(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893405
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】ニコチンロゼンジ組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/26 20060101AFI20160310BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20160310BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20160310BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20160310BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20160310BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20160310BHJP
A61K 31/465 20060101ALI20160310BHJP
A61P 25/34 20060101ALI20160310BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
A61K9/26
A61K47/46
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/40
A61K31/465
A61P25/34
A61K45/00
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-507628(P2011-507628)
(86)(22)【出願日】2009年4月30日
(65)【公表番号】特表2011-519862(P2011-519862A)
(43)【公表日】2011年7月14日
(86)【国際出願番号】US2009042190
(87)【国際公開番号】WO2009134947
(87)【国際公開日】20091105
【審査請求日】2012年4月16日
(31)【優先権主張番号】61/049,515
(32)【優先日】2008年5月1日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591002957
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】リ‐ラン、チェン
【審査官】
光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/133141(WO,A1)
【文献】
特表2006−503046(JP,A)
【文献】
米国特許第05135753(US,A)
【文献】
特表2006−511566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00〜9/42
A61K 31/00〜31/80
A61K 47/00〜47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのアルカリ性緩衝剤、アカシア、カンテン、アルギン酸またはその塩、カルボマー、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、セルロース、キトサン、コポビドン、シクロデキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、イヌリン、メチルセルロース、ペクチン、ポリカルボフィルまたはその塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、プルラン、デンプン、トラガカント、トレハロース、キサンタンガム、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの溶解調節剤、および少なくとも1つの充填剤、を含むマスター顆粒成分、ならびに
b)ニコチン活性剤および少なくとも1つのアルカリ性緩衝剤を含んでなる、前記マスター顆粒と混合された顆粒外部成分
を含む、経口ロゼンジ組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの溶解調節剤が、アルギン酸またはその塩、ポリカルボフィルまたはその塩、キサンタンガム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の経口ロゼンジ組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの溶解調節剤が、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィルカルシウム、キサンタンガム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項2に記載の経口ロゼンジ組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの溶解調節剤がキサンタンガムである、請求項3に記載の経口ロゼンジ組成物。
