特許第5893146号(P5893146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

特許5893146LILIAL(登録商標)の代用物としてのフローラルな付香組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893146
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】LILIAL(登録商標)の代用物としてのフローラルな付香組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20160310BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20160310BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160310BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20160310BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160310BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20160310BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20160310BHJP
   D06M 13/00 20060101ALI20160310BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   C11B9/00 C
   C11B9/00 J
   C11B9/00 K
   C11B9/00 B
   C11B9/00 X
   C11B9/00 D
   C11B9/00 N
   C11B9/00 T
   C11B9/00 R
   C11D3/50
   A61K8/34
   A61K8/35
   A61K8/31
   A61K8/49
   A61Q13/00 100
   D06M13/00
   A61L9/01 Q
   A61L9/01 R
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-532313(P2014-532313)
(86)(22)【出願日】2012年9月17日
(65)【公表番号】特表2014-534282(P2014-534282A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012068186
(87)【国際公開番号】WO2013045301
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年9月8日
(31)【優先権主張番号】11183426.3
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ミシェル ゼノセルン
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−519081(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/136651(WO,A1)
【文献】 特開2000−212111(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/105874(WO,A1)
【文献】 特開平02−111736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00− 9/02
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下、
− 第一の一次付香成分として5〜25質量%の量で(2,5−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル)メタノール、及び第二の一次付香成分として0.2〜10質量%の量で3−(gem−ジメチル−5−インダニル)プロパナールを含む一次付香成分混合物、並びに
− 以下、
− 20質量ppm〜1000質量ppmの合計量で、3−メチル−5−フェニルペンタナール、デカナール又はオクタナールの少なくとも1つ、及び/又は
− 20質量ppm〜2000質量ppmの合計量で、クミンアルデヒド、クミンアルコール又はカルボンの少なくとも1つ、及び/又は
− 60質量%〜95質量%の合計量で、テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノール又はcis−7−p−メンタノールの少なくとも1つ
の中から選択される二次付香成分の少なくとも1つ
ここで、質量%及び質量ppmでの量は、それぞれの場合に、芳香性の組成物の合計質量に基づく
を含むフローラルな芳香性の組成物。
【請求項2】
