(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バイパス部の一端が前記端子部の一方の端子部に前記折り返し線路部の折り返しタブ及び前記ひずみ検出部を介して繋がる代わりに、前記バイパス部の一端が前記折り返し線路部の折り返しタブを介して一方の端子部に繋がると共に、前記ひずみ検出部が前記折り返し線路部と前記端子部を介して前記フィルム状部材の長手方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージ。
前記折り返し線路部の折り返しタブの縁部と前記疲労度検出部の縁部とで形成される角部又は前記バイパス部の縁部と前記疲労度検出部の縁部とで形成される角部のうち、少なくとも何れか一方の角部は各縁部を接線とするR形状をなし、かつ前記R形状は前記疲労度検出部ごとに前記フィルム状部材の幅方向に段階的に大きく形成してなることを特徴とする請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のひずみゲージは、一般に機械構造材と同等の十分な機械的特性を有する。そのため、機械強度や疲労強度が機械構造材より低い梁や柱、橋脚、鉄塔、橋げた等の一般構造材において、特に疲労破壊し易い梁の根元や溶接部分、切欠き部分に単一のひずみゲージを疲労度検出ひずみセンサとして用いようとすると、データロガー等を介してひずみの出力トレンドを長期間に亘って収集しなければならず、その検出データを集積するためのデータ量が膨大となりデータ管理と処理が大変である。
【0005】
また、単一のひずみゲージを例えば産業用機械に用いる機械構造材の比較的疲労強度が弱い溶接部や構造材の断面形状が急激に変化して応力集中が生じ易い部位に利用しようとしても、上述した一般構造材と同様の問題が生じる。
【0006】
そこで、このような問題を回避するために、本発明の出願時に未だ公知ではないが、
図9に示すような本発明に関連する疲労度検出ひずみゲージ900が提案されている。このひずみゲージ900の構成は、ひずみ検出部930と、ひずみ検出部930と直列に接続した導通部940と、導通部940と並列に接続した疲労度検出部950を有し、疲労度検出部950の折り返しタブ952とストランド951との間が疲労により破断することでひずみゲージの抵抗が高くなり、疲労の進み度合いを段階的に検出するようになっている。
【0007】
しかしながら、このような構成を有する疲労度検出ひずみゲージ900の場合、構造材の疲労がさほど進んでいない段階でその疲労を検出しようとすると、その僅かな疲労に対応して疲労度検出部が破断するように折り返しタブの長さを長くする必要があり、疲労度検出部950の破断する位置が応力集中部から離れてしまい、迅速かつ的確な疲労度の検出に適さなくなる。
【0008】
また、係る疲労度検出ひずみゲージ900の場合、疲労度検出部950が端子部側に形成されているため、局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部950を配置させると、端子部921,922(920)もこの近傍に配置するようになる。その結果、構造材の応力集中に伴って例えば端子部920のハンダ接合部にも応力を発生させてしまい、疲労度検出ひずみゲージ900の信頼性を長期間保つ観点で好ましくない。
【0009】
一方、端子部920が応力集中の影響を受けないように端子部920を局所的な応力集中部から離間させた状態で疲労度検出ひずみゲージ900を配置すると、疲労度検出部950も応力集中部から離れるため、迅速かつ的確な疲労度の検出の観点で好ましくない。
【0010】
本発明は、構造材のひずみを測定できると共に、構造材に局所的に生じる疲労破壊の兆候を事前にかつ的確に予測可能な疲労度検出ひずみゲージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージは、
構造物の疲労度を抵抗体の抵抗値の電気的な変化を検出することにより適切に行うことが可能な疲労度検出ひずみゲージであって、
ストランドと隣接するストランドとが平行に配置され
複数の折り返しタブを介して接続されるひずみ検出部と、
ストランドと隣接するストランドとが平行に配置され折り返しタブを介して接続され、前記ひずみ検出部と直列接続された折り返し線路部と、
前記折り返し線路部及びひずみ検出部と別経路をなし、一端
が端子部の一方の端子部に前記折り返し線路部の折り返しタブ及びひずみ検出部を介して繋がると共に、他端が前記端子部の他方の端子部に繋がるバイパス部と、
前記折り返し線路部の平行に配置された各折り返しタブに接続されている疲労度検出部と、
を有し、前記平行に配置されている各折り返しタブが前記疲労度検出部を介して前記バイパス部に接続されており、
前記バイパス部、及び前記折り返し線路部の並列する複数の折り返しタブ、並びに前記疲労度検出部は、フィルム状部材の長手方向一端側に設けられ、かつ前記バイパス部は前記複数の折り曲げタブに前記疲労度検出部を介して接続され、前記端子部は、前記フィルム状部材の長手方向他端側に配置され、
前記疲労度検出部の破断度合いから前記疲労度検出ひずみゲージが貼られた構造材の疲労度を検出することを特徴としている。
【0012】
請求項1に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、構造材の局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部を配置することができ、迅速かつ的確な疲労度の検出が可能となる。特に並列する折り返しタブが疲労度検出部を介してバイパス部に接続されていることから、並列する折り返し部の端部にそれぞれ疲労度検出部を介してバイパス部を平行に延在させることができる。これによって、フィルム状部材の先端側に疲労度検出部を極力近づけて配置させることができるようになるので、構造材の疲労の進み度合いをより正確に検出することができるようになる。
