特許第5893419号(P5893419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893419
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】スプール弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/24 20060101AFI20160310BHJP
   F16K 31/06 20060101ALN20160310BHJP
【FI】
   F16K3/24 D
   !F16K31/06 305L
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-16942(P2012-16942)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-155804(P2013-155804A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一寿
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 泰久
(72)【発明者】
【氏名】南谷 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】西川 桂一
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−048252(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第02941583(DE,A1)
【文献】 国際公開第2002/010626(WO,A1)
【文献】 特開平11−051208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/24
F16K 11/07
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる複数のポートと、
前記複数のポートが通じている弁室と、
摺動可能な状態で前記弁室内に設けられたスプールと、
を備え、
前記スプールがその軸線方向に摺動することにより前記ポートの開放面積が調整されるスプール弁であって、
前記スプールにおいては、前記ポートを外周面により閉鎖可能な閉鎖部と、前記閉鎖部よりも外周面が凹んでいることで前記ポートを開放可能な開放部とが前記軸線方向において隣接して配置されており、
前記スプールは、前記開放部により開放されたポート同士が前記開放部の外周面と前記弁室の内周面との間の連通路により連通される開放位置と、前記連通路により連通可能な各ポートのいずれかが前記閉鎖部により閉鎖されている閉鎖位置とに移動可能であり、
前記開放部は、
前記軸線方向において前記閉鎖部に隣接し、前記閉鎖部との境界部においては外周面が前記閉鎖部に連続して形成され、前記軸線方向において前記閉鎖部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第1傾斜部と、
前記軸線方向において前記第1傾斜部に隣接し、前記第1傾斜部との境界部においては外周面が前記第1傾斜部に連続して形成され、前記軸線方向において前記第1傾斜部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第2傾斜部と、
を有しており、
前記閉鎖部の外周面に対する前記第2傾斜部の外周面の傾きが、前記閉鎖部の外周面に対する第1傾斜部の外周面の傾きよりも大きくされており、
前記軸線方向において前記第2傾斜部に隣接し、前記第2傾斜部との境界部においては外周面が前記第2傾斜部に連続して形成され、前記軸線方向において前記第2傾斜部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第3傾斜部を有しており、
前記閉鎖部の外周面に対する前記第3傾斜部の外周面の傾きが、前記閉鎖部の外周面に対する前記第2傾斜部の外周面の傾きよりも大きくされていることを特徴とするスプール弁。
【請求項2】
前記複数のポートのうち前記流体を前記弁室に供給する供給ポートと、前記流体が前記弁室から排出される排出ポートとが前記連通路により連通可能とされており、
前記スプールは、前記閉鎖部として、前記供給ポートを閉鎖可能な先絞り閉鎖部と、前記排出ポートを閉鎖可能な後絞り閉鎖部とを有しており、
前記先絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、前記後絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部のそれぞれと比べて、少なくとも一方の前記傾きが大きくされていることを特徴とする請求項1に記載のスプール弁。
【請求項3】
流体が流れる複数のポートと、
前記複数のポートが通じている弁室と、
摺動可能な状態で前記弁室内に設けられたスプールと、
を備え、
前記スプールがその軸線方向に摺動することにより前記ポートの開放面積が調整されるスプール弁であって、
前記スプールにおいては、前記ポートを外周面により閉鎖可能な閉鎖部と、前記閉鎖部よりも外周面が凹んでいることで前記ポートを開放可能な開放部とが前記軸線方向において隣接して配置されており、
前記スプールは、前記開放部により開放されたポート同士が前記開放部の外周面と前記弁室の内周面との間の連通路により連通される開放位置と、前記連通路により連通可能な各ポートのいずれかが前記閉鎖部により閉鎖されている閉鎖位置とに移動可能であり、
前記開放部は、
前記軸線方向において前記閉鎖部に隣接し、前記閉鎖部との境界部においては外周面が前記閉鎖部に連続して形成され、前記軸線方向において前記閉鎖部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第1傾斜部と、
前記軸線方向において前記第1傾斜部に隣接し、前記第1傾斜部との境界部においては外周面が前記第1傾斜部に連続して形成され、前記軸線方向において前記第1傾斜部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第2傾斜部と、
を有しており、
前記閉鎖部の外周面に対する前記第2傾斜部の外周面の傾きが、前記閉鎖部の外周面に対する第1傾斜部の外周面の傾きよりも大きくされており、
前記複数のポートのうち前記流体を前記弁室に供給する供給ポートと、前記流体が前記弁室から排出される排出ポートとが前記連通路により連通可能とされており、
前記スプールは、前記閉鎖部として、前記供給ポートを閉鎖可能な先絞り閉鎖部と、前記排出ポートを閉鎖可能な後絞り閉鎖部とを有しており、
前記先絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、前記後絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部のそれぞれと比べて、少なくとも一方の前記傾きが大きくされていることを特徴とするスプール弁。
【請求項4】
前記供給ポート及び前記排出ポートを一対有する弁部を複数備え、
前記スプールは、前記複数の弁部のうち第1弁部の各ポートを開放可能な第1開放部と、第2弁部の各ポートを開放可能な第2開放部とを有し、
前記第2開放部において前記先絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、前記第1開放部において前記後絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部のそれぞれと比べて、少なくとも一方の前記傾きが大きくされていることを特徴とする請求項2又は3に記載のスプール弁。
【請求項5】
前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、それぞれ前記閉鎖部から遠ざかるにつれて一定の割合で徐々に縮径されたテーパ部であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項6】
前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の全体としての外周面は、前記軸線方向に対して前記スプールの外側に向けて膨らむように曲面的に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項7】
前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の全体としての外周面は、前記軸線方向に対して前記スプールの外側に向けて膨らむように曲面的に傾斜しており、
前記開放部は、
前記軸線方向において前記第2傾斜部に隣接し、前記第2傾斜部との境界部においては外周面が前記第2傾斜部に連続して形成され、前記軸線方向において前記第2傾斜部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第3傾斜部を有しており、
前記第3傾斜部の外周面は、前記軸線方向に対して前記スプールの内側に向けて凹むように曲面的に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載のスプール弁。