【請求項5】
前記ニコチン活性剤がニコチンポラクリレックスである、請求項1に記載の経口ロゼンジ。
【請求項6】
前記充填剤がマンニトールである、請求項1に記載の経口ロゼンジ。
【請求項7】
前記アルカリ性緩衝剤が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウム、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の経口ロゼンジ。
【請求項8】
矯味剤、甘味剤、香味剤、キレート化剤、抗酸化剤、流動促進剤(glidants)、または着色剤からなる群から選択される、少なくとも1つの所望による賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の経口ロゼンジ。
【請求項9】
前記経口ロゼンジの単位重量が、100mg〜500mgである、請求項1に記載の経口ロゼンジ。
【請求項10】
前記経口ロゼンジが、口腔内への投与後15分未満で溶解する、請求項9に記載の経口ロゼンジ。
【請求項11】
前記ニコチン活性剤の全緩衝剤に対する総重量の比率が、3:1〜1:3である、請求項1に記載の経口ロゼンジ組成物。
【請求項12】
前記顆粒外部成分中のアルカリ性緩衝剤の前記マスター顆粒成分中のアルカリ性緩衝剤に対する比率が、5:1〜1:5である、請求項1に記載の経口ロゼンジ組成物。
【請求項13】
前記顆粒外部成分中のアルカリ性緩衝剤の前記マスター顆粒成分中のアルカリ性緩衝剤に対する比率が、1:1である、請求項12に記載の経口ロゼンジ組成物。
【請求項14】
前記アルカリ性緩衝剤の総量が5mg〜20mgである、請求項1に記載の経口ロゼンジ組成物。
【請求項15】
前記アルカリ性緩衝剤の総量が8mg〜12mgである、請求項14に記載の経口ロゼンジ組成物。
【請求項16】
a)少なくとも1つのアルカリ性緩衝剤、アカシア、カンテン、アルギン酸またはその塩、カルボマー、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、セルロース、キトサン、コポビドン、シクロデキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、イヌリン、メチルセルロース、ペクチン、ポリカルボフィルまたはその塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、プルラン、デンプン、トラガカント、トレハロース、キサンタンガム、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの溶解調節剤、および少なくとも1つの充填剤を顆粒化してマスター顆粒とし、
b)該マスター顆粒をニコチン活性剤およびアルカリ性緩衝剤と混合し、かつ
c)該混合物を直接圧縮して経口ロゼンジ剤形とする
ことを含む、ニコチン含有ロゼンジ組成物の製造方法。
【請求項17】
前記顆粒化が、湿式または乾式顆粒化である、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記経口ロゼンジ剤形の単位重量が100mg〜500mgである、請求項16に記載の製造方法。
【請求項19】
前記経口ロゼンジ剤形の単位重量が250mgである、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記経口ロゼンジ剤形が、口腔内への投与後15分未満で溶解する、請求項18に記載の製造方法。
【請求項21】
矯味剤、甘味剤、香味剤、キレート化剤、抗酸化剤、流動促進剤、または着色剤からなる群から選択される、少なくとも1つの所望による賦形剤をさらに含む、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された感覚プロファイル(sensory profiles)および使用者コンプライアンス(user compliance)を有するニコチンロゼンジ組成物に関する。本発明はさらに、最適な口腔内pHを提供し、それによって口腔または粘膜組織を通してのニコチンの吸収を促進する緩衝剤のレベルが低減されたニコチンロゼンジ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ(cigarettes)、葉巻(cigars)、およびパイプタバコなどのタバコ製品の能動ならびに受動喫煙が、その使用者および副流煙を浴びる者に重大な健康上のリスクをもたらすことは一般的に公知である。噛みタバコ、吐きタバコ(spit tobacco)、および嗅ぎタバコなどの無煙の形態のタバコ類の使用が、その使用者に重大な健康上のリスクをもたらすことも公知である。さらに、公共の場でのタバコ製品の使用は、次第に制限されるかまたは社会的に許容されなくなりつつある。その結果、喫煙者およびその他のタバコ類の使用者は、この命に関わる可能性のある習慣を止める試みをしばしば行う。職場や社会の環境が喫煙およびその他のタバコ類の使用を次第に制限しつつあることから、使用するタバコの量を削減せざるを得なくなる場合もある。
