(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893222
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】エネルギー供給システム内の条件に応じて電気通信ネットワークの電気エネルギー消費を時空間制御する方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20160310BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20160310BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20160310BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20160310BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 311T
H02J3/14
H02J3/00 130
H04Q9/00 301A
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-525836(P2015-525836)
(86)(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公表番号】特表2015-527862(P2015-527862A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】EP2013066260
(87)【国際公開番号】WO2014023654
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】102012107346.5
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597149146
【氏名又は名称】ドイッチェ テレコム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ランガ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,ハイコ
【審査官】
貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0106425(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0102936(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0302431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/06
H02J 3/00
H02J 3/14
H02J 13/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気通信ネットワークに空間的及び時間的に電力を供給する責任を負う電力グリッド内の条件に応じて前記電気通信ネットワークの電気エネルギー消費を時空間制御する方法であって、前記電力グリッドは、該電力グリッド内の構成要素の少なくとも一部の動作条件を監視する中央電力グリッド監視ユニットを備え、前記電気通信ネットワークは該電気通信ネットワーク内の電気通信ネットワーク構成要素の少なくとも一部を制御する電気通信制御ユニットを備え、該中央電力グリッド監視ユニット及び前記電気通信制御ユニットは、デジタル情報を交換するためにネットワークを介して互いに接続され、
前記中央電力グリッド監視ユニットと前記電気通信制御ユニットとの間で情報を交換することによって、高すぎる電力供給に起因する前記電力グリッドへの過負荷を検出するステップと、高すぎる電力供給の期間にわたって前記中央電力グリッド監視ユニットによってこの空間エリアにおける前記電気通信ネットワーク構成要素を構成することを通して、前記空間エリア内の前記電気通信ネットワークによる電力消費を増加させるステップと
を含む、電気通信ネットワークに空間的及び時間的に電力を供給する責任を負う電力グリッド内の条件に応じて前記電気通信ネットワークの電気エネルギー消費を時空間制御する方法。
【請求項2】
前記中央電力グリッド監視ユニットと前記電気通信制御ユニットとの間で情報を交換することによって、空間エリア内の低すぎる電力供給に起因する前記電力グリッド内の過負荷が検出されるとき、低い電力供給の期間にわたって前記中央電力グリッド監視ユニットによってこの空間エリアにおける前記電気通信ネットワーク構成要素を構成することを通して、前記空間エリア内の前記電気通信ネットワークの電力消費を削減する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気通信ネットワーク構成要素の電力消費を削減することは、
前記電力グリッドから前記電気通信ネットワーク構成要素を切り離し、UPS、無停電電源を通して動作するように構成することと、
UPSエネルギーを前記電力グリッドに送り込むように構成することと、
前記空間エリアを迂回して通信情報を再経路指定するために、前記通信情報の経路指定を変更するように構成することと、
前記空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素内の冗長構成要素をオフに切り替えるように構成することと、
前記空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素内の伝送速度を下げるように構成することと、
のうちの1つ又は複数を通して達成することができることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気通信ネットワーク構成要素の電力消費を増加させることは、
UPSを完全に充電するために前記UPSをオンに切り替えるように構成することと、
前記空間エリアを通して前記通信情報を経路指定するために、通信情報の経路指定を変更するように構成することと、
前記空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素内の冗長構成要素をオンに切り替えるように構成することと、
前記空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素内の伝送速度を高めるように構成することと、
無効負荷を起動するように構成することと、