【0013】
また、本願の関連出願のような疲労度検出のために折り返しタブの長さを長くする必要がないため、疲労度検出部のフィルム状部材長手方向の長さを先端側に詰めることができ、その結果、疲労度検出部をさらに応力集中部に近づけることができる。
【0014】
また、疲労度検出部が端子部側に形成されていないため、局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部を配置させても、応力集中に伴って例えば端子部のハンダ接合部に応力を生じさせないようにでき、疲労度検出ひずみゲージ自体に悪影響を及ぼすこともない。
【0015】
また、構造材の疲労破壊の兆候を予測するために、ひずみの出力トレンドを長期間に亘って収集する必要もなく、膨大なデータ量の管理と処理に煩わされることもない。また、疲労度検出部が疲労により破断することで疲労度検出ひずみゲージの抵抗値が急に高くなり、段階的に変化することで構造材の疲労破壊が予測し易くなる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る疲労度検出ひずみゲージは、請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージにおいて、
前記バイパス部の一端が前記端子部の一方の端子部に前記折り返し線路部の折り返しタブ及び前記ひずみ検出部を介して繋がる代わりに、前記バイパス部の一端が前記折り返し線路部の折り返しタブを介して一方の端子部に繋がると共に、前記ひずみ検出部が前記折り返し線路部と前記端子部を介して
前記フィルム状部材の長手方向に並んで配置されていることを特徴としている。
【0017】
請求項1の作用に加えて、バイパス部の一端が折り返し線路部の折り返しタブを介して一方の端子部に繋がると共に、ひずみ検出部の両端が端子部に直接繋がっているので、フィルム状部材上でのひずみ検出部の配置場所を自由に選択できる。例えば、ひずみ検出部を疲労度検出部や折り返し線路部と端子部との間に配置することで、ひずみ検出部を構造材の応力集中部が最も大きい場所からひずみ検出部を離すことができ、ひずみ検出部の長期に亘る信頼性を維持できる。
【0018】
また、本発明の請求項3に係る疲労度検出ひずみゲージは、請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージにおいて、
前記疲労度検出部は、当該疲労度検出部が所定の応力によって破断する幅を
前記フィルム状部材の幅方向に段階的に大きく形成してなることを特徴としている。
【0019】
請求項3に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、構造材の疲労度合いに応じて疲労度検出部が段階的に破断する。そのため、構造材の疲労の進み度合いを段階的に検出することができる。
【0020】
また、本発明の請求項4に係る疲労度検出ひずみゲージは、請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージにおいて、
前記折り返し線路部の折り返しタブの縁部と前記疲労度検出部の縁部とで形成される角部又は前記バイパス部の縁部と前記疲労度検出部の縁部とで形成される角部のうち、少なくとも何れか一方の角部は各縁部を接線とするR形状をなし、かつ前記R形状は前記疲労度検出部ごとに
前記フィルム状部材の幅方向に段階的に大きく形成してなることを特徴としている。
【0021】
請求項4に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、構造材の疲労による疲労度検出部の破断の起点箇所が、疲労度検出ひずみゲージと折り返し線路部の接続部に存在する請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージと異なり、疲労度検出部とバイパス部の接続部にも存在するため、請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージと比較して更に破断しやすい構成となっている。そのため、構造材の疲労破壊をより早く予測することができる。また、構造材の疲労度合いに応じて疲労度検出部が段階的に破断する。そのため、構造材の疲労の進み度合いを段階的に検出することができる。
【0022】
特に、疲労度検出部の幅部変えることなく折り返しタブと疲労度検出部と隣接する疲労度検出部とバイパス部とによって囲まれた空間の角部のR形状をその曲率が段階的に変わるように疲労度検出部を形成しているので、構造材の疲労度が大きくなるにつれて曲率が大きい角部から破断が開始し、構造材の疲労の進み具合に応じて順次各角部から疲労度検出部を破断させていくことができる。
【0023】
前記折り返し線路部の折り返しタブの縁部と前記疲労度検出部の縁部とで形成される角部又は前記バイパス部の縁部と前記疲労度検出部の縁部とで形成される角部のうち、少なくとも何れか一方の角部は各縁部を接線とするR形状をなし、かつ前記R形状は前記疲労度検出部ごとに段階的に大きく形成してなることを特徴とする請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージ。
【0024】
また、本発明の請求項5に係る疲労度検出ひずみゲージは、請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージにおいて、
前記バイパス部は、前記各疲労度検出部に対応して位置するバイパス部の幅を
、前記折り返し線路部の折り返しタブ及びひずみ検出部を介して前記一方の端子部に繋がった当該バイパス部の一端から前記他方の端子部に繋がった当該バイパス部の他端まで段階的に大きく
