(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893022
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】ファイバー、該ファイバーの製造プロセス、及び該ファイバーを組込む創傷包帯
(51)【国際特許分類】
A61L 15/44 20060101AFI20160310BHJP
D01F 2/00 20060101ALI20160310BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
A61L15/03
D01F2/00 Z
A61F13/00 301M
A61F13/00 301Z
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-520204(P2013-520204)
(86)(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公表番号】特表2013-538596(P2013-538596A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】GB2011001102
(87)【国際公開番号】WO2012010848
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】1012333.9
(32)【優先日】2010年7月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509146126
【氏名又は名称】コンバテック・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONVATEC TECHNOLOGIES INC
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(72)【発明者】
【氏名】ルーシー・ルイーザ・バラミー
(72)【発明者】
【氏名】シャロン・ラム・ポ・タン
(72)【発明者】
【氏名】マリオン・エルブ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ロジャーズ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・ケリー
【審査官】
▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−202202(JP,A)
【文献】
特表2000−508385(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0189516(US,A1)
【文献】
特表2010−520377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷における、タンパク質分解酵素及び炎症性メディエータのような創傷浸出液成分の傷害活性を下げるための多成分ファイバーであって、
前記多成分ファイバーの10重量%乃至100重量%のペクチン及び犠牲タンパク様物質であって、犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が80:20乃至60:40である、ペクチン及び犠牲タンパク様物質と、
前記多成分ファイバーの0重量%乃至90重量%の、別の多糖類又は水溶性ポリマーと、
カルシウム、亜鉛、マグネシウム、銅又は鉄のような二価イオンと、を備え、
前記二価イオンの追加が、前記多成分ファイバーを形成する、多成分ファイバー。
【請求項2】
前記多成分ファイバーは、前記多成分ファイバーの75重量%乃至100重量%のペクチン及び犠牲タンパク様物質であって、犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が80:20乃至60:40である、ペクチン及び犠牲タンパク様物質を備える、請求項1に記載の多成分ファイバー。
【請求項3】
前記多成分ファイバーは、前記多成分ファイバーの90重量%乃至100重量%のペクチン及び犠牲タンパク様物質であって、犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が80:20乃至60:40である、ペクチン及び犠牲タンパク様物質を備える、請求項1又は2に記載の多成分ファイバー。
【請求項4】
犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が、70:30である、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の多成分ファイバー。
【請求項5】
創傷における、タンパク質分解酵素及び炎症性メディエータのような創傷浸出液成分の傷害活性を下げるための多成分ファイバーを備える創傷包帯であって、
前記多成分ファイバーが、
前記多成分ファイバーの10重量%乃至100重量%のペクチン及び犠牲タンパク様物質であって、犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が80:20乃至60:40である、ペクチン及び犠牲タンパク様物質と、
