(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対のビード部と、これらビード部からタイヤ径方向外方に延びる一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部の径方向外端同士を連ねるトレッド部と、前記トレッド部からサイドウォール部を経てビード部にて係止されたカーカスプライと、前記トレッド部における前記カーカスプライの外周側に配された3層以下のスチールベルト層とを備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記トレッド部は、接地端領域において、第1ブロックと、該第1ブロックよりもタイヤ幅方向外方に延在した第2ブロックとを、タイヤ周方向に交互に備えてなり、
前記サイドウォール部は、タイヤ最大断面幅位置よりも径方向外方側の外表面において、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状領域を有して、該環状領域に複数の突起が周方向に並べて設けられ、
前記環状領域の外周縁に沿って周方向に連続する外側薄肉部が設けられるとともに、前記環状領域の内周縁に沿って周方向に連続する内側薄肉部が設けられ、前記外側薄肉部が、タイヤ内面径点に相当する径方向位置である内面径位置よりもタイヤ径方向内方側において当該内面径位置に近接させて配置され、
前記外側薄肉部は、前記環状領域のベース面に対してタイヤ内面側に落ち込む外側周方向溝を当該環状領域の外周縁に沿って設けることで形成され、前記外側周方向溝の溝底が、前記内面径位置と前記タイヤ最大断面幅位置とに挟まれた領域において、前記タイヤ最大断面幅位置からタイヤ径方向外方に向かって当該領域の80%以上の位置にある、
ことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
前記内側薄肉部は、前記内面径位置と前記タイヤ最大断面幅位置とにより挟まれた領域のタイヤ径方向における中央部に配置されたことを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
前記内側薄肉部は、前記環状領域のベース面に対してタイヤ内面側に落ち込む内側周方向溝を当該環状領域の内周縁に沿って設けることで形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りラジアルタイヤ。
前記環状領域のベース面が、前記外側周方向溝と内側周方向溝の溝底同士を結ぶ直線に対して増肉した台状に形成され、該台状のベース面上に前記複数の突起が設けられたことを特徴とする請求項3記載の空気入りラジアルタイヤ。
前記突起は、前記第1ブロック及び第2ブロックに対し、前記外側薄肉部を挟んでタイヤ子午線方向に対向する位置にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りラジアルタイヤ。
一対のビード部と、これらビード部からタイヤ径方向外方に延びる一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部の径方向外端同士を連ねるトレッド部と、前記トレッド部からサイドウォール部を経てビード部にて係止されたカーカスプライと、前記トレッド部における前記カーカスプライの外周側に配された3層以下のスチールベルト層とを備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記トレッド部は、接地端領域において、第1ブロックと、該第1ブロックよりもタイヤ幅方向外方に延在した第2ブロックとを、タイヤ周方向に交互に備えてなり、
前記サイドウォール部は、タイヤ最大断面幅位置よりも径方向外方側の外表面において、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状領域を有して、該環状領域に複数の突起が周方向に並べて設けられ、
前記環状領域の外周縁に沿って周方向に連続する外側薄肉部が設けられるとともに、前記環状領域の内周縁に沿って周方向に連続する内側薄肉部が設けられ、前記外側薄肉部が、タイヤ内面径点に相当する径方向位置である内面径位置よりもタイヤ径方向内方側において当該内面径位置に近接させて配置され、
