特許第5893075号(P5893075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧 ▶ ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5893075-椎間板エンドプロテーゼ 図000006
  • 特許5893075-椎間板エンドプロテーゼ 図000007
  • 特許5893075-椎間板エンドプロテーゼ 図000008
  • 特許5893075-椎間板エンドプロテーゼ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893075
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】椎間板エンドプロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20160310BHJP
   C04B 35/10 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   A61F2/44
   C04B35/10 Z
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-95902(P2014-95902)
(22)【出願日】2014年5月7日
(62)【分割の表示】特願2011-515447(P2011-515447)の分割
【原出願日】2009年7月1日
(65)【公開番号】特開2014-208080(P2014-208080A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年6月5日
(31)【優先権主張番号】102008040115.3
(32)【優先日】2008年7月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】505377463
【氏名又は名称】ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーネ ニース
(72)【発明者】
【氏名】ローマン プロイス
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス グレセル
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0135923(US,A1)
【文献】 特表2001−521874(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/119088(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
C04B 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎体骨にそのつど固定するための上側終板(1)および下側終板(2)と、前記終板(1、2)の間に配置された、互いにスライド式に形成されているスライド体(3、4)から成るスライド支承部とを有する、脊柱に移植するための椎間板エンドプロテーゼであって、その際、両終板(1、2)がプラスチックから成り、かつ前記スライド体(3、4)がセラミックスから成り、前記スライド体(3、4)が前記終板(1、2)のプラスチックでインサート成形されており、かつ前記終板(1、2)のプラスチックでインサート成形された前記スライド体(3、4)の表面領域が平らな面と比べて表面拡張部を有する椎間板エンドプロテーゼにおいて、前記表面拡張部が、前記スライド体(3、4)の外周上にそれぞれ1つずつ形成された隆起部(6)であり、前記スライド体(3、4)の外周面の一部領域のみが、前記上側終板(1)および前記下側終板(2)に取り囲まれている、脊柱に移植するための椎間板エンドプロテーゼであって、
a)酸化アルミニウム/酸化クロム混晶から形成されたマトリックス材料60〜98体積%、
b)前記マトリックス材料に組み入れられた二酸化ジルコニウム2〜40体積%、前記二酸化ジルコニウムは、
c)安定化酸化物として、セリウム、プラセオジムおよびテルビウムの1つ以上の酸化物10〜15モル%を、二酸化ジルコニウムと安定化酸化物とからなる混合物に対して含有し、その際
d)前記安定化酸化物の添加量の選択は、前記二酸化ジルコニウムが主として正方晶変態において存在するように、かつ
e)前記安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとのモル比が1,000:1〜20:1となり、
f)全成分の割合が補い合って焼結成形体100体積%となり、
g)前記二酸化ジルコニウムが2μmを超えない粒度を有するように行われている;ことからなる、椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項2】
a)酸化アルミニウムに対して0.01〜2.32質量%の酸化クロム割合を有する酸化アルミニウム/酸化クロム混晶から形成されたマトリックス材料少なくとも70体積%、
b)前記マトリックス材料に組み入れられた二酸化ジルコニウム2〜30体積%、前記二酸化ジルコニウムは、
c)二酸化ジルコニウムと酸化イットリウムとからなる混合物に対して酸化イットリウム0.27〜2.85モル%を含有し、その際、前記酸化イットリウムの添加量の選択は、前記二酸化ジルコニウムが主として正方晶変態において存在するように、かつ
d)前記二酸化ジルコニウムが2μmを超えない平均粒度において存在し、かつ
e)前記安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとのモル比が1,000:1〜20:1となり、かつ
f)全成分の割合が補い合ってカッティングテンプレート100体積%となるように行われている;ことからなる、請求項1記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項3】