【請求項8】
前記第3傾斜部の外周面の湾曲は、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の全体としての外周面の湾曲よりも小さくされていることを特徴とする請求項に記載のスプール弁。
【請求項9】
前記閉鎖部の外周面に対する前記第1傾斜部の外周面の傾きは45度以下とされていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項10】
前記軸線方向における前記閉鎖部の長さが前記軸線方向における前記ポートの長さよりも長く形成されており、
前記スプールが前記閉鎖位置にある場合に、前記軸線方向において前記閉鎖部は前記ポートの両端よりも外側まで配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項11】
流体が流れる複数のポートと、
前記複数のポートが通じている弁室と、
摺動可能な状態で前記弁室内に設けられたスプールと、
を備え、
前記スプールがその軸線方向に摺動することにより前記ポートの開放面積が調整されるスプール弁であって、
前記スプールにおいては、前記ポートを外周面により閉鎖可能な閉鎖部と、前記閉鎖部よりも外周面が凹んでいることで前記ポートを開放可能な開放部とが前記軸線方向において隣接して配置されており、
前記スプールは、前記開放部により開放されたポート同士が前記開放部の外周面と前記弁室の内周面との間の連通路により連通される開放位置と、前記連通路により連通可能な各ポートのいずれかが前記閉鎖部により閉鎖されている閉鎖位置とに移動可能であり、
前記開放部は、
前記軸線方向において前記閉鎖部に隣接し、前記閉鎖部との境界部においては外周面が前記閉鎖部に連続して形成され、前記軸線方向において前記閉鎖部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第1傾斜部と、
前記軸線方向において前記第1傾斜部に隣接し、前記第1傾斜部との境界部においては外周面が前記第1傾斜部に連続して形成され、前記軸線方向において前記第1傾斜部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第2傾斜部と、
を有しており、
前記閉鎖部の外周面に対する前記第2傾斜部の外周面の傾きが、前記閉鎖部の外周面に対する第1傾斜部の外周面の傾きよりも大きくされており、
前記スプールの軸線方向に順に並べられ、前記ポートをそれぞれ有する第1弁部、第2弁部、及び第3弁部を備えており、
前記第1弁部は前記流体を冷却装置により冷却する冷却ラインに接続され、前記第2弁部は前記流体を加熱も冷却もしないバイパスラインに接続され、前記第3弁部は前記流体を加熱装置により加熱する加熱ラインに接続されており、
前記スプールがその軸線方向に摺動することにより、前記第1弁部が開放状態且つ前記第2弁部及び前記第3弁部が閉鎖状態、前記第1弁部及び前記第2弁部が開放状態且つ前記第3弁部が閉鎖状態、前記第2弁部が開放状態且つ前記第1弁部及び前記第3弁部が閉鎖状態、前記第2弁部及び前記第3弁部が開放状態且つ前記第1弁部が閉鎖状態、前記第3弁部が開放状態且つ前記第1弁部及び前記第2弁部が閉鎖状態に、順に変更されることを特徴とするスプール弁。
【請求項12】
前記第1弁部、前記第2弁部、及び前記第3弁部のうち、2つの弁部を前記流体が流れる場合の流量の合計は、1つの弁部を前記流体が流れる場合の流量と同じであることを特徴とする請求項11に記載のスプール弁。
【請求項13】
前記第1弁部及び前記第2弁部が開放状態且つ前記第3弁部が閉鎖状態において、前記第1弁部の流量は前記第1弁部が全開状態にある場合のほぼ1/2となり且つ前記第2弁部の流量は前記第2弁部が全開状態にある場合のほぼ1/2となる前記スプールの位置が存在することを特徴とする請求項11又は12に記載のスプール弁。
【請求項14】
前記第2弁部及び前記第3弁部が開放状態且つ前記第1弁部が閉鎖状態において、前記第2弁部の流量は前記第2弁部が全開状態にある場合のほぼ1/2となり且つ前記第3弁部の流量は前記第3弁部が全開状態にある場合のほぼ1/2となる前記スプールの位置が存在することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載のスプール弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の流れを制御する流体制御弁として、スプールが摺動可能な状態で弁室に収容されているスプール弁がある。スプール弁としては、弁室に通じる複数のポートが設けられており、それらポートがスプールの外周面により閉鎖される構成が挙げられる(例えば特許文献1)。この構成では、スプールの外周面に沿って延びるように周溝部が設けられており、スプールの摺動に伴って周溝部がポートと重なることでポートが開放状態とされ、その状態では流体が周溝部を通じてポート間を流れる。ここで、開放状態とされたポートを流れる流体量は、そのポートの開放面積の大きさ、すなわちそのポートと周溝部との重なり幅の大きさにより定められる。このため、ポートでの流量は、スプールのストローク位置により調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−122412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、周溝部の凹み寸法(深さ寸法)がスプールの摺動方向において一定である場合、ポートの開放面積が小さいほど、ポートの開放部分に対する流体の圧力が高くなり、ポートの開放面積が増減した際のポートでの流量の変化率が大きくなってしまう。つまり、ポートと周溝部との重なり幅が小さいほど、スプールのストローク位置を変化させた際の流体増減量が大きくなってしまう。このため、ポートでの流量を少なくするほど、その流量を少しだけ増減させるという制御が困難になり、ひいてはポートでの流量制御の精度が低下することが懸念される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポートの開放面積が小さくなるほど流量制御の精度が低下するということを抑制でき、しかも、ポートの開放面積が小さい範囲とそれよりも大きい範囲とで流量制御の精度に差異が生じることを抑制できるスプール弁を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0007】
第1の発明のスプール弁は、流体が流れる複数のポートと、前記複数のポートが通じている弁室と、摺動可能な状態で前記弁室内に設けられたスプールと、を備え、前記スプールがその軸線方向に摺動することにより前記ポートの開放面積が調整されるスプール弁であって、前記スプールにおいては、前記ポートを外周面により閉鎖可能な閉鎖部と、前記閉鎖部よりも外周面が凹んでいることで前記ポートを開放可能な開放部とが前記軸線方向において隣接して配置されており、前記スプールは、前記開放部により開放されたポート同士が前記開放部の外周面と前記弁室の内周面との間の連通路により連通される開放位置と、前記連通路により連通可能な各ポートのいずれかが前記閉鎖部により閉鎖されている閉鎖位置とに移動可能であり、前記開放部は、前記軸線方向において前記閉鎖部に隣接し、前記閉鎖部との境界部においては外周面が前記閉鎖部に連続して形成され、前記軸線方向において前記閉鎖部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第1傾斜部と、前記軸線方向において前記第1傾斜部に隣接し、前記第1傾斜部との境界部においては外周面が前記第1傾斜部に連続して形成され、前記軸線方向において前記第1傾斜部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第2傾斜部と、を有しており、前記閉鎖部の外周面に対する前記第2傾斜部の外周面の傾きが、前記閉鎖部の外周面に対する第1傾斜部の外周面の傾きよりも大きくされていることを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、第1傾斜部及び第2傾斜部の外周面がスプールの軸線に対して傾斜しているため、スプールの摺動に伴ってポートの開放面積が小さくなると、開放部がポートに重なっている部分と重なっていない部分との境界部(以下、重なり境界部という)における連通路の凹み方向の断面積も小さくなる。この場合、ポートでの流量がポートの開放面積及び連通路の断面積の両方により定められるため、ポートの開放面積が小さいことにより流体への圧力が大きくなっても、スプールの変位に伴ってポートでの流体増減量が大きくなるということを抑制できる。これにより、ポートでの流量を小さくするほどその流量制御の精度が低下するということを抑制できる。
【0009】
ここで、ポートの開放部分においては、開放面積がある程度大きくなると、その開放部分に対する流体の圧力が低下することなどによりスプールの変位量に対するポートでの流体増減量が小さくなる。この場合、スプールの変位量とポートでの流量との関係がポートの開放面積によって異なり、それによって流量制御の精度に差異が生じることが懸念される。
