(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フレーム(1)に水平姿勢で支持されたマンドレル(2)に円筒状に曲げ加工した金属板製のワーク(W)を支持させ、ワーク(W)の円周方向両端を突合せた状態でクランプ機構(7)によりマンドレル(2)の上面に設けたバックバー(3)上へ押圧固定し、ワーク(W)の突合せ部をTIG溶接用トーチ(8b)を備えた溶接装置(8)により突合せ溶接して筒体を作製するようにした水平型自動溶接装置において、前記マンドレル(2)は、ワーク(W)の円周方向両端を突合せ溶接する際に、ワーク(W)の突合せ部の両端にそれぞれ板状のタブ材(T)を自動的に供給し、両タブ材(T)をワーク(W)側へ押圧してワーク(W)の突合せ部の両端にそれぞれ密着させる両端タブ自動供給機構(5)を備えており、前記両端タブ自動供給機構(5)は、マンドレル(2)の両端部に設けられ、複数枚のタブ材(T)を積層状態で収納すると共に、タブ材(T)を上方へ押し上げて最上位のタブ材(T)を取り出し可能にする一対のタブカセットユニット(5′)と、マンドレル(2)の両端部に設けられ、各タブカセットユニット(5′)の最上位のタブ材Tをそれぞれ押し出すと共に、両タブ材(T)をワーク(W)側へ押圧してワーク(W)の突合せ部の両端にそれぞれ密着させる一対のタブ押しシリンダ(5″)とを備え、また、前記一対のタブカセットユニット(5′)は、マンドレル(2)の側面に形成した凹状の切欠き部(2d)内に着脱自在に挿着されており、マンドレル(2)に対して位置決めされる位置決めピン(28)と、タブカセットユニット(5′)をマンドレル(2)に対して着脱自在とする着脱手段(29)とを備えていることを特徴とする水平型自動溶接装置。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状に曲げ加工した金属板製のワークの円周方向両端を突合せ溶接して筒体を作製する装置としては、例えば、本件出願人が先に開発した水平型自動溶接装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
即ち、前記水平型自動溶接装置は、図示していないが、円筒状に曲げ加工したワークを支持する水平姿勢のマンドレルと、マンドレルの上面に設けた長尺状のバックバーと、マンドレルに設けられ、ワークの円周方向両端の位置決めを行うセンタープレートと、ワークの円周方向両端を突合せた状態でバックバー上へ押圧固定する左右のクランプ板と、ワークの突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接用トーチを備えた溶接装置とを具備しており、マンドレルにセットしたワークの円周方向両端をセンタープレートにより位置決めすると共に、位置決めされたワークの円周方向両端部を左右のクランプ板によりバックバー上で突合せ固定し、その突合せ部をTIG溶接用トーチにより突合せ溶接して接合するようにしたものである。
【0004】
ところで、従来の水平型自動溶接装置においては、溶接開始時にアークが不安定になり易く、また、溶接終了時にも、出力制御が不安定になり易い。その結果、ワークWの突合せ部の両端部(溶接開始部及び溶接終了部)に溶け落ちや穴あき等の溶接欠陥が生じたり、未溶接の部分が発生したりすると言う問題があった(
図22(A)及び(B)参照)。しかも、ワークWの厚みが1mm位になると、ワークWの突合せ部の端部の表面側のみが溶接され、裏面側が未溶接になると言う問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、従来の水平型自動溶接装置においては、ワークの突合せ部の両端に板状のタブ材をそれぞれ配設し、一方のタブ材に溶接用トーチを臨ませてこのタブ材とタングステン電極棒との間にアークを発生させ、この初期アークが安定した状態になってから溶接用トーチをワークの突合せ部に沿って移動させた後、他方のタブ材の上で通電を停止することが行われている
(図22(C)参照)。このようにすれば、ワークの突合せ部を安定したアーク状態で突合せ溶接することができ、溶け落ちや穴あき等の溶接欠陥のない突合せ溶接を行えることになる。
【0006】
しかし、従来の水平型自動溶接装置は、マンドレルと左右のクランプ板との間隔が極めて狭くなっているため、ワークの突合せ部の両端位置にタブ材を正確にセットし難く、タブ材のセットに手間取って作業性に極めて劣る言う問題があった。
【0007】
また、タブ材をセットし難いため、タブ材をセットしたときにワークの突合せ部の両端とタブ材との間に隙間が発し易く、この状態でワークを突合せ溶接した場合には、溶接欠陥を生じると言う問題があった。
【0008】
一方、本件出願人は、マンドレルにタブ材を設けた水平型自動溶接装置を開発している(例えば、特許文献3、特許文献4及び特許文献5参照)。
【0009】
即ち、前記水平型自動溶接装置は、マンドレルの一端部に固定側のタブ材を設けると共に、マンドレルの他端部に可動側のタブ材を設けており、可動側のタブ材をワーク側へ移動させることによって、固定側のタブ材と可動側のタブ材をワークの突合せ部の両端に当接させるようにしている。
【0010】
しかし、前記水平型自動溶接装置は、可動側のタブ材のみをワーク側へ移動させるようにしているため、固定側のタブ材がワークの突合せ部の一端に密着し難く、固定側のタブ材とワークとの間に隙間が発生し易いと言う問題があった。
【0011】
