【課題を解決するための手段】
【0018】
  本発明は、ポリアミド系樹脂;およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとフィルムの全体重量に対して15〜50重量%のポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体を含む基材フィルム層と、前記基材フィルム層の少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層とを含み、前記基材フィルム層の最大厚さと平均厚さとの差および最小厚さと平均厚さとの差がそれぞれ平均厚さの6%以下である、タイヤインナーライナー用フィルムを提供する。
【0019】
  また、本発明は、ポリアミド系樹脂;およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体の混合物を、50〜100℃の温度に維持される原料供給部を介して押出ダイに供給する段階と、前記供給された混合物を、230〜300℃で溶融し押出する段階と、前記押出物を、5〜40℃の温度に維持される冷却部で固化させて基材フィルムを形成する段階と、前記基材フィルムの少なくとも一表面上に、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階とを含み、前記基材フィルムは、前記ポリエーテル系セグメント15〜50重量%を含む、前記タイヤインナーライナー用フィルムの製造方法を提供する。
【0020】
  以下、発明の具体的な実施形態にかかるタイヤインナーライナー用フィルムおよびタイヤインナーライナー用フィルムの製造方法に関してより詳細に説明する。
【0021】
  発明の一実施形態によれば、ポリアミド系樹脂;およびポリアミド(poly−amide)系セグメントとフィルムの全体重量に対して15〜50重量%のポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体を含む基材フィルム層と、前記基材フィルム層の少なくとも一面に形成され、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層とを含み、前記基材フィルム層の最大厚さと平均厚さとの差および最小厚さと平均厚さとの差がそれぞれ平均厚さの6%以下である、タイヤインナーライナー用フィルムが提供できる。
【0022】
  本発明者らの研究の結果、前記ポリアミド系樹脂と、ポリエーテル(poly−ether)系セグメントを特定の含有量で含む前記共重合体とを用いて形成された基材フィルム層と、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層とを含むタイヤインナーライナー用フィルムは、薄い厚さでも優れた気密性を実現し、タイヤを軽量化し自動車の燃費を向上させることができ、高い耐久性または耐疲労性などの優れた機械的物性と共に、優れた成形性および成形安定性を有し、追加的な加硫工程を適用しないか接着層の厚さを大きく増加させなくても、タイヤに強固に結合できることが確認された。
【0023】
  特に、後述する製造方法によって得られる前記タイヤインナーライナー用フィルムは、全体領域にわたって均一な厚さを有するだけでなく、周囲の部分に比べて相対的に厚いか薄い一部領域が実質的に存在せず、肉眼上もフィルムから一定のバンド(band)や島(island)形態の部分が観察されない。これにより、前記タイヤインナーライナー用フィルムは、伸張または変形させた時、フィルムの全領域にわたって均一に成形可能であり、相対的に厚いか薄い領域が存在することによって発生し得るフィルムの不良や損傷を防止することができ、インナーライナーの全領域にわたって均一な厚さおよび物性を有するため、自動車の運行過程で加えられる繰り返し圧力および変形などに対して優れた走行耐久性を確保することができる。
【0024】
  具体的には、前記基材フィルム層の最大厚さと平均厚さとの差および最小厚さと平均厚さとの差がそれぞれ平均厚さの6%以下、好ましくは3%以下であるとよい。つまり、後述する製造方法によって提供される基材フィルム層は、全体の平均厚さに比べて過度に厚いか薄い部分が存在せず、フィルム全体が均一な厚さを有する。
【0025】
  また、前記基材フィルム層上の任意の点における厚さと、前記任意の点から1cm以内に位置した点における厚さとの偏差が2%以内、好ましくは1%以内であるとよい。つまり、前記基材フィルム層は、全体領域にわたって非常に均一な厚さを有するだけでなく、フィルム内において周囲の部分に比べて相対的に厚いか薄い一部領域が実質的に存在しない特徴を有する。
【0026】
  一方、前記タイヤインナーライナー用フィルムは、均一な厚さ特性だけでなく、優れた気密性、高い空気圧維持性能および優れた成形性などの物性を有する。このようなタイヤインナーライナー用フィルムの優れた物性は、ポリアミド系樹脂と共に、前記ポリエーテル系セグメントを特定の含有量で含む共重合体(ポリアミド系セグメント−ポリエーテル系セグメントを含む)を含む基材フィルム層を適用することによると見られる。
【0027】
  具体的には、前記基材フィルム層は、エラストマー的性質を付与するポリエーテル系セグメントを特定の含有量で含む共重合体および前記ポリアミド系樹脂と共に用いることで、優れた気密性と共に、相対的に低いモジュラスを有することができる。前記基材フィルム層に含まれるポリアミド系樹脂は、固有の分子鎖特性によって優れた気密性、例えば、同じ厚さにおいて、タイヤに一般に使用されるブチルゴムなどに比べて10〜20倍程度の気密性を示し、他の樹脂に比べてさほど高くないモジュラスを示す。そして、前記共重合体に含まれるポリエーテル系セグメントは、ポリアミド系セグメントまたはポリアミド系樹脂の間に結合または分散した状態で存在し、前記基材フィルム層のモジュラスをより低下させることができ、前記基材フィルム層の剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化するのを防止することができる。
【0028】
  前記ポリアミド系樹脂は、概して優れた気密性を示すため、前記基材フィルム層が薄い厚さを有しながらも低い空気透過性を有することができる役割を果たす。また、このようなポリアミ系樹脂は、他の樹脂に比べて相対的に高くないモジュラスを示すため、前記特定含有量のポリエーテル系セグメントを含む共重合体と共に適用され、相対的に低いモジュラス特性を示すインナーライナー用フィルムを得ることができ、これにより、タイヤの成形性を向上させることができる。また、前記ポリアミド系樹脂は、十分な耐熱性および化学的安定性を有するため、タイヤの製造過程で適用される高温条件または添加剤などの化学物質への露出時、インナーライナーフィルムが変形または変性するのを防止することができる。
【0029】
  そして、前記ポリアミド系樹脂は、ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体と共に使用され、接着剤(例えば、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤)に対して相対的に高い反応性を示すことができる。これにより、前記インナーライナー用フィルムがカーカス部分に容易に接着可能であり、タイヤの製造過程または運行過程などで発生する熱または繰り返し変形による界面の破断を防止して、前記インナーライナー用フィルムが十分な耐疲労性を有することができるようにする。