安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとのモル比が370:1〜34:1である、請求項2記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項4】
椎体骨にそのつど固定するための上側終板(1)および下側終板(2)と、前記終板(1、2)の間に配置された、互いにスライド式に形成されているスライド体(3、4)から成るスライド支承部とを有する、脊柱に移植するための椎間板エンドプロテーゼであって、その際、両終板(1、2)がプラスチックから成り、かつ前記スライド体(3、4)がセラミックスから成り、前記スライド体(3、4)が前記終板(1、2)のプラスチックでインサート成形されており、かつ前記終板(1、2)のプラスチックでインサート成形された前記スライド体(3、4)の表面領域が平らな面と比べて表面拡張部を有する椎間板エンドプロテーゼにおいて、前記表面拡張部が、前記スライド体(3、4)の外周上にそれぞれ1つずつ形成された隆起部(6)であり、前記スライド体(3、4)の外周面の一部領域のみが、前記上側終板(1)および前記下側終板(2)に取り囲まれている、脊柱に移植するための椎間板エンドプロテーゼであって、
a1)マトリックス材料60〜98体積%、その際、これは、
a2)67.1〜99.2体積%が酸化アルミニウム/酸化クロム混晶から
a3)0.8〜32.9体積%が式SrAl12-xCrx19の混晶から成り、その際、xは0.0007〜0.045の値に相当し、
b)前記マトリックス材料に組み入れられた二酸化ジルコニウム2〜40体積%、前記二酸化ジルコニウムは、
c)安定化酸化物として、セリウム、プラセオジムおよびテルビウムの1つ以上の酸化物10〜15モル%を、かつ/または酸化イットリウム0.2〜3.5モル%を、二酸化ジルコニウムと安定化酸化物とからなる混合物に対して含有し、その際
d)前記安定化酸化物の添加量の選択は、前記二酸化ジルコニウムが主として正方晶変態において存在するように、かつ
e)前記安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとのモル比が1,000:1〜20:1となり、
f)全成分の割合が補い合ってカッティングテンプレート100体積%となり、かつ
g)前記二酸化ジルコニウムが2μmを超えない粒度を有するように行われている;ことからなる、椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項5】
椎体骨にそのつど固定するための上側終板(1)および下側終板(2)と、前記終板(1、2)の間に配置された、互いにスライド式に形成されているスライド体(3、4)から成るスライド支承部とを有する、脊柱に移植するための椎間板エンドプロテーゼであって、その際、両終板(1、2)がプラスチックから成り、かつ前記スライド体(3、4)がセラミックスから成り、前記スライド体(3、4)が前記終板(1、2)のプラスチックでインサート成形されており、かつ前記終板(1、2)のプラスチックでインサート成形された前記スライド体(3、4)の表面領域が平らな面と比べて表面拡張部を有する椎間板エンドプロテーゼにおいて、前記表面拡張部が、前記スライド体(3、4)の外周上にそれぞれ1つずつ形成された隆起部(6)であり、前記スライド体(3、4)の外周面の一部領域のみが、前記上側終板(1)および前記下側終板(2)に取り囲まれている、脊柱に移植するための椎間板エンドプロテーゼであって、
a)酸化アルミニウム/酸化クロム混晶から、ならびに元素の周期系の第4副族および第5副族の金属の1つ以上の炭化物、窒化物および炭窒化物−マトリックス材料に対して−2〜25体積%から形成されたマトリックス材料60〜85体積%、
b)前記マトリックス材料に組み入れられた二酸化ジルコニウム15〜40体積%、前記二酸化ジルコニウムは、
c)安定化酸化物として、セリウム、プラセオジムおよびテルビウムの1つ以上の酸化物を10〜15モル%、かつ/または酸化イットリウム0.2〜3.5モル%を、二酸化ジルコニウムと安定化酸化物とからなる混合物に対して含有し、その際
d)前記安定化酸化物の添加量の選択は、前記二酸化ジルコニウムが主として正方晶変態において存在するように、かつ
e)前記安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとのモル比が100:1〜20:1となり、
f)全成分の割合が補い合って焼結成形体100体積%となり、
g)前記二酸化ジルコニウムが2μmを超えない粒度を有するように行われている;ことからなる、椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項6】
前記マトリックス材料が、そのうえさらに元素の周期系の第4副族および第5副族の金属の1つ以上の炭化物、窒化物および炭窒化物2〜25体積%−マトリックス材料に対して−を含有する、請求項4記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項7】
2〜5体積%;二酸化ジルコニウム1,000:1〜100:1
>5〜15体積%;二酸化ジルコニウム200:1〜40:1
>15〜30体積%;二酸化ジルコニウム100:1〜20:1
>30〜40体積%;二酸化ジルコニウム40:1〜20:1
の範囲にある、安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウム対酸化クロムのモル比を有する、請求項1、2、4または6記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項8】
30体積%を上回らない二酸化ジルコニウム量を有する、請求項1、4、5または6のいずれか1項および請求項7に記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項9】