また、前記水平型自動溶接装置は、ワークの突合せ溶接時に常に同じタブ材(固定側のタブ材及び可動側のタブ材)を用いてワークを突合せ溶接するようにしているため、タブ材が変形したり、焼損したりすることがあり、突合せ溶接したワークに溶接欠陥を生じ易いと言う問題があった。
【0012】
更に、前記水平型自動溶接装置は、マンドレルと左右のクランプ板との間隔が極めて狭いため、溶接済みのワークをマンドレルから取り出す際にワークの取り出しが行い難いと共に、ワークがマンドレルや左右のクランプ板、バックバーと摺動接触し、ワークが損傷したり、変形したりすると言う問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、ワークを突合せ溶接する際に、ワークの突合せ部の両端にタブ材を自動的に供給して最適な状態にセットすることによって、溶け落ちや穴あき等の溶接欠陥の無い安定した溶接を行えると共に、作業性の大幅な向上を図れ、しかも、溶接済みのワークを自動的に取り出せてワークの損傷や変形を防止できるようにした水平型自動溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る水平型自動溶接装置は、フレームに水平姿勢で支持されたマンドレルに円筒状に曲げ加工した金属板製のワークを支持させ、ワークの円周方向両端を突合せた状態でクランプ機構によりマンドレルの上面に設けたバックバー上へ押圧固定し、ワークの突合せ部をTIG溶接用トーチを備えた溶接装置により突合せ溶接して筒体を作製するようにした水平型自動溶接装置において、前記マンドレルは、ワークの円周方向両端を突合せ溶接する際に、ワークの突合せ部の両端にそれぞれ板状のタブ材を自動的に供給し、両タブ材をワーク側へ押圧してワークの突合せ部の両端にそれぞれ密着させる両端タブ自動供給機構を備え
ており、前記両端タブ自動供給機構は、マンドレルの両端部に設けられ、複数枚のタブ材を積層状態で収納すると共に、タブ材を上方へ押し上げて最上位のタブ材を取り出し可能にする一対のタブカセットユニットと、マンドレルの両端部に設けられ、各タブカセットユニットの最上位のタブ材Tをそれぞれ押し出すと共に、両タブ材をワーク側へ押圧してワークの突合せ部の両端にそれぞれ密着させる一対のタブ押しシリンダとを備え、また、前記一対のタブカセットユニットは、マンドレルの側面に形成した凹状の切欠き部内に着脱自在に挿着されており、マンドレルに対して位置決めされる位置決めピンと、タブカセットユニットをマンドレルに対して着脱自在とする着脱手段とを備えていることに特徴がある。
【0016】
前記両端タブ自動供給機構は、マンドレルの両端部に設けられ、複数枚のタブ材を積層状態で収納すると共に、タブ材を上方へ押し上げて最上位のタブ材を取り出し可能にする一対のタブカセットユニットと、マンドレルの両端部に設けられ、各タブカセットユニットの最上位のタブ材をそれぞれ押し出すと共に、両タブ材をワーク側へ押圧してワークの突合せ部の両端にそれぞれ密着させる一対のタブ押しシリンダとを備えていることが好ましい。
【0017】
前記一対のタブカセットユニットは、マンドレルの側面に着脱自在に取り付けられるカセット取り付け体と、カセット取り付け体に設けられ、複数枚のタブ材を積層状態で収納する上方が開放されたタブカセットケースと、タブカセットケース内に昇降自在に収納され、複数枚のタブ材を積層状に支持載置するタブ供給体と、タブ供給体を上方へ付勢してタブ供給体上に支持載置されているタブ材を上方へ押し上げる付勢手段とをそれぞれ備え、また、前記一対のタブ押しシリンダは、マンドレルの上面に埋設状態で且つマンドレルに沿って設けられた水平姿勢のシリンダと、シリンダのロッドに連結され、付勢手段により上方へ押し上げられたタブ材の最上位のタブ材を水平姿勢で押し出してワークの突合せ部の両端に押し当てて密着させるタブ押し板とをそれぞれ備えており、前記タブ押し板は、タブカセットケースの上方開口に位置し、付勢手段により上方へ押し上げられた最上位のタブ材の上面を押えてタブ材がタブカセットケースから飛び出すのを阻止するタブ保持位置と、タブ保持位置から後退して最上位のタブ材を上方へ突出可能とする後退位置と、後退位置から前進して最上位のタブ材を水平姿勢で押し出してワークの突合せ部の両端に押し当てて密着させる前進位置とを取り得るように構成されていることが好ましい。
【0018】
前記一対のタブカセットユニットは、マンドレルの側面に形成した凹状の切欠き部内に着脱自在に挿着されており、マンドレルに対して位置決めされる位置決めピンと、タブカセットユニットをマンドレルに対して着脱自在とする着脱手段とを備えていることが好ましい。
【0019】
前記着脱手段は、タブカセットユニットに挿着されて先端部がマンドレルに着脱自在に螺着される固定ボルトから成ることが好ましい。
【0020】
前記着脱手段は、マンドレルの切欠き部内又はタブカセットユニットのマンドレルに対向する部分に埋設状態で設けられ、マンドレルとタブカセットユニットを磁力により吸着保持する永久磁石から成ることが好ましい。
【0021】
前記マンドレルは、長手方向に三つに分割されていると共に、三つに分割されたマンドレル部材が直線状に連結自在となっており、真ん中に位置する中央側マンドレル部材の両端部にタブカセットユニットをそれぞれ設けると共に、先端側に位置する先端側マンドレル部材の基端部及び基端側に位置する基端側マンドレル部材の先端部にそれぞれタブ押しシリンダを設け、ワークの長さに応じて中央側マンドレル部材を別の長さを有する中央側マンドレル部材に交換可能とすることが好ましい。
【0022】