前記複数の突起は、第1突起と、該第1突起よりもタイヤ周方向長さの大きい第2突起とからなり、前記第1突起と第2突起がタイヤ周方向に交互に設けられ、前記第1突起と第2突起の間隔が、第1間隔と、該第1間隔よりもタイヤ周方向寸法の大きい第2間隔とからなり、前記第1間隔と第2間隔がタイヤ周方向に交互に設定された、
ことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
一対のビード部と、これらビード部からタイヤ径方向外方に延びる一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部の径方向外端同士を連ねるトレッド部と、前記トレッド部からサイドウォール部を経てビード部にて係止されたカーカスプライと、前記トレッド部における前記カーカスプライの外周側に配された3層以下のスチールベルト層とを備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記トレッド部は、接地端領域において、第1ブロックと、該第1ブロックよりもタイヤ幅方向外方に延在した第2ブロックとを、タイヤ周方向に交互に備えてなり、
前記サイドウォール部は、タイヤ最大断面幅位置よりも径方向外方側の外表面において、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状領域を有して、該環状領域に複数の突起が周方向に並べて設けられ、
前記環状領域の外周縁に沿って周方向に連続する外側薄肉部が設けられるとともに、前記環状領域の内周縁に沿って周方向に連続する内側薄肉部が設けられ、前記外側薄肉部が、タイヤ内面径点に相当する径方向位置である内面径位置よりもタイヤ径方向内方側において当該内面径位置に近接させて配置され、
前記複数の突起は、前記第1ブロックに対して前記外側薄肉部を挟んでタイヤ子午線方向に対向する位置に設けられた第1突起と、前記第2ブロックに対して前記外側薄肉部を挟んでタイヤ子午線方向に対向する位置に設けられ前記第1突起よりもタイヤ周方向長さが大きい第2突起とからなり、前記第1突起と第2突起がタイヤ周方向に交互に設けられた、
ことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【背景技術】
【0002】
従来、悪路走行を目的とした空気入りラジアルタイヤにおいて、サイドウォール部に、タイヤ周方向に沿って配置した複数の突起を設ける技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。該突起は、泥濘地にタイヤが沈み込んだときに、剪断抵抗によりトラクションを発生させるためのものであり、泥濘地での駆動性能を確保する目的で設けられている。あるいはまた、該突起によって、悪路走行時の耐外傷性能を向上することも知られている。
【0003】
ところで、オフロードレースの中には、泥濘地や砂地だけでなく、岩山などの岩場を走行するもある。岩場を走行する場合、タイヤの変形を利用して路面追従性能を向上するために、タイヤは低内圧とされる。このように岩場を低内圧で走行する場合、特に直径1m以上の巨岩が積層した岩山を走破する場合に、トレッド面のブロックが岩表面との間で線接触もしくは点接触となるような接地条件では、十分な駆動力を発揮することができない。従って、駆動性能を得るためには、トレッド面のブロックが岩を包み込むように変形し、岩表面との間で面接触となるような接地条件となることが求められる。
【0004】
タイヤを低内圧とすることにより、サイドウォール部の曲げ剛性の低下により、タイヤの縦剛性が低下する。しかしながら、トレッドの面剛性に関しては、トレッド部に埋設されたスチールベルト層のタガ効果により、トレッド面の一定領域が皿を伏せたように比較的なだらかに変形する。そのため、例えば鋭角岩に接地する場合、トレッド面のブロックによる包み込み性を高めることには限界がある。
【0005】
スチールベルト層の積層数を減じ、もしくはベルト層におけるスチールコードの径を減じることにより、上記のタガ効果を弱めることが考えられる。しかしながら、タガ効果を弱めると、通常の舗装路や非舗装路の走行性能及び耐荷重性を減ずることになるため、限界がある。従って、空気圧の調整にて、特に低内圧条件下でトレッド面のブロックの変形を高めることが望ましい。
【0006】