【0010】
これに対して、本発明によれば、第2傾斜部の傾きが第1傾斜部よりも大きいため、ポートが第2傾斜部と重なる範囲で開放された状態においてスプールの変位量に対するポートでの流体増減量が、第2傾斜部の傾きが第1傾斜部と同じである場合よりも大きくなる。これにより、ポートが第1傾斜部及び第2傾斜部のいずれと重なる状態で開放されていても、ポートの開放面積とそのポートでの流量との関係を所定の比例関係に近付けることができる。つまり、スプールの変位量に対する流量変化率を、ポートの開放面積にかかわらず一定に近付けることができる。
【0011】
以上により、ポートの開放面積が小さくなるほど流量制御の精度が低下するということを抑制でき、しかも、ポートの開放面積が小さい範囲とそれよりも大きい範囲とで流量制御の精度に差異が生じることを抑制できる。
【0012】
第2の発明では、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、それぞれ前記閉鎖部から遠ざかるにつれて一定の割合で徐々に縮径されたテーパ部である。
【0013】
第2の発明によれば、第1傾斜部及び第2傾斜部はテーパ面を有しているため、周方向のいずれの部分においてもポートと対向することが可能となっている。このため、スプールの周方向に対してポートがどの部分に配置されていても、第1傾斜部及び第2傾斜部の各テーパ面により、重なり境界部における連通路の断面積を調整できる。
【0014】
しかも、第1傾斜部及び第2傾斜部の各テーパ面はスプールの軸線に対して直線的に傾斜しているため、スプールにおける各傾斜部の加工が煩雑になることを抑制できる。
【0015】
第3の発明では、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の全体としての外周面は、前記軸線方向に対して前記スプールの外側に向けて膨らむように曲面的に傾斜している。
【0016】
第3の発明によれば、第1傾斜部の外周面は閉鎖部から離れるほど傾きが大きくなり、第2傾斜部は第1傾斜部から離れるほど傾きが大きくなる。このため、スプールの摺動に伴ってポートの開放面積が大きくされると、重なり境界部における連通路の断面積も徐々に増加する。しかも、ポートの開放面積が大きいほど連通路の断面積の増加率が大きくなる。これにより、ポートが第1傾斜部及び第2傾斜部と重なる状態で開放されている場合、ポートの開放面積とそのポートでの流量との関係を比例関係により一層近付けることができる。これにより、スプールの変位量に対する流量変化率を、ポートの開放面積にかかわらず更に一定に近付けることができる。
【0017】
第4の発明では、前記開放部は、前記軸線方向において前記第2傾斜部に隣接し、前記第2傾斜部との境界部においては外周面が前記第2傾斜部に連続して形成され、前記軸線方向において前記第2傾斜部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第3傾斜部を有しており、前記閉鎖部の外周面に対する前記第3傾斜部の外周面の傾きが、前記閉鎖部の外周面に対する前記第2傾斜部の外周面の傾きよりも大きくされている。
【0018】
第4の発明によれば、開放部の外周面の傾斜が3段階で大きくされているため、隣り合う傾斜部同士の傾きの差が小さくなり、傾斜部同士の境界部が流量変曲点になることを抑制できる。したがって、ポートの開放面積とそのポートでの流量との関係を所定の比例関係により一層近付けることができる。
【0019】
第5の発明では、前記開放部は、前記軸線方向において前記第2傾斜部に隣接し、前記第2傾斜部との境界部においては外周面が前記第2傾斜部に連続して形成され、前記軸線方向において前記第2傾斜部から遠ざかるにつれて外周面の凹み寸法が徐々に大きくなっている第3傾斜部を有しており、前記第3傾斜部の外周面は、前記軸線方向に対して前記スプールの内側に向けて凹むように曲面的に傾斜している。
【0020】
第5の発明によれば、第3傾斜部の外周面は、第1傾斜部及び第2傾斜部の各外周面とは反対側に向けて凹んでいるため、第2傾斜部との境界部において連続した面を形成しつつ、第3傾斜部の傾きを徐々に小さくすることができる。このため、スプールの摺動に伴って、重なり境界部が第2傾斜部及び第3傾斜部の境界部と重なっても、ポートでの流体増減量が大きくなるということを抑制できる。これにより、第1傾斜部及び第2傾斜部の各外周面が全体として曲面的に傾斜している構成について、第2傾斜部と第3傾斜部との境界部において流量制御の精度が低下するということを抑制できる。
【0021】
第2傾斜部と第3傾斜部との境界部において流量制御の精度が低下しないようにする構成としては、第6の発明のように、前記第3傾斜部の外周面の湾曲は、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の全体としての外周面の湾曲よりも小さくされている構成が挙げられる。
【0022】
第7の発明では、前記複数のポートのうち前記流体を前記弁室に供給する供給ポートと、前記流体が前記弁室から排出される排出ポートとが前記連通路により連通可能とされており、前記スプールは、前記閉鎖部として、前記供給ポートを閉鎖可能な先絞り閉鎖部と、前記排出ポートを閉鎖可能な後絞り閉鎖部とを有しており、前記先絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、前記後絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部のそれぞれと比べて、少なくとも一方の前記傾きが大きくされている。
【0023】
スプール弁は、供給ポート及び排出ポートのうち供給ポートの開放面積が小さくされている先絞り状態と、排出ポートの開放面積が小さくされている後絞り状態とに移行可能とされている。ここで、先絞り状態での供給ポートと後絞り状態での排出ポートとを比較すると、それらポートの各開放面積が同じにされていても、流体に対する供給ポートと連通路とでの圧力差が連通路と排出ポートとでの圧力差よりも小さくなり、先絞り状態の方が後絞り状態よりも流量が小さくなってしまう。
【0024】
これに対して、第7の発明によれば、先絞り状態での供給ポートと後絞り状態での排出ポートとが同じ開放面積にされていても、重なり境界部における開放部の凹み寸法は、先絞り閉鎖部の方が後絞り閉鎖部よりも大きくなっている。つまり、重なり境界部における連通路の断面積は、供給ポートの方が排出ポートよりも大きくなっている。この場合、供給ポートの方が排出ポートよりも流体が流れやすくなるため、先絞り状態の方が後絞り状態よりも流量が小さくなるという問題を解消できる。
【0025】
なお、先絞り状態での供給ポートと後絞り状態での排出ポートとで開放面積が同じ場合に、供給ポートの流量が排出ポートよりも小さくなるという問題は、各開放部の第2傾斜部が各ポートと重なる程度にポートが開放されている場合に生じやすい。このため、前記先絞り閉鎖部側に配置された前記第2傾斜部が、前記後絞り閉鎖部側に配置された前記第2傾斜部よりも前記傾きが大きくされていることが好ましい。
【0026】
第8の発明では、少なくとも前記供給ポート及び前記排出ポートを一対有する弁部を複数備え、前記スプールは、前記複数の弁部のうち第1弁部の各ポートを開放可能な第1開放部と、第2弁部の各ポートを開放可能な第2開放部とを有し、前記第2開放部において前記先絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、前記第1開放部において前記後絞り閉鎖部側に配置された前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部のそれぞれと比べて、少なくとも一方の前記傾きが大きくされている。
【0027】
第8の発明によれば、第2弁部の供給ポートの方が第1弁部の排出ポートよりも流体が流れやすくなる。このため、第1弁部が後絞り状態とされ且つ第2弁部が先絞り状態とされている場合に、第1弁部の排出ポートと第2弁部の供給ポートとで各開放面積が同じにされているにもかかわらず、第1弁部での流量が第2弁部での流量よりも大きくなってしまうという問題を解消できる。これは、1つのスプールの摺動により複数の弁部の開閉が同時に行われるスプール弁において特に効果的である。
【0028】
第9の発明では、前記閉鎖部の外周面に対する前記第1傾斜部の外周面の傾きは45度以下とされている。
【0029】
第9の発明によれば、第1傾斜部及び第2傾斜部のうち、少なくとも第1傾斜部の傾きが45度以下とされている。この場合、ポートが第1傾斜部と重なる程度に開放されている場合、重なり境界部における第1傾斜部の凹み寸法が、ポートと第1傾斜部との重なり幅よりも小さくなっているため、ポートでの流量が、重なり境界部における第1傾斜部の凹み寸法に依存しやすい。したがって、ポートでの流量が小さいほど、その流量制御の精度が低下するということをより確実に抑制できる。
【0030】
第10の発明では、前記軸線方向における前記閉鎖部の長さが前記軸線方向における前記ポートの長さよりも長く形成されており、前記スプールが前記閉鎖位置にある場合に、前記軸線方向において前記閉鎖部は前記ポートの両端よりも外側まで配置されている。