なるよう形成し、当該バイパス部が前記疲労度検出部の代わりに所定の応力によって破断するようになっており、前記疲労度検出部の破断度合いから前記疲労度検出ひずみゲージが貼られた構造材の疲労度を検出する代わりに前記バイパス部の破断度合いから前記疲労度検出ひずみゲージが貼られた構造材の疲労度を検出することを特徴としている。
【0025】
請求項5に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、構造材のねじり方向に加わる応力や請求項1に記載の疲労度検出ひずみゲージで疲労度を計測する方向とは異なる方向に加わる引っ張り応力等の応力集中による構造材の疲労破壊を予測することができる。また、構造材の疲労度合いに応じて疲労度検出部が段階的に破断する。そのため、構造材の疲労の進み度合いを段階的に検出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、構造材のひずみを測定できると共に、構造材に局所的に生じる疲労破壊の兆候を事前にかつ的確に予測可能な疲労度検出ひずみゲージを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージは、構造物の疲労度を抵抗体の抵抗値の電気的な変化を検出することにより適切に行うことが可能な疲労度検出ひずみゲージである。この疲労度検出ひずみゲージは、ストランドと隣接するストランドとが平行に配置され折り返しタブを介して接続されるひずみ検出部と、ストランドと隣接するストランドとが平行に配置され折り返しタブを介して接続され前記ひずみ検出部と直列接続された折り返し線路部と、折り返し線路部及びひずみ検出部と別経路をなし、一端が前記端子部の一方の端子部に折り返し線路部の折り返しタブ及びひずみ検出部を介して繋がると共に、他端が端子部の他方の端子部に繋がるバイパス部と、折り返し線路部の折り返しタブに接続されている疲労度検出部と、を有している。そして、平行に配置されている各々の折り返しタブが疲労度検出部を介してバイパス部に接続されており、疲労度検出部の破断度合いから疲労度検出ひずみゲージが貼られた構造材の疲労度を検出するようになっている。
【0029】
以下、本発明の第1の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージについて図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージを示す平面図である。また、
図2は、
図1に示した疲労度検出ひずみゲージの疲労度検出用の折り返しタブ及びバイパス部並びにこれら両者間に接続された疲労度検出部を拡大して示す平面図である。なお、以下の説明においては、
図1におけるフィルム状部材の垂直方向を長手方向とし、水平方向を幅方向とする。また、
図1におけるフィルム状部材の上側を先端側、下側を基端側とする。
【0030】
本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100は、例えば建造物の梁や柱、橋脚、鉄塔、橋げた等の一般構造材のひずみ及び疲労度を検出するのに用いられ、可撓性を有する絶縁体の樹脂材からなるフィルム状部材110と、フィルム状部材110にパターニングされた金属箔からなる電気抵抗体、と電気抵抗体の端部に接続された端子部120等から構成されている。そして、電気抵抗体は、端子部121,122(120)と、ひずみ検出部130と、折り返し線路部140と、疲労度検出部150と、バイパス部160とから構成されている。
【0031】
フィルム状部材110は、樹脂製部材からなり可撓性を有し矩形状をなしている。
【0032】
端子部120(121,122)は、フィルム状部材110の基端側であって幅方向一方の側(
図1中左側)の端部近傍に形成された一方の端子部121と他方の側(
図1中右側)の端部近傍に形成された他方の端子部122からなる。端子部120にはここでは図示しない電線がハンダ付けされ、ひずみ検出部130、折り返し線路部140、疲労度検出部150、及びバイパス部160からなる電気抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力し、図示しない演算制御手段で疲労度検出ひずみゲージ100が貼られた構造材のひずみや疲労度を検出するようになっている。
【0033】
ひずみ検出部130は、フィルム状部材110の幅方向一方の側(
図1中左側)の端部近傍からフィルム状部材110の幅方向中央近傍までの幅であって、フィルム状部材110の先端部近傍から一方の端子部121近傍に亘る領域に形成されている。
【0034】
ひずみ検出部130は、本実施形態では線幅の細い金属箔が一定の長さでそれぞれ端部側において何度も同一方向に折り返され、前記一定の長さの各延在部が僅かな間隔だけ隔てて互いに平行に配置されたいわゆるつづら折り形状(以下、単に「つづら折り」形状とする)をなしている。なお、ひずみ検出部130の各延在部はフィルム状部材110の長手方向に延在している。
【0035】
また、ひずみ検出部130の一端は、一方の端子部121と接続し、その他端は折り返し線路部140に接続している。
【0036】
より詳細には、ひずみ検出部130は、複数のストランド(ゲージ受感部)131(上述した延在部)と折り返しタブ132(上述した折り返し部)から構成され、ひずみ検出部130に引っ張りのひずみが生じることで、ひずみ検出部130の抵抗値が増し、電気抵抗体全体としての抵抗値も上がるようになっている。なお、ひずみ検出部130の折り返しタブ132とストランド131とが接続される部分における折り返しタブ132の内側部分の形状は、曲率が連続的に徐々に変わる曲線形状をしており、疲労による破断が生じ難い形状となっている。
【0037】
折り返し線路部140は、フィルム状部材110の幅方向他方の側(
図1中右側)端部近傍からフィルム状部材110の幅方向中央近傍までの幅であって、フィルム状部材110の先端部近傍から他方の端子部122近傍に亘る領域に形成されている。
【0038】