【0003】
タバコ類の使用による有害な影響は公知であるが、ニコチン依存であるほとんどの個人にとって、通常は巻きタバコの形態であるニコチンへの依存を克服することは非常に困難である。このような困難さは、部分的には、ニコチンの持つ強い習慣性、およびニコチン依存となってしまった身体からのニコチンの除去を始めた際に起こり得る強いニコチン禁断症状から来るものである。実際、ニコチン依存を克服しようと試みる人にとって、ニコチン禁断症状の克服は重大な問題である。
【0004】
ニコチン禁断症状、特にニコチン渇望(nicotine cravings)は、いくつかの形で現れ得る。例えば、禁煙を試みた後の喫煙者は、一日を通して中程度のレベルの一定したニコチン渇望を訴えることが研究によって示されている。この渇望は人によっては大きすぎる場合があることが分かっており、禁煙を試みた個人の中にはこれが再発に繋がり、タバコ類の使用へ戻ってしまう者もいる。一定の渇望に加えて、喫煙者は、突発性または急性の渇望に襲われる場合もある。このような急性の渇望は、喫煙に関連するきっかけに遭遇すること、喫煙の道具類を目にすること、喫煙中の他人の近くに居ること、または副流煙を吸入することなど、数多くの刺激によって引き起こされ得る。このような突発性の渇望も、個人がこれを効果的に乗り越える対策を施していない場合、再発へと繋がる場合がある。
【0005】
タバコ類の使用を止めるかまたは削減したいと希望する人を補助する試みとして、必要とする人にあるレベルのニコチン渇望の軽減を提供するための取り組みが行われている。歴史的には、このような取り組みでは、ニコチン自体の活性および投与に焦点が当てられて来た。このニコチン置換療法(NRT)は、喫煙またはその他のタバコ類の使用を止めた際に多くの個人が遭遇する強いニコチン禁断症状と闘う手助けとなる。近年、NRTは、米国でもその他の国でも商業化に成功している。そのような市販のNRT提供品(NRT offerings)としては、ニコチンガムおよびニコチン経皮パッチが挙げられる(例:GlaxoSmithKline Consumer Healthcareから販売されているNICODERM(登録商標)ブランドのパッチおよびNICORETTE(登録商標)ブランドのガム)。
【0006】
さらに最近になり、従来のガムおよびパッチのNRT提供品に加えて、ニコチン含有ロゼンジが米国内外にて市販され始めた。例えば、COMMIT(登録商標)ブランドのロゼンジは、別の選択肢の形態であるNRTを個人に提供するものである。Acharya et al.による米国特許第5,110,605号は、ポリカルボフィルおよびアルギン酸成分を含むロゼンジ組成物に関するものである。ニコチン含有ロゼンジ製剤のその他の例が多くの刊行物で見られ、これらに限定されないが、Shawによる米国特許第4,967,773号;Santusによる米国特許第5,549,906号;Ventourasによる米国特許第6,183,775号;およびAxelsson et al.による国際公開第2007/104575号が挙げられる。同様に、米国特許第5,593,684号;米国特許第5,721,257号、および米国特許第5,362,496号(すべてBaker et al.による)は、禁煙のための方法および治療システムを開示しており、ここでは、基準となる血漿中ニコチンレベルを得るための経皮ニコチン送達、および一時的な渇望を解消するためのニコチンの経粘膜投与の両方が用いられている。
【発明の概要】
【0007】
このような手段は喫煙の削減または禁煙を補助するものとして有用ではあるが、改良されたロゼンジ製剤を提供して、ニコチンの使用を止めている個人を補助することが継続的に求められている。特に、個人に対して従来のレベルの渇望の軽減を提供するが、NRTプログラムの使用者コンプライアンスが改善されるように設計されている形態のロゼンジを開発することが、依然として求められている。特に、ロゼンジを小さくし、溶解時間および渇望軽減の開始が同等かまたは速いものであれば、それはNRTレジメンの使用者コンプライアンスを促進し、有利なものであろう。
【0008】
本発明は、感覚受容性(organoleptics)が改良され、送達の開始が改良され、および口腔内での溶解時間が短縮され、それによって使用者コンプライアンスの改善されたニコチンロゼンジ製剤を提供する。
【0009】