のうちの1つ又は複数を通して達成することができることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記構成の選択は一時的負荷によって決まり、該一時的負荷は、負荷状況を予測し、それにより、都合の良い時間に前記構成を導入するために、予測モジュールによって予測される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記予測モジュールは前記空間エリアも予測する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中央電力グリッド監視ユニット及び/又は前記電気通信制御ユニットは、場所x及び時間tの関数に基づいて検出を開始するために、この関数として前記電気通信ネットワーク及び前記電力グリッドの両方の動作パラメータを記録する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記中央電力グリッド監視ユニットは、検出を可能にするために、出力電力と、周波数、位相角のような電力品質パラメータとを記録している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
過負荷が存在しなくなるまで、又は前記電気通信ネットワークが動作できなくなるまで、過負荷の場合に制御回路内で更なる構成が開始される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記構成を実施する前に、前記構成を変更することによって前記過負荷を十分に防ぐことができるか否かのチェックが行われ、当てはまらない場合には、新たな構成は開始されない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電気通信ネットワークに空間的及び時間的に電力を供給する責任を負う電力グリッド内の条件に応じて電気通信ネットワークの電気エネルギー消費を時空間制御する電気通信制御ユニットを備えるシステムであって、前記電力グリッドは、該電力グリッド内の構成要素の少なくとも一部の動作条件を監視する中央電力グリッド監視ユニットを備え、前記電気通信制御ユニットは前記電気通信ネットワーク内の電気通信ネットワーク構成要素の少なくとも一部を制御するように構成され、前記中央電力グリッド監視ユニット及び前記電気通信制御ユニットは、デジタル情報を交換するためにネットワークを介して互いに接続され、該システムは、
前記中央電力グリッド監視ユニットと前記電気通信制御ユニットとの間での情報の交換を通して、高すぎる電力供給による前記電力グリッド内の過負荷の検出時に、高すぎる電力供給の期間にわたってこの空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素を構成することを通して、前記空間エリア内の前記電気通信ネットワークの電力消費の増加を制御するように構成される、電気通信ネットワークに空間的及び時間的に電力を供給する責任を負う電力グリッド内の条件に応じて電気通信ネットワークの電気エネルギー消費を時空間制御する電気通信制御ユニットを備えるシステム。
【請求項12】
前記中央電力グリッド監視ユニットと前記電気通信制御ユニットとの間での情報の交換を通して、空間エリア内の低すぎる電力供給による前記電力グリッド内の過負荷の検出時に、低い電力供給の期間にわたってこの空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素を構成することによって前記空間エリア内の前記電気通信ネットワークの電力消費の削減の制御が実行可能であることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気通信ネットワーク構成要素の電力消費の削減は、
前記電力グリッドから前記電気通信ネットワーク構成要素を切り離し、UPS、無停電電源を通して動作するように構成することと、
UPSエネルギーを前記電力グリッドに送り込むように構成することと、
前記空間エリアを迂回して通信情報を再経路指定するために、前記通信情報の経路指定を変更するように構成することと、
前記空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素内の冗長構成要素をオフに切り替えるように構成することと、
前記空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素内の伝送速度を下げるように構成することと、
のうちの1つ又は複数を通して達成可能であることを特徴とする、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記電気通信ネットワーク構成要素の電力消費を増加させることは、
UPSを完全に充電するために前記UPSをオンに切り替えるように構成することと、
前記空間エリアを通して前記通信情報を経路指定するために、通信情報の経路指定を変更するように構成することと、
前記空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素内の冗長構成要素をオンに切り替えるように構成することと、
前記空間エリア内の前記電気通信ネットワーク構成要素内の伝送速度を高めるように構成することと、
無効負荷を起動するように構成することと、
のうちの1つ又は複数を通して達成することができることを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記構成の選択は予想される一時的負荷によって決まり、該一時的負荷は、負荷状況を予測し、それにより、都合の良い時間に前記構成を導入するために、予測モジュールによって予測される、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記予測モジュールは前記空間エリアも予測するように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記電気通信制御ユニットは、場所x及び時間tの関数に基づいて検出を開始するために、この関数として前記電気通信ネットワーク及び前記電力グリッドの両方の動作パラメータを記録するように構成される、請求項11〜16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記中央電力グリッド監視ユニットは、検出を可能にするために、出力電力と、周波数、位相角のような電力品質パラメータとを記録するように構成される、請求項11〜17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
過負荷が存在しなくなるまで、又は前記電気通信ネットワークが動作できなくなるまで、過負荷の場合に制御回路内で更なる構成を開始するために構成される、請求項11〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記構成を実施する前に、前記構成を変更することによって前記過負荷を十分に防ぐことができるか否かのテストを行い、当てはまらない場合には、新たな構成は開始するために構成される、請求項11〜19のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的には電気通信及びエネルギー供給の分野に関する。詳細には、本発明は、複数の制御可能な要素を備える分散電気通信システムの電気エネルギー消費の制御に関する。詳細には、本発明は、電気通信ネットワークに空間的及び時間的に電力を供給する責任を負う電力グリッド、より厳密には電気通信ネットワークに空間的及び時間的に電力を供給する責任を負うエネルギー供給グリッドの条件に応じて電気通信ネットワークの電気エネルギー消費を時空間制御する方法及びデバイスを含み、電力グリッドは、電力グリッド内の構成要素の少なくとも一部の動作条件を監視する中央電力グリッド監視ユニットを有し、電気通信ネットワークは、電気通信ネットワーク内の電気通信ネットワーク構成要素の少なくとも一部を制御する電気通信制御ユニットを有する。