前記第一の一次付香成分が10〜20質量%の量で存在し、かつ第二の一次付香成分が0.5〜5質量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記3−(gem−ジメチル−5−インダニル)プロパナールが、通常モル比4/1〜6/1での3−(3,3−ジメチル−5−インダニル)プロパナール及び3−(1,1−ジメチル−5−インダニル)プロパナールの2つの異性体の混合物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも2つの二次付香成分を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、少なくとも3つの二次付香成分を含み、その二次付香成分の少なくとも1つが二次付香成分の前記3つの群のいずれかから選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、さらに、以下
− 0質量ppm〜1500質量ppmの合計量で、シトロネラール、(+)−(4R)−1−p−メンテン−9−カルバルデヒド、レモングラス油、(E)もしくは(Z)−4−デセナール、又は(E)もしくは(Z)−3−ドデセナール、及び/又は
− 0質量ppm〜1000質量ppmの合計量で、n−サリチル酸ペンチル、フェニルメチル2−ヒドロキシ−ベンゾエート、(Z)−3−ヘキセニル2−ヒドロキシ−ベンゾエート、シクロヘキシル2−ヒドロキシ−ベンゾエート、4−(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8−イリデン)ブタナール、4,8−ジメチルデカ−4,9−ジエナール、3−(3−イソプロピル−1−フェニル)ブタナール、ヘキシル2−ヒドロキシ−ベンゾエート、3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2−メチルプロパナール、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、2,6,10−トリメチル−9−ウンデセナール、7−プロピル−2H,4H−1,5−ベンゾジオキセピン−3−オン
の中から選択される1つ以上の任意の付香成分を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナールの代替品のための付香成分としての、請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項8】
以下、
i)請求項1から6までのいずれか1項において定義したフローラルな芳香性の組成物の1つ、
ii)香料キャリヤー及び香料ベースからなる群から選択される成分の少なくとも1つ、並びに
iii)場合により香料補助剤の少なくとも1つ
を含む、付香組成物。
【請求項9】
以下、
i)請求項1から6までのいずれか1項において定義したフローラルな芳香性の組成物の1つ、及び
ii)香料キャリヤー
を含む、請求項8に記載の付香組成物。
【請求項10】
以下、
i)請求項1から6、8及び9のいずれか1項において定義した組成物、及び
ii)香料消費者ベース
を含む、付香消費者製品。
【請求項11】
前記香料消費者ベースが、香水、織物ケア製品、ボディケア製品、エアケア製品又はホームケア製品であることを特徴とする、請求項10に記載の付香消費者製品。
【請求項12】
前記香料消費者ベースが、ファイン香水、コロン、アフターシェービングローション、液体又は固形洗剤、織物柔軟剤、織物リフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、シャンプー、染毛料、ヘアスプレー、バニシングクリーム、デオドラント又は発汗抑制剤、着香石鹸、シャワー又はバスムース、オイル又はゲル、衛生製品、エアフレッシュナー、“すぐに使用できる”粉末エアフレッシュナー、ワイプ、皿用洗剤又は硬質表面洗剤であることを特徴とする、請求項10に記載の付香消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料の分野に関する。より詳述すれば、本発明は、標準的な付香調合物におけるLILIAL(登録商標)の代替品として有用である芳香性の組成物に関する。LILIAL(登録商標)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパノールは、フローラルノートを種々の付香組成物及び着香物品に付与するために使用されている付香成分であるが、毒性の懸念が増加していることによってますます使用が制限されている。
【0002】
付香適用におけるLILIAL(登録商標)の使用を制限する規制に関していくつかの関心が存在するため、化合物の代用物が必要である。これに関して、WO2010/105874号A1は、LILIAL(登録商標)代用物として使用されてよい組成物が開示されている。組成物におけるLILIAL(登録商標)の量が減少する一方で、調合物において未だいくつか残っている。従って、せいぜい、この文献は、どのようにLILIAL(登録商標)をかかる組成物においてより少ない量まで制限するかを教示しており、その除去又は置き換えることについては教示していない。
【0003】
WO2010/105873号A2は、LILIAL(登録商標)の代用物のために使用されてよい少なくとも2種から5種以上ほどの化合物を含む組成物を開示している。挙げられた化合物は、ブルゲオナール(burgeonal)、ジメチルフェニルエチルカルビノール、MAYOL(登録商標)、ムゲタノール(mugetanol)、シトルサル(citrusal)、シルビアル(silvial)、シクラメンアルデヒド及びFLOROL(登録商標)を含む。この文献において記載されている組成物は、毒性レベルについての問題が提起され始めているある化合物、例えばブルゲオナール、シルビアル及びシクラメンアルデヒドの存在を要求する。従って、前記文献は、LILIAL(登録商標)の置き換えに対して実質的な又は長期間の解決をもたらさない。