折り返し線路部140は、ひずみ検出部130と同様の構成を有しており、線幅の細い金属箔がつづら折り形状をなしている。そして、その折り返し線路部140の一方の端部先端側(
図1中左側端部先端側)が疲労度検出部150を介してバイパス部160に接続し、他方の端部先端側(
図1中幅方向右側端部先端側)は端子部122及びバイパス部160に接続している。また、折り返し線路部140の一方の端部基端側(
図1中左側端部基端側)は、ひずみ検出部130の一方の端部に接続している。
【0039】
より具体的には、折り返し線路部140は、複数のストランド141と折り返しタブ142から構成され、ストランド141はフィルム状部材110の長手方向に延在している。また、折り返し線路部140の折り返しタブ142とストランド141とが接続される部分における折り返しタブ142の内側部分の形状は、連続的に曲率が徐々に変わる曲線形状をしており、疲労による破断が生じ難い形状となっている。これによって、疲労度検出部150が全て破断した際は、バイパス部160には電流が流れず、折り返し線路部140にだけ電流が流れることになり、電気抵抗体全体としての抵抗値が上がるようになっている。
【0040】
疲労度検出部150は、
図2に示すように折り返し線路部140の先端側の各折り返しタブ142の先端からそれぞれ延在形成されている。なお、各疲労度検出部150の一方(
図2中右側)の側縁部150mは、これに対応する折り返し線路部140の一方(
図2中右側)の側縁部140mと連続して直線状をなしている。疲労度検出部150は、本実施形態では線幅の細い金属箔からなり、長手方向に沿って形成された長さの短い延在部から構成されている。そして、疲労度検出部150は、本実施形態の場合、全て同一幅となっており、それぞれがフィルム状部材110の長手方向に沿って延在し、その基端側端部は上述した通り折り返し線路部140の先端側の折り返しタブ142に接続すると共に、各先端側端部は後述するバイパス部160に接続している。
【0041】
バイパス部160は、折り返し線路部140より更に先端側であって折り返し線路部140の先端側各折り返しタブ142と全て等距離だけ離間した位置を通るようにフィルム部材110の幅方向に延在している。
【0042】
バイパス部160は、線幅の細い金属箔からなり、幅方向一端側(図中左側)は、疲労度検出部150を介して折り返し線路部140の幅方向一端(
図2における最も左側の疲労度検出部150)と接続し、他端側(図中右側)は、
図1中最も右側の折り返し線路部140及び端子部122と接続している。また、各折り返し線路部140は、各折り返しタブ142において各疲労度検出部150を介してバイパス部160に接続されている。なお、バイパス部自体の電気抵抗は極めて低く、このバイパス部160にひずみが生じてもバイパス部160の抵抗値が変化することはなく、電気抵抗体全体としての抵抗値も変化しないようになっている。
【0043】
本実施形態では、疲労度検出部150が構造材の局所的に生じる応力集中部かその近傍に位置するように疲労度検出ひずみゲージ100が接着剤等を介して構造材に貼られるようになっている。そして、全ての疲労度検出部150と折り返し線路部140の折り返しタブ142との間が破断すると、バイパス部160に電流が一切流れなくなると共に、折り返し線路部140にのみ電流が流れるようになる。これによって、電気抵抗体全体の抵抗値が一気に上がり、構造材の局所的な疲労破壊を迅速かつ的確に予測することを可能にしている。
【0044】
この際、疲労度検出部150のうち一部が破断した場合であっても、それなりに電気抵抗体全体の抵抗値に変化が生じるので、この抵抗器の変化に基づいて構造材の疲労度合いが若干進んだことを検出することも考えられる。
【0045】
なお、本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100は、疲労度検出部150を利用して疲労度を検出できる電気抵抗式の疲労度検出ひずみゲージであるが、上述した構成を有することで構造材の疲労度検出にのみ特化したものではなく、ひずみ検出部130にひずみが生じた場合にひずみ検出部130の抵抗値が変化し、その変化した値から構造材のひずみを検出することも可能としている。
【0046】
続いて、上述した疲労度検出ひずみゲージ100の具体的な使用方法について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージを構造材に取付けた状態を概略的に示す斜視図である。
図3において2つの疲労度検出ひずみゲージ100A,100Bが一般構造材としての柱11と梁12の連結部に貼り付けられている。
【0047】
2つの疲労度検出ひずみゲージ100A,100Bがこのように柱11と梁12に貼り付けられているので、構造材の柱11や梁12に曲げ荷重や引張り荷重が作用し、疲労の程度が予め想定された疲労度に達すると、ひずみ検出部130の最も近くに位置する(即ち、
図1における最も左側の)疲労度検出部150を含む少なくとも何れか1つ若しくは全部の疲労度検出部150と折り返し線路部140との接続部が破断する。そして、電気抵抗体の抵抗値を測定することで構造材の疲労が規定の疲労度に達したことが分かり、構造材の疲労破壊の予測に役立てることができる。
【0048】
上述した本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100は、疲労度検出部150とひずみ検出部130を併せ持っているので、以下のような本発明特有の使用方法が可能となる。具体的には、例えば本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100を車両の多く通行する橋脚の一般構造材に備えた場合、橋脚の完成直後からしばらくの間、ひずみ検出部130から構造材のひずみ度合いのトレンドを収集し、橋脚を構成する構造材の車両通行に伴うひずみ度合いの傾向を検出することができる。