【背景技術】
【0002】
情報技術及び電気通信技術のシステムによるエネルギー消費は現在、世界中で著しく上昇しつつある。この上昇の背景にあるのは、2つの次元におけるインターネットアプリケーションの著しい増加である。第一に、インターネットは、益々増え続けるユーザーによってアクセスされている。「ユーザー」という用語は、遠隔制御される製品又はセンサーシステムのような自動化されたユーザーも含む。第二に、アプリケーションが、空間的に離れた異なる構成要素間のデータ伝送に関する帯域幅要件と、自動計算のための要件との両方を拡大しつつある。ネットワークが現在のアーキテクチャ及びシステムエンジニアリングパラダイムに従って需要に応じて拡張されるものと仮定すると、上記の全ての成長現象が、それに応じて、電通信ネットワークによって消費されるエネルギー量の成長も引き起こす。2007年に、55.4TWhであるICT関連エネルギー消費は、ドイツにおける全エネルギー消費の既に10.5%であった。対策を講じない場合、2020年には、約66.7TWhまでの20%を超える増加が予想される[1]。
【0003】
組織的に変更された枠組み条件が、2011年夏のドイツ連邦政府の計画決定に従って、このエネルギーの調達に適用される(「エネルギー移行」[2])。詳細には、システム関連の規模の中に太陽光エネルギー及び風力エネルギーのような再生可能エネルギー供給業者を含むことにより(2011年において、電力供給の約20%のシェアであり、それゆれ、熱及びモビリティを含む、全最終エネルギー消費の約12%である[3])、稼働率の変動及び価格リスクにつながる恐れがある。したがって、エネルギー貯蔵及び負荷変位のような、質的に新しいプロセスを工業規模で実施し、制御しなければならない。
【0004】
この背景に対して、本発明の本説明による方法及び構成は、電気エネルギーの大量消費者、すなわち、電気通信ネットワークを、空間的及び時間的自由度において制御する機構を提供する。
【0005】
本出願の目的は、エネルギー供給ネットワークの負荷状況に応じて、電気通信ネットワークの電気エネルギー消費の時空間制御を最適化することである。この目的は、請求項1による方法及び請求項11によるシステムによって果たされる。更なる有利な実施形態は従属請求項において明確に述べられる。
【0006】
合計すると、電気通信ネットワークは相対的に大きな電気的負荷を表しており、その上、その負荷は大きな地理的エリア、例えば、国の面積にわたって分散する。実際のネットワークエンジニアリングに加えて、そのようなネットワークの運用は、技術室及び事務所と、他の支援機能、例えば、それ自体が自らエネルギーを消費する、技術室用の空調とを必要とする。本明細書において提示される本発明の説明の意図の範囲内で、これら全てのエネルギー要件が電気通信ネットワークのエネルギー消費に含まれる。
【0007】
電気通信ネットワークという用語は、その間で情報を交換することができるような端末の接続を意味するものと理解されたい。
【0008】
電気通信ネットワークの例は電話網、コンピュータネットワーク、IPネットワークである。
【0009】
この構成において、端末間の接続は有線又は無線とすることができる。接続のタイプによって、種々のネットワークトポロジが区別される。しかしながら、1つのネットワーク内で異なるトポロジを用いることもできる。電話網において、加入者施設が星形で地域交換局に接続されるが、地域交換局は、部分的に網状のネットワークを介して互いに接続される。これらの接続を介してデジタル情報及びアナログ情報を送信することができる。これらの情報は、必要に応じて、より高い周波数に変調することができる。デジタル情報はラインコードで符号化することができる。この構成では、端末に加えて使用される構成要素は、基地局、レジスタ、スイッチ、ルーター、ゲートウェイ、交換局までの変換器、サーバー等からの種々のタイプからなることができる。このリストは一例にすぎない。技術に応じて、複数の異なる構成要素を用いることができる。
【0010】
重要性に応じて、これらの構成要素はバックアップシステムを用いて冗長に構築され、異なる動作モードにおいて運用することができる。このようにして、冗長構成要素をオン及びオフに切り替えることができ、動作速度を調整することができ、伝送速度及び能動構成要素の数を決定することができ、すなわち、十分に利用可能であるプロセッサ及び構成要素のオン及びオフの切り替えを決定することができる。さらに、電力グリッドからの供給がない場合でも動作を行うことができるように、無停電電源をオン及びオフに切り替えることができる。これらの全ての構成要素及びその変更された運用が、電力消費及びエネルギー要件に影響を与える。それらの機械は中央制御することができ、特に地域別に制御することもできる。
【0011】
さらに、電気通信ネットワークはエネルギー貯蔵要素(UPSシステムの一体部品)を含み、エネルギー供給が瞬断する場合であっても、信頼性のあるネットワーク運用を保証するために用いられる。電気通信ネットワークサイトにおいてエネルギー貯蔵要素を従来技術に従って用いて、電気通信ネットワークの要素への無瞬断電圧供給を明確に確保する。
【0012】
今日の従来技術によれば、一定の時点においてネットワークの実際の拡張段階が考えられる場合には、電気通信ネットワークのエネルギー要件は一定である。電気通信ネットワークは、予備に加えて、予想されるピークトラフィック需要をカバーできるだけの容量に構成される。その際、このネットワーク容量は永続的に利用可能であり、ネットワークのエネルギー要件を決定する。この挙動は、最初にネットワーク要素のハードウェア特徴によって、次に現在のネットワーク運用及び制御システムパラダイムによって決定される。対照的に、電気通信ネットワーク内の実際のトラフィック需要は、検討対象のネットワーク部分に応じて、或る程度まで非常に大きく変動する。例えば、[4]、[5]を参照されたい。これらのトラフィック変動は日々のサイクルにおいて、又は毎週、又は季節ごとに観測することができる。要するに、送信され、処理されることになる電気通信ネットワーク内のトラフィック量は、背景技術において述べられた成長因子に基づいて、大きく増加するものと予想される[6]。
【0013】
図1は電気通信ネットワークの主要構成要素を概略的に示しており、説明された従来技術によれば、それらの構成要素は、特にエネルギー貯蔵要素及び空調プラントとともに、エネルギー消費に連帯的に寄与する。システム特性はエネルギー移行を通して生じるので、電気通信ネットワークに対するエネルギー供給は、システム特性に合わせなければならない。この文脈において、物理的特性は規制条項と区別されなければならない。第1のカテゴリは以下のものを含む。