【0030】
  前記基材フィルム層に使用可能なポリアミド系樹脂としては、ポリアミド系樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、およびナイロン66/PPS共重合体;またはこれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、6−ナイロンのメトキシメチル化物、6−610−ナイロンのメトキシメチル化物、または612−ナイロンのメトキシメチル化物があり、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、またはナイロン612を使用することが好ましい。
【0031】
  このようなポリアミド系樹脂は、3.0〜3.5、より好ましくは3.2〜3.4の相対粘度(硫酸96%溶液)を有することができる。前記相対粘度が2.5未満の場合には、靭性(toughness)の低下によって十分な伸び率が確保されず、タイヤの製造時や自動車の運行時に破損が発生することがあり、4.0超過の場合には、製造される基材フィルム層のモジュラスまたは粘度が不要に高くなり得、製造工程の効率および経済性などを低下させることがあり、タイヤインナーライナーが適切な成形性または弾性を有しにくいことがある。
【0032】
  前記ポリアミド系樹脂の相対粘度は、常温で硫酸96%溶液を用いて測定した相対粘度を意味する。具体的には、一定のポリアミド系樹脂の試験片(例えば、0.025gの試験片)を異なる濃度で硫酸96%溶液に溶かして2以上の測定用溶液を製造した後(例えば、ポリアミド系樹脂試験片を0.25g/dL、0.10g/dL、0.05g/dLの濃度となるように96%硫酸に溶かして3つの測定用溶液製作)、25℃で、粘度管を用いて、前記測定用溶液の相対粘度(例えば、硫酸96%溶液の粘度管通過時間に対する前記測定用溶液の平均通過時間の比率)を求めることができる。
【0033】
  前記基材フィルムの製造過程において、前記ポリアミド系樹脂は、上述した共重合体と混合して溶融することによって基材フィルムに含まれるとよく、また、前記ポリアミド系樹脂の前駆体である単量体またはオリゴマーなどを反応開始剤や触媒などと共に、上述した共重合体と混合して反応させることによって前記基材フィルムに含まれてもよい。
【0034】
  一方、上述のように、ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は、ポリアミド系樹脂の間に結合または分散した状態で存在し、前記基材フィルム層のモジュラスをより低下させることができ、前記基材フィルム層の剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化するのを防止することができる。このような共重合体が前記基材フィルム層に含まれることにより、前記タイヤインナーライナー用フィルムは、優れた耐久性、耐熱性および耐疲労性などの機械的物性を確保しながらも、高い弾性または弾性回復率を実現することができる。これにより、前記インナーライナー用フィルムが優れた成形性を示すことができ、これを適用したタイヤは、繰り返し変形および高い熱が発生し続ける自動車走行過程においても、物理的に破損したり、自体の物性または性能が低下しなくて済む。
【0035】
  一方、前記共重合体は、ポリアミド系セグメント;およびフィルムの全体重量に対して15〜50重量%、好ましくは20〜45%のポリエーテル系セグメントを含むことができる。前記ポリエーテル系セグメントの含有量がフィルム全体の
15重量%未満であれば、前記基材フィルム層またはタイヤインナーライナー用フィルムのモジュラスが高くなってタイヤの成形性が低下したり、繰り返し変形による物性の低下が大きくなり得る。前記ポリエーテル系セグメントの含有量がフィルム全体の50重量%を超えると、前記タイヤインナーライナー用フィルムの気密性が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナーがカーカス層に容易に接着しにくいことがあり、基材フィルム層の弾性が増加して均一なフィルムを製造するのが容易でないことがある。
 
【0036】
  前記ポリエーテル系セグメントは、前記ポリアミド系セグメントと結合されたり、前記ポリアミド系樹脂の間に分散した状態で存在し得るが、タイヤの製造過程または自動車の運行過程で基材フィルム層内に大きな結晶が成長するのを抑制したり、前記基材フィルム層が簡単に破れるのを防止することができる。
【0037】
  また、このようなポリエーテル系セグメントは、前記タイヤインナーライナー用フィルムのモジュラスをより低下させることができ、これにより、タイヤの成形時にさほど大きくない力が加えられても、タイヤの形態に合わせて伸張または変形できるようにしてタイヤが容易に成形できるようにする。そして、前記ポリエーテル系セグメントは、低温でフィルムの剛直度が上昇するのを抑制することができ、高温で結晶化するのを防止することができ、繰り返し変形などによるインナーライナーフィルムの損傷または破れを防止することができ、インナーライナーの変形に対する回復力を向上させて永久変形によるフィルムのシワの発生を抑制し、タイヤまたはインナーライナーの耐久性を向上させることができる。
【0038】
  前記ポリアミド系セグメントは、前記共重合体が一定水準以上の機械的物性を有することができるようにしながらも、モジュラス特性が大きく増加しないようにする役割を果たすことができる。これと共に、前記ポリアミド系セグメントが適用されることにより、基材フィルム層が薄い厚さを有しながらも低い空気透過性を有することができ、十分な耐熱性および化学的安定性を確保することができる。
【0039】
  前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は、ポリアミド(poly−amide)系単量体またはオリゴマーとポリエーテル(poly−ether)系単量体またはオリゴマーとを反応させて得られる共重合体であるとよく、ポリアミド系セグメントを含む重合体とポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体とが重合反応または架橋反応をして得られる共重合体であるとよい。
【0040】
  前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は、前記セグメントがブロック(block)をなして結合されたブロック共重合体であるとよく、前記セグメントが不規則に結合されたランダム共重合体であるとよい。また、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は、ポリアミド系セグメントを含む重合体とポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体との間の重合反応物を含む共重合体であるとよく、ポリアミド系セグメントを含む重合体とポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体との間の架橋反応物を含む架橋共重合体であってもよい。