これに対し、上記特許文献1のように、単にサイドウォール部に突起を配設したのでは、サイドウォール部の曲げ剛性が高まることになり、低内圧条件において突起がトレッド面の局所変形を支える効果が発現する。そのため、トレッド面での包み込み性は却って悪化する傾向にあった。
【0007】
なお、下記特許文献2には、岩場を走行するための空気入りタイヤとして、サイドウォール部の外表面に、タイヤ周方向に沿って環状に延びる周方向突起と、該周方向突起からタイヤ径方向に延びる複数の径方向突起を設けることが開示されている。しかしながら、この文献は、岩場での落輪時の耐損傷性を改善するために上記周方向突起と径方向突起を設けることを開示したものであり、岩場での低内圧走行時における路面追従性能については開示されていない。
【0008】
一方、下記特許文献3には、サイドウォール部の外表面に複数の周方向溝を断面波状に配置することで、縦たわみ量を大きくすることが開示されている。しかしながら、この文献はサイドウォール部自体での屈曲作用を得ることを目的としたものであり、低内圧条件でのトレッド面の局所変形を目的としたものではない。実際、この文献のように波状に凹凸を配した場合、それぞれの溝部に対して負荷分散がなされることから、トレッド面の局所変形を得ることは困難である。また、この文献のようにタイヤ最大
断面幅位置近傍に複数の周方向溝を近接させて設けた場合、大変形下においては周方向溝の壁面同士が接触することにより変形が阻害されるおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る空気入りラジアルタイヤ10について
図1〜8を参照して説明する。
【0017】
実施形態に係る空気入りラジアルタイヤ10は、岩場などの凹凸の大きな悪路を走行するためのタイヤであり、岩場走行を主としたオフロードレース用や、災害現場への派遣車両用などとして好適な悪路走行用空気入りラジアルタイヤである。
【0018】
このラジアルタイヤ10は、左右一対のビード部12と、これらビード部12からタイヤ径方向外方Koに延びる左右一対のサイドウォール部14と、これらサイドウォール部14の径方向外端同士を連ねるトレッド部16とを備えてなり、トレッド部16が接地面を構成する。
【0019】
ラジアルタイヤ10は、
図5に示すように、一対のビード部12間にまたがって延びるトロイダル形状のカーカスプライ18を備える。カーカスプライ18は、トレッド部16からサイドウォール部14を経て、ビード部12にて係止されている。ビード部12には環状のビードコア20が埋設されている。カーカスプライ18の両端部は、ビードコア20の周りを内側から外側に折り返すことにより係止されており、従って、両端部に折返し部18Aを備えている。
【0020】
カーカスプライ18は、有機繊維からなる。詳細には、カーカスプライ18は、有機繊維コードをタイヤ周方向に対して70〜90度の角度で配列してなるゴム−コード複合材であり、少なくとも1プライ、通常1プライ又は2プライで構成されている。有機繊維としては、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロンなどが挙げられる。このように有機繊維からなるラジアルカーカスプライ18を用いることにより、サイドウォール部14の曲げ剛性を低減することができる。すなわち、例えばスチールカーカスプライを用いた場合、サイドウォール部の肉厚による剛性変化の寄与度に比べ、スチールカーカスプライ自体の曲げ剛性への寄与度が高い。そのため、スチールをカーカスプライとして採用した場合、サイドウォール部の曲げ剛性が高く、トレッド面の柔軟な変化を得ることが困難となる。
【0021】
トレッド部16におけるカーカスプライ18の外周側にはベルト22が配設されている。すなわち、ベルト22は、トレッド部16においてカーカスプライ18とトレッドゴム24との間に設けられている。ベルト22は、スチールコードをタイヤ周方向に対して10〜35度の角度で配列した3層以下のスチールベルト層からなり、この例では2層のスチールベルト層22A,22Bで形成されている。
【0022】
