(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893276
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】地中管周囲の地盤補強方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20160310BHJP
E03F 3/06 20060101ALI20160310BHJP
E02D 37/00 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/06
E02D37/00
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-161324(P2011-161324)
(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公開番号】特開2013-23955(P2013-23955A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592185666
【氏名又は名称】管清工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511179105
【氏名又は名称】株式会社明日香工業
(74)【代理人】
【識別番号】100091410
【弁理士】
【氏名又は名称】澁谷 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 健司
(72)【発明者】
【氏名】高田 淳
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 俊嗣
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−064656(JP,A)
【文献】
特開2007−283572(JP,A)
【文献】
特開昭60−233246(JP,A)
【文献】
特開平11−013985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00 −11/00
E02D 29/00
E02D 29/045−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中管の周囲の地盤に生じた空洞を埋める地中管周囲の地盤補強方法であって、
前記地中管の内周面に、全長にわたってライニング層を形成するライニング工程と、
前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間に、又は、前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間及び前記地中管の外周面側に、液状の又は流動性を有する充填材を供給し、この充填材を前記地中管の周囲の地盤に生じている前記空洞内に充填する充填工程と、
前記空洞内に充填された前記充填材を硬化させる硬化工程と、を備えていることを特徴とする地中管周囲の地盤補強方法。
【請求項2】
枝管が接続されている地中管の周囲の地盤に生じた空洞を埋める地中管周囲の地盤補強方法であって、
前記地中管の内周面に、全長にわたってライニング層を形成するライニング工程と、
前記枝管内から、前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間に、又は、前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間及び前記地中管の外周面側に、液状の又は流動性を有する充填材を供給して、この充填材を前記地中管の周囲の地盤に生じている前記空洞内に充填する充填工程と、
前記空洞内に充填された前記充填材を硬化させる硬化工程と、を備えていることを特徴とする地中管周囲の地盤補強方法。
【請求項3】
前記枝管の開口部を覆っている前記ライニング層の部分に、前記枝管と前記ライニング層の内部とを連通する連通孔を開ける穿孔工程と、
前記ライニング層に形成した前記連通孔を、取り外し可能な閉塞部材を用いて前記ライニング層の内側から塞ぐ閉塞工程と、を施してから、前記充填工程を施し、
さらに、前記充填工程の後に、前記ライニング層の内側に配置されている前記閉塞部材を取り外し、前記枝管内に残っている前記充填材を除去する除去工程を施す、ことを特徴とする請求項2に記載の地中管周囲の地盤補強方法。
【請求項4】
前記地中管及び前記ライニング層の端部同士の間、及び/又は、前記地中管の端部外周を閉塞し、かつ、前記ライニング層の前記連通孔及び前記枝管の前記開口部の間を非閉塞状態に維持する工程を有する、ことを特徴とする請求項3記載の地中管周囲の地盤補強方法。
