(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5893199
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】走行台車
(51)【国際特許分類】
B61D 15/12 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
B61D15/12
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-147637(P2015-147637)
(22)【出願日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年7月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510195032
【氏名又は名称】新トモエ電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西尾 公志
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 宏行
(72)【発明者】
【氏名】菅原 真
【審査官】
黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−039921(JP,A)
【文献】
特開2014−213769(JP,A)
【文献】
特開2004−276676(JP,A)
【文献】
特開2000−025678(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3015707(JP,U)
【文献】
特開平07−271465(JP,A)
【文献】
特開2001−247021(JP,A)
【文献】
実開平03−124034(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3165888(JP,U)
【文献】
特開平06−032274(JP,A)
【文献】
特開平9−187112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 15/00−15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の左右両側において前後に配置される駆動輪及び従動輪と、
前記車体に設けられる座席と、
前記駆動輪を駆動する電動機と、
前記電動機と前記駆動輪を備える車軸との間に介在し、前記車軸に沿う方向に入力軸を有する減速機と、を備え、
前記電動機が、着脱可能なバッテリーを有する手持式の電動工具によって構成され、
前記電動工具は、出力軸を有する本体に対して把持部が前記座席側に位置するよう前記車体の床面上に配置され、前記出力軸の軸芯方向視において前記把持部が前記出力軸周りで前記床面に押し付けられる方向とは反対方向に前記出力軸が回転されて前記入力軸に前進側の駆動力が伝達される走行台車。
【請求項2】
車体と、
前記車体の左右両側において前後に配置される駆動輪及び従動輪と、
前記車体に設けられる座席と、
前記駆動輪を駆動する電動機と、
前記電動機と前記駆動輪を備える車軸との間に介在する減速機と、を備え、
前記電動機が、着脱可能なバッテリーを有する手持式の電動工具によって構成され、
走行速度を調整する速度調整部を備え、
前記速度調整部は、
前記電動工具において押圧操作により出力軸の回転速度を高めるトリガー部に対し、
前記トリガー部を押圧する押圧方向と前記トリガー部から離間する離間方向とに揺動可能となるように前記車体に保持される操作体と、
前記操作体を前記離間方向に付勢するスプリングと、
前記操作体に接続されて押引き操作可能なワイヤ部材と、を備えた走行台車。
【請求項3】
前記車体に前記電動工具を着脱可能に保持する保持部を備える請求項1又は2に記載の走行台車。
【請求項4】
前記座席の前方側に設けられ、前記車体の上面に起立する起立姿勢と、前記車体の後方側に倒されて前記車体の上面に沿う折畳み姿勢とに変更可能なハンドル部と、
前記座席の後部に設けられ、前記車体の上面に起立して前記座席を支持する起立姿勢と、前記車体の前方側に前記座席と共に倒されて前記車体の上面に沿う折畳み姿勢とに変更可能な座席支持部と、を備え、