このようにトレッド部16を補強するベルト22をスチールベルト層で構成することにより、一般路の走行性能を向上することができる。仮に、スチールベルト層でない場合、トレッド部16の補強が不十分であり、一般舗装路の走行時などのトレッド部16の耐久性に問題が生ずる。スチールベルト層22A,22Bとともに上記有機繊維からなるラジアルカーカスプライ18の構成を採用することにより、サイドウォール部14の曲げ剛性を低減しつつトレッド部16の補強をスチールベルト層22A,22Bにより成し、一般路の走行性能と低圧走行時のトレッド面の路面追従性能を高めることが可能となる。
【0023】
トレッド部16は、トレッドゴム24の表面、即ちトレッド面において、タイヤ周方向に沿って延びる主溝と、該主溝に交差して延びる横溝とにより区画された複数のブロックを備える。この例では、トレッド部16は、
図3に示すように、タイヤ赤道面Eを挟んでその両側に位置する一対の中央ブロック列26,26と、その両側の接地端領域(ショルダー領域)に位置する一対のショルダーブロック列28,28との4つのブロック列を有する。但し、少なくとも接地端領域において、タイヤ周方向及び幅方向に独立したブロック形状となっていれば、中央部のトレッドパターンは特に限定されない。
【0024】
ショルダーブロック列28では、接地端側のブロック端の端部位置をタイヤ赤道面Eからの距離が変化するように設定し、これにより、接地端側のブロック端がタイヤ周方向Cにおいて凹凸状をなしている。詳細には、ショルダーブロック列28は、第1ブロック30と、該第1ブロック30よりもタイヤ幅方向外方Woに延在した第2ブロック32とを、タイヤ周方向Cに交互に設けてなる。
【0025】
図5に示すように、第2ブロック32は、第1ブロック30よりもタイヤ赤道面Eから距離が離れたブロック端を有し、従ってタイヤ幅方向Wの長さが大きいブロックであり、タイヤ幅方向外方Woに張り出し形成されている。第2ブロック32は、
図6に示すように、平滑路面における接地面となる接地面部32Aと、その接地端32Cを介してタイヤ幅方向外方Woかつ径方向内方Kiに傾斜した傾斜面部32Bとを備えてなる。
【0026】
サイドウォール部14には、タイヤ最大断面幅位置34よりも径方向外方側Koの外表面において、タイヤ周方向Cの全周にわたって延びる環状領域36が設けられている。また、この環状領域36には、複数の突起40がタイヤ周方向Cに並べて設けられている。
【0027】
なお、タイヤ最大断面幅位置34とは、タイヤ外面、即ちサイドウォール部14の一般外表面38がタイヤ軸方向においてタイヤ赤道面Eから最も離れる位置である。ここで、一般外表面38とは、突起等を除いたサイドウォール部本体の外表面部分であり、通常、複数の円弧をなめらかに接続することで規定される子午線断面形状をもつ。
【0028】
上記突起40は、
図1に示すように、タイヤ周方向Cにおいて分断され互いに独立して形成された凸部であり、環状領域36の全周にわたって並設されている。突起40は、環状領域36のベース面36A上に設けられており、タイヤ径方向Kにおいて、環状領域36の全幅にわたって設けられている。突起40の突出量は、特に限定されないが、後述する外側薄肉部46と内側薄肉部48の肉厚T1,T2(
図5参照)に対して、突起40を設けた部分でのサイドウォール部14の肉厚が1.5倍以上となるように設定することが好ましく、より好ましくは2〜3倍である。これにより、外側薄肉部46や内側薄肉部48との間で、厚み差による剛性差を持たせることができ、外側薄肉部46や内側薄肉部48での変形が発現しやすくなる。
【0029】
環状領域36の外周側と内周側には、それぞれ環状領域36のベース面36Aに対してタイヤ内面側に落ち込む周方向溝42,44が設けられている。すなわち、環状領域36は、該周方向溝42,44の間において両周方向溝42,44に挟まれた領域であり、両周方向溝42,44の溝底に対して若干量隆起させることで環状領域36のベース面36Aが形成されている。
【0030】
本実施形態では、環状領域36は、そのベース面36Aが、
図6に示すように、サイドウォール部14の一般外表面38に対して増肉(即ち、隆起)した台状に形成されている。詳細には、