前記二酸化ジルコニウムが少なくとも95体積%で正方晶変態を有する、請求項1、2、4、5または6のいずれか1項および請求項7または8のいずれか1項記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項10】
前記二酸化ジルコニウムが合わせて0〜5体積%で立方晶変態および/または単斜晶変態において存在する、請求項2、4、5または6のいずれか1項および請求項7から9までのいずれか1項記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項11】
0.8〜1.5μmの酸化アルミニウム/酸化クロム混晶の平均粒度を有する、請求項1、2、4、5または6のいずれか1項および請求項7から10までのいずれか1項記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項12】
0.2〜1.5μmの二酸化ジルコニウムの粒度を有する、請求項1、2、4、5または6のいずれか1項および請求項7から11までのいずれか1項記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項13】
焼結成形体に対して0.5体積%を上回らない不可避の不純物を有する、請求項1、2、4、5または6のいずれか1項および請求項7から12までのいずれか1項記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項14】
ビッカース硬度[Hv 0.5]>1,800を有する、請求項1、2、4、5または6のいずれか1項および請求項7から13までのいずれか1項記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【請求項15】
頸部脊柱または腰部脊柱で使用するための、請求項1から14までのいずれか1項記載の椎間板エンドプロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に従った椎間板エンドプロテーゼ(Bandscheibenendoprothese)に関する。
【背景技術】
【0002】
目下のところ存在する椎間板エンドプロテーゼ(Total Disc Replacements)は2枚の金属終板から成り、該金属終板は、それらの巨視的および微視的な表面形態と、場合により付加的な生体活性コーティング(例えばヒドロキシルアパタイト)とによって、隣接する椎体骨の成長を可能にする。これらの終板には、いわゆる"fixed ball and socket"の原理にて、そのつど金属、プラスチックまたはセラミックスからなるフード形およびキャップ形のスライド表面が組み込まれており、それらが互いにスライドすることによって、手術される分節の可動性を保持もしくは再現する。全ての金属終板は、磁気共鳴映像法(MRI)にて、形成される画像の品質を悪化させる、多かれ少なかれ目立った不所望なアーチファクトを発生させる欠点を有している。
【0003】
US2007/0135923A1は、椎体骨にそのつど固定するための上側終板および下側終板と、該終板の間に配置された、互いにスライド式に形成されているスライド体から成るスライド支承部とを有する、脊柱に移植するための椎間板エンドプロテーゼを示し、その際、両終板はプラスチックから成り、かつ該スライド体はセラミックスから成り、該スライド体は該終板のプラスチックでインサート成形されており、かつ該終板のプラスチックでインサート成形された該スライド体の表面領域は平らな面と比べて表面拡張部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0135923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎を成している課題は、請求項1の上位概念に従った椎間板エンドプロテーゼを、該スライド体が持続的に固定されて、かつ捻れ耐性で終板と連結するように改善することである。そのうえスライド体は全体の使用期間中に摩耗が生じないように極端な硬度を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、この課題は、表面拡張部がスライド体上の隆起部または凹部であることによって解決される。これらは椎間板エンドプロテーゼの縦軸に対して回転対称または非回転対称に形成されていてよい。これらの表面拡張部は、射出成形に際してプラスチックで充填されるか、もしくは取り囲まれる。これによってスライド体は終板と持続的に固定されて、かつ捻れ耐性で連結されている。
【0007】
本発明による一実施形態において、表面拡張部はラフニングである。ラフニングの深さは、十分な捻れ耐性が得られるように選択されなければならない。
【0008】
本発明による他の一実施形態において、表面拡張部はスライド体における遊隙(Freiraeume)である。これらの遊隙に終板のプラスチックが入り込み、かつ、それによって固定された、かつ捻れ耐性の連結が生み出される。
【0009】
本発明による一実施形態において、遊隙はスライド体の外周上の少なくとも1つの環状溝である。円周方向の溝は簡単に作り出すことができ、そして固定された、かつ捻れ耐性の連結をもたらす。これらの溝は、焼結前または焼結後のいずれかにスライド体に取り付けられる。有利には、それらは焼結前に未加工体に取り付けられる。
【0010】
本発明による他の一実施形態において、隆起部は突起である。これらの突起も、固定された、かつ捻れ耐性の連結を生み出す。
【0011】
有利には、本発明による椎間板エンドプロテーゼは、頸部脊柱または腰部脊柱で使用される。
【0012】
有利には骨側で被覆された、例えばPEEKまたはPEKKからなるプラスチック終板が使用されることによって、MRIアーチファクトが回避され、かつ同時に骨成長が可能になる。射出成形により製造されるこれらのプラスチック終板は、セラミックスからなるスライド体を取り込む。これらが脱落することを防ぐために、および回転止めを保証するために、射出成形に際してプラスチックで充填されるか、もしくは取り囲まれるスライドパートナーの注入される部分に、粗面(ミクロ形状結合)、遊隙または別様の幾何学的要素が、例えば円周方向の溝、穿孔または隆起部、例えばスパイクの形で必要である。
