(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893386
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20160310BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20160310BHJP
【FI】
A63B53/04 B
A63B102:32
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-279502(P2011-279502)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-128644(P2013-128644A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】393000847
【氏名又は名称】キャスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】山野 克己
(72)【発明者】
【氏名】多田 政彦
(72)【発明者】
【氏名】岡部 広志
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−056853(JP,A)
【文献】
特開2003−38691(JP,A)
【文献】
特開2007−20996(JP,A)
【文献】
特開平11−128411(JP,A)
【文献】
特開2002−017903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14
B21C 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を接合し、中空部を有するゴルフクラブヘッドを製造するゴルフクラブヘッドの製造方法において、
第1板材の端面と、合計の厚さが前記第1板材の厚さに略等しい重畳された複数の板材からなる第2板材の一端面とを接合し、接合板材を形成する第1工程と、
金型を用いて前記接合板材を塑性加工し、クラウン部材又はソール部材となる中間加工部材を形成する第2工程と、
前記中間加工部材から、前記第2板材のうち、前記ゴルフクラブヘッドの前記中空部側に配設される前記板材の一部を除去し、前記クラウン部材又は前記ソール部材を形成する第3工程と、
前記クラウン部材又は前記ソール部材を、フェース部材を含む前記ゴルフクラブヘッドの構成部材と接合してゴルフクラブヘッドを製造する第4工程と、
を有することを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフクラブヘッドの製造方法において、
前記第1工程では、前記重畳された複数の前記板材の他端面同士を接合して仮止めすることを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドの製造方法において、
前記第2板材のうち、前記中空部側に配設される前記板材は、前記第1板材の前記端面側に配設される第1部分と、前記第1板材から離間する側に配設される第2部分とからなり、前記第3工程では、前記第1部分と前記第2部分との間に形成された切取部から前記第2部分を切り取ることを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のゴルフクラブヘッドの製造方法において、
前記第2板材のうち、前記ゴルフクラブヘッドの外側に配設される前記板材の厚さは、0.5mm以下に設定され、前記ゴルフクラブヘッドの前記中空部側に配設される前記板材の厚さは、0.5mm以上に設定されることを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のゴルフクラブヘッドの製造方法において、
前記第2工程では、前記中間加工部材が温間加工により形成されることを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部材を接合し、中空部を有するゴルフクラブヘッドを製造するゴルフクラブヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空部を有する金属製のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、ボールの飛距離を増大させるとともに、ボールを意図した方向に打ち出すため、種々の特性を備えるゴルフクラブヘッドが開発されている。例えば、クラウン部材に関しては、ゴルフクラブヘッドの重量、重心位置、反発特性等において所望の特性を得るため、バック側の厚さをフェース側の厚さよりも薄く形成することが考えられている。
【0003】
例えば、
