(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無水マレイン酸30〜60質量%及び無水マレイン酸と共重合可能なモノマー30〜60質量%を含むコポリマーを少なくとも60質量%含み、かつ少なくとも60質量%がpH6〜14での水性媒体において溶解性であることを特徴とする、FDM3D印刷法のための支持材料。
前記コポリマーが、250〜2000の分子量Mwを有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレート2〜40質量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の支持材料。
前記コポリマーが、使用される造形材料のガラス転移温度と25℃より大きくは異ならないガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の支持材料。
40〜55質量%のスチレン若しくはイソブチレン、35〜50質量%の無水マレイン酸及び4〜16質量%の(メタ)アクリル酸から構成されることを特徴とする、請求項3に記載の支持材料。
35〜55質量%のスチレン若しくはイソブチレン、30〜50質量%の無水マレイン酸及び4〜35質量%のメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから構成されることを特徴とする、請求項4に記載の支持材料。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、立体物を製造するための熱溶解積層法のための新規の支持材料に関する。本発明は、とりわけ、従来技術における支持材料よりも除去が容易である支持材料を含む3D印刷法に関する。本発明による支持材料は、例えば、スチレン−無水マレイン酸コポリマーである。
【0002】
先行技術
ラピッド・プロトタイピング(rapid prototyping)法又はラピッド・マニュファクチャリング(rapid manufacturing)法は、手動での転用若しくはワークピースへの直接かつ迅速な形成なしで存在する3次元CADデータを完璧に転写するために設計された製作方法である。
【0003】
ラピッド・プロトタイピング法は、様々な形態に区別されるようになり、該形態は、レーザベースの方法及びレーザを使用しない方法の2つのグループに細分させることができる。
【0004】
ステレオリソグラフィー(SLA)は、最もよく知られたレーザベースの3D印刷法であり、かつ最も古い3D印刷法でもある。該印刷法は、一層ずつ(layer by layer)レーザを用いて硬化される放射線硬化性ポリマーの液体組成物を含む。この方法は、その実用性において非常に限定されている。
【0005】
同様の方法は、粉末焼結積層造形法(SLS:selective laser sintering)であり、粉末状の原材料、例えば、熱可塑性物質、砂又は焼結性金属が、SLA法と同様に一層ずつレーザを用いて選択的に焼結される。SLSは、非常に特殊な3D対象物を改めて具現化することができるだけである。同様のことが、第3のレーザベースの方法−薄膜積層法−に適用されており、その際、接着剤が被覆されている紙又はプラスチックの層が連続的に接着され、成形のためにレーザを用いてカットされる。
【0006】
UVインクジェット法は、周知で汎用性のある3D印刷法である。該印刷法は、3段階法であり、その際、粉末状の材料が薄層の形で適用され、その後の立体製品の特定の層の形成において、UV硬化性の液体がその上に印刷されて、最終的に、印刷された層がUV源を用いて硬化される。これらの加工工程は、一層ずつ繰り返される。
【0007】
3次元印刷(TDP)法も存在する。この方法は、粉末状の材料を採用しているインクジェット法に似ているが、該材料は、好ましくはセラミックスであり、かつ一層ずつ、熱可塑性ポリマーの溶融物で選択的に浸される。各層の印刷後、粉末状の材料の新たな層が適用される必要がある。熱可塑性樹脂を固めて立体物を形成する。この方法は、費用がかかり、不便で非常に遅い。
【0008】
選択堆積造形法(SDM)として多少のバリエーションをもつと知られてもいる、熱溶解積層法(FDM)は、材料及び印刷による立体物の製造のための設備要件の点で最も経済的な方法である。
【0009】
FDMにおいて、2つの異なるポリマーがノズル中で溶融され、選択的に印刷される。ポリマーの1つは、例えば一時的な基材として必要とされる支持材料である。この支持材料は、例えば、水性系(例えば、塩基性又は酸性媒体)における完全な又は部分的な溶解によって、その後除去することができる。他のポリマー(造形材料)は、実物大の3D対象物を形成する。再度、印刷は一層ずつ行う。FDM法は、US5,121,329に最初に記載された。
【0010】
当初の態様において、ABSターポリマーは、造形材料及び支持材料の両方として使用されていた。印刷後、支持材料は、所定の破断点でその後除去させた。
【0011】
近年の開発では、上述のように、その後溶解される支持材料として溶解性ポリマーを利用している。サーマルタイプの印刷のため、使用可能な支持材料の選択は、ガラス転移温度又は溶融温度の点で非常に限定される。