【0004】
WO 2009/027957号A2は、p−tert−ブチル−アルファ−メチルジヒドロシンナムアルデヒドの置き換えのための"カクテル"にする調合のためのいくつかの異なる化合物を記載している。多数の化合物及びカクテルを開示しているが、LILIAL(登録商標)の置き換えのための明確な組成物ではない。
【0005】
従って、フローラルなにおい特性を提供する標準の付香調合物におけるLILIAL(登録商標)の代替品として有用である芳香性の組成物についての要求が残っている。
【0006】
発明の要旨
本発明の芳香性の組成物は、LILIAL(登録商標)又は将来的に制限されるようになるであろう他の付香成分を使用することなしに、強く長く続く心地よいフローラルな香りを提供することによって先行技術の欠点を改善する。
【0007】
従って、本発明は、
− 5〜25質量%の量で(2,5−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル)メタノール(LILYFLORE(登録商標))、及び0.2〜10質量%の量で3−(gem−ジメチル−5−インダニル)プロパナール化合物を含む、又はそれらからなる一次付香成分混合物、並びに
− 1、2、3又はそれ以上の追加の二次付香成分
を含む、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(LILIAL(登録商標))のための代替品として使用するためのフローラルな芳香性の組成物に関する。質量%での量は、それぞれの場合に芳香性の組成物の合計量に対する。
【0008】
本発明は、本明細書において開示されている付香組成物の着香消費者物品、及び消費者物品、例えば香水、織物ケア製品、ボディケア製品、エアケア製品又はホームケア製品にも関する。
【0009】
本発明は、フローラルな芳香性の組成物の付香成分(LILIAL(登録商標))を、本明細書において記載された一次付香成分と二次付香成分との混合物で置き換えて、得られた芳香性の組成物が、LILIAL(登録商標)又は将来的に制限されるようになるであろう他の付香成分の含有なしに、フローラルノートを提供することを特徴とするフローラルな芳香性の組成物を提供するための方法にも関する。
【0010】
さらに、本発明は、フローラルな芳香性の組成物又はフローラルな芳香を付与した消費者物品におけるLILIAL(登録商標)のための代用物又は代替品として本明細書において記載された一次付香成分と二次付香成分との混合物の使用に関する。
【0011】
発明の詳細な説明
フローラルな芳香性の組成物は、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(LILIAL(登録商標))のための代替品としての使用のために提供される。この組成物は、少なくとも本明細書において開示された量で使用する場合に、及び制限されずに、環境に優しい多数の芳香性成分を含む。
【0012】
本発明のフローラルな芳香性の組成物は、
− 以下で定義された及び以下で定義された量での一次香料混合物(一次付香成分混合物)、
− 以下で定義された及び以下で定義された量での少なくとも1つの二次付香成分、
− 以下で定義された及び以下で定義された量での1つ以上の任意の付香成分
を含む。
【0013】
有利には、一次香料混合物は、2つの一次付香成分を含み、又はそれらからなる。第一の一次付香成分は、(2,5−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル)メタノール化合物(LILYFLORE(登録商標)(Firmenich SA)として公知の化合物)である。この第一の付香成分は、5〜25質量%及び有利には10〜20質量%の量で存在する。第二の一次付香成分は、HIVERNAL(登録商標)(Firmenich SA)として公知でもある3−(gem−ジメチル−5−インダニル)プロパナールであり、正確には、通常モル比4/1〜6/1での3−(3,3−ジメチル−5−インダニル)プロパナール及び3−(1,1−ジメチル−5−インダニル)プロパナールの2つの異性体の混合物である。この第二の付香成分又は混合物は、典型的に、0.2〜10質量%の量で、及び有利には0.5〜5質量%の量で存在する。明確化のために、質量%で量が与えられる場合に、特に言及されない限り本発明の組成物の合計質量のパーセンテージを意味することを明記すべきである。質量ppmで量が与えられる場合も同様である。
【0014】
少なくとも1つの二次付香成分が組成物中で含まれる。多数の二次付香成分のいずれか1つは、所望されたようにフローラルなにおい特性の所望のニュアンスを達するために含まれてよい。当業者は、付香成分を付与する種々の又は所望のフローラルなにおい特性を提供するためにかかる成分又はそれらの組合せを選択する方法を知っている。多数の種々の付香成分及び好ましい組合せは本明細書において開示されている。
【0015】
1つの好ましい組成物は、一次付香成分混合物との組合せで、少なくとも2つの二次付香成分を含む。