図6に示すタイヤ子午線断面において、外側周方向溝42の溝底(溝の最も深い点)をP1とし、内側周方向溝44の溝底をP2とし、P1とP2を結ぶ直線をLとする。この例では、溝底P1,P2はともに、サイドウォール部14の一般外表面38上に位置している。このとき、環状領域36のベース面36Aは、上記直線Lに対して、タイヤ外面側に張り出すように断面台形状に肉盛りされて形成されている。直線Lに対する肉盛りの厚みT3は、1〜5mmであることが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。なお、本実施形態では、ベース面36Aは、タイヤ子午線断面形状において、直線Lに平行な直線状に形成されているが、タイヤ外面側に僅かに膨らむ湾曲線状に形成されてもよい。
【0031】
環状領域36に対して落ち込む外側周方向溝42は、環状領域36の外周縁に沿って全周にわたって形成されている。外側周方向溝42は、環状領域36(より詳細にはそこに設けられた突起40)と、ショルダーブロック列28(より詳細には第1及び第2ブロック30,32の側面)との間で、両者に挟まれて形成されている。これにより、環状領域36の外周縁に沿ってタイヤ周方向Cに連続する外側薄肉部46が全周にわたって設けられている。外側薄肉部46は、その内周側及び外周側に隣接する部分よりもタイヤ周方向Cでの平均肉厚が薄く設定された部分である。すなわち、外側薄肉部46の内周側には、突起40を備えた環状領域36が設けられており、その周方向Cでの平均肉厚は外側薄肉部46の肉厚T1よりも大きい。また、外側薄肉部46の外周側には、タイヤ幅方向外方Woに延在した第2ブロック32があり、その周方向Cでの平均肉厚は外側薄肉部46の肉厚T1よりも大きい。これらに挟まれた肉厚の薄い部分が外側薄肉部46である。
【0032】
また、環状領域36に対して落ち込む内側周方向溝44は、環状領域36の内周縁に沿って全周にわたって形成されている。内側周方向溝44は、環状領域36(より詳細にはそこに設けられた突起40)と、後述するプロテクター58との間で、両者に挟まれて形成されている。これにより、環状領域36の内周縁に沿ってタイヤ周方向Cに連続する内側薄肉部48が全周にわたって設けられている。内側薄肉部48は、その内周側及び外周側に隣接する部分よりもタイヤ周方向Cでの平均肉厚が薄く設定された部分である。すなわち、内側薄肉部48の外周側には突起40を備えた環状領域36が設けられ、内周側にはプロテクター58があり、それらの周方向Cでの平均肉厚は内側薄肉部48の肉厚T2よりも大きい。これらに挟まれた肉厚の薄い部分が内側薄肉部48である。
【0033】
外側薄肉部46での肉厚T1と内側薄肉部48での肉厚T2は、いずれも最大断面幅位置34での肉厚T0と略同等に設定されており(
図5参照)、これにより、外側薄肉部46と内側薄肉部48は、曲げ剛性の小さい低剛性領域を構成している。ここで、最大断面幅位置34での肉厚T0とは、最大断面幅位置34に後述するプロテクター58が存在する場合は、該プロテクター58を除くサイドウォール部本体の厚みである。外側薄肉部46と内側薄肉部48の肉厚T1,T2は、最大断面幅位置34での肉厚T0に対して、0.7〜1.3倍の範囲内であることが好ましい。
【0034】
外側薄肉部46と内側薄肉部48は、
図5に示すように、タイヤ内面径点Mに相当する径方向位置である内面径位置50と最大断面幅位置34との間に設けられている。ここで、タイヤ内面径点Mとは、タイヤ内面がタイヤ高さ方向においてタイヤ軸から最も離れた位置であり、通常はタイヤ内面における赤道面E上の点である。
【0035】
外側薄肉部46と内側薄肉部48は、低内圧条件で路面からの外力が作用したときに、路面追従性能を向上させるために、変形の節となる部位である。すなわち、上記第2ブロック32に集中荷重が作用したとき、外側薄肉部46では外側周方向溝42が閉じるように圧縮ないし座屈変形し、内側薄肉部48では内側周方向溝44が開くように引張ないし拡開変形する。このような作用を果たすために、外側薄肉部46と内側薄肉部48は次のように配置されている。
【0036】
内側薄肉部48は、内面径位置50と最大断面幅位置34とに挟まれた領域52のタイヤ径方向Kにおける中央部に配置されている。詳細には、内側薄肉部48(より詳細には、内側周方向溝44の溝底P2)は、最大断面幅位置34からタイヤ径方向外方Koに向かって上記領域52の幅の30〜60%の位置に設定されることが好ましい。より好ましくは、上記領域52を略2等分する、内面径位置50と最大断面幅位置34との中間位置に、内側薄肉部48を設定することである。
【0037】
