を物干し竿の挿通具とすることによって、使用しないとき物干し竿を外しておくことができるものとしつつ、当該挿通具を巻取り本体の定位置へ配置することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)は本願発明に係る巻取り機構を備えた装置の一実施の形態における使用状態を示す側面図、(B)は(A)の底面図、(C)は(A)の装置の未使用時水平まで被巻取り物を持ち上げた状態即ち被巻取り物を巻取り本体へ折り畳んだ状態を示す側面図。
図2】(A)は図1(B)のA−A断面図、(B)は図1(C)の底面図、(C)は図1(A)の斜視図、(D)は図1(B)の紐状体を除いた状態を示す一部切欠要部拡大底面図。
図3】(A)は図1(A)の一部切欠要部拡大側面図、(B)は(A)の紐状体を更に巻取り初期接触面が巻取り本体へ当接した状態を示す一部切欠要部拡大側面図、(C)は(B)の紐状体を更に巻取ることにて水平まで被巻取り物を持ち上げた状態を示す一部切欠要部拡大側面図、(D)は被当接面51の他の実施の形態を示す被巻取り物3の一部切欠要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。この実施の形態は、物干し竿やハンガなどの物干しを室内にて天井から吊り下げる、物干しの吊下げ装置において、本願発明に係る巻取り機構を実施したものである。
この装置は、物干し竿mやハンガーなどの物干しと、独立して天井tに設けられるものである。
この例では、吊下げ装置は、天井tの2箇所に設けられ物干し竿mの両端を支持する。尚、物干し竿mの一方の端部を支持する吊り下げ装置のみ図示し、他の一方の吊り下げ装置の図示を省略する。
【0012】
(基本構成)
この装置は、図1へ示す通り、天井tに取り付けられる巻取り本体1と、この巻取り本体1から下方に垂下する紐状体2と、紐状体2の下端に設けられた被巻取り物3とを備える。巻取り本体1は、天井tから吊り下げられる部材の荷重を受ける荷重支持部である。被巻取り物3は、天井tから吊り下げられる部材を着脱自在に保持し或いは係止するものである。この例では、天井tから吊り下げられる部材というのは、上記の物干しである。
被巻取り物3を使用しないとき、巻取り本体1に紐状体2が巻付けられることにて、被巻取り物3は、上方の巻取り本体1へ引き寄せられ巻付け本体1と当接する。従って、被巻取り物3は、上下方向を巻取り本体1への接近方向とする。
【0013】
(巻取り本体1)
巻取り本体1は、図2(A)へ示す通り、天井tへ取り付けられるケーシング10と、このケーシング10内に回動可能に配位されたドラム11と、このドラム11に回転力を付与するゼンマイバネ12と、ドラム11の急激な回転を抑えるダンパー13と備える。ドラム11には紐状体2の先端即ち上端が固定され、このドラム11が回動することによって、ドラム11に紐状体2が巻き付けられ、巻き解かれる。
この例では、上記のダンパー13は周知のオイルダンパーである。ダンパー13はドラム11の急激な回転を抑えて紐状体2をゆっくりドラム11へ巻き取らせることができれば、オイルダンパー以外の周知のものを採用してもよい。また、ダンパー13を設けても、巻き上げのトルクによって、ドラム11への紐状体2の巻き取りは最後まで確実に行うことができる。
ゼンマイバネ12は、一端がケーシング10側に固定され、他端がドラム11側に固定されることにより、このドラム11を、紐状体2が巻き付けられる方向に回動するように常時付勢している。従って、ドラム11及びゼンマイバネ12が、紐状体2を上方に巻き上げることにより物干し竿mを上昇させるための巻き上げ装置として機能する。
【0014】
上記ケーシング10は、この例では、逆円錐台形に形成されている。ケーシング10の上面は、天井tに固定される。ケーシング10の下面は、被巻取り物3の接近方向に対し直交する略水平な面である。
ケーシング10の下面は、当該下面の他の部位よりも下方へ突出する突出部4を備える。但し、ケーシング10の形状は、上記円錐台に限定するものではなく、他の形状に変更可能である。
【0015】
突出部4の先端側即ち下端側は、被巻取り物3と当接する当接面41を備える。
当接面41は、この例における被巻取り物3の巻取り本体1への接近方向である上下方向に対し傾斜する、斜面である。