【0031】
第10の発明によれば、スプールが閉鎖位置にある場合、閉鎖部の外周面はポートを閉鎖するとともに弁室の内周面にオーバーラップした状態となっているため、閉鎖部により閉鎖したポートから流体が漏れるということを抑制できる。また、スプールが軸線方向に多少移動しても閉鎖部のオーバーラップ部分によりポートが閉鎖された状態を保持できる。したがって、閉鎖状態にあるポートにおいて流体が漏れることを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1の実施形態のスプール弁装置の構成を示す断面図。
図2】スプール弁における連通路周辺の拡大図。
図3】スプールにおける第2弁部のポートを開閉する部分の拡大断面図。
図4】スプール弁においてスプールの位置と各弁部の開閉状態との関係を示す図。
図5】第2の実施形態のスプールにおける第2弁部のポートを開閉する部分の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1の実施形態]
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、スプール弁を備えるスプール弁装置として具体化している。図1はスプール弁装置10の構成を示す断面図、図2は第2弁部32における連通路38周辺の拡大図である。
【0034】
図1に示すように、スプール弁装置10は、流体制御弁としてのスプール弁11と、スプール弁11を動作させる駆動部12とを有している。スプール弁11は、円柱状のスプール21と、スプール21を摺動可能に支持しているスリーブ部材22と、スプール21及びスリーブ部材22を収容している弁ボディ23とを含んで構成されている。スリーブ部材22は円筒状に形成されており、弁ボディ23は略直方体形状のケース体とされている。スプール弁11においては、スリーブ部材22及び弁ボディ23の各内部空間により弁室24が形成されており、その弁室24にスプール21が収容されている。スプール21は、弁室24よりも軸線方向の長さ寸法が小さくされており、弁室24においてスプール21の軸線方向に摺動可能とされている。
【0035】
スリーブ部材22及び弁ボディ23には、弁室24に通じるポート26,27が複数設けられている。ポート26,27は液体や気体などの流体が流れる流体通路とされており、配管の接続が可能となっている。ポート26は、流体を弁室24に供給する供給ポート26とされており、ポート27は、弁室24から流体が排出される排出ポート27とされており、それらポート26,27はスプール21の軸線方向において並べて設けられている。
【0036】
供給ポート26には、スプール弁11に流体を供給する供給配管が接続可能な供給接続部28が取り付けられており、排出ポート27には、スプール弁11から流体を排出する排出配管が接続可能な排出接続部29が取り付けられている。
【0037】
ここで、供給ポート26の構成について簡単に説明する。なお、排出ポート27については、供給ポート26と同じ構成とされているため説明を省略する。
【0038】
図2に示すように、供給ポート26は、スリーブ部材22の周面部を厚み方向に貫通するスリーブ貫通孔37と、スリーブ貫通孔37に連通し且つ弁ボディ23の周面部を厚み方向に貫通するボディ貫通孔39を有している。供給接続部28はボディ貫通孔39に対して取り付けられており、弁室24はスリーブ貫通孔37、ボディ貫通孔39及び接続部28,29により外部に通じている。
【0039】
スリーブ部材22の外周面には、その周方向に延びるスリーブ周溝部36が設けられており、スリーブ貫通孔37はスリーブ周溝部36の底面部に配置されている。スリーブ周溝部36の内部空間は、弁ボディ23の内周面により覆われており、スリーブ貫通孔37とボディ貫通孔39とを径方向において連通している。スリーブ貫通孔37は、スリーブ周溝部36において周方向に所定の間隔で複数並べて設けられているが、いずれもスリーブ周溝部36を介してボディ貫通孔39に通じている。この場合、供給ポート26は、スリーブ貫通孔37及びボディ貫通孔39に加えてスリーブ周溝部36を含んで構成されていることになる。ちなみに、スリーブ貫通孔37は、例えば周方向に120度の間隔で3つ並べられている。
【0040】
なお、接続部28,29は、スリーブ周溝部36を介さずにスリーブ貫通孔37に接続されていてもよい。この場合、スリーブ周溝部36はポート26,27に含まれない。また、接続部28,29は1つのスリーブ貫通孔37により弁室24に通じていてもよい。この場合、ポート26,27は1つのスリーブ貫通孔37により形成されていることになる。
【0041】
弁室24には、供給ポート26と排出ポート27とを連通可能な連通路38が設けられており、スプール21は、連通路38がポート26,27を連通する位置及び連通しない位置に移動可能となっている。スプール21の外周面はスリーブ部材22の内周面と当接又は近接した状態で重なっており、連通路38がポート26,27を連通していない場合、それらポート26,27の少なくとも一方がスプール21の外周面により閉鎖されていることになる。一方、連通路38がポート26,27を連通している場合、流体が供給ポート26から連通路38(弁室24)を通じて排出ポート27に流れる。
【0042】
連通路38は、スプール21の外周面に設けられたスプール周溝部41の溝内空間により形成されている。スプール周溝部41はスプール21の周方向に延びており、軸線方向の幅寸法が、連通可能な供給ポート26と排出ポート27との離間距離より大きくされている。スプール21の軸線方向において、スプール周溝部41が供給ポート26及び排出ポート27を跨いだ状態にある場合、それらポート26,27の両方がスプール周溝部41の溝内空間に通じており、その溝内空間を介してポート26,27が連通されている。つまり、連通路38がポート26,27を跨いだ状態にある場合、それらポート26,27は連通路38により連通されている。
【0043】
スプール21の摺動方向は、弁室24に対するポート26,27の開放方向と交差しているため、スプール21の摺動に伴ってその摺動方向における連通路38とポート26,27との重なり幅が増減する。すなわちポート26,27の開放面積が増減する。流体がポート26,27を流れる場合、その流量はポート26,27の開放面積が大きいほど大きくなる。開放面積が所定値以上である場合に流量は最大となり、この場合にポート26,27が全開されていることになる。
【0044】
連通路38により連通可能な供給ポート26及び排出ポート27について、それらポート26,27及び連通路38での流量は、ポート26,27のうち開放面積(連通路38との重なり幅)が小さい方の開放面積により定められる。連通路38により連通されているポート26,27について、供給ポート26の開放面積が排出ポート27よりも小さくされていることを「先絞り」と称し、排出ポート27の開放面積が供給ポート26よりも小さくされていることを「後絞り」と称する。
【0045】
スプール21においては、スプール周溝部41の底面により外周面が形成された部分が開放部43であり、軸線方向において開放部43に隣り合う部分が閉鎖部42である。この場合、開放部43と閉鎖部42とはスプール21の軸線方向において交互に並べて設けられており、開放部43は閉鎖部42よりも径方向内側に凹んでいる。なお、開放部43は閉鎖部42より外径寸法が小さい小径部であり、閉鎖部42は開放部43より外径寸法が大きい大径部である。また、連通路38は開放部43の径方向外側に形成されていることになる。
【0046】
図1の説明に戻り、スプール弁11には、流体の流通及び遮断を行う弁部31〜33が設けられており、それら弁部31〜33はスプール21の軸線方向に並べられている。各弁部31〜33は、連通路38により連通される一対のポート26,27をそれぞれ有しており、それらポート26,27は弁部31〜33ごとにスプール21の軸線方向に並べて設けられている。スプール21は弁部31〜33ごとに開放部43を有しており、各弁部31〜33におけるポート26,27の開放はスプール21の摺動に伴って各開放部43により個別に行われる。
【0047】
各弁部31〜33は、ポート26,27の両方が各開放部43により開放されている場合に開放状態にあり、それぞれのポート26,27の少なくとも一方が閉鎖部42により閉鎖可能な構成とされている。例えば、第2弁部32は一対のポート26,27の両方が閉鎖可能な構成とされ、第1弁部31及び第3弁部33は排出ポート27だけが閉鎖可能な構成とされている。この場合、第2弁部32では先絞り及び後絞りの両方が行われ、第1弁部31及び第3弁部33では後絞りだけが行われる。なお、各弁部31〜33のそれぞれにおいては、一対のポート26,27のうち少なくとも一方が閉鎖可能であれば、いずれが閉鎖可能であってもよい。
【0048】
本実施形態では、所定の処理動作を行う処理装置にて使用された流体を処理装置に再び供給する流体循環システムが構築されている。このシステムの循環経路には、使用済みの流体を加熱装置により加熱する加熱ライン、冷却装置により冷却する冷却ライン、及び加熱も冷却もしないバイパスラインという3つの経路が含まれており、処理装置の下流側がスプール弁11を介して3つの経路の上流側に接続されている。この場合、スプール弁11は流れ込んできた流体を複数(例えば3つ)の経路に分配する分配弁になっている。