水平型自動溶接装置は、マンドレルの下方位置に溶接済みのワークを押し出してマンドレルから自動的に取り出すワーク自動搬出機構を更に備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る水平型自動溶接装置は、マンドレルが、ワークの円周方向両端を突合せ溶接する際に、ワークの突合せ部の両端にそれぞれタブ材を自動的に供給し、両タブ材をワーク側へ押圧してワークの突合せ部の両端にそれぞれ密着させる両端タブ自動供給機構を備えているため、マンドレルとクランプ機構との間隔が狭くても、ワークの突合せ部の両端にタブ材を自動的に簡単且つ容易にセットすることができると共に、ワークの突合せ部の両端にタブ材をワークとの間に隙間を生じることなく密着状態で突き合せることができる。その結果、本発明に係る水平型自動溶接装置は、溶接作業時に作業員がタブ材を手作業でセットする必要もなく、作業性に極めて優れていると共に、ワークの突合せ部の両端に溶け落ちや穴あき等の溶接欠陥の無い安定した溶接を行える。
【0024】
本発明に係る水平型自動溶接装置は、マンドレルの下方位置に溶接済みのワークを押し出してマンドレルから自動的に取り出すワーク自動搬出機構を備えているため、マンドレルとクランプ機構との間隔が狭くても、溶接済みのワークを簡単且つ容易に取り出すことができると共に、ワークを一定の姿勢で取り出すことができ、ワークがマンドレルやクランプ機構等と摺動接触し難くなり、ワークの損傷や変形を防止することができる。
【0025】
本発明に係る水平型自動溶接装置は、両端タブ自動供給機構が、複数枚のタブ材を積層状態で収納すると共に、最上位のタブ材を取り出せるタブカセットユニットを備えており、前記タブカセットユニットをマンドレルに着脱自在に取り付けているため、タブ材が無くなったときにタブカセットユニットをマンドレルから取り外すことによって、タブ材を簡単且つ容易に補充することができる。しかも、タブカセットユニットが永久磁石から成る着脱手段を備えている場合には、タブカセットユニットのマンドレルからの取り外しやマンドレルへの取り付けをワンタッチで行え、至極便利である。
【0026】
本発明に係る水平型自動溶接装置は、マンドレルが、長手方向に三つに分割されていると共に、三つに分割されたマンドレル部材が連結自在となっており、真ん中に位置する中央側マンドレル部材の両端部にタブカセットユニットをそれぞれ設けると共に、先端側に位置する先端側マンドレル部材の基端部及び基端側に位置する基端側マンドレル部材の先端部にそれぞれタブ押しシリンダを設け、ワークの長さに応じて中央側マンドレル部材を別の長さを有する中央側マンドレル部材に交換可能としているため、ワークの長さが変わった場合でも、中央側マンドレル部材を別の長さの中央側マンドレル部材に交換することによって、タブ材を用いた突合せ溶接を行える。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図3は本発明の実施形態に係る水平型自動溶接装置を示し、当該水平型自動溶接装置は、ステンレス板や鋼板等の金属板を円筒状に曲げ加工して成るワークの円周方向両端を突合せ溶接してパイプやドラム等の筒体を作製するものであり、特に、ワークを突合せ溶接する際に、ワークの突合せ部両端にタブ材Tを自動的に供給して最適な状態でセットすることができると共に、溶接済みのワークを自動的に取り出せるようにしたものである。
【0029】
即ち、前記水平型自動溶接装置は、
図1〜
図3に示す如く、フレーム1と、フレーム1に片持ち状態で支持され、ワークWを支持する水平姿勢の長尺状のマンドレル2と、マンドレル2の上面に設けた長尺状のバックバー3と、マンドレル2に設けられ、ワークWの円周方向両端がバックバー3上で突合されるようにワークWの円周方向両端の位置決めを行うセンター位置決め機構4と、マンドレル2に設けられ、ワークWの突合せ部の両端に板状のタブ材Tを自動的に供給する両端タブ自動供給機構5と、マンドレル2の下方位置に配設され、マンドレル2にセットされるワークWを水平姿勢で支持して持ち上げると共に、ワークWの両側面を両側方から加圧するワークリフターユニット6と、マンドレル2の上方位置に配設され、ワークWの円周方向の両端部を突合せた状態でバックバー3上へクランプするクランプ機構7と、マンドレル2の上方位置に配設され、ワークWの突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接用トーチ8bを備えた溶接装置8と、マンドレル2の下方位置に配設され、溶接済みのワークWを自動的に取り出すワーク自動搬出機構9とから構成されている。
【0030】
前記フレーム1は、
図1〜
図3に示す如く、ボックス状の本体フレーム1aと、本体フレーム1aの上部に設けられ、本体フレーム1aから前方(
図2の左側)へ水平姿勢で突出する長尺状の上部フレーム1bと、本体フレーム1aの下部に設けられ、上部フレーム1bと同じ方向へ水平姿勢で突出してキャスター10及びアジャスター11を介して床面へ設置されるベースフレーム1cとを備えており、本体フレーム1aの内部には、溶接電源、冷却ユニット、アルゴンガス等の溶接用ガスボンベ、コンプレッサ等の圧縮空気供給源(何れも図示省略)等がそれぞれ収容されている。
尚、
図1〜
図3において、12は操作パネル、13は圧力・流量パネル、14はタングステン電極棒の研磨機、15は踏み台である。
【0031】
前記マンドレル2は、アルミ合金等の金属材により断面形状が略矩形状の角柱状に形成されており、フレーム1の本体フレーム1aに片持ち状態で且つ水平姿勢で支持されている。
【0032】
具体的には、マンドレル2は、
図4及び
