特許第5893183号(P5893183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893183
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】ルーバー
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20160310BHJP
   E06B 7/082 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   E04B1/76 300
   E06B7/082
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-34987(P2015-34987)
(22)【出願日】2015年2月25日
(62)【分割の表示】特願2009-225265(P2009-225265)の分割
【原出願日】2009年9月29日
(65)【公開番号】特開2015-135049(P2015-135049A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】生天目 泰
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 公一
(72)【発明者】
【氏名】若山 恵英
【審査官】 西村 直史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−208537(JP,A)
【文献】 特開2008−202280(JP,A)
【文献】 特開2006−28927(JP,A)
【文献】 実開昭62−80990(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00−7/34
E06B 9/28
E04B 1/76
E04H17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーバー本体と、
前記ルーバー本体の背面に並設された複数枚のフィンと、前記ルーバー本体の背面に沿って配管された給液管により構成された冷却部を備え、前記給液管は前記ルーバー本体の背面に立設された複数のフィンを貫通した状態で配管されていることを特徴とするルーバー。
【請求項2】
前記ルーバー本体に備えている給液部の内部を流れる冷却液と外気との温度差により、給液管の外周面に結露が生じて、日光の照射により熱せられたルーバー本体の熱により蒸発することを特徴とする請求項1記載のルーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、ルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】

ルーバーは、建物等の外面に設置されることで、通風や内部からの眺望を確保しつつ、遮光を行い、建物本体や建物の内部の温度上昇を抑制する。
【0003】

従来のルーバーは、日射によりルーバー自体の温度が上昇することに対しては対策を講じる思想はなかった。

このようにルーバー自体が日射により高温となると、ルーバー間を通過する空気も暖められるため、通風による建物等の冷却効果が低下する場合がある。
【0004】

そのため、特許文献1には、建物の外周部分に配置された散水ルーバーから水を糸水状に流下させることで散水カーテンを形成し、建物内に導入される通風を冷却する散水カーテン形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009−155874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】

ところが、特許文献1のルーバーは、通風の冷却が可能であるものの、日光の照射を調整することができず、また、糸水状に流下する散水カーテンにより内部からの眺望も妨げられるため、ルーバーに期待される機能を確保することができなかった。
【0007】

本発明は、遮光、通風、眺望を確保しつつ、ルーバーとその周囲の空気を冷却することを可能としたルーバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】

前記課題を解決するために、本発明のルーバーは、ルーバー本体と、前記ルーバー本体の背面側に配設された給液部材と、を備えており、日射により高温となった前記ルーバー本体の熱により、前記給液部材からしみ出た水が気化するように構成されていることを特徴としている。
【0009】

かかるルーバーによれば、高温になったルーバーの熱により給液部材からしみ出した水が気化するため、この気化熱によりルーバー間を通過する空気が冷却される。また、これに伴いルーバー本体の冷却も可能としている。
【0010】

このような前記給液部材が、テラコッタ等の水の浸透が可能な材質からなる管材や多数の孔が形成された管材であることが望ましい。
【0011】

また、第2の発明に係るルーバーは、ルーバー本体と、前記ルーバー本体の背面側に配設された給液部材と、を備えるルーバーであって、前記給液部材内には低温水または冷媒が通液されており、前記給液部材の外面に発生した結露が、日射により高温となった前記ルーバー本体の熱により気化するように構成されていることを特徴としている。
【0012】

かかるルーバーによれば、高温になったルーバーの熱により、給液部材の外面に発生した結露が気化するため、この気化熱によりルーバー間を通過する空気が冷却される。また、これに伴いルーバー本体の冷却も可能としている。
【0013】

また、前記ルーバーについて、前記ルーバー本体の背面に、フィンが形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】

本発明のルーバーによれば、日射により高温となったルーバーを冷却するとともに、ルーバー周囲の空気の冷却が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】

図1】本発明の好適な実施の形態に係るルーバー装置を模式的に示す側面図である。
図2】(a)は第1実施形態に係るルーバーの正面図、(b)は同ルーバーの平面図、(c)は(a)の変形例である。
図3】第1実施形態のルーバーの詳細を示す断面図である。
図4】第1実施形態のルーバーの作用を示す模式図である。
図5】(a)は第2実施形態に係るルーバーを示す斜視図、(b)は同ルーバーの断面図である。
図6】ルーバーの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】