【0041】
  一方、前記基材フィルム層において、前記ポリアミド系樹脂と、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は、均一に混合されたり、重合反応または架橋反応により一部分または全体領域で結合された状態であるとよい。
【0042】
  前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体が、ポリアミド系セグメントを含む重合体とポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体との間の重合反応物または架橋反応物を含む場合、前記共重合体は、前記重合反応または架橋反応に加わっていないポリアミド系セグメントを含む重合体またはポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体を含むこともできる。これにより、前記基材フィルム上には、前記重合反応物または架橋反応物だけでなく、ポリアミド系セグメントを含む重合体またはポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体が他の成分と混合または結合された状態で存在し得る。この場合にも、前記共重合体のポリエーテル系セグメントの含有量およびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体の含有量の総和は、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%の範囲でなければ、全体インナーライナー用フィルムの物性が最適化されない。
【0043】
  前記共重合体のポリアミド系セグメントは、下記の化学式1または化学式2の繰り返し単位を含むことができる。
【0044】
【化1】
【0045】
  前記化学式1において、R
1は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【0046】
【化2】
【0047】
  前記化学式2において、R
2は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、R
3は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基、または炭素数7〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアリールアルキレン基である。
【0048】
  前記ポリアミド系セグメントは、ポリアミド系繰り返し単位およびポリエーテル系繰り返し単位を含む共重合体を用いて基材フィルム層を製造する場合には、前記ポリアミド系繰り返し単位であるとよい。また、前記ポリアミド系セグメントは、前記基材フィルムの製造過程で使用されるポリアミド系セグメントを含む重合体、またはポリアミド(poly−amide)系単量体またはオリゴマー由来のものであってもよい。
【0049】
  また、前記共重合体のポリエーテル系セグメントは、下記の化学式3の繰り返し単位を含むことができる。
【0050】
【化3】
【0051】
  前記化学式3において、R
5は、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン基であり、nは、1〜100の整数であり、R
6およびR
7は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ直接結合、−O−、−NH−、−COO−または−CONH−である。
【0052】
  前記ポリエーテル系セグメントは、ポリアミド系繰り返し単位およびポリエーテル系繰り返し単位を含む共重合体を用いて基材フィルム層を製造する場合には、前記ポリエーテル系繰り返し単位であるとよい。また、前記ポリエーテル系セグメントは、前記基材フィルムの製造過程で使用されるポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体、またはポリエーテル(poly−ether)系単量体またはオリゴマー由来のものであってもよい。
【0053】
  一方、前記ポリアミド系セグメントとポリエーテル系セグメントとを含む共重合体の絶対重量平均分子量は、50,000〜300,000、好ましくは110,000〜250,000であるとよい。前記共重合体の重量平均分子量が50,000未満であれば、製造される基材フィルム層がインナーライナー用フィルムへの使用に十分な機械的物性を確保できないことがあり、前記共重合体の重量平均分子量が300,000超過であれば、高温に加熱する時、基材フィルム層のモジュラスまたは結晶化度が過度に増加し、インナーライナー用フィルムとして有するべき弾性または弾性回復率を確保しにくいことがある。
【0054】
  高分子物質が含まれている溶液では、高分子物質の鎖によって光散乱(Light  scattering)が生じるが、このような光散乱現象を利用すると、高分子物質の絶対重量平均分子量を測定することができる。特に、Wyatt社のMALS(Multi  Angle  Light  Scattering)システムを用いると、測定結果から現れるパラメータ(parameter)をRayleigh−Gans−Debye方程式(equation)に適用して高分子物質の絶対重量平均分子量を得ることができる。
[一般式1]Rayleigh−Gans−Debye  equation
  
【0055】
  前記一般式1において、Mはモル質量(molar  mass)で、多分散試料の場合、絶対重量平均分子量(Mw)であり、R
θは過剰レイリー比(the  excess  Rayleigh  ratio)であり、K
*=4π
2n
02(dn/dc)
2λ
0−4N
A−1であり、Cは溶液中の高分子濃度(g/ml)であり、A
2は第2ビリアル係数(the  second  virial  coefficient)である。そして、前記K
*において、前記n
0は溶媒の屈折率、N
Aはアボガドロ数(Avogadro’s  number)であり、λ
0は真空下での光源の波長であり、P(θ)=R
θ/R
0であり、R
0は入射光(Incident  light)である。
【0056】
  一方、前記ポリアミド系セグメントは、前記使用されるポリアミド樹脂と類似の物性、例えば、相対粘度を有することが好ましい。これにより、前記ポリアミド系セグメントは、3.0〜3.5の相対粘度(硫酸96%溶液)を有することができる。前記ポリアミド系セグメントが前記ポリアミド樹脂と類似する範囲の相対粘度を有することにより、前記基材フィルムの製造時に両成分が相分離されることなく均一に混合可能であり、製造された基材フィルム層が全体的に均一な物性を有することができ、高い気密性および空気圧維持能力と、優れた成形性、高い耐久性および耐疲労性などの物性を有することができる。
【0057】