【0049】
スプール弁11において、供給接続部28は1つの流入口と3つの流出口とを有し、それら流出口は弁部31〜33の各供給ポート26に通じており、供給接続部28の流入側に処理装置が接続されている。また、排出接続部29は弁部31〜33の各排出ポート27に個別に取り付けられており、各排出接続部29を介して第1弁部31が冷却ラインに接続され、第2弁部32がバイパスラインに接続され、第3弁部33が加熱ラインに接続されている。処理装置からスプール弁11に流体が流れ込んだ場合、その流体については、加熱ライン、冷却ライン、バイパスラインに分配した各分配量がスプール21の摺動によりまとめて調整される。なお、供給接続部28は集中マニホールドと称してもよく、排出接続部29は個別ポートと称してもよい。
【0050】
本実施形態のスプール弁11においては、スプール21が、基準位置から摺動した場合のストローク量と一対のポート26,27での流量とが略比例関係になるような形状とされている。これにより、ポート26,27の開放面積が小さいほどスプール21を変位させた際の流量の変化が急なものとなることを抑制できる。換言すれば、流量がある程度小さい範囲においてもその流量を少しだけ増減させることが可能となる。
【0051】
スプール21の形状について図3を参照しつつ説明する。図3は、スプール21における第2弁部32のポート26,27を開閉する部分の拡大断面図である。ここでは、弁部31〜33のうち第2弁部32のポート26,27を開閉する部分について詳細な説明を行う。なお、図3においては、第2弁部32のポート26,27が開放されている場合のポート26,27を仮想線で図示している。
【0052】
図3に示すように、スプール21の各閉鎖部42には、第2弁部32の供給ポート26を閉鎖可能な先絞り閉鎖部45と、第2弁部32の排出ポート27を閉鎖可能な後絞り閉鎖部46とが含まれている。スプール21において、先絞り閉鎖部45と後絞り閉鎖部46との間に配置された開放部43は、先絞り閉鎖部45側に配置され且つ外周面が軸線方向(閉鎖部42の外周面)に対して傾斜した先絞り側部分61と、後絞り閉鎖部46側に配置され且つ外周面が軸線方向に対して傾斜した後絞り側部分62と、それら部分61,62を接続し且つ外周面が軸線方向に対して傾斜していない非傾斜部63とを有しており、これら先絞り側部分61、後絞り側部分62及び非傾斜部63は軸線方向に並べて配置されている。
【0053】
先絞り側部分61及び後絞り側部分62は、全体としてそれぞれテーパ状とされている。先絞り側部分61は、先絞り閉鎖部45から遠ざかるにつれて一定の割合で徐々に縮径されており、先絞り閉鎖部45の外周面に対する凹み寸法が、先絞り閉鎖部45から遠ざかる側に向けて徐々に大きくなっている。後絞り側部分62は、後絞り閉鎖部46から遠ざかるにつれて一定の割合で徐々に縮径されており、後絞り閉鎖部46の外周面に対する凹み寸法が、後絞り閉鎖部46から遠ざかる側に向けて徐々に大きくなっている。
【0054】
先絞り側部分61は、先絞り閉鎖部45に隣接した第1傾斜部61aと、先絞り閉鎖部45とは反対側において第1傾斜部61aに隣接した第2傾斜部61bとを有している。第1傾斜部61aの外径寸法は、先絞り閉鎖部45側の端部においてその先絞り閉鎖部45の外径寸法と同じとされており、先絞り閉鎖部45から遠ざかるにつれて小さくされている。この場合、第1傾斜部61aの外周面は、先絞り閉鎖部45との境界部においてその先絞り閉鎖部45の外周面と連続した面(同一面)となっている。
【0055】
第2傾斜部61bの外径寸法は、第1傾斜部61a側の端部においてその第1傾斜部61aの外径寸法と同じとされており、第1傾斜部61aから遠ざかるにつれて小さくされている。この場合、第2傾斜部61bの外周面は、第1傾斜部61aとの境界部においてその第1傾斜部61aの外周面と連続した面(同一面)となっている。
【0056】
先絞り側部分61においては、先絞り閉鎖部45から遠ざかる方向における第2傾斜部61bの縮径率が第1傾斜部61aよりも大きくされている。このため、先絞り側部分61の外周面においては、スプール21の軸線方向において先絞り閉鎖部45の外周面に対する第2傾斜部61bの傾斜角度A2が、第1傾斜部61aの傾斜角度A1よりも大きい。例えば、傾斜角度A2は22度とされており、傾斜角度A1は15度とされている。この場合、先絞り側部分61は、その両端と比べて中間位置が径方向外側に向けて膨らんだような形状となっている。また、第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bは両方とも、それらの凹み寸法(深さ寸法)がそれらの長さ寸法(スプール21の軸線方向における長さ寸法)以下とされている。つまり、傾斜角度A1,A2はいずれも45度以下とされている。
【0057】
後絞り側部分62は、スプール21の軸線に直交する線を対称軸として、先絞り側部分61と線対称な形状とされている。後絞り側部分62は、先絞り側部分61と同様に、後絞り閉鎖部46に隣接した第1傾斜部62aと、後絞り側部分62とは反対側において第1傾斜部62aに隣接した第2傾斜部62bとを有している。
【0058】
後絞り側部分62においては、後絞り閉鎖部46から遠ざかる方向における第2傾斜部62bの縮径率が第1傾斜部62aよりも大きくされている。このため、後絞り側部分62の外周面においては、第2傾斜部62bの傾斜角度B2が第1傾斜部62aの傾斜角度B1よりも大きくされている。例えば、傾斜角度B2は20度とされており、傾斜角度B1は15度とされている。後絞り側部分62は、その両端と比べて中間位置が径方向外側に向けて膨らんだような形状となっている。また、第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bは両方とも、それらの凹み寸法がそれらの長さ寸法以下とされている。つまり、傾斜角度B1,B2はいずれも45度以下とされている。
【0059】
ここで、第2傾斜部61b,62b同士を比較すると、後絞り側部分62の傾斜角度B2が先絞り側部分61の傾斜角度A2よりも小さくされている。その一方で、第1傾斜部61a,62a同士を比較すると、後絞り側部分62の傾斜角度B1と先絞り側部分61の傾斜角度A1とは同じ大きさとされている。
【0060】
非傾斜部63は、先絞り側部分61の第2傾斜部61bと、後絞り側部分62の第2傾斜部62bとを接続しており、スプール21の軸線方向に延びる円柱状とされている。非傾斜部63の外径寸法は、第2傾斜部61b,62bにおける非傾斜部63側の各端部と同じとされている。この場合、非傾斜部63における外周面の凹み寸法は、第2傾斜部61b,62bにおける外周面の最も大きい凹み寸法と同じになっている。
【0061】
次に、スプール21の変位に伴う第2弁部32の開閉について、図2を参照しつつ説明する。
【0062】
図2において、第2弁部32は、ポート26,27のそれぞれの少なくとも一部が開放部43と対向している(軸線方向の位置が重なっている)場合に開放状態にあり、開放部43がポート26,27の少なくとも一方と重なっていない場合に閉鎖状態にある。開放状態としては先絞り状態と後絞り状態とがあり、先絞り状態では、供給ポート26に対する開放部43の重なり幅が排出ポート27に対する重なり幅よりも小さくされており、後絞り状態では、排出ポート27に対する重なり幅が供給ポート26に対する重なり幅よりも小さくされている。
【0063】
先絞り状態における供給ポート26での流量は、供給ポート26と開放部43との重なり幅に加えて、開放部43が供給ポート26に重なっている部分と重なっていない部分との境界部XA(以下、重なり境界部XAともいう)における開放部43の凹み寸法により定められる。つまり、供給ポート26の開放面積に加えて、重なり境界部XAにおける連通路38の凹み方向(スプール21の径方向)の断面積により定められる。この場合、供給ポート26から連通路38に向けての流体の流れは、スプール21の軸線方向及び径方向の両方にて制限される。
【0064】
先絞り側部分61が供給ポート26と重なる範囲でスプール21が摺動した場合、先絞り側部分61の外周面が全体として傾斜していることに起因して、供給ポート26の開放面積に加えて、重なり境界部XAにおける連通路38の断面積が増減する。しかも、重なり境界部XAにおける先絞り側部分61の凹み寸法が、供給ポート26と開放部43との重なり幅よりも小さいため(傾斜角度A1,A2が45度以下のため)、供給ポート26での流量は、重なり境界部XAにおける先絞り側部分61の凹み寸法に依存しやすい。したがって、供給ポート26の開放面積が小さいことに起因してその開放部分での流体への圧力が高くなっていても、スプール21の摺動に対して供給ポート26での流量が過剰に増減するということが抑制される。
【0065】