前記多成分ファイバーの0重量%乃至90重量%の、別の多糖類又は水溶性ポリマーと、
カルシウム、亜鉛、マグネシウム、銅又は鉄のような二価イオンと、を備え、
前記二価イオンの追加が、前記多成分ファイバーを形成する、創傷包帯。
【請求項6】
10重量%乃至100重量%の多成分ペクチンと、0重量%乃至90重量%の別のゲル形成ファイバーと、を備える、請求項5に記載の創傷包帯。
【請求項7】
T=0時間及びT=2時間での蛍光分光光度法によって測定されるとき、カルボキシメチルセルロース・ファイバー又はアルギン酸ナトリウムファイバーに対して25%以上傷害酵素活性のレベルを下げることのできる、多成分ペクチンファイバーであって、当該多成分ペクチンファイバーが、
前記ファイバーの10重量%乃至100重量%のペクチン及び犠牲タンパク様物質であって、犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が80:20乃至60:40である、ペクチン及び犠牲タンパク様物質と、
前記ファイバーの0重量%乃至90重量%の、別の多糖類又は水溶性ポリマーと、
カルシウム、亜鉛、マグネシウム、銅又は鉄のような二価イオンと、を備え、
前記二価イオンの追加が、前記多成分ペクチンファイバーを形成する、多成分ペクチンファイバー。
【請求項8】
多成分ペクチンファイバーを製造する方法であって、
(i)ペクチン及び犠牲タンパク様物質を水に加えて、紡糸原液を形成する工程と、
(ii)紡糸口金を介して前記紡糸原液を押し出す工程と、
(iii)カルシウム、亜鉛、マグネシウム、銅又は鉄のような二価イオンのソースを用いて架橋結合してファイバーを形成する工程と、
(iv)前記ファイバーを乾燥する工程と、を備え、前記二価イオンの追加が、前記多成分ペクチンファイバーを形成する、方法。
【請求項9】
前記犠牲タンパク様物質がゼラチンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
多成分ペクチンファイバーを製造する方法であって、
(i)ペクチン及び犠牲タンパク様物質に水を加えて紡糸原液を形成する工程と、
(ii)温度制御された環境で、紡糸口金とコレクター板との間に電圧を印加しながら、前記紡糸口金を介して前記紡糸原液を押し出す工程と、
(iii)カルシウム、亜鉛、マグネシウム、銅又は鉄のような二価イオンのソースを追加して前記多成分ペクチンファイバーを形成する工程と、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、創傷におけるタンパク質分解酵素及び炎症性メディエータのような創傷浸出液成分の傷害活性(damaging activity)を下げるための、ファイバー及び特に創傷包帯におけるファイバーの使用、及びファイバーの製造方法に関する。ファイバーは、慢性の創傷環境に存在する傷害成分(damaging component)の、結合、隔離又は阻害のために特に用いられる。ファイバーは、好ましくはペクチン、より好ましくはペクチン及びゼラチン、を含む多成分のファイバーである。
【背景技術】
【0002】
創傷環境における、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)、脂質メディエータなどのような炎症由来成分の存在は、過剰である場合に、創傷治癒の進行に悪影響を及ぼすであろう。プロテアーゼの2つの主な種類、マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMPs)及びエラスターゼがあり、これらは生体組織を破壊するのに有効であるように、一致して行動する。例えば、新しい肉芽粗織の合成は、治療プロセスを妨害できる高濃度の酵素によって、阻害されるかもしれない。このため、創傷治癒を高めるために創傷環境からの高濃度又は過剰濃度の炎症由来成分を低減することが、望ましいと見なされてきた。創傷治癒は、創傷床(新しい肉芽粗織形成)の視覚的な改良及び創傷サイズの低減によって、認められるであろう。
【0003】
過去に、多くの創傷包帯が、創傷におけるプロテアーゼを調整する目的で、提案された。これらの包帯は、Promogran(商標)(Systagenix Wound Management)、創傷浸出液との接触でゲル化するマトリックス・シートの形をした凍結乾燥された酸化コラーゲン再生セルロース組成物を含んでいる。しかしながら、それは、MMPsのみを対象としている。Biostep(商標)(Smith & Nephew)は、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシル・メチルセルロース及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)からなるコラーゲンマトリックス創傷包帯であり、マトリックス・シート包帯の形をしており、MMPsを対象としている。Tegaderm(商標)マトリックス(3M)は、MMPを調整すると主張されている金属塩類の混合物を、その活性成分として有しており、マトリックス・シートの形をしている。MMPsへの選択性に加えて、これらの全ての包帯は、ファイバーに基づく包帯、特にアクアセル(登録商標)(ConvaTec Inc)のようなHydrofiber(登録商標)に基づく包帯と比べて、流体処理能力に限界がある。