前記電動工具、前記折畳み姿勢の前記ハンドル部、及び前記折畳み姿勢の前記座席支持部の夫々の高さが前記減速機の高さよりも低く設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の走行台車。
【請求項5】
前記ハンドル部及び前記座席支持部は前記車体の左右両側に棒状の脚部を有し、
前記脚部のうち前記折畳み姿勢となる際に屈折されずに残る下部が平面視において前記駆動輪又は前記従動輪を備える車軸上に設けてある請求項4に記載の走行台車。
【請求項6】
前記駆動輪を備える車軸及び前記従動輪を備える車軸の少なくとも一方の回転を抑制する第1ブレーキ部と、前記駆動輪及び前記従動輪の少なくとも一方に当接して回転を抑制する第2ブレーキ部とを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の走行台車。
【請求項7】
前記第1ブレーキ部が、前記車軸の回転を抑制する制動部と、前記制動部に接続されるワイヤ部材と、前記ワイヤ部材を押引き操作する操作レバーと、前記操作レバーに取付けられる駐車ブレーキレバーと、を備え、
前記駐車ブレーキレバーは、前記操作レバーに当接可能な当接部を有し、ブレーキ操作位置の前記操作レバーに前記当接部が当接して当該操作レバーがブレーキ作動位置に保持されるロック状態と、前記操作レバーから前記当接部が離間して前記ロック状態が解除される解除状態とに切換可能に構成されている請求項6に記載の走行台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑道内など、上下空間及び幅員がともに狭い通路において人員等を移動させるために走行する走行台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シールド工法においては、坑内のシールド本体の奥側で行われる堀削残土や資材等の運搬作業は、専用に敷設されたレール上を走行するトロッコや台車によって行われている。特に、上下水道や電力用洞道等の小径断面トンネルのように坑内空間が小さい(上下空間、幅員とも狭い)場合には、車体に搭載したモータを駆動源として車体上に座席とハンドルとを備えた走行台車が用いられる(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の走行台車は、車体の前後部に配置された4つの従動輪と、車体の中央部に配置された2つの駆動輪とを備えている。バッテリーに接続されたモータの回転が減速機を介して車軸に伝達され、駆動輪が回転する。駆動輪は走行レールに接する位置と走行レールから離れた位置とに変更可能である。これにより、走行台車は駆動走行と非駆動走行とが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−39921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、走行台車には、車輪駆動用の電動機とバッテリーとが配備されている。ただし、専用の電動機やバッテリーは重量が大きく、例えば坑内で使用する際に、走行台車を走行レールから離脱させる場合や走行方向を反転させる場合に労力が必要であった。また、専用の電動機やバッテリーであることで、故障発生時に使用者がメンテナンスを行うことは困難であった。
こうした実情に鑑み、軽量でかつメンテナンス性に優れた走行台車が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る走行台車の特徴構成は、車体と、前記車体の左右両側において前後に配置される駆動輪及び従動輪と、前記車体に設けられる座席と、前記駆動輪を駆動する電動機と、前記電動機と前記駆動輪を備える車軸との間に介在し
、前記車軸に沿う方向に入力軸を有する減速機と、を備え、前記電動機が、着脱可能なバッテリーを有する手持式の電動工具によって構成され
、前記電動工具は、出力軸を有する本体に対して把持部が前記座席側に位置するよう前記車体の床面上に配置され、前記出力軸の軸芯方向視において前記把持部が前記出力軸周りで前記床面に押し付けられる方向とは反対方向に前記出力軸が回転されて前記入力軸に前進側の駆動力が伝達される点にある。