【0013】
さらに本課題の解決には、極めて特別な組成を有するスライド体(以下では、焼結成形体または焼結体とも呼ぶ)を要することが見出された。安定化酸化物を含有する酸化ジルコニウムをセラミックスマトリックス中に組み入れることによって得られる転位強化以外に、本発明は第一の実施形態に従いマトリックスとして酸化アルミニウム/酸化クロムからなる混晶を提供する。さらに本発明は、マトリックス中に組み入れられた二酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと一緒に混晶を形成する酸化クロムとが、互いにある一定のモル比にあることを規定する。この措置により初めて、特に良好な破断靭性を得るのに必要とされ得る二酸化ジルコニウム割合が比較的高い場合でも、相応する二酸化ジルコニウム割合ではこれまで達成可能ではなかった硬さ値を得ることが可能になる。他方では、二酸化ジルコニウム割合が低い場合、材料の脆化を抑制する、同様に比較的少量の酸化クロム含量も存在してよい。その第一の実施形態によれば、それゆえ本発明は現行の問題を解決するために請求項6に記載の焼結材料を提供する。
【0014】
安定化酸化物を含有する酸化ジルコニウムおよび酸化クロムとが、ある一定のモル比で存在すべきであるという規定は、必然的に残りの成分における特定の比ももたらす。なぜなら、例えば二酸化ジルコニウムの割合が下がるにつれて、焼結成形体に対する安定化酸化物の割合も減少する一方で、他方では酸化アルミニウムの割合が上昇するからである。焼結成形体の酸化アルミニウムに対して、酸化クロムは0.004〜6.57質量%の質量で存在し、その際、しかしながら、酸化クロムと、安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムとが所定のモル比にあることに注意を怠ってはならない。安定化酸化物については、酸化セリウムが極めて有利であることが判明した。
【0015】
さらなる好ましい実施形態に応じて、焼結成形体中のマトリックス材料の割合は少なくとも70体積%であり−かつ酸化アルミニウムに対して0.01〜2.32質量%の酸化クロム割合を有する酸化アルミニウム/酸化セリウム混晶から形成されており、その際、2〜30体積%の二酸化ジルコニウムがマトリックス中に組み入れられており、かつ該二酸化ジルコニウムは、二酸化ジルコニウムと酸化イットリウムとからなる混合物に対して0.27〜2.85モル%の酸化イットリウムを含有し、かつ該二酸化ジルコニウムは、2μmを超えない平均粒度において、主として正方晶変態で存在する。二酸化ジルコニウムと酸化イットリウムとからなる混合物に対する、酸化イットリウム0.27〜2.85モル%の量は、二酸化ジルコニウムに対する酸化イットリウム0.5〜5.4質量%に相当する。そのような焼結成形体の場合、酸化イットリウムを含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとは370:1〜34:1のモル比で存在する。
【0016】
本発明のさらなる特に有利な実施形態によれば、マトリックス材料はアルミニウム酸化物/クロム酸化物の混晶からと、式SrAl12-xCrx19のさらなる混晶から成り、その際、xは0.0007〜0.045の値を有する。その他の点では第一の実施形態に相当するこの実施形態の場合も、靭性を高める作用は、混晶マトリックス中に組み入れられた二酸化ジルコニウムに由来し、その一方でクロム添加は、二酸化ジルコニウム割合によって引き起こされる硬さ値の降下を抑制し得る。そして酸化ストロンチウムの添加によって形成される式SrAl12-xCrx19の混晶は、比較的高い温度でもさらに改善された靭性を成形体に付与する付加的な効果を有する。高められた温度作用下でのこれらの焼結成形体の耐摩耗性も、それゆえ同様に改善されている。この実施形態の場合も、酸化セリウムが特に適していることがわかった。
【0017】
請求の範囲および明細書で用いられる混晶との用語は、単結晶の意味に解されるべきではなく、それはむしろ酸化アルミニウムもしくはストロンチウムアルミナ中の酸化クロムの固溶体を意味している。本発明による焼結成形体もしくはスライド体は多結晶質である。
【0018】
さらなる実施形態によれば、焼結成形体の耐摩耗性は、元素の周期系の第4副族および第5副族の金属の1つ以上の炭化物、窒化物または炭窒化物2〜25体積%−マトリックス材料に対して−を、これにさらに組み入れることによって改善されることができる。好ましくは、これらの硬質物質の割合は6〜15体積%である。殊に、窒化チタン、炭化チタンおよび炭窒化チタンが適している。
【0019】
本発明の特に有利なさらなる実施形態によれば、酸化クロムに対する安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムのモル比は、本発明による焼結成形体中に存在する二酸化ジルコニウム割合に依存して、低い二酸化ジルコニウム割合で、同様に少量の酸化クロムが存在するように調整される。その際、二酸化ジルコニウム:酸化クロムのモル比を
2〜5体積%;二酸化ジルコニウム1,000:1〜100:1
>5〜15体積%;二酸化ジルコニウム200:1〜40:1
>15〜30体積%;二酸化ジルコニウム100:1〜20:1
>30〜40体積%;二酸化ジルコニウム40:1〜20:1
の範囲となるように調整することが極めて好ましいと判明した。
【0020】
主として正方晶変態における二酸化ジルコニウムの調整を行うために、本発明により2μmを超えない二酸化ジルコニウムの粒度の調整が必要とされる。5体積%までの量が許容される立方晶変態における二酸化ジルコニウムの割合に加えて、さらに少量の単斜晶変態も許容されており(しかし、これらも同様に最大5体積%の量を超えず、かつ好ましくは2体積%未満、極めて有利にはそれどころか1体積%未満であることが望ましい)、好ましくは90体積%より多くが正方晶変態において存在する。
【0021】