【0004】
従来の包帯において、2つの主要な種類のプロテイナーゼの1つに特有である包帯であって、慢性の創傷において知られており、このため有効性に制限があるか、流体処理能力に制限がある、包帯、又は、実用上の困難さを示す形にある、例えばそれらが粉末状である、包帯の構成要素である包帯が知られている。粉末は、包帯内で緩んだ場合、脱落し、創傷の洗浄によって取り除く必要がある。包帯内にある種のポケットが含まれているか、個別のポケットに入れられた構成要素が用いられているならば、解放されている粉末の問題に遭遇することなく、創傷に適合するように包帯を切断することができない。米国特許公開第2002012693号明細書(US2002012693A)は、ペプチド・エラスターゼ阻害剤が共有結合によって組み込まれている支持マトリックスからなる、プロテアーゼ低下活性を有すると言われる前記包帯を開示している。組成はエラスターゼのみを対象としている。米国特許公開第2006142242号明細書(US2006142242A)は、エラスターゼ及びMMPの封鎖能を持っていると言われるが、典型的には粉末の形で使用される、リン酸デンプン組成物を開示している。Edwardsら、(2007)、”Human neutrophil elastase and collagenase sequestration with phosphorlyated cotton wound dressings”Cotton Chemistry Utilization, Journal of Biomedical Materials Research part Aも、エラスターゼ及びMMPを低下する能力を有するが単純な綿ガーゼに適用される、リン酸化綿組成物を開示している。
【0005】
国際公開第07/1377733号パンフレット(WO07137733A)及び国際公開第09/068249号パンフレット(WO09068249A)は、MMP阻害活性及び良好な流体処理能力を有していると言われるポリアクリレート超吸収体(Paul Hartmann AG)を開示しているが、それはMMPのみに対して活性であるようである。Walkerら、(2007)、"In Vitro Studies to Show Sequestration of Matrix Metalloproteinases by Silver-Containing Wound Care Products" Ostomy Wound Management 2007; 53(9):18-25も、インビトロで、MMPsを低減する含銀カルボキシメチルセルロース(CMC)Hydrofiber(登録商標)の包帯(アクアセル Ag)を含むいくつかの創傷ケア製品の能力を開示している。
【0006】
このため、創傷における、タンパク質分解酵素及び炎症性メディエータのような多数の創傷浸出液成分の傷害活性を下げることのできるファイバーであって、固有の流体管理特性を持っているか、適切な流体管理特性を用いた創傷包帯に処理できるファイバーを提供することが望ましい。上記問題を軽減するために創傷の治療で使用するのに適した、ペクチンに基づくファイバーが、今や作られている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、この発明によって、創傷における、タンパク質分解酵素及び炎症性メディエータのような創傷浸出液成分の傷害活性を下げるための多成分ファイバーが、提供されている。該ファイバーは、前記ファイバーの10重量%乃至100重量%であるペクチン及び犠牲タンパク様物質(sacrificial proteinaceous material)であって犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が100:0乃至10:90である、ペクチン及び犠牲タンパク様物質と、前記ファイバーの0重量%乃至90重量%である、別の多糖類又は水溶性ポリマーと、を備えている。
【0008】
好適には、前記ファイバーは、実施例2で及びT=0において説明される前記MMP法により測定されるとき、対照群(control)と比べて、25重量%以上(by at least)、より適切には50重量%以上、好ましくは75重量%以上、傷害酵素活性のレベルを下げることができる。
【0009】
この発明によって、T=0において実施例2で説明される前記MMP法で測定されるとき、25重量%以上インビトロで傷害酵素活性のレベルを下げることができる、多重ペクチンファイバーが提供される。
【0010】
前記ファイバーは、ゼラチン、コラーゲンのような犠牲タンパク様物質や、ホエー、醤油及び乳蛋白質のような球状タンパク質、アルブミン又はカゼインを含んでもよい。犠牲タンパク様物質の機能は、それが存在するとき、前記プロテイナーゼの触媒活性を最大限占有することであり、それにより体タンパク質に対するプロテイナーゼの活性を低減する。好ましくは、犠牲タンパク様物質はゼラチンである。
【0011】