【0012】
US5,503,785には、溶解性材料として、ポリエチレンオキシド、グリコールベースのポリマー又はポリビニルピロリドンが開示されている。しかしながら、これらの材料全ては、速い印刷を確実にするためには軟化点が低すぎるか又は溶解性が低すぎる。
【0013】
EP1,105,828では、支持材料としての使用のためにポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)が提案されている。しかしながら、この材料は、ガラス転移温度がたったの58℃と低すぎるため、印刷作動にかろうじて使用できる。印刷は、したがって、低温で、同時に感受性の造形材料を使用して行う必要があるだろう。
【0014】
EP1773560及びEP1194274では、可塑剤及び高い酸含量の水溶性ポリマーの組み合わせが提案されている。しかしながら、高温での印刷中の無水物の形態は、これらの支持材料の溶解性及び溶融粘度に不利に作用する。
【0015】
WO2010/045147には、Innocycling社からBelland(登録商標)88140の商品名で市販されている、スチレン、メタクリル酸及びブチルアクリレートの衝撃改質されたターポリマーが開示されている。しかしながら、これらの材料は、同様に、単に不十分に改善された熱安定性との組み合わせにおいて、完全ではない、抑制された溶解性を示す。
【0016】
従来技術の支持材料は、高いガラス転移温度、高い熱安定性及び比較的弱い塩基性媒体、例えばpH8における除去可能性の、定められた要件を一時に及び同時に満たしていない。
【0017】
課題
本発明によって取り組まれる課題は、新規のFDM3D印刷法を提供することであった。この方法は、熱的に安定である適切な支持材料を含み、一方で、該支持材料は、溶解によって印刷後に迅速かつ完全に除去できるべきである。
【0018】
当該課題は、とりわけ、200℃で少なくとも1時間安定であり、かつその期間中、機械特性及び溶解性特性の点で、長続して変化しないこの方法のための支持材料を提供することであった。印刷は、したがって、100℃超で印刷可能であるべきであり、かつ造形材料の選択は、広げられるべきである。
【0019】
本発明によって取り組まれるさらなる課題は、支持材料が、従来技術と比較して、例えば、pH及び/又は溶解温度においてより緩和された条件下で除去され得る、FDM法を提供することであった。
【0020】
さらに、支持材料は、同等の条件下で、従来技術における支持材料よりも明らかに速く除去されるべきである。
【0021】
この点において、本発明によって取り組まれる課題は、とりわけ、特別な実施形態において、プリンターの使用者にとって比較的危険のないpH6〜9の範囲における溶解プロセスを提供することであった。
【0022】
本発明によって取り組まれるが、はっきりとは述べられてないさらなる課題は、以下の記載、特許請求の範囲及び実施例の全ての文脈から明らかになるだろう。
【0023】
解決手段
当該課題は、新規の支持材料の用途を含む新たなFDM3D印刷法によって解決された。この支持材料は、無水マレイン酸30〜60質量%及び無水マレイン酸と共重合可能なモノマー30〜60質量%を含むコポリマーを少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%を含んでいる配合物である。この支持材料は、少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも90質量%がpH6〜14で水性媒体に溶解し得る。
【0024】
無水マレイン酸のフリーラジカル単独重合において、高い転化率及び分子量がもたらされることは稀である。しかしながら、無水マレイン酸は、多重度のビニルモノマーと共重合可能である。特に、高い反応速度、転化率及びモル質量は、電子リッチなモノマーとの共重合において達成できる。本発明における無水マレイン酸と共重合可能なモノマーは、そのような電子リッチなモノマーである。モノマーが電子リッチなモノマーであるかどうかを判断するために、当業者においてよく知られている、Alfrey−PriceのQ−eスキームが用いられてもよい。e≦0である化合物は、電子リッチであり、それ故、無水マレイン酸と共重合可能なモノマーとして、本発明に関して適格である。
【0025】
無水マレイン酸と共重合可能なモノマーは、専ら、さらなるモノマーなしで、モノマー自体で無水マレイン酸と共重合可能であるモノマーである。それらの例は、スチレン、イソブチレン又はイソブチルビニルエーテルである。スチレン及びイソブチレンが特に好ましい。さらなる例は、「Handbook of Polymer Synthesis Part A」(H.R. Kricheldorf 編集), Marcel Dekker, Inc., New Yprk, Basle, Hong Kong 1992における「Maleic acid and related monomers」の章に挙げられている。
【0026】
本発明の目的のためのFDM3D印刷法は、少なくとも1つの造形材料及び少なくとも1つの支持材料が、固体のポリマーとして互いに独立して存在し、引き続き溶融され、その後印刷される方法である。