  そして、前記ポリエーテル系セグメント単位は、500〜10,000、好ましくは1,000〜3,000の絶対重量平均分子量を有する単量体、オリゴマーまたは重合体に由来することができる。前記ポリエーテル系セグメント単位の前駆体の重量平均分子量が500未満の場合には、前記タイヤインナーライナー用フィルム内で大きな結晶が成長するのを抑制したり、モジュラスを低下させるなどの作用を適切に果たせないことがある。また、前記ポリエーテル系セグメント単位の前駆体の重量平均分子量が10,000超過の場合には、インナーライナーの気密性が低下することがある。
【0058】
  一方、前記共重合体は、前記ポリエーテル系セグメントがフィルムの全体重量に対して15〜50重量%の範囲内で、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを、6:4〜3:7、好ましくは5:5〜4:6の重量比で含むことができる。
【0059】
  上述のように、前記ポリエーテル系セグメントの含有量が小さすぎると、基材フィルム層またはタイヤインナーライナー用フィルムのモジュラスが高くなってタイヤの成形性が低下したり、繰り返し変形による物性の低下が大きくなり得る。また、前記ポリエーテル系セグメントの含有量が大きすぎると、前記タイヤインナーライナー用フィルムの気密性が低下することがあり、接着剤に対する反応性が低下してインナーライナーがカーカス層に容易に接着しにくいことがあり、基材フィルム層の弾性が増加して均一なフィルムを製造するのが容易でないことがある。
【0060】
  また、前記基材フィルム層において、ポリアミド系樹脂および共重合体は、6:4〜3:7、好ましくは5:5〜4:6の重量比で含まれるとよい。前記ポリアミド系樹脂の含有量が小さすぎると、前記基材フィルム層の密度や気密性が低下することがある。また、前記ポリアミド系樹脂の含有量が大きすぎると、前記基材フィルム層のモジュラスが過度に高くなったり、タイヤの成形性が低下することがあり、タイヤの製造過程または自動車の運行過程で現れる高温環境でポリアミド系樹脂が結晶化することがあり、繰り返し変形によってクラックが発生することがある。
【0061】
  一方、前記基材フィルム層は、表面に1.3〜2.5Equ/E6g、好ましくは1.5〜2.4Equ/E6gのアミン基を含むことができるが、これにより、前記基材フィルム層は、高分子樹脂フィルムに使用されることが知られている接着剤などに対して高い反応性を有することができ、薄くて軽量化された接着層によってもタイヤの内部またはカーカス層に強固かつ均一に結合できる。特に、前記基材フィルム層をより均一かつ安定的にカーカス層に接着させるために、上述した特定組成のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を使用することが好ましい。
【0062】
  このように、前記タイヤインナーライナー用フィルムは、上述した基材フィルムの特性によって接着剤または接着層に対して向上した接着力を示すことができ、追加的な接着層またはゴム層を積層する必要がなく、薄くて軽量化された接着層によってもカーカス層に強固かつ均一に固定できる。
【0063】
  一方、前記基材フィルム層は、30〜300μm、好ましくは40〜250μm、より好ましくは40〜200μmの厚さを有することができる。これにより、発明の一実施形態のタイヤインナーライナー用フィルムは、従来知られているものに比べて薄い厚さを有しながらも、低い空気透過性、例えば、200cc/(m
2・24hr・atm)以下の酸素透過度を有することができる。
【0064】
  一方、前記基材フィルム層は、未延伸フィルムであるとよい。前記基材フィルム層が未延伸フィルムの形態の場合には、低いモジュラスおよび高い変形率を有し、高い膨張が発生するタイヤ成形工程に適切に適用することができる。また、未延伸フィルムでは結晶化現象がほとんど発生しないため、繰り返される変形によってもクラックなどのような損傷を防止することができる。また、未延伸フィルムは、特定方向への配向および物性の偏差が大きくないため、均一な物性を有するインナーライナーを得ることができる。
【0065】
  後述するタイヤインナーライナー用フィルムの製造方法に示されているように、前記基材フィルム層の配向を最大限に抑制する方法、例えば、溶融押出温度の最適化による粘度調整、口金ダイの規格変更または巻取速度の調節などの方法により前記基材フィルムを未配向または未延伸フィルムとして製造することができる。
【0066】
  前記基材フィルム層を未延伸フィルムとする場合、タイヤ製造工程でインナーライナー用フィルムを円筒状またはシート状に容易に製造することができる。特に、前記基材フィルム層を未延伸シート状フィルムとして適用する場合、タイヤのサイズごとにフィルム製造設備を別途に構築する必要がなく、移送および保管過程でフィルムに加えられる衝撃およびシワなどを最小化することができて好ましい。また、前記基材フィルムをシート状に製造する場合、後述する接着層を追加する工程をより容易に行うことができ、成形ドラムとの規格差によって製造工程中に発生する損傷または歪みなどを防止することができる。
【0067】
  一方、前記基材フィルムは、耐熱酸化防止剤、熱安定剤、接着増進剤、またはこれらの混合物などの添加剤をさらに含むことができる。前記耐熱酸化防止剤の具体例としては、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−(3,5−ジ−(t−ブチル)−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド(N,N’−Hexamethylene−bis−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxy−hydrocinnamamide、例えば、rganox1098などの市販製品)、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−(t−ブチル)−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン(tetrakis[methylene(3,5−di−t−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)]methane、例えば、Irganox1010などの市販製品)、または4,4’−ジクミルジフェニルアミン(4,4’−di−cumyl−di−phenyl−amine、例えば、Naugard445)などがある。前記熱安定剤の具体例としては、安息香酸(Bezoic  acid)、トリアセトンジアミン(triacetonediamine)、またはN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,3−ベンゼンジカルボキサミド(N,N’−Bis(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidyl)−1,3−benzenedicarboxamide)などがある。ただし、前記添加剤は、前記例に限定されるものではなく、タイヤインナーライナー用フィルムに使用可能と知られているものは特別な制限なく使用することができる。