本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。

各実施形態では、図1に示すように、建物等の構造物Tの壁面に沿って配設されたルーバー装置1について説明する。
【0017】

<第1実施形態>

第1実施形態のルーバー装置1は、支柱20,20に横架された複数のルーバー10,10,…が所定の間隔をあけて上下方向に並設されることで構成されている。

ルーバー装置1は、日光Sが直接構造物Tに照射することを防止すると同時に、ルーバー10同士の間からの通風Aが可能に構成されている。
【0018】

ルーバー10は、図2(a)に示すように、上下に配設された他のルーバー10との間に所定の間隔をあけた状態で、支柱20,20に横架されている。なお、ルーバー10を支持する支柱20の本数や配置は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0019】

本実施形態のルーバー10は、図3に示すように、ルーバー本体11と、ルーバー本体11の背面側に配設された冷却部12と、を備えて構成されている。
【0020】

ルーバー本体11は、日光Sの照射側に配設された平板状の部材であって、本実施形態ではアルミニウム合金により構成している。

なお、本実施形態のルーバー本体11は、平板状を呈しているが、ルーバー本体11の断面形状や厚み等は適宜設定することが可能である。また、ルーバー本体11を構成する材料も限定されるものではない。
【0021】

冷却部12は、ルーバー本体11の背面に配設された断面コ字状のカバー部材12bと、カバー部材12bとルーバー本体11とにより形成された空間に配管される複数本の給水管(給液部材)12a,12a,…と、により構成されている。
【0022】

給水管12aは、ルーバー本体11の背面に水wを輸送する輸送管であって、水wの浸透が可能な材質(例えばテラコッタ等)からなる管材や多数の孔が形成された管材等により構成されている。なお、ルーバー10に配設される給水管12aの本数は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0023】

カバー部材12bは、多数の孔が形成された断面コ字状の部材である。カバー部材12bの形状は限定されるものではないが、ルーバー本体11の背面への給水管12aの配管が可能となるように適宜構成する。また、本実施形態ではカバー部材12bをパンチングメタルにより構成するが、カバー部材12bは、通気が可能な材質であれば限定されるものではなく、例えばテラコッタ製のパネルにより構成してもよい。
【0024】

給水管12a内には、図示しないポンプを介して水wが流れている。なお、水wとしては、上水、井戸水、予め貯留された雨水等、あらゆる水が使用可能である。
【0025】

給水管12aにより輸送された水wのうち、ルーバー本体11の背面において給水管12aの外面にしみ出した水wは、日光Sの照射により熱せられたルーバー本体11の熱により蒸発する。
【0026】

なお、本実施形態では、冷却部12として、給水管12aとカバー部材12bとを組み合わせて構成するものとしたが、ルーバー本体11の背面に、給水管12aを直接固定することで、カバー部材12bを省略してもよい。

また、ルーバー10への水の供給は、必ずしも管(給水管12a)により行う必要はなく、給液部材の構成は限定されるものではない。
【0027】

なお、図2(a)では、3つのルーバー10を図示しているが、中央のルーバー10に給水管12aの配管を示している。
【0028】

支柱20は、ルーバー10を支持する部材であって、本実施形態では、図1および図2に示すように、構造物Tの壁面(窓面を含む)に沿って立設された2本の支柱20によりルーバー10,10,…を支持している。
【0029】

支柱20の構成は限定されるものではないが、本実施形態では、H型鋼により構成する(図2(b)参照)。

支柱20は図示しないブラケットを介して構造物Tに固定されている。なお、支柱20の固定方法は限定されるものではなく、例えば自立していてもよい。
【0030】

支柱20には、図2(b)に示すように、支柱20のフランジに沿って管路21が配置されている。
【0031】

本実施形態では、左右の支柱20,20にそれぞれ管路21を配置するものとし、一方の管路21を給水管12aに水wを供給する供給路21aとして使用し、他方の管路21を給水管12aから排出された水wを排液する排水路21bとして使用する。
【0032】

本実施形態では、管路21として、管材を配管するが、管路21の構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。

管路21には、図示しない分岐管が接続されており、各ルーバー10に配管された給水管12aと管路21とが分岐管を介して接続されている。
【0033】

給水管12aは、必ずしも各ルーバー10に対して複数本配管されている必要はなく、

図2(c)に示すように、複数の曲がり部を有した1本の給水管12aを配管してもよい。このとき給水管12aは、給水管12a内に空気が残留することがないように、給水管12a内を流れる水wが下側から上側に向かって流れるように配管することが望ましい。
【0034】