焼結成形体は、特許請求の範囲に記載される成分に加えて、本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、0.5体積%を上回らない不可避的に連行された不純物のみを単に含有するので、焼結成形体は、単に酸化アルミニウム−酸化クロム−混晶から成るか、またはこの混晶と式SrAl12-xCrx19の混晶から−ならびに安定化酸化物を含有し、かつ上述の混晶からなるマトリックス中に組み入れられた二酸化ジルコニウムから成る。さらなる相、例えば酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムが一緒に使用される場合に形成される粒界相または、例えば従来技術から公知の、YNbOまたはYTaOのような物質の添加に際して生じ、かつ十分には高くない軟化点を有する、さらなる結晶相が、本発明に従って焼結成形体中には存在しない。従来技術から公知の、同様にさらなる相の形成をもたらすMn、Cu、Feの酸化物はまた、軟化点の低下をもたらし、かつエッジ強度を小さくする。これらの材料の使用は、それゆえ本発明では排除されている。
【0022】
好ましくは、二酸化ジルコニウムは30体積%を上回らない量で存在する。好ましくは、二酸化ジルコニウムはまた15体積%未満の量では存在しない。15〜30体積%の間で二酸化ジルコニウムが存在する場合、安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとのモル比は、極めて有利には40:1〜25:1である。
【0023】
さらなる極めて有利な実施形態によれば、正方晶変態において存在する二酸化ジルコニウムの割合は95体積%を上回っており、その際、単に5体積%までが全体で立方晶変態および/または単斜晶変態において存在する。極めて有利なのは、組み入れられた二酸化ジルコニウムの0.2〜1.5μmの範囲における粒度を遵守することである。それに対して、酸化アルミニウム−/酸化クロム−混晶の0.8〜1.5μmの範囲における平均粒度が特に適していることが判明した。付加的にさらに元素の周期系の第4副族および第5副族の金属の炭化物、窒化物および炭窒化物が使用される場合、これらは0.8〜3μmの粒度において使用される。式SrAl12-xCrx19の混晶の粒子は、5:1〜15:1の範囲の長さ/厚さ比を有する。その最大長さは、その際、12μmであり、その最大厚さは1.5μmである。
【0024】
本発明による焼結成形体のビッカース硬さは、1,750[HV0.5]より大きく、しかし、好ましくは1,800[HV0.5]を上回る。
【0025】
本発明による焼結成形体の微細構造は微細な亀裂を含んでおらず、かつ1.0%を上回らない空隙率を有する。そのうえ焼結成形体は、さらにウィスカー(しかしながら、炭化ケイ素からのものではない)を含有してよい。
【0026】
焼結成形体は、例えば酸化マグネシウムのような、多方面で粒成長抑制剤として使用される物質のいずれも含有しない。
【0027】
焼結に際して、安定化酸化物はZrO2格子中で溶解し、かつ該格子の正方晶変態を安定化させる。焼結成形体の製造のために、そしてさらなる不所望の相を含まない組織構造を得るために、好ましくは高純度の原料、すなわち、99%を上回る純度を有する酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムが使用される。好ましくは、そのうえ不純物の度合いはずっと低い。殊に、完成した焼結成形体に対して0.5体積%を上回るSiO2割合は所望されていない。この規定から除外されているのは、二酸化ジルコニウム内で2質量%までの少量で酸化ハフニウムが不可避的に存在することである。
【0028】
本発明による焼結成形体の製造は、酸化アルミニウム/二酸化ジルコニウム/酸化クロムと安定化酸化物とからなる混合物の無圧焼結またはホットプレスによって行われるか、もしくはこれらの成分に、付加的にさらに酸化ストロンチウムおよび/または元素の周期系の第4副族および第5副族の1つ以上の窒化物、炭化物および炭窒化物が加えられている混合物が使用される。酸化イットリウムおよび酸化クロムの添加は、酸化イットリウムクロム(YCrO3)の形態でも行ってよく、その一方で酸化ストロンチウム添加は、好ましくはストロンチウム塩の形態でも、殊に炭酸ストロンチウム(SrCO3)として行ってよい。無圧焼結との用語は、この場合、大気条件下での焼結のみならず、保護ガス下または真空中での焼結も包含する。好ましくは、成形体はまず90〜95%の理論密度に無圧で予備焼結され、かつ引き続き熱間等方圧プレスまたはガス圧焼結によって後高密度化される。理論密度は、それによって99.5%を上回る値にまで上昇されることができる。
【0029】
種々のセラミックス混合物を混合粉砕によって製造した。粉砕混合物に一時的結合剤を添加し、かつ該混合物を引き続き噴霧乾燥した。引き続き、噴霧乾燥した混合物から未加工体をプレスして作り出し、かつこれらを無圧焼結または予備焼結し、そしてアルゴン下でガス圧焼結プロセスに供した。
【0030】
本発明による焼結体、もしくはスライド体により、これの摩耗はほぼ皆無である。それに加えて患者のアレルギーリスクもしくはアレルギー性反応ならびに感染の危険が減少される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によるセラミックスライド体もしくはそれらを作り上げているセラミックスが有している利点:
1.椎間板エンドプロテーゼのスライド体は、極端に低い摩耗を有する。
【0032】
2.スライド体は生体適合性である。
【0033】
3.スライド体にレーザーで文字が入れられる場合、この文字は非常に良好に可視および可読であり、ひいては該スライド体の使用に際して作業の支障を減らすことができる。
【0034】
4.スライド体は、極端に良好な摩擦特性を有する。
【0035】
以下では、椎間板エンドプロテーゼのスライド体のために適している、さらなるセラミックスが記載される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】表面拡張部がスライド体3、4の外周上の環状溝5であることを示す図
