(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力抵抗回路を有して測定対象体に接続された当該入力抵抗回路の端子間に生じる電圧を検出する検出部と、当該検出された検出値に基づいて前記測定対象体の電圧値を測定する測定処理を実行する処理部とを備えた電圧測定装置であって、
前記入力抵抗回路は、複数の電圧検出用抵抗を備えて当該各電圧検出用抵抗の接続切り替えによって前記端子間の抵抗値を変更可能に構成され、
第1モードと、第2モードとを選択可能に構成されると共に、直流電圧を測定対象とする直流電圧測定モードと、交流電圧を測定対象とする交流電圧測定モードとを選択可能に構成され、
前記処理部は、前記端子間の抵抗値を異ならせて前記検出部によって複数回検出された複数の前記検出値に基づいて前記測定対象体の出力抵抗値を特定すると共に、前記検出部の入力抵抗値を予め決められた規定値としたときの前記測定対象体の電圧値を前記特定した出力抵抗値に基づいて算出する処理を前記測定処理として実行し、前記第1モードが選択されたときには、前記規定値を第1の値としたときの前記測定対象体の電圧値を算出する第1処理を前記測定処理として実行し、前記第2モードが選択されたときには、前記規定値を前記第1の値よりも小さい第2の値としたときの前記測定対象体の電圧値を算出する第2処理を前記測定処理として実行し、前記直流電圧測定モードが選択されているときには前記第1モードが選択されたとして前記第1測定処理を実行し、前記交流測定モードが選択されている状態において前記特定した出力抵抗値が予め決められたしきい値以上のときには前記第2モードが選択されたとして前記第2測定処理を実行し、前記交流測定モードが選択されている状態において前記特定した出力抵抗値が前記しきい値未満のときには前記第1モードが選択されたとして前記第1測定処理を実行する電圧測定装置。
測定対象体に接続された入力抵抗回路の端子間に生じる電圧を検出し、当該検出した検出値に基づいて前記測定対象体の電圧値を測定する測定処理を実行する電圧測定方法であって、
複数の電圧検出用抵抗を備えて構成された前記入力抵抗回路における当該各電圧検出用抵抗の接続切り替えによって前記端子間の抵抗値を異ならせて複数回検出した複数の前記検出値に基づいて前記測定対象体の出力抵抗値を特定すると共に、前記端子間の電圧を検出する検出部の入力抵抗値を予め決められた規定値としたときの前記測定対象体の電圧値を前記特定した出力抵抗値に基づいて算出する処理を前記測定処理として実行し、第1モードが選択されたときには、前記規定値を第1の値としたときの前記測定対象体の電圧値を算出する第1処理を前記測定処理として実行し、第2モードが選択されたときには、前記規定値を前記第1の値よりも小さい第2の値としたときの前記測定対象体の電圧値を算出する第2処理を前記測定処理として実行し、直流電圧を測定対象とする直流電圧測定モードが選択されているときには前記第1モードが選択されたとして前記第1測定処理を実行し、前記交流測定モードが選択されている状態において前記特定した出力抵抗値が予め決められたしきい値以上のときには前記第2モードが選択されたとして前記第2測定処理を実行し、交流電圧を測定対象とする交流測定モードが選択されている状態において前記特定した出力抵抗値が前記しきい値未満のときには前記第1モードが選択されたとして前記第1測定処理を実行する電圧測定方法。
【背景技術】
【0002】
この種の電圧測定装置として、実開平5−38578号公報に開示された電池テスタ(以下、単に「テスタ」ともいう)が知られている。このテスタは、表示部としてのLCD、測定対象体に接続される2つプローブ(端子)、電圧検出用の2つの抵抗(以下、「検出用抵抗」)、およびCPUなどを備えて構成されている。このテスタを用いて測定対象体としての電池の電圧値を測定する際には、テスタの各プローブと電池の各電極とを接続する。この際に、各プローブ間の電圧(つまり、電池の電圧)が、2つの検出用抵抗によって分圧されて、その分圧電圧をCPUが入力する。次いで、CPUが入力した電圧をデジタル値に変換する。続いて、CPUは、そのデジタル値に基づく電圧値をLCDに表示させる。
【0003】
この場合、例えば電池のように、出力抵抗値(内部抵抗値)が大きな測定対象体の電圧値を測定するときには、出力抵抗の影響を低減して電圧値を正確に測定するために、電圧測定装置の入力抵抗(内部抵抗)が大きい方が好ましい。このため、この種の電圧測定装置では、一般的に、抵抗値が大きい(例えば、10MΩ程度の)検出用抵抗が用いられている。一方、例えば、電源との接続および非接続が不明な2つの電気配線間の電圧値を測定して、電源と電気配線との接続および非接続を判別する場合のように、出力抵抗値が大きくかつ誘導ノイズが発生し易い測定対象体の電圧値を測定するときには、誘導ノイズの影響を低減して電圧値を正しく測定するために、電圧測定装置の入力抵抗が小さい方が好ましい。このため、このような形態での電圧測定が可能な電圧測定装置では、出力抵抗値が大きい測定対象体の電圧値を測定するときには、抵抗値が比較的小さい(例えば、1kΩ程度の)抵抗(以下、「補助抵抗」ともいう)を上記した検出用抵抗に並列に接続して全体としての抵抗値を引き下げることによって誘導ノイズの影響を低減している。