【0007】
本構成では、走行台車の駆動輪を駆動する電動機として、着脱可能なバッテリーを有する手持式の電動工具を用いる。電動工具はモータ部とバッテリーとが一体となって構成されている。このため、車体にモータ部とバッテリーとを個別に配置する必要がなく、車体上のスペースを効率よく使用することができる。
【0008】
手持式の電動工具は片手で把持して作業するものであり軽量な工具であることから、走行台車の軽量化を図ることもできる。また、電動工具のバッテリーは小型であり工具本体から着脱可能であることから、バッテリーの交換や充電作業等が簡易となる。
【0009】
本発明に係る走行台車の他の特徴構成は、前記車体に前記電動工具を着脱可能に保持する保持部を備える点にある。
【0010】
本構成の如く、車体に電動工具を着脱可能に保持する保持部を備えることで、車体から電動工具を容易に取り外すことができる。取り外した電動工具は本来の用途で使用することもできる。車体から電動工具を取り外すことで走行台車が軽量になるため、走行台車の自力での移動が行いやすくなる。また、電動工具の動作に不具合等が生じた場合には、電動工具を取替えることで容易に対応することができる。
【0011】
本発明に係る走行台車の他の特徴構成は、前記座席の前方側に設けられ、前記車体の上面に起立する起立姿勢と、前記車体の後方側に倒されて前記車体の上面に沿う折畳み姿勢とに変更可能なハンドル部と、前記座席の後部に設けられ、前記車体の上面に起立して前記座席を支持する起立姿勢と、前記車体の前方側に前記座席と共に倒されて前記車体の上面に沿う折畳み姿勢とに変更可能な座席支持部と、を備え、
前記電動工具、前記折畳み姿勢の前記ハンドル部、及び前記折畳み姿勢の前記座席支持部の夫々の高さが前記減速機の高さよりも低く設定されている点にある。
【0012】
本構成の如く、折畳み姿勢にあるハンドル部と座席支持部とが減速機よりも低い位置となれば、走行台車を持ち上げて移動する際や収納する際に非常に扱い易いものとなる。
【0013】
本発明に係る走行台車の他の特徴構成は、前記ハンドル部及び前記座席支持部は前記車体の左右両側に棒状の脚部を有し、前記脚部のうち前記折畳み姿勢となる際に屈折されずに残る下部が平面視において前記駆動輪又は前記従動輪を備える車軸上に設けてある点にある。
【0014】
走行台車の前後方向において、座席がハンドル部と座席支持部との間に配置される。このため、ハンドル部及び座席支持部は車体の前後端寄りに配置される。折畳み姿勢のハンドル部及び座席支持部ではこれらの脚部のうち屈曲されずに残る下部は車体上に突出する。
また、車体では駆動輪又は従動輪が上下方向に突出して配置される。そこで、本構成では、この下部が平面視において駆動輪又は従動輪を備える車軸上に設けることとし、車体において上下方向に突出する部材を車輪の近傍の位置に集約してある。その結果、折畳んだ走行台車を持ち運ぶ際に、走行台車が他物に干渉する機会を減らすことができ、走行台車がより扱い易くなる。
【0015】
本発明に係る走行台車
の特徴構成は、
車体と、前記車体の左右両側において前後に配置される駆動輪及び従動輪と、前記車体に設けられる座席と、前記駆動輪を駆動する電動機と、前記電動機と前記駆動輪を備える車軸との間に介在する減速機と、を備え、前記電動機が、着脱可能なバッテリーを有する手持式の電動工具によって構成され、走行速度を調整する速度調整部を備え、前記速度調整部は、前記電動工具において押圧操作により出力軸の回転速度を高めるトリガー部に対し、前記トリガー部を押圧する押圧方向と前記トリガー部から離間する離間方向とに揺動可能となるように前記車体に保持される操作体と、前記操作体を前記離間方向に付勢するスプリングと、前記操作体に接続されて押引き操作可能なワイヤ部材と、を備えた点にある。
【0016】
本構成であれば、ワイヤ部材を押引き操作することで、電動工具のトリガー部に対する操作体の押圧状態が調整され、出力軸の回転速度が増減する。このように、電動工具のトリガー部を利用して走行台車の走行速度を調整することで、走行台車の速度調整部を簡素に構成することができる。
【0017】