図5に示す如く、長手方向に三つに分割されていると共に、三つに分割されたマンドレル部材2A,2B,2Cが連結自在となっており、真ん中に位置する中央側マンドレル部材2Aの両端部には、両端タブ自動供給機構5のタブカセットユニット5′がそれぞれ設けられていると共に、先端側に位置する先端側マンドレル部材2Bの基端部と基端側に位置する基端側マンドレル部材2Cの先端部には、両端タブ自動供給機構5のタブ押しシリンダ5″がそれぞれ設けられ、ワークWの長さに応じて中央側マンドレル部材2Aが別の長さを有する中央側マンドレル部材2Aと交換可能になっている。
【0033】
前記中央側マンドレル部材2Aの両端部、先端側マンドレル部材2Bの基端部、基端側マンドレル部材2Cの先端部には、互いに嵌合可能な合い欠き形状の切欠きが設けられており、各マンドレル部材2A,2B,2Cの切欠き同士を嵌合させ、各マンドレル部材2A,2B,2Cの嵌合部をボルトで固定することによって、各マンドレル部材2A,2B,2Cの端部同士が連結自在となっている。
【0034】
また、中央側マンドレル部材2Aの上面には、
図6に示す如く、長尺状のバックバー3が嵌め込まれる取り付け溝2aが中央側マンドレル部材2Aの長手方向に沿って形成されている。この取り付け溝2aの底面には、アルゴンガス等のシールドガスが流れるガス溝2bが中央側マンドレル部材2Aの長手方向に沿って形成されていると共に、センター位置決め機構4の駆動部21が設けられるピストン穴2cが中央側マンドレル部材2Aの長手方向に一定間隔で形成されている。
【0035】
更に、中央側マンドレル部材2Aの両端部側面(同じ側の側面)には、両端タブ自動供給機構5のタブカセットユニット5′が着脱自在に挿着される横断面形状が略凸状の切欠き部2dが形成され、また、各マンドレル部材2A,2B,2Cの隣接する部分の上面には、両端タブ自動供給機構5のタブ押しシリンダ5″が嵌合される凹部2eが形成されている。
【0036】
そして、マンドレル2は、ワークWの突合せ作業時や溶接作業時等にその先端部が上部フレーム1bの先端部に設けたマンドレル受けユニット16により支持されており、本体フレーム1a及びマンドレル受けユニット16により両持ち状態となっている。
【0037】
前記マンドレル受けユニット16は、ロータリーアクチュエータ(図示省略)により水平位置から鉛直位置に亘って揺動するマンドレル受け16aを備えており、マンドレル受け16aを水平位置から鉛直位置へ回動させ、マンドレル受け16aに形成した支持穴に先端側マンドレル部材2Bの先端に設けたマンドレルピン2fを挿入することによって、マンドレル2の先端部を支持することができるようになっている。このマンドレル受けユニット16は、マンドレル2の長さに応じて移動調整できるように上部フレーム1bに取り付けても良い。
【0038】
尚、マンドレル2の基端部側上面(中央側マンドレル部材2Aの基端部上面)には、
図4及び
図7に示す如く、ワークWの挿入位置を決定するワーク挿入位置決めピン17が設けられている。このワーク挿入位置決めピン17は、スプリング18によりマンドレル2の上面から突出可能に設けられており、クランプ機構7によるワークWのクランプ時にはスプリング18の弾性力に抗してマンドレル2内に押し込まれるようになっている。
【0039】
前記バックバー3は、
図4及び
図8に示す如く、銅材により断面形状が略長方形の長尺な角柱状に形成されており、マンドレル2の取り付け溝2aに嵌めこまれてボルト19により固定されている。
【0040】
また、バックバー3の上面には、シールドガスが流れるガス溝3aがバックバー3の長手方向に沿って形成されている。このガス溝3aの底面には、センター位置決め機構4のセンタープレート20が遊嵌状態で挿入されると共に、シールドガスを流す貫通状のスリット溝3bが形成されている。
【0041】
前記センター位置決め機構4は、ワークWの円周方向の両端がバックバー3のガス溝3a上で突き合わされるようにワークWの端面の位置決めを行うものであり、
図4及び
図8に示す如く、バックバー3のスリット溝3b内に上下動自在に挿入された薄鋼板製の長尺状のセンタープレート20と、マンドレル2内に設けられ、センタープレート20を上下動させるシリンダ構造の複数の駆動部21とから構成されている。
【0042】
前記駆動部21は、
図8に示す如く、マンドレル2のピストン穴2cに上下方向へ摺動自在に嵌め込まれ、センタープレート20に連結されたセンターピストン21aと、バックバー3とセンターピストン21aとの間に介設され、センターピストン21aを下方へ付勢してセンタープレート20の先端部をバックバー3のスリット溝3b内に位置させる復帰用の圧縮スプリング21bとから構成されており、圧縮空気供給源(図示省略)からの圧縮空気をマンドレル2に形成した圧縮空気供給口2gからピストン穴2cへ供給すると、センターピストン21a及びセンタープレート20が圧縮スプリング21bの弾性力に抗して上昇し、センタープレート20の先端部がバックバー3の上面から外方へ突出し、また、圧縮空気の供給を停止すると、圧縮スプリング21bの弾性力によりセンターピストン21a及びセンタープレート20が下降し、センタープレート20の先端部がスリット溝3b内に収納されるようになっている。
【0043】
前記両端タブ自動供給機構5は、ワークWの円周方向両端を突合せ溶接する際に、ワークWの突合せ部の両端にそれぞれ板状のタブ材Tを自動的に供給し、両タブ材TをワークW側へ押圧してワークWの突合せ部の両端にそれぞれ密着させるものである。
【0044】
即ち、両端タブ自動供給機構5、