【0004】
ここで、検出用抵抗と補助抵抗とを並列接続させた状態で、上記した2つの電気配線間の電圧値を測定する際に、電気配線に電圧が供給されているときには、抵抗値が小さい補助抵抗に大きな電流が流れることとなる。このため、通常の抵抗を補助抵抗として用いる場合には、定格電力が十分に大きく、大電流に耐え得る抵抗を用いる必要があるが、定格電力が大きな抵抗は体積も大きく、回路全体が大形化するなどの問題点が発生することがある。このような問題点の発生を回避するため、発明者は、PTC型のサーミスタ(温度上昇によって抵抗値が上昇するタイプのサーミスタ)を補助抵抗として用いる電圧測定装置を既に開発している。この場合、サーミスタは小型であっても、大きな電流が流れたときに抵抗値が上昇して破損が防止されるため、上記した回路構成上の問題点の発生を回避することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、発明者が既に開発している上記の電圧測定装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、上記の電圧測定装置では、出力抵抗値が小さい測定対象体の電圧値を測定するときには、検出用抵抗とサーミスタとを並列接続させる。この場合、上記したように、サーミスタに大きな電流が流れたときには、その抵抗値が上昇する。しかしながら、抵抗値が上昇するまでには多少の時間を要するため、例えば、漏電ブレーカを介して電源に接続されている電気配線と、アースに接続されている電気配線とに各プローブをそれぞれ接続したときには、サーミスタの抵抗値が上昇する以前に大きな電流が漏電ブレーカを通ってアースに流れ、漏電ブレーカがトリップするおそれがあるという課題が存在する。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、出力抵抗値が大きい測定対象体の電圧測定および出力抵抗値が小さい測定対象体の電圧測定の双方を可能としつつ電気配線の電圧測定時における漏電ブレーカのトリップを防止し得る電圧測定装置および電圧測定方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電圧測定装置は、入力抵抗回路を有して測定対象体に接続された当該入力抵抗回路の端子間に生じる電圧を検出する検出部と、当該検出された検出値に基づいて前記測定対象体の電圧値を測定する測定処理を実行する処理部とを備えた電圧測定装置であって、前記入力抵抗回路は、複数の電圧検出用抵抗を備えて当該各電圧検出用抵抗の接続切り替えによって前記端子間の抵抗値を変更可能に構成され、
第1モードと、第2モードとを選択可能に構成されると共に、直流電圧を測定対象とする直流電圧測定モードと、交流電圧を測定対象とする交流電圧測定モードとを選択可能に構成され、前記処理部は、前記端子間の抵抗値を異ならせて前記検出部によって複数回検出された複数の前記検出値に基づいて前記測定対象体の出力抵抗値を特定すると共に、前記検出部の入力抵抗値を予め決められた規定値としたときの前記測定対象体の電圧値を前記特定した出力抵抗値に基づいて算出する処理を前記測定処理として実行
し、前記第1モードが選択されたときには、前記規定値を第1の値としたときの前記測定対象体の電圧値を算出する第1処理を前記測定処理として実行し、前記第2モードが選択されたときには、前記規定値を前記第1の値よりも小さい第2の値としたときの前記測定対象体の電圧値を算出する第2処理を前記測定処理として実行し、前記直流電圧測定モードが選択されているときには前記第1モードが選択されたとして前記第1測定処理を実行し、前記交流測定モードが選択されている状態において前記特定した出力抵抗値が予め決められたしきい値以上のときには前記第2モードが選択されたとして前記第2測定処理を実行し、前記交流測定モードが選択されている状態において前記特定した出力抵抗値が前記しきい値未満のときには前記第1モードが選択されたとして前記第1測定処理を実行する。
【0011】
また、請求項
2記載の電圧測定装置は、請求項
1記載の電圧測定装置において、前記処理部は、前記出力抵抗値に対応させて予め決められた前記測定対象体の状態を示す情報を表示部に表示させる。
