特許第5893058号(P5893058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893058
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】難燃性制電経編地及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/00 20060101AFI20160310BHJP
   D04B 21/12 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   D04B21/00 B
   D04B21/12
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-9036(P2014-9036)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-137434(P2015-137434A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501381653
【氏名又は名称】株式会社ダイイチ
(73)【特許権者】
【識別番号】392015790
【氏名又は名称】冨士経編株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070530
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 泰之
(72)【発明者】
【氏名】花本 高志
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳輝
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭60−036636(JP,Y1)
【文献】 特開2003−153796(JP,A)
【文献】 特開2001−200454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 21/00−21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性を有する合成繊維糸条群と制電性を有する糸条群とで構成されている経編地であって、当該難燃性を有する合成繊維糸条群の第1の難燃性を有する合成繊維糸条によりメッシュ編み組織に形成された組織部と、当該難燃性を有する合成繊維糸条群の第2の難燃性を有する合成繊維糸条により、当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部をコース方向に横断して、当該空間の少なくとも一部を閉塞する様に編成された組織部とで構成された基礎組織部が形成されていると共に、当該制電性を有する糸条群はいずれも単糸で、20乃至50デニールの極細の繊度を有するものであり、且つ、当該それぞれの単糸が、所定のウェールに沿って,当該ウェールで編み目を形成することなく、且つ、当該ウェールに対応する個々のニードルの両側に交互に移動する様に挿入されている組織部を形成しており、更に、当該制電性を有する糸条群は何れも、当該基礎組織部を形成する当該第1の難燃性を有する合成繊維糸条と当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条との間で狭持され、且つ、当該制電性を有する合成繊維糸条の一部が、当該基礎組織部の表面若しくは裏面の少なくとも一部に顕出している事を特徴とする難燃性制電経編地。
【請求項2】
当該制電性を有する糸条は、金属性繊維を含むモノフィラメント糸若しくはマルチフィラメント糸で構成された単糸である事を特徴とする請求項1に記載の難燃性制電経編地.
【請求項3】
当該難燃性を有する合成繊維糸条は、そのトータル繊度が150乃至500デニールである事を特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性制電経編地。
【請求項4】
当該制電性を有する糸条は、当該基礎組織部を形成する当該難燃性を有する合成繊維糸条の配列本数の少なくとも2分の1の配列本数に整経されている事を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の難燃性制電経編地
【請求項5】
当該制電性を有する糸条の配列密度は、2乃至3mm間隔に1本が配列される様に設定されている事を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の難燃性制電経編地。
【請求項6】
難燃性を有する合成繊維糸条と、20乃至50デニールの極細の繊度を有する単糸からなる制電性を有する糸条とで構成されているメッシュ状の経編地であって、当該難燃性を有する合成繊維糸条の一部により、メッシュ編み組織からなる基礎組織部が形成されていると共に、残りの当該難燃性を有する合成繊維糸条により、当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部をコース方向に横断して、当該空間の少なくとも一部を閉塞する様に編成されている難燃性制電経編地を編成するに際し、当該基礎組織部を形成する第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条は、所定の本数を2組に分割し、当該第1の組の当該難燃性を有する合成繊維糸条は、フロント筬の各ガイド部に挿通させると共に、当該第2の組の当該難燃性を有する合成繊維糸条は、第1中間筬の各ガイド部に挿通させ、一方、当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条は、バック筬の各ガイド部に挿通させ、更に、当該制電性を有する糸条は、第2中間筬の各ガイド部に挿通させ経編編成することを特徴とする難燃性制電経編地の製造方法。
【請求項7】
