【実施例】
【0027】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0028】
図において、符号1は自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0029】
上記車両1の車体2の内部が車室3とされる。上記車体2は板金製で、車体2は、この車体2の側壁の後部を構成するリヤピラー4と、車体2の上面部を構成し、上記ピラー4の上端部に支持されるルーフパネル5と、このルーフパネル5の後端部の下面に沿って車体2の幅方向に延び、上記ルーフパネル5の後部を補強するリヤヘッダパネル6と、上記ピラー4の上部と上記リヤヘッダパネル6の側部とに架設されるガセットパネル7とを備え、上記ピラー4とリヤヘッダパネル6とは車体2の骨格部材を構成している。
【0030】
上記ピラー4は、上下方向に長く延びて車体2の幅方向で互いに対面するインナ、アウタパネル11,12と、これらインナ、アウタパネル11,12の間に介設されて上下方向に長く延びる補強パネル13とを備えている。上記インナ、アウタパネル11,12は、その各前縁部同士と後縁部同士とがそれぞれスポット溶接S1により互いに結合され、これにより、上記ピラー4の上下方向の各部断面は中空閉断面形状とされている。そして、上記補強パネル13は上記インナパネル11にスポット溶接S2,S3により結合されている。
【0031】
上記インナパネル11は、このインナパネル11の上部を構成する上部パネル16と、下部を構成する下部パネル18と、上記上部、下部パネル16,18に架設される中途部パネル17とを備え、これら上部、中途部、下部パネル16〜18は互いに別体となるようそれぞれ形成されている。
【0032】
上記中途部パネル17の上部は、上記上部パネル16の下部に車室3側から重ねられて上記上部パネル16と共にインナパネル11の上部を構成する一方、上記中途部パネル17の下部は、上記下部パネル18の上部に車室3側から重ねられて上記下部パネル18と共にインナパネル11の下部を構成する。上記中途部パネル17の上下方向の中途部は、上下方向で互いに離れて位置する上部パネル16と下部パネル18との間に位置させられて、上記インナパネル11の上下方向の中途部を構成する。そして、これら上部、中途部、下部パネル16〜18は、その各前縁部同士と各後縁部同士とがそれぞれ前記スポット溶接S1により上記アウタパネル12と共に互いに結合されている。
【0033】
上記ルーフパネル5およびリヤヘッダパネル6の各外側縁部と、インナパネル11の上部パネル16およびアウタパネル12の各上縁部とは、互いにスポット溶接S4により結合されている。また、上記リヤヘッダパネル6の外側部と上記ガセットパネル7の上端部とがスポット溶接S5により結合されると共に、上記インナパネル11の上部パネル16の上下方向の中途部と上記ガセットパネル7の下端部とがスポット溶接S6により結合されている。一方、上記インナパネル11の下部パネル18の下端部にはホイールハウス20が形成され、このホイールハウス20の下端縁部と上記アウタパネル12の下端縁部とはヘミング加工により互いに結合されている。
【0034】
上記補強パネル13は、その長手方向(上下方向)の各部断面が上記インナパネル11側に向かって開くハット形状とされている。具体的には、上記補強パネル13は、車体2の前後方向で離れて対面し、それぞれ車体2の幅方向に延びる前、後パネル23,24と、これら前、後パネル23,24の外側縁部同士を一体的に連結する連結パネル25と、上記前、後パネル23,24の内側縁部から前、後方向に一体的に延出する前、後外向きフランジ26,27とを備えている。
【0035】
上記補強パネル13の上端部側の前、後外向きフランジ26,27が、上記インナパネル11の上部パネル16の下部における前後方向の中央部に前記スポット溶接S2により結合されている。また、上記補強パネル13の下端部側の前、後外向きフランジ26,27が、上記インナパネル11の下部パネル18の上下方向の全体にわたる前後方向の中央部に前記スポット溶接S3により結合されている。上記インナパネル11の中途部パネル17と補強パネル13とのそれぞれ上下方向の中途部分は、上下方向で同じところに位置しており、これら中途部分同士はスポット溶接されていない。
【0036】
上記のようにして、インナパネル11の中途部パネル17の少なくとも面方向の中途部分には溶接痕が生じないこととされている。そして、これにより、この中途部パネル17は、全体的に外観上の見栄えの向上が図られた上で、車室3側に露出させられてこの車室3の内面を形成する化粧パネルとされている。
【0037】