【0012】
また、請求項
3記載の電圧測定方法は、測定対象体に接続された入力抵抗回路の端子間に生じる電圧を検出し、当該検出した検出値に基づいて前記測定対象体の電圧値を測定する測定処理を実行する電圧測定方法であって、複数の電圧検出用抵抗を備えて構成された前記入力抵抗回路における当該各電圧検出用抵抗の接続切り替えによって前記端子間の抵抗値を異ならせて複数回検出した複数の前記検出値に基づいて前記測定対象体の出力抵抗値を特定すると共に、前記端子間の電圧を検出する検出部の入力抵抗値を予め決められた規定値としたときの前記測定対象体の電圧値を前記特定した出力抵抗値に基づいて算出する処理を前記測定処理として実行
し、第1モードが選択されたときには、前記規定値を第1の値としたときの前記測定対象体の電圧値を算出する第1処理を前記測定処理として実行し、第2モードが選択されたときには、前記規定値を前記第1の値よりも小さい第2の値としたときの前記測定対象体の電圧値を算出する第2処理を前記測定処理として実行し、直流電圧を測定対象とする直流電圧測定モードが選択されているときには前記第1モードが選択されたとして前記第1測定処理を実行し、前記交流測定モードが選択されている状態において前記特定した出力抵抗値が予め決められたしきい値以上のときには前記第2モードが選択されたとして前記第2測定処理を実行し、交流電圧を測定対象とする交流測定モードが選択されている状態において前記特定した出力抵抗値が前記しきい値未満のときには前記第1モードが選択されたとして前記第1測定処理を実行する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の電圧測定装置、および請求項
3記載の電圧方法では、入力抵抗回路の端子間の抵抗値を異ならせて端子間の電圧値を複数回検出し、その複数の検出値に基づいて測定対象体の出力抵抗値を特定すると共に、検出部の入力抵抗値を規定値としたときの測定対象体の電圧値を、特定した出力抵抗値に基づいて算出する処理を実行する。つまり、この電圧測定装置および電圧測定方法では、検出部の入力抵抗を実際とは異なる計算上の規定値とした(仮定した)ときの理論上の測定対象体の電圧値を算出することができる。このため、この電圧測定装置および電圧測定方法によれば、漏電ブレーカがトリップするような電流(比較的大きな電流)が流れない程度の比較的大きな抵抗値を有する抵抗を用いて出力抵抗値が大きい測定対象体および出力抵抗値が小さい測定対象体の双方についての電圧値を測定することができる。
【0014】
したがって、この電圧測定装置および電圧測定方法によれば、例えば、漏電ブレーカを介して電源装置に接続されている電気配線、およびアースに接続されている電気配線にプローブを接続した場合においても、漏電ブレーカのトリップを確実に防止することができる。また、一般的に、出力抵抗値が大きい測定対象体の電圧値を正確に測定するには、検出部の入力抵抗値、つまり入力抵抗回路の抵抗値を出力抵抗値よりも十分に大きくする必要があるが、抵抗値を大きくするにも限界がある。これに対して、この電圧測定装置および電圧測定方法では、測定対象体の電圧値を算出する際の規定値を任意の大きさに規定することができるため、規定値を測定対象体の出力抵抗値よりも十分に大きな値に規定するだけで、入力抵抗回路の実際の抵抗値がそれほど大きくない場合においても、検出部の入力抵抗を規定値とした(仮定した)ときの測定対象体の理論上の電圧値を算出することができる。したがって、この電圧測定装置によれば、出力抵抗値が大きい測定対象体の電圧値を正確に測定することができる。
【0015】
また、
この電圧測定装置
および電圧測定方法によれば、第1モードと第2モードとを選択可能として、第1モードが選択されたときに第1の値を用いて電圧値を測定する第1測定処理を実行し、第2モードが選択されたときに第2の値を用いて電圧値を測定する第2測定処理を実行することにより、出力抵抗値が大きい測定対象体の電圧値を算出するときには第1モードを選択し、出力抵抗値が小さい測定対象体の電圧値を算出するときには第2モードを選択することで、出力抵抗値が大きい測定対象体の電圧値、および出力抵抗値が小さい測定対象体の電圧値の双方を正確に算出することができる。
【0016】
また、
この電圧測定装置
および電圧測定方法では、直流電圧測定モードが選択されているときには第1モードが選択されたとして第1測定処理を実行し、交流測定モードが選択されている状態において出力抵抗値がしきい値以上のときには第2モードが選択されたとして第2測定処理を実行し、交流測定モードが選択されている状態において出力抵抗値がしきい値未満のときには第1モードが選択されたとして第1測定処理を実行する。このため、この電圧測定装置