図8に示すゴルフクラブヘッド100(特許文献1参照)は、フェース部材102と、ソール部104及びサイド部106を一体形成したソールサイド部材108と、クラウン部材110と、ホーゼル部材112とを個別に作成し、これらの部材を接合して製造される。この場合、特許文献1では、ゴルフクラブヘッド100を構成する各部材の材料や形状を選択し、また、鋳造加工や塑性加工等の加工方法を部材に応じて選択することにより、重心位置や慣性モーメント等の設計の自由度を高めることができるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、フェース部材、ソール部材及びクラウン部材を接合して構成されるゴルフクラブヘッドにおいて、フェース部材側のソール部材の厚さを、バック側のソール部材の厚さよりも厚く形成したものが開示されている。ソール部材をこのように部位によって厚さが異なる構成とすることにより、フェース部材の強度を確保するとともに、ゴルフクラブヘッドの重心位置の調整が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−17903号公報
【特許文献2】特開2003−24484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、厚さの異なる部位を有するクラウン部材やソール部材を形成する場合、鋳造加工では、薄肉部分を高精度に形成することが困難である。また、このような部材を鍛造やプレスフォーミングにより塑性加工するためには、部材の形状に応じた金型が必要である。この場合、部材の形状に対応して金型を設計しなければならないため、コストが著しく高騰してしまう問題がある。さらに、厚さの異なる部材の端面同士を突き合わせて溶接することも考えられるが、例えば、厚さが1mmに満たないような薄肉部材の溶接作業は、非常に困難である。
【0007】
本発明は、前記の不具合を解消するためになされたものであって、重量、重心位置、反発特性等の設計仕様に対応したゴルフクラブヘッドを容易且つ安価に製造することのできるゴルフクラブヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴルフクラブヘッドの製造方法は、複数の部材を接合し、中空部を有するゴルフクラブヘッドを製造するゴルフクラブヘッドの製造方法において、第1板材の端面と、合計の厚さが前記第1板材の厚さに略等しい重畳された複数の板材からなる第2板材の一端面とを接合し、接合板材を形成する第1工程と、金型を用いて前記接合板材を塑性加工し、クラウン部材又はソール部材となる中間加工部材を形成する第2工程と、前記中間加工部材から、前記第2板材のうち、前記ゴルフクラブヘッドの前記中空部側に配設される前記板材の一部を除去し、前記クラウン部材又は前記ソール部材を形成する第3工程と、前記クラウン部材又は前記ソール部材を、フェース部材を含む前記ゴルフクラブヘッドの構成部材と接合してゴルフクラブヘッドを製造する第4工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
前記ゴルフクラブヘッドの製造方法において、前記第1工程では、前記重畳された複数の前記板材の他端面を互いに接合して仮止めすることを特徴とする。
【0010】
前記ゴルフクラブヘッドの製造方法において、前記第2板材のうち、前記中空部側に配設される前記板材は、前記第1板材の前記端面側に配設される第1部分と、前記第1板材から離間する側に配設される第2部分とからなり、前記第3工程では、前記第1部分と前記第2部分との間に形成された切取部から前記第2部分を切り取ることを特徴とする。
【0011】
前記ゴルフクラブヘッドの製造方法において、前記第2板材のうち、前記ゴルフクラブヘッドの外側に配設される前記板材の厚さは、0.5mm以下に設定され、前記ゴルフクラブヘッドの前記中空部側に配設される前記板材の厚さは、0.5mm以上に設定されることを特徴とする。
【0012】
前記ゴルフクラブヘッドの製造方法において、前記第2工程では、前記中間加工部材が温間加工により形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴルフクラブヘッドの製造方法では、第1板材と、合計の厚さが第1板材の厚さに略等しい複数の板材からなる第2板材とを接合した接合板材を、金型を用いて塑性加工して中間加工部材を形成した後、中間加工部材を構成する第2板材のうち、中空部側の板材の一部を除去することにより、厚さの異なる部位を有するクラウン部材又はソール部材を形成する。
【0014】
この場合、第1工程では、第1板材及び第2板材の厚さが略等しく設定されているため、接合部材を容易に形成することができる。
【0015】
第2工程では、略等しい厚さからなる接合部材を塑性加工しているため、接合部材から所望の形状の中間加工部材を容易に形成することができる。
【0016】
第3工程では、中間加工部材から、第2板材のうち、中空部側に配設される板材の一部を除去することにより、部位によって厚さが異なる肉厚差を有するクラウン部材又はソール部材を容易に形成することができる。この場合、ゴルフクラブヘッドの設計仕様に応じて、板材の除去する範囲を調整したり、第2板材を構成する板材の材料を適宜選択することにより、重量、重心位置、反発特性等の異なる種々のクラウン部材又はソール部材を得ることができる。
【0017】