【0014】
再生可能エネルギー源からの分散送込みエネルギーの量は絶えず増加している。この場合、供給における自然変動(日照時間、風力)が、全供給量を計画するのを難しくする。大規模な均衡作用が理論的に証明されているが、中期的に利用可能でないインフラストラクチャに基づく。
【0015】
分散送込みによって、特に低電圧ネットワークにおいて逆の負荷潮流が生じるが、高いネットワークレベルにおいても次第に逆潮流になる。このようにして、エネルギー流の広い変動範囲の結果として、線路拡張のための寸法決めにジレンマが生じる−拡張は高いCAPEX入力(資本支出)を伴うピーク負荷に集中すべきであるか、又は最適な投資を伴う平均値に集中すべきであるか?
【0016】
将来の拡張のための寸法決めの問題に加えて、既存の低電圧ネットワークへの分散送込みは、例えば、周波数を維持すること、及び無効電力を与えることに関連する、深刻なネットワーク安定性問題を引き起こす。
【0017】
これらの物理的特性は、再生可能エネルギー供給業者に切り替える全ての国内供給システムにおいても同様に予想することができる。しかしながら、法的に規定された重要な特性は国内仕様であり、単に移行することはできない。詳細には、この場合、以下の事実が当てはまる。
【0018】
エネルギー市場における役割モデルは、個々の市場参加者間の責任及びプロトタイプ契約関係を支配する。原理的には、競合的に編成された市場部門と、規制当局の規定が当てはまる規制部門とが区別される。
【0019】
規制された送電機能と競合的に編成された発電との間の交互の関係がここで特に問題になる。
【0020】
例えば、送込みに優先順位を付けるか、バランシンググループのスケジュールを通知するか、又は平衡電力を利用可能にする方法モデルは、それゆえ、システム全体における安定性及び予測可能性を強化することを目的としている。しかしながら、これは、物理的要因が正確に表される程度まで成功するにすぎない。
【0021】
制御可能なエネルギー消費サイトと、供給システム全体の全ての部門において全体をカバーする貯蔵及び発電能力とを有し、全体として全国内電力消費の大きなシェアを占める電気通信ネットワークが、言及されたシステム特性を構成する際に、特定の方法で積極的な役割を担うことになる。
【0022】
さらに、電力グリッド、より厳密には、エネルギー供給企業を通して消費者に電気エネルギーを供給する統合グリッドを表すエネルギー供給グリッドが存在する。消費者に電気エネルギーを供給するために、発電機(発電所及び風力発電所)から消費者まで線路が必要とされる。この目的を果たすために、様々な規定電圧を有する電力グリッドが用いられる。交流の場合、周波数も規定される。この場合、発電機、変電所、変圧器及び配電所を備える発電機が存在する。1つ又は複数の発電所から電気を供給される統合グリッドの地域部門もよく存在する。グリッドは高電圧グリッド、中電圧グリッド及び低電圧グリッドであり、後者は通常、所帯に供給するために230V〜400Vにおいて運用される。高電圧グリッドは通常110kVにおいて運用される。消費者に電気エネルギーを供給するために、発電機(発電所及び風力発電所)から消費者まで線路が必要とされる。この目的を果たすために、様々な規定電圧を有する電力グリッドが用いられる。交流の場合、周波数も規定される。構成要素の大部分は、システム事業者によって監視され、検査され、制御される。これは通常、地域ごとに行われるが、州(地方)規模で行うこともできる。これにより、障害の場合に、グリッド外の発電所をオンに切り替えることができるようになる。過剰なエネルギーは解放することもできる。例えば、大量の風力エネルギー又は太陽光エネルギーが入手可能である場合には、隣接するグリッドに送ることができる。過負荷が生じているときに、発電機をオフに切り替えることも実現可能である。したがって、システム事業者は情報を共有し、その情報は地域ごとに視認することもできる。デジタルデータ伝送を提供することにより、発電所の利用容量若しくは過負荷、又は任意の損傷でさえ知ることができる。この場合、1つの地域は、局所的なエネルギー発生器から主にエネルギーを供給される空間エリアであると見なされる。通常、エネルギーは長距離にわたって伝送されない。したがって、これらの空間エリアは、10km〜400kmの範囲内にあるエリア、すなわちドイツ連邦州である。必然的に、それにより、電力グリッド事業者のエリアをカバーすることができる。
【0023】
特許文献1から、そのエネルギー消費規模が局所的に限られていると理解される、すなわち、ローカルネットワークの電気的負荷のみが考慮され、ワイドエリアネットワークは情報の交換のためにのみ用いられる電気通信ネットワークが既知である。電気通信ネットワーク内のエネルギー消費の中央制御ロジックは開示されない。特許文献2は、外部において規定された値「電力コスト」によって、経路指定が変更されるプロセスを開示する。経路指定を変更するのに適した構造的要素は、「ネットワーク管理システム」、すなわち、電気通信ネットワークにおけるこれまでの制御構成要素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0303431号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0284287号
【発明の概要】
【0025】
本発明は、電力グリッド内の条件に応じて電気通信ネットワークの電気エネルギー消費を時空間制御するシステムのための方法によって達成され、そのシステムは、電気通信ネットワークに空間的かつ時間的に電力を供給する責任を負い、電力グリッドは、電力グリッド内の構成要素の少なくとも一部の動作条件を監視する中央電力グリッド監視ユニットを有し、電気通信ネットワークは、電気通信ネットワーク内の電気通信ネットワーク構成要素の少なくとも一部を制御する電気通信制御ユニットを有する。エンドユーザーのモバイル端末又はPC及びルーターのような、電気通信ネットワーク内の端末にはアクセスができないため、多くの場合に、システム事業者によって電気通信制御ユニットを通して直接制御できないことに留意されたい。しかしながら、間接制御を行うことができ、それにより、この装置が接続されるノードは、その容量及び伝送速度を低減し、それも顧客の端末内の電力消費の削減に寄与する。なぜなら、その装置は、データを処理するときに、低周波数及び低速で動作しなければならないためである。直接制御は通常、バックボーンエリア内で行われ、バックボーンエリアには、交換機、ルーター、スイッチ、基地局及び他の高性能システムが配置され、複数の加入者のための大量のデータを輸送する。これらの構成要素は、速度を高める並列データ処理を実施するために多くの場合に複数のプロセッサを有する。また、これらのデバイスは内部クロック速度を有し、それにより、これらのデバイス内のチップにクロックが供給され、それが更に処理速度を決定する。そのようなデバイスは通常、電力制御することができ、その結果、スループットが下がり、電力消費も削減される。
【0026】