本発明は、従来のニコチン含有経口剤形よりもアルカリ性緩衝剤の含有レベルが低いが、最適で口に合う(palatable)口腔内pHを達成し、口腔を通してのニコチンの吸収を促進するニコチン含有ロゼンジ組成物に関する。本発明は、マスター顆粒(master granulation)の内部および外部の両方にアルカリ性緩衝剤を含むが、全体としては、緩衝剤が顆粒内部分に均一に分散されている従来のロゼンジよりも組成物内に組み込まれたアルカリ性緩衝剤のレベルが低い。有利なことは、本発明の組成物が従来のニコチン含有ロゼンジよりも非常に小さいロゼンジに製剤することができ、従って、口腔内での溶解時間が短縮され、同時に、それでも、高い血漿中ニコチンレベルは達成され、従来のロゼンジと同等のニコチン薬物動態プロファイルが得られることである。溶解時間の短縮、口腔内pHの最適化、およびニコチン吸収速度の改良により、患者コンプライアンスも改善される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】緩衝剤がマスター顆粒の内部および外部の両方に存在する例1の製剤のニコチン含有ロゼンジ、およびこれに対して、すべての緩衝剤がマスター顆粒の顆粒内部に存在する例2の製剤のロゼンジの溶解プロファイル(経過時間に対する放出%として)を示す図である。溶解実験はUSP装置Iを用いて行った。
【
図2】例1の製剤のロゼンジ、ならびにこれに対して、例2の製剤のロゼンジおよびすべての緩衝剤がマスター顆粒の顆粒内部に存在する例5の製剤のロゼンジを溶解した際の経時での水のpHを示す図である。水のpHの測定にはUSP崩壊装置(USP disintegration apparatus)を用い、pHはロゼンジが崩壊および溶解すると上昇した。
【
図3】健康な喫煙者における、本発明のロゼンジ(例1)、およびこれに対して従来のロゼンジ(例2)による血漿中ニコチン濃度を示す図である。
【0011】
特許および特許出願を含むがこれらに限定されない本明細書にて引用されたすべての刊行物は、そのすべてが記載されているかのごとく、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0012】
特に断りのない限り、本明細書で示される部およびパーセントはすべて、記載されている該当する経口溶解ロゼンジの総重量に対する重量パーセントである。
【0013】
特に断りのない限り、本明細書で用いる「1つの(a)」または「1つの(an)」の用語は、1または2つ以上の変更された成分を含む。
【0014】
特に断りのない限り、本発明は、以下に示す成分を含むか、これらから成るか、またはこれらから実質的に成っていてよい。
【0015】
上述のように、本発明の製剤は、マスター顆粒成分、ならびに顆粒外部成分を含む。
【0016】
「マスター顆粒」製剤の使用は、錠剤および圧縮ロゼンジなどの固体剤形において一般的である。通常、マスター顆粒は、固体剤形の加工性の改善、ならびに輸送および取り扱いの間の脆弱性の低減のために製造される。マスター顆粒成分がない場合、高レベルの間接圧縮可能希釈剤(non-direct compressible diluents)が用いられている錠剤またはロゼンジは、加工が困難であるか、または脆弱性の高い製品となり得る。COMMITロゼンジなどの典型的なニコチンロゼンジの製剤では、充填剤または希釈剤(以降、まとめて「希釈剤」と称する)、および溶解調節剤(dissolution modifiers)または結合剤(以降、まとめて「溶解調節剤」と称する)を、緩衝剤と共に一緒に顆粒化してこのようなマスター顆粒を形成することが一般的である。その後、活性剤、ならびにその他の所望による賦形剤および香味剤を、圧縮の前にこのマスター顆粒と混合し、これらの従来のロゼンジ製剤の「顆粒外部」成分を作り上げる。
【0017】
しかし、対照的に、本発明の製剤では、マスター顆粒は、少なくとも1つの希釈剤、少なくとも1つの溶解調節剤、および少なくとも1つの緩衝剤を含む。次に、マスター顆粒をニコチン活性剤(nicotine active)、追加のアルカリ性緩衝剤、および所望により、矯味剤(taste masking agent)、香味剤(flavorant)、甘味剤、キレート化剤、抗酸化剤または保存剤、流動促進剤(glidants)または滑沢剤などの加工補助剤、または着色剤と組み合わせる。
【0018】
本明細書で用いる「ニコチン活性剤(nicotine active)」という用語は:ニコチン;ニコチン塩およびニコチン複合体などのニコチンの誘導体;タバコの抽出物または葉;ロベリンなど、ニコチンに類似の生理学的影響を発生させるいずれかの化合物または組成物;ならびにそれらの混合物から選択される1または2つ以上の化合物を意味する。様々なニコチン活性剤が本技術分野で公知であり、市販されている。本発明での使用に適するニコチン活性剤としては、これらに限定されないが、ニコチン一酒石酸塩、ニコチン二酒石酸塩、ニコチン塩酸塩、ニコチン二塩酸塩、ニコチン硫酸塩、ニコチン塩化亜鉛一水和物、ニコチンサリチル酸塩、ニコチンオイル、シクロデキストリンと複合体形成したニコチン、ニコチンポラクリレックス(nicotine polacrilex)などのポリマー樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。ニコチン活性剤は、遊離塩基の形態、カプセル化された形態、イオン化された形態、およびスプレー乾燥された形態を含む、本技術分野で公知の1または2つ以上の別々の物理的形態で用いてよい。1つの態様によれば、ニコチン活性剤はニコチンポラクリレックスである。