【0027】
本発明の目的のための支持材料は、上述のように印刷されて、例えば、印刷作動における基本構造又は他の補助機能を形成し、印刷の実施後に溶解によって再度除去される材料である。
【0028】
本発明は、上述に列挙された定義のFDM3D印刷法のために、上記の定義の支持材料を専ら含んでいる。
【0029】
驚くべきことに、これらのコポリマーは、pH8と同じくらい低いpHで溶解可能となる。
【0030】
第一の好ましい態様において、支持材料は、50〜60質量%のスチレン及び40〜50質量%の無水マレイン酸のコポリマーである。
【0031】
特に、確立されているFDM3D印刷法及び該印刷法において採用される温度の観点から、コポリマーのガラス転移温度は、使用される特定の造形材料のガラス転移温度と25℃より大きくは、好ましくは10℃より大きくは、より好ましくは5℃より大きくは異ならないことがとりわけ好ましい。造形材料として108℃のガラス転移温度を有するABSを使用しているFDM3D印刷法のためのガラス転移温度は、例えば、83〜133℃、より精密には98〜118℃、特に、103〜113℃である。
【0032】
印刷後、支持材料は、pH6〜14、より好ましくはpH7〜9の水性媒体において好ましくは溶解される。ここでは、使用者にとって危険でない6〜9のpH値で、機械的にかつ熱的に適切な支持材料のための、十分な溶解率を達成できることは、驚くべきことである。
【0033】
本発明の文脈上定められているpH値は、支持材料が溶解する前の溶液媒体に関する。このpHは、溶解中に変化するであろうことは予期されるだろう。少なくともある程度この変化を阻止するために、溶液媒体は、緩衝させた状態で代替的に存在していてもよい。
【0034】
支持材料として使用されるコポリマーの分子量Mwは、一般的には25000〜500000、好ましくは50000〜300000、より好ましくは100000〜200000である。
【0035】
これらの既に適切な材料が、さらなるコモノマーの添加により、特に、柔軟性及び加工温度の点で、さらに改良され得ることを見出したことはさらなる驚きであった。2つの特に好ましい態様が、このために見出された。
【0036】
第一の好ましい態様において、コポリマーは、2〜20質量%の(メタ)アクリル酸をさらに含んでいる。該コポリマーは、この場合、とりわけ好ましくは、40〜55質量%、特に、44〜51質量%のスチレン、35〜50質量%、とりわけ39〜46質量%の無水マレイン酸及び3〜18質量%、とりわけ4〜16質量%の(メタ)アクリル酸から構成される。
【0037】
第二の好ましい態様において、コポリマーは、250〜2000、好ましくは400〜800の分子量Mwを有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレート2〜40質量%をさらに含んでいる。該コポリマーは、この場合、非常に好ましくは、35〜55質量%、とりわけ、37〜51質量%のスチレン、30〜50質量%、とりわけ32〜46質量%の無水マレイン酸及び3〜35質量%、とりわけ4〜32質量%のメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから構成される。
【0038】
態様を問わず、コポリマーは、溶液重合又は塊状重合を介して得ることができる。塊状重合法は、ニーダー又は押出機中で実施される連続法とすることができる。好ましくは、支持材料中又は支持材料として使用するための本発明のコポリマーは、その後の溶剤の除去を伴う溶液重合によって製造される。
【0039】
さらに、コポリマーは、スチレンと共重合可能なさらなる非官能性モノマーを40質量%まででかつ好ましくは20質量%以下含んでいてもよい。好ましくは、これらはエチルアクリレート、プロピルアクリレート又はブチルアクリレートなどのアルキルアクリレートである。
【0040】
第一の態様において、支持材料中のコポリマーは、より好ましくは、50〜60質量のスチレン若しくはイソブチレン及び40〜50質量%の無水マレイン酸のコポリマーである。
【0041】
第二の態様において、支持材料中のコポリマーは、より好ましくは、40〜55質量のスチレン若しくはイソブチレン、35〜50質量%の無水マレイン酸及び4〜16質量%の(メタ)アクリル酸のコポリマーである。
【0042】
第三の態様において、支持材料中のコポリマーは、より好ましくは、35〜55質量%のスチレン若しくはイソブチレン、30〜50質量%の無水マレイン酸及び4〜35質量%のメトキシポリエチレングリコールメタクリレートのコポリマーである。
【0043】
支持材料は、流動性改質剤、安定剤、沈降シリカ若しくは熱分解
法シリカ、可塑剤、顔料及び/又は耐衝撃性改質剤をさらに含んでいてもよい。さらに、添加剤は、意図される用途に応じて考慮することができ、かつ各場合において、加工条件から明らかになるだろう。
【0044】
顔料は、印刷前又は印刷中、支持材料と造形材料とを区別することがより容易になる利点を有し得る。
【0045】
流動性改質剤は、印刷中、溶融粘度を特定の値に調節するために使用され得る。
【0046】
沈降シリカ又は熱分解