当該フロント筬及び当該第1中間筬の各ガイド部に挿通させる当該第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条の本数は、当該バック筬の各ガイド部に挿通させるに当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条の本数よりも約2倍と成る様に設定する事を特徴とする請求項6に記載の難燃性制電経編地の製造方法。
【請求項8】
当該フロント筬及び当該第1中間筬の各ガイド部に挿通させる当該第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条の本数は、当該第2中間筬の各ガイド部に挿通される当該制電性を有する糸条の本数よりも約2倍と成る様に設定する事を特徴とする請求項6又は7に記載の難燃性制電経編地の製造方法。
【請求項9】
当該各筬に於ける各ガイド部に対する当該難燃性を有する合成繊維糸条若しくは当該制電性を有する糸条の挿通方法は、1in1out方式を採用する事を特徴とする請求項7又は8に記載の難燃性制電経編地の製造方法
【請求項10】
当該フロント筬は、1:0/1:2/2:3/2:1/の基本的動作を実行させ、当該第1中間筬は、2:3/2:1/1:0/1:2/の基本的動作を実行させ、当該第2中間筬は、1:1/0:0/基本的動作を実行させ、且つ当該バック筬は、1:0/3:4/6:7/4:3/の基本的動作を実行させる様に制御する事を特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の難燃性制電経編地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性制電経編地に関するものであり、更に詳しくは、電気的障害が発生し易く且つ火災が発生し易い、危険で且つハードな労働等が要求される特殊な作業環境に於いて、使用可能な難燃性制電経編地及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記した特殊な作業環境下で作業する作業員の安全を確保すると共に、作業者の作業効率を低減させる事が無く、且つ、当該作業者の作業が安全に且つ快適に実行される事が可能で、耐久性や通気性に優れ、軽量で且つ低コストに製造可能な特殊の作業服、作業衣が開発されてきている。
係る目的の為に、従来から、作業衣の生地・布帛としては、適度の強度に加えて、滴度の伸縮性と通気性を有し、且つ、布帛としての特性値の設計のし易さ、汎用性等を考慮して、近年では、織物組織や緯編組織からなる布帛よりも、寧ろ経編組織からなる布帛が注目されてきており、当該経編組織からなる布帛からなる作業服、作業衣等が主流となって来ている。
【0003】
一方、上記した特殊な作業環境下における好ましい当該作業服、作業衣等が所有すべき主な特性として、その第1の特性としては、その多くが、作業中に発生する、静電気の発生により、当該作業工程や製造される製品得の電気的な障害の発生による悪影響の発生を防止する為に、当該作業服、作業衣等に当該静電気の発生を未然に防止する為の制電性が付与されていることであり、更に、その第2の特性としては、当該制電性特性の付与に加えて、作業者が火炎が存在する近傍で作業をしたり、当該火炎が発生し易い環境で作業をする場合には、当該火炎が当該作業衣・作業服等に燃え移らない様に、当該作業衣・作業服等自体に予め難燃性を持たせるものである。
【0004】
当該作業衣或いは作業服としては、耐候性、染色性、強度、耐摩耗性等の各種要求される必要特性を総合的に勘案するならば、従来から主に使用されているのはポリエステル系の合成繊維であり、今後も係るポリエステル系合成繊維糸条を主体とする作業服が、主流を占める事が予想されている。
係る状況に於いて、当該ポリエステル系合成繊維糸条を難燃化する方法も、従来より多くの技術が開示されている。
【0005】
即ち、当該ポリエステル系合成繊維糸条を難燃化する方法としては、例えば、当該ポリエステル系合成繊維糸条を紡糸する際に、当該ポリマー内に予め、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、金属水酸化物等の難燃剤等を混練りしておくか、紡糸された当該ポリエステル系合成繊維糸条の外表面に当該難燃剤等を塗布、付着させておく方法で製造されたものを使用する事が可能であり、更には、上記した技術を更に発展させる技術として、特開2008−231626号公報(特許文献1)に開示されているとおり、当該ポリエステル繊維の表面に、例えば、アミドホスファゼン化合物からなる重合物を付加する方法も開示されている。
【0006】
一方、上記した布帛に制電性を付与する方法としては、従来から制電性と称される繊維を称する方法が一般的に知られている。
係る制電性を有する糸条としては、例えば、銅やステンレス等の金属繊維、炭素繊維、導電性ポリマーで形成された繊維、合成繊維にスパッタリング法、鍍金法など従来技術の方法により金属を繊維表面にコーティングした導電糸、カーボンナノチューブをコーティングした導電糸、硫化銅を繊維表面に結合させた導電糸、合成繊維の中に導電性カーボンブラックや金属粉末、硫化銅、硫化亜鉛などの金属化合物、導電ポリマーなどの導電物質を練り込んだ糸、更には、上記した導電性導電物質とポリエステル系合成樹脂、ナイロン系合成樹脂等の公知の合成樹脂と芯−鞘状に複合紡糸して得た合成繊維、や海ー島状に複合紡糸して得た合成繊維などが使用されるものである。
【0007】
又、当該合成繊維の樹脂成分は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアミド系(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系などが挙げられ。繊維形態としては、フィラメント、ステープルのいずれでもよく、また混繊状態であってもよい。また、繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸形でも、三角、四角形等の多角形状や扁平等の異形断面形状であっても、また、中空部を有するものであってもよい。