【0016】
1つの好ましい組成物は、一次付香成分混合物との組合せで、少なくとも3つ又は4つの二次付香成分を含む。
【0017】
本発明の一実施態様に従って、二次付香成分は、
− 20質量ppm〜1000質量ppm及び有利には30質量ppm〜500質量ppmの合計量での、3−メチル−5−フェニルペンタナール、デカナール又はオクタナールの少なくとも1つ、及び/又は
− 20質量ppm〜2000質量ppm及び有利には50質量ppm〜300質量ppmの合計量での、クミンアルデヒド(4−イソプロピルベンズアルデヒド)、クミンアルコール又はカルボン(デキストロ((+)−(S)−1(6),8−p−メンタジエン−2−オン))の少なくとも1つ、及び/又は
− 60質量%〜95質量%及び有利には65質量%又は75質量%〜90質量%の合計量での、テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノール(FLOROL(登録商標))又はシス−7−p−メンタノール(MAYOL(登録商標))の少なくとも1つ
から選択される。
【0018】
本発明の実施態様のいずれか1つに従って、フローラルな芳香性の組成物は、前記群から選択された二次付香成分の少なくとも3つを含む。本発明の実施態様のいずれか1つに従って、フローラルな芳香性の組成物は、少なくとも3つの二次付香成分を含み、その少なくとも1つが二次付香成分の前記群のいずれかから選択される。
【0019】
本発明の実施態様のいずれか1つに従って、本発明のフローラルな芳香性の組成物は、場合により、シトロネラール(Citronellal)、(+)−(4R)−1−p−メンテン−9−カルバルデヒド、レモングラス油、(E)もしくは(Z)−4−デセナール、又は(E)もしくは(Z)−3−ドデセナールから選択される任意の付香成分の1つ以上を、0質量ppm〜1500質量ppmの合計量で含む。
【0020】
本発明の実施態様のいずれか1つに従って、他の任意の付香成分は、0質量ppm〜1000質量ppmの合計量で、以下の中から選択されてよい
【表1】
【0021】
本発明のフローラルな芳香性の組成物のにおいが先行技術のLILIAL(登録商標)の代用組成物と比較される場合に、本発明のフローラルな芳香性の組成物は、それ自体、先行技術のLILIAL(登録商標)の代用物を含む組成物よりも長く続く、より強くより心地よいフローラルノートによって特徴付けられる。さらに、本発明のフローラルな芳香性の組成物は、LILIAL(登録商標)の他の公知の代用物と比較した場合に、LILIAL(登録商標)のにおい及び性能プロフィールに非常に近い、全体のにおい及び性能プロフィールを有するものである。
【0022】
これは実に意外である。それというのも先行技術(US6323173号又はVial et al.のHelv. Chem. Comm, 2005, 3109を参照)において開示されたように、主な嗅覚特性及び性能を付与するものである双方の一次付香成分が、有意差でにおいプロフィールを有し、例えばLILYFLORE(登録商標)は、Lilial(登録商標)において存在しないヒドロキシシトロネラール及び有機物ノートを有し、かつ及びHIVERNAL(登録商標)は、ドイツスズランのノートを有するからである。驚くべきことに、本発明において、2つの化合物は、相乗効果を有することが見出されており、2つの別々の化合物の所望されないノートは知覚できず、かつ全体の効果は、LILIAL(登録商標)タイプの効果である。
【0023】
上述のように、本発明のフローラルな付香組成物を、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(LILIAL(登録商標))のための代替品として使用でき、すなわち香料組成物の組成物における付香成分として使用できる。
【0024】
従って、本発明の他の目的は、
i)付香成分として、前記の本発明のフローラルな芳香性の組成物の1つ、
ii)香料キャリヤー及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分、並びに
iii)場合により少なくとも1つの香料補助剤
を含む付香組成物である。
【0025】
"香料キャリヤー"は、香料の観点から事実上中性である、すなわち付香成分の感覚刺激性の特性を著しく変更しない材料を意味する。キャリヤーは液体又は固体であってよい。
【0026】
液体キャリヤーとしては、制限のない例として、乳化系、すなわち溶媒及び界面活性剤系、又は香料において通常使用される溶媒を挙げてよい。香料において通常使用される溶媒の性質及びタイプの詳細な説明は網羅できない。しかしながら、制限のない例として、最も通常使用される溶媒、例えばジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール又はクエン酸エチルを挙げられる。香料キャリヤー及び香料ベースの双方を含む組成物に関して、前記よりも他の適した香料キャリヤーは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン、又は他のテルペン、イソパラフィン、例えばISOPAR(登録商標)(出所:Exxon Chemical)又はグリコールエーテル及びグリコールエーテルエステル、例えば商標名DOWANOL(登録商標)(出所:Dow Chemical Company)で公知のものであってもよい。