【0049】
本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージがこのような構成を有することで、構造材の局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部150を配置することができ、迅速かつ的確な疲労度の検出が可能となる。特に平行に配置されている折り返しタブ142が疲労度検出部150を介してバイパス部160に接続されていることから、平行に配置された各折り返しタブ142の端部にそれぞれ疲労度検出部150を介してバイパス部160をフィルム状部材先端縁部に対して平行に延在させることができる。これによって、フィルム状部材110の先端側に疲労度検出部150を極力近づけて配置させることができるようになるので、構造材の疲労の進み度合いをより正確に検出することができるようになる。
【0050】
また、
図9に示す本願の関連出願のように、疲労度検出部の構造としては、隣接するストランド間を折り返しタブ952で接続する構造が一般的であり、この場合、折り返しタブ952の長さLが一定の長さを有することになる。一方、本実施形態の場合、上述した構成から明らかなように疲労度検出部に折り返しタブが設けられていない。従って、仮に関連出願の疲労度検出部952を応力集中部側に配置した場合に比べて、本実施形態の場合の方が、疲労度検出部150を応力集中部により近づけることができる。
【0051】
また、疲労度検出部150が端子部側に形成されていないため、局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部150を配置させても、応力集中に伴って例えば端子部120のハンダ接合部に応力を生じさせないようにでき、疲労度検出ひずみゲージ自体に悪影響を及ぼすこともない。
【0052】
なお、上述の実施形態のような疲労度検出ひずみゲージの使用方法は、一般構造材を橋脚に用いた場合に限定されず、例えば多層階の建造物の骨組みをなす一般構造材に適用しても良い。これによって、建造物の完成直後しばらくの間、構造材のひずみ度合いのトレンドをひずみ検出部130で検出することで、建造物の完成後における構造材のひずみ度合いの変化を分析することができる。
【0053】
また、疲労度検出部150の破断により構造材の疲労破壊を予測した場合、その直後のしばらくの間、構造材のひずみ度合いのトレンドをひずみ検出部130から収集することで、どのような現象により構造材の疲労破壊が近づいているかを把握することができる。一方、疲労度検出部150が破断に至らなくても、例えば建造物の上層階に産業機械などの重量物を設置した場合などにおいて、その重量物の設置直後からしばらくの間、構造材のひずみ度合いのトレンドをひずみ検出部130から収集することで、重量物の設置が構造材に与える影響を分析することができる。
【0054】
なお、ひずみ検出部の配置位置は、上述の実施形態に限定されず、
図8に示すように疲労度検出部よりもフィルム部材基端側に配置しても良い。これによって、ひずみ検出部が構造材の疲労により受ける影響を小さくすることができる。この構成については、第2の実施形態として後に詳細に説明する。
【0055】
続いて、疲労度検出ひずみゲージの各種変形例について説明する。この各種変形例は、第1の実施形態における疲労度検出部150の形状を部分的に変形させたものである。
【0056】
最初に、上述した実施形態に係る疲労度検出部の第1変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成に関しては、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図4(a)は、第1の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第1変形例であり、疲労度検出部250を拡大して示す平面図である。
【0057】
なお、
図4(a)における折り返し線路部240に関しては、ここでは説明の都合上、図中左から第1の折り返し線路部240A、第2の折り返し線路部240B、第3の折り返し線路部240Cとし、これらにそれぞれ接続された疲労度検出部250を第1の疲労度検出部250A、第2の疲労度検出部250B、第3の疲労度検出部250Cとする。なお、
図4(a)は、疲労度検出部250のひずみ検出部側に配置された一部を示したもので、
図4(a)の右側に
図1に対応する疲労度検出部250が更に形成されている。
【0058】
第1変形例に係る疲労度検出部250(250A,250B,250C,・・・)は、
図4(a)に示すように各疲労度検出部250の幅が他端側(図中右側)に向かって段階的に広くなっている。具体的には、図中左側に位置する第1の疲労度検出部250Aの幅W1が最も狭く、第2の疲労度検出部250Bの幅W2、第3の疲労度検出部250Cの幅W3の順に広くなっていく。これによって、構造材の疲労度が高まるにつれて疲労度検出部250と折り返し線路部240の間が疲労度検出部250の幅の狭い順に断線し、電気抵抗体の抵抗値が段階的に上昇する。そして、この抵抗値の段階的な変化を検出することで、構造材の疲労の進み度合いを段階的に検出することができるようになる。
【0059】
以上の説明を回路図に基いて説明する。
図4(b)は、
図4(a)に示した疲労度検出ひずみゲージに対応する回路図である。ここで、
図4(b)の回路図を
図4(a)に示す構成に対応させて説明する。
【0060】
図4(a)の疲労度検出部250Aから250Bに至るまでの第1の折り返し線路部240Aにおける右側のストランド241とこれに連なる第2の折り返し線路部240Bにおける左側のストランド241の抵抗を
図4(b)中のR1、
図4(a)の疲労度検出部250Bから250Cに至るまでの第2の折り返し線路部240Bにおける右側のストランド241とこれに連なる第3の折り返し線路部240Cにおける左側のストランド241の抵抗を