図4に示す如く、マンドレル2の側面に形成した切欠き部2dに着脱自在に挿着され、複数枚のタブ材Tを積層状態で収納すると共に、タブ材Tを上方へ押し上げて最上位のタブ材Tを取り出し可能にする一対のタブカセットユニット5′と、マンドレル2の上面に形成した凹部2eに嵌め込まれ、各タブカセットユニット5′の最上位のタブ材Tをそれぞれ水平姿勢で押し出すと共に、両タブ材TをワークW側へ押圧してワークWの突合せ部の両端にそれぞれ密着させる一対のタブ押しシリンダ5″とを備えている。
【0045】
具体的には、前記一対のタブカセットユニット5′は、
図9及び
図10に示す如く、マンドレル2の切欠き部2dに着脱自在に取り付けられる横断面形状がマンドレル2の切欠き部2dと略同じ形状(略凸状)のカセット取り付け体22と、カセット取り付け体22にボルト23により固定され、複数枚の矩形板状のタブ材Tを積層状態で収納する上方が開放されたタブカセットケース24と、タブカセットケース24内に昇降自在に収納され、複数枚のタブ材Tを積層状に支持載置するブロック状のタブ供給体25と、タブ供給体25を上方へ付勢してタブ供給体25上に支持載置されているタブ材Tを上方へ押し上げる付勢手段26とをそれぞれ備えている。
【0046】
前記付勢手段26は、カセット取り付け体22の上端部とタブ供給体25との間に介設した引っ張りスプリングから成り、タブ供給体25を引っ張りスプリングの弾性力により上方へ付勢し、タブ供給体25上に支持載置されているタブ材Tを上方へ押し上げるようになっている。尚、タブ供給体25は、カセット取り付け体22とタブ供給体25に抜き差し自在に挿入されたタブ押し上げ防止ピン27により不用意に上昇しないようになっている。
【0047】
そして、前記一対のタブカセットユニット5′は、マンドレル2に対して位置決めされる位置決めピン28と、タブカセットユニット5′をマンドレル2に対して着脱自在とする着脱手段29とを備えており、位置決めピン28により位置決めされた状態でマンドレル2の切欠き部2dに挿入されると共に、着脱手段29によりマンドレル2側へ着脱自在に取り付けられるようになっている。尚、タブカセットユニット5′をマンドレル2に取り付けたときには、タブ材Tがマンドレル2の中心線上に位置するようになっている。
【0048】
前記着脱手段29は、タブカセットユニット5′のカセット取り付け体22に挿通されて先端部がマンドレル2に着脱自在に螺着される固定ボルトから成る。
【0049】
尚、上記の実施形態においては、着脱手段29を固定ボルトとしたが、他の実施形態においては、着脱手段29を永久磁石としても良い。即ち、前記永久磁石は、マンドレル2の切欠き部2d内(又はタブカセットユニット5′のマンドレル2に対向する部分)に埋設状態で設けられ、マンドレル2とタブカセットユニット5′を磁力により吸着保持するようになっている。
【0050】
一方、前記一対のタブ押しシリンダ5″は、
図11〜
図14に示す如く、マンドレル2の上面に埋設状態で且つマンドレル2に沿って設けられた水平姿勢のシリンダ30と、シリンダ30のロッドに連結され、付勢手段26により上方へ押し上げられた積層状態のタブ材Tの最上位のタブ材Tを水平姿勢で押し出してワークWの突合せ部の両端に押し当てて密着させるタブ押し板31とをそれぞれ備えており、前記タブ押し板31は、タブカセットケース24の上方開口に位置し、付勢手段26により上方へ押し上げられた最上位のタブ材Tの上面を押えてタブ材Tがタブカセットケース24から飛び出すのを阻止するタブ保持位置(
図14の一点鎖線位置)と、タブ保持位置から後退して最上位のタブ材Tを上方へ突出可能とする後退位置(
図14の実線位置)と、後退位置から前進して最上位のタブ材Tを水平姿勢で押し出してワークWの突合せ部の両端に押し当てて密着させる前進位置(
図14の破線位置)とを取り得るように構成されている。
【0051】
前記シリンダ30は、
図12〜
図14に示す如く、マンドレル2の上面に形成した凹部2e内に嵌め込まれ、ボルト32により固定されたシリンダケース30aと、シリンダケース30aのシリンダ室30bを閉塞するシリンダカバー30cと、シリンダケース30aのシリンダ室30b内に摺動自在に挿入されたピストン30dと、ピストン30dに連設され、シリンダ室30bから突出するロッド30eと、シリンダケース30aに形成したガイド溝30f内に摺動自在に挿入され、ロッド30eの先端部に連結されてタブ押し板31が水平姿勢で取り付けられるタブ押し台30gとを備えている。
【0052】
また、前記タブ押し板31は、タブ材Tの厚みに応じて交換できるようになっており、タブ材Tの厚みと同じものが使用されている。
【0053】
前記ワークリフターユニット6は、
図1、
図2及び
図15に示す如く、マンドレル2の下方位置のベースフレーム1c上に設けられており、昇降自在なテーブル33aを有する電動式のリフター33と、リフター33のテーブル33a上面に設けられ、水平姿勢のワークWの下面を支持するワーク受けローラ34と、テーブル33a上面にマンドレル2を挟んで対向状に配設され、マンドレル2に支持されたワークWを両側方から加圧してワークWの円周方向両端を隙間無く密着状態で突き合せる四つの加圧機構35とを備えている。
【0054】
前記ワーク受けローラ34は、マンドレル2の下方位置で且つテーブル33a上面にマンドレル2に沿う姿勢で配置された長尺状のローラ受け台34aと、ローラ受け台34aにマンドレル2に沿って一定間隔ごとで且つ二列の状態で取り付けられ、360°回転自在なボールを備えた複数のボールローラ34bとを備えており、マンドレル2に沿って二列に配置されたボールローラ34bがワークWの外周面下面へ当接してワークWを下面側から支持するようになっている。このワーク受けローラ34は、先端部側が下方へ折り曲げ自在となっている。