【0068】
  一方、前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、前記基材フィルム層およびタイヤのカーカス層に対しても優れた接着力および接着維持性能を有し、これにより、タイヤの製造過程または運行過程などで発生する熱または繰り返し変形によって発生するインナーライナーフィルムとカーカス層との間の界面の破断を防止し、前記インナーライナー用フィルムが十分な耐疲労性を有することができるようにする。
【0069】
  上述した接着層の主な特性は、特定の組成を有する特定のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含むことによると見られる。従来のタイヤインナーライナー用接着剤としては、ゴムタイプのタイガムなどが使用され、これにより、追加的な加硫工程が必要であった。これに対し、前記接着層は、特定組成のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含むことで、前記基材フィルムに対して高い反応性および接着力を有するだけでなく、厚さをさほど増加させなくても、高温加熱条件で圧着して前記基材フィルムとタイヤのカーカス層とを強固に結合させることができる。これにより、タイヤの軽量化および自動車の燃費向上を可能にし、タイヤの製造過程または自動車の運行過程での繰り返される変形などでもカーカス層とインナーライナー層または前記基材フィルムと接着層とが分離される現象を防止することができる。そして、前記接着層は、タイヤの製造過程や自動車の運行過程で加えられる物理/化学的変形に対しても高い耐疲労特性を示すことができるため、高温条件の製造過程や長期間機械的変形が加えられる自動車の運行過程中にも接着力または他の物性の低下を最小化することができる。
【0070】
  それだけでなく、前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、ラテックスとゴムとの間の架橋結合が可能で接着性能を発現し、物理的にラテックス重合物であるため、硬化度が低く、ゴムのように柔軟な特性を有することができ、レゾルシノール−ホルマリン重合物のメチロール末端基と基材フィルムとの間の化学結合が可能である。これにより、基材フィルムに前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を適用すると、十分な接着性能と共に、高い成形性および弾性を実現することができる。
【0071】
  前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、好ましくは10〜20重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0072】
  前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとを、1:0.3〜1:3.0、好ましくは1:0.5〜1:2.5のモル比で混合した後、縮合反応して得られたものであるとよい。また、前記レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物は、優れた接着力のための化学反応の面で、全体接着層の総量に対して2重量%以上で含まれるとよく、適正な耐疲労特性を確保するために、32重量%以下で含まれるとよい。
【0073】
  前記ラテックスは、天然ゴムラテックス、スチレン/ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル/ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、およびスチレン/ブタジエン/ビニルピリジンゴムラテックスからなる群より選択された1種または2種以上の混合物になるとよい。前記ラテックスは、素材の柔軟性とゴムとの効果的な架橋反応のために、全体接着層の総量に対して68重量%以上で含まれるとよく、基材フィルムとの化学反応と接着層の剛性のために、98重量%以下で含まれる。
【0074】
  また、前記接着層は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物およびラテックスと共に、表面張力調節剤、耐熱剤、消泡剤、およびフィラーなどの添加剤1種以上を追加的に含むことができる。この時、前記添加剤のうち、表面張力調節剤は、接着層の均一な塗布のために適用するが、過剰投入時、接着力低下の問題を発生させ得るため、全体接着層の総量に対して2重量%以下または0.0001〜2重量%、好ましくは1.0重量%以下または0.0001〜0.5重量%で含まれるとよい。この時、前記表面張力調節剤は、スルホン酸塩陰イオン性界面活性剤、硫酸エステル塩陰イオン性界面活性剤、カルボン酸塩陰イオン性界面活性剤、リン酸エステル塩陰イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびポリシロキサン系界面活性剤からなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0075】
  前記接着層は、0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜7μm、さらに好ましくは0.3〜5μmの厚さを有することができ、タイヤインナーライナー用フィルムの一表面または両表面上に形成されるとよい。前記接着層の厚さは、薄すぎると、タイヤの膨張時、接着層自体がより薄くなり得、カーカス層および基材フィルムの間の架橋接着力が低下することがあり、接着層の一部に応力が集中して疲労特性が低下することがある。また、前記接着層が厚すぎると、接着層での界面分離が生じて疲労特性が低下することがある。そして、タイヤのカーカス層にインナーライナーフィルムを接着させるために、基材フィルムの一面に接着層を形成することが一般的であるが、多層のインナーライナーフィルムを適用する場合、あるいはインナーライナーフィルムがビード部を囲むなどのタイヤ成形方法および構造設計によって両面にゴムと接着が必要な場合、基材フィルムの両面に接着層を形成することが好ましい。
【0076】