【0027】
固体キャリヤーとしては、制限のない例として、吸収性ガム又はポリマー、又はさらに封入材料を挙げてよい。かかる材料の例は、造壁材料及び可塑材料、例えば単糖、二糖又は三糖、天然デンプン又は化工デンプン、浸水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質又はペクチン、又はさらに、参考文献、例えばH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs− und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr's Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996において挙げられている材料を含んでよい。カプセル化は、当業者に公知の方法であり、かつ例えば噴霧乾燥、凝集又はさらに押し出しのような技術を使用して実施されてよく、又はコアセルベーション及び複合コアセルベーション技術を含む被覆カプセル化からなる。
【0028】
"香料ベース"は、少なくとも1つの付香共成分を含む組成物を意味する。前記付香共成分は、式(I)ではない。さらに、"付香共成分"に関しては、ここでは、心地よい効果を付与するための付香調合物又は組成物において使用される化合物を意味する。言い換えれば、付香共成分であると考えられるべきかかる共成分は、ポジティブ又は好ましい方法で組成物のにおいを付与又は改質することができると、及び単に1つのにおいを有するだけでないと当業者によって認識される必要がある。
【0029】
あらゆる場合において網羅的ではない前記ベースにおいて存在する付香共成分の性質及びタイプは、ここでのより詳細な記載を保証せず、その際当業者は、一般の知識に基づいて、及び任意の使用又は適用及び所望された感覚受容性効果に従って、前記ベースを選択することができる。一般的な用語で、これらの付香共成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素又は硫黄の複素環化合物及び精油と多様な化学品種に属し、かつ該付香共成分は、天然源又は合成源であってよい。これらの共成分の多くは、あらゆる場合において、参考文献、例えばS. ArctanderによるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA、又はその最新版において、又は同様の種類の他の著作において、並びに香料の分野における豊富な特許文献において挙げられている。前記共成分は、調節された方法で種々のタイプの付香成分を放出することが公知の化合物であってもよい。
【0030】
"香料補助剤"に関しては、ここで、追加の付加効果、例えば色、特定の光耐性、化学安定性等を付与することができる成分を意味する。付香ベースにおいて通常使用される補助剤の性質及びタイプの詳細な説明は網羅的ではなく、しかし該成分が当業者によく知られていることを挙げるべきである。
【0031】
さらに、本発明の組成物は、現在の香料、すなわちファイン香水又は機能的な香料の全ての分野において、前記(I)を付加する消費者製品のにおいをポジティブに付与する又は改良するために、有利に使用されてよい。従って、
i)付香成分として、少なくとも1つの本発明の組成物、及び
ii)香料消費者ベース
を含む付香消費者製品が、本発明の目的でもある。
【0032】
明確化のために、"消費者物品"に関しては、少なくとも1つの付香効果を伝えることを期待した製品、言い換えれば着香した消費者物品を意味することに注意すべきである。明確化のために、付香成分と相容性であり、かつ適用される表面(例えば、皮膚、髪、織物、又は家の表面)に心地よいにおいを伝えることが期待される消費者製品に相応する、場合により追加の有効物質である。言い換えれば、本発明による着香した消費者物品は、機能的な調合物、並びに場合により所望の消費者製品に相応する追加の有効物質、例えば洗剤又はエアフレッシュナー、及び嗅覚有効量の少なくとも1つの本発明の化合物を含む。
【0033】
あらゆる場合において網羅的ではない香料消費者ベースの構成物の性質及びタイプは、ここでのより詳細な記載を保証せず、その際当業者は、一般の知識に基づいて、及び該製品の性質及び所望の効果に従って、前記ベースを選択することができる。
【0034】
適した消費者物品の制限のない例は、香水、例えばファイン香水、コロン、又はアフターシェービングローション;織物ケア製品、例えば液体又は固形洗剤、織物柔軟剤、織物リフレッシャー、アイロン水、紙、又は漂白剤;ボディケア製品、例えばヘアケア製品(例えばシャンプー、染毛料又はヘアスプレー)、化粧品調合物(例えばバニシングクリーム又はデオドラント又は発汗抑制剤)、又はスキンケア製品(例えば着香石鹸、シャワー又はバスムース、オイル又はゲル、又は衛生製品);エアケア製品、例えばエアフレッシュナー又は"すぐ使用できる"粉末エアフレッシュナー;又はホームケア製品、例えばワイプ、皿用洗剤又は硬質表面洗剤であってよい。
【0035】
いくつかの前記消費者製品ベースは、本発明の組成物のアグレッシブな媒体を示してよく、その結果、適した外部刺激、例えば酵素、光、熱又はpHの変化に対して、例えばカプセル化によって、又は本発明の成分の放出に適した他の化学物質との化学的結合によって後者を成熟前の分解から保護する必要があってよい。