外側薄肉部46は、サイドウォール部14のバットレス面に設けられており、上記内面径位置50よりもタイヤ径方向内方側Kiにおいて当該内面径位置50に近接させて配置されている。すなわち、外側薄肉部46、詳細には外側周方向溝42の溝底P1が、内面径位置50よりもタイヤ径方向内方Kiではあるが、該内面径位置50の近傍に位置するように設けられている。内面径位置50は、スチールベルト層22A,22Bの端部の径方向位置と略一致しており、剛性が高い。この剛性の高い領域の径方向内方側Kiに近接させて剛性の低い外側薄肉部46を設けることにより、外側薄肉部46が変形の節となりやすくなる。なお、外側薄肉部46、詳細には上記溝底P1は、最大
断面幅位置34からタイヤ径方向外方Koに向かって上記領域52の幅の80%以上の位置に設定されることが好ましい。
【0038】
外側薄肉部46と内側薄肉部48の間隔は、特に限定するものではないが、両者の溝底P1,P2間の距離で20mm以上であることが好ましく、より好ましくは30mm以上である。このように両者を離間させることにより、上記変形の節としての作用を発揮させやすくなる。該間隔の上限は、特に限定しないが、通常は70mm以下である。
【0039】
上記周方向溝42,44の溝底部の曲率半径は3mm以上であることが好ましい。特に、外側周方向溝42の突起40側の基部の曲率半径R1(
図6,7参照)は5mm以上であることが好ましい。このように曲率半径を大きくすることにより、特に外側薄肉部46での座屈による疲労性を向上して、クラックの発生を抑制することができる。
【0040】
また、変形の節として効果的に機能させるためには、剛性の変化すなわち肉厚変化が徐変ではなく、できるだけ急変させる必要がある。溝底部の曲率半径が10mmを超えると肉厚の変化が緩やかになり変形の節となる効果が低減するので、該曲率半径は10mm以下であることが好ましい。
【0041】
図2,4に示されるように、突起40は、ショルダーブロック列28の各ブロック(即ち、第1ブロック30及び第2ブロック32)に対し、外側薄肉部46を挟んでタイヤ子午線方向Dに対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0042】
詳細には、複数の突起40は、第1ブロック30に対して外側薄肉部46を挟んでタイヤ子午線方向Dに対向する位置に設けられた第1突起40A(
図2,4,7参照)と、第2ブロック32に対して外側薄肉部46を挟んでタイヤ子午線方向Dに対向する位置に設けられた第2突起40B(
図2,4,6参照)とからなり、これら第1突起40Aと第2突起40Bがタイヤ周方向Cに交互に設けられている。
【0043】
第2突起40Bは、
図2,4に示すように、第1突起40Aよりもタイヤ周方向Cでの長さが大きく設定されている。そのため、環状領域36に設けられた突起40は、タイヤ周方向Cにおいて、大、小、大、小の繰り返しで配列されている。しかも、トレッド接地端において凸状をなす第2ブロック32に対向する突起を、「大」、即ち周方向長さが大きい第2突起40Bとし、トレッド接地端において凹状をなす第1ブロック30に対向する突起を、「小」、即ち周方向長さが小さい第1突起40Aとしている。より詳細には、第2突起40Bは、第2ブロック32に対し、タイヤ周方向長さが同等に設定され、第1突起40Aは、第1ブロック30に対し、タイヤ周方向長さが短く設定されている。
【0044】
また、突起40のタイヤ周方向Cにおける間隔についても、大、小、大、小の繰り返しで配列されている。すなわち、第1突起40Aと第2突起40Bの間隔は、第1間隔54と、該第1間隔54よりもタイヤ周方向寸法が大きい第2間隔56とからなり、第1間隔54と第2間隔56がタイヤ周方向Cに交互に設定されている。これらの間隔54,56は、上記ショルダーブロック列28における複数の横溝60に対応させて、各横溝60に対向する位置に設定されている(
図4参照)。
【0045】
図5に示すように、カーカスプライ18の折返し端18Bは、サイドウォール部14において最も薄肉となる最大断面幅位置34と、上記内側薄肉部48との間の領域、特には、最大断面幅位置34と内側薄肉部48との中間位置に設定されている。これにより、カーカスプライ18の折返し端18Bでの歪みを抑制することができる。
【0046】