突出部4は、巻取り本体1の円形の底面において、当該円の中心よりも円周寄りに設けられている。
具体的に、図1(A)及び図2(A)において、突出部4は、巻取り本体1の下面において、左右横方向について真ん中よりも左側に設けられ、上記当接面41は、左上から右下へ傾斜している。
ケーシング10の下面に対する当接面41の突出幅の最も小さい部分が、ケーシング10下面の外周に対し、当接面41上最も近接する部位である。この例では、上記の当接面41の突出幅の最も小さい部分というのは、当該突出幅が0であり、ケーシング10の側面視において、ケーシング10の下面と一致している。
当接面41におけるケーシング10下面の上記外周に最も近接する部位と当該外周との間を結ぶ部分が、初期受け部43を形成する。初期受け部43は、この例では、ケーシング10の下面の一部であり、平らである。この他、初期受け部43は凹曲面として形成することも可能である。また、上記の当接面41の突出幅の最も小さい部分の突出幅が0でないものとし、突出部4側面における突出幅の最も小さい当該部分に接する部位を上記初期受け部43としても実施できる。
【0016】
当接面41には、図2(D)へ示すように、紐状体2の引き出し部として、ケーシング10の下面からケーシング10内部へ通じる出入口40が設けられている。
この例では、出入口40は、略半円形の輪郭を有する当接面41の弦と直交する方向に伸びる瓢箪型の穴である。尚この例では、当接面41の上記弦が、前述の、当接面41における突出幅の最も小さい部分である。
出入口40の当該瓢箪の大径部分にて紐状体2のケーシング10への出し入れを行い、当該瓢箪の小径部分に紐状体2を引っ掛けることにより、紐状体2がケーシング10内に引き込まれるのを阻止することができる。
【0017】
更に、当接面41には、磁石42が設けられている。この例では、図2(D)へ示す通り、磁石42は、上記出入口40を挟んで2箇所に設けられている。
但し、磁石42は、当該個数や配置に限定されるものではなく、当接面41の他の個所に設けるものとしてもよく、1個設けるものとしても、3個以上設けるものとしてもよい。特に、当該磁石を2箇所以上に設けるのが、後述の位置決めを確実に行える点で、好ましい。
【0018】
(紐状体2)
紐状体2は、ロープ、ワイヤーなどの長尺状で柔軟性を有する、巻き取り可能なものである。紐状体2の先端側は前述の通りドラム11に固定されている。紐状体2の後端側は、上記出入口40からケーシング10の外部に出され、上記被固定物3に固定されている。
紐状体2は、被巻取り物3を使用しないとき、前述の通り上記ゼンマイバネ12の弾力にて回転するドラム11に巻き取られ、被巻取り部3を使用するとき出入口40から引き出されドラム11から巻き解かれる。
【0019】
(被巻取り物3)
被巻取り物3は、図2(B)(C)へ示す通り、円形の輪郭をなす環状部31と、中空の環状部31の内側に設けられた物干しの掛け部32と、結合部33とを備える。
環状部31の直径は、巻取り本体1のケーシング10の下面の直径と略同じである。但し、環状部31の直径は、巻取り本体1のケーシング10の下面の直径よりも、小さくても或いは大きくても実施可能である。またこの例では、図2(B)へ示す通り、環状部31は、上記ケーシング10の円形の下面と略同心に配置される。
図1(C)へ示す通り、巻取り完了の状態において、巻取り本体1のケーシング10と被巻き取り物3との間には隙間が開いている。被巻取り物3は、ケーシング10の下面と接して、当該隙間を設けないものとしてもよい。但し、当該隙間を開けておくことにより、被巻取り物3に指や吊下げハンガーのフックを掛け易く、被巻取り物3を引き出すのに便利である。
上記の他、環状部31は、ケーシング10の上記下面と同心とならないように配置されるものとしてもよく、平面視において、被巻取り物3は巻取り本体1からはみ出すものであってもよい。
また、環状部31を、正円の他楕円形に形成し、或いは環状部31の外周において横方向へ突出する突出部分を設けて、図1(C)の巻取り状態から被巻取り物3を引き出すとき、指掛かりや物干しの吊下げフックを引っ掛ける引掛け部としても実施できる。また、上記引き出しの際の指掛かりとして、図1(C)へ破線で示す通り、結合部33の下面即ち副突出部5と反対側へ、引き紐hを設けておくものとしても実施できる。尚、この実施の形態では、引き紐hは設けていない。