本発明に係る走行台車の他の特徴構成は、前記駆動輪を備える車軸及び前記従動輪を備える車軸の少なくとも一方の回転を抑制する第1ブレーキ部と、前記駆動輪及び前記従動輪の少なくとも一方に当接して回転を抑制する第2ブレーキ部とを有する点にある。
【0018】
本構成の如く、走行台車のブレーキ部として、駆動輪または従動輪の車軸の回転を抑制する第1ブレーキ部と、駆動輪または従動輪の回転を抑制する第2ブレーキ部とを有することで、走行台車を確実に減速させることができ、安全な走行状態を実現することができる。
【0019】
本発明に係る走行台車の他の特徴構成は、前記第1ブレーキ部が、前記車軸の回転を抑制する制動部と、前記制動部に接続されるワイヤ部材と、前記ワイヤ部材を押引き操作する操作レバーと、前記操作レバーに取付けられる駐車ブレーキレバーと、を備え、前記駐車ブレーキレバーは、前記操作レバーに当接可能な当接部を有し、ブレーキ操作位置の前記操作レバーに前記当接部が当接して当該操作レバーがブレーキ作動位置に保持されるロック状態と、前記操作レバーから前記当接部が離間して前記ロック状態が解除される解除状態とに切換可能に構成されている点にある。
【0020】
本構成の如く、走行台車の第1ブレーキ部として、車軸の回転を抑制する制動部と、制動部に接続されるワイヤ部材と、ワイヤ部材を押引き操作する操作レバーと、操作レバーに取付けられる駐車ブレーキレバーと、を備えることで、走行台車を安定した停止状態にして駐車することができる。また、駐車ブレーキレバーは、当接部の位置を変えるだけで操作レバーがブレーキ作動位置に保持されるロック状態と、ロック状態が解除される解除状態との切換えが可能であるため、駐車ブレーキを簡易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】走行台車の起立状態への移行過程を示す斜視図である。
【
図5】走行台車の起立状態への移行過程を示す斜視図である。
【
図6】車体前側に配置された駆動機構の分解斜視図である。
【
図7】車体前側の駆動機構の構成を示す平面図である。
【
図9】駐車ブレーキレバーの動作状態(非ロック状態)を示す図である。
【
図10】駐車ブレーキレバーの動作状態(ロック状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、走行台車の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、走行台車1は、車体2、車体2に回転可能に設けられる前後各一対の車輪3,4、座席5、及びハンドル部6を備えている。前側の車輪3は駆動輪であり、後側の車輪4は従動輪である。車体2の前方には車輪3を回転駆動させる駆動機構9が配置されている。
【0023】
車体2は、上面が平坦で前後方向に長い扁平、例えば平面視において矩形状に形成されている。車体2の前後方向(長手方向)の長さは、例えば人が1人乗れる程度の寸法で形成されている。車体2は、鋼板やアルミ合金製の板材等で形成されている。
【0024】
車体2の後方側に座席5が設けられ、座席5の後部に座席支持部7が設けられている。
座席5は矩形等の平板状に形成され、座席5の下面には折畳み可能な支持脚51が設けられている。座席支持部7は、車体2の左右両側に配置される棒状の脚部71と、2本の脚部71の上端から車体2の左右内方に延設される上方水平部72と、2本の脚部71の上下方向の中間部位から車体2の左右内方に延設される中間水平部73と、を有する。脚部71は、折畳み姿勢となる際に屈曲される回動部71aと、屈曲されずに残る基部71bとを有する。基部71bは車輪4を備える後側の車軸14上に設けられている。座席5の後部は中間水平部73に揺動可能に固定されている。上方水平部72は着座姿勢の乗員の背当て部として用いることができる。
【0025】
座席5の左右両側には手摺部8が設けられている。手摺部8は、水平方向の延出部81と上下方向の支持部82とを備えてL字状に形成されている。脚部71の上部に沿って筒部74が設けられており、この筒部74に支持部82が挿入されて手摺部8が支持されている。支持部82の側面には突部82aが形成されており、筒部74には突部82aのガイド溝74aとして2本の上下溝と上下溝に連続して水平溝とが形成されている。手摺部8は、突部82aがガイド溝74aの一方の上下溝に位置すると延出部81が車体2の前後に延びる手摺姿勢となり、突部82aがガイド溝74aに他方の上下溝に位置すると延出部81が上方水平部72に沿う格納姿勢になるように構成されている。