以上、本実施形態のルーバー装置1によれば、日光Sによる建物Tへの照射を制御しつつ建物Tへの通風Aおよび建物Tからの眺望を確保することを可能としている。そして、図4に示すように、日光Sの照射によりルーバー本体11の温度が上昇すると、ルーバー本体11の背面に配管された給水管12aから染み出した水wが気化する。そのため、水wの気化熱によりルーバー10が冷却される。
【0035】

また、カバー部材12bは、通気が可能に構成されているため、水wの気化により冷却された空気がカバー部材12bを通気して、ルーバー本体11の周囲の空気が冷却される。そのため、ルーバー10同士の間を流れる通風Aが冷却されるため、建物Tの冷却も行われる。
【0036】

なお、第1実施形態では、カバー部材12bに覆われた給水管12aの外面にしみ出した水wがルーバー10の温度により気化する場合について説明したが、給水管12aにより輸送された水wがカバー部材12bの外面にしみ出して気化することでルーバー10およびその周囲の冷却を行うものとしてもよい。
【0037】

<第2実施形態>

第2実施形態のルーバー装置1のルーバー10は、図5(a)および(b)に示すように、冷却部12が給液管12cとフィン12dにより構成されている点で、第1実施形態のルーバー装置1と異なっている。
【0038】

冷却部12は、ルーバー本体11の背面に並設された複数枚のフィン12d,12d,…と、ルーバー本体11の背面に沿って配管された給液管(給液部材)12cと、により構成されている。
【0039】

給液管12cは、内部に冷水(低温水)または冷媒からなる冷却液w1が通液された管路である。

給液管12cは、複数の曲がり部を有しており、ルーバー本体11の背面に立設された複数のフィン12d,12d,…を貫通した状態で配管されている。
【0040】

本実施形態では、給液管12cとして、1つのルーバー10に対して複数の曲がり部を有した1本の管材を配管するものとしたが、複数本の管材を配管してもよい。また、給液管12cの材質は限定されるものではないが、本実施形態では金属管を使用する。
【0041】

フィン12d,12d,…は、ルーバー本体11の背面に固定された板材からなり、ルーバー本体11の長手方向に沿って、所定の間隔をあけて並設されている。

フィン12dは、板材をルーバー本体11の長手方向に直交するように立設させた状態で固定することで、通風Aがフィン12d同士の間を通って建物Tに通気するように構成されている。なお、フィン12dは、ルーバー本体11の長手方向に対する角度を調節することが可能に配置されていてもよい。また、フィン12dは必要に応じて形成すればよく、省略してもよい。
【0042】

この他の第2実施形態に係るルーバー装置1の構成は、第1実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0043】

第2実施形態のルーバー10によれば、給液管12cの内部を流れる冷却液w1と外気

との温度差により、給液管12cの外周面に結露が生じる。この結露は、日光Sの照射により熱せられたルーバー本体11の熱により蒸発する。そのため、この気化熱によりルーバー本体11の背面側とフィン12d,12d,…が冷却されて、ルーバー10同士の間を流れる通風Aも冷却される。
【0044】

この他の第2実施形態に係るルーバー装置1の作用効果は、第1実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0045】

以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0046】

例えば、前記実施形態では、建物Tの壁面に沿って複数のルーバー10,10,…を配置する場合について説明したが、ルーバー10,10,…の設置箇所は限定されるものではなく、例えば、建物Tの屋上に配置してもよい。
【0047】

また、建物Tの用途、形状、規模等は限定されるものではない。
【0048】

また、前記各実施形態では、給液部材として管材を使用するものとしたが、ルーバー本体11の背面まで水や冷媒を輸送し、その外面で水(結露)を気化させることが可能であれば、給液部材の構成は限定されるものではない。
【0049】

また、図6に示すように、ルーバー本体11の表面に太陽電池モジュール13を設置することで、発電可能に構成してもよい。かかるルーバー10によれば、太陽光を利用した発電によりCO2の排出量の低減化が可能となり、環境に優しい構造物を構築することが可能となる。また、ルーバー本体11は、気化熱により冷却されるため、ルーバー本体11が高温になることで、太陽電池モジュール13による発電効率が低下することが防止される。なお、太陽電池モジュール13の構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【符号の説明】
【0050】

1 ルーバー装置

10 ルーバー

11 ルーバー本体

12 冷却部

12a 給水管(給液部材)

12c 給液管(給液部材)

12d フィン

S 日光

w 水

w1 冷却液(低温水または冷媒)
図1
図2
図3
図4
図5
図6