【0020】
掛け部32は、物干し竿の挿通部として、環状に形成された瓢箪型の輪郭を備える枠体である。当該瓢箪の大径部分が物干し竿の挿入部32aであり、当該瓢箪の小径部分が物干し竿の係止部32である。
図1(A)及び図2(A)において、上記挿通部32aへ物干し竿mが通される。図1(A)及び図2(A)へ示す使用状態において、係止部32bは挿入部32aの下方へ位置するものとする。
大径の上記挿入部32aへ物干し竿mを挿入した後、小径の上記係止部32bへ物干し竿mを強制移動させて、二点鎖線で示す通り、物干し竿mを係止部32bへ係止し保持させればよい。この他、挿入部32aに物干し竿mを係止・保持させると共に、係止部32bには、靴下などの小物の吊下げハンガー(図示しない。)のフックを掛けて当該ハンガーを吊るしてもよい。
掛け部32の上記小径部分は、環状部31と繋がっている。掛け部32の上記大径部分は、結合部33を介して環状部31と繋がっている。
結合部33は、上記大径部分に対し、上記小径部分の反対側に設けられている(図2(B)(C))。
被巻取り物3へ上記の環状部31を設けずに実施することができる。但し、瓢箪型の掛け部32だけでは、瓢箪の括れ部分が物干し竿mの移動や重さによって伸びる危惧がある。従って、強度を確保するために、環状部31を設けておくのが好ましい。また、巻取り本体1と被巻取り物3の一体感によるデザイン向上の面でも、環状部31を設けておくのが好ましい。
また、被巻取り物3は、瓢箪型の上記掛け部32を備えず、上記の環状部31に物干し竿やハンガーを掛けるものとしてもよい。更に、被巻取り物3は、円形や瓢箪型以外の形状の掛け部32を備えるものであってもよい。
【0021】
上記結合部33に上記紐状体2の後端部が固定されている。
詳しくは、巻取り完了状態における結合部33の巻取り本体1を臨む面において、結合部33に当該面の他の部位よりも突出する副突出部5が設けられている(図1(C))。
副突出部5には、巻取り本体1の上記突出部4の当接面41と対応する被当接面51が設けられている。
図1(C)へ示す通り、被巻取り物3は、巻取り完了状態即ち環状部31の径方向を水平にした状態において、被当接面51は、当接面41と同じ傾きにて、被巻取り物3の巻取り本体1への接近方向である上下方向に対し傾斜する、斜面である。
具体的に、図1(C)に示す状態において、副突出部5は、被巻取り物3の上面において、左右横方向について真ん中よりも左側に設けられ、上記副当接面51は、左上から右下へ傾斜している。
この被当接面51に紐状体2の後端が固定されている。
【0022】
図2(D)へ示す通り、当接面41と被当接面51とを重ね合わせた際に出入口40から出ている紐状体2が当接面41と被当接面51の当接を邪魔しないように、被当接面51には、紐状体2を収容する溝50が設けられている。当該溝50内に紐状体2の上記後端が固定されているのである。
当該溝50を挟んで、当接面41の磁石42と対応する、被当接面51の2箇所に磁石52が設けられている。被当接面51の当該磁石52は、当接面41の磁石42の露出側における極性と逆の極性側を露出させている。但し、当接面41の磁石42と被当接面51の当該磁石52の何れか一方を鉄などの磁性を有する金属に代えてもよい。
【0023】
被巻取り物3において、環状部31(図2(B)(C))が呈する円の中心から外れた偏心位置に紐状体2が固定されている。即ち、前述の通り、当該円の外周付近にある結合部33の上記被当接面51へ紐状体2は固定されている。このため、図1(A)及び図2(A)へ示す被巻取り物3を下方へ引き出し垂れ下げた状態では、被巻取り物3の環状部31は、直径方向を上下方向に向け縦になる。このように縦となることにより、被巻取り物3の上記外周の、結合部33付近が上になり、結合部33から最も遠い部分が下になる。
この図1(A)及び図2(A)の状態において、副突出部5の被当接面51における最も突出幅の大きな部分即ち被当接面51の斜面の最も高い位置となる当該斜面の頂部pが被当接面51における最上部となる。
一方、副突出部51は被当接面51を平らな面とするも、その側面は凸状の湾曲面である。この例では、副突出部51の側面は、球面である。