【0026】
図1〜
図4に示すように、ハンドル部6は、車体2の上面に起立する起立姿勢と、車体2の後方側に折畳まれる折畳み姿勢とに変更可能に構成されている。ハンドル部6は、車体2の上面から上方に突出する棒状の脚部61と、脚部61の上端から車体2の左右内方に延設される水平部62とを有している。脚部61は、折畳み姿勢となる際に屈曲される回動部61aと、屈曲されずに残る基部61bとを有する。基部61bは車輪3を備える前側の車軸13上に設けられている。
【0027】
基部61bにはハンドル部6の姿勢を保持する固定レバー63が設けられている。固定レバー63は、回転操作により、基部61bに対して回動部61aが回動可能な解除状態と回動不能なロック状態とに切替えることができる。ハンドル部6を起立姿勢に保持する際には、例えば固定レバー63を一方向(例えば右回り)に回転させて固定レバー63と回動部61aとを連結状態にする。一方、ハンドル部6を起立姿勢から折畳み姿勢にする際には、固定レバー63を反対方向(例えば左回り)に回転させて固定レバー63と回動部61aとの連結状態を解除する。
【0028】
不使用時の走行台車1は、
図3に示すように、座席5、座席支持部7、手摺部8、及びハンドル部6が車体2に上面に沿って折り畳まれている。走行台車1を使用する際には、
図3の状態から、まずハンドル部6を起立状態(
図4)にし、次に座席支持部7を起立状態にする(
図5)。その後、座席5を車体2の上面に沿うように持ち上げて支持脚51を支持姿勢に変更するとともに、手摺部8の延出部81を車体2の前方に向く手摺姿勢に変更する(
図1)。
【0029】
車輪3を回転させる駆動機構9は、電動機20と、電動機20と車軸13との間に介在する減速機30と、を備える。電動機20は着脱自在のバッテリー26を有する手持式の電動工具によって構成されている。電動工具20は例えばドライバードリルであって、
図6に示すようにピストル型に形成されている。電動工具20は、筒状の本体21と、本体21の下面から突出した把持部22と、の下部に備えられたバッテリー26とを有する。
バッテリー26は把持部22に対して着脱自在に設けられている。本体21に設けられる出力軸には、チャック23を介して角柱状の嵌合部24(例えば六角レンチ)が取り付けられている。
【0030】
電動工具20は、チャック23が減速機30のケース31の孔部31aに挿入され、本体21のチャック23とは反対側の端部が車体2に設けられた保持部27に支持されている。保持部27は、車体2の上面に固定された基部27aと、基部27aに取付けられ車体2の左右方向に位置調整可能なボルト部材27bとを備えて構成されている。
【0031】
本体21と把持部22との境目の部分には、トリガー部25が設けられている。トリガー部25は内蔵される付勢部材によって外方に付勢され、トリガー部25を押圧することで電動工具20の出力軸の回転速度が増すよう構成されている。バッテリー26はリチウムイオン電池等で構成されている。
【0032】
減速機30は、ケース31に内装されており、電動工具20の出力軸に連結される第1軸32と、第1軸32の回転を伝達する第2軸33とを備える。第1軸32の端部には凹部を有する被嵌合部32aが設けられ、被嵌合部32aに電動工具20の嵌合部24に嵌合される。第1軸32には第1ギア34が設けられ、第2軸33には減速ギア35が設けられている。減速ギア35は複数のギアが軸方向に並設されている。電動工具20のトルク等に応じて1つの減速ギア35が適宜選択され、チェーン等を介して第1ギア34に接続されている。これにより、第1軸32の回転が第1ギア34及び減速ギア35を介して第2軸33に伝達される。第2軸33には出力用の第2ギア36が設けられ、第2ギア36から車軸13に設けられた入力用のギア(不図示)に回転が伝達されて車輪3が駆動する。
【0033】