電力グリッド監視ユニット及び電気通信制御ユニットは、デジタル情報を交換するために、ネットワークを介して互いに接続される。
【0027】
本発明の方法は、以下のステップを含む。
前記電力グリッド監視ユニットと前記電気通信制御ユニットとの間で情報を交換することによって、空間エリア内の低すぎる電力供給を通じて前記電力グリッドへの過負荷を検出するステップと、低い電力供給の期間にわたって前記電力グリッド監視ユニットによってこの空間エリアにおける前記電気通信ネットワーク構成要素を構成することを通して、前記空間エリア内の前記電気通信ネットワークによる電力消費を低減させるステップ、
及び/又は、
前記電力グリッド監視ユニットと前記電気通信制御ユニットとの間で情報を交換することによって、高すぎる電力供給を通じた前記電力グリッドへの過負荷を検出するステップと、高すぎる電力供給の期間にわたって前記電力グリッド監視ユニットによってこの空間エリアにおける前記電気通信ネットワーク構成要素を構成することを通して、前記空間エリア内の前記電気通信ネットワークによる電力消費を増加させるステップ。
【0028】
電気通信ネットワーク構成要素の電力消費の削減を達成するように意図された方法の好ましい実施形態では、以下の構成のうちの1つ又は複数を実施することができる。
−UPS、無停電電源を通して電気通信ネットワーク構成要素を電力グリッド及び運用から切断する。電気通信ネットワークの複数の構成要素がUPSによって保護されるという事実に起因して、そのエネルギーを用いて、電力グリッドを短時間だけ救済することができる。そのような救済によって電池が放電され、それにより、ネットワークは使用されなくなる。代替の実施形態では、前方に長い経路がある場合であっても、これが電気通信ネットワークの動作を劣化させない場合には、そのエネルギーを用いて、電力グリッドに直接フィードバックすることができる。
−通信情報が空間エリアを迂回するために、通信情報の経路指定を変更する。これにより、空間エリアを通して通常供給される大量のデータストリームが、このエリアを迂回できるようになる。通常冗長に構築されるパケット指向ネットワークによれば特に、データトラフィックが迅速に再経路指定することができ、それにより、データトラフィックが持続的に削減されるように、幾つかのルーターを適応させることによって、そのような経路指定変更を非常に迅速に達成することができる。接続指向ネットワークもそのような可能性を与えることに留意されたい。データトラフィックを削減することを通して、データトラフィックの品質を実質的に低下させることなく、そのエリア内の個々の構成要素の伝送速度も通常低減される。
−空間エリア内の電気通信ネットワーク構成要素内の冗長構成要素をオフに切り替える。先に既に説明されたように、ネットワーク構成要素は多くの場合に、より高い処理速度を与えるために、又は障害の場合に冗長性を与えるために用いられるネットワーク接続、プロセッサ、作業メモリのような冗長構成要素を有する。必然的に、短期間に必要とするエネルギーを少なくするために、2つの構成要素をオフに切り替えることができる。
−空間エリア内の電気通信ネットワーク構成要素の伝送速度を低減する。この手法も先に既に論じられており、データの伝送速度の低減は、毎秒少ない数のビットを送信することによって達成することができる。これにより、処理時間が実質的に短くなり、かつ個々のネットワーク構成要素の動作が遅くなり、それにより節約につながる。
【0029】
更なる実施形態では、例えば、風力発電所又は太陽光プラントからの代替のエネルギーの供給が、エネルギーネットワーク内に余剰量を引き起こす可能性がある。そのような状況では、特にエネルギー不足である更なる構成要素を起動することが望ましい場合がある。それゆえ、特にエネルギーを大量に使用する特定のタスクが、この期間中に実行されることも考えられる。そのようなタスクは、例えば、緊急性のない大量のデータをバックアップすることである。例えば、マルチメディアデータのようなデータの配信は、この期間に入る可能性がある手法である。例えば、UPS電池を再充電しながらUPSシステムを試験することのような、特に高いエネルギー消費を有する保守管理作業を考えることもできる。電気通信ネットワーク構成要素による電力消費の増加は、以下の構成のうちの1つ又は複数を通して達成することができる。
−IPSを完全に充電するために、IPSをオンに切り替える。例えば、特定のUPSが設置され、その際、高いエネルギー供給が存在する場合には充電されることが考えられる。
−空間エリアを通して通信情報を誘導するために通信情報の経路指定を変更する。
−スループットを高めるために、空間エリア内の電気通信ネットワーク構成要素の冗長構成要素をオンに切り替える。
−スループットを高めるために、空間ドメイン内の電気通信ネットワーク構成要素内の伝送速度を高める。
−無効負荷を起動する。
【0030】
更なる可能な実施形態では、その構成は一時的過負荷によって決まり、一時的過負荷は、負荷状況を予測し、それにより、都合の良い時間に構成を導入するために予測モジュールによって予測される。この予測モジュールは、従来技術において既知である統計分析データ及びモデルを使用することができる。特定のパターンが生じる場合には、予備的措置を導入して、構成要素を適切に制御することができる。詳細には、気象データも導入することができ、そのデータから、十分な日光又は強い風から過剰なエネルギー供給が予想されるか否かを確認することができる。さらに、可能な実施形態では、予測モジュールは、起こり得る過負荷状況の持続時間及び程度と同じように空間エリアを決定することができる。あまりにも多くのエネルギーが与えられるとき、及びあまりにも少ないエネルギーが与えられるときのいずれにおいても、過負荷状況が生じることに留意されたい。いずれの状況も電力ネットワークにとって危機的である可能性がある。
【0031】
更なる実施形態では、電気通信ネットワーク及び電力グリッドの両方の動作パラメータは、電力グリッド監視ユニット及び/又は電気通信制御ユニットによって場所x及び時間tの関数として記録され、この関数に基づいて検出を開始する。
【0032】
更なる実施形態では、検出を可能にするために、電力グリッド監視ユニットによって、出力電力と、周波数、位相角のような電力品質パラメータと、オプションで他のパラメータとが記録される。
【0033】
更なる実施形態では、過負荷が存在しなくなるまで、又は電気通信ネットワークが運用できなくなるまで、過負荷の場合に制御回路内で更なる構成が開始される。このようにして、講じられた措置が過負荷に対応するのに十分であったか否かをチェックすることができる。これが成功しなかった場合には、更なるステップを導入することができる。したがって、このステップは徐々に進行することが考えられる。フィードバック手法を通して、これらのステップ及び構成は、その後さらに、特定の構成が開始された場合にどの程度のエネルギーを節約することができるかを示すことができる。それゆえ、実施態様の節約可能性及び速度を記録することによって構成を分類することができる。更なる態様は、それらの構成の長期性を実証することができる。UPSを起動することは通常、短期構成のみであり、それにより、電力グリッドは数分から数時間の時間枠内で救済される。持続した救済は、このようにして達成することはできない。対照的に、伝送速度、より厳密には、帯域幅は通常、電力消費に関して長期で、持続した削減につながる。予測及び状況に応じて、適切なステップ及び構成を導入することができる。