【請求項5】
前記枝管内への前記充填材の供給は、前記充填材を加圧して行われ、前記充填材が所定の圧力となったときに前記充填材の前記枝管内への供給又は前記枝管内の加圧を停止する、ことを特徴とする請求項2、3又は4記載の地中管周囲の地盤補強方法。
【請求項6】
前記閉塞部材は、膨張及び収縮可能な弾性材製の周壁を有するパッカである、ことを特徴とする請求項3記載の地中管周囲の地盤補強方法。
【請求項7】
前記地中管及び前記ライニング層の端部同士の間から、又は、前記地中管及び前記ライニング層の端部同士の間並びに前記地中管の端部外周から、前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間に、又は、前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間及び前記地中管の外周面側に、液状の又は流動性を有する前記充填材を注入して供給する、ことを特徴とする請求項1記載の地中管周囲の地盤補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管などの地中管の外側地盤に生じている空洞を埋める地中管周囲の地盤補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋められた下水管の外側周囲の地盤に空洞が生じていると地表面陥没のおそれがあり、また空洞内で岩石等が落下して下水管に大きな破損が生じる可能性もある。したがって、下水管の地中への埋設に際しては外側周囲の地盤に空洞が生じないように作業が進められることとなるが、空洞が生じないように下水管が埋設されても、下水管の接続部又は下水管に生じた亀裂、あるいは枝管(取り付け管)の接続部から地下水が下水管内に浸入すると、この地下水の浸入又は漏水にともなって周囲の地盤の土や砂が下水管内に流れ出てしまい、地下水の漏水量が大きい場合には比較的短い期間で、地下水の漏水量が小さい場合でも長い間には漏水箇所に大きな空洞が生じてしまう。そこで、適当な時期に、又は定期的に下水管の外側の地盤の空洞を探査し、探査結果に基づいて空洞を埋める地盤補修又は地盤補強作業を行う必要がある。
【0003】
こういった地盤補強作業又は地盤補強方法であって、例えば特許文献1に記載されているようなものでは、まず、隣合うマンホール(2、2´)間の下水管(下水路3)の両端開口部にエアーパッカ(4、4´)を配置して膨張させることによりこの両端開口部を閉塞する。次に、閉塞された下水管内に充填材(グラウド7)を供給又は注入する。閉塞された下水管内に供給又は注入された充填材は、所定の圧力を保つようにして循環させられる。充填材は、加圧されているので下水管の漏水個所から地盤中に漏れ出ることとなり、この充填材が硬化すると、漏水個所が塞がれるとともに、地盤中に漏れ出た充填材により、漏水箇所に隣接して生じている空洞が埋められて塞がれる。そして、地盤中に漏れ出た充填材が硬化したら、充填材の下水管内への供給を停止し、エアーパッカを取り外して下水管内の充填材を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−119756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された地盤補強方法では、マンホール間の下水管の全長にわたって、漏洩個所及び空洞を一度に補修できるが、両端開口部を閉塞した下水管内に充填材を充填するので、大量の充填材を消費することになる。また、下水管内から多量の充填材を除去する清掃作業に大きな労力が必要となる。
【0006】
そこで本発明は、地中管の外周の地盤に生じている空洞を、例えば地中管の全長にわたって一括して埋めることができ、しかも消費する充填材が少なくてすむ地中管周囲の地盤補強方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明の地中管周囲の地盤補強方法は、地中管の周囲の地盤に生じた空洞を埋める地中管周囲の地盤補強方法であって、前記地中管の内周面に、全長にわたってライニング層を形成するライニング工程と、前記ライニング層又は形成された前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間に、及び/又は、前記地中管の外周面側に、液状の又は流動性を有する充填材を供給し、この充填材を前記地中管の周囲の地盤に生じている前記空洞内に充填する充填工程と、前記空洞内に充填された前記充填材を硬化させる硬化工程と、を備えているものである。ここで「地中管」とは、隣合うマンホール間で延びる埋設管構造物のように、地中管路の1スパンを構成する埋設管構造物を意味する。