こうして、電動工具20を駆動源として車輪3が回転し、走行台車1が自動(電動)走行する。電動工具20は本体21(モータ部)とバッテリー26とが一体となって構成されている。このため、車体2にモータ部とバッテリーとを個別に配置する必要がなく、車体上のスペースを効率よく使用することができる。手持式の電動工具20は片手で把持して作業するものであり軽量な工具であることから、走行台車1の軽量化を図ることもできる。また、電動工具20が保持部27に着脱可能に保持されるため、車体2から電動工具20を容易に取り外すことができる。
【0034】
走行台車1は、走行台車1の走行速度を調整が可能な速度調整部40を備える。速度調整部40は、電動工具20の回転速度を変更することで走行台車1の走行速度を調整する。速度調整部40は、ハンドル部6の水平部62の右側に配置されたアクセルグリップ41によって操作可能に構成されている。
【0035】
図7及び
図8に示すように、速度調整部40は、電動工具20のトリガー部25を操作する操作体42と、スプリング43と、操作体42に接続されて押引き操作可能なワイヤ部材44と、を備える。操作体42は、車体2に取付けられた蝶番42aに端部42bが保持され、トリガー部25を押圧する押圧方向とトリガー部25から離間する離間方向とに揺動可能に構成されている。ワイヤ保持部45が把持部22を挟んで操作体42に対向する位置に設けられている。ワイヤ部材44の一端はアクセルグリップ41に取付けられている。ワイヤ部材44の他端は、アウタワイヤ44aがワイヤ保持部45に取付けられ、インナワイヤ44bがワイヤ保持部45を貫通して延設され操作体42の端部42bに保持されている。スプリング43は、操作体42とワイヤ保持部45との間のインナワイヤ44bに外挿されており、操作体42を離間方向に付勢する。
【0036】
アクセルグリップ41を上部が後方側に移動する向きに回転操作することで、スプリング43に抗してインナワイヤ44bが引き操作されて操作体42が押圧方向に揺動する。
こうして、トリガー部25が操作体42によって押圧されると、電動工具20の出力軸の回転速度が上昇し走行台車1が増速する。一方、アクセルグリップ41の回転操作を緩めると、スプリング43の付勢力によってインナワイヤ44bが戻し操作され操作体42が離間方向に揺動する。これにより、トリガー部25が初期位置に向けて戻されるため、電動工具20の出力軸の回転速度は低下し走行台車1は減速する。
【0037】
走行台車1は、車輪(駆動輪)3を備える車軸13及び車輪(従動輪)4を備える車軸14の少なくとも一方の回転を抑制する第1ブレーキ部91と、車輪(駆動輪)3及び車輪(従動輪)4の少なくとも一方に当接して回転を抑制する第2ブレーキ部92とを有する。
【0038】
図1及び
図7に示すように、本実施形態の第1ブレーキ部91は、車軸13の回転を抑制する制動部95と、制動部95に接続されるワイヤ部材94と、ワイヤ部材94を押引き操作する操作レバー93とを備える。制動部95は、減速機30に配置されたブレーキドラム95aとブレーキシュー95bとを有する。ブレーキドラム95aは減速機30の第2軸33に取付けられており、第2軸33と一体的に回転する。ブレーキシュー95bはブレーキドラム95aの外周側に配備されワイヤ部材94に接続されている。操作レバー93を握り、ワイヤ部材94が引き操作されると、ブレーキシュー95bがブレーキドラム95aに当接する。
一方、第2ブレーキ部92は、車体2の左側であって車輪3の後方に設けられ、ブレーキペダル97とブレーキペダル97の裏面に配置されたブレーキパッド98とを備える。
ブレーキパッド98はゴム等で形成され車輪3に当接するよう構成されている。
【0039】
図9及び
図10に示すように、操作レバー93の基部には、駐車ブレーキレバー100が設けられている。駐車ブレーキレバー100は、回動軸101を挟んで操作レバー93に当接可能な当接部102と、操作レバー93の支持部材93aの内方に配置される係合部103とを備える。当接部102は操作レバー93の基部に外挿され操作レバー93の端部側に屈曲形成されている。操作レバー93を握り操作すると回動軸101が操作レバー93の回動軸93bに対して周方向に移動する。これにより、駐車ブレーキレバー100は回動軸101を中心に回動可能となる。なお、駐車ブレーキレバー100は、回動軸101に備えられたバネ部材(不図示)によって当接部102が操作レバー93から離間する向きに付勢されている。
【0040】