図2】部分図において、スライド体3、4の外周上の本発明による隆起部6を示す図
図3】部分図において、スライド体3、4の外周上の本発明によるラフニング7を示す図
図4】部分図において、スライド体3、4の外周上の本発明による突起部8を示す図
【発明を実施するための形態】
【0037】
第一のさらなるセラミックスの実施形態:
意想外にも、従来技術、例えばEP−A0542815に記載されるように、酸化ストロンチウムを用いてのみならず、他の特定の酸化物を用いて、小板を組織中に作製できることを確認した。小板形成のための前提条件は、"in situ"で形成されるべき小板の六方晶結晶構造を形成することである。マトリックスとして材料系Al23−Cr23−ZrO2−Y23(CeO2)を使用する場合、種々の酸化物を用いて下記の小板を"in situ"で形成することができる。アルカリ金属酸化物を合金化した場合、相応するアルカリ金属Al11-xCrx17小板が形成され、アルカリ土類金属酸化物を合金化した場合、相応するアルカリ土類金属Al12-xCrx17小板が形成され、CdO、PbO、HgOを合金化した場合、相応する(Cd、PbまたはHgAl12-xCrx19)小板が形成され、かつ希土類金属酸化物を合金化した場合、相応する希土類金属Al11-xCrx18小板が形成される。La23は、それに加えて化合物La0.9Al11.76-xCrx19を形成することができる。小板は、マトリックスがCr23を含有しない場合も形成される。その時に形成される小板は、一般式:アルカリ金属Al1117、アルカリ土類金属Al1219、(Cd、PbまたはHgAl1219)または希土類金属Al1218に相当する。
【0038】
本発明による解決手段は、構成成分として極めて特別な組成を有する焼結成形体もしくは椎間板エンドプロテーゼ(いずれの用語も、ここでは同じことを意味する)を提供することである。安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムをセラミックスマトリックス中に組み入れることによって得られる転位強化以外に、本発明はマトリックスが酸化アルミニウム/酸化クロムからなる混晶を含有することを規定する。さらに本発明は、マトリックス中に組み入れられた二酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと一緒に混晶を形成する酸化クロムとが、互いにある一定のモル比にあることを規定する。この措置により、特に良好な破断靭性を得るために必要とされ得る二酸化ジルコニウム割合が比較的高い場合でも、顕著な硬さ値を得ることが可能になる。他方では、二酸化ジルコニウム割合が低い場合、材料の脆化を抑制する、同様に比較的少量の酸化クロム含量も存在してよい。
【0039】
酸化ジルコニウムのための安定化剤として、セリウム、プラセオジムおよびテルビウムおよび/または酸化イットリウムの1つ以上の酸化物を使用することができる。好ましくは、二酸化ジルコニウムと安定化酸化物とからなる混合物に対して、セリウム、プラセオジムおよびテルビウムの酸化物10〜15モル%および/または酸化イットリウム0.2〜3.5モル%が使用される。
【0040】
その際、安定化酸化物の添加量は、二酸化ジルコニウムが主として正方晶変態において存在し、かつ二酸化ジルコニウムに関して立方晶変態の割合が0〜5体積%であるように選択される。
【0041】
安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとが、ある一定のモル比で存在すべきであるという規定は、残りの成分における特定の比をもたらす。なぜなら、例えば二酸化ジルコニウムの割合が下がるにつれて、焼結成形体に対する安定化酸化物の割合も減少する一方で、他方では酸化アルミニウムの割合が上昇するからである。焼結成形体の酸化アルミニウムに対して、酸化クロムは0.004〜6.57質量%の質量で存在し、その際、酸化クロムと、安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムとは所定のモル比にある。
【0042】
本発明により、マトリックス材料は、酸化アルミニウム/酸化クロム混晶および一般式Me1Al11-xCrx17、Me2Al12-xCrx19、Me2'Al12-xCrx19またはMe3Al11-xCrx18の1つに従ったさらなる混晶を含有し、その際、Me1はアルカリ金属、Me2はアルカリ土類金属、Me2'はカドミウム、鉛または水銀を表し、かつMe3は希土類金属を表す。混晶としてLa0.9Al11.76-xCrx19も同様にマトリックス材料に添加されることができる。その際、xは0.0007〜0.045の値をとり得る。
【0043】
本発明により、一実施形態として、
a1)マトリックス材料60〜98体積%が、
a2)酸化アルミニウム/酸化クロム混晶67.1〜99.2体積%および
a3)一般式La0.9Al11.76-xCrx19、Me1Al11-xCrx17、Me2Al12-xCrx19、Me2'Al12-xCrx19および/またはMe3Al11-xCrx18の1つに従った少なくとも1つの混晶から選択されている、さらなる混晶0.8〜32.9体積%を含有し、その際、Me1はアルカリ金属、M2はアルカリ土類金属、Me2'はカドミウム、鉛または水銀を表し、かつMe3は希土類金属を表し、かつxは0.0007〜0.045の値に相当する、かつ
b)マトリックス材料2〜40体積%が、安定化された二酸化ジルコニウムを含有することを特徴とする、マトリックス材料を有する焼結成形体が提供される。
【0044】
クロム添加は、二酸化ジルコニウム割合が上昇する場合に、硬さ値の降下を抑制する一方で、靭性を高める作用は、混晶マトリックス中に組み入れられた二酸化ジルコニウムに由来する。上記金属酸化物の添加によって付加的に形成された上記式の混晶は、それがより高い温度でもさらに改善された靭性を焼結成形体に付与することにつながる。高められた温度作用下でのこれらの焼結成形体の耐摩耗性も、それゆえ同様に改善されている。