つまり、従来技術として一般的に公知である、当該制電性繊維と当該合成繊維との混紡糸、混繊糸、合撚糸、カバリングを含む複合糸、引揃糸等の形態を有する繊維糸条を使用する事は勿論可能である。
【0008】
然しながら、上記した経編組織からなる布帛は、高速、高密度化で大量生産型の経編機に於いては、一般的に針密度が高く、従って紡績糸や捲縮糸等の嵩張りが大きく、表面摩擦の大なる繊維糸条や一般の繊維糸条でも繊度が大きい糸条は、編成が困難であり、従って、出来るだけ繊度が小さい繊維糸条を使用して編成する事が一般的となっている。
その反面、当該経編組織を編成する場合、使用する繊維糸条の繊度が極めて小さい場合には、各縦糸の張力管理が極めて難しく、従来では、使用する縦糸の繊度が極細と称される。15乃至110dtexレベルの細い糸条は、紡績糸は勿論のこと、モノフィラメント糸やマルチフィラメント糸で有っても、糸切れが多発して、編成操作は実質的に不可能であった。
勿論、10乃至50dtexレベルの細い単糸からなる静電性繊維糸条をトリコットで効率的に編成する事も当然従来技術に於いては不可能なことであった。
【0009】
その為、従来では、一組織内に於ける当該制電性繊維を出来るだけ多く配列させて編成させようとして、当該制電性繊維糸条の繊度を細くて編成しようとしても、実質的に経編組織を使用しては編成不可能であるので、当該制電性繊維を非制電性繊維と混紡して紡績しとして使用するとか、当該制電性繊維からなる紡績糸或いはフィラメント糸を非制電性繊維の紡績糸或いはフィラメント糸と引き揃えて使用するか、合撚或いは交撚処理して、複合糸しとして使用するか、或いはカバリング技術を使用して芯―鞘型の複合糸として使用するほか実用的な編成技術は存在していないのが現状である。
【0010】
例えば、特開2012−197521号公報(特許文献2)には、制電性繊維糸条として毛番手が2/52番手である紡績糸を使用するか、110dtexのマルチフィラメント糸を使用すると言う繊度の太い繊維糸条を使用し、且つ当該制電性繊維糸条に編み目を必ず形成させ、然も当該各編み目同士が相互に接触させて導電性を確保すると言う技術思想が開示されているが、当該制電性繊維糸条の配列は、1イン7アウトとか1イン15アウトと言う様に、極めて粗く、間隔を於いて配列されているのであって、この事は、極細の当該制電性繊維糸条を多数配列して編成する事が不可能である事を前提として、太い制電性繊維糸条を何とか糸切れを発生させずに編成させるかと言う為の技術であるに過ぎないのであって、係る従来技術では、当該制電性繊維糸条を複数本の編針間を移動させ、且つそれぞれの編成点で編み目を形成する為、極細の制電性繊維糸条では到底編成出来ない糸設計に過ぎず、又、当該公知技術に於ける静電効果は殆ど期待できず、ましてや、薄地、軽量、低コストで難燃性効果を備えた難燃性制電経編地を得る事は不可能である。
【0011】
一方、特開2007−113157号公報(特許文献3)には、上記した特許文献2と同じ様に。極細の当該制電性繊維糸条を多数配列して編成する事が不可能である事を前提とて、当該制電性繊維糸条と適宜の非制電性繊維糸条との合撚糸を使用する技術が示されているのみで、係る公知技術から、極細の当該制電性繊維糸条を直接編成に使用して薄地、軽量、低コストで難燃性効果を備えた難燃性制電経編地を得る事は不可能である。
【0012】
更に、特開2005−344245号公報(特許文献4)には、28dtexのマルチフィラメント糸からなる制電性繊維糸条を使用して、経編地を編成する技術に関して記載されてはいるが、その基本的な技術思想は、上記した特許文献2及び3と同様で、極細の当該制電性繊維糸条を多数配列して編成する事が不可能である事を前提として、28dtexと言うマルチフィラメント糸を編成時に糸切れしないようにする為の技術を開示するものであり、従って、上記公知技術と同様に、当該制電性繊維糸条の配列は、1イン6アウトと言う様に、極めて粗く、間隔を於いて配列されているのであって、この事は、極細の当該制電性繊維糸条を多数配列して編成する事が不可能である事を前提として、太い制電性繊維糸条を何とか糸切れを発生させずに編成させるかと言う為の技術であるに過ぎないのであって、更に、当該従来技術では、当該制電性繊維糸条を8本の編針間を移動させ、且つそれぞれの編成点で編み目を形成する為、極細の制電性繊維糸条では、その際、糸切れは多発する事は必定であり、到底編成出来ない糸設計に過ぎず、又、当該公知技術に於ける静電効果は殆ど期待できず、ましてや、薄地、軽量、低コストで難燃性効果を備えた難燃性制電経編地を得る事は不可能である。
【0013】
つまり、上記した様な従来一般的に採用されている制電性繊維を使用した経編地に於いては、比較的繊度の大なる非制電性繊維糸条に細い制電性繊維を混紡、混撚り、混繊、引き揃え等の各種の糸条加工手段を使用して、制電繊維糸条とするものである為、当該制電性繊維が多くの場合、当該非制電性繊維糸条の内部側に配置されてしまい、当該非制電性繊維糸条の表面側に存在している部分が極めて少ないので、布帛ないでの、当該制電性繊維が当該布帛の表面に顕出する機会が極めて少なく、同様の理由により、当該制電性繊維同士が当該布帛内部で相互に接続する機会も極めて少ないので、全体として、有効な制電特性が発揮される事は無く、更に、当該細い制電性繊維が単独で使用される場合であっても、経編機の機構上から極細の制電性繊維は、編目を形成すると糸の破断が発生したり、当該細い制電性繊維を複数本の編針をウェール方向に飛ばす様な組織を採用すると同様に当該制電性繊維が容易に切断してしまうと言う事態が多発して、正常な制電性を有する編地として形成されないことから、当該制電性繊維は、かなり相互の配列間隔を開けた状態で整経されるものであるので、この事は、上記と同様に、当該制電性繊維が当該布帛の表面に顕出する機会が極めて少なく、又、当該制電性繊維同士が当該布帛内部で相互に接続する機会も極めて少ないので、有効な制電特性が発揮される事は無かった。