第2工程において、クラウン部材又はソール部材の形状に依存しない金型を用いて中間加工部材を形成している。形状等が異なるクラウン部材又はソール部材に対して、中間加工部材の形状が共通であるため、金型の型構造を共通化することができる。従って、中間加工部材を形成するために共通の金型を用いることができ、クラウン部材又はソール部材は、個々の形状に対応した金型を用いて形成する必要がない。よって、金型の台数を減らすことにより、クラウン部材又はソール部材の製造に要する全体の費用を大幅に削減することができる。
【0018】
このようにして形成されたクラウン部材又はソール部材は、フェース部材を含む前記ゴルフクラブヘッドの構成部材と接合することにより、重量、重心位置、反発特性等の設計仕様に対応した種々のゴルフクラブヘッドを容易且つ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッドの製造方法の工程説明図ある。
【
図4】
図4Aは、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッドを構成するクラウン部材となる接合部材の平面図、
図4Bは、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッドを構成するクラウン部材の平面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッドを構成するクラウン部材の変形例の断面図である。
【
図7】
図7Aは、本発明の第2実施形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図、
図7Bは、本発明の第2実施形態に係るゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【
図8】先行技術に係るゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
<第1実施形態の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド10の斜視図であり、
図2は、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド10の分解斜視図である。
【0022】
ゴルフクラブヘッド10は、フェース部材12と、ソール部14の周りにサイド部16が一体に形成されたソールサイド部材18と、クラウン部材20と、ホーゼル部材22とから基本的に構成される。ホーゼル部材22には、シャフト24が挿入される挿入孔26が形成される。ゴルフクラブヘッド10は、これらの部材を溶接により接合することで製造される。フェース部材12、ソールサイド部材18及びクラウン部材20によって囲まれる部分には、中空部28が形成される。
【0023】
ゴルフクラブヘッド10を構成するこれらの部材としては、ステンレス鋼、マルエージング鋼、チタン合金等を用いることができる。ゴルフクラブヘッド10には、十分な強度が求められるため、熱処理による抗張力が500MPa以上となる金属材料を用いることが好ましい。
【0024】
ソールサイド部材18は、ホーゼル部材22の一部が装着される凹部30を有する。
【0025】
クラウン部材20は、ゴルフクラブヘッド10のフェース部材12側に配設される第1クラウン部材32と、ゴルフクラブヘッド10のバック側上面部に配設される第2クラウン部材34と、第2クラウン部材34の内側である中空部28側に配設される第3クラウン部材36とを備える。第1クラウン部材32は、ソールサイド部材18の凹部30とともにホーゼル部材22が装着される凹部38を有する。
【0026】
第1クラウン部材32と、第2クラウン部材34及び第3クラウン部材36とは、端面同士が溶接により接合される(溶接部54)。第1クラウン部材32の厚さLは、第2クラウン部材34の厚さL1と第3クラウン部材36の厚さL2との合計の厚さに略等しく設定される(
図5A)。
【0027】
<第1実施形態の製造方法>
第1実施形態のゴルフクラブヘッド10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、ゴルフクラブヘッド10の製造方法について説明する。
【0028】
図3は、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド10の製造方法の工程説明図ある。
図4Aは、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド10を構成するクラウン部材20となる接合部材40の平面図、
図4Bは、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド10を構成するクラウン部材20の平面図である。
図5Aは、
図4Aに示す接合部材40を構成する第1板材42及び第2板材44の断面図、
図5Bは、
図4AのVB−VB線断面図、
図5Cは、
図5Bに示す接合部材40を塑性加工して得られる中間加工部材46の断面図、
図5Dは、
図4BのVD−VD線断面図である。
【0029】