【0036】
種々の前記物品又は組成物中に組込まれる本発明によるフローラルな組成物の割合は、広い範囲の値で変動する。これらの値は、着香されるべき物品の性質に、並びに所望の感覚受容性効果及び本発明による化合物が、付香共成分、溶媒又は先行技術において通常使用される添加剤と混合される場合に、与えられたベースにおける共成分の性質に依存する。
【0037】
例えば、付香組成物の場合において、典型的に濃度は、前記のように、組込まれてよい組成物の質量に対して、本発明のフローラルな組成物の0.1質量%〜5質量%、又はそれ以上の範囲である。より低い濃度、例えば0.01質量%〜1質量%の範囲は、これらのフローラルな組成物が着香された物品中に組込まれる場合に使用されてよく、その際パーセンテージは物品の質量に対する。
【0038】
実施例
本発明は、本発明の好ましい実施態様を説明する次の実施例によってさらに詳細に記載される。
【0039】
実施例1
本発明による付香組成物の製造
本発明による付香組成物(CP−IN−1)を、次の成分を混合することによって製造した:
【表2】
1) テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノール;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
2) 3−(3,3−ジメチル−5−インダニル)プロパナールと3−(1,1−ジメチル−5−インダニル)プロパナールとの混合物;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) (2,5−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル)メタノール;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
【0040】
比較付香組成物(CP−OUT−1)を、次の成分を混合することによって製造した:
【表3】
1) テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノール;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
2) 3−(3,3−ジメチル−5−インダニル)プロパナールと3−(1,1−ジメチル−5−インダニル)プロパナールとの混合物;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
【0041】
注記したように、CP−OUT−1は、LILYFLORE(登録商標)を含まず、かつ先行技術の調合物の類似物である。
【0042】
比較付香組成物(CP−OUT−2)を、(CP−IN−1)と同一の成分を混合することによって、しかしHIVERNAL(登録商標)ジプロピレングリコールを置き換えることによって製造した。
【0043】
比較付香組成物(CP−OUT−3)を、次の成分を混合することによって製造した:
【表4】
【0044】
注記したように、CP−OUT−3は、二次香料成分を含まない。
【0045】
実施例2
付香組成物の製造
織物柔軟剤(CFS)のための付香組成物を、次の成分を混合することによって製造した:
【表5-1】
【表5-2】
1) 16−ヘキサデカノリド;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
2) ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチル−ナフト[2,1−b]フラン;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) 4−シクロヘキシル−2−メチル−2−ブタノール;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
4) ペンタデカノリド;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
5) ペンタデカノリド;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
6) 1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;出所:International Flavors & Fragrances、USA
7) 3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
8) メチルジヒドロジャスモネート;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
9) 1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
10) 3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
【0046】
LILIAL(登録商標) (3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール)の100質量部をCFS組成物に添加してCFS−LILを得た。
【0047】
実施例1によるCP−IN−1の100質量部を他のCFS組成物に添加して、CFS−(CP−IN−1)を得た。