  一方、前記基材フィルム層は、耐熱酸化防止剤、熱安定剤、接着増進剤、またはこれらの混合物などの添加剤をさらに含むことができる。前記耐熱酸化防止剤の具体例としては、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−(3,5−ジ−(t−ブチル)−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド(N,N’−Hexamethylene−bis−(3,5−di−tert−butyl−4−hydroxy−hydrocinnamamide、例えば、rganox1098などの市販製品)、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−(t−ブチル)−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン(tetrakis[methylene(3,5−di−t−butyl−4−hydroxyhydrocinnamate)]methane、例えば、Irganox1010などの市販製品)、または4,4’−ジクミルジフェニルアミン(4,4’−di−cumyl−di−phenyl−amine、例えば、Naugard445)などがある。前記熱安定剤の具体例としては、安息香酸(Bezoic  acid)、トリアセトンジアミン(triacetonediamine)、またはN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,3−ベンゼンジカルボキサミド(N,N’−Bis(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidyl)−1,3−benzenedicarboxamide)などがある。ただし、前記添加剤は、前記例に限定されるものではなく、タイヤインナーライナー用フィルムに使用可能と知られているものは特別な制限なく使用することができる。
【0077】
  一方、前記タイヤインナーライナー用フィルムを常温で100%伸張時に現れる最大荷重(stress)は、10〜30Mpaであるとよい。このような伸張特性を有するタイヤインナーライナー用フィルムは、タイヤの製造過程で優れた成形性を有するだけでなく、タイヤ成形中の苛酷な変形でも安定的に物性を維持することができ、タイヤの成形時にさほど大きくない力が加えられても、タイヤの形態に合わせて伸張または変形することができる。また、前記タイヤインナーライナー用フィルムが適用されたタイヤは、長期間の運行によってもモジュラスまたは剛直度が大きく変化しなくて済み、運行中に発生し得るタイヤの内部構造のクラックも最小化することができる。
【0078】
  また、前記タイヤインナーライナー用フィルムは、長期間使用後にも適正な空気圧を維持することができるが、例えば、米国材料試験協会規格ASTM  F1112−06の方法により、21℃および101.3kPaの条件で前記タイヤインナーライナー用フィルムを適用したタイヤに対して、90日間空気圧維持率(IPR、Internal  Pressure  Retention)を測定した時、下記の一般式2に示しているような、空気圧維持率が95%以上、つまり、空気圧減少率が5%以下になるとよい。これにより、前記タイヤインナーライナー用フィルムを用いると、低い空気圧によって誘発される転覆事故および燃費の低下を防止することができる。
[一般式2]
【0079】
  一方、発明の他の実施形態によれば、3%以下の溶融粘度偏差を有するポリアミド系樹脂と、ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含み、3%以下の溶融粘度偏差を有する共重合体との混合物を、50〜100℃の温度に維持される原料供給部を介して押出ダイに供給する段階と、前記供給された混合物を、230〜300℃で溶融し押出して基材フィルム層を形成する段階と、前記基材フィルム層の少なくとも一表面上に、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階とを含み、前記共重合体のポリエーテル系セグメントは、前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%で含まれている、前記タイヤインナーライナー用フィルムの製造方法が提供できる。
【0080】
  本発明者らの研究の結果、前記基材フィルムの製造に使用される原料であるポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントを含む共重合体と、ポリアミド系樹脂それぞれの溶融粘度偏差を3%以下に均一に調節し、これらの混合物を、50〜100℃の温度に維持される原料供給部を介して押出ダイに供給して溶融および押出すると、フィルムの全体領域にわたって均一な厚さを有するだけでなく、周囲の部分に比べて相対的に厚いか薄い一部領域が実質的に存在しない基材フィルム層が得られることが確認された。
【0081】
  具体的には、前記基材フィルム層の最大厚さと平均厚さとの差および最小厚さと平均厚さとの差がそれぞれ平均厚さの6%以下、好ましくは3%以下であるとよい。また、前記基材フィルム層上の任意の点における厚さと、前記任意の点から1cm以内に位置した点における厚さとの偏差が2%以内、好ましくは1%以内であるとよい。
【0082】
  このように、前記製造方法により提供されるタイヤインナーライナー用フィルムの基材フィルム層は、全体領域にわたって均一な厚さを有するだけでなく、フィルム内において周囲の部分に比べて相対的に厚いか薄い一部領域が実質的に存在しない特徴を有する。したがって、前記タイヤインナーライナー用フィルムは、タイヤの成形過程などでフィルムの全領域にわたって均一に伸張または変形可能であり、相対的に厚いか薄い領域が存在することによって発生し得るフィルムの不良や損傷を防止することができ、インナーライナーの全領域にわたって均一な厚さおよび物性を有するため、自動車の運行過程で加えられる繰り返し圧力および変形などに対して優れた走行耐久性を確保することができる。
【0083】
  そして、上述のように、前記ポリアミド系樹脂と、前記特定の共重合体(ポリエーテル系セグメントを前記基材フィルム層の全体重量に対して15〜50重量%で含む)とを用いて形成された基材フィルム層の少なくとも一表面上に、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成させて製造されるタイヤインナーライナー用フィルムは、薄い厚さでも優れた気密性を実現し、タイヤを軽量化し自動車の燃費を向上させることができ、高い耐久性または耐疲労性などの優れた機械的物性と共に、均一な厚さに起因する優れた成形性および成形安定性を有することができ、追加的な加硫工程を適用しないか接着層の厚さを大きく増加させなくても、タイヤに強固に結合できる。
【0084】
  上述のように、前記ポリアミド系セグメントおよびポリエーテル系セグメントを含む共重合体と前記ポリアミド系樹脂それぞれは、均一な溶融粘度を有することができ、具体的には3%以下の溶融粘度偏差を有することができる。
【0085】
  前記溶融粘度の偏差は、全体樹脂または共重合体の有する溶融粘度の平均値と最大値(または最小値)との差を意味する。つまり、前記共重合体またはポリアミド系樹脂が3%以下の溶融粘度偏差を有するとは、前記共重合体またはポリアミド系樹脂それぞれの有する溶融粘度の最大値が平均値の103%以下であり、溶融粘度の最小値が平均値の97%以上であるとの意味である。
【0086】
  前記共重合体およびポリアミド系樹脂それぞれの溶融粘度の測定の基準は大きく制限されるわけではなく、使用される共重合体およびポリアミド系樹脂の具体例または適用される工程条件によって変化可能であり、例えば、230〜300℃の温度および100/sec〜300/secのShear  rate下で測定されたものであるとよい。
【0087】
  また、前記共重合体およびポリアミド系樹脂それぞれの有する溶融粘度も大きく制限されるわけではないが、260℃の温度およびShear  rate200/secで測定された溶融粘度は、5000poise〜7000poiseであるとよい。ただし、上述のように、前記共重合体およびポリアミド系樹脂それぞれの有する溶融粘度偏差は、3%以下、好ましくは2%以下であるとよい。