【0034】
更なる手法では、構成を実施する前に、構成を変更することによって過負荷を十分に防ぐことができるか否かがチェックされ、防ぐとは言えない場合には、新たな構成は開始されない。これは、緊急時に、UPS構成要素を依然として十分に使用できるという利点を有する。
【0035】
本発明の更なる部分は、電気通信ネットワークに空間的及び時間的に電力を供給する責任を負う電力グリッド内の条件に応じて電気通信ネットワークの電気エネルギー消費を時空間制御する電気通信制御ユニットを備えるシステムであり、電力グリッドは、電力グリッド内の構成要素の少なくとも一部の動作条件を監視する中央電力グリッド監視ユニットを有し、電気通信制御ユニットは、電気通信ネットワーク内の電気通信ネットワーク構成要素の少なくとも一部を制御するように構成され、電力グリッド監視ユニット及び電気通信制御ユニットは、デジタル情報を交換するために、ネットワークを介して互いに接続され、そのシステムは、
電力グリッド監視ユニットと電気通信制御ユニットとの間の情報の交換を通して、空間エリア内の供給が少なすぎることから電力グリッド内に生じる過負荷を検出した時に、電力供給が少ない期間にわたってこの空間エリア内の電気通信ネットワーク構成要素の構成によって、空間エリア内の電気通信ネットワークの電力消費の削減を制御できるように構成され、
及び/又は、
電力グリッド監視ユニットと電気通信制御ユニットとの間の情報の交換を通して、電力供給が多すぎることから電力グリッド内に生じる過負荷を検出した時に、電力供給が多すぎる期間にわたって、この空間エリア内の電気通信ネットワーク構成要素の構成によって、ネットワーク構成要素がより多くのエネルギーを消費するように、空間エリア内の電気通信ネットワークの電力消費の増加を制御できるように構成される。
【0036】
スマートグリッドに関して本発明が提供する決定的な利点は、ネットワークタイプによって規定される消費者と、統合貯蔵容量との協調制御である。消費のネットワークタイプ構造によって、負荷変位又は貯蔵サービスが規定される階層レベルを選択できるようになる。原理的には、これは、「微視的」レベル−最終消費者のレベル、近似的に言うと、戸建て住宅と、「巨視的」レベル−恐らくバランシンググループ又は制御エリアによって与えられるレベルとの間で異なる可能性がある。ここで、低い階層レベルにおける不安定は難なく取り除くことができる場合もあるが(例えば、依然として低電圧範囲において光起電送込み電力を中間バッファリングすることによる)、そのような不安定が高いネットワークレベルに渡されると、修復作業が著しく増加することに留意されたい。本発明の極めて重要な特徴は、この階層的に分解された措置の自由を可能にする中央制御システムである。これは、一例として以下の表に列挙される。
【0038】
平衡電力の供給は送電システム事業者(TSO)の責任と、一次平衡、二次平衡及び三次平衡のカスケードとに細分される。一例として二次平衡が調べられる。正及び負の電力供給が、実際の需要からの偏差とログオンスケジュールとに応じて、正常事例の開始後の15分〜1時間の時間枠において生じる。この文脈において、参照値は制御エリアである(ドイツは4つの制御エリアを有する)。全ての参照値の相互接続は電気通信ネットワークに統合され(UPSシステムを充電又は放電する、ユーザーをオン又はオフに切り替える)、それらの値は該当する制御エリア内に位置し、TSOが利用できるようになる全平衡電力を生成する。このための組織体系は本発明において記述される方法及び構成から構成される。
【0039】
本発明の極めて重要な技術的に際立った特徴は、制御システムアーキテクチャにあり、そのアーキテクチャによれば、制御可能な消費者及び貯蔵ユニットの分散した集合体の空間的及び時間的な選択的相互接続及び制御を、異なる使用シナリオに分解できるようになる。このために、制御システムは、監視モジュールと、予測モジュールと、最適化アルゴリズムとを含む。さらに、最適化アルゴリズムは、優先順位制御システムを異なる使用シナリオに対して事前に設定できるように、パラメータによって構成することができる。
【0040】
以下の図の説明は、取り得る実施形態に関する具体的な表現であり、応用形態を限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】典型的な消費者(ネットワーク技術、営業所及び技術室、事務所の空調及び無停電電源用のシステム)を有する電気通信ネットワークの主な構成の図である。
【
図2】本発明による制御構成の動作原理の概略図である。
【
図3】エネルギー供給の障害によって影響を及ぼされる地域において正常動作モードから「緊急」動作モードへネットワークトポロジを切り替える図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下は本発明の動作原理の説明である。
【0043】
図2は、本発明による制御システムの動作原理を概略的に示す。ここで、これが実施例を用いて詳述され、例示される。
【0044】
本発明のコア部分は、電気通信ネットワーク内の帯域幅生成、電気通信ネットワーク内のエネルギー貯蔵の管理、及びエネルギーグリッド事業者の供給グリッドからの電気通信ネットワークのエネルギー消費のための均一でグローバルな制御システムである。
【0045】
制御システムは、更に説明される特徴を有する以下のモジュールを含む。
【0046】
監視モジュール:監視モジュールは、トラフィック需要及び帯域幅需要並びにそれに関連付けられる負荷適応動作グリッド内の電力消費に関する、電気通信ネットワーク内の動作状態と、エネルギー供給グリッド内で生成された利用可能なエネルギー量に関する状態との両方を記録する。電気通信ネットワークにおいて、ネットワーク内の極めて重要な点においてトラフィックを測定することができる。例えば、トラフィック需要及び関連する電力消費も記録し、(将来の)グリッド要素内に記憶することができ、そのような機構が現在標準化されつつある。
【0047】
電力グリッド内の監視はエネルギー供給グリッドにおいて一般的に行われている。グリッド内の適切な点、大抵の場合に、より高い集中電圧レベルにおいて、電力、無効電力、電流、位相角及び周波数が測定される(グリッド周波数における過大振動及び振動不足がグリッドの安定性にとってますます重要になりつつある)。需要及び供給の相違は周波数ドリフトとして表される。
【0048】