あるいは、地中管路のうちで長い又は比較的長い埋設管構造物又は埋設管構造物部分を意味する。すなわち、ライニング層は、マンホール間の全長にわたって形成されたり、地中管路の長い又は比較的長い範囲に形成されたりする。ライニング層は剛性を有するのが普通である。ライニング層の外周面と地中管の内周面との間に供給又は注入された充填材は、例えば、このライニング層を内側に変形させることなく、又は大きく変形させることなく、ライニング層の外周面と地中管の内周面との間を移動する。ライニング層の外周面と地中管の内周面との間に供給又は注入された充填材は、地中管の亀裂又は破損箇所や接続部の隙間などから外側の地盤に漏出し、亀裂や破損箇所あるいは接続部の隙間に隣接して生じている地盤の空洞内に流れ込んで充填される。ライニング層は、例えば、硬化性樹脂を含浸した筒状ライニング材(ライニング用ホース)を拡径させ、硬化性樹脂を硬化させることにより形成されるが、ライニング材又はライニング層は、液体不透過性又は気密性のフィルムを外周に備えているのが好ましい。地中管の外周面側への充填材の供給態様は、充填材を直接、地中管の外周面に又は地中管の外周面側に供給又は注入する場合、あるいは充填材を地盤に供給又は注入し、地盤を通過させて地中管の外周面側に供給する場合などがある。地中管の外周面又は外周面側に直接供給又は注入された充填材は、例えば、地中管の外周面に沿って管路方向に移動して行き、地中管の外周の空洞を順次埋めていく。充填材は、例えば、所定の圧力となるまでライニング層の外周面と地中管の内周面との間や地中管の外周面側に供給される。充填材は常温硬化性材料とすることができ、場合によっては熱硬化性材料又はその他の硬化性材料とすることができる。ここでは、地中管の亀裂又は破損箇所は、充填材とライニング層とにより長期間にわたってしっかりと補修される。
【0008】
地中管及びライニング層の端部同士の間から、及び/又は、地中管の端部外周から、ライニング層の外周面と地中管の内周面との間に、及び/又は、地中管の外周面側に充填材を注入して供給することができる。あるいは、枝管内に充填材を供給し、枝管の開口部からライニング層の外周面と地中管の内周面との間に、及び/又は、地中管の外周面側に充填材を注入して供給することができる。枝管内から充填材を供給又は注入する場合は、本発明の地中管周囲の地盤補強方法は、枝管(取り付け管)が接続されている地中管の周囲の地盤に生じた空洞を埋める地中管周囲の地盤補強方法であって、前記地中管の内周面に、全長にわたってライニング層を形成するライニング工程と、前記枝管内から、前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間に、及び/又は、前記地中管の外周面側に、液状の又は流動性を有する充填材を供給して、この充填材を前記地中管の周囲の地盤に生じている空洞内に充填する充填工程と、前記空洞内に充填された前記充填材を硬化させる硬化工程と、を備えるものとして構成できる。より具体的には、枝管が接続されている地中管の周囲の地盤に生じた空洞を埋める地中管周囲の地盤補強方法であって、前記地中管の内周面に、全長にわたってライニング層を形成するライニング工程と、前記枝管の開口部を覆っている前記ライニング層の部分に、前記枝管と前記ライニング層の内部とを連通する連通孔を開ける穿孔工程と、前記ライニング層に形成した前記連通孔を、取り外し可能な閉塞部材を用いて前記ライニング層の内側から塞ぐ閉塞工程と、前記枝管内から、前記ライニング層の外周面と前記地中管の内周面との間に、及び/又は、前記地中管の外周面側に、液状の又は流動性を有する充填材を供給して、この充填材を前記地中管の周囲の地盤に生じている前記空洞内に充填する充填工程と、前記空洞内に充填された前記充填材を硬化させる硬化工程と、前記ライニング層の内側に配置されている前記閉塞部材を取り外し、前記枝管内に残っている前記充填材を除去する(地中管内にも充填材がある場合にはこの充填材も除去する)除去工程と、を備えるものとして構成できる。ライニング層を地中管の全長にわたって形成すると、例えばマンホール間の全長にわたって形成すると、通常は、枝管の開口部がライニング層によって閉塞される。したがって、地中管として使用する場合には、枝管の開口部を覆っているライニング層の部分に、枝管とライニング層の内部とを連通する連通孔を開ける作業が必要となる。この穿孔作業を充填材の充填工程の後に行うこととすると、枝管内に残った充填材によって穿孔作業が複雑又は困難になる場合もある。そこで、ライニング層を形成した後、充填材を注入する前に、穿孔工程と、ライニング層に形成した連通孔を、取り外し可能な閉塞部材を用いてライニング層の内側から塞ぐ閉塞工程と、を施すように構成するのが効果的である。枝管内に充填材を供給することにより、枝管の周囲の地盤に生じている空洞も同時に塞ぐことが可能となる。