図4〜7に示すように、サイドウォール部14の外表面において、内側薄肉部48のタイヤ径方向内側Kiには、プロテクター58が設けられている。プロテクター58は、サイドウォール部14を外傷因子から保護する凸部であり、環状領域36に設けた突起40よりも突出高さが低く設定されている。プロテクター58は、内側周方向溝44の内周縁に沿って環状に延びる周方向突起58Dと、該周方向突起58Dからタイヤ径方向内方Kiに向かって延びタイヤ周方向Cに間隔をおいて複数設けられた径方向突起58A〜58Cよりなる。
【0047】
径方向突起58A〜58Cは、上記突起40及びその間の各間隔54,56に対してそれぞれ対向する位置に1つずつ設けられている。詳細には、該径方向突起は、各間隔54,56に対向する位置に設けられた第1径方向突起58Aと、該第1径方向突起58Aの間に交互に介在するように設けられた第2及び第3径方向突起58B,58Cとからなる。第2径方向突起58Bは、上記第1突起40Aに対向する位置に設けられ、第3径方向突起58Cは、上記第2突起40Bに対向する位置に設けられており、ともに、第1径方向突起58Aよりもタイヤ側面視で面積が大きく設定されている。この例では、また、第2径方向突起58Bが、第3径方向突起58Cよりもタイヤ径方向内方Kiへの延在長さが大きく設定されている。
【0048】
以上の説明におけるタイヤ最大断面幅位置34、タイヤ内面径点M、内面径位置50、及び上記の好ましい各寸法値は、タイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim"、或いはETRTOであれば "Measuring Rim" とする。また、正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【0049】
以上よりなる本実施形態に係る空気入りラジアルタイヤ10であると、トレッド部16を補強するスチールベルト層22A,22Bを3層以下、特には2層としたことにより、トレッド面の剛性を低下させることができ、ブロック30,32の変形が容易になる。スチールベルト層が4層以上であると、トレッド部の面剛性が大きくなりすぎ、局所的なブロックのタイヤ径方向内方Kiへの陥没変形が生じにくくなる。
【0050】
また、本実施形態であると、トレッド部16の接地端をタイヤ周方向Cに凹凸状にしたことにより、タイヤ幅方向外側Woに延在した第2ブロック32に集中荷重が作用しやすくなり、結果、第2ブロック32がタイヤ径方向内方Kiに陥没しやすくなる。
【0051】
また、サイドウォール部14においては、上記のように、タイヤ周方向Cに複数の突起40を並設した環状領域36と、その内周縁と外周縁に沿って外側薄肉部46と内側薄肉部48を、上記のように配設したので、低内圧条件において第2ブロック32に集中荷重が作用したとき、外側薄肉部46が圧縮ないし座屈変形し、内側薄肉部48が引張ないし拡開変形する。そのため、第2ブロック32の変形力をタイヤ径方向内方Kiにいなすことができ、第2ブロック32の陥没変形が容易になる。
【0052】
詳細には、最大断面幅位置34よりも径方向外方Koでのサイドウォール部14の曲げ剛性を考えた場合、上記内面径位置50及びこれよりもタイヤ径方向外側Koの第2ブロック32がある領域は「高剛性領域」となり、その直下が外側薄肉部46により「低剛性領域」となる。また、その内周側の環状領域36は突起40を並設したことで「高剛性領域」となっており、その内周側に内側薄肉部48によって「低剛性領域」が形成されている。このように、外側薄肉部46と内側薄肉部48が相対的に曲げ剛性の低い低剛性領域となるので、これらが変形の節となる。従って、
図8に示すように、岩場走行時に岩Gから第2ブロック32に集中荷重が作用したとき、外側周方向溝42が閉じるように外側薄肉部46が座屈し、内側周方向溝44が開くように内側薄肉部48が引張変形することが確認された。すなわち、タイヤ径方向内方Kiへの第2ブロック32の変形力を、当該内方Kiにいなすことができ、第2ブロック32の陥没変形を容易にすることができた。従って、低内圧条件下でトレッド面のブロック32が岩を包み込むように変形し、岩表面との間で面接触となるような接地条件を実現しやすくなり、岩場などの凹凸路面において路面追従性能を向上して、走行性能を高めることができる。
【0053】