一方、上記した経編地を主体とする布帛に於いて、制電性特性に加えて、難燃性特性を合わせて有する作業衣或いは作業服に関する公知例は見当たっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−231626号公報
【特許文献2】特開2012−197521号公報
【特許文献3】特開2007−113157号公報
【特許文献4】特開2005−344245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って本発明の目的は、上記した従来技術の欠陥を改良し、難燃性を有し、且つ制電性を有する経編地であって、軽量且つ薄地で、当該制電性繊維の存在が目立たず、当該制電性繊維の混入比率が低いにも拘わらず、優れた制電特性を具備し、低コストで製造可能な経編地及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記のような目的を達成するため、基本的には、以下に示す様な技術構成を採用するものである。
即ち、本発明に係る第1の態様は、難燃性を有する合成繊維糸条群と制電性を有する糸条群とで構成されている経編地であって、当該難燃性を有する合成繊維糸条群の第1の難燃性を有する合成繊維糸条によりメッシュ編み組織に形成された組織部と、当該難燃性を有する合成繊維糸条群の第2の難燃性を有する合成繊維糸条により、当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部をコース方向に横断して、当該空間の少なくとも一部を閉塞する様に編成された組織部とで構成された基礎組織部が形成されていると共に、当該制電性を有する糸条群はいずれも単糸で、20乃至50デニールの極細の繊度を有するものであり、且つ、当該それぞれの単糸が、所定のウェールに沿って,当該ウェールで編み目を形成することなく、且つ、当該ウェールに対応する個々のニードルの両側に交互に移動する様に挿入されている組織部を形成しており、更に、当該制電性を有する糸条群は何れも、当該基礎組織部を形成する当該第1の難燃性を有する合成繊維糸条と当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条との間で狭持され、且つ、当該制電性を有する合成繊維糸条の一部が、当該基礎組織部の表面若しくは裏面の少なくとも一部に顕出している事を特徴とする難燃性制電経編地であり更に、本発明に係る第2の態様は難燃性を有する合成繊維糸条と、20乃至50デニールの極細の繊度を有する単糸からなる制電性を有する糸条とで構成されているメッシュ状の経編地であって、当該難燃性を有する合成繊維糸条の一部により、メッシュ編み組織からなる基礎組織部が形成されていると共に、残りの当該難燃性を有する合成繊維糸条により、当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部をコース方向に横断して、当該空間の少なくとも一部を閉塞する様に編成されている難燃性制電経編地を編成するに際し、当該基礎組織部を形成する第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条は、所定の本数を2組に分割し、当該第1の組の当該難燃性を有する合成繊維糸条は、フロント筬の各ガイド部に挿通させると共に、当該第2の組の当該難燃性を有する合成繊維糸条は、第1中間筬の各ガイド部に挿通させ、一方、当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条は、バック筬の各ガイド部に挿通させ、更に、当該制電性を有する糸条は、第2中間筬の各ガイド部に挿通させ経編編成することを特徴とする難燃性制電経編地の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る当該難燃性制電経編地は、上記した様な構成を採用することによって、従来技術では編成が不可能であった、極細の単糸からなる制電性糸条を難燃性繊維糸条と併用して編成させると共に、当該難燃性繊維糸条により基礎編組織部を編成させると共に、当該制電性糸条を当該基礎編組織とは異なる編組織で編成させることにより、極細の制電性糸条を多本数使用するにも拘わらず、極細の制電性糸条が切断されることなく、当該経編布帛の表裏両面に適切に分散配置されると共に、当該経編布帛内に安定的に保持配列されることにより、安定した確実性のある制電性特性を発揮すると共に、難燃性繊維性にも優れた難燃性制電経編地が容易に得られると言う優れた作用効果を発揮するものである。
【0018】
更に、本発明に係る当該難燃性制電経編地は、上記した様な構成に加えて、編組織として、特定の編組織であるメッシュ編組織を基本的に採用することによって、従来技術では編成が不可能であった、極細の単糸からなる制電性糸条を難燃性繊維糸条と併用し、且つメッシュ編み組織を基本としこれに更に特定の編目組織を組み合わせたで編組織構成を採用した経編布帛に編成ことにより、極細の制電性糸条を多本数使用するにも拘わらず、極細の制電性糸条が切断されることなく、当該経編布帛の表裏両面に適切に分散配置されると共に、当該経編布帛内に安定的に保持配列されることにより、安定した確実性のある制電性特性を発揮すると共に、難燃性繊維が当該経編布帛の特定の面に大量に配列されている事により、当該経編布帛の通気性を十分に確保しながら、難燃性特性も効果的に発揮できる、軽量で、低コストで製造可能な難燃性制電経編地が容易に得られると言う優れた作用効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る当該難燃性制電経編地の一具体例に於ける表面を示す概略図である。
図2図2は、本発明に係る当該難燃性制電経編地の一具体例に於ける裏面を示す概略図である。
図3図3は、本発明に係る当該難燃性制電経編地の一具体例に於ける編組織の構成例を示す組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る当該難燃性制電経編地の一具体例について、その構成を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