【0019】
1つの態様によれば、ニコチンポラクリレックスは、剤形あたりニコチンを基準にして約1mg〜約10mgの量で存在する。剤形あたりのニコチンポラクリレックスのパーセントは、剤形の総重量の約2%〜約20%である。
【0020】
本発明では、ニコチン活性剤とアルカリ性緩衝剤からの対イオンとの両方が、本製剤内の顆粒外部の空間に存在することが重要である。ニコチンポラクリレックスなどニコチン活性剤がポリマー樹脂である場合、ニコチンは、安定で水に不溶性であるポラクリレックスとイオン性複合体を形成する。投与後、ポリマー樹脂複合体からのニコチンの放出は、口腔内での溶解によってこちらも利用可能となった対イオンとのイオン交換プロセスを通して行われる。これによって、水に不溶性の樹脂から遊離のニコチンが放出され、続いてこれが口腔内粘膜を通して容易に吸収される。従来のロゼンジ製剤では、マスター顆粒内だけで、本発明の2倍を超える量の緩衝剤が組み込まれる。崩壊の際、複合体からニコチンと交換して放出するのに十分なカチオンが唾液中に存在しないため、ニコチンはポラクリレックスに結合したままである。従って、これらの従来のロゼンジのニコチンは、マスター顆粒が溶解して緩衝剤(対イオン)を口腔内へ放出するまで利用可能とはならない。緩衝剤が結合溶解調節剤(binding dissolution modifiers)と共に顆粒化されていることから、緩衝剤の放出は多少遅延される。放出されると、緩衝剤はまずニコチンと交換し、次に口腔内pHを上昇させて粘膜組織を通してのニコチンの吸収を引き起こす必要がある。その結果、このような従来のロゼンジからのニコチンの吸収が発生するまでに遅延が生ずる。
【0021】
マスター顆粒の内部および外部の両方に緩衝剤を組み込むことによって、最適で口に合う口腔内pH、およびより素早いニコチンの吸収を達成するために必要である緩衝剤のレベルが低下することが分かった。本発明では、崩壊の際に顆粒外部の緩衝剤にて利用可能である対イオンの存在により、ニコチンは、ニコチンポラクリレックス複合体から直ちに遊離される。従って、マスター顆粒からその後に放出される緩衝剤はすべて、口腔内pHの上昇および粘膜組織を通してのニコチン吸収の推進に利用可能である。従って、製剤の顆粒外部分の溶解を遅延させることによって口腔内pHの上昇を妨げる場合があるため、溶解調節剤が製剤の顆粒外部分に存在しないことが重要である。
【0022】
図2は、本発明の製剤(例1)、およびこれに対して、緩衝剤がマスター顆粒の内部に完全に包含されているロゼンジ(例2および5)によって達成されたpHの上昇を示す図である。特に、同様の低いレベルの緩衝剤を用いた場合(例1対例6)、達成された最大pHは、緩衝剤がマスター顆粒の内部およびお外部の両方に存在する方が、マスター顆粒の内部のみに存在するものよりも確かに高い。さらに、
図2は、緩衝剤がマスター顆粒の内部およびお外部の両方に存在する場合、緩衝剤を大きく減少させても、依然としてニコチン吸収の推進に最適なpHを達成するのに十分であることを示している(例2対例1)。
【0023】
本発明での使用に適するアルカリ性緩衝剤としては、これらに限定されないが、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムが挙げられる。1つの態様によれば、緩衝剤は、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、およびそれらの混合物から選択される。緩衝剤は、マスター顆粒内部ならびに前記マスター顆粒間の顆粒外部空間内に組み込まれる。本発明の組成物中に存在する緩衝剤の総量は、約5mg〜約20mgである。1つの態様によれば、本発明の組成物中に存在する緩衝剤の総量は、約8mg〜約12mgである。1つの態様によれば、ニコチンポラクリレックスの全緩衝剤に対する総重量の比率は、約3:1〜約1:3である。
【0024】
上記のように、アルカリ性緩衝剤は、マスター顆粒内(顆粒内部)および前記マスター顆粒間の顆粒外部空間内(顆粒外部)の両方に組み込まれる。一般的に、本発明の組成物中に存在する緩衝剤の量は、顆粒内部緩衝剤の顆粒外部緩衝剤に対する比率で表すと、約5:1〜約1:5である。1つの態様によれば、顆粒内部緩衝剤の顆粒外部緩衝剤に対する比率は、約1:1である。
【0025】
本製剤に用いられるマスター顆粒は、当業者であれば明らかであろう湿式または乾式顆粒化プロセスによって製造される。