ここで、供給ポート26の開放面積がある程度大きくされると、開放面積が小さい場合に比べて、開放部分での流体への圧力が低くなって開放面積の増減に対する供給ポート26での流体増減量が小さくなることが懸念される。この場合、供給ポート26の開放面積の増減に対する流量増減量(流量勾配)が小さくなり、スプール21の変位量と流体増減量とが比例関係にならなくなってしまう。
【0066】
これに対して、先絞り側部分61においては第2傾斜部61bの傾斜角度A2が第1傾斜部61aの傾斜角度A1よりも大きくされている。つまり、閉鎖部42の外周面に対する第2傾斜部61bの外周面の傾きが、閉鎖部42の外周面に対する第1傾斜部61aの外周面の傾きよりも大きくされている。このため、スプール21の摺動範囲が第2傾斜部61bと供給ポート26とが重なる範囲である場合、第1傾斜部61aと供給ポート26とが重なる範囲である場合に比べて、供給ポート26と先絞り側部分61との重なり幅の増減に対して、重なり境界部XAにおける供給ポート26と先絞り側部分61との離間距離の増減が大きくなる。つまり、供給ポート26の開放面積の増減に対する重なり境界部XAにおける連通路38の開放面積の増減が大きくなる。したがって、供給ポート26が第2傾斜部61bと重なる程度に大きく開放されている場合、供給ポート26が第1傾斜部61aと重なる程度に開放されている場合よりも、スプール21の変位量に対して供給ポート26での流体増減量が小さくなるということが生じにくい。
【0067】
しかも、第2傾斜部61bの傾斜角度A2は、第1傾斜部61aの傾斜角度A1に対して、スプール21の変位量と供給ポート26での流量とが略比例関係になり、且つ、第1傾斜部61aが供給ポート26と重なる範囲と第2傾斜部61bが供給ポート26と重なる範囲とで、前記略比例関係の定数がほぼ同じ数値となる角度に設定されている。この場合、スプール21の変位量と供給ポート26での流量との関係が略直線性を有するため、スプール21がどのストローク位置にあっても所定寸法だけ変位させることにより、供給ポート26での流量が所定量だけ変化することになる。
【0068】
排出ポート27での流体の流れは、供給ポート26での流体の流れと同様に、スプール21の軸線方向及び径方向の両方にて制限される。具体的には、後絞り状態において排出ポート27での流量は、排出ポート27の開放面積に加えて、開放部43が排出ポート27に重なっている部分と重なっていない部分との境界部XB(以下、重なり境界部XBともいう)における連通路38の凹み方向の断面積により定められる。
【0069】
後絞り側部分62が排出ポート27と重なる範囲でスプール21が摺動した場合、後絞り側部分62についても先絞り側部分61と同様に、外周面が全体として傾斜していることに起因して、供給ポート26の開放面積に加えて、重なり境界部XBにおける連通路38の断面積が増減する。このため、排出ポート27の開放面積が小さいことに起因してその開放部分での流体への圧力が高くなっていても、スプール21の摺動に対して排出ポート27での流量が過剰に増減するということが抑制される。
【0070】
また、後絞り側部分62においても、第2傾斜部62bの傾斜角度B2が第1傾斜部62aの傾斜角度B1よりも大きくされている。第2傾斜部62bの傾斜角度B2は第1傾斜部62aの傾斜角度B1に対して、スプール21の変位量と供給ポート26での流量との関係が略直線性を有する結果が得られる角度に設定されている。
【0071】
ここで、第2弁部32において、先絞り状態での供給ポート26と後絞り状態での排出ポート27とを比較すると、各ポート26,27の開放面積が同じにされていても、流体に対する供給ポート26と連通路38とでの圧力差が、連通路38と排出ポート27とでの圧力差よりも小さくなり、それによって、先絞り状態の流量が後絞り状態よりも小さくなることが懸念される。すなわち、先絞り状態は後絞り状態よりも、流体の流量を減少させる効果が高い。この場合、先絞り状態と後絞り状態とでスプール21の変位量と流体増減量との比例関係の定数が異なり、先絞り状態と後絞り状態とで流量を同じにするには、先絞り状態での供給ポート26の開放面積を後絞り状態での排出ポート27の開放面積よりも大きくする必要がある。
【0072】
これに対して、先絞り側部分61の第2傾斜部61bの傾斜角度A2が後絞り側部分62の第2傾斜部62bの傾斜角度B2よりも大きくされている。この場合、先絞り状態での供給ポート26と後絞り状態での排出ポート27とが同じ開放面積とされていても、供給ポート26に対する重なり境界部XAでの連通路38の断面積が、排出ポート27に対する重なり境界部XBでの連通路38の断面積より大きくなるため、供給ポート26の方が排出ポート27よりも流体が流れやすくなる。これにより、先絞り状態での供給ポート26での流量を増加させて、後絞り状態での排出ポート27での流量とほぼ同じにすることが可能となる。このため、先絞り状態の方が後絞り状態よりも流量が小さくなるということがなくなり、先絞り状態と後絞り状態とで、スプール21のストローク位置を別々に設定する必要がない。
【0073】
スプール21の形状について、ここまでは第2弁部32を開閉する部分について説明したが、ここでは第1弁部31及び第3弁部33を開閉する各部分について簡単に説明する。
【0074】
スプール21において第1弁部31を開閉する部分の形状、及び第3弁部33を開閉する部分の形状は、第2弁部32を開閉する部分の形状とほぼ同じにされている。つまり、スプール21は、第1弁部31及び第3弁部33のそれぞれに対して先絞り閉鎖部45及び後絞り閉鎖部46、開放部43を有している。ただし、第2弁部32に対する後絞り閉鎖部46と第1弁部31に対する先絞り閉鎖部45とは同じ閉鎖部42とされており、第2弁部32に対する先絞り閉鎖部45と第3弁部33に対する先絞り閉鎖部45とは同じ閉鎖部42とされている。これは、スプール21では開放部43と閉鎖部42とが交互に配置されているためである。
【0075】
第1弁部31及び第3弁部33を開放する各開放部43についても、先絞り側部分61及び後絞り側部分62の各傾斜角度A1,A2,B1,B2は、第2弁部32とほぼ同じ大きさとされている。この中でも特に、第1弁部31を開放する開放部43について、後絞り側部分62の第2傾斜部62bの傾斜角度B2は、自身の先絞り側部分61の傾斜角度A2に対してではなく、第2弁部32を開放する先絞り側部分61の傾斜角度A2(22°)よりも小さくされている(例えば19度)。これにより、後述するような、第1弁部31の後絞りと第2弁部32の先絞りとが同時に行われた場合でも、スプール21の変位量に対する流体増減量は、第1弁部31の排出ポート27と第2弁部32の供給ポート26とでほぼ同じになる。
【0076】
なお、第1弁部31の供給ポート26及び排出ポート27に対する開放部43が第1開放部に相当し、第2弁部32の供給ポート26及び排出ポート27に対する開放部43が第2開放部に相当する。
【0077】
ちなみに、第2弁部32及び第3弁部33を開放する各開放部43について、それぞれの後絞り側部分62の傾斜角度B2は互いにほぼ同じ大きさとされている。これにより、後述するような、第2弁部32の後絞りと第3弁部33の後絞りとが同時に行われた場合、スプール21の変位量に対する流体増減量は、第2弁部32及び第3弁部33の各排出ポート27でほぼ同じになる。
【0078】
なお、供給ポート26及び排出ポート27における流体の圧力は、それらポート26,27に通じる経路の状態によって異なる。このため、供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bの傾斜角度A1,A2や、排出ポート27に対する第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bの傾斜角度B1,B2は、弁部31〜33ごとにポート26,27での流体の圧力に合わせてそれぞれ個別に設定されている。ちなみに、経路の状態を定める要素としては、配管の口径や長さ、曲がり部の有無、衝撃緩和手段としてのバッファの有無などが挙げられる。
【0079】
図1の説明に戻り、スプール弁装置10において駆動部12はリニアアクチュエータとされている。駆動部12は、鋼材等の強磁性体により形成された可動部65と、可動部65を挟んで配置された一対の永久磁石66と、一対の永久磁石66と同一方向に磁界を発生させるコイル67とを有している。可動部65は、永久磁石66の磁界方向と直交する方向に移動可能となっており、その移動方向がスプール21の摺動方向と同一にされた状態でスプール21の一端に固定されている。駆動部12においては、可動部65の位置、すなわちスプール21のストローク位置が、コイル67の通電方向及び通電する電圧、電流の大きさに基づいて定められることになる。
【0080】
駆動部12において可動部65が中立位置にある場合、スプール21は第1弁部31及び第3弁部33を閉鎖し且つ第2弁部32を開放する位置にあり、この場合、スプール21も中立位置にあることになる。スプール21が中立位置にある場合、第1弁部31及び第3弁部33の両方においてそれぞれの排出ポート27が閉鎖されている。
【0081】