即ち、本発明に係る当該難燃性制電経編地1は、その編組織は基本的には特定されるものではなく、単に、難燃性を有する合成繊維糸条2と従来では、編成不可能であった極細の制電性を有する糸条3からなる単糸とでトリコット編組織で構成されている難燃性及び制電性に優れた経編地1であって、より詳しくは、当該難燃性を有する合成繊維糸条2により基礎組織部5が形成されていると共に、当該制電性を有する糸条3は単糸で、極細の繊度を有するものであり、且つ、当該単糸がそれぞれのウェールで編み目を形成することなく、且つ、当該難燃性を有する合成繊維糸条2による編組織とは異なる編組織により編成されるものであり、所定のウェールに沿って,当該ウェールに対応する個々のニードルの両側に交互に移動する様に挿入されており、更に、当該制電性を有する糸条3のトータル繊度は、20乃至100デニール、好ましくは、20乃至50デニールである難燃性制電経編地1である。
【0022】
更に、本発明に於けるより具体的な具体例について説明するならば、図1は、本発明に於ける当該難燃性制電経編地1のより好ましい具体例を示す概略図であって、図中、難燃性を有する合成繊維糸条2と制電性を有する糸条3とで構成されているメッシュ状の経編地4であって、当該難燃性を有する合成繊維糸条2の一部6により、メッシュ編組織4からなる基礎組織部5が形成されていると共に、残りの当該難燃性を有する合成繊維糸条7により、当該メッシュ編み組織4により形成されたメッシュ空間部8をコース方向に横断して、当該空間8の少なくとも一部を閉塞する様に編成されており、且つ当該制電性を有する糸条3の単糸は極細の繊度を有するものであり、且つ、当該単糸3がそれぞれのウェールで編み目を形成することなく、所定のウェールに沿って,当該ウェールに対応する個々のニードルの両側に交互に移動する様に挿入されている難燃性制電経編地1が示されている。
【0023】
処で、本発明に於いて使用される当該難燃性を有する合成繊維糸条2としては、特にその構成を限定されるものではなく、上記した様な従来公知の難燃性を有する合成繊維糸条を使用する事が可能であり、従って、例えば、適宜のポリエステル系合成繊維糸条を紡糸する際に、当該ポリマー内に予め、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、金属水酸化物等の難燃剤等を混練りしておくか、紡糸された当該ポリエステル系合成繊維糸条の外表面に当該難燃剤等を塗布、付着させておく方法で製造されたものを使用する事が可能であり、更には、当該ポリエステル繊維の表面に、例えば、アミドホスファゼン化合物からなる重合物を付加して難燃化した繊維を使用するものであっても良い。
【0024】
一方、本発明に於いて使用される当該難燃性を有する合成繊維糸条2のトータル繊度は特に特定されるものではないが、一般の経編機で編成する事が可能な、例えば、166,7乃至555.5dtex(つまり、150乃至500デニール)の範囲内である事が好ましい結果が出る。
更に、本発明に於いて使用される当該制電性を有する糸条3は、特にその構成を限定されるものではなく、上記した様な従来公知の制電性を有する糸条を使用する事が可能であり、従って、例えば、銅等導電性物質を基板層に塗布或いは蒸着してスリットして得られの金属箔線状体、銅やステンレス等の金属線状体や金属繊維、或いは炭素繊維、導電性ポリマーで形成された繊維、合成繊維にスパッタリング法、鍍金法など従来技術の方法により金属を繊維表面にコーティングした導電糸、カーボンナノチューブをコーティングした導電糸、硫化銅を繊維表面に結合させた導電糸、合成繊維の中に導電性カーボンブラックや金属粉末、硫化銅、硫化亜鉛などの金属化合物、導電ポリマーなどの導電物質を練り込んだ糸、更には、上記した導電性導電物質とポリエステル系合成樹脂、ナイロン系合成樹脂等の公知の合成樹脂と芯−鞘状に複合紡糸して得た合成繊維、や海ー島状に複合紡糸して得た合成繊維などが使用されるものである。
【0025】
又、当該合成繊維の樹脂成分は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアミド系(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系などが挙げられ。繊維形態としては、フィラメント、ステープルのいずれでもよく、また混繊状態であってもよい。また、繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸形でも、三角、四角形等の多角形状や扁平等の異形断面形状であっても、また、中空部を有するものであってもよい。
【0026】
即ち、本発明に於ける当該制電性を有する糸条3は、金・銀箔を使用したフィルムを細幅に裁断した所謂ラメー糸と称する導電性糸条、金属繊維、及び上記した様な制電性成分を内蔵する合成繊維等からなる糸条を含むものであって、基本的には、これらの糸条の内、その繊度が極めて細い線状体、糸条、繊維糸条が主として使用されるものであり、特には、これらの線状体、糸条、繊維糸条はモノフィラメント或いはマルチフィラメント状で使用されるものである。
【0027】
即ち、本発明に於いては、特に高密度で高速度の生産が可能な経編機を主に使用するものであることから、混紡糸を含む紡績糸、嵩高糸、合撚糸、交撚糸、混繊糸、カバリング糸を含む複合糸等の、繊度が大で、ニードルとの摩擦係数の大きな繊維糸条は使用が出来ないことから、上記した各糸条のモノフィラメント或いはマルチフィラメントを単糸で使用する事に特徴がある。
つまり、本発明に於いて当該制電性糸条3として使用される糸条は、モノフィラメント糸若しくはマルチフィラメント糸で構成された単糸であり、そのトータル繊度は、16.65乃至111.1dtex(つまり、15乃至100デニール)、好ましくは、22.2乃至55.56dtex(つまり、20乃至50デニール)であり、より好ましくは、22.2乃至33.33dtex(つまり、20乃至30デニール)である。
【0028】