および電圧測定方法によれば、測定対象体の出力抵抗値に応じて、その測定対象体に適したモードを自動選択させることができるため、測定対象体の出力抵抗値の大小が不明な場合や、どのモードが測定対象体に適しているのかを使用者が判断するのが困難な場合においても、適正なモードで電圧測定を行うことができる。
【0017】
また、請求項
2記載の電圧測定装置によれば、出力抵抗値に対応させて予め決められた測定対象体の状態を示す情報を表示部に表示させることにより、測定した測定対象体の電圧値を表示させるだけでは、測定対象体の状態を認識するのが困難な使用者に対して、測定対象体の状態を確実に認識させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、電圧測定装置および電圧測定方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
最初に、電圧測定装置1の構成について、図面を参照して説明する。
図1に示す電圧測定装置1は、電圧測定装置の一例であって、測定対象体の電圧値(例えば、同図に示す電池200の電圧値や、
図3に示す電気配線301a〜301d(以下、区別しないときには「電気配線301」ともいう)間の電圧値)を測定可能に構成されている。具体的には、電圧測定装置1は、
図1に示すように、本体部2と、本体部2に接続可能に構成された一対のプローブ3,3とを備えて構成されている。
【0021】
本体部2は、
図1に示すように、検出部11、処理部12、操作部13、記憶部14および表示部15を備えて構成されている。
【0022】
検出部11は、入力抵抗回路21、スイッチ22および検出回路23を備えて構成されている。入力抵抗回路21は、直列接続された複数(例えば3つ)の抵抗(電圧検出用抵抗)31a〜31c(以下、区別しないときには「抵抗31」ともいう)を備えて構成されている。
【0023】
スイッチ22は、抵抗31aおよび抵抗31cの間において抵抗31bと並列に接続されている。このスイッチ22は、オン・オフの切り替えによって抵抗31aと抵抗31cとの接続(抵抗31bの短絡)および接続解除を行い、これによって入力抵抗回路21における2つの端子21a,21b(
図1参照)の間の抵抗値を変更する機能を有している。具体的には、この検出部11では、抵抗31a〜31cの抵抗値をそれぞれR1〜R3とすると、スイッチ22がオン状態のときには、抵抗31bが短絡されて抵抗31a,31cが接続される。この状態では、端子21a,21b間の抵抗値(以下、スイッチ22がオン状態のときの端子21a,21b間の抵抗値を「抵抗値RL」ともいう)は(R1+R3)となる。一方、スイッチ22がオフ状態のときには、抵抗31bの短絡が解除されて抵抗31a,31cの接続も解除される。この状態では、端子21a,21b間の抵抗値(以下、スイッチ22がオフ状態のときの端子21a,21b間の抵抗値を「抵抗値RH」ともいう)は(R1+R2+R3)となる。
【0024】
検出回路23は、一例として、各抵抗31a〜31cのうちの1つ(この例では、抵抗31c)の両端に生じる電圧の電圧値(つまり、入力抵抗回路21における端子21a,21b間の電圧の分圧値)に基づいて端子21a,21b間の電圧を検出する(以下、検出した電圧値を「検出値」ともいう)。
【0025】
処理部12は、検出部11によって検出された検出値(入力抵抗回路21における端子21a,21b間の電圧値)に基づいて測定対象体の電圧値(表示部15に表示させる表示用の電圧値であって、以下「表示電圧値VD」ともいう)を測定する測定処理を実行する。この場合、処理部12は、この測定処理において、スイッチ22のオン・オフの切り替えを制御して、端子21a,21b間の抵抗値を異ならせ、複数の異なる抵抗値毎に検出した(つまり、複数回検出した)複数の検出値に基づいて測定対象体の出力抵抗(出力インピーダンス)の抵抗値(以下、「出力抵抗値RS」ともいう)を特定する。また、処理部12は、この測定処理において、検出部11の入力抵抗(入力インピーダンス)の抵抗値(以下、「入力抵抗値」ともいう)を予め決められた規定値Riとしたとき(仮定したとき)の測定対象体についての表示電圧値VDを、特定した出力抵抗値RSを用いて算出する。つまり、この電圧測定装置1では、検出部11の入力抵抗値を、実際の入力抵抗値とは異なる計算上の入力抵抗値としたときの理論上の電圧値を測定対象体についての表示電圧値VDとして算出する。
【0026】
この場合、従来の電圧測定装置では、出力抵抗値RSが小さい測定対象体の電圧測定を行う際に、抵抗値が十分に小さい抵抗やサーミスタを並列接続して入力抵抗を低くしているため、