前記ファイバーの構造的統一性(integrity)を改善するために、前記ファイバーは、アルギナート、キトサン又はその誘導体又はセルロースの誘導体、グアーゴム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、デキストリン、寒天、セルロースガム、又は他のデンプン系物質のような別の多糖類を含んでもよい。前記流体処理能力を改善するために、前記ファイバーは、ポリアクリレート、ポリエステル又はポリアミドのような水溶性ポリマーを含んでもよい。前記ファイバーの抗菌機能を改善するために、銀、金及びプラチナ又はそれらの塩類及び/又はEDTA又はクエン酸のようなキレート剤を含んでもよい。前記ファイバーは、ポリソルベートのような織物化(textiling)を改善するための、
カルシウム、亜鉛、マグネシウム、銅又は鉄のような二価イオン、及び緩衝剤又は保湿剤又は界面活性剤も、含んでもよい。
【0012】
好ましくは、前記ファイバーは、前記ファイバーの75重量%乃至100重量%の、又は好ましくは90重量%乃至100重量%のペクチン及び犠牲タンパク様物質であって、犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が100:0乃至10:90である、ペクチン及び犠牲タンパク様物質を備えている。好ましくは、前記ファイバーにおける犠牲タンパク様物質に対するペクチンの重量比が、90:10乃至10:90であり、より好ましくは90:10乃至30:70であり、又は80:20乃至50:50であり、及びより好ましくは70:30である。
【0013】
この発明の第2の局面では、創傷における、タンパク質分解酵素及び炎症性メディエータのような創傷浸出液成分の傷害活性を下げることに用いる多成分ファイバーを備える創傷包帯がある。
【0014】
この発明の創傷包帯は、セルロース又はセルロース誘導体のファイバーのような前記多成分ペクチンファイバーに加えて、他のファイバーを含んでもよい。前記ファイバーは、織物又はゲル形成ファイバーと多成分ファイバーとの均一な混合物として存在してもよく、創傷包帯構成物における個別の(discrete)層として存在してもよい。前記包帯は、10重量%乃至100重量%の多成分ペクチンファイバーと、CMCファイバーのような0重量%乃至90重量%のゲル形成ファイバーと、を備えてもよい。好ましくは、前記包帯は、25重量%乃至75重量%の多成分ペクチンファイバーと、25重量%乃至75重量%の別のゲル形成ファイバーと、を備えてもよく、より好ましくは前記包帯は、50重量%乃至50重量%の混合物を備えている。
【0015】
この発明に係る、使用に適している多成分ペクチンファイバーは、
(i)水にペクチン及びゼラチンを加えて紡糸原液(dope)を形成する工程と、
(ii)紡糸口金を通して前記紡糸原液を押し出す工程と、
(iii)イオン源を用いて架橋結合してファイバーを形成する工程と、
(iv)前記ファイバーを乾燥する工程と、によって製造される。
【0016】
好ましくは、紡糸原液の溶液は、均質で不透明な混合物が得られるまで温水(40℃乃至80℃)内にペクチンを溶かし、続いて室温まで冷やし、粘性を安定させ、かつ気泡を除去することによって、2%乃至11%の濃度(重量/体積%)で製造される。
【0017】
前記ファイバーを形成するための紡糸は、従来の湿式紡糸によってなされてもよく、従来の湿式紡糸は、紡糸口金を介して紡糸原液を凝固槽の中へ通過させることを含んでおり、凝固槽は、0.5%乃至35%の濃度(重量/体積%)での、塩化カルシウム又は塩化亜鉛のような二価金属イオンからなっている。次に、得られたペクチンファイバーは、水槽内で洗浄されるとともに引き延ばされてもよい。前記ファイバーは、アセトン、IDA、イソプロピルアルコール又はプロパン−2−オールのような水混和性非水溶媒の中ですすがれて、ファイバーコアから残留水を取り除き、乾燥を促進し、続いて概して120℃以下の温度で乾燥工程が行われる。
【0018】
代わりに、電気紡糸が、ナノファイバー、例えば数百ナノメートルの直径を有するファイバーを製造するために用いられてもよい。
【0019】
この発明に係る、前記ファイバーの使用又は前記ファイバーの製造の使用に適したペクチンは、好ましくは、メトキシル含有量が15%よりも低い低メトキシペクチン、又はエステル化の度合い(degree)が10%乃至30%であり且つアミド化の度合いが10%乃至30%でアミド化されたペクチンである。これらのペクチンの分子量は、前記紡糸原液の溶液に必要な粘性及び前記ファイバーの引張強度特性を最適化するために、30000乃至85000ダルトンであることが好ましい。適切なペクチンは、CP elcoから、GENU Pectin Type LM-104 AS-FSとして市販されており、砂糖を用いて安定化されたペクチンである。
【0020】
この発明に係る、前記ファイバーの使用又は前記ファイバーの製造の使用に適したゼラチンは、好ましくは、A型ゼラチンである。適切なゼラチンは、PB Leinerから、porcine Gelatin powderとして市販されている。
【0021】