【0055】
前記各加圧機構35は、テーブル33a上に設けた支持台35aと、支持台35aにマンドレル2と直交する水平姿勢で取り付けた加圧用シリンダ35bと、加圧用シリンダ35bのロッドに設けられ、加圧用シリンダ35bの伸長時にマンドレル2に支持されたワークWの側面に当接してワークWの側面を加圧する加圧部材35cとをそれぞれ備えており、テーブル33aにマンドレル2を挟んで二つずつ配設され、マンドレル2に支持されたワークWの長手方向の両端部両側面を両側方から加圧できるように構成されている。
【0056】
また、各加圧機構35は、その支持台35aがテーブル33aの上面にマンドレル2に沿って形成したガイド溝33a′に移動調整自在に取り付けられており、マンドレル2の長手方向へ移動調整することによって、マンドレル2に支持されたワークWの長さに関係なく、ワークWの長手方向の両端部両側面を両側方から加圧することができるようになっている。
【0057】
前記クランプ機構7は、ワークWの円周方向の両端部をバックバー3上へ動ける程度に軽く押圧(予圧)すると共に、ワークWの円周方向の両端を完全に突き合せた状態でバックバー3上へ強く押圧固定(加圧固定)するものであり、マンドレル2に挿着されたワークWの円周方向両端部をバックバー3側へ向って二段階に亘ってクランプできるように構成されている。
【0058】
即ち、前記クランプ機構7は、
図16に示す如く、上部フレーム1bの下面に昇降自在に支持されたクランプベース(図示省略)と、クランプベースの下面にマンドレル2に沿う姿勢で対向状に配設され、マンドレル2側へ水平姿勢で上下移動自在な一対のクランプ可動体7aと、一対のクランプ可動体7aの下面にマンドレル2に沿う姿勢で対向状に配設され、蝶番7bを介して上下方向へ揺動自在になっていると共に、マンドレル2に支持されたワークWの円周方向の両端部上面に当接し得る銅製の一対のクランプ板7cと、一対のクランプ可動体7aと一対のクランプ板7cとの間に介設され、一対のクランプ板7cの先端部を下方へ付勢する弾性体7d(圧縮コイルスプリング)と、クランプベースの下面に固定した一対の固定台7eと、一対のクランプ可動体7aと一対の固定台7eとの間に介設され、一対のクランプ可動体7aを水平移動させるリードスクリュー7fと、リードスクリュー7fのスクリュー軸を回転操作して一対のクランプ可動体7aを水平移動させ、一対のクランプ板7c間の間隔を調整するクランプ幅調整ノブ7gと、上部フレーム1b内に設けられ、クランプベースを昇降動させるモータ駆動型の昇降駆動装置(図示省略)等を備えている。
【0059】
そして、前記クランプ機構7の一対のクランプ板7cは、昇降駆動装置を駆動してクランプ機構7自体を昇降動させることによって、マンドレル2に支持されたワークWの円周方向の両端部をバックバー3上へ動ける程度に軽く押圧保持する予圧位置(
図16の一点鎖線位置)と、弾性体が圧縮されて一対のクランプ板7cの間隔が狭まり、一対のクランプ板7cがワークWの円周方向両端を加圧密着させた状態でワークWの円周方向両端部をバックバー3へ強固に押圧する加圧位置(
図16の破線位置)と、マンドレル2に支持されたワークWから上方へ離れ、ワークWをマンドレル2から取り出せる押圧解除位置(
図16の実線位置)とをそれぞれ取り得るようになっている。
【0060】
前記溶接装置8は、
図1〜
図3に示す如く、上部フレーム1bの上面に二本の平行なガイドレール36を介してマンドレル2の長手方向へ往復移動自在に配設した走行台8aと、走行台8aに昇降自在に支持され、先端部からアルゴンガス等のシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒を挿着した溶接用トーチ8bと、走行台8aに設けられ、溶接用トーチ8bを昇降動させるサーボモータ等から成るトーチ上下駆動装置(図示省略)と、走行台8aに設けられ、溶接開始前におけるタングステン電極棒とワークWの間隙設定を容易にし、溶接中に於けるタングステン電極棒とワークWの接触事故を直ちに検知する電極接触検知装置(図示省略)と、走行台8aをマンドレル2の長手方向へ往復走行させるモータ及び伝動機構からから成る走行駆動装置8c等から構成されており、ワークWの突合せ部を突合せ溶接する際に溶接用トーチ8bの先端が自動的に高さ調整され且つ走行台及びこれに支持された溶接用トーチ8bが所定の速度でワークWの突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
【0061】
また、前記溶接用トーチ8bには、タングステン電極棒とワークWとの間に発生するアークの周囲にシールドガスの一部を高速整流ガスにして流す狭窄ノズル(図示省略)を挿着したTIG溶接用トーチ8bが使用されている。
【0062】
前記ワーク自動搬出機構9は、
図15及び
図17に示す如く、ワーク受けローラ34のローラ受け台34a上に設けられており、ローラ受け台34aの基端部に設けたモータ9aと、モータ9aの出力軸に取り付けた駆動プーリ9bと、ローラ受け台34aの中間位置に配設した従動プーリ9cと、駆動プーリ9bと従動プーリ9cに巻き回され、マンドレル2に沿う無端状のベルト9dと、ベルト9dに取り付けられ、マンドレル2に支持された溶接済みのワークWの一端に当接する搬出プレート9eと、前記両プーリ9b,9c及びベルト9dを覆うと共に、搬出プレート9eを案内するガイド孔9f′を形成した四角筒状の長尺状のカバー体9fとを備えており、突合せ溶接が終了してクランプ機構7によるクランプ状態が解除されたワークWの一端に排出プレート9eを当接させ、この状態でモータ9aにより排出プレート9eがマンドレル2の基端部側から先端部側へ移動するようにベルト9dを周回させることによって、溶接済みのワークWを搬出することができるようになっている。このとき、ワークWは、ワーク受けローラ34上に支持されている。