法シリカは、同様に溶融粘度を調整するための役割を果たし、例えば、擬似塑性を増大させる。
【0047】
可塑剤は、支持材料の柔軟性及び溶融粘度を特定の値に調整するために有益である。典型的な可塑剤は、当業者において知られており、クエン酸のエステル及び/又はエーテル、脂肪族、脂環式又は芳香族のフタル酸エステル、アジピン酸のエステル、アルキル及び/又はアリールホスフェート、ポリエーテル、グリセロールのエステル並びにそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。可塑剤は、支持材料の全質量に対して、0〜20質量%、好ましくは3〜15質量%、一層より好ましくは5〜10質量%の量で使用することができる。
【0048】
安定剤は、例えば、熱的安定性をさらに改善するために使用され得る。貯蔵安定性を改善するための安定剤、例えば、UV安定剤などが添加されていてもよい。
【0049】
さらに、支持材料は、40質量%まででかつ好ましくは30質量%以下の、柔軟性を改善するための成分を含んでいてもよい。これらの成分は、耐衝撃性改質剤並びに可塑剤である。
【0050】
耐衝撃性改質剤として一般的に使用される成分は、造形物の様々な材料、特に、PVC及びPMMA、尚またスチレン−無水マレイン酸ンコポリマーにおける適用を見出し、かつ当業者においてよく知られているだろう。本発明の目的のために、耐衝撃改質剤として一般的な使用が見出されている、水溶性で、少なくとも水分散性の成分の使用が特に適切である。しかしながら、支持材料内での良好な分散のために、衝撃改質剤として一般的な使用が見出されている、完全に水溶性の成分でさえも、この目的のために適切でもある。
【0051】
オレフィンベースの耐衝撃改質剤は、所定の実施可能な態様に関係がある。当業者であれば、オレフィン変性されたスチレン−無水マレイン酸コポリマーが耐衝撃性を改善することは知っているだろう。DE2246726には、様々な組成物及び作製方法が記載されている。重合中、ゴムの存在は、スチレン−無水マレイン酸コポリマーに共有結合を付与する。適切なゴムは、好ましくは、少なくとも65質量%のブタジエンを含んでいる。
【0052】
好ましい構造は、ブタジエンホモポリマーであるか、或いはスチレン及びブタジエンからなるA−B若しくはA−B−A型のブロックコポリマーである。
【0053】
WO2005/016978には、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのための耐衝撃改質剤として、α−オレフィンポリマー及びコポリマー、例えば、エチレン、プロピレン及びブチレンポリマー並びにコポリマーの使用が記載されている。これらの耐衝撃改質剤は、高い熱安定性の利点を有している。この特性は、スチレン及びブタジエンの水素化されたブロックコポリマーによっても示される。
【0054】
本発明による無水マレイン酸コポリマーの重合は、好ましくはゴムの存在下で実施する。ゴムの軟化点より高い反応温度又はゴム用の溶剤の存在が有利である。塊状重合の場合、これは、例えばスチレンとすることができる。該反応は、熱開始反応又はフリーラジカルを形成する開始剤の添加を介して開始される。
【0055】
適切な耐衝撃改質剤は、官能性コポリマー、例えばポリエチレン又はポリプロピレンベースのエポキシ若しくはマレイン酸で官能化されたポリオレフィンをさらに含んでいる。エチレン及びグリシジルメタクリレート若しくは無水マレイン酸のコポリマーが、とりわけ関係がある。これらの成分は、さらに(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。好ましくは、これらの成分は、例えば押出機におけるコンパウンディングによって分散される。官能化されたポリオレフィンの存在下での本発明の無水マレイン酸コポリマーの重合も可能である。
【0056】
コア−シェル粒子は、耐衝撃改質剤のさらなるグループである。コア−シェル粒子のコアは、通常、第二の成分とグラフトされる、エンジニアリング熱可塑性樹脂又はエラストマーからなる。コア−シェル粒子は、二段階の乳化重合によって製造することが好ましい。典型的に使用されるコア材料は、例えば、ブチル又はエチルヘキシルアクリレートなどの0℃未満のガラス転移温度を有する非晶質のコポリマーを含んでいる。シェルは、通常、70℃超のガラス転移温度を有する硬質成分からなる。これらのポリマーは、耐衝撃改質剤として一般的に使用される成分として、PMMA又はPVCがとりわけ知られている。これらの乳化重合体の適切な粒径は、25nm〜1000nm、好ましくは50〜600nm、より好ましくは80nm〜400nmの範囲である。
【0057】
コア−シェル粒子のシェルは、例えば、スチレンのコポリマー又はメトキシポリエチレングリコールメタクリレートと共重合したポリスチレンからなり、これらのコポリマーは、支持材料の主成分であるコポリマーとの良好な適合性を実現する。好ましくは、該粒子のコア及び/又はシェルは、架橋された状態にある。これにより、粒子が安定し、その結果、耐衝撃改質剤として一般的に使用される成分のはっきりとした改良された特性がもたらされる。
【0058】