図4(b)中のR2、
図4(a)の疲労度検出部250Cからここでは図示しない図中右側に隣接する疲労度検出部に至るまでの第3の折り返し線路部240Cにおける右側のストランド241とこれに連なるここでは図示しない図中右側に隣接する折り返し線路部における左側のストランドの抵抗を
図4(b)中のR3とする。また、構造材に疲労が生じておらず何れの疲労度検出部250も破断していない状態の抵抗は
図4(b)中のRhとする。
【0061】
ここで、構造材に疲労が生じていない状態の時は、電流は抵抗Rh、第1の疲労度検出部250A、バイパス部260を通る。また、構造材が第1段階の疲労度に達し第1の疲労度検出部250Aとこれに対応する折り返し線路部240Aの接続部が破断した場合は、電流は抵抗Rh、R1、第2の疲労度検出部250B、バイパス部260を通り、電気抵抗体の抵抗値が1段階上昇する。また、構造材の疲労が更に進んで構造材が第2の疲労段階に達し、第1の疲労度検出部250A及び第2の疲労度検出部250Bとこれらに対応する折り返し線路部240A,240Bの接続部がそれぞれ破断した場合は、電流は抵抗Rh、R1、R2、第3の疲労度検出部250C、バイパス部260を通り、電気抵抗体の抵抗値が更に1段階上昇して2段階目に達する。また、構造材の疲労が更に進んで構造材が第3の疲労段階に達し、第1の疲労度検出部250A、第2の疲労度検出部250B、及び第3の疲労度検出部250Cとこれらに対応する折り返し線路部240A,240B,240Cの全ての接続部が破断した場合は、電流は抵抗Rh、R1、R2、R3、バイパス部260を通り、電気抵抗体の抵抗値が更に1段階上昇して3段階目に達する。以降疲労度が高まるにつれてこのような段階的な破断現象及びこれに対応する電気抵抗体の抵抗値の段階的な上昇が生じる。そして、このような抵抗値の段階的な変化を検出することで、構造材の疲労度を段階的に検出することができるようになる。
【0062】
次に、上述した実施形態に係る疲労度検出部の第2変形例について説明する。なお、上述した第1の変形例と同等の構成に関しては、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図5(a)は、第1の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第2変形例の疲労度検出部350を拡大して示す平面図である。
【0063】
第2変形例に係る疲労度検出部350は、折り返しタブ342の先端側縁部342eと疲労度検出部350A(350B)と隣接する疲労度検出部350B(350C)とバイパス部360とによってそれぞれ囲まれた空間の角部であって折り返しタブ側角部が、R形状を段階的に大きく形成してなることを特徴としている。なお、以下の記載に対応する図においては、説明の理解の容易化を図るために、Rの大きさ及び変化度合いを誇張して示している。
【0064】
具体的には、第2変形例に係る疲労度検出部350は、
図5(a)に示すように各疲労度検出部350の縁部350mとこれに対応する折り返し線路部340の折り返しタブ342の先端側縁部342eとの接続部c1,c2,c3の曲率半径が、ほぼ0から段階的に大きくなっている。即ち、この接続部c1,c2,c3の凹んだR形状が一端側(
図5(a)中右側)に向かって段階的に大きくなっている。
【0065】
これによって、構造材の疲労度が高まるにつれて疲労度検出部350と折り返し線路部340の接続部c1,c2,c3における凹んだR形状が小さい順に断線し、電気抵抗体の抵抗値が段階的に上昇する。そして、この抵抗値の段階的な変化を検出することで、構造材の疲労度を段階的に検出することができる。
【0066】
次に、上述した実施形態に係る疲労度検出部の第3変形例について説明する。なお、上述した各変形例と同等の構成に関しては、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図5(b)は、第1の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第3変形例の疲労度検出部450を拡大して示す平面図である。
【0067】
第3変形例に係る疲労度検出部450は、
図5(b)に示すように、折り返し線路部440の幅方向中央部に接続されている。そして、折り返しタブ442と疲労度検出部450A(450B)と隣接する疲労度検出部450B(450C)とバイパス部460とによって囲まれた空間の角部であって折り返しタブ側角部が、R形状を段階的に大きく形成してなることを特徴としている。
【0068】
具体的には、各疲労度検出部450の縁部450mとこれに対応する折り返し線路部440の折り返しタブ442の先端側縁部442eとの接続部d1,d2,d3の曲率半径が、ほぼ0から段階的に大きくなっている。即ち、この接続部d1,d2,d3の凹んだR形状が一端側(
図5(b)中右側)に向かって段階的に大きくなっている。これによって、構造材の疲労度が高まるにつれて疲労度検出部450と折り返し線路部440の接続部d1,d2,d3における凹んだR形状が小さい順に断線し、電気抵抗体の抵抗値が段階的に上昇する。そして、この抵抗値の段階的な変化を検出することで、構造材の疲労度を段階的に検出することができるようになる。
【0069】
なお、各疲労度検出部450は、折り返し線路部440の幅方向中央部に接続されているので、疲労による破断の起点が、各疲労度検出部450の縁部450mとこれに対応する折り返し線路部440の折り返しタブ442の先端側縁部442eとの接続部の両側に2箇所形成され、疲労度検出部450が破断し易くなる。その結果、構造材の疲労を初期の段階から検出できる。
【0070】
また、本変形例は、疲労度検出部450における破断開始点が第2変形例の場合よりも多い(2倍になる)ので、構造材の疲労度に応じた破断を確実に行うようにし、構造材の疲労の進み度合いに応じてこれを段階的に確実に検出する。