【0063】
次に、上述した水平型自動溶接装置を用いて円筒状に曲げ加工したワークWの円周方向両端を突合せ溶接してパイプやドラム等の筒体を作製する場合について説明する。
【0064】
先ず、マンドレル2の側面に形成した切欠き部2dにワークWの材質及び厚みと同じ材質及び厚みのタブ材Tを積層状に収納して成る一対のタブカセットユニット5′を装着する。このとき、タブカセットユニット5′には、積層状に収納したタブ材Tが上方へ不用意に押し上げられないようにタブ押し上げ防止ピン27が挿入されている。
【0065】
マンドレル2に一対のタブカセットユニット5′を装着したら、タブカセットユニット5′からタブ押し上げ防止ピン27を引き抜く。このとき、一対のタブ押しシリンダ5″のタブ押し板31が、カセットケースの上方開口に位置するタブ保持位置にあり、最上位のタブ材Tがタブカセットケース24から飛び出すのを阻止している。
【0066】
次に、マンドレル2に円筒状に曲げ加工したワークWを挿着すると共に、マンドレル2の先端部をマンドレル受けユニット16により支持して長尺状のマンドレル2の撓みを防止し、この状態でセンター位置決め機構4のセンタープレート20を駆動部により上昇させてセンタープレート20の上端部をバックバー3の上面から上方へ突出させる。このとき、ワークWは、ワークリフターユニット6のワーク受けローラ34に水平姿勢で支持された状態となっている。
【0067】
ワークWをマンドレル2に挿着したら、クランプ機構7の一対のクランプ板7cを押圧解除位置から予圧位置へ下降させ、当該クランプ板7cによりワークWの円周方向両端部をバックバー3上へ動ける程度に軽く押圧し、この状態でワークWの一端をワーク挿入位置決めピン17に押し当ててワークWの挿入位置を決定すると共に、ワークWの円周方向の一端をセンタープレート20の上端部側面に当接させる(
図18(A)参照)。このとき、一対のクランプ板7cが予圧位置まで下降しているため、左右のクランプ板7cの先端部とマンドレル2のバックバー3との間隔が狭くなり、その結果、マンドレル2の円周方向の一端は、クランプ板7cの先端部とバックバー3にガイドされながらセンタープレート20の上端部側面に突き当てられることになる。
【0068】
ワークWの円周方向の一端をセンタープレート20に当接させたら、センター位置決め機構4の駆動部21に供給されている圧縮空気の供給を停止する。そうすると、復帰用の圧縮スプリング21bの弾性力によりセンタープレート20が下降し、センタープレート20の上端部がバックバー3のスリット溝3b内に収納される。
【0069】
センタープレート20が下降したら、ワークWの円周方向の他端を目視によってワークWの円周方向の一端に突き合せる(
図18(B)参照)。このとき、一対のクランプ板7cが予圧位置まで下降しているため、左右のクランプ板7cの先端部とマンドレル2のバックバー3との間隔が狭くなり、その結果、マンドレル2の円周方向の他端は、クランプ板7cの先端部とバックバー3にガイドされながらワークWの円周方向の一端に重なることなく正確且つ確実に突き合わされることになる。
【0070】
ワークWの円周方向の両端が突き合わされたら、一対のタブ押しシリンダ5″のタブ押し板31をタブ保持位置から最上位のタブ材Tを上方へ突出可能とする後退位置へ後退させる。そうすると、タブカセットユニット5′に積層状態で収納されている複数枚のタブ材Tが付勢手段により上方へ押し上げら、最上位のタブ材Tが取り出し可能となる。このとき、一対のクランプ板7cが予圧位置まで下降しているため、積層状のタブ材Tが付勢手段26により持ち上げられたときに、最上位のタブ材Tが一対のクランプ板7cの先端部に当接して持ち上げられるのが阻止される。また、タブ材TがワークWと同じ厚みに形成されているため、一対のクランプ板7cの先端部とマンドレル2のバックバー3との間には、最上位のタブ材Tのみが位置することになる。その結果、最上位のタブ材Tのみを取り出し可能となる。
【0071】
尚、上記の実施形態においては、ワークWの円周方向の両端を突き合せた後、一対のタブ押しシリンダ5″のタブ押し板31をタブ保持位置から後退位置へ後退させたが、他の実施形態においては、一対のクランプ板7cを押圧解除位置から予圧位置へ下降させた後、一対のタブ押しシリンダ5″のタブ押し板31をタブ保持位置から後退位置へ後退させても良い。
【0072】
一対のタブ押しシリンダ5″のタブ押し板31を後退位置へ後退させ、タブカセットユニット5′の最上位のタブ材Tを取り出し可能にしたら、一対のタブ押しシリンダ5″のタブ押し板31を後退位置から前進位置へ前進させる(
図19及び
図20参照)。そうすると、一対のタブカセットユニット5′の最上位のタブ材Tがタブ押し板31により水平姿勢で押し出され、ワークWの突合せ部の両端に密着状態で押し当てられる。このとき、ワークWが長手方向両側から一対のタブ材Tにより加圧状態で挟持されるため、ワークWの円周方向の両端が軸心方向へずれている場合には、ワークWの突合せ部の両端が軸心方向へ動くことになる。その結果、ワークWの長手方向両端の軸心方向のずれが強制的に修正されると共に、ワークWの突合せ部の両端にタブ材Tがそれぞれ密着状態で確実に当接することになる。
【0073】