この明細書では、ファイバーという用語は、比較的短く、分離した、ランダムに配向した材料(しばしばステープルファイバーとして知られている)及びそこから作られるヤーン(しばしばステープルヤーンとして知られている)、及び比較的長く、構造化された、連続フィラメント糸又は連続フィラメントファイバーの双方を意味する。前記ファイバーは、5mm乃至70mmの、通常20mm乃至50mmのステープル長を有している。前記ファイバーは、ナノメートル乃至ミリメートルの直径を有している。
【0022】
この発明は、以下の図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】様々なファイバー及びそれらの成分のMMP活性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明は、更に以下の実施例で説明されている。
【実施例1】
【0025】
この発明に係る多成分ファイバーは、以下のように製造された。
【0026】
9リットルの8%(重量/体積%)ゼラチン及びペクチンの紡糸原液溶液(ゼラチン:ペクチンが30:70)が、作成された。216gのゼラチン粉末が、予め40℃に加熱された脱イオン水に、かき混ぜて均一となるようにしながら、ゆっくりと加えられた。溶液は、40℃で30分の間、スクレーパー及びホモジナイザーを用いて混合された。その後、504gのペクチン粉末が、ゼラチンと同じ方法を用いてゆっくりと加えられ、その混合物が更に30分の間、かき混ぜられて均一化された。溶液が均一になると、攪拌が停止され、混合物から過剰空気を除去するために約0.2バールの真空圧力が5分の間、溶液に加えられた。溶液は、約24時間、冷やして静置した。
【0027】
紡糸原液溶液は、5ポンド/平方インチで加圧された3リットルの染色整理窯(kier)内で、移された。紡糸は、室温で実行された。直接、染色整理窯の後、紡糸原液の溶液はビスコース布からなるキャンドルフィルターを介して押し出された。その後、紡糸原液溶液は、紡糸口金を通り抜ける前に、フレキシブルなホースを介して、紡糸口金に据え付けられたメッシュフィルターに押し出された。紡糸口金は、直径75μmの孔を500個有する。ポンプ流量は、75μmのホール直径を持った40,000個の孔の3つの紡糸口金にわたって7リットル/時間にセットされた。紡糸浴は、最初の実行のための脱イオン化水の中で5%(重量/体積%)の塩化カルシウム脱水物の10リットルの浴と、第2実行のための脱イオン化水の中で5%(重量/体積%)の塩化亜鉛の10リットルの浴であった。凝固槽を去った後、形成されたフィラメントは、4つの異なる洗浄浴を通過した。各浴の容量は10リットルであった。第1の洗浄浴は、1:6の延伸比が適用される洗浄浴であった。それに続けて、25%(体積/体積%)の水性IDA(工業用変性アルコール)の浴であった。第3の洗浄浴は50重量%(体積/体積%)のIDAの水溶液によって満たされた。また、第4の浴は75重量%(体積/体積%)のIDA水の浴であった。最後の浴は、ファイバーが取り除かれ、手によって搾られ、40℃でファン・オーブンの中で乾燥される前に、約1時間ファイバーが置かれる100重量%のIDAの浴であった。浴は、次の浴によってフィラメントに導き、該フィラメントにストレッチを加えるゴデット(godet)によって分離された。1:6の延伸比は、最初のゴデット(凝固槽の出口)と第2の浴との間で目標とされた。
【0028】
紡糸は、創傷包帯に処理されるのに十分に柔軟で強度のあるカルシウムの供給されたフィラメント及び亜鉛の供給された(zinc provided)フィラメントに至る(run into)。ファイバーは、強度及び直径の点から創傷包帯で使用される他のファイバーと物理的に同程度であった。表1及び2は、BSEN ISO 5079、1996年によって測定された強度と、SEM及び画像解析ツールによって測定された直径との詳細を示す。
【0029】
表1 ファイバーの強度
注:括弧における数字は、標準偏差である。
【0030】
表2 ファイバー直径
【実施例2】
【0031】
この実施例は、ファイバーのプロテイナーゼ取り込み(uptake)を示す。
【0032】
MMP方法
【0033】
様々なファイバーの9ミリグラムのサンプルが7mlバイアルの中に配置され、あらかじめ作成したMMP溶液の40マイクロリットルがこれらのサンプルに加えられた。これらのサンプルは2乃至3分間そのままの状態に保たれて、酵素が材料によって完全に吸収される(take up)ことを保証する。これらの水和されたサンプルに対して、960マイクロリットルのMMPの分析反応緩衝液が加えられ、そしてサンプルが、手によって穏やかに混合された。さらに2乃至3分経過した後、2つの90マイクロリットルサンプルがバイアルから取り除かれ、後の分析(T
0)用のマルチウエルプレートの個々のウエルに移された。サンプルを含むバイアルは、室温で2時間そのままの状態に保たれた。その後、さらに2つの90マイクロリットルサンプルが取り除かれ、上記のように処理された(T
120)。20マイクロリットルのあらかじめ作成したDQゼラチンが、マルチウエルプレート(T
0とT
l20のプレート)の各ウエルに加えられた。そして、蛍光レベルの変化が、Tecan F200マルチウエルプレート分光光度計を用いて、およそ30分間にわたって測定された。サンプルを含むバイアルの中にあるMMP活性での減少率は、検出された蛍光のレベルから計算された。ブランクのサンプルとともに適切な陽性対照及び陰性対照が、作成され且つ並行して実行された。