【0009】
充填材の消費をできるだけ抑えるためには、枝管内からライニング層の外周面と地中管の内周面との間に、及び/又は、地中管の外周面側に、液状の又は流動性を有する充填材を供給又は注入したときに、充填材が地中管及びライニング層の端部同士の間や地中管の端部外周から流れ出さないように、又は大量に流れ出さないように構成する必要がある。そこで、地中管及びライニング層の端部同士の間、及び/又は、地中管の端部外周(例えば、地中管の端部外周とマンホールとの間)を閉塞し、かつ、ライニング層の連通孔及び枝管の開口部の間を非閉塞状態に維持する工程を有するように構成するのが得策である。枝管内への充填材の供給は、例えば、充填材を加圧しながら行われ、充填材が所定の圧力となったときに充填材の枝管内への供給は停止される。あるいは充填材が所定の圧力となる前に充填材の供給を停止し、その後は、充填材が所定の圧力となるまで枝管内を例えばエアーを供給して加圧するように構成してもよい。
【0010】
閉塞部材は、膨張及び収縮可能な弾性材製の周壁を有するパッカとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の地中管周囲の地盤補強方法を用いれば、充填材が地中管内に流れ出さないように構成されるので、少ない充填材で、あるいは簡単な作業で、地中管周囲の地盤の空洞を埋めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法のライニング工程を説明するための図であり、ライニング用ホースの引き込み工を示す図である。
【
図2】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法のライニング工程を説明するための図であり、ライニング用ホースの拡径工を示す図である。
【
図3】環状拡径装置とライニング用ホースの詳細を示す図である。
【
図4】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法のライニング工程を説明するための図であり、ライニング層の形成を示す図である。
【
図5】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法の穿孔工程を示す図である。
【
図6】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法の管口仕上げ工を示す図である。
【
図7】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法の充填工程を説明するための図であり、充填工程の前工程である閉塞工程を示す図である。
【
図9】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法の充填工程を説明するための図であり、枝管内への充填材の供給を示す図である。
【
図10】充填材の注入態様を説明するための図である。
【
図11】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法の充填工程を説明するための図であり、空洞内への充填材の充填状態を示す図である。
【
図12】本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法の完了状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1乃至
図4は本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法のライニング工程を説明するための図である。
【0015】
ここでは、隣合う上流側マンホール1及び下流側マンホール3の間の下水管5(地中管)の周囲が補強対象となっている。ライニング工程を施す前に、まず、高圧洗浄車を使用して下水管5内の堆積物や内面付着物を除去する(管内洗浄工、図示せず)。管内洗浄工を行ってから下水管5内の状況をTVカメラで確認する(管内前調査工、図示せず)。管内前調査工で堆積物や内面付着物が確認された場合には、再び管内洗浄工を実施する。また、管内前調査工で下水管5内にモルタル、木の根又は枝管が突き出している場合には、穿孔機を下水管5内に入れて突き出し部分を削り取る(前処理工)。次に、上流側マンホール1に接続されている上流側下水管7の端部開口を止水プラグ又はパッカ9で閉塞するとともに、下流側マンホール3に接続されている下流側下水管11の端部開口を止水プラグ又はパッカ13で閉塞し、公共ます15と下水管5とを結ぶ枝管17の上端部開口も止水プラグ又はパッカ19で閉塞しておく。そして、上流側下水管7内の下水及び公共ます15内の汚水をバイパス管路を用いてさらに下流側のマンホール内(図示せず)に流し、下水管5内を下水や汚水が流れない状態としておく(水替工、バイパス管路は図示せず)。なお、上流側下水管7、下流側下水管11及び枝管17の閉塞あるいは水替工を、管内洗浄工や管内前調査工の前に行なうこともできる。