図3に示すように、漏電ブレーカ302を介して電源装置400に接続されている電気配線301a、およびアースに接続されている電気配線301cにプローブ3,3をそれぞれ接続したときには、大きな電流が漏電ブレーカ302を通ってアースに流れ、これによって漏電ブレーカ302がトリップする不都合が生じる。これに対して、この電圧測定装置1では、上記のように計算上の(理論上の)電圧値を測定しているため、抵抗値がある程度大きい(漏電ブレーカ302がトリップする電流(例えば、15mA)が流れない程度の)抵抗を用いて測定処理を実行することができる。このため、この電圧測定装置1では、上記のようにプローブ3,3を電気配線301,301に接続した場合においても、漏電ブレーカ302のトリップを確実に防止することが可能となっている。
【0027】
また、この電圧測定装置1では、出力抵抗値RSが大きい測定対象体の電圧測定に適した第1モード(高入力抵抗モード)と、出力抵抗値RSが小さい測定対象体の電圧測定に適した第2モード(低入力抵抗モード)とを選択することが可能となっており、処理部12は、第1モードが選択されたときには、第1測定処理処理(第1処理に相当する)を測定処理として実行し、第2モードが選択されたときには、第2測定処理(第2処理に相当する)を測定処理として実行する。この場合、第1モードに対応する上記した規定値Ri(第1の値に相当し、以下、「第1規定値Ri1」ともいう)が大きな値(一例として、1000GΩ)に予め決められており、処理部12は、第1測定処理において、入力抵抗の値を第1規定値Ri1としたときの測定対象体についての表示電圧値VDを算出する。また、第2モードに対応する上記した入力抵抗の規定値Ri(第2の値に相当し、以下、「第2規定値Ri2」ともいう)が小さな値(第1規定値Ri1よりも小さな値であつて、一例として、1kΩ)に予め決められており、処理部12は、第2測定処理において、入力抵抗の値を第2規定値Ri2としたときの測定対象体についての表示電圧値VDを算出する。
【0028】
また、処理部12は、表示部15を制御して、測定処理において測定した測定対象体についての表示電圧値VDを表示させる。
【0029】
操作部13は、
図2に示すように、本体部2の正面パネルに配設された電源スイッチ51やモード切り替えスイッチ52などの各種のスイッチを備えて構成され、各スイッチが操作されたときに操作信号を出力する。記憶部14は、処理部12の制御に従い、検出部11によって検出された検出値(入力抵抗回路21における端子21a,21b間の電圧値)や、処理部12によって実行される測定処理において特定される測定対象体の出力抵抗値RSなどを記憶する。
【0030】
表示部15は、一例として、
図2に示すように、本体部2の正面パネルに配設された液晶ディスプレイで構成され、処理部12の制御に従って各種の数値や情報を表示する。
【0031】
次に、電圧測定装置1を用いて測定対象体についての表示電圧値VDを測定する電圧測定方法およびその際の電圧測定装置1の動作について、図面を参照して説明する。なお、この電圧測定装置1では、初期状態において検出部11のスイッチ22(
図1参照)がオフ状態となっているものとする。また、上記した第1規定値Ri1が1000GΩに予め決められ、第2規定値Ri2が1kΩに予め決められているものとする。また、検出部11の入力抵抗回路21を構成する抵抗31aの抵抗値R1が8.99MΩで、抵抗31bの抵抗値R2が1MΩで、抵抗31cの抵抗値R3が10kΩであるものとする。
【0032】
最初に、測定対象体としての出力抵抗値RSが大きな電池200(
図1参照)についての表示電圧値VDを電圧測定装置1を用いて測定する例について説明する。まず、操作部13の電源スイッチ51(
図2参照)を操作して電源を投入した後に、モード切り替えスイッチ52(同図参照)を操作して測定モードを選択する。この場合、出力抵抗値RSが大きい測定対象体の電圧測定に適した第1モード(高入力抵抗モード)を選択する。
【0033】
次いで、
図1に示すように、プローブ3,3を電池200の各端子にそれぞれ接続する。この際に、検出部11における入力抵抗回路21の端子21a,21b間に電圧が印加され、検出回路23が、抵抗31cの両端間の電圧値に基づいて端子21a,21b間の電圧値を検出し、処理部12が、その検出値を記憶部14に記憶させる。この場合、初期状態では、スイッチ22がオフ状態のため、端子21a,21b間の抵抗値をRHとすると、RH=R1+R2+R3(この例では、10MΩ)となり、抵抗31cの両端の電圧値をVCHとし、端子21a,21b間の電圧値(検出値)をVHとすると、VHは次の式(1)から算出される。
VH=VCH×(R1+R2+R3)/R3・・・式(1)
【0034】