予測モジュール:予測モジュールは、電気通信ネットワーク内の時間及び場所、電力消費、それに関連付けられる需要と、エネルギー供給グリッド内の発電から入手可能なエネルギー量とによって決定されるデータトラフィック需要を予測する。ここでは、数ミリ秒(電気通信ネットワークリソースのオン及びオフの切り替え)から数日(電力量及びエネルギー価格)に及ぶことができる異なる時間スケールを考慮することが特に重要である。入手可能な履歴情報(トラフィック量、エネルギー要件、エネルギー価格等)に基づいて、統計的方法を用いて、将来の挙動が予測される。予測における更なる重要な構成要素は、再生可能エネルギー(風力及び太陽光)の利用可能性に関する気象依存供給予測であり、その予測は気象予報(測定値に基づくシミュレーション計算)の形で生成される。したがって、予測モジュールは、統計分析と、現在の測定値及びシミュレーションシステムとを組み合わせる。
【0049】
最適化モジュール(制御システムのためのアルゴリズムモデル):制御システムの最適化コアは、異なるコスト関数に従って電気通信ネットワーク及びエネルギー供給グリッドからなる結合されたシステムを最適化することができる。この例は以下の通りである。
・CO2放出の最小化
・電気通信ネットワーク事業者に対する事業最適化
・エネルギー供給企業に対する事業最適化、特に予備エネルギーの好ましい供給
・エネルギー供給グリッドの安定性に関する最適化
・電気通信ネットワーク事業者に対する経済的最適化(ここでは、エネルギー取込みとは別である)
【0050】
制御モジュール:制御モジュールは、アルゴリズム最適化方法による最適化結果に従って、電気通信ネットワーク内の個々のネットワーク構成要素と、エネルギー供給グリッドとを制御する。制御モジュールは、適切なプロトコル及びインターフェースを通してローカルエンティティに影響を与えることができる中央エンティティからなる。UPSシステムとして設計される貯蔵要素のローカル制御のために特殊なコントローラーアーキテクチャが実現されなければならない。
【0051】
詳細には、電気通信ネットワーク及びエネルギー供給グリッドの両方における意思決定は、異なるネットワークレベルに従って階層的に進行する。監視モジュールは、検出された障害の空間的な広がりを提供する。予測モジュールは、あり得るこの障害の挙動を空間的及び時間的に提示する。最適化モジュールは、電気通信ネットワークの電気的要素が入手可能である起こり得る影響をチェックし、その後、最適な応答を決定する。この文脈において、上記のように、可能な限り低いネットワークレベルが用いられることが不可欠である。例えば、星形配電網の分岐内の電圧の危機的な降下又は上昇が、可能な場合には、この分岐自体の中にある単一のUPSシステムによって吸収される。そのようなシステムが利用できない場合には、次に高い階層レベルが選択され、措置が開始される。
【0052】
図2による方法は以下の通りである。監視モジュールが、電気通信ネットワーク及びエネルギー供給グリッドの両方の動作パラメータを場所x及び時間tの関数として記録する。この場合、動作パラメータは、送込み電力、負荷挙動(出力電力)、電力品質パラメータ(例えば、周波数、位相角等)及び更なる適切なパラメータである。さらに、エネルギー供給業者の制御室からの外部情報が含まれる。電気通信ネットワークのための動作パラメータも同様に記録される。これらは、送信電力(ビット速度及び帯域幅)、電力消費、エネルギー貯蔵レベル、起動された経路指定パターン、及び更なる適切な参照値であり、いずれの場合も場所x及び時間tの関数である。統計アルゴリズムに基づいて、割り当てられた各予測モジュールが、x及びtに従って決定された上記の動作パラメータを予測する。提案された方法による構成要素が、エネルギー供給グリッド内で危機的な状況に達したか否かを繰り返しチェックする。これは、監視モジュール又は予測モジュールが識別する事象と、例えば、損傷との両方とすることができる。用いられるアルゴリズムは、決定論的方程式(運動方程式として知られる)と、駆動力を知ることなく、経験的に見つけられた、被測定状態のあり得る継続との組み合わせからなる。運動方程式の入力変数は、例えば、電気通信ネットワーク内のデータトラフィック強度の計算曲線、再生可能エネルギー企業の利用可能性予測、電気的負荷の統計的に最も確からしい展開(バランシンググループ管理者からのログインスケジュールに基づく)である。これらの駆動パラメータによって、最小の障害の更なる展開を数学的に計算できるようになる。対照的に、経験的方法は、統計的方法に基づいて、検出された状態の将来を予測する。用いられるアルゴリズムは、両方の手法を組み合わせる。ここで、損傷は、外部からのグリッドへの影響を有する(例えば、悪天候、自然災害等による)事象を意味し、それゆえ、予測モジュールによって予測することができない。危機的な状態が識別されない場合には、エネルギー供給グリッド及び電気通信ネットワークはいずれも正常動作モードのままである。しかしながら、危機的状況が識別されるか、予測モジュールアルゴリズムの助けを借りて予測される場合には、最適化モジュールは最初に、電気通信ネットワークを含むことを通して潜在的に利用可能な解決策を評価する。その際に、エネルギー貯蔵状態が分析され、代替の経路指定パターンが計算及び評価され、狭帯域幅の電気通信ネットワーク動作によって、又は部分的にオフに切り替えることによって提供される可能性も計算される。ここで、時間スケールを含むことが重要である。つまり、電気通信ネットワークが危機的状態を解決する可能性は、その持続時間に依拠する。電気通信ネットワークの能力が、現在の危機的状態にとって不十分であると評価される場合には、電気通信ネットワークは正常動作のままであり、その問題を打開することは、エネルギー産業の制御エリアに引き継がれる。
【0053】
一方、電気通信ネットワークの能力が危機的状態を打開するのに十分であると評価される場合には、それに応じて、電気通信ネットワークが構成される。その例には、経路指定パターンの再構成、要素ごとのビット速度切り替え等である。要素ごとのビット速度切り替えにおいて、その再構成はネットワーク全体には及ばない。代わりに、例えば、1つのネットワーク要素のみが低電力モードに切り替えられるか、又は1つのネットワーク要素及び関連する遠隔スイッチ(例えば、DSLの場合)が切り替えられる。したがって、ネットワーク全体は再構成されない。それは経路指定パターンの再構成とは異なる。経路指定パターンの再構成の場合、例えば、(上記に記載されたような)その時点で使用されてはならない特定のノードを迂回してトラフィックが再経路指定されるように、オプションで多数のノードが影響を及ぼされ、構成される。
【0054】
その後、制御モジュールのエネルギー制御プレーンが、必要とされる適切なモード(ビット速度、経路指定パターン)への電気通信ネットワーク要素の実際の切り替えを引き継ぐ。
【0055】
この最適化は、危機的状態がもはや存在しなくなるまで長時間にわたって継続される。または、電気通信ネットワークの解決能力が不十分であり、その後、エネルギー産業の制御エリアに引き継がれなければならない。
【0056】
幾つかのシナリオが以下に説明される。
【0057】
シナリオ1:規定されたエネルギー供給エリア内のエネルギー要件を緩和するために容量を削減されている電気通信ネットワークの中期動作