先ず、第1クラウン部材32となる平板状の第1板材42と、第2クラウン部材34となる第2板材44である平板状の板材48と、板材48と同じ形状からなり、第3クラウン部材36となる第2板材44である平板状の板材50とを用意する(
図5A)。板材48は、ゴルフクラブヘッド10の外側に配設され、板材50は、ゴルフクラブヘッド10の中空部28側に配設される。また、板材50は、第1板材42の端面42a側に配設される第1部分51aと、第1板材42から離間する側に配設される第2部分51bとから構成され、第1部分51aと第2部分51bとの境界には、ミシン目又は切り欠き等からなる切取部52が形成されている。
【0030】
合計の厚さ(L1+L2)が第1板材42の厚さLに略等しくなるように設定された板材48及び50を重畳させ、これらの板材48及び50の各一端面48a、50aを、第1板材42の端面42aに溶接により接合する。また、第1板材42に接合されていない板材48及び50の他端面48b、50b同士を複数個所で溶接により接合して仮止めし、接合部材40を形成する(第1工程(ステップS1)、
図5B)。なお、
図5Bにおいて、参照符号54は、第1板材42の端面42aと板材48、50の一端面48a、50aとの溶接部を示し、参照符号56は、重畳された2枚の板材48及び50の他端面48b、50b同士の複数の仮止めの溶接部を示す(
図4A)。
【0031】
この場合、第1板材42の厚さLと、第2板材44である板材48の厚さL1及び板材50の厚さL2の合計の厚さ(L1+L2)とは、略等しくなるように設定されており、また、第1板材42及び板材48、50が平板状に形成されている。そのため、第1板材42の端面42aと、板材48、50の一端面48a、50aとは、位置合わせを容易且つ高精度に行うことができ、従って、溶接作業を容易に遂行することができる。なお、第1板材42の端面42aと板材48、50の一端面48a、50aとの溶接、及び、板材48、50の他端面48b、50b同士の溶接は、レーザ溶接又はプラズマ溶接で行うことができる。これらの溶接によれば、溶接不良の発生を抑制し、部材同士を高強度に接合することができる。
【0032】
次に、接合部材40を金型に挿入し、温間加工(鍛造、プレス加工等)により、クラウン部材20の外形形状に対応した形状からなる中間加工部材46を形成する(第2工程(ステップS2)、
図5C)。
【0033】
この場合、接合部材40は、ステップS1の工程において、板材48、50の他端面48b、50b同士が複数の溶接部56で仮止めされているため、塑性加工中に位置がずれてしまうことがなく、安定した状態で高精度な中間加工部材46を形成することができる。また、接合部材40は、第1板材42の厚さと、重畳された2枚の板材48、50の合計の厚さとが略等しく設定された単純な形状であるため、複雑な型構造を有する金型を必要としない。さらに、接合部材40の肉厚を大きく塑性変形させないため、例えば、500〜800℃の程度の温間加工による塑性加工を行うことができる。この結果、中間加工部材46には、亀裂やスプリングバック等が発生するおそれがない。もちろん、接合部材40は、用いる第1板材42及び第2板材44の材料に応じて、塑性加工としての熱間加工を行ってもよい。
【0034】
次に、形成された中間加工部材46を金型から取り出した後、板材48、50の他端面48b、50bを仮止めしている溶接部56を除去する。次いで、他端面50bが自由端となった板材50の第1部分51aを第1板材42側に残し、第2部分51bを切取部52から切り取る。この場合、第2部分51bは、切取部52によって中間加工部材46から容易に切り取ることができる。この結果、第1部分51aが第3クラウン部材36として残存し、ゴルフクラブヘッド10のバック側に薄肉な第2クラウン部材34を有するクラウン部材20が形成される(第3工程(ステップS3)、
図5D)。
【0035】
このようにして形成されたクラウン部材20は、板材50における切取部52の位置、板材48、50の各厚さL1、L2、第1板材42及び板材48、50の材料を、ゴルフクラブヘッド10のサイズ、重量、重心位置、反発特性等に応じて適宜設定することにより、所望の設計仕様に対応したものを得ることができる。例えば、第1板材42の厚さL=1.0mm、板材48の厚さL1=0.4mm、板材50の厚さL2=0.6mmとしたもの、L=1.0mm、L1=0.5mm、L2=0.5mmとしたもの等、ゴルフクラブヘッド10のバック側(板材48側)の厚みが異なる種々のクラウン部材20を形成することができる。なお、板材48の厚さL1は、0.5mm以下に設定し、板材50の厚さL2は、0.5mm以上に設定することが好ましい。
【0036】
また、クラウン部材20は、個々のクラウン部材20の形状に依存しない型構造を有する金型を用いて中間加工部材46を形成している。形状等が異なるクラウン部材20に対して、中間加工部材46の形状が共通であるため、金型の型構造を共通化することができる。従って、中間加工部材46を形成するために共通の金型を用いることができ、クラウン部材20は、個々の形状に対応した金型を用いて形成する必要がない。また、クラウン部材20は、板材50の切取部52の位置、板材48、50の各厚さL1、L2を適宜選択することにより、同じ形状の中間加工部材46から異なる設計仕様のクラウン部材20を形成することができる。よって、金型の台数を減らし、クラウン部材20の製造に要する全体の費用を大幅に削減することができる。