【0034】
多成分のファイバーの4つの実行(run)すべてのT=0の時間ポイントでのMMP活性のレベルは、アクアセル(登録商標)のそれとおおまかに比較可能である。しかしながら、特に亜鉛を含むファイバーにおいてT=120分の時間ポイントに対して改善が認められる。これは、MMP調整の効果が、この発明のファイバーにおいてより長く続くことを示唆する。MMP活性の低下は、両方の時間ポイントでCMC短線及びKaltostat短線よりも優れている。結果が表3(
図1)に示される。
【0035】
これらの結果は、この発明のファイバーによって提供された創傷浸出液成分の傷害活性(damaging activity)の広い薬効範囲(spectrum)の低下を示す。
【実施例3】
【0036】
実施例1の方法で製造されたファイバーは、それらのゲル化特性を調べるために環境制御型走査電子顕微鏡検査の下で観察された。ファイバーは、いくつかのエリアが水和相の間に混じり合い(blend in)ながら、適度な膨潤(swelling)及びゲル化を示すことが分かった。CaC1
2に紡糸されたファイバーに対する膨潤比は、2.3で、ZnC1
2(1.54)に紡糸されたファイバーに対するそれよりも大きい。
【実施例4】
【0037】
実施例1の方法で製造されたファイバーは、織物の形に処理された。ファイバーは55mmの繊維長さにカットされ、手のけば立て機(card)を使用して手動で目を粗くし、500mmの有効幅のパイロット規模のけば立て機を使用してけば立てられた。表5に与えられた特性で、それらは織物のウェブにニードルパンチ(needle punch)された。単位面積当たりの重量は、既知サイズ(known size)のサンプルの重さを量ることにより重量測定法で測定された。20℃±2℃±で65%RH±4%RHでの最低限の24時間保管の後、及びファン・オーブンにおいて105℃で4時間乾燥した後、水分率は重量測定で測定された。
【0038】
表5 100%ペクチン/ゼラチン織物サンプルの物理的特性
【0039】
ZnCl
2で紡糸されたファイバーを使用して製造された織物サンプルの吸収性及び保持性は、水和メディアとしてBP推奨の生理溶液を使用して、測定された。吸収性は、サンプルの既知のサイズ(典型的に5cm×5cm)の重さを量り、水和メディア中でその重量の20倍で水和し、37℃で30分間培養し(incubate)、30秒間鉗子でサンプルを保持することで過剰な流体の水切りを行い、水和され且つ水切りされたサンプルの重さを量ることによって測定される。保持性は、重さが量られた後、水和され且つ水切りされたサンプルに40mmHgと等価の重さを印加し、1分間そのままの状態にし、再度量ることによって測定される。流体管理能力をさらに評価するために、材料が外側に(lateral)拡がるのを防止する能力も評価された。これは、エオシン染料を含むBP推奨の生理溶液(溶液A)へ1cm(標線に沿って)ずつ1.5cm幅のストリップを1分間浸すことにより行われた。その後、サンプルが取り除かれて、標線からの流体移動の距離が測定される。製造された材料の吸収性、保持性及び外側へのウィッキング(lateral wicking)が、表6に与えられる。
【0040】
表6 100%のペクチン/ゼラチン織物サンプルの流体管理特性
【実施例5】
【0041】
実施例1の方法で製造されたファイバーは、実施例4で説明したのと同様のルートを使用して、Hydrofiber短線材料の50%ブレンドに織物の形に処理された。実施例4のように測定された物理的特性及び流体取扱特性が、表7に与えられる。
【0042】
表7 50%ブレンドされたファイバーの物理的特性及び流体取扱特性
【0043】
これらの結果は、この発明に係るファイバーの利点を示し、当該利点は、良好な流体取扱特性及び創傷成分の傷害活性の低下という組み合わされた利点を持った包帯を与えるために従来の包帯ファイバーとともに処理されることである。
【実施例6】
【0044】
この発明に係る多成分のファイバーは、実施例1で説明したのと類似している湿式紡糸プロセスで製造されたが、小規模に製造された。ファイバーは、以下に示すような様々な成分比率を有する。
【0045】
【0046】
紡糸原液溶液の作成:
300mlの8%固体溶液が、撹拌ホットプレート上で40℃まで288mlの脱イオン水を加熱することによって、各成分に対して作成された。ゼラチンは、撹拌しながらゆっくり加えられ、完全に一体化したあと、他の成分が加えられ、最後にペクチンが加えられた。固体がすべて溶けるまで、全体がゆっくりと混合されるとともに均質化された。そして、溶液が夜通し冷却のためにそのままの状態にされた。
【0047】
マトリックスの必要な重量(g)
【0048】
湿式紡糸法
紡糸原液の溶液は、5%の塩化カルシウム凝固槽にファイバーを紡いだ紡糸口金に低流量(2.25ml/分)でぜん動ポンプを用いて送り出された。ファイバーはIDA:水が50:50である浴の中で束ねられた。その後、それらは換気フードの中で空気乾燥される前に、100%IDAの中で洗浄された。
【0049】
すべての紡糸の実行(run)は、創傷包帯に処理されるのに十分な柔軟な且つ強度のあるフィラメントを提供した。
