(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893008
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 43/162 20060101AFI20160310BHJP
C07C 41/08 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
C07C43/162CSP
C07C41/08
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-511997(P2013-511997)
(86)(22)【出願日】2012年4月10日
(86)【国際出願番号】JP2012059809
(87)【国際公開番号】WO2012147511
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-102215(P2011-102215)
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】油井 要兵
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 眞一
(72)【発明者】
【氏名】室谷 昌宏
【審査官】
松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−278829(JP,A)
【文献】
特開2009−242484(JP,A)
【文献】
特開昭57−171930(JP,A)
【文献】
特開平07−082514(JP,A)
【文献】
特開2005−023049(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/137742(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/136355(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/046880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
C07B 31/00− 63/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で表される4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセン。
【請求項2】
式(II):
【化2】
で表される4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセンとアセチレンとをアルカリ性化合物存在下に非プロトン性極性溶媒中で反応させることによって式(I):
【化3】
で表される4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンを製造する方法。
【請求項3】
前記非プロトン性極性溶媒がジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジエチルエチレン尿素、N,N’−ジプロピルエチレン尿素、N,N’−ジイソプロピルエチレン尿素、N,N’−ジブチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、N,N’−ジエチルプロピレン尿素、N,N’−ジプロピルプロピレン尿素、N,N’−ジイソプロピルプロピレン尿素、N,N’−ジブチルプロピレン尿素、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジイソプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジプロピルエーテル、ポリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、およびポリエチレングリコールジブチルエーテルから選ばれるいずれか1種以上を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応を温度80〜180℃及びアセチレン圧力0.15〜1.0MPa(ゲージ圧)で行う請求項2又は3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビニルエーテルである4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に係るジビニルエーテル化合物、具体的には4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセン(別名:3−シクロヘキセン−1,1−ジメタノールジビニルエーテル)は、従来報告例がなく、新規な化合物であると考えられる。
【0003】
本発明のようなジビニルエーテル化合物に関連する技術としては、例えば下記特許文献1及び2がある。特許文献1にはペンタエリスリトールアセタールジビニルエーテルが記載されている。この化合物は、アセタール構造を有しているため加水分解しやすく、本発明に係るジビニルエーテル化合物とは水に対する安定性の点で相違するものである。特許文献2には1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルが記載されているが、この化合物は本発明に係るジビニルエーテル化合物とは環化重合のしやすさの点で相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−242484号公報
【特許文献2】特開2010−053087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、式(I):
【化1】
で表される4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従えば、式(II):
【化2】
で表される4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセンとアセチレンとを、アルカリ性化合物存在下に、非プロトン性極性溶媒中で反応させることによって、式(I):
【化3】
で表される4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンを製造する方法により、新規なビニルエーテルを得ることができる。この4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンは、低臭気、低揮発性および低皮膚刺激性のため、たとえばインク用原料および電子材料用原料となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化合物4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセン(以下、単にビニルエーテル(I)と略称することがある。)は、ビニルエーテル基を特異な位置に2つ持ち、単独で、あるいは他の化合物との間で特殊な反応性を有するという特徴がある。本発明のビニルエーテル(I)は、低臭気、低揮発性および低皮膚刺激性であり、硬化性、基材密着性、および紫外光領域での光透過性に優れるため、たとえばインク用原料および電子材料用原料として、有用であることが期待できる。従って、本発明の4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンは、架橋剤や種々の合成試薬として有用であり、インク、および塗料に代表されるインク用原料、ならびにレジスト、カラ−フィルタ、接着剤、製版材、封止剤、および画像形成剤に代表される電子材料用原料に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1で製造した4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンの
1H NMRチャートである。
【
図2】実施例1で製造した4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンの
13C NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のビニルエーテル(I)は次のような反応式に従って製造することができる。
【0011】
本発明のビニルエーテル(I)の具体的な合成法としては、例えば次のような方法を挙げることができる。
【0012】
SUS(ステンレス鋼)製の耐圧反応容器などの反応容器中に、溶媒として、非プロトン性極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジエチルエチレン尿素、N,N’−ジプロピルエチレン尿素、N,N’−ジイソプロピルエチレン尿素、N,N’−ジブチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、N,N’−ジエチルプロピレン尿素、N,N’−ジプロピルプロピレン尿素、N,N’−ジイソプロピルプロピレン尿素、N,N’−ジブチルプロピレン尿素、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジイソプロピルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジプロピルエーテル、ポリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、およびポリエチレングリコールジブチルエーテルなどから選択される1種以上を入れ、次に原料化合物である4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセンを供給し、反応触媒として、アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム)、アルカリ金属水酸化物と原料アルコール(II)より調製したアルコラートなどのアルカリ性化合物を添加する。反応触媒であるアルカリ性化合物の使用量には、特に制限はないが、その使用量は、4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン100重量部に対して、好ましくは2重量部以上であり、更に好ましくは4〜50重量部である。
【0013】
本発明方法において、原料の溶解性、生産性ならびに反応速度の観点から、非プロトン性極性溶媒を使用することが好ましい。非プロトン性極性溶媒の使用量には特に制限はないが、その使用量は4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン100重量部に対して、好ましくは100〜1,000重量部、更に好ましくは200〜700重量部である。非プロトン性極性溶媒の使用量が、4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン100重量部に対して、100重量部未満の場合、反応の選択性が低下するおそれがある。一方、非プロトン性極性溶媒の使用量が、4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン100重量部に対して、1000重量部を超えた場合、反応終了後の溶媒除去が煩雑になるおそれがある。
【0014】
次に、窒素ガスなどの不活性ガスで反応容器内を置換した後、反応容器を密封して、アセチレンを圧入しながら、昇温して反応させることにより、本発明の4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンを生成させることができる。反応容器内の雰囲気はアセチレン単独とすることができるが、アセチレンを、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性ガスで、希釈して使用してもよい。
【0015】
本発明の4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンを製造する際の反応条件については、反応温度および反応圧力(アセチレン分圧)は、共に高くすると、反応速度は上がるが、安全性が低下する。また反応温度が高いと副反応が進むおそれがある。例えばアセチレンの圧力はゲージ圧で0.01MPa以上であるのが好ましく、生産性、副反応抑制、および安全性の観点から、アセチレンの圧力はゲージ圧で0.15MPa〜1.0MPaであるのが更に好ましい。一方、反応温度は、80〜180℃が好ましく、反応速度の観点から、100℃以上であるのが更に好ましく、経済性、副反応抑制の観点からは130℃以下が一層好ましい。
【0016】
なお、本発明における原料化合物である4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン(II)は、従来公知の方法で製造することができる。例えば特開昭57−45179号公報に記載された方法、詳しくは、3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒドを、アルカリ性媒体中、ホルムアルデヒドと反応させてメチロール化し、カニッツァーロ反応を経て、4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセンを得る方法で製造することができる。また、4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン(II)は、J & K SCIENTIFIC LTD.(中国)から市販品として入手することができる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0018】
製造例1
攪拌機、温度計、ジムロートおよび滴下ロートを備えた5リットル四つ口フラスコに、水1004.0g中に溶解させたパラホルムアルデヒド633.3g(純度92%、19mol)を入れ、水1397.0gに溶解させた水酸化ナトリウム465.6g(純度98.5%、11.5mol)を滴下した。次いで、この混合液を、氷浴中で、10℃まで冷却し、3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド880.7g(純度97%、7.8mol)を1時間かけて混合液中に滴下した。滴下後、液温は20℃に上昇した。そのままの温度で1時間攪拌した後、フラスコを湯浴に浸け、55℃で更に1時間攪拌した。次いで、水浴で反応混合物を15℃まで冷却し、析出した固体を濾取した。得られた固体を水で洗い、4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン(II)の湿粗結晶1396.0gを得た。