本実施形態又は応用形態では、以下のシナリオが考えられる。例えば、発電所ユニットが制御エリア内で作動しなくなった場合には、電気通信ネットワークの電力消費を特定の限度内で削減することによって、費用がかかるとともに不十分なバックアップ発電所をオンに切り替えなければならないのを回避することができる。したがって、限られた地理的エリアにおいて、エネルギー供給グリッド内で、その時点で通常必要とされる電力より少ない電力しか利用できない場合には、電気通信ネットワークが低減帯域幅のモードに切り替えられるという点で、電気通信ネットワークの電気消費が削減され、その結果、負荷適応(最良のシナリオでは、電力比例)動作電気通信ネットワークにおいて、それに応じて電力消費が減少するという点で、エネルギー供給グリッドを安定させることができる。予測モジュールが、電力降下の空間的及び時間的な障害波及範囲の推定値を与える。最適化コアが、これらのデータを指定可能な負荷制限能力と比較し、最適な解決策を実現する切り替え提案を生成する。これは、負荷制限の更なる自由度として、影響を及ぼされたエリアから外への電気通信トラフィックの再経路指定も含む。したがって、正常な広帯域動作から、低く、空間的に変位した電力消費を有する狭帯域動作への切り替えが行われる。限られた時間にわたって、電池容量によって決定されたこの時間中にエネルギー供給グリッドから電力が取り込まれる必要がないように、電力を最初に電気通信ネットワーク自体のエネルギー貯蔵設備から取り込むことができる。この時間後に、依然として障害が生じている場合には、再び狭帯域動作においてエネルギー供給グリッドから電力を取り込むことができ、その電力は依然として広帯域動作において用いられる電力より著しく小さい。エネルギー供給グリッドに対する最大容量が復元されるとき、電気通信ネットワークにおいて正常な広帯域動作が再開される。
【0058】
図3は特殊な応用形態を示しており、上記の表現の意図する範囲内で、相互接続されるネットワーク内に自由度として経路指定が含まれる。その図の左側部分では、正常に動作しているネットワークが示されており、全てのノード及び接続が最大の(正常な)容量及び電力消費において動作している。図の右側では、同じネットワークが表されるが、印を付けた領域においてエネルギー供給が不足している。ここで、該当するネットワークノードへの、残りの1つを除く全て接続が解除され、そのノードは、直接割り当てられた供給領域内で生じるか、又はその領域にその宛先を有するトラフィック要求を処理することしか必要としない程度まで、その容量及び電力消費を低下させる。正常動作中にこのノードを経由して進むことになる他の全てのトラフィック、例えば、通過トラフィックは、この領域内のエネルギー要件を低減してエネルギー供給グリッドを安定させることができるように、ネットワーク内の代替の経路を介して発送される。
【0059】
シナリオ2:配電グリッドにおける短期ピーク負荷クリッピング
この例は、シナリオ1よりも、空間的及び時間的に実質的に低い障害波及範囲を仮定する。ここでは、電気通信ネットワークの電力消費の制御可能性は、バックアップエネルギー供給のための制御エリア関連手順において干渉することなく、配電システム事業者にとって利用可能である。予測モジュールによって識別される短期間の障害の結果、最適化モジュールからの応答が、更なる措置とともに、電気通信の狭帯域への可能な切り替えを補完する。スケジュールから外れた程度に応じて、UPSシステムの電気エネルギー貯蔵設備からローカル供給グリッドにフィードバックするように決定を行うことができる。この場合、貯蔵設備は、電気通信ネットワークの電気システムに供給し、かつ規定される電力量をローカル配電グリッドにフィードバックしなければならない。これは明らかに限られた時間内でのみ可能であり、ローカルコントローラーアーキテクチャに特定の要求を突きつける。それゆえ、監視モジュール、予測モジュール及び最適化モジュールによって時間経過を絶えず調査し、外乱を取り扱うことが配電グリッドレベルに限定されたままにできるか否か、又は制御エリアを越えるバックアップエネルギー調達が開始されるべきであるか否かを確認しなければならない。これは、シナリオ1への移行を意味することになるが、負荷制限のための貯蔵に基づく短期構成要素はここではもはや利用できない。
【0060】
シナリオ3:配電グリッドへの超臨界(Supercritical)分散送込み
このシナリオの目的は、分散送込み再生可能エネルギーを管理することである。これは、スケジュール計算の根底にある太陽光発電エネルギー又は風力エネルギーの時空間予測が現実から大きく逸脱する場合にのみ、問題又は障害になる。気象システムの複雑な特性に起因して、そのような予測誤差は、将来においても予想される。送込みにおいて極端に上方に逸脱する場合、特に配電網の場合に、安定性のリスクがある(風力エネルギーは通常、より高い電圧グリッドレベルに送り込まれる)。さらに、配電網が相互接続の程度が小さいトポロジを有する場合には、この安定性リスクが増大する。そのような場合に、自らの予測モジュールを用いて(そのモジュールは上記の気象予報より短い時間スケールにおいて機能する)、本発明は空間的及び時間的に分解された配電網に関する不安定リスクを分析することになる。その後、最適化アルゴリズムは利用可能な要素にとって最適な措置を計算する。これらは電気エネルギーのローカル中間貯蔵、又は例えば、無効電力を与えることを含む。その後、制御モジュールは、要素レベルにおいて、これらの措置を実施する。中間貯蔵は、貯蔵能力が利用可能であることを必要とすることに留意されたい。それゆえ、短期間措置の成功は、中期制御システム方式によって決まり、この方式は統計的及び経済的分析からエネルギー供給における利害関係者と共同開発されるべきである。
文献
[1] Fraunhofer Institute for Reliability and Microintegration (IZM); Fraunhofer Institute for Systems and Innovation Research (ISI): Abschaetzung des Energiebedarfs der weiteren Entwicklung der Informationsgesellschaft [Appraisal of the energy requirement for further development of the information society]. Final report to the German Federal Ministry for Economic Affairs and Energy: Berlin, Karlsruhe, March 2009
[2] The Federal Government of the Federal Republic of Germany: http://www.bundesregierung.de/Content/DE/Artikel/2011/06/2011-06-06-energiewende-kabinett-weitere-informationen.html
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