【0026】
1つの態様によれば、湿式顆粒化法が用いられ、ここで、少なくとも1つの溶解調節剤および少なくとも1つの緩衝剤が予め混合される。この予め混合された混合物および少なくとも1つの充填剤が組み合わされ、精製水で湿潤される。次に、この組み合わされたものは押出し機へ投入され、そこで圧縮されて顆粒が形成される。得られた顆粒は、流動層乾燥などの本技術分野で公知のいずれかの方法を用いて乾燥される。次に、このマスター顆粒は篩いにかけられて適切な粒子サイズとされ、通常は75um、200メッシュである。次に、マスター顆粒は、ニコチン活性剤、少なくとも1つの緩衝剤、香味剤、および甘味剤と混合される。この混合物の混合および篩いの際、滑沢剤または流動促進剤が混合物へ添加される。次に、この最終混合物が圧縮されて適切なロゼンジとなる。
【0027】
本発明のロゼンジの単位重量は、ロゼンジあたりの総重量で約100mg〜約500mgである。1つの態様によれば、本ロゼンジの単位重量は、COMMIT(登録商標)ロゼンジ(総単位重量1.2グラム)などの従来のロゼンジの約4分の1である。1つの態様によれば、本ロゼンジは、ロゼンジあたりの総重量で200mg〜300mgである。
【0028】
本発明のマスター顆粒内に用いられる適切な充填剤としては、これらに限定されないが、マルチトール、マルトース、フルクトース、グルコース、トレハロース、ソルビタール(sorbital)、スクロース、糖、マンニトール、キシリトール、イソマルト(isomalt)、デキストロース、マルトデキストリン、デキストレート、デキストリン、エリスリトール、ラクチトール、ポリデキストロース、およびそれらの混合物が挙げられる。1つの態様によれば、充填剤はマンニトールである。1つの態様によれば、マンニトールは、ロゼンジあたり約100mg〜約300mg存在し、別の態様によれば、ロゼンジあたり約150mg〜約200mgである。
【0029】
本発明での使用に適する溶解調節剤としては、これらに限定されないが、アカシア(acacia)、カンテン、アルギン酸またはその塩、カルボマー、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、セルロース、キトサン、コポビドン(copovidone)、シクロデキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(hypromellose)、イヌリン、メチルセルロース、ペクチン、ポリカルボフィル(polycarbophil)またはその塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、プルラン、デンプン、トラガカント、トレハロース、キサンタンガム、およびそれらの混合物が挙げられる。1つの態様によれば、本発明の製剤に含有される溶解調節剤は、アルギン酸またはその塩、ポリカルボフィルまたはその塩、キサンタンガム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。1つの態様によれば、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィルカルシウム、およびキサンタンガムが、本発明のマスター顆粒内に組み込まれる。本発明のマスター顆粒内に存在する溶解調節剤の量は、ロゼンジあたり約10mg〜約30mgであり、別の態様によれば、ロゼンジあたり約15mg〜約25mgである。
【0030】
所望により、賦形剤も本発明の製剤へ組み込んでよい。このような所望による賦形剤としては、矯味剤を挙げることができる。
【0031】
本発明の顆粒外部空間内への組み込みに適する矯味剤としては、強度甘味剤および/または香味剤が挙げられる。適切な強度甘味剤としては、これらに限定されないが、アスパルテーム、アシサルフェイムK(acesulfame K)、シクラメートおよびその塩、グリチルリジンおよびその塩、ネオヘスペリジン、スクラロース、サッカリンおよびその塩、タウマチン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。適切な香味剤としては、これらに限定されないが、メントール、ペッパーミント、ウィンターグリーン、スィートミント、スペアミント、バニリン、チョコレート、コーヒー、シナモン、チョウジ、タバコ、柑橘類および果物の香味剤、ならびにそれらの混合物が挙げられる。存在する場合、矯味剤は、ロゼンジあたり約1mg〜約50mgの量で存在する。
【0032】