【0019】
上で得られた4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン(II)の湿粗結晶の一部を水洗し、アセトン不溶分の濾過後、粗結晶:アセトンの重量比約1:4で再結晶を行った。さらに水洗、アセトンでの再結晶を行ない、減圧乾燥して4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセンの結晶55.6gを得た(ガスクロマトグラフィーによる純度99.9%)。これを以下の実施例1で用いた。
【0020】
【化5】
【0021】
得られた4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン(II)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H NMR(CDCl
3、TMS、400MHz):δppm 1.56(t,2H,J=6.4Hz),1.81(quin,2H,J=2.7Hz),2.03(m,2H),3.24(brs,2H),3.59(s,4H),5.60(m,1H),5.69(m,1H)
13C NMR(CDCl
3、TMS、100MHz):δppm 21.6,25.7,29.4,37.3,69.4,124.5,126.6
【0022】
実施例1
攪拌器、圧力ゲージ、温度計及びガス導入管およびガスパージラインを備えた容量300mlのSUS製耐圧反応容器に、非プロトン性極性溶媒としてジメチルスルホキシド160.1g、製造例1で得た純度99.9%の4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセン40.1g(0.28mol)、および反応触媒であるアルカリ性化合物として純度95.0%の水酸化カリウム2.53g(0.043mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを0.18MPaの圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を0.18MPaに保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が80℃を越えてから約6時間30分反応させた。この間、純度95.0%の水酸化カリウム4.10g(0.069mol)を反応容器内に投入し、アセチレンガスは逐次補充して、反応容器内の圧力を常に0.18MPaに保った。反応容器内の温度は105℃以下に制御した。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして、反応液204.8gを得た。この反応液のガスクロマトグラフィーによる分析の結果、4,4−ビス[(ヒドロキシ)メチル]シクロヘキセンに由来するピークの消失を確認した。
【0023】
次いで、上記反応液から反応溶媒を除き、減圧下(0.4〜0.5kPa)に蒸留して、80℃〜81℃で留出した留分43.2gを得た。得られた留分は、NMRによる分析の結果、下記式(I)で示される4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンであった(ガスクロマトグラフィーによる純度99.2%、収率78.4%)。
【0024】
【化6】
【0025】
得られた4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンのNMR測定結果を表1、
図1および
図2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
使用例1
実施例1で得た4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンを用いて、以下の通り重合させた。
重合開始剤およびルイス酸として、HCl/ZnCl
2を用い、溶媒として塩化メチレンを用いた。シュレンク管に4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセン溶液4.0mL、0.18%HCl溶液0.5mL、ZnCl
2溶液0.5mLをこの順に注射器で注入し重合を開始した。塩化メチレン中,−30℃、モノマー濃度0.15mol/L、HCl濃度5.0mmol/L、ZnCl
2濃度2.0mmol/Lで行った。重合は、25分で重合率98%に達し、重合系にアンモニア水を少量加えたメタノールを加えて重合を停止させた。
【0028】
重合を停止した溶液を分液ロートに移し、塩化メチレンで希釈し、塩化ナトリウム飽和水溶液(イオン交換水)で3回洗浄した。次いで有機層からエバポレーターにより溶媒を除去し、減圧乾燥して生成ポリマーを回収した。
【0029】
このポリマーは、メタノールによりデカンテーションして更に精製した。得られたポリマーの数平均分子量:M
nは4290で、分子量分布(M
w/M
n)は1.42、ガラス転移温度(Tg)は103℃、熱分解温度(Td)は347℃であった。なお、測定は、示差走査熱量測定装置(RIGAKU Thermo Plus DSC8230L)を用いて測定を行った。
【0030】
使用例1で得たジビニルエーテルホモポリマーをインク用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性および低皮膚刺激性であり、さらにガラス転移温度が高いため、優れた性能を示した。
【0031】
使用例1で得たジビニルエーテルホモポリマーを塗料用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性および低皮膚刺激性であり、さらにガラス転移温度が高いため、硬度が高く、乾燥性及び耐汚染性に優れた塗膜が得られた。またこれを電子材料用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性および低皮膚刺激性であり、さらにガラス転移温度が高いため、優れた性能を示した。更に、これをフォトレジスト用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性および低皮膚刺激性であり、さらにガラス転移温度が高いため、良好な強度を有するレジストが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
4,4−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキセンは重合してジビニルエーテルホモポリマーとすることにより、ガラス転移温度が高いという優れた性能を示し、また硬化性、基材密着性、透明性に優れることに加え耐熱性に優れるため、インク、および塗料に代表されるインク用原料、ならびにレジスト、カラーフィルター、接着剤、製版材、封止剤、および画像形成用に代表される電子材料用原料などに有用である。