好ましくは、コア−シェル粒子は、例えば、一軸押出機または二軸押出機中での機械的なコンパウンディングを介して分散される。さらなる態様において、コア−シェル粒子は、溶剤中で分散され、無水マレイン酸コポリマーは、それらの存在下で重合される。
【0059】
耐衝撃改質剤として一般的に使用される成分は、支持材料の全質量に対して、3〜30質量%、好ましくは8〜22質量%、より一層好ましくは10〜15質量%の量で使用され得る。
【0060】
さらなる添加剤は、例えば、静電気の蓄積を防止するための、又は表面特性を改質するための添加剤であってもよい。さらに、このような添加剤は、造形材料に対する粘着性を改善するための定着剤であってもよい。
【0061】
実施例
測定方法
合成されたサンプルの乾燥
サンプルを50℃で6時間乾燥させ、その後、真空乾燥室中に150℃で一晩置いた。
【0062】
GPC:
質量平均分子量は、標準ポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した(製造元:Polymer Laboratories社)。測定は35℃の温度のオーブンで実施した。以下のカラムの組み合わせを使用した:PLガードカラム、10μm、5cm、直径7.5mm、PLゲル 10
6Å、10μm、30cm、直径7.5mm、PLゲル 10
5Å、10μm、30cm、直径7.5mm、PLゲル 10
4Å、5μm、30cm、直径7.5mm、PLゲル 10
3Å、5μm、30cm、直径7.5mm(製造元:Polymer Laboratories社)。溶離液は、0.1体積%のトリフルオロ酢酸を有するTHFを使用した。
【0063】
DSC
DSC測定は、窒素5.0雰囲気下において、METTLER TOLEDO社からのDSC1で実施した。ガラス転移温度は、DIN ISO11357にしたがって測定した。
【0064】
メルトフローインデックス(MFI)
MFIは、MPS−Dタイプの、Goettfert社からのメルトフローインデックステスターで測定した。ダイの直径は1mmである。特に明記しない限り、測定は、200℃の温度かつ10kgの荷重で実施した。サンプルは、測定前に上述の方法によって乾燥させた。
【0065】
溶解性の決定:
上述の方法によって乾燥させた50mgの物質を、撹拌下で10mlの75℃に加熱した溶液に添加した(pH8:ホスフェート緩衝液 Na
2HPO
4・2H
2O;濃度(c)=0.2mol/l。pH14:NaOH、0.1モル)。完全に溶解した場合、明らかな均質溶液が存在するか、又は乳白色の分散液となる。
【0066】
使用した開始材料
合成用:10〜20ppmの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールで安定化させたスチレン
合成用:無水マレイン酸、ジラウロイルペルオキシド、2−ブタノン及び他のモノマー
Cognis UK社からのBisomer MPEG550MA(ポリエチレングリコール部分が550g/molの分子量を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレート)
Dr.Spiess Chemische Fabrik社の、純度99.8%の2−エチルヘキシルチオグリコレート。
【0067】
実施例1
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器(double-shell vessel)中に、273gの2−ブタノン、66gのスチレン及び59gの無水マレイン酸を初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、199gのスチレン、176gの無水マレイン酸、228gの2−ブタノン、5gのジラウロイルペルオキシド及び2.5gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0068】
実施例2
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器中に、383gの2−ブタノン、56gのスチレン及び50gの無水マレイン酸並びに19gのBisomer MPEG550MAを初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、169gのスチレン、150gの無水マレイン酸、56gのBisomer MPEG550MA、118gの2−ブタノン、5gのジラウロイルペルオキシド及び1gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0069】
実施例3
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器中に、373gの2−ブタノン、56gのスチレン及び56gの無水マレイン酸、19gのBisomer MPEG550MA並びに6gのメタクリル酸を初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、169gのスチレン、169gの無水マレイン酸、56gのBisomer MPEG550MA、19gのメタクリル酸、379gの2−ブタノン、5gのジラウロイルペルオキシド及び2.5gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0070】