図1(A)及び図2(A)の状態において、副突出部5側面の上方を臨む部位が、被巻取り物3の外周即ち環状部31の外周の最上部と被当接面51の斜面の前記頂部pとの間を結び初期当接面6を形成する。
具体的には、前記初期当接面6は、被当接面51の前記頂部pを挟んで被当接面51に隣接する湾曲面である。
初期当接面6は金属特にアルミニウムとするのが、初期当接面6の後述する回転を円滑に行う上で効果的である。但し、前述の初期受け部43の側をアルミニウムにて形成するものであっても実施可能である。また、初期当接面6が円滑に回転できるものであれば、初期当接面6や初期受け部43は、アルミニウム以外の金属や、プラスチック、セラミックといった金属以外の部材にて形成することができ、上記のアルミニウムに限定するものではない。
被巻取り物3を吊るす紐状体3の後端は、上記溝50内に固定されており、図1(A)及び図2(A)へ示す被巻取り物3を垂れ下げた状態において、被当接面51における最上部から巻取り本体1のある上方へ向けて伸びる。
図1(A)及び図2(A)へ示す被巻取り物3を垂れ下げた状態において、初期当接面6は、前記頂部pよりも前記接近方向の前方へ即ち前記頂部pよりも上方へ位置し、且つ、紐状体2の後端付近は、被当接面51に沿う。そして紐状体2は前述の被当接面51の最上部でもある被当接面51の前記頂部pを通って上方の巻取り本体1側へ伸びることとなる。
【0024】
(巻取り動作)
図1(A)へ示すように、物干し竿mを支持する場合、巻取り本体1から紐状体2が巻き解かれ、被巻取り物3は図示の通り上記の直径方向を縦にし、挿通部32aへ物干し竿mが通される。
物干し竿mの使用後において、物干し竿mが掛け部32から抜かれた後に紐状体2を出入口40の大径部分へ移行させて、紐状体2をゼンマイバネ12の弾力にて回転するドラム11に巻き取らせる。このようにして、図3(A)へ示す通り、被巻取り物3は巻取り本体1のある上方へ移動する。当該移動が進むと図3(B)へ示す通り、最初に被巻取り物3の上記初期当接面6が巻取り本体1の初期受け部43へ当接する。
即ち、初期当接面6は、前記受け部43にて、被当接面51よりも先に巻取り本体1のケーシング10下面と接触する。巻取りの進行により、初期当接面6の湾曲面に沿って初期当接面6と前記受け部43の前記接触の位置が移動して行く。当該移動により、前記接触の位置は前記頂部pへ案内される。当該案内後前記頂部pを支点として被巻取り物3が巻取り本体1に対し相対的に回転することにより、被当接面51が当接面41へ向けられて両面が対面する。巻取り本体1は、当該対面まで、紐状体2を巻取ることができる。最終的に紐状体2の後端付近は溝50内に収容され当接面41と被当接面52同士が当接状態となり、磁石42が磁石52と引き合う。この当接状態にて、被巻取り物3の横方向即ち直径方向が水平となる。このように、確実に被巻取り物3の横幅の方向即ち環状部31の径方向が水平状態となるまで巻取りを行うことができる。
【0025】
(変更例)
上記において、磁石42,52が、上記の位置決めを確定させる位置確定機構、即ち磁力位置確定機構を構成する。この他、当該位置確定機構は、当接面41と被当接面51の一方に凹部を設け、他方に凸部を設けて、当該凹部と凸部の対応により位置を確定する、凹凸位置確定機構としてもよい(図示しない)。この場合、凹部と凸部は、当接面41と被当接面51の夫々に、1つ又は複数設ける。また、上記の磁力位置確定機構と凹凸位置確定機構の双方を備えるものとしても実施できる。
上記の各実施の形態において、当接面41と被当接面51へ、位置確定機構を設けるものとした。図示は省略するが、この他、巻取り本体1と被巻取り物3の夫々において、当接面41と被当接面51以外の箇所に位置確定機構を設けるものとしてもよい。更に、上記凹凸位置確定機構における凹部の内周面と凸部の外周面のうち、一方に斜面を当接面41として設け、他方に当該斜面と対面する斜面を被当接面51として設けて実施してもよい。
被巻取り物3において、前述の環状部31の突出部分やはみ出し部分或いは図1(C)の引き紐hを、副突出部5より遠い位置即ち、環状部31の円の中心を挟んで、副突出部5と反対側に設けることにより、被巻取り物3を開き易いものとすることができる。但し、被巻取り物3の開閉の支点となる副突出部5即ち結合部33から離れた位置が重くなると、被巻取り物3が必要以上に開き易くなる。このため、前述の位置確定機構の機能が経時に低下した場合を考慮し、図1(C)へ示す通り、結合部33に或いは結合部33に前記引き紐hを設けておくのが好ましい。