ワークWの突合せ部の両端にタブ材Tを密着状態で突き合わせたら、ワークリフターユニット6のワーク受けローラ34を上昇させてマンドレル2に支持されているワークWの下端部をワーク受けローラ34により押し上げると共に、左右の加圧機構35の加圧部材35cを加圧用シリンダ35bにより前進させてワークWの長手方向の両端部両側面を両側方から加圧し、ワークWの円周方向の両端を突合せる。このとき、ワークWの下端部がワーク受けローラ34により押し上げられているため、ワークWの形状が正面視において円筒形状から横長の楕円形状に変化し、ワークWの円周方向の両端部が一直線状に配置されてワークWの両端を密着させ易くなる。また、ワークWの長手方向の両端部両側面が左右の加圧機構35の加圧部材35cにより両側方から加圧されているため、予圧位置にある一対のクランプ板7cにより軽くバックバー3上へ押圧されているワークWの円周方向の両端が密着状態で突合される。
【0074】
ワークWの円周方向の両端が密着状態で突合されたら、クランプ機構7の一対のクランプ板7cを予圧位置から加圧位置へ下降させ、ワークWの円周方向の両端部をバックバー3上へ強く押圧固定する。
【0075】
尚、一対のクランプ板7cが予圧位置から加圧位置へ下降すると、各クランプ板7cが弾性体7dを圧縮しながら蝶番7bを支点にして上方へ揺動すると共に、各クランプ板7cの先端部が弾性体7dの圧縮分だけセンタープレート20側へ移動し、一対のクランプ板7c間の間隔が狭くなる。このとき、一対のクランプ板7cの先端部下面とワークWの円周方向両端部上面との間に強い摩擦抵抗が働き、ワークWの円周方向両端部を強く突き合わせる方向へ移動させる。その結果、ワークWの円周方向両端が加圧密着され、隙間のない突合せ接合面が形成されることになる。
【0076】
そして、ワークWの円周方向の両端がバックバー3上で突合せ固定されたら、マンドレル2のガス供給口(図示省略)からバックバー3のスリット溝3b内にアルゴンガス等のシールドガスを供給しつつ、溶接装置8によりワークWの突合せ部を突合せ溶接する(
図21参照)。
【0077】
即ち、溶接用トーチ8bが下降してタングステン電極棒の先端をマンドレル2の基端部側にあるタブ材Tの表面に臨ませ、この状態でタングステン電極棒とタブ材Tとの間にアークを発させ、このアークが安定した状態になってから走行台が駆動装置(図示省略)により前進して溶接用トーチ8bをワークWの突合せ部に沿って所定の速度で走行させ、ワークWの突合せ部を順次突合せ溶接した後、溶接用トーチ8bがマンドレル2の先端部側にあるタブ材Tの上へ来た時点で通電を停止してアークをストップする。
【0078】
ワークWの突合せ溶接が終了すると、バックバー3へのシールドガスの供給を停止すると共に、溶接装置8の溶接用トーチ8bが元の位置に復帰する。また、クランプ機構7によるバックバー3へのワークWの押圧状態を解除すると共に、マンドレル受け16aを鉛直位置から水平位置へ回動させてマンドレル2の先端を開放する。更に、左右の加圧機構35の加圧部材35cを後退させてワークWの両側方からの加圧状態を解除し、ワークWをフリーの状態にする。
【0079】
ワークWがフリーの状態になると、ワーク自動搬出機構9を作動させ、溶接済みのワークWをマンドレル2から引き抜く方向へ搬出する。このとき、ワークWは、ワーク受けローラ34上に支持されている。
【0080】
最後に、溶接済みのワークWからタブ材Tを切り離し、タブ材Tを切り離した部分を工具や機械等を用いて平滑に仕上げる。このようにして、円筒状に曲げ加工したワークWからパイプやドラム等の筒体を作製する。
【0081】
上述した水平型自動溶接装置は、ワークWの円周方向両端を突合せ溶接する際に、ワークWの突合せ部の両端にそれぞれタブ材Tを自動的に供給し、両タブ材TをワークW側へ押圧してワークWの突合せ部の両端にそれぞれ密着させる両端タブ自動供給機構5を備えているため、マンドレル2とクランプ機構7との間隔が狭くても、ワークWの突合せ部の両端にタブ材Tを自動的に簡単且つ容易にセットすることができると共に、ワークWの突合せ部の両端にタブ材TをワークWとの間に隙間を生じることなく密着状態で突き合せることができる。その結果、前記水平型自動溶接装置は、作業員がタブ材Tを一々セットする必要がなく、作業性に極めて優れていると共に、ワークWの突合せ部の両端に溶け落ちや穴あき等の溶接欠陥の無い安定した溶接を行える。
【0082】
また、水平型自動溶接装置は、溶接済みのワークWを押し出してマンドレル2から自動的に取り出すワーク自動搬出機構9を備えているため、マンドレル2とクランプ機構7との間隔が狭くても、溶接済みのワークWを簡単且つ容易に取り出すことができると共に、ワークWを一定の姿勢で取り出すことができ、ワークWがマンドレル2やクランプ機構7等と摺動接触し難くなり、ワークWの損傷や変形を防止することができる。
【課題】 ワークを突合せ溶接する際に、溶け落ちや穴あき等の溶接欠陥の無い安定した溶接を行えると共に、作業性の大幅な向上を図れ、しみも、溶接済みのワークを自動的に取り出せるようにする。
【解決手段】 フレーム1に水平姿勢で支持されたマンドレル2に円筒状に曲げ加工した金属板製のワークWを支持させ、ワークWの円周方向両端を突合せた状態でクランプ機構7によりマンドレル2の上面に設けたバックバー3上へ押圧固定し、ワークWの突合せ部をTIG溶接用トーチ8bを備えた溶接装置8により突合せ溶接して筒体を作製するようにした水平型自動溶接装置において、前記マンドレル2は、ワークWの円周方向両端を突合せ溶接する際に、ワークWの突合せ部の両端にそれぞれ板状のタブ材Tを自動的に供給し、両タブ材TをワークW側へ押圧してワークWの突合せ部の両端にそれぞれ密着させる両端タブ自動供給機構5を備えている。