【0045】
さらなる実施形態によれば、焼結成形体の耐摩耗性は、元素の周期系の第4副族および第5副族の金属の1つ以上の炭化物、窒化物または炭窒化物2〜25体積%−マトリックス材料に対して−を、これにさらに組み入れることによって改善されることができる。好ましくは、これらの硬質物質の割合は6〜15体積%である。殊に、窒化チタン、炭化チタンおよび炭窒化チタンが適している。
【0046】
本発明の特に有利なさらなる実施形態によれば、酸化クロムに対する安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムのモル比は、焼結成形体中に存在する二酸化ジルコニウム割合に依存して、低い二酸化ジルコニウム割合で、同様に少量の酸化クロムが存在するように調整される。その際、
【表1】
の範囲にある、二酸化ジルコニウム:酸化クロムのモル比の調整が極めて好ましいと判明した。
【0047】
二酸化ジルコニウムを主として正方晶変態において得るために、本発明により2μmを超えない二酸化ジルコニウムの粒度の調整が推奨される。可能性として考えられる立方晶変態における二酸化ジルコニウムの5体積%までの量の割合に加えて、またさらに少量の単斜晶変態も存在していてよく、しかし、これらは同様に最大10体積%の量を超えず、かつ好ましくは5体積%未満、極めて有利にはそれどころか2体積%未満であることが望ましい。
【0048】
有利な一実施形態において、本発明による焼結成形体は、所定の成分に加えて、単に不可避的に連行された不純物しかさらに含有しておらず、該不純物は、本発明のさらなる好ましい実施形態に従って0.5体積%を上回らない。特に有利な一実施形態において、焼結成形体は、単に酸化アルミニウム−酸化クロム−混晶および式Me1Al11-xCrx17、Me2Al12-xCrx19、Me2'Al12-xCrx19またはMe3Al11-xCrx18の混晶の1つから、ならびに安定化酸化物を含有し、かつ上述の混晶からなるマトリックス中に組み入れられた二酸化ジルコニウムから成る。さらなる相、例えば酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムが一緒に使用される場合に形成される粒界相または、例えば従来技術から公知の、YNbO4またはYTaO4のような物質の添加に際して生じ、かつ十分には高くない軟化点を有するような、さらなる結晶相が、本発明による焼結成形体のこの特に有利な実施形態においては存在しない。従来技術から公知の、同様にさらなる相の形成をもたらすMn、Cu、Feの酸化物はまた、軟化点の低下を引き起こし、かつエッジ強度を小さくする。これらの材料の使用は、それゆえこの特に有利な実施形態の場合には排除されている。
【0049】
好ましくは、二酸化ジルコニウムは30体積%を上回らない量で存在し、しかし、15体積%未満の量では存在しない。15〜30体積%の間で二酸化ジルコニウムが存在する場合、安定化酸化物を含有する二酸化ジルコニウムと酸化クロムとのモル比は、極めて有利には40:1〜25:1である。
【0050】
さらなる有利な一実施形態によれば、正方晶変態において存在する二酸化ジルコニウムの割合は50体積%を上回る。極めて有利なのは、組み入れられた二酸化ジルコニウムの粒度を0.2〜1.5μmの範囲で遵守することである。それに対して、酸化アルミニウム/酸化クロム混晶の0.6〜1.5μmの範囲における平均粒度が特に適していることが判明した。付加的にさらに元素の周期系の第4副族および第5副族の炭化物、窒化物または炭窒化物が使用される場合、これらは0.5〜3μmの粒度において使用される。式Me1Al11-xCrx17、Me2Al12-xCrx19、Me2'Al12-xCrx19またはMe3Al11-xCrx18の混晶の粒子は、5:1〜15:1の範囲の長さ/厚さ比を有する。その最大長さは、その際、12μmであり、その最大厚さは1.5μmである。
【0051】
本発明による焼結成形体のビッカース硬さは1,750[HV0.5]より大きく、しかし、好ましくは1,800[HV0.5]を上回る。
【0052】
本発明による焼結成形体の微細構造は微細な亀裂を含んでおらず、かつ1.0%を上回らない空隙率を有する。そのうえ焼結成形体は、さらにウィスカー(しかしながら、炭化ケイ素からのものではない)を含有してよい。
【0053】
好ましくは、焼結成形体は、例えば酸化マグネシウムのような、多方面で粒成長抑制剤として使用される物質のいずれも含有しない。
【0054】
本発明により提供される"in situ"小板強化は、マトリックスがCr23を含有しない場合も生じる。これは本発明により、硬さ値の降下が妨げにならない場合に準備される。Cr23なしで形成される小板は、その場合、一般式Me1Al1117、Me2Al1219、Me2'Al1219もしくはMe3Al1118に相当する。これらの焼結成形体でも、原則的にはCr23をマトリックス材料中に含有する焼結成形体と同じ好ましい実施形態が提供され得る。その点では、マトリックス材料中にCr23を有する焼結成形体に関する上記の説明は、マトリックス材料中にCr23を含まない焼結成形体にも同様に当てはまる。
【0055】
焼結に際して、安定化酸化物はZrO2格子中で溶解し、かつ該格子の正方晶変態を安定化させる。焼結成形体の製造のために、そしてさらなる不所望の相を含まない組織構造を得るために、好ましくは高純度の原料、すなわち、99%を上回る純度を有する酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムが使用される。好ましくは、そのうえ不純物の度合いはずっと低い。殊に、完成した焼結成形体に対して0.5体積%を上回るSiO2割合は所望されていない。この規定から除外されているのは、二酸化ジルコニウム内で2質量%までの少量で酸化ハフニウムが不可避的に存在することである。
【0056】