処で、既に説明した通り、従来から一般的に使用されている経編機に於いては、その機構上、紡績糸で有ってもフィラメント糸であっても、細い繊維糸条、特に極細と称される16.65乃至111.1dtexの範囲の繊度を有する糸条を直接単糸の状態で経編機で編成することが出来なかった。
その主な原因は、経編機の編成機構の複雑さとそれに伴う繊維糸条の供給速度若しくは張力調整の難しさが存在することから、従来に於いては、当該制電性を有する極細の糸条を単糸の状態で経編機に供給しても、当該極細の糸条は頻繁に糸切れを発生し、製品としての品質や性能を確保することが極めて困難であった。
【0029】
その為、従来に於いては、制電性を有する糸条を使用する場合には、その制電特性を編地上で発揮させる為には、極細の繊度を有する制電性繊維糸或いはその糸条を経編機に供給する必要性がある事は感じながらも、当該理由により、極細の繊度を有する制電性繊維糸或いはその糸条を非制電性繊維糸或いは非制電性糸条と混紡したり、混繊したり、合撚、交撚、引揃等の操作を加えて混紡糸、混繊糸等を含む複合繊維糸条に形成した後に、当該合繊維糸条を経編機に供給する方法を採らざるを得なかった。
【0030】
その結果、従来技術に於いては、当該制電性繊維糸或いはその糸条は、太い繊度を持つ糸条として供給されるので、糸切れは防止されるものの、経編地の目付や厚みが増大する他、当該制電性繊維糸或いはその糸条の製造工程が複雑となることから該制電性繊維糸或いはその糸条の製造コストは増大せざるを得ず、結果的には、最終製品の価格が高騰すると言う欠点を有していた。
【0031】
本発明者等は、係る従来の技術的問題を解決する為に、鋭意検討した結果、経編機上に当該極細の繊維糸あるいは極細の糸条を供給するに際し、当該経編機の編成機構の複雑な動きに同調させて、当該繊維糸条の供給速度及び/又は張力を微妙に制御する技術的知見を取得したものであり、係る技術的知見の獲得により、従来、実施的には編成が困難であった、特に極細の制電性を有する繊維糸或いはその糸条を単糸の状態で経編機で編成することに成功したものである。
それによって、制電性を有する繊維糸条の製造コストは、大はばに低減させることが可能となったのである。
【0032】
その結果、従来では得られなかった、極細、単糸使いの制電性繊維糸条を使用した、優れた制電特性持った、経編地が容易に且つ低コストで製造することが可能となった。
更に、本発明に於ける当該経編地1は、良好な制電特性を有するだけではなく、難燃性繊維糸条2と併用されて、且つ当該制電特性を有する繊維糸条3と当該難燃性繊維糸条2とを任意の経編組織を使用して編成する事が可能であるが、特定の当該該経編地1の用途を考慮した場合には、特には、特定の編組織を使用して編成することにより、より難燃性の優れた、且つ通気性の大なる、然も軽量で安価で制電特性にも優れた経編地1がえられるのである。
【0033】
即ち、本発明に係る当該経編地1は、主たる基本組織部分4は、難燃性を有する合成繊維糸条2で編成されるものであって、本発明に係る当該経編地が作業衣服、作業着、ユニフォーム等の作業者の作業をサポートする衣服を目的としていることから、通気性が主に要求されることから、基礎組織部4としメッシュ編組織を採用することがより好ましいものであり、更には,当該メッシュ編組織4に於けるメッシュ部分の開口部8を非透明化すると共に、難燃性が強力に発揮される様に、当該難燃性を有する合成繊維糸条2の一部6により、メッシュ編み組織からなる基礎組織部5が形成されていると共に、残りの当該難燃性を有する合成繊維糸条7により、当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部8をコース方向に横断して、当該空間8の少なくとも一部を閉塞する様に編成される構成を有している。
【0034】
以下に、本発明に係る当該難燃性制電経編地1の具体的な構成例をその製造方法を含めて詳細に説明する。
即ち、本発明に係る当該難燃性制電経編地1を編成するに際しての、特定された1具体例に於ける各種スペックは、以下の通りであるが、本発明は係る具体例のみに限定されるものではない事は言うまでもない。
【0035】
本発明に於ける当該具体例では、後述する様に、図3に示す様な4枚の筬を使用するもので、具体的には、フロント筬(F)、第1中間筬(M’)、第2中間筬(M)及びバック筬(B)が使用される。
【0036】
そして、当該フロント筬(F)には、後述する第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条6の内の一部の糸条6−1を挿通させ、当該第1中間筬(M’)には、後述する第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条6の残りの部分6−2を挿通させるものである。
一方、第2中間筬(M)及びバック筬(B)には、それぞれ当該制電性を有する糸条3と後述する当該第2の当該難燃性を有する合成繊維糸条7を挿通させるものである。
【0037】
そして、本具体例に於いて、使用される当該難燃性を有する合成繊維糸条2としては、ポリエステル系合成繊維を主成分とする糸条で繊度が180dtex(162D)である糸条を使用し、一方、当該静電性を有する糸条3として、ポリエステル系合成繊維を主成分とする糸条で繊度が22.2dtex(20D)である糸条を使用し、図3に示す様な編組織を使用して公称幅150cmで長さが50mのメッシュ経編地を製造した。
【0038】
この際、当該フロント筬(F)には当該難燃性を有する合成繊維糸条6の内の一部の糸条6−1を1260本挿通させると共に、当該第1中間筬(M’)には、当該難燃性を有する合成繊維糸条6の内の残りの部の糸条6−2を1260本挿通させ、一方、バック筬(B)には当該難燃性を有する合成繊維糸条7を630本挿通させる。
更に、当該第2中間筬(M)には、当該静電性を有する糸条3を630本挿通させた。
尚、本具体例に於いては、各糸条をそれぞれの筬に挿通させる方式は、何れも1in1out方式とした。
【0039】