次いで、処理部12は、検出部11のスイッチ22を切り替え制御してオン状態に移行させる。続いて、処理部12は、スイッチ22がオン状態に切り替わった状態で検出部11によって検出された入力抵抗回路21における端子21a,21b間の検出値を記憶部14に記憶させる。この場合、スイッチ22がオン状態で、抵抗31bが短絡されて抵抗31a,31cが接続されているため、端子21a,21b間の抵抗値をRLとすると、RL=R1+R3(この例では、9MΩ)となり、抵抗31cの両端の電圧値をVCLとし、端子21a,21b間の電圧値(検出値)をVLとすると、VLは次の式(2)から算出される。
VL=VCL×(R1+R3)/R3・・・式(2)
【0035】
次いで、処理部12は、測定処理を実行する。この測定処理では、処理部12は、上記のようにして、端子21a,21b間の抵抗値を異ならせて複数回(上記の例では2回)検出された複数(2つ)の検出値VH,VLに基づき、電池200の出力抵抗値RSを特定する。この場合、出力抵抗値RSは、上記したRH、RL、VH、VLを用いた次の式(3)から算出される。
RS=(((VL/VH)−1)×RH)/(1−(VL/VH)×(RH/RL))・・・式(3)
【0036】
続いて、処理部12は、検出部の入力抵抗を予め決められた規定値Riとしたとき(仮定したとき)の電池200についての表示電圧値VDを、上記した出力抵抗値RS、抵抗値RH,RLおよび検出値VH,VLに基づいて算出する。
【0037】
具体的には、出力抵抗値RSを0Ωと仮定したときの電池200の電圧値(つまり、電池200の起電力)を算出する。この場合、この電圧値をVSとすると、VSは、上記したRS、RH、VHを用いた次の式(4)から算出される。
VS=((RS/RH)+1)×VH・・・式(4)
次いで、上記したRS、VS、Riを用いた次の式(5)から表示電圧値VDを算出する。
VD=(Ri/(RS+Ri))VS・・・式(5)
【0038】
この例では、第1モードが選択されているため、処理部12は、上記した式(5)内のRiに第1規定値Ri1として規定されている「1000GΩ」を代入して表示電圧値VDを測定(算出)する第1測定処理を実行する。この場合、式(5)から明らかなように、表示電圧値VDの値は、規定値Riが大きいほど上記した電圧値VSに近似する。このため、この例のように第1規定値Ri1を十分大きな値に予め決めたときには、第1モードが選択されているときに実行される第1測定処理において、出力抵抗値RSを0Ωと仮定したときの電池200の電圧値(起電力)VSとほぼ同じ電圧値が表示電圧値VDとして測定される。したがって、処理部12がこの第1測定処理を実行することにより、測定対象体についての表示電圧値VDを正確に測定することができる。
【0039】
次いで、処理部12は、検出部11のスイッチ22を切り替え制御してオフ状態(初期状態)に移行させる。続いて、処理部12は、表示部15を制御して、測定した表示電圧値VDを表示させる。この場合、選択されている第1モードを示す情報や第1規定値Ri1の値を表示電圧値VDと共に表示させることもできる。
【0040】
次に、
図3に示す電源装置(交流電源)400との接続および非接続が不明な電気配線301を測定対象体として、電気配線301,301間の電圧値を電圧測定装置1を用いて測定し、その測定値から電源装置400と電気配線301との接続および非接続を判別する例について説明する。
【0041】
まず、操作部13のモード切り替えスイッチ52を操作して測定モードを選択する。この場合、電気配線301や電源装置400は一般的に出力抵抗値RSが低いため(1kΩ程度)、このような測定対象体の電圧測定に適した第2モード(低入力抵抗モード)を選択する。
【0042】
次いで、
図3に示すように、例えば、2つの電気配線301a,301bにプローブ3,3をそれぞれ接続する。この際に、電気配線301a,301bが電源装置400に接続されているとき(活線状態のとき)には、入力抵抗回路21の端子21a,21b間に電圧が印加されて、検出回路23が抵抗31cの両端間の電圧値を検出する。続いて、検出部11が、上記した式(1)から入力抵抗回路21における端子21a,21b間の電圧値を検出し、処理部12がその検出値VHを記憶部14に記憶させる。
【0043】
次いで、処理部12は、検出部11のスイッチ22を切り替え制御してオン状態に移行させる。続いて、検出部11が、上記した式(2)から入力抵抗回路21における端子21a,21b間の電圧を検出し、処理部12が、その検出値VLを記憶部14に記憶させる。次いで、処理部12は、測定処理を実行する。この場合、処理部12は、検出された2つの検出値VH,VLに基づき、上記した式(3)から301a,301b間の出力抵抗値RSを特定する。
【0044】