ちなみに、可動部65は、コイル67が通電されていない場合に中立位置にあるものであるが、コイル67が通電されていない状態では、スプール弁11を流れる流体の影響で可動部65が中立位置からずれてしまうと考えられる。これに対して、可動部65は、コイル67の通電に伴って発生した磁力により中立位置に位置保持されている。具体的には、スプール弁装置10には、スプール21のストローク位置を検出する位置センサが設けられており、その位置センサの検出結果に基づいて、可動部65の位置を中立位置とするようにフィードバック制御が行われている。
【0082】
なお、位置センサは、弁室24内の流体に対してスリーブ部材22の周面部等により隔てられた位置にあり、流体の影響を受けないようになっている。また、位置センサは、スプール21など動作する部材とは非接触の状態で設置されている。ちなみに、位置センサとしては、静電容量式、磁歪式、渦電流式などがある。さらに、駆動部12には、コイル67が通電されていない場合に可動部65を中立位置に保持するスプリング等の付勢手段が設けられていてもよい。
【0083】
第1弁部31及び第3弁部33において、排出ポート27を閉鎖している閉鎖部42は、その外周面が排出ポート27よりも所定寸法Lだけスプール21の軸線方向に向けてはみ出しており、このはみ出し部分69はスリーブ部材22の内周面と当接又は近接した状態で重なっている。このため、仮にスプール21が軸線方向に多少移動しても、はみ出し部分69により閉鎖部42の外周面が排出ポート27を閉鎖した状態が保持される。なお、はみ出し部分69は、スリーブ部材22の内周面とオーバーラップするオーバーラップ部分に相当する。
【0084】
ここで、例えばスプール21が中立位置にある場合に、第2弁部32から流体が排出されると、その流体などからの圧力がスプール21に加えられ、スプール21が中立位置から軸線方向にずれることが懸念される。この場合、閉鎖部42にはみ出し部分69がないと、スプール21のずれに伴って第1弁部31及び第3弁部33において開放部43が排出ポート27と僅かに重なってその重なり部分から流体が漏れ出すことが懸念される。これに対して、本実施形態では、閉鎖部42がはみ出し部分69を有しているため、スプール21が中立位置から多少ずれても、第1弁部31及び第3弁部33の各排出ポート27から流体が漏れ出すということを防止できる。
【0085】
スプール21には、そのスプール21を軸線方向に貫通するスプール貫通孔71が設けられている。弁室24においてスプール21の両端側の各空間は、スプール21の摺動に伴って拡縮される拡縮空間24aとなっており、それら拡縮空間24aはスプール貫通孔71を介して連通されている。拡縮空間24a及びスプール貫通孔71は、各弁部31〜33を流れる流体などにより満たされており、その流体はスプール21の摺動に伴ってスプール貫通孔71を通じて一方の拡縮空間24aから他方の拡縮空間24aに流体が移動する。これにより、スプール21の摺動の際、拡縮空間24a内の流体からスプール21に加えられる抗力が小さくなるため、駆動部12がスプール21を摺動させる際の駆動力を低減できる。
【0086】
仮に、スプール貫通孔71が設けられていないと、スプール21とスリーブ部材22との間を通じて拡縮空間24aから弁室24に流体が漏れ出すことなどによりスプール21を摺動させることができたとしても、拡縮空間24a内の流体からスプール21に加えられる効力が大きくなり、スプール21が摺動しにくい状態となってしまう。特に、流体が非圧縮性を有する液体である場合には、スプール21が摺動しにくいことが顕著となる。
【0087】
なお、スプール貫通孔71の孔径は、大きいほど拡縮空間24a同士の流体置換が行われやすくなるが、スプール21の外径に合わせた大きさとされることが好ましい。
【0088】
次に、スプール21のストローク位置による各弁部31〜33の開閉状態について、図4を参照しつつ説明する。図4は、スプール弁11においてスプール21の位置と各弁部31〜33の開閉状態との関係を示す図である。なお、図4においては、接続部28,29の図示を省略している。
【0089】
図4(a)においては、第1弁部31が全開状態とされ、第2弁部32及び第3弁部33が閉鎖状態とされており、スプール21は、中立位置から第1弁部31側に移動した位置にある。第2弁部32においてはポート26,27のうち供給ポート26が閉鎖されており、第3弁部33においては排出ポート27が閉鎖されている。この場合、スプール弁11に流れ込んだ全ての流体が第1弁部31から排出される。
【0090】
図4(c)においては、第2弁部32が全開状態とされ、第1弁部31及び第3弁部33が閉鎖状態とされており、スプール21は中立位置にある。第1弁部31及び第3弁部33においては両方とも排出ポート27が閉鎖されている。この場合、スプール弁11に流れ込んだ全ての流体が第2弁部32から排出される。
【0091】
図4(e)においては、第3弁部33が全開状態とされ、第1弁部31及び第2弁部32が閉鎖状態とされており、スプール21は、中立位置から第3弁部33側に移動した位置にある。第1弁部31及び第3弁部33においては両方とも排出ポート27が閉鎖されている。この場合、スプール弁11に流れ込んだ全ての流体が第3弁部33から排出される。
【0092】
図4(b)においては、第1弁部31が後絞り状態とされ、第2弁部32が先絞り状態とされ、第3弁部33が閉鎖状態とされており、スプール21は、第1弁部31を全開状態にする位置と中立位置との間の中間位置にある。第1弁部31及び第2弁部32での流量は、それら弁部31,32が全開状態にある場合のほぼ1/2となっており、スプール弁11に流れ込んだ流体は第1弁部31及び第2弁部32からほぼ半分ずつ排出される。この場合、2つの弁部31,32を流体が流れても、その流量の合計は1つの弁部を流体が流れる場合と同じになっている。つまり、スプール弁11における流体の排出量はスプール21が変位しても一定に保たれる。これは、上述したように、スプール21において、第1弁部31を開放する後絞り側部分62の傾斜角度B2が、第2弁部32を開放する開放部43の先絞り側部分61の傾斜角度A2よりも小さくされているためである。
【0093】
また、第1弁部31及び第2弁部32の各流量が同じにされている前記中間位置を基準としてスプール21が変位した場合、第1弁部31に近いほど第1弁部31の流量の割合が増え、第2弁部32の流量の割合が減る。一方、第2弁部32(中立位置)に近いほど第1弁部31の流量の割合が減り、第2弁部32の流量の割合が増える。この場合でも、2つの弁部31,32での流量の合計は、1つの弁部での流量と同じになっている。
【0094】
図4(d)においては、第2弁部32及び第3弁部33の両方が後絞り状態とされ、第1弁部31が閉鎖状態とされており、スプール21は、第3弁部33を全開状態とする位置と中立位置との間の位置にある。第2弁部32及び第3弁部33での流量は、それら弁部32,33が全開状態にある場合のほぼ1/2となっている。これは、上述したように、第2弁部32及び第3弁部33を開放する各後絞り側部分62の傾斜角度B2がほぼ同じ大きさにされているためである。
【0095】
また、第2弁部32及び第3弁部33の各流量が同じにされている前記中間位置を基準としてスプール21が変位した場合、第2弁部32(中立位置)に近いほど第2弁部32の流量の割合が増え、第3弁部33の流量の割合が減る。一方、第3弁部33に近いほど第2弁部32の流量の割合が減り、第3弁部33の流量の割合が増える。この場合でも、2つの弁部32,33での流量の合計は、1つの弁部での流量と同じになっている。
【0096】
なお、各弁部31〜33のそれぞれについて、開放状態にある場合のスプール21の位置が開放位置に相当し、閉鎖状態にある場合のスプール21の位置が閉鎖位置に相当する。
【0097】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0098】
スプール21の開放部43において、第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bの各外周面はスプール21の軸線に対して傾斜している。このため、スプール21が変位しても供給ポート26での流体増減量が過剰に大きくなるということがない。つまり、スプール21の変位に対して供給ポート26での流量をなめらかに増減できる。したがって、スプール弁装置10において駆動部12に対する指令信号により弁部31〜33の流量制御が行われている場合、供給ポート26での流量が小さいほどその流量制御の精度が低下するということを抑制できる。
【0099】
しかも、スプール21の開放部43において、供給ポート26に対する第2傾斜部61bの傾斜角度A2が第1傾斜部61aの傾斜角度A1よりも大きくされているため、供給ポート26が第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bのいずれと重なっている範囲で開放されていても、供給ポート26の開放面積とその供給ポート26での流量との関係を略比例関係にすることができる。つまり、スプール弁11を比例弁とすることができる。この場合、駆動部12に対する指令信号に対して供給ポート26での流量が直線的に変化する。つまり、スプール21の変位量に対する流量変化率がストローク位置にかかわらず一定に近付けることができる。これにより、指令信号による流量制御が容易なものとなる。