また、突起40を設ける環状領域36のベース面36Aがタイヤ外面側にやや隆起した台状に形成されているので、この点からも環状領域36の曲げ剛性を高めることができ、周方向溝42,44への応力集中をより効果的に行うことができ、好適である。
【0054】
また、該突起40をトレッド接地端の各ブロック30,32に対向させて設けたので、次の作用効果が奏される。すなわち、低内圧条件下で第2ブロック32に集中荷重が作用したとき、外側薄肉部46を座屈させるためには、外側薄肉部46の径方向内側Kiの剛性を高めることが有効である。上記構成によれば、各ブロック30,32に対向させて突起40を設けて、その径方向内側Kiの剛性を高くしたので、外側薄肉部46をより効果的に座屈させることができる。
【0055】
特に、上記実施形態では、トレッド接地端において凸状をなす第2ブロック32に対向する突起40を周方向長さが大きい第2突起40Bとし、凹状をなす第1ブロック30に対向する突起40を周方向長さの小さい第1突起40Aとしている。このように外力が作用しやすい第2ブロック32側において、大きな第2突起40Bを設けて、径方向内側Kiの剛性を高くしたので、第2ブロック32をより効果的に陥没変形させることができ、タイヤの周方向C及び幅方向Wにおいてこの部分を中心とした局所的な変形を可能にして、鋭角状の岩を包み込むような変形が一層容易になる。
【0056】
また、トレッド部16の接地端をタイヤ周方向Cに凹凸状にしたことにより、接地端のブロック間距離(詳細には、幅方向外方Woに突出した第2ブロック32間の距離)が大きくなるので、路面突起への引っ掛かり性を向上することができ、比較的大きな石でも乗り上げずにブロック間に収まるようにすることができる。環状領域36に設けた突起40についてもタイヤ周方向Cにおいて大、小、大、小の繰り返しで配列し、その間隔54,56についても大、小、大、小の繰り返しで設けたので、大きな突起への引っ掛かり性を向上することができる。
【0057】
なお、環状領域36に設けた突起40は、泥濘地を走行する際には、車両の重みによりタイヤ10が沈降し、泥に埋設した状態になることにより、泥濘地での駆動性能を発揮することができる。しかも、本実施形態では、トレッド接地端をタイヤ周方向Cに凹凸状に形成したので、泥濘地での排土性も向上することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、低内圧、低速度における岩場での走行性能を大幅に向上することができる。そのため、例えば、岩場走行を主としたオフロードレース用や災害現場への派遣車両用として、ピックアップトラックなどのライトトラックに好適に用いることができる。
【0059】
尚、このような岩場走行での内圧充填条件としては、タイヤに掛かる負荷荷重割合と、ビード部の嵌合が維持可能な範囲で決定することが可能である。岩場走行に特化した車両に装着されるタイヤは 車両のロードクリアランスを確保するために、通常大径タイヤが装着されることからタイヤ内容積の増加による許容負荷荷重が増加する傾向にある。結果、タイヤに掛かる負荷荷重割合は10%〜20%程度となり、更には岩場の走行速度は通常1〜2km/hであるため、負荷荷重に応じ適宜空気圧を下げることが可能となる。例えば、過度の低内圧条件はビード部の嵌合が解ける懸念が飛躍的に高まるため一般的には150kPa程度とされる。但し、レース用など特殊用途の場合には ビード部をリムに機械的に締結する所謂ビードロックリムを適用することにより、50kPa程度まで下げることも可能である。もちろん本実施形態の空気入りタイヤは450kPa程度の正規内圧を充填し、一般の舗装路をはじめ、泥濘地や砂地などでの走行に供することも可能である。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…空気入りラジアルタイヤ 12…ビード部 14…サイドウォール部
16…トレッド部 18…カーカスプライ 22A,22B…スチールベルト層
30…第1ブロック 32…第2ブロック 34…最大断面幅位置
36…環状領域 36A…ベース面 38…一般外表面
40…突起 40A…第1突起 40B…第2突起
42…外側周方向溝 44…内側周方向溝 46…外側薄肉部
48…内側薄肉部 50…内面径位置 54…第1間隔
56…第2間隔 C…タイヤ周方向 K…タイヤ径方向
Ki…タイヤ径方向内方 Ko…タイヤ径方向外方 D…タイヤ子午線方向