【0071】
次に、上述した実施形態に係る疲労度検出部の第4変形例について説明する。なお、上述した各変形例と同等の構成に関しては、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図6は、第1の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第4変形例の疲労度検出部550を拡大して示す平面図である。
【0072】
第4変形例に係る疲労度検出部550は、
図6に示すように折り返し線路部540の幅方向中央部に接続されている。また、第2変形例及び第3変形例と同様に、折り返しタブ542と疲労度検出部550A(550B)と隣接する疲労度検出部550B(550C)とバイパス部560とによって囲まれた空間の角部e1,e2,e3,f1,f2,f3が、R形状を段階的に大きく形成してなることを特徴としている。
【0073】
具体的には、各疲労度検出部550の縁部550mとこれに対応する折り返し線路部540の折り返しタブの先端側縁部542eとの角部e1,e2,e3の曲率半径及び各疲労度検出部550の縁部550mとこれに対応するバイパス部560の縁部560mとの角部f1,f2,f3の曲率半径が、ほぼ0から段階的に大きくなっている。即ち、この角部e1,e2,e3,f1,f2,f3の凹んだR形状が一端側(図中右側)に向かって段階的に大きくなっている。そのため、各疲労度検出部550は、疲労による破断の起点となる箇所を疲労度検出部550と折り返し線路部540及びバイパス部560との接続部両側に合計4箇所形成することができ、疲労度検出部550が破断し易くなる。その結果、構造材の疲労を初期の段階から検出できる。
【0074】
また、構造材の疲労度が高まるにつれて疲労度検出部550と折り返し線路部540の接続部及び疲労度検出部550とバイパス部560の接続部における凹んだR形状が小さい順に断線し、電気抵抗体の抵抗値が段階的に上昇する。そして、この抵抗値の段階的な変化を検出することで、構造材の疲労度を段階的に検出することができるようになる。
【0075】
また、本変形例によると、第2変形例よりも破断開始点が4倍になり、第3変形例よりも破断開始点が2倍になるので、構造材の疲労度に応じた破断を確実に行うようにし、構造材の疲労の進み度合いに応じてこれを段階的に確実に検出する。
【0076】
次に、上述した実施形態に係る疲労度検出部の第5変形例について説明する。なお、上述した各種変形例と同等の構成に関しては、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図7は、第1の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージの第5変形例の疲労度検出部を拡大して示す平面図である。
【0077】
第5変形例に係る疲労度検出部650(650A,650B,650C,・・・)は、
図7に示すように各疲労度検出部650A,650B,650Cに対応して位置するバイパス部660の幅が他端側(図中右側)に向かって段階的に広くなっている。具体的には、図中左側に位置する第1のバイパス部660Aの幅H1が最も狭く、第2のバイパス部660Bの幅H2、第3のバイパス部660Cの幅H3の順に広くなっていく。これによって、構造材の疲労度が高まるにつれてバイパス部660の幅の狭い順に断線し、電気抵抗体の抵抗値が段階的に上昇する。そして、この抵抗値の段階的な変化を検出することで、構造材の疲労の進み度合いを段階的に検出することができるようになる。
【0078】
続いて、本発明の第2の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージについて図面に基づいて説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100’を示す平面図である。なお、以下の説明における長手方向、幅方向、先端側、基端側は第1の実施形態と同様とする。
【0079】
本実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100’は、可撓性を有する絶縁体の樹脂材からなるフィルム状部材110’と、フィルム状部材110’にパターニングされた金属箔からなる電気抵抗体と、電気抵抗体の端部に接続する端子部120’等から構成されている。そして、電気抵抗体は、ひずみ検出部130’と、折り返し線路部140’と、疲労度検出部150’と、バイパス部160’とから構成されている。
【0080】
フィルム状部材110’は、樹脂製部材からなり可撓性を有し矩形状をなしている。
【0081】
端子部120’は、フィルム状部材110’の基端側であって幅方向において両端近傍にそれぞれ形成されている。端子部120’にはここでは図示しない電線がハンダ付けされ、ひずみ検出部130’の抵抗値の変化を外部に出力すると共に、折り返し線路部140’、疲労度検出部150’、及びバイパス部160’からなる電気抵抗体の抵抗値の変化を外部に出力し、図示しない演算制御手段で疲労度検出ひずみゲージ100’が貼られた構造材のひずみや疲労度を検出するようになっている。
【0082】
ひずみ検出部130’は、ここではブロック図で示すが、その構成は第1の実施形態と同様になっている。なお、本実施形態では、ひずみ検出部130’と折り返し線路部140’とが共通の端子部120’ を介して長手方向に並んで配置されている。
【0083】
折り返し線路部140’は、フィルム状部材110’の幅方向一側(
図8中左側)端部近傍からフィルム状部材110’の幅方向他側(
図8中右側)であって、フィルム状部材110’の先端部近傍から他方の端子部122’近傍に亘る領域に形成されている。
【0084】
折り返し線路部140’は、線幅の細い金属箔がつづら折り形状をなしている。そして、その折り返し線路部140’の一方の端部先端側(