【0100】
以上により、弁部31〜33が先絞り状態にある場合、供給ポート26の開放面積が小さくなるほどその流量制御の精度が低下するということを抑制でき、しかも、供給ポート26の開放面積が小さい範囲とそれよりも大きい範囲とで流量制御の精度に差異が生じることを抑制できる。これは、弁部31〜33が後絞り状態にある場合の排出ポート27についても同様である。
【0101】
第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bはテーパ面を有しているため、周方向のいずれの部分においても供給ポート26及び排出ポート27と対向することが可能となっている。このため、スプール21の周方向に対してポート26,27がどの方向に配置されていても、第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bの各テーパ面により、重なり境界部XA,XBにおける連通路38の断面積を調整できる。
【0102】
しかも、第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bの各テーパ面はスプール21の軸線に対して直線的に傾斜しているため、スプール21における第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bの加工が煩雑になることや、スプール21の検査が困難になることを抑制できる。これに対して、例えば、第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bの各外周面が曲面的に傾斜している場合、スプール21におけるそれら部分61,62の加工が煩雑になることや、閉鎖部42と開放部43との境界が視認しにくいことなどによりスプール21の検査が困難になることが想定される。
【0103】
さらに、第1傾斜部61a,62aの傾斜角度A1,A2及び第2傾斜部61b,62bの傾斜角度B1,B2がそれぞれ45度以下とされているため、ポート26,27での流量を、重なり境界部XA,XBにおける開放部43の凹み寸法に依存させやすくできる。
【0104】
第2弁部32について、供給ポート26に対する第2傾斜部61bの傾斜角度A2が排出ポート27に対する第2傾斜部62bの傾斜角度B2よりも大きくされている。この場合、供給ポート26の方が排出ポート27よりも流体が流れやすくなるため、第2弁部32について、先絞り状態での供給ポート26の開放面積と後絞り状態での排出ポート27の開放面積とが同じにされているにもかかわらず、先絞り状態の方が後絞り状態よりも流量が小さくなるという問題を解消できる。
【0105】
第2弁部32の供給ポート26に対する第2傾斜部61bの傾斜角度A2が、第1弁部31の排出ポート27に対する第2傾斜部62bの傾斜角度B2よりも大きくされているため、第2弁部32の供給ポート26の方が第1弁部31の排出ポート27よりも流体が流れやすくなる。このため、第1弁部31が後絞り状態とされ且つ第2弁部32が先絞り状態とされている場合、第1弁部31の排出ポート27と第2弁部32の供給ポート26とで各開放面積が同じにされているにもかかわらず、第1弁部31の排出ポート27での流量が第2弁部32の供給ポート26での流量よりも大きくなることを抑制できる。これは、本実施形態のようにスプール21の摺動により複数の弁部31〜33の開閉が同時に行われるスプール弁11において特に効果的である。
【0106】
開放部43において、供給ポート26に対する第2傾斜部61bと排出ポート27に対する第2傾斜部62bとの間には非傾斜部63が設けられている。このため、非傾斜部63がポート26,27と重なる程度にポート26,27の開放面積が大きくされている場合、重なり境界部XA,XBにおける連通路38の断面積が最大値となり、ポート26,27での流量を十分に確保できる。
【0107】
スプール21が中立位置にある場合、第1弁部31及び第3弁部33の各排出ポート27を閉鎖している閉鎖部42が、スプール21の軸線方向において排出ポート27よりも所定寸法Lだけはみ出しているため、スプール21が軸線方向に多少移動しても排出ポート27を閉鎖状態にて保持できる。これにより、スプール21が軸線方向に多少ずれても第1弁部31及び第3弁部33にて流体が漏れることを抑制できる。
【0108】
スプール弁11が3つの弁部31〜33を有しているため、スプール弁1つの3つの比例弁をまかなうことができ、ひいては、流体循環システムにおいて部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。しかも、スプール21を摺動させるアクチュエータは1つの駆動部12であるため、3つの比例弁がそれぞれアクチュエータを有している場合に比べて、アクチュエータの駆動に対する信頼性を高めることができる。
【0109】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bが全体として、スプール21の径方向外側に向けて膨らむように曲面的に傾斜しており、開放部43は第1傾斜部61a,62aとは反対側において第2傾斜部61b,62bに隣接した第3傾斜部を有している。
【0110】
スプール21における第2弁部32のポート26,27を開閉する部分の形状について図5を参照しつつ説明する。図5は、スプール21における第2弁部32のポート26,27を開閉する部分の拡大断面図である。
【0111】
図5に示すように、先絞り側部分61において第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bは、スプール21の軸線に対して径方向外側に向けて膨らむように曲面的に傾斜している。スプール21の縦断面において、第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bの各外周面はいずれも軸線側に中心O1を有する円弧状とされており、それぞれ半径R1の大きさで湾曲している。この場合、第1傾斜部61aと第2傾斜部61bとは中心O1が同一であるため、円弧が一致している。ここでは、第1傾斜部61aと第2傾斜部61bとが軸線方向において同じ長さ寸法とされている。なお、第1傾斜部61aと第2傾斜部61bとは長さ寸法が異なっていてもよい。
【0112】
第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bが曲面的に傾斜している場合でも、第2傾斜部61bの傾斜角度は、第1傾斜部61aの傾斜角度よりも大きくされている。具体的には、傾斜部61a,61bについては、スプール21の中心軸線を通る断面において、先絞り閉鎖部45の外周面に対する傾斜面の接線の傾きを傾斜角度とし、第2傾斜部61bにおいて最も傾きの小さい接線の傾斜角度が、第1傾斜部61aにおいて最も傾きの大きい接線の傾斜角度よりも大きくされている。
【0113】
先絞り側部分61は、第1傾斜部61aとは反対側において第2傾斜部61bに隣接した第3傾斜部61cを有している。第3傾斜部61cは、スプール21の軸線に対して径方向内側に向けて凹むように曲面的に傾斜している。スプール21の縦断面において、第3傾斜部61cの外周面は軸線とは反対側に中心O2を有する円弧状とされており、半径R2の大きさで湾曲している。第3傾斜部61cの半径R2は、第1傾斜部61a,第2傾斜部61bの半径R1よりも大きくされている。この場合、第3傾斜部61cの外周面の湾曲は第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bの全体としての湾曲よりも小さくされている。
【0114】
第3傾斜部61cの外径寸法は、第2傾斜部61b側の端部においてその第2傾斜部61bの外形寸法と同じにされており、第3傾斜部61cの外周面は、第2傾斜部61bとの境界部においてその第2傾斜部61bの外周面と連続した面(同一面)となっている。第3傾斜部61cは、第2傾斜部61bから遠ざかるにつれて縮径されており、先絞り閉鎖部45の外周面に対する凹み寸法が、第2傾斜部61bから遠ざかる側に向けて徐々に大きくなっている。先絞り側部分61は、第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bに加えて第3傾斜部61cを有していても、先絞り閉鎖部45とは反対側に向けて徐々に縮径されている。
【0115】
後絞り側部分62は、上記実施形態と同様に、スプール21の軸線に直交する線を対象軸として先絞り側部分61と線対称な形状とされている。この場合、後絞り側部分62は、第1傾斜部62aの反対側において第2傾斜部62bに隣接した第3傾斜部62cを有している。後絞り側部分62において、第3傾斜部62cの半径R4は、第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bの半径R3よりも大きくされている。ちなみに、第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bの円弧の中心O3は軸線側にあり、第3傾斜部62cの円弧の中心O4は軸線とは反対側にある。
【0116】
先絞り側部分