【実施例7】
【0050】
この実施例において、創傷包帯に形成されたこの発明に係る多成分ファイバーの能力は、出来上がった包帯の物理的性質とともに評価された。中規模な紡糸装置(rig)が、80gの各タイプのファイバー短線(tow)を製造するために使用された。ファイバーは、塩化カルシウム浴又は塩化亜鉛浴のいずれかで紡がれた。不織布を製造するために、出来上がった短線が、目を粗くして(open)、けば立てられ、ニードルされた(needle)。各短線から、2つの不織パッドが製造された。1つがこの発明に係るファイバー100%を備えたものである。もう1つが、この発明に係るファイバー50%と、Lyocellから製造されるとともに製品アクアセル(例えば、コンバテック)において利用可能であるカルボキシメチルセルロース・ファイバーであるHydrofiber(登録商標)50%と、を備えたものである。出来上がったパッドは、キーとなる物理的性質のあらゆる変化を評価するためにさらされた(irradiated)。
【0051】
湿式紡糸:湿式紡糸プロセスは、実施例1において使用されたものと同じであった。一旦ファイバーが洗浄されたならば、それらは、切断され、1つの端部で結ばれ、100%IDAを含む浴の中に1時間置かれた。そして、ファイバーは、搾られて、乾燥するまで、1時間、40℃のオーブンの中に置かれた。
【0052】
観察:ファイバーは、塩化カルシウムの凝固槽の中でよく紡がれた。いったん乾燥したファイバーは、非常に柔軟で、容易に分離されて、白色/クリーム色であった。いくらかの亜鉛が溶液から沈殿するとともに、ファイバーが紡糸口金から出現したときファイバーにある緩み(slackness)があったといういくつかの問題が、亜鉛の凝固槽で経験された。しかしながら、柔軟で、オフホワイト色/わずかに小麦色であるファイバーが製造された。
【0053】
ファイバーの織物化(textiling):乾燥されたファイバーは、55mmに切断され、手動のけば立て機を使用して目を粗くした(opened)。それらは、500mmの有効幅、単一のかせ枠(swift)、3組のワーカー及びストリッパー、ならびに単一のファンシーロールを備えたパイロット規模のAutomatexモデルのCA500けば立て機を使用して、けば立てられた。4つのけば立てられたウェブが製造された。
【0054】
ニードリング(needling):ニードリングは、パイロット規模のガーネット/バイウォーター・ニードル織機上で行なわれた。ニードリングの間に多くのバルクを提供するために、ウェブが、2つ又は4つの折り畳みで、折り畳まれた。
【0055】
出来上がった製品は、以下のように、参照を付けられた(referenced)。
HF-2010/078-2:CaC1
2で紡がれた100%Biointeractiveファイバーの第2の試行(4回、折り重ねられた)。
HF-2010/079:ZnC1
2で紡がれた100%Biointeractiveファイバー(4回、折り重ねられた)。
HF-2010/080:50%Hydrofiberを備える、CaC1
2で紡がれた50%Biointeractiveファイバー(2回だけ、折り重ねられた)。
HF-2010/081:50%Hydrofiberを備える、ZnC1
2で紡がれた50%Biointeractiveファイバー(2回だけ、折り重ねられた)。
【0056】
照射:サンプルは、25乃至42kGyの線量でγ線を照射された。
【0057】
吸収
要約:混合されていない形と混合された形の、不織(CaCl
2)材料の吸収性が、アクアセル(登録商標)に匹敵する(重量基準当たりの重量で)。ZnCl
2に紡がれたサンプルの吸収性は、一般に、わずかに低い。照射されたサンプルと非照射のサンプルとの間の違いがほとんど無かった。下記の表は、g/gで表現された吸収性の結果を提供する。
【0058】
【0059】
保持性
要約:混合されたファイバーは、純粋な多成分ファイバーよりもわずかに良好な保持性を有する。また、全体として、保持性がアクアセル(登録商標)よりも低いようである。結果は、照射が保持性での少しの低下に帰着することも示す。下記の表は、g/gとして表現された保持性の結果を提供する。
【0060】
【0061】
この実施例は、注目される流体管理特性とともに、この発明に係るカルシウムで紡がれたファイバーと亜鉛で紡がれたファイバーとを織物の形に製造することができるという原理の証を提供している。当該試みは、この発明に係るファイバーが、100%の材料として、又は、Hydrofiberとの混合材料として、不織布にうまく製造されるのに十分な強さであることを確認した。
【0062】
カルシウムイオンを含む浴で紡がれたファイバーは、亜鉛イオンを含む浴で紡がれたファイバーよりも、より容易に織物化された。
【実施例8】
【0063】
実施例7において製造された包帯は、銀が吹き付けられ、次の方法を使用して照射された。
【0064】
各包帯は、硝酸銀(5%)水溶液の超音波のスプレーを通過し、続いて塩化ナトリウム(3%)水溶液の超音波のスプレーを通過した。そして、包帯は、始めにおおよそ10秒間銀の溶液に曝され、そのあと食塩水におおよそ10秒曝された。出来上がった包帯は、おおよそ1分間強制空気乾燥器を使用して乾燥された。