【0016】
このように下水管5内を下水が流れない状態にしておいてから、保冷車21に保管されているライニング用ホース23を引き出し、上流側マンホール1を通って下水管5内に引き込む(引き込み工を示す
図1参照)。ライニング用ホース23を下水管5内に引き込むには、ライニング用ホース23の先端を、下水管5を通過して延びているワイヤロープ25に接続しておき、下流側マンホール3に設けられているウインチ27でワイヤロープ25を巻き取って、ライニング用ホース23を下流側に移動させる。なお、適当個所にガイドローラ29を配置しておき、引き込み時にライニング用ホース23が強く擦られるのを防止する。
【0017】
ライニング用ホース23を下水管5内に又は下水管5内を貫通するように引き込んだら、ライニング用ホース23の後端側を切断し、ライニング用ホース23の後端部を、上流側マンホール1に設けられた環状拡径装置31の外周に接続する。また、ライニング用ホース23の先端部を留め具33で締め付ける。そして、給水車35からボイラー車37を介して送られる水を、環状拡径装置31の供給ホース39からライニング用ホース23内に供給し、ライニング用ホース23を加圧して拡径させ、下水管5の内周面に押し付ける(拡径工を示す
図2参照)。そして、ボイラー車37で加熱された加熱水を供給ホース39からライニング用ホース23内に供給するとともに、ライニング用ホース23内の、温度が低下した水を、環状拡径装置31の回収ホース41でボイラー車37に回収する(加熱工)。このようにして、ライニング用ホース23は加圧された状態で必要な時間加熱されることとなる(養生工)。
【0018】
図3に示すように、ライニング用ホース23内には、先端側に吐出孔43が設けられた循環チューブ45が、ライニング用ホース23の全長にわたって延びるように挿入されていて、供給ホース39はこの循環チューブ45の後端部と接続され、回収ホース41はライニング用ホース23の後端部内と連通している。したがって、加熱水をライニング用ホース23の先端側で循環チューブ45から吐出させ、吐出された加熱水をライニング用ホース23の後端側に移動させて回収ホース41で回収することができる。また、ライニング用ホース23は、流体不透過性(水密性又は気密性)の内側及び外側フィルム(例えばポリプロピレン等のプラスチック製フィルム47、47)の間に熱硬化性樹脂を含侵した繊維層49を有しているので、ライニング用ホース23内の加熱水の循環により熱硬化性樹脂が硬化し、剛性を有するライニング層51(
図4参照)を形成することとなる。なお、ライニング用ホース23は紫外線にあたると硬化するおそれがあるので、ライニング用ホース23の両端部には紫外線に対するプロテクトチューブを被せておくのが好ましい。また、循環チューブ45の先端部は、ライニング用ホース23の先端部とともに留め具33で締め付けられている。
【0019】
ライニング用ホース23内の熱硬化性樹脂が十分硬化したら、ライニング用ホース23の加圧状態を維持したまま、ライニング用ホース23内の循環水の温度を、低温水を混ぜることにより徐々に下げていく(冷却工)。このようにライニング用ホース23の温度をゆっくりと下げることにより、ライニング層51の形成時の収縮を抑制することが可能となる。
【0020】
ライニング用ホース23の温度が十分低下したら、ライニング用ホース23の両端部を切断して環状拡径装置31や循環チューブ45を撤去し(切断撤去工)、下水管5の内周面に剛性を有するライニング層51を形成する(ライニング層51の形成を示す
図4参照)。
【0021】
図5は穿孔工程を示す図、
図6は管口仕上げ工を示す図である。
【0022】
ライニング層51が形成されたら、下水管5又はライニング層51内に穿孔機53を入れ、枝管17の開口部49を覆っているライニング層51に連通孔55をあける(
図5及び
図6参照)。
【0023】
また、下水管5の両端管口の仕上げを行う。下水管5の管口の仕上げは、例えば、エポキシ系接着剤又は急結セメント57を用いて、下水管5及びライニング層51の端部同士の間並びに下水管5の端部とマンホール側(上流側マンホール1側及び下流側マンホール3側)との間を例えば全周にわたって閉塞し又は閉じるようにして行われる(
図6参照)。すなわち、ライニング層51の上流側端部及び下水管5の上流側端部の間並びに下水管5の上流側端部及び上流側マンホール5の間が開放された状態とならないように、かつ、ライニング層51の下流側端部及び下水管5の下流側端部の間並びに下水管5の下流側端部及び下流側マンホール5の間が開放された状態とならないようにしておく。