走行台車1を駐車する際には、操作レバー93を握り、駐車ブレーキレバー100の当接部102を操作レバー93の握り方向と同方向に回動させた後、操作レバー93の握り操作を緩めて当接部102に操作レバー93を当接させる(
図10)。その際、駐車ブレーキレバー100において、係合部103が操作レバー93の支持部材93aの内壁に設けられた凸部93cに当接する。このため、当接部102は操作レバー93から離間する方向への回動が規制される。これにより、操作レバー93がブレーキ作動位置に保持されるロック状態となり駐車ブレーキが機能する。このロック状態は操作レバー93を握り操作することで解除することができる。操作レバー93を握り操作すると、回動軸101が操作レバー93の回動軸93b回りに移動するため、係合部103は凸部93cから離脱する。これにより、駐車ブレーキレバー100は、回動軸101のバネ付勢を受けて操作レバー93から離間する方向に回動し、操作レバー93のロック状態が解除される解除状態となる。
【0041】
図1に示すように、ハンドル部6の水平部62には、警報ブザーB、前照灯L、速度計(不図示)等が必要に応じて配置される。その他、アクセルグリップ41の回転操作に連動して電動工具20の出力軸の回転速度の度合を示す回転速度表示部がアクセルグリップ41に隣接して配置してもよい。回転速度表示部では、例えばアクセルグリップ41の回転角度が増すに伴い、数字の増減表示や、高・中・低の表示等が行われる。これにより、電動工具20の回転動作状態を確認することができる。
【0042】
走行台車1は、坑内を移動後、坑内での作業の妨げにならないよう、走行レール上から外されて坑内の壁等に立て掛けられる。こうした走行台車1の不使用時には、座席5及び座席支持部7を折り畳んで車体2の前方側に倒すとともに、固定レバー63を操作してロック状態を解除してハンドル部6を車体2の後方側に倒して折畳み姿勢にする。座席支持部7の上方水平部72の上方にハンドル部6の水平部62が位置する状態で両者が折り畳まれる。座席支持部7は、ハンドル部6に押圧された状態となるため折畳み姿勢が維持され易くなる。これにより、例えば座席支持部7の脚部71を把持して走行台車1を移動させる場合にも、座席支持部7の姿勢が安定し、走行台車1の収納性及び持運び性が優れたものとなる。
【0043】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、電動工具20と減速機30との連結に際し、角柱状の嵌合部24として六角レンチを用いる例を示したが、嵌合部24は六角レンチに限定されず、広く凸状体と凸状体に嵌合される被嵌合部とによって連結される。
【0044】
(2)上記実施形態では、速度調整部40をアクセルグリップ41によって操作する例を示したが、速度調整部40をペダルによって操作する構成であってもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、ブレーキ部91,92が駆動輪である車輪3に作用する例を示したが、ブレーキ部91,92は駆動輪(車輪3)及び従動輪(車輪4)の両方に作用するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の走行台車は、幅狭な通路における人員等の移動に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 :走行台車
2 :車体
3 :駆動輪
4 :従動輪
5 :座席
6 :ハンドル部
7 :座席支持部
13,14 :車軸
20 :電動工具(電動機)
25 :トリガー部
26 :バッテリー
27 :保持部
30 :減速機
40 :速度調整部
42 :操作体
44 :ワイヤ部材
61,71 :脚部
61b,71b :基部
93 :操作レバー
100 :駐車ブレーキレバー
【要約】
【課題】軽量でかつメンテナンス性に優れた走行台車を提供する。
【解決手段】車体2と、車体2の左右両側において前後に配置される駆動輪3及び従動輪4と、車体2に設けられる座席5と、駆動輪3を駆動する電動機20と、電動機20と駆動輪3を備える車軸との間に介在する減速機30と、を備え、電動機20が、着脱可能なバッテリー26を有する手持式の電動工具20によって構成されている。
【選択図】
図1