続いて、処理部12は、上記した式(4)および式(5)から、電気配線301a,301b間の表示電圧値VDを算出する。この例では、第2モードが選択されているため、処理部12は、上記した式(5)内のRiに第2規定値Ri2として規定されている「1kΩ」を代入して表示電圧値VDを測定(算出)する第2測定処理を実行する。次いで、処理部12は、表示部15を制御して、測定した表示電圧値VDを表示させる。この場合、選択されている第2モードを示す情報や第2規定値Ri2の値を表示電圧値VDと共に表示させることもできる。
【0045】
ここで、この電圧測定装置1では、抵抗値がある程度大きい(この例では、9MΩまたは10MΩ)入力抵抗回路21を用いて第2測定処理を実行している。このため、この電圧測定装置1では、抵抗値が小さい抵抗やサーミスタを用いて第2測定処理を実行する構成とは異なり、
図3に示すように、漏電ブレーカ302を介して電源装置400に接続されている電気配線301a、およびアースに接続されている電気配線301cにプローブ3,3を接続した場合においても、漏電ブレーカ302のトリップを確実に防止することが可能となっている。
【0046】
また、プローブ3,3を2つの電気配線301,301にそれぞれ接続した際に、各電気配線301,301の一方または双方が電源装置400に接続されていないとき(例えば、
図3に破線で示すように、一方のプローブ3を電気配線301dに接続したとき)には、入力抵抗回路21の端子21a,21b間に電圧が印加されないため、検出部11によって検出される検出値VH,VLが「0V」(または、ほぼ0V)となる。このときには、処理部12は、表示電圧値VDを「0V」と測定してその表示電圧値VDを表示させる。
【0047】
一方、電気配線301が電源装置400に接続されていない場合であっても、誘導ノイズが発生しているときには、その誘導ノイズに起因する電圧が入力抵抗回路21の端子21a,21b間に印加される。この際には、検出回路23が抵抗31cの両端間の電圧値を検出し、処理部12が、スイッチ22の切り替えによって端子21a,21b間の抵抗値を異ならせて2回検出した端子21a,21b間の検出値VH,VLに基づき、上記した式(3)から電気配線301の出力抵抗値RSを特定する。
【0048】
続いて、処理部12は、第2測定処理を実行して、上記した式(4)および式(5)から、電気配線301,301間の表示電圧値VDを算出する。次いで、処理部12は、表示部15を制御して、測定した表示電圧値VDを表示させる。この場合、小さな値に予め決められている第2規定値Ri2を式(5)に代入するため、式(5)から算出される表示電圧値VDが、式(4)によって算出される電圧値VS(誘導ノイズに起因する電圧値)よりも小さな値となる。つまり、誘導ノイズの影響が低減される。したがって、処理部12がこの第2測定処理を実行することにより、測定対象体についての表示電圧値VDを正確に測定することができる。続いて、処理部12は、表示部15を制御して、表示電圧値VDを表示させる。
【0049】
このように、この電圧測定装置1および電圧測定方法では、入力抵抗回路21の端子21a,21b間の抵抗値を異ならせて端子21a,21b間の電圧値を複数回検出し、その複数の検出値に基づいて測定対象体の出力抵抗値RSを特定すると共に、検出部11の入力抵抗値を規定値Riとしたときの測定対象体についての表示電圧値VDを、特定した出力抵抗値RSに基づいて算出する処理を実行する。つまり、この電圧測定装置1および電圧測定方法では、検出部11の入力抵抗を実際とは異なる計算上の規定値Riとした(仮定した)ときの理論上の表示電圧値VDを算出することができる。このため、この電圧測定装置1および電圧測定方法によれば、漏電ブレーカ302がトリップするような電流(比較的大きな電流)が流れない程度の比較的大きな抵抗値を有する抵抗31a〜31cを用いて出力抵抗値RSが大きい測定対象体および出力抵抗値RSが小さい測定対象体の双方についての電圧値(表示電圧値VD)を測定することができる。
【0050】
したがって、この電圧測定装置1および電圧測定方法によれば、漏電ブレーカ302を介して電源装置400に接続されている電気配線301a、およびアースに接続されている電気配線301cにプローブ3,3を接続した場合においても、漏電ブレーカ302のトリップを確実に防止することができる。また、一般的に、出力抵抗値RSが大きい測定対象体の表示電圧値VDを正確に測定するには、検出部11の入力抵抗値、つまり入力抵抗回路21の抵抗値RH,RLを出力抵抗値RSよりも十分に大きくする必要があるが、抵抗値RH,RLを大きくするにも限界がある。これに対して、この電圧測定装置1および電圧測定方法では、表示電圧値VDを算出する際の規定値Riを任意の大きさに規定することができるため、規定値Riを測定対象体の出力抵抗値RSよりも十分に大きな値に規定するだけで、入力抵抗回路21の実際の抵抗値RH,RLがそれほど大きくない場合においても、検出部11の入力抵抗を規定値Riとした(仮定した)ときの理論上の表示電圧値VDを算出することができる。したがって、この電圧測定装置1および電圧測定方法によれば、出力抵抗値RSが大きい測定対象体の表示電圧値VDを正確に測定することができる。