図8中左側端部先端側)が疲労度検出部150’を介してバイパス部160’に接続し、他方の端部先端側(
図8中幅方向右側端部先端側)が端子部122’及びバイパス部160’に接続している。また、折り返し線路部140’の一方の端部基端側(
図8中左側端部基端側)は、端子部121’に接続している。なお、折り返し線路部140’のストランド141’はフィルム状部材110’の長手方向に延在している。
【0085】
より具体的には、折り返し線路部140’は、複数のストランド141’と折り返しタブ142’から構成されている。また、折り返し線路部の折り返しタブ142’とストランド141’とが接続される部分の折り返しタブ142’の内側部分の形状は、連続的に曲率が徐々に変わる曲線形状をしており、疲労による破断が生じ難い形状となっている。これによって、疲労度検出部150’が全て破断した際は、バイパス部160’には電流が流れず、折り返し線路部140’にだけ電流が流れることになり、電気抵抗体全体としての抵抗値が上がるようになっている。
【0086】
疲労度検出部150’は、第1の実施形態における
図2に示すように折り返し線路部の先端側の各折り返しタブ142’の先端にそれぞれ形成されている。疲労度検出部150’は、本実施形態では線幅の細い金属箔からなり、長手方向に沿って形成された長さの短い延在部から構成されている。そして、疲労度検出部150’は、本実施形態の場合、全て同一幅となっており、それぞれがフィルム状部材110’の長手方向にそって延在し、その基端側端部は上述した通り折り返し線路部140’の先端側の折り返しタブ142’と接続すると共に、各先端側端部は後述するバイパス部160’にそれぞれ接続している。なお、各疲労度検出部150’の一方(
図8中右側)の側縁部は、各折り返し線路部140’の一方(
図8中右側)の側縁部とはそのつなぎ目に段部(幅方向のずれ)を有することなく直線状に繋がっている。また、疲労度検出部150’が破断する際には、全ての疲労度検出部150’が一度に破断するようになっており、構造材の疲労度合いが高まっているのを確実に検出する。なお、疲労度検出部150’ の一部が破断したことを電気抵抗体の抵抗値の変化から検出し、構造材の疲労が進行し始めたことを検出しても良い。
【0087】
バイパス部160’は、折り返し線路部140’より更に先端側であって折り返し線路部140’の各折り返しタブ142’と全て等距離だけ離間した位置を通るようにフィルム部材110’の幅方向に延在している。バイパス部160’は、線幅の細い金属箔からなり、幅方向一端側(図中左側)は、折り返し線路部140’の幅方向一端と接続され、他端側(図中右側)は、端子部122’と接続されている。また、折り返し線路部140’の各折り返しタブ142’は、それぞれ対応する各疲労度検出部150’を介してバイパス部160’に接続されている。なお、バイパス部自体の電気抵抗は極めて低く、このバイパス部160’にひずみが生じてもバイパス部160’の抵抗値が変化することはなく、電気抵抗体全体としての抵抗値も変化しないようになっている。
【0088】
そして、本実施形態においても共通の端子部120’でひずみ検出部130’の抵抗値の変化により構造材のひずみを検出すると共に、折り返し線路部140’、疲労度検出部150’、及びバイパス部160’からなる電気抵抗体の抵抗値の変化から構造材の疲労度を検出する。
【0089】
このような構成によっても第1の実施形態と同等の作用を発揮することができる。即ち、構造材の局所的に応力集中が生じる場所に疲労度検出部を配置することができ、迅速かつ的確な疲労度の検出が可能となる。更には、構造材のひずみを検出できると共に、構造材の疲労度を検出して、疲労度を予測することができる。
【0090】
また、第2の実施形態に係る疲労度検出ひずみゲージ100’は、バイパス部160’の一端が折り返し線路部140’の折り返しタブ142’を介して一方の端子部121’に繋がっているので、フィルム状部材上でのひずみ検出部130’の配置場所を自由に選択できる。ひずみ検出部130’の両端を端子部120’に直接繋げることができるので、フィルム状部材上におけるひずみ検出部のレイアウトの自由度を向上させることができ、ひずみ検出部130’を疲労度検出部150’や折り返し線路部140’と端子部120’との間に配置することができる。その結果、構造材の応力集中部が最も大きい場所からひずみ検出部130’を離すことができ、ひずみ検出部130’の長期に亘る信頼性を維持できる。
【0091】
以上説明した実施形態及び各変形例に係る金属箔の配置パターンはあくまで一例であり、本発明を逸脱しない範囲で様々な変形例が適用可能であることは言うまでもない。
【0092】
なお、第1及び第2の実施形態で疲労度検出部150(150’)が破断する際に、
図1及び
図8において最も左側に位置する疲労度検出部150(150’)を必ず破断させるためには、この疲労度検出部150(150’)に適当な切れ込みを入れてその疲労度検出部の幅が狭まるようにしておくのが良い。
【0093】
また、疲労度検出ひずみゲージのフィルム状部材は、これに形成されたひずみ検出部及び疲労度検出部がその役割を果たすのであれば、必ずしも樹脂製ではなくても良く、可撓性を有していなくても良い。
【0094】
また、上述した実施形態及びその各変形例に係る疲労度検出ひずみゲージの適用例としては、柱と梁からなる一般構造材を紹介したが、その適用対象としてこのようなものに限定されるものではなく、例えば一般構造材の溶接部分や形状が急激に変化する(形状係数が急激に変化する)部分など、局所的に応力集中が生じ易い部分に適用可能である。同様にひずみゲージと同様の機械的性質を有する機械構造材であっても溶接部分や形状が急激に変化する部分など、局所的に応力集中が生じ易い部分に上述した実施形態及びその各変形例に係る疲労度検出ひずみゲージを適用可能である。