本発明による焼結成形体の製造は、酸化アルミニウム/二酸化ジルコニウム/酸化クロムと安定化酸化物とからなる混合物、もしくはこれらの成分に付加的にさらにアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、CdO、PdO、HgO、希土類金属酸化物またはLa23および/または元素の周期系(PSE)の第4副族および第5副族の1つ以上の窒化物、炭化物および炭窒化物が加えられている混合物の無圧焼結またはホットプレスによって行われる。例示的な混合物は第1表に記載されている。酸化イットリウムおよび酸化クロムの添加は、酸化イットリウムクロム(YCrO3)の形態でも行ってよく、その一方で、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、カドミウム酸化物、鉛酸化物、水銀酸化物、希土類金属酸化物またはランタン酸化物は、好ましくはそれらの塩の形態でも、殊に炭酸塩として添加されることができる。しかし、焼結中に分解および転位する三元化合物の添加も可能である。種々のセラミックス混合物を混合粉砕によって製造した。粉砕混合物に一時的結合剤を添加し、かつ該混合物を引き続き噴霧乾燥した。噴霧乾燥した混合物から未加工体をプレスして作り出し、かつ、これらを標準条件下で焼結した。
【0057】
未加工体を製造するための選択的な方法は、懸濁液から直接得ることである。このために水性懸濁液中で50体積%を超える固体含量を有する混合物が粉砕される。その際、混合物のpH値は4〜4.5に調整される。粉砕後、尿素と、該尿素を分解するのに適している大量の酵素ウレアーゼが加えられ、その後、この懸濁液は鋳型に注入される。酵素接触された尿素分解によって、懸濁液のpH値は9へと変化し、その際、該懸濁液は凝固する。そのようにして製造された未加工体は、離型後に乾燥され、かつ焼結される。焼結プロセスは無圧で、しかし、予備焼結も行ってよく、次に引き続く熱間等方圧による後高密度化が可能である。この方法(DCC法)に関するさらに詳細な説明は、明示的に引用されるWO94/02429およびWO94/24064に開示されている。
【0058】
無圧焼結との用語は、この場合、大気条件下での焼結のみならず、保護ガス下または真空中での焼結も包含する。好ましくは、成形体はまず90〜95%の理論密度に無圧で予備焼結され、かつ引き続き熱間等方圧プレスまたはガス圧焼結によって後高密度化される。理論密度は、それによって99.5%を上回る値にまで上昇されることができる。
【0059】
上述の多成分系を基礎とするセラミックスの製造に際しては、多数の要素が本質的に重要である。殊に粉末混合物の調製に際して、分散および粉砕は、本発明によるセラミックスの特性に特に影響を及ぼし得る。その際、粉砕法および粉砕アグリゲート自体は、結果に影響を及ぼし得る。使用される粉砕懸濁液の固体含量も付加的に分散に一緒に寄与し得る。
【0060】
以下の実施例では、影響パラメータおよびそれらの機械的特性に及ぼす効果が示される。個々の試験のために、次の固体の組み合わせが使用されている:
【表2】
【0061】
試験V1〜V4のために、60質量%のスラリーが使用されている。試験V5において固体含有率は55質量%に低下した。試験V1の実施のために振動ミルを使用した。試験V2およびV3は実験室用アトライターミルで実施されている;V2では1h粉砕し、V3での粉砕期間は2hであった。試験V4では30kgの量が連続式アトライターミル中で処理されている。試験V5は、2hの粉砕期間にて実験室用アトライター中で実施されている。
【0062】
以下には個々の試験における強度分析からの結果が示されている:
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
第二のさらなるセラミックスの実施形態:
本発明により、セラミックスからなるスライド体は、その他の実施形態において下記のものを含有する:
クロムドーピングを有する酸化アルミニウム70〜90体積割合(Al2O3:Cr)、
Y−安定化を伴う酸化ジルコニウム12〜22体積割合(ZrO2:Y)および
可変のCrドーピングを有する式SrAl12−xCrxO19のアルミン酸ストロンチウム1〜5体積割合。
【0065】
本発明による一実施態様において、構成成分の酸化ジルコニウムおよびアルミン酸ストロンチウムは酸化アルミニウムマトリックス中に組み入れられている。
【0066】
有利には、アルミン酸ストロンチウムは板状結晶および/または小板の形態で存在する。
【0067】
本発明の一実施態様において、カッティングテンプレートの材料には付加的にウィスカーおよび/または繊維または網状構造物または適した材料からの織物が散りばめられている。
【0068】
本発明のさらなる特徴は、以下で詳細に説明される図面からもたらされる。
【0069】
図1は、頸部脊柱に移植するための椎間板プロテーゼを示す。椎間板プロテーゼは、プラスチック、例えばPEEKまたはPEKKからの上側終板1および下側終板2から成る。
【0070】
これらの終板1、2には、そのつどスライド支承部のスライド体3、4が埋め込まれている。これは、スライド体3、4が終板1、2のプラスチックでインサート成形されることによって得られる。スライド支承部のスライド機能は、重なりあってスライドする2つの面9によって得られる。スライド支承部は、2個より多いスライド体から成っていてもよい。
【0071】
回転止め固定のために、終板1、2のプラスチックでインサート成形されたスライド体3、4の表面領域は平らな面と比較して表面拡張部を有する。
【0072】
図1において、表面拡張部はスライド体3、4の外周上の環状溝5である。この溝5には終板1、2のプラスチックが入り込む。
【0073】
図2は、部分図において、スライド体3、4の外周上の本発明による隆起部6を示す。
【0074】
図3は、部分図において、スライド体3、4の外周上の本発明によるラフニング7を示す。
【0075】
図4は、部分図において、スライド体3、4の外周上の本発明による突起部8を示す。
【符号の説明】
【0076】
1,2 終板、 3,4 スライド体、 5 環状溝、 6 隆起部、 7 ラフニング、 8 突起部
図1
図2
図3
図4