上記ガセットパネル7の下端部と補強パネル13の上端部との間における上記インナパネル11の上部パネル16の下部と中途部パネル17の上部との重ね合わせ部に、シートベルト30掛吊用のショルダーアンカー31が締結具32により固着されている。この場合、締結具32は上記上部パネル16の下部と中途部パネル17の上部とを互いに結合している。上記シートベルト30は上記アンカー31から前下方に延び、図示しないが、車室3の後部に設けられるシート上への着座者を、このシート上に拘束する。
【0038】
上記補強パネル13の上下方向の中途部における前、後パネル23,24部分には、それぞれ車体2の幅方向に延び、上下方向で複数本(3本)のビード34が形成されている。これら各ビード34の長手方向の各部断面は、上記補強パネル13の前、後外方に向かって突出する円弧形状とされている。
【0039】
そして、上記シートベルト30によりシート上に着座者が拘束された状態で、車両1が前突したとすると、着座者の前方に向かう慣性力により、上記シートベルト30には前方に向かう引張力Fが与えられる。そして、この引張力Fは、上記シートベルト30とアンカー31とを介し上記補強パネル13で補強されたインナパネル11の上部、中途部パネル16,17で支持される。よって、この場合には、上記シートベルト30によるシート上への着座者の拘束性能が良好に維持される。
【0040】
ここで、前記したように、補強パネル13の前、後パネル23,24に形成される各ビード34は、上記補強パネル13の外方に向かって突出するよう形成されている。
【0041】
このため、上記各ビード34を形成することにより、補強パネル13の内部空間が大きくなって、この補強パネル13の全体的な剛性が向上する。よって、上記補強パネル13で補強された上部、中途部パネル16,17が上記引張力Fを支持する場合、この支持は強固に行なわれることから、上記拘束性能は、より良好に維持される。
【0042】
一方、上記シートベルト30に与えられる引張力Fが大きくて、このシートベルト30とアンカー31とを介し、上記引張力Fにより上記締結具32により結合された上部、中途部パネル16,17が車室3の内側方に向かって引張されて屈曲変形させられた場合(
図1中一点鎖線)には、上記シートベルト30掛吊用のアンカー31を固着させた上部パネル16と、上記補強パネル13の上部とのスポット溶接S2部分には応力集中が生じて破断するおそれが生じる。
【0043】
しかし、前記したように、補強パネル13の上下方向の中途部を構成して車体2の幅方向に延びるパネル23,24部分に、ビード34を形成しているため、上記引張力Fにより上記上部、中途部パネル16,17が車室3の内側方に向かって引張されて屈曲変形させられる場合には、上記引張力Fによって上記各ビード34がそれぞれ平坦形状に延びるよう円滑に変形して、上記補強パネル13の上部が上記上部、中途部パネル16,17の屈曲変形に追従するよう、上記補強パネル13の上下方向の中途部が屈曲する(
図1中一点鎖線)。
【0044】
よって、上記したように引張力Fが大きいとしても、上記インナパネル11の上部パネル16と、上記補強パネル13の上部とのスポット溶接S2部分が破断することは防止され、この補強パネル13の上部による上部パネル16の補強が維持されることから、上記上部、中途部パネル16,17が大きく屈曲変形することは防止される。この結果、上記した引張力Fによるインナパネル11の上部、中途部パネル16,17と補強パネル13の上部とのそれぞれの屈曲変形により、上記アンカー31とこのアンカー31に掛吊されたシートベルト30とは多少前方移動するものの、このシートベルト30によるシート上への着座者の拘束性能は良好なままに維持される。
【0045】
また、上記したように、シートベルト30による拘束性能を良好に維持することは、上記補強パネル13にビード34を形成することで達成される。よって、良好な拘束性能を維持する上で、上記インナパネル11と補強パネル13とのスポット溶接の打点を多くするなど溶接量を多くしたり、これらインナパネル11や補強パネル13の板厚を大きくしないで足りることから、車体2の上記ピラー4の形成作業は容易かつ安価にでき、また、上記ピラー4の質量が大きくなることが防止される。
【0046】
なお、以上は図示の例によるが、上記ピラー4はセンタピラーであってもよい。また、上記スポット溶接S1〜S3は、これに加え、もしくは、これに代えてアーク溶接にしてもよい。また、上記補強パネル13と中途部パネル17とのそれぞれ上下方向の中途部分同士は、他部に比べてスポット溶接の打点ピッチを大きくしたり、溶接長を短くしたりするなどして、より少ない溶接量でスポット溶接やアーク溶接をするようにしてもよい。また、上記アンカー31は上記締結具32によりインナパネル11の上部パネル16にのみ固着させてもよい。
【0047】
また、上記ビード34は補強パネル13の内部に向かって突出するものであってもよく、前、後パネル23,24のうちの一方のパネルにのみ形成してもよく、単数本であってもよい。また、上記ビード34は、上記前、後パネル23,24への形成に加えて、連結パネル25や前、後外向きフランジ26,27にも形成してもよい。