【0037】
以上のようにして形成されたクラウン部材20は、ゴルフクラブヘッド10の構成部材であるフェース部材12、ソールサイド部材18及びホーゼル部材22と溶接により接合して組み立てられる(第4工程(ステップS4)、
図1)。最後に、ゴルフクラブヘッド10に対して、熱処理、研削加工、研磨加工等が施され、ゴルフクラブヘッド10が完成する。
【0038】
ここで、クラウン部材20は、第2クラウン部材34よりも厚肉である第1クラウン部材32にホーゼル部材22を装着する凹部38を設けているため、第1クラウン部材32に対して、ホーゼル部材22を溶接によりしっかりと固定することができる。なお、溶接部54がフェース部材12に近いと、打球時のゴルフクラブヘッド10の耐久性が低下するおそれがあるため、溶接部54は、フェース部材12から10mm以上離間させて形成することが好ましい。
【0039】
また、上述したクラウン部材20を構成する第2クラウン部材34及び第3クラウン部材36は、2枚の板材48、50を重畳させて形成しているが、3枚以上の板材を重畳させて形成することもできる。
【0040】
図6は、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド10を構成するクラウン部材60の変形例の断面図である。このクラウン部材60は、第1板材42に対して、第2板材である3枚の板材62、64、66を接合して塑性加工した後、板材64、66の一部を除去し、板材64、66の部分68、70を残存させたものである。なお、板材62、64、66の合計の厚さは、第1板材42の厚さに略等しく設定されている。クラウン部材60をこのようにして形成することにより、ゴルフクラブヘッド10のバック側に向かって徐々に薄くなるクラウン部材60を形成することができる。
【0041】
<第2実施形態>
図7Aは、本発明の第2実施形態に係るゴルフクラブヘッド72の斜視図、
図7Bは、本発明の第2実施形態に係るゴルフクラブヘッド72の分解斜視図である。なお、
図1及び
図2に示す第1実施形態のゴルフクラブヘッド10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
ゴルフクラブヘッド72は、フェース部材12と、ソール部材74と、サイド部材76と、クラウン部材78と、ホーゼル部材22とから基本的に構成される。サイド部材76及びクラウン部材78には、ホーゼル部材22が装着される凹部76a、78aが形成される。フェース部材12、ソール部材74、サイド部材76及びクラウン部材78によって囲まれる部分には、中空部86が形成される。第1実施形態のゴルフクラブヘッド10との相違点は、ソール部材74とサイド部材76とが別体に構成され、且つ、ソール部材74が複数の板材から構成されている点である。
【0043】
ソール部材74は、フェース部材12側に配設される第1ソール部材80と、バック側に配設され、ゴルフクラブヘッド72の底面部を構成する第2ソール部材82と、第2ソール部材82の内側となるゴルフクラブヘッド72の中空部86側に配設される第3ソール部材84とを備える。
【0044】
ソール部材74は、
図5A〜
図5Dに示す第1工程から第4工程までの第1実施形態のクラウン部材20の形成工程と同様にして形成される。このようにして形成されたソール部材74は、フェース部材12側が十分な剛性を有するとともに、重心位置をフェース部材12側に設定したゴルフクラブヘッド72を得ることができる。また、ゴルフクラブヘッド72のバック側のソール部材74を薄肉とすることで、ゴルフクラブヘッド72の軽量化を図ることができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0046】
例えば、フェース部材に上述した製造方法を適用することにより、厚さの異なる部位を有するフェース部材を備えたゴルフクラブヘッドを製造することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10、72…ゴルフクラブヘッド
12…フェース部材
14…ソール部
16…サイド部
18…ソールサイド部材
20、60、78…クラウン部材
22…ホーゼル部材
24…シャフト
26…挿入孔
28、86…中空部
30、38、76a、78a…凹部
32…第1クラウン部材
34…第2クラウン部材
36…第3クラウン部材
40…接合部材
42…第1板材
42a…端面
44…第2板材
46…中間加工部材
48、50、62、64、66…板材
48a、50a…一端面
48b、50b…他端面
51a…第1部分
51b…第2部分
52…切取部
54、56…溶接部
68、70…部分
74…ソール部材
76…サイド部材
80…第1ソール部材
82…第2ソール部材
84…第3ソール部材