【0048】
比較例1によるCP−OUT−1の100質量部を他のCFS組成物に添加して、CFS−(CP−OUT−1)を得た。
【0049】
比較例1によるCP−OUT−2の100質量部を他のCFS組成物に添加して、CFS−(CP−OUT−2)を得た。
【0050】
比較例1によるCP−OUT−3の100質量部を他のCFS組成物に添加して、CFS−(CP−OUT−3)を得た。
【0051】
そして、それぞれの新規の組成物を、標準の綿薄織物の洗浄においてその薄織物をCFS−LIL組成物、CFS−(CP−IN−1)組成物、CFS−(CP−OUT−1)組成物、CFS−(CP−OUT−2)組成物及びCFS−(CP−OUT−3)組成物の1つで着香するために使用される、標準の着香していない織物柔軟剤ベース中に導入した。そして、これらの薄織物を、におい強度(性能)及び心地よさの双方について調香師の一団によって異なる時間で嗅覚で評価した。
【0052】
洗浄直後の湿った薄織物の評価について、CFS−LILを、最も強いにおい強度と判断し、一方でCFS−(CP−IN−1)及びCFS−(CP−OUT−1)は、心地よさに関して同等に好ましい;CFS−(CP−OUT−2)を弱く少ない上品さと判断し、かつCFS−(CP−OUT−3)を、CFS−(CP−IN−1)よりも少ない心地よさであると判断した。
【0053】
空気乾燥の24時間後に、最初に3つの試料(最良のもの)を、におい強度に関して再度評価し、CFS−(CP−IN−1)は、心地よさに関してより高い評価であった。
【0054】
空気乾燥の72時間後に、CFS−LIL及びCFS−(CP−IN−1)の試料を、強度(性能)及び心地よさに関して非常に近いと満場一致で評価し、一方でCFS−(CP−OUT−1)は、特に強度(性能)に関して明らかに劣っていた。これは、組成物中でLILIFLORE(登録商標)の含有に基づく期待された利点を証明し、現在好ましくないLILIAL(登録商標)を含む組成物と同様の特性を提供する。
【0055】
実施例3
付香組成物の製造
ファイン芳香性香水(FFP)を、次の成分を混合することによって製造した:
【表6】
1) (−)−(8R)−8,12−エポキシ−13,14,15,16−テトラノルラブダン;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
2) テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノール;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
3) ペンタデカノリド;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
4) メチル シス−ジヒドロジャスモネート;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
5) 1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;出所:International Flavors & Fragrances、USA
6) 3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
7) (+)−メチル シス−ジヒドロジャスモネート;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
8) 5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテニル)−3−メチルペンタン−2−オール;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
9) 化合させた香料ベース;出所:Firmenich SA、Geneva、Switzerland
【0056】
LILIAL(登録商標) (3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール)の100質量部をFFP組成物に添加してFFP−LILを得た。
【0057】
CP−IN−1組成物の100質量部を他のFFP組成物に添加して、FFP−(CP−IN−1)を得た。
【0058】
CP−OUT−1組成物の100質量部を他のFFP組成物に添加して、FFP−(CP−OUT−1)を得た。
【0059】
FFP−LIL、FFP−(CP−IN−1)及びFFP−(CP−OUT−1)のそれぞれを、におい強度(性能)及び心地よさの双方について調香師の一団によって異なる時間で嗅覚で評価した。
【0060】
混合の30分後に、FFP−(CP−IN−1)は、心地よさに関して好ましかった。
【0061】
吸取紙上で24時間後に、FFP−LILを、FFP−(CP−IN−1)及びFFP−(CP−OUT−1)よりもわずかに強いと評価した一方で、FFP−(CP−IN−1)を、わずかにより心地よいと評価した。
【0062】
さらに吸取紙上で72時間後に、FFP−LIL及びFFP−(CP−IN−1)の試料を、強度(性能)及び心地よさに関して非常に近いと満場一致で評価し、一方でFFP−(CP−OUT−1)は、特に強度(性能)に関して明らかに劣っていた。これは、組成物中でLILIFLORE(登録商標)の含有に基づいて期待されていない利点をさらに証明する。