【0024】
図7乃至
図11は本発明に係る下水管周囲の地盤補強方法の充填工程を説明するための図である。
【0025】
充填工程を行うにあたってはまず、枝管17内に配置されている止水パッカ19を取り外し、新たに注入パッカ61で枝管17の上端部開口を閉塞しておく。さらに、ライニング層51に形成された連通孔55を閉塞パッカ63でライニング層51又は下水管5の内側から閉塞しておく(閉塞工程を示す
図7参照)。注入パッカ61は、膨張及び収縮可能なゴム製の周壁65を有し、エアーの供給により周壁65が膨張して枝管17の内周面に密着することにより枝管17を閉塞する点では止水パッカ19と同様であるが、先端部に注入口67を有し、この注入口67に連なる注入ホース69を備えている(
図8参照)。また、閉塞パッカ63も、止水パッカ9や13と同様に、膨張及び収縮可能なゴム製の周壁71を有し、エアーの供給により周壁71が膨張して下水管5又はライニング層51の内周面に密着する構造のものであるが、連通孔55の前後(上流側及び下流側)の下水管5又はライニング層51の内周面に十分な長さで密着するように長く形成されている。
【0026】
次に、注入パッカ61の注入ホース69をプラント車73に接続して、プラント車73から注入パッカ61にグラウド又はセメントミルクなどの液状の充填材75を供給する。注入パッカ61に供給された充填材75は注入口67から枝管17内に流れ込む(枝管17内への充填材75の供給を示す
図9参照)。充填材75の供給は、加圧状態で行われ、枝管17内の充填材75が所定の圧力となるまで行われる。
図10に示すように、充填材75を加圧して供給することにより、下水管5の内周面とライニング層51の外周面との間に充填材75が注入され、下水管5の破損箇所77などから地盤の空洞79内に充填材75が入り込む(矢印A参照)。ライニング層51の外周には、流体不透過性のフィルム47が設けられ、ライニング層51の内周面と下水管5の外周面とは接着されていないので、充填材75は容易に下水管5とライニング層51の間を軸方向に移動する。また、下水管5の外周面側に充填材75が注入され、この充填材75は下水管5の外周面に沿って移動し、やはり地盤の空洞79内に入り込む(矢印B参照)。その結果、
図11に示すように、下水管5の外周の地盤に生じている空洞79が全体的に充填材75によって満たされることとなる。なお、充填材75は、枝管17の破損箇所81などから枝管17の周囲の地盤の空洞83内に入り込み(
図10の矢印C参照)、この空洞83を埋めることとなるが、空洞83の形状によっては、枝管17から漏出した充填材75も下水管5の外周の空洞79内に入り込むこととなる。さらに、充填材75の流動性が高い場合(粘度が低い場合)には、枝管17から周囲の地盤に流れ出た充填材75は地盤を通過して下水管5の外周面側に至り、空洞79内に入り込む(
図10の矢印D参照)。
【0027】
ここでは、充填材75として常温硬化性のものを使用しているので、空洞79や空洞83が充填材75で満たされた状態で放置することにより、充填材75は硬化し、空洞79や空洞83のつぶれなどが防止されることとなる(硬化工程)。
【0028】
充填材75が硬化したら、枝管17から注入パッカ61を取り外すとともに、下水管5内から閉塞パッカ63を取り外し、枝管17内に残った充填材75を除去清掃する。そして、上流側下水管7から止水パッカ9を取り外すとともに、下流側下水管11から止水パッカ13を取り外し、バイパス管路を撤去して下水管5の使用を再開する(
図12参照)。なお、残存する充填材75の量を減らすためには、所定圧力となる前に充填材75の枝管17内への供給を停止し、その後は、枝管17内の充填材75が所定圧力となるまでエアーを枝管17内に供給し充填材75を加圧するように構成できる。
【0029】
また、下水管5に枝管17が接続されていない場合には、
図5に示す穿孔工程及び
図6に示す管口仕上げ工を行わず(一方の端部にのみ管口仕上げ工を行う場合はある)、
図13に示すように、下水管5の端部から、下水管5の外周面側(矢印E参照)及び下水管5の内周面とライニング層51の外周面との間(矢印F参照)に充填材75を加圧状態で注入する。充填材75の注入は、下水管5の両端部から行うことも、下水管5のどちらかの端部から行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の地中管周囲の地盤補強方法は、例えば、地下埋設管である下水管の周囲に生じた空洞を埋めるために使用できる。
【符号の説明】
【0031】
5 下水管
51 ライニング層
75 充填材
79 空洞