加工および安定化補助剤などの追加的な所望による賦形剤も、本発明の製剤に含有されていてよい。加工および安定化補助剤としては、これらに限定されないが、キレート化剤、抗酸化剤または保存剤、流動促進剤または滑沢剤、または着色剤が挙げられる。本発明での使用に適する抗酸化剤/保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ならびにトコフェロールおよびその塩を挙げることができる。本発明での使用に適する流動促進剤/滑沢剤としては、これらに限定されないが、タルク、コーンスターチ、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、植物油および鉱油、ならびにそれらの混合物が挙げられる。1つの態様によれば、滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。本発明での使用に適する着色剤としては、食品および医薬品用途に適するいずれの顔料、染料、レーキ、または天然の食用色素をも挙げられ、例えば、FD&C染料およびレーキである。加工および安定化補助剤が本発明の顆粒外部分内に組み込まれる場合、そのような補助剤の合計は、ロゼンジあたり約1mg〜約25mgである。
【0033】
本発明のロゼンジは、タバコ類の代用品として、およびタバコ類の使用を低減するかまたは止めるための手段として有用である。この組成物は、タバコ類の完全なまたは部分的な代用品として用いてよく、および計画されたタバコ類削減プログラムの一環として、例えば、タバコ類の使用を完全に止める前にタバコ類の使用を削減する間に、タバコ類と並行して用いてもよい。使用者は、タバコ類を止めるためのレジメンの一環として、1日を通して定められた間隔で本発明のロゼンジを摂取してよい。または別の選択肢として、使用者は、急性ニコチン渇望に応じて間欠的に本発明のロゼンジを摂取してもよい。1つの態様によれば、渇望の軽減を補助するために、使用者は1日を通して、所定の間隔でならびに間欠的に、本発明のロゼンジを摂取してよい。
【0034】
本発明のロゼンジは、従来のNRTロゼンジまたはガム製品と同量のニコチンを個人へ送達することを意図している。しかし、本発明のロゼンジは、従来のロゼンジよりも小さく、使用者の口腔内に投与されると、より素早く溶解する。1つの態様によれば、本発明のロゼンジのインビボでの溶解時間は、約5分〜約25分の範囲であり、平均すると、インビボでの溶解時間は、従来のロゼンジよりも約10倍短い。別の態様によれば、本発明のロゼンジのインビボでの溶解時間は、約15分未満である。このように口の中での保持時間が短くなったことにより、使用者コンプライアンスが改善される結果となり、すなわち、使用者がロゼンジを最後まで舐め、それによって最大の利益を得る可能性がより高くなる。
【0035】
図3は、従来のロゼンジの製剤に対する本発明の製剤の生物学的同等性を示している。本発明によって送達されるニコチンの程度(Cmax)および総曝露量(AUC)は、従来のロゼンジによって送達されるものと同じである。
【0036】
本発明は、さらに、タバコ類の使用を削減する方法にも関し、その方法は、それを必要とする人に本発明の組成物を投与することを含む。本発明はさらに、ニコチン禁断症状を軽減する方法にも関し、その方法は、そのような軽減を必要とする人に本発明の組成物を投与することを含む。「必要」には、それぞれ、タバコ類の使用の削減またはニコチン禁断症状の軽減に対する人の希望が含まれることを意図している。ニコチン禁断症状の「軽減」またはタバコ類の使用の「削減」には、ニコチン禁断症状またはタバコ類の使用を除去することが含まれる。
【実施例】
【0037】
さらなる詳細な説明がなくとも、当業者であれば、上述の説明を用いて本発明を最大限に利用することが可能であると考えられる。従って、以下の例は、単に説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないと解釈されたい。
【0038】
例1、3、および4は、本発明の製剤を例示するものである。例2および5は、比較する目的で提供するものである。例2は、すべての緩衝剤がマスター顆粒内に存在する従来のロゼンジ組成物である。例5は、すべての緩衝剤がマスター顆粒内に存在するが、炭酸水素カリウムおよび炭酸ナトリウムの総量が、本発明の例1、3、および4に存在する量と同等であるロゼンジ組成物である。
【0039】
実施例1〜5は、以下の方法で製造される:(1)表に挙げた成分に湿式顆粒化を施してまずマスター顆粒を製造し、そしてこれを続いて乾燥させ、(2)次にマスター顆粒を残りの成分と混合し、(3)この組み合わされた混合物を圧縮して総重量が250mgであるロゼンジとする。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明の例1の製剤対例2の従来の比較ロゼンジの生物学的同等性分析を以下の表に示す:
【0042】
【表2】
【0043】
例1および2の製剤のロゼンジを28人の対象へ与えた。インビボでの溶解時間(患者がロゼンジを口の中で摂取または溶解するのに要した時間)を、患者が申告し、口腔内に残留物または粒子が残っていないことを臨床関係者が検査して確認した後に記録した。以下の表に示したデータは、本発明の製剤が小さいことによって溶解速度が上がることを示している。
【0044】
【表3】