実施例4
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器中に、349gの2−ブタノン、44gのスチレン及び40gの無水マレイン酸並びに36gのBisomer MPEG550MAを初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、178gのスチレン、158gの無水マレイン酸、144gのBisomer MPEG550MA、251gの2−ブタノン、5gのジラウロイルペルオキシド及び3gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0071】
実施例5
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器中に、349gの2−ブタノン、54gのスチレン及び48gの無水マレイン酸並びに18gのアクリル酸を初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、216gのスチレン、192gの無水マレイン酸、72gのアクリル酸、251gの2−ブタノン、6gのジラウロイルペルオキシド及び3gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0072】
実施例6
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器中に、334gの2−ブタノン、53gのイソブチルビニルエーテル並びに49gの無水マレイン酸を初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、214gのイソブチルビニルエーテル、198gの無水マレイン酸、181gの2−ブタノン、5gのジラウロイルペルオキシド及び2.5gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0073】
実施例7及び8のための前駆体
羽根付きスターラー(blade stirrer)、温度計及び還流凝縮器を備えたウィットポット(Witt pot)中に、75gのエチレン−プロピレンコポリマー(55:45、BUNA(登録商標)EP G2050、Lanxess社)及び252gのブチルアセテートを初期投入し、毎分280回転数で撹拌し、110℃に加熱し、かつドライアイスで脱揮した。2時間後、1.5gのtert−ブチルペルオクトエートを該初期投入物に添加し、その後、148gのメチルメタクリレート、148gのブチルメタクリレート及び4.5gのtert−ブチルペルオクトエートの混合物の追加を開始した。添加時間の3時間後であって、添加終了後の1時間後に、0.6gのtert−ブチルペルオクトエートを添加し、さらに7時間の間温度を105〜110℃に維持した。全反応時間を通して、一定量の窒素ガス流をバッチに導入した。重合終了後、室温に冷却した溶液を、ブチルアセテートを用いて約35%に希釈した。製造物は、青みがかっており、乳色に濁っていた。粘度(約35%濃度)は、約1000〜2000mPasであった。
【0074】
実施例7
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器中に、195gの2−ブタノン及び274gの上述の前駆体を初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、142gのスチレン、127gの無水マレイン酸、115gのBisomer MPEG550MA、347gの2−ブタノン、4gのジラウロイルペルオキシド及び2gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0075】
実施例8
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器中に、284gの2−ブタノン及び137gの上述の前駆体を初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、160gのスチレン、143gの無水マレイン酸、130gのBisomer MPEG550MA、347gの2−ブタノン、4.5gのジラウロイルペルオキシド及び2.2gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0076】
実施例9
温度計、還流凝縮器及び窒素注入管を備えた二重壁の容器中に、349gの2−ブタノン、54gのスチレン、48gの無水マレイン酸及び18gのエチルアクリレートを初期投入し、N
2雰囲気下で30分間75℃の内部温度で撹拌しながら加熱した。その後、216gのスチレン、192gの無水マレイン酸、72gのエチルアクリレート及び251gの2−ブタノン、6gのジラウロイルペルオキシド及び3gの2−エチルヘキシルチオグリコレートを、一定の速度で3時間にわたって反応器中に計量供給した。最後に、バッチを75℃の内部温度で3時間、後反応させ、室温に冷却した。
【0077】
【表1】