係るスペックからなる当該具体例による当該難燃性を有する静電経編地1に於いては、当該難燃性を有する合成繊維糸条2の総正味糸量は17.68Kgであり、又、当該該静電性を有する糸条3の総正味糸量は0.13Kgであり、又、当該難燃性を有する合成繊維糸条2と当該該静電性を有する糸条3との交編率(%)は、それぞれ99.30と0.70であった。
【0040】
上記した具体例から理解される様に、本発明に於ける当該難燃性を有する静電経編地1に於いては、当該静電性糸条の配列密度が従来のものに比べて過度に多く成っており、例えば、従来に於ける当該静電性糸条の配列密度が、せいぜい10乃至15mm間隔に1本の当該静電性糸条が配列される程度に過ぎなかったのに対し、本発明に於いては、2.5mmに間隔で当該静電性糸条が配列されている事が特徴であり、僕細の当該静電性糸条が大量に使用されているものの、当該静電性糸条3の目付は、当該難燃性を有する合成繊維糸条2の目付に比べて極めて小さく、然も単糸使いで有る為、軽量で、製造コストが安く、静電効果に優れた経編地が得られるのである。
【0041】
然も、本発明に係る当該難燃性を有する静電経編地1は、当該静電性糸条3を単糸使いで極めて高密度に配列させて編成したと言う従来当業界では、これまでに全く存在していなかった新規な技術構成を具備した経編地である事は明らかである。
更に、上記した具体例から明らかな通り、本発明に於ける当該難燃性制電経編地1における当該難燃性を有する合成繊維糸条2と当該制電性を有する糸条3の整経方法は、基本的には、当該制電性を有する糸条3は、当該基礎組織部5を形成する当該難燃性を有する合成繊維糸条2の配列本数の少なくとも2分の1の配列本数に整経されている事が望ましい。
そして、本発明に於ける当該制電性を有する糸条3の配列密度は、2乃至3mm間隔に1本が配列される様に設定されている事が好ましい具体例である。
【0042】
更に、本具体例に於ける、より詳細な難燃性制電経編地1の製造方法の具体例としては、例えば、難燃性を有する合成繊維糸条2と制電性を有する糸条3とで構成されているメッシュ状の経編地1であって、当該難燃性を有する合成繊維糸条2の一部6により、メッシュ編み組織4からなる基礎組織部5が形成されていると共に、残りの当該難燃性を有する合成繊維糸条7により、当該メッシュ編み組織4により形成されたメッシュ空間部8をコース方向に横断して、当該空間8の少なくとも一部を閉塞する様に編成されている難燃性制電経編地を編成するに際し、当該基礎組織部5を形成する第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条6は、所定の本数を2組に分割し、当該第1の組の当該難燃性を有する合成繊維糸条6−1は、フロント筬(F)の各ガイド部に挿通させると共に、当該第2の組の当該難燃性を有する合成繊維糸条6−2は、第1中間筬(M’)の各ガイド部に挿通させ、一方、当該メッシュ編み組織4により形成されたメッシュ空間部8の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条7は、バック筬(B)の各ガイド部に挿通させ、更に、当該制電性を有する糸条3は、第2中間筬(M)の各ガイド部に挿通させ経編編成する難燃性制電経編地の製造方法である。
【0043】
更に、上記具体例に於いては、当該フロント筬(F)及び当該第1中間筬(M’)の各ガイド部に挿通させる当該第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条6(6−1,6−2)の本数は、当該バック筬(B)の各ガイド部に挿通させるに当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条7の本数よりも多く、好ましくは約2倍と成る様に設定する事が望ましい。
【0044】
一方、本発明に於ける当該難燃性を有する合成繊維糸条2は、当該基礎組織部5を形成する第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条6と当該メッシュ編組織4により形成されたメッシュ空間部8の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる第2の当該難燃性を有する合成繊維糸条7とに区分されて使用されるものであることが望ましい。
更に、本発明に於いては、当該制電性を有する糸条3は、当該基礎組織部5を形成する第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条6と当該メッシュ編組織4により形成されたメッシュ空間部8の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる第2の当該難燃性を有する合成繊維糸条7との間で狭持される様に当該基礎組織部内に配置されている事が好ましい具体例である。
【0045】
又、本発明に於いては、図1に示される当該経編地の表面の概略図及び図2に示される当該経編地の裏面の概略図とから理解される様に、当該制電性を有する糸条3は、当該基礎組織部5内に於いて、当該何れかの難燃性を有する合成繊維糸条6又は7と部分的に絡み合っており、且つ当該難燃性を有する合成繊維糸条6又は7に絡まって、当該難燃性を有する合成繊維糸条6又は7の表面に配置されている一部の当該制電性を有する糸条3の一部が、当該基礎組織部5の表面若しくは裏面の少なくとも一部に顕出している事に特徴がある。
【0046】
そして、本発明に於いては、更に、当該基礎組織部5を形成する為の当該第1の難燃性を有する合成繊維糸条6の使用本数は、当該基礎組織部5内で使用される当該制電性を有する合成繊維糸条7の使用本数の3倍乃至5倍に設定されている事が望ましく、又、当該基礎組織部5を形成する為の当該第1の難燃性を有する合成繊維糸条6の使用本数は、当該基礎組織部5内で使用される当該メッシュ編み組織により形成されたメッシュ空間部8の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる第2の当該難燃性を有する合成繊維糸条7の使用本数の3倍乃至5倍に設定されている事が望ましい具体例である。