【0051】
また、この電圧測定装置1および電圧測定方法によれば、第1モード(高入力抵抗モード)と第2モード(低入力抵抗モード)とを選択可能として、第1モードが選択されたときに第1規定値Ri1を用いて表示電圧値VDを測定する第1測定処理を実行し、第2モードが選択されたときに第2規定値Ri2を用いて表示電圧値VDを測定する第2測定処理を実行することにより、出力抵抗値RSが大きい測定対象体の電圧値を算出するときには第1モードを選択し、出力抵抗値RSが小さい測定対象体の電圧値を算出するときには第2モードを選択することで、出力抵抗値RSが大きい測定対象体の電圧値、および出力抵抗値RSが小さい測定対象体の電圧値の双方を正確に算出することができる。
【0052】
なお、電圧測定装置および電圧測定方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、第1モードおよび第2モードを測定者が切り替える構成および方法について上記したが、第1モードおよび第2モードを処理部12が切り替える構成および方法、つまり、第1モードおよび第2モードが自動的に切り替わる構成および方法を採用することもできる。この構成および方法では、直流電圧を測定対象とする直流電圧測定モードと、交流電圧を測定対象とする交流電圧測定モードとを使用者が選択可能な操作部を備えている。また、この構成および方法では、操作部13の操作によって直流電圧測定モードが選択されているときには、処理部12が、常に第1モードが選択されたとして第1測定処理を実行する。一方、操作部13の操作によって交流測定モードが選択されている状態では、処理部12は、上記した式(3)から特定(算出)した出力抵抗値RSが予め決められたしきい値(一例として、電気配線301や電源装置400の一般的な出力抵抗値RSである1kΩ)以上のときに、第2モードが選択されたとして第2測定処理を実行し、特定した出力抵抗値RSがしきい値未満のときには第1モードが選択されたとして第1測定処理を実行する。
【0053】
具体的には、交流を発生する電源装置400の出力抵抗値RSは、一般的に最大で1kΩ程度であるため、上記の式(3)で算出した出力抵抗値RSの理論値がしきい値として規定した1kΩ以上のときには、式(3)に用いられる端子21a,21b間の検出値VH,VLがノイズの影響を受けた異常値である可能性がある。つまり、このときには、電気配線301が電源装置400に接続されておらず、かつ誘導ノイズが発生している可能性がある。このため、このときには、出力抵抗値RSが小さい測定対象体の電圧測定に適した第2モードを自動的に選択する。このような構成および方法を採用することにより、測定対象体の出力抵抗値RSに応じて、その測定対象体(その出力抵抗値RS)に適したモードを自動選択させることができるため、測定対象体の出力抵抗値RSの大小が不明な場合や、どのモードが測定対象体に適しているのかを使用者が判断するのが困難な場合においても、適正なモードで測定を行うことができる。
【0054】
また、測定対象体の出力抵抗値RSに対応させて予め決められた情報であって、測定対象体の状態を示す情報を表示部15に表示させる構成を採用することもできる。具体的には、上記したように、交流を発生する電源装置400は、一般的に最大で1kΩ程度であるため、出力抵抗値RSの理論値が1kΩよりも大きいときには、電気配線301が電源装置400に接続されておらず、かつ誘導ノイズが発生している可能性がある。このため、算出した出力抵抗値RSがしきい値として規定した1kΩ以上のときには、その電気配線301が電源装置400に接続されておらず、かつノイズが発生している旨を示す情報を表示する。このような構成および方法を採用することで、表示電圧値VDを表示させるだけでは、測定対象体の状態を認識するのが困難な使用者に対して、測定対象体の状態を確実に認識させることができる。
【0055】
また、第1規定値Ri1を1000GΩに規定した例について上記したが、第1規定値Ri1は任意の値に規定することができる。例えば、第1規定値Ri1を無限大の大きさに規定する構成および方法を採用することができる。また、第2規定値Ri2を1kΩに規定した例について上記したが、第2規定値Ri2についても、第1規定値Ri1よりも小さい任意の値に規定することができる。