【0088】
  前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂それぞれが均一な溶融粘度を有することにより、これらを混合する段階、前記一定の温度に維持される原料供給部に滞留する段階、または溶融および押出する段階などにおいて、前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂とがより均一に混合可能であり、前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂それぞれがまたは互いに固まって大きさが大きくなる現象を防止することができ、これにより、より均一な厚さを有する基材フィルム層が形成できる。
【0089】
  前記製造方法で使用可能な前記共重合体および前記ポリアミド系樹脂の大きさは大きく制限されるわけではなく、例えば、それぞれの最大直径が2mm〜3mmであるとよい。前記共重合体と前記ポリアミド系樹脂とを混合したり押出段階に供給する時には、均一な大きさを有したり、原料チップが互いに固まらないように管理することが好ましい。
【0090】
  前記ポリアミド系樹脂と、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体に関する具体的な内容は、上述の通りである。
【0091】
  前記ポリアミド系樹脂は、上述した共重合体と混合またはコンパウンディングした後に溶融することによって基材フィルムに含まれるとよく、また、前記ポリアミド系樹脂の前駆体である単量体またはオリゴマーなどを反応開始剤や触媒などと共に、上述した共重合体と混合して反応させることによって前記基材フィルムに含まれてもよい。
【0092】
  また、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントとポリエーテル(poly−ether)系セグメントとを含む共重合体は、共重合体自体を前記ポリアミド系樹脂と混合またはコンパウンディングした後に溶融することによって基材フィルムに含まれるとよい。
【0093】
  さらに、ポリアミド系セグメントを含む重合体とポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体とを混合またはコンパウンディングし、重合反応または架橋反応を進行させた後に、前記重合反応または架橋反応の結果物を前記ポリアミド系樹脂と混合および溶融することによって前記基材フィルム層を形成することができる。また、ポリアミド系セグメントを含む重合体とポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む重合体とを混合またはコンパウンディングし、このような混合物またはコンパウンディング物をポリアミド系樹脂と混合および溶融することによって前記2種の重合体が重合反応または架橋反応を生じさせてもよく、このような過程により前記基材フィルム層が形成できる。
【0094】
  前記基材フィルム層において、前記ポリアミド系樹脂と、前記ポリアミド(poly−amide)系セグメントおよびポリエーテル(poly−ether)系セグメントを含む共重合体は、均一に混合されたり、重合反応または架橋反応により一部分または全体領域で結合された状態であるとよい。
【0095】
  前記タイヤインナーライナー用フィルムの製造方法は、前記ポリアミド系樹脂と共重合体とを、6:4〜3:7の重量比で混合する段階をさらに含むことができる。前記ポリアミド系樹脂の含有量が小さすぎると、前記基材フィルム層の密度や気密性が低下することがある。また、前記ポリアミド系樹脂の含有量が大きすぎると、前記基材フィルム層のモジュラスが過度に高くなったり、タイヤの成形性が低下することがあり、タイヤの製造過程または自動車の運行過程で現れる高温環境でポリアミド系樹脂が結晶化することがあり、繰り返し変形によってクラックが発生することがある。
【0096】
  前記ポリアミド系樹脂と前記共重合体は、混合された後に原料供給部(feeder)に注入されるとよく、原料供給部に順次的または同時に注入されて混合されてもよい。
【0097】
  前記ポリアミド系樹脂と前記共重合体との混合物は、50〜100℃の温度に維持される原料供給部を介して押出ダイに供給できる。前記原料供給部が50〜100℃の温度に維持されることにより、前記ポリアミド系樹脂と前記共重合体との混合物が適正な粘度などの物性を有して押出ダイまたは押出機の他の部分に容易に移動することができ、前記混合物が固まるなどの理由から発生する原料供給(feeding)不良現象を防止することができ、後の溶融および押出工程でより均一な基材フィルムが形成できる。前記原料供給部の温度が50℃未満に維持されると、押出機に供給される原料が押出機スクリューの表面で急激に滑る現象、または原料が押出機に不均一に供給される現象が発生することがあり、100℃超過で維持されると、原料が押出機スクリューの表面で融着して供給不良が発生することがある。
【0098】
  前記原料供給部は、押出機から注入された原料を押出ダイまたはその他の他部分に供給する役割を果たす部分であって、その構成が大きく制限されるわけではなく、高分子樹脂の製造用押出機などに含まれる通常の原料供給部(feeder)であるとよい。
【0099】
  一方、前記原料供給部を介して押出ダイに供給された混合物を、230〜300℃で溶融および押出することによって基材フィルム層を形成することができる。
【0100】
  前記混合物を溶融する温度は、230〜300℃、好ましくは240〜280℃であるとよい。前記溶融温度は、ポリアミド系化合物の融点よりは高くなければならないが、高すぎると、炭化または分解が生じてフィルムの物性が阻害され得、前記ポリエーテル系樹脂間の結合が生じたり、繊維配列方向に配向が発生して未延伸フィルムを製造するのに不利であり得る。
【0101】
  前記押出ダイは、高分子樹脂の押出に使用可能と知られているものであれば特別な制限なく使用することができるが、前記基材フィルムの厚さをより均一にしたり、または基材フィルムに配向が発生しないようにするために、T型ダイを用いることが好ましい。
【0102】
  そして、前記製造される基材フィルム層の厚さをより均一に調節するために、前記押出ダイのダイギャップ(Die  Gap)を0.3〜1.5mmに調節することができる。前記基材フィルムを形成する段階において、前記ダイギャップ(Die  Gap)が小さすぎると、溶融押出工程のダイ剪断圧力が過度に高くなり、剪断応力が高くなって押出されるフィルムの均一な形態の形成が難しく、生産性が低下する問題があり得、前記ダイギャップが大きすぎると、溶融押出されるフィルムの延伸が過度に高くなって配向が発生することがあり、製造される基材フィルムの縦方向および横方向の間の物性の差が大きくなり得る。
【0103】