【0065】
各包帯は、31.4kGyの線量でガンマ線照射を使用して照射された。いったん照射されたサンプルのすべてが、照射前のサンプルと視覚的に同じであった。
【実施例9】
【0066】
エラスターゼを調整する実施例7の包帯の能力を評価するために、蛍光分析が行われ、陽性対照の百分率として上澄みの中に残るエラスターゼの活性としてデータが報告された。
【0067】
この方法のあとにEnzCheckエラスターゼ分析キットを使用して試験が行なわれた。様々なファイバーの9ミリグラムのサンプルが7mlバイアルに置かれ、これらのサンプルに対して、あらかじめ作成した40マイクロリットルのエラスターゼ溶液が加えられた。これらのサンプルは、酵素が材料によって完全に吸収される(taken up)ことを保証するために、2乃至3分間そのままの状態にされた。これらの水和されたサンプルに対して、960マイクロリットルのエラスターゼ分析反応緩衝液が加えられ、そしてサンプルが、保証するために手によって穏やかに混合された。さらに2乃至3分が経過したあと、2つの20マイクロリットルサンプルがバイアルから取り除かれ、後の分析(T
0)のためにマルチウエルプレートの個々のウエルに移された。サンプルを含むバイアルが室温で2時間そのままの状態にされ、そのあと、さらに2つの20マイクロリットルサンプルが取り除かれ、上記のもの(T
120)として処理された。90マイクロリットルエラスターゼ分析反応緩衝液がマルチウエルプレートの個々のウエルに加えられ、最終体積が110マイクロリットルに至った。
【0068】
あらかじめ作成した40マイクロリットルのDQエラスチンは、マルチウエルプレート(T
0及びT
120のプレート)の個々のウエルに加えられた。そして、蛍光レベルの変化が、Tecan F200マルチウエルプレート分光光度計を使用して、おおよそ30分にわたって測定された。サンプルを含むバイアルの中にあるエラスターゼ活性の減少率は、検出された蛍光のレベルから計算された。
【0069】
ブランクのサンプルに加えて適切な陽性対照及び陰性対照が、作成され且つ並行して実行された。したがって、これは、包帯の、エラスターゼ活性を調整する能力を示す。
【0070】
この発明に係る全ての包帯は、HF-2010/079をテストする場合に40%に戻る最も高いエラスターゼ・レベルで最初に実行するとともに2時間にわたって良好に実行する。HF-2010/078の包帯は、T
0及びT
120でおおよそ90%の低減で全体として最良に実行する。全体としてカルシウムを含む材料が、分析の間に、良好に実行する。
【0071】
MMPを調整する包帯の能力を評価するために、蛍光分析が実行され、陽性対照の百分率として上澄みの中に残るMMPの活性として、データが報告された。従った方法は実施例2の方法であった。それは、次の結果をもたらした。
【実施例10】
【0072】
この実施例において、ナノスケールのファイバーが、ゼラチンとペクチンの溶液から作成された。最適条件は、25w/w%の固形分濃度、90/10乃至70/30のゼラチンのペクチン比率、10cmのコレクターへのニードル距離、及び20kVの電圧を中心とする。
【0073】
電気紡糸用の溶液が、次の方法で作成された。体積が10mlの蒸留水が重量で測定され、ホットプレートを使用して、45℃(±3℃)の温度に加熱された。水の温度が周期的に測定された。適切な量のゼラチン及びペクチンが重量で測定された。一度に少量のゼラチンを水に加えることにより、ゼラチンが水に溶かされた。その溶液は、各量が溶解するまで回転速度が550回転/分(±50回転/分)の研究用ミキサーを使用して撹拌した。全量のゼラチンが完全に溶解したとき、ペクチンが同じ方法で加えられた。これらの成分が溶解した後、溶液の重さが測定されて、蒸発が生じていた場合、水が加えられた。これによって、最終溶液が規定濃度にあることが保証された。すべての材料が完全に溶解され且つ混合されたとき、溶液は、電気紡糸の前に室温に冷やすことが許された。使用されない溶液は、−5℃で研究用冷蔵庫に保管された。
【0074】
電気紡糸の設備は、高電圧電源と、シリンジ・ポンプと、接地されたコレクターとから構成された。溶液は、0.41mmの内径及び12mmの針長さを持った、22Gの針が取り付けられた5mlのルアーロック・グラス注射器に装填された。注射器は、0.1ml/分乃至1ml/分の流量を持った、シリンジ・ポンプに取り付けられた。シリンジ・ポンプは、標準の室温環境で使用されるか、又は温度制御された筐体箱の内部に収容された。高電圧が、接地に関してGlassman高圧ユニット(0乃至30kV)によって印加された。針の電圧が、高電圧プローブ及びマルチメーターを使用して測定された。サンプルは、アルミニウム箔から形成された平面電極の上に集められる。
【0075】
結果は、ゼラチン/ペクチンの組み合わせの電気紡糸が、15%wt乃至30%wtのトータルの固形物濃度で、90/10のゼラチンのペクチン比率で、高い温度で、可能であることを示す。70/30のゼラチン/ペクチン比率を備えた紡糸溶液は、15%wt乃至25%wtの濃度で可能であった。濃度の増加又はペクチンのゼラチン比率の増加につれて溶液粘度が増加したとき、電気紡糸プロセスを起こすために15kV以上の高電圧が使用された。