上記において、ドラム11の駆動手段として、ゼンマイバネ12を用いて、ドラム11を回転させるものとしたが、モーターを駆動手段として採用することもできる。
また、被巻取り物3が荷重支持部として天井に固定され、巻取り本体1が上記掛け部32を備えて天井から吊り下げられるものとしても実施できる。
なお、ドラム11から引き出された紐状体2が安定して出入口40に導かれるように、案内ローラ(図示せず)を設けて実施してもよい。
また、上記において、巻取り装置を2個1対で使用する例を示したが、物干し竿以外の即ちハンガーなどの物干しを天井に吊るす場合、巻取り装置を1個のみ天井に設けて使用するものとしても実施できる。また、3個以上の巻取り装置を天井に設けて実施することも可能である。
更に、本願発明に係る巻取り機構は、物干しの吊下げ装置の実施に限定するものではなく、巻取り本体1から垂下する紐状体2の下端に設けられた被巻取り物3を、巻取りにより確実に巻取り本体1の所定の位置に配置することを必要とする、他の巻取り装置に実施することができる。
また、本願発明に係る巻取り機構を利用する巻取り装置についても、巻取り本体1が天井に固定され垂れ下がった紐状体2を巻き取るものに限定するものではない。例えば、横方向を巻取り本体1への被巻取り物3の接近方向とするものに実施することも可能である。
具体的な例を示すと、店頭において、商品である携帯電話やスマートフォンなどの携帯品を展示する商品立てに本願発明を実施することができる。この場合、被巻取り物3は、携帯電話を保持する保持部として形成しておき、携帯電話の展示中、巻取り本体1と被巻取り物3とを一体として携帯電話を立て、入店者が携帯電話を掴んで紐状体2を巻取り本体1から引き出すことにより、携帯電話を手に取って操作できるものとするのである。
【0026】
上記の実施の形態において、紐状体2の後端側は、被巻取り物3において被当接面51に固定するものとした。この他、紐状体2の後端側は、被巻取り物3の被当接面51以外の箇所に固定するものとしてもよい。例えば、図2(D)へ示通り、被巻取り物3には、2個以上の副突出部5が互いの間隔を開けて設けられており、副突出部5の夫々が互いの傾斜の向きや角度を等しくする被当接面51を備え、被当接面51ではなく、副突出部5同士の間にて、紐状体2の後端側を被巻取り物3に固定するものとしても実施できる。即ち、被巻取り物3へ2箇所以上の被当接面51を設けて、紐状体2を被巻取り物3の被当接面51へ囲まれた、被当接面51間の部位に設けるものとしても実施できる。
また、被当接面51が単一のものであっても被当接面51以外の箇所へ紐状体2後端を固定することができる。例えば、紐状体2後端を被巻取り物3の被当接面51以外の箇所に固定し、平面視における被当接面51の形状を、環状体やC字型といった湾曲又は屈曲形状として、当該固定箇所を囲むものとしても実施できる。
巻取り本体1の出入口40についても、図示した当接面41へ設ける以外に、上記被当接面51と同様の構成を採ることにより、ケーシング10の当接面41以外の部位に設けて実施することもできる。
【0027】
(その他)
吊り下げ装置を浴室に設けて物干し竿を吊るす場合や、物置など狭い空間にて物干し竿を吊り下げる場合、部屋の側壁に、物干し竿を下支えする、特許文献1の図4へ示す下方部材と同様の副支持部材を設けて実施するものとしてもよい。巻取り本体1が荷重支持部として十分な強度を有する場合、図示した実施の形態のように、このような副支持部材を設けずに実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 巻取り本体
2 紐状体
3 被巻取り物
4 突出部
5 副突出部
6 初期当接面
10 (巻取り本体1の)ケーシング
11 ドラム
12 ゼンマイバネ
13 ダンパー
31 環状部
32 掛け部
32a 挿通部
32b ハンガー係止部
40 出入口
41 当接面
42 磁石
51 被当接面
52 磁石
53 溝
m 物干し竿
t 天井
図1
図2
図3