  また、前記タイヤインナーライナー用フィルムの製造方法では、上述した段階によって製造された基材フィルムの厚さを連続的に測定し、測定結果をフィードバックして不均一な厚さが現れる位置に相当する押出ダイの部分、例えば、T−Dieのリップギャップ(lip  gap)調節ボルトを調節して製造される基材フィルムの偏差を低減させることにより、より均一な厚さを有するフィルムを得ることができる。さらに、このようなフィルムの厚さ測定−フィードバック−押出ダイの調節を、自動化されたシステム、例えば、Auto  Dieシステムなどを用いることにより、自動化された工程段階を構成することができる。
【0104】
  一方、前記タイヤインナーライナー用フィルムの製造方法は、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を、5〜40℃、好ましくは10〜30℃の温度に維持される冷却部で固化させる段階をさらに含むことができる。
【0105】
  前記溶融および押出して形成された基材フィルム層が前記5〜40℃の温度に維持される冷却部で固化することにより、より均一な厚さを有するフィルム状に提供できる。溶融および押出して得られた基材フィルム層を前記適正温度に維持される冷却部に接地または密着させることによって実質的に延伸が生じないようにすることができ、前記基材フィルム層は未延伸フィルムとして提供できる。
【0106】
  前記冷却部の温度が5℃未満であれば、冷却部で水分凝結が生じて不均一な冷却現象が発生することがあり、これにより、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層が冷却部に密着しにくいことがある。また、前記冷却部の温度が40℃超過であれば、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を十分に冷却させにくいことがあり、前記冷却部の温度が高すぎると、前記基材フィルム層が冷却部の表面に粘着してしまうことがある。
【0107】
  具体的には、前記固化段階は、エアナイフ、エアノズル、静電気付与装置(Pinning装置)またはこれらの組み合わせを用いて、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を、5〜40℃の温度に維持される冷却ロールに均一に密着させる段階を含むことができる。
【0108】
  前記固化段階において、エアナイフ、エアノズル、静電気付与装置(Pinning装置)またはこれらの組み合わせを用いて、前記溶融および押出して形成された基材フィルム層を冷却ロールに密着させることにより、前記基材フィルム層が押出後に空気中で飛ばされたり、部分的に不均一に冷却するなどの現象を防止することができ、これにより、より均一な厚さを有するフィルムが形成可能であり、フィルム内において周囲の部分に比べて相対的に厚いか薄い一部領域が実質的に形成されなくて済む。
【0109】
  一方、前記特定のダイギャップ条件で押出された溶融物をダイの出口から水平距離で10〜150mm、好ましくは20〜120mmに設けられた冷却ロールに付着または接地させて延伸および配向を排除することができる。前記ダイの出口から冷却ロールまでの水平距離は、ダイの出口と排出された溶融物が冷却ロールに接地する地点との間の距離であるとよい。前記ダイの出口と溶融フィルムの冷却ロール付着地点との間の直線距離が小さすぎると、溶融押出樹脂の均一な流れを妨げてフィルムの冷却不均一を生じさせることがあり、前記距離が大きすぎると、フィルムの延伸効果の抑制を達成することができない。
【0110】
  前記基材フィルムを形成する段階では、上述した特定の段階および条件を除いては、高分子フィルムの製造に通常使用されるフィルムの押出加工条件、例えば、スクリュー直径、スクリュー回転速度、またはライン速度などを適切に選択して使用することができる。
【0111】
  前記基材フィルムを形成する段階では、押出機の吐出量とダイの幅またはギャップ、そして、冷却ロールの巻取速度などを組み合わせて吐出される溶融樹脂シートの厚さを調節したり、上述のように、選択的にAir  KnifeとAir  nozzle、静電気Edge  Pinnig装置を用いて均一に密着させて冷却させることにより、基材フィルムの厚さを30〜300μmに調節することができる。
【0112】
  一方、前記タイヤインナーライナー用フィルムの製造方法は、前記基材フィルム層の少なくとも一表面上に、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層を形成する段階を含むことができる。
【0113】
  前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着層は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記基材フィルム層の一表面に塗布することによって形成可能であり、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を含む接着フィルムを前記基材フィルム層の一面にラミネートさせることによっても形成可能である。好ましくは、このような接着層の形成段階は、レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤を前記形成された基材フィルムの一表面または両表面上にコーティングした後、乾燥する方法によって進行させることができる。前記形成される接着層は、0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μmの厚さを有することができる。前記レゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合物2〜32重量%、およびラテックス68〜98重量%、好ましくは80〜90重量%を含むことができる。
【0114】
  前記特定組成のレゾルシノール−ホルマリン−ラテックス(RFL)系接着剤に関するより具体的な内容は、上述の通りである。
【0115】
  前記接着剤の塗布には通常使用される塗布またはコーティング方法または装置を特別な制限なく使用することができるが、ナイフ(Knife)コーティング法、バー(Bar)コーティング法、グラビアコーティング法またはスプレー法、または浸漬法を使用することができる。ただし、ナイフ(Knife)コーティング法、グラビアコーティング法または(Bar)コーティング法を使用することが、接着剤の均一な塗布およびコーティングの面で好ましい。
【0116】
  前記基材フィルムの一表面または両表面上に前記接着層を形成した後には、乾燥および接着剤反応を同時に進行させることもできるが、接着剤の反応性の面を考慮して、乾燥段階を経た後、熱処理反応段階に分けて進行させることができ、接着層の厚さあるいは多段の接着剤を適用するために、前記接着層の形成および乾燥と反応段階を数回適用することができる。また、前記基材フィルムに接着剤を塗布した後、100〜150℃で、約30秒〜3分間の熱処理条件で固化および反応させる方法によって熱処理反応を行うことができる。
【0117】
  前記共重合体または混合物を形成する段階、または共重合体を溶融および押出する段階では、耐熱酸化防止剤または熱安定剤などの添加剤を追加的に添加することができる。前記添加剤に関する具体的な内容は、上述の通りである。