【0047】
一方、本発明に於いては、当該第1及び第2の難燃性を有する合成繊維糸条6、7の使用本数が当該制電性を有する糸条3の使用本数の4倍乃至6倍設定されており、当該難燃性を有する合成繊維糸条2の総目付量と当該制電性を有する糸条3の総目付量(Kg)との比が、15;0.11乃至25:0.18に設定することが好ましい具体例である。
更に、本発明に於ける当該難燃性制電経編地1の当該第1及び第2の難燃性を有する合成繊維糸条6,7と当該難燃性を有する糸条3との交編率が、90:10乃至99.5:0.5に設定することも好ましい具体例である。
上記により得られた本発明に於ける当該難燃性制電経編地1は、例えば、作業用衣服、ユニフォーム、作業保安用ベスト等の製品の一部若しくは全部に使用されるものである。
【0048】
一方、本発明に係る当該難燃性静電経編地1の製造方法の一具体例としては、例えば、当該難燃性を有する合成繊維糸条2の一部6により、メッシュ編み組織からなる基礎組織部5が形成されていると共に、残りの当該難燃性を有する合成繊維糸条7により、当該メッシュ編み組織5により形成されたメッシュ空間部8をコース方向に横断して、当該空間8の少なくとも一部を閉塞する様に編成するに際し、当該基礎組織部5を形成する当該一部の第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条6は、所定の本数づつ2組に分割し、当該第1の組の当該難燃性を有する合成繊維糸条6−1は、フロント筬(F)の各ガイド部に挿通させると共に、当該第2の組の当該難燃性を有する合成繊維糸条6−2は、第1中間筬(M’)の各ガイド部に挿通させ、一方、当該メッシュ編み組織5により形成されたメッシュ空間部8の少なくとも一部を閉塞する様に編み込まれる当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条7は、バック筬(B)の各ガイド部に挿通させ、更に、当該制電性を有する糸条3は、第2中間筬(M)の各ガイド部に挿通させ経編編成する事が望ましい。
【0049】
更に本発明に於いては、当該フロント筬(F)及び当該第1中間筬(M’)の各ガイド部に挿通させる当該第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条6−1の本数は、当該バック筬(B)の各ガイド部に挿通させるに当該第2の難燃性を有する合成繊維糸条6−2の本数よりも多く、好ましくは約2倍と成る様に設定する事が好ましい具体例の一つである。
【0050】
一方、本発明に於いては、当該フロント筬(F)及び当該第1中間筬(M’)の各ガイド部に挿通させる当該第1の当該難燃性を有する合成繊維糸条2の本数は、当該第2中間筬(M)の各ガイド部に挿通される当該制電性を有する糸条3の本数よりも多く、好ましくは約2倍と成る様に設定する事が望ましい。
又、当該各筬に於ける各ガイド部に対する当該難燃性を有する合成繊維糸条2若しくは当該制電性を有する糸条3の挿通方法は、1in1out方式を採用する事が好ましい具体例である。
そして、本発明に於ける特徴の一つとしては、当該極細の制電性を有する糸条は、ループを形成させないで、所定の1本の編針を中心としてその左右に振らせる様に編成する事が望ましく、場合によっては、2本の連続配置されている編針間を、ループを形成させないで渡らせる事も可能である。
【0051】
上記の技術思想を実現する為に、本発明に於ける各筬の動作設定の例を以下に例示する。
即ち、該フロント筬は、1:0/1:2/2:3/2:1/の基本的動作を実行させ、当該第1中間筬は、2:3/2:1/1:0/1:2/の基本的動作を実行させ、当該第2中間筬は、1:1/0:0/基本的動作を実行させ、且つ当該バック筬は、1:0/3:4/6:7/4:3/の基本的動作を実行させる様に制御するものである。
【0052】
本発明に係る当該難燃性制電経編地1は、基本的には、上記した様な技術構成を有するものであるから、従来のトリコット編地では使用する事が不可能な本数の極細の制電性糸条3が、然も高密度で使用されており、当該制電性糸条が当該経編地1内の表面、裏面及びその中間層に略均斉に、分散して存在しており、且つ当該表面と裏面の最外表面にも見え隠れしながら、略均一に分散されて配置されているので、通電効果は抜群であり、当該制電性糸条の使用比率が当該難燃制合成繊維糸条よりも極端に小さいにも関わらず、従来のトリコット組織からなる経編地の制電特性と比べて、静電性能は著しく高いのである。
【0053】
一方、本発明に係る当該難燃性制電経編地1は、当該メッシュ編組織4に起因する空間部8を当該難燃性合成繊維糸条によって、少なくともその一部が塞がれる様な構成を採用しているので、火の粉等が当該空間部8から内側に侵入する事が完全に防止されると言う効果を有する他、当該経編地の寸法安定性と形状記憶特性を確率し、且つそれを維持する事が出来ると言う効果も発揮するものである。
【0054】
尚、上記した様な構成からなる本発明に係る当該難燃性制電経編地1は、当該編地状態で有っても、又、当該経編地1を用体基礎として製造された作業服の状態であっても、例えば、日本工業規格(JIS)に於ける静電気帯電防止作業服(T8118)で規定されている測定方法で測定した帯電電荷量、及び、防炎製品認定委員会が設定した「防炎製品性能試験基準」(平成25年7月10日最終改正版)の第8章、「防火服及び防火服表地」に規定されている測定方法で測定した防炎特性の何れもが、それぞれの基準値を大幅な余裕をもってクリヤしている事が判明した。
【符号の説明】
【0055】
1…難燃性制電経編地
2…難燃性を有する合成繊維糸条
3…制電性を有する糸条
4…メッシュ編組織
5…基礎組織部
6…難燃性を有する合成繊維糸条2の一部
6−1…難燃性を有する合成繊維糸条6の内の第1の組の糸条
6−2…難燃性を有する合成繊維糸条6の内の第2の組の糸条
7…残りの当該難燃性を有する合成繊維糸条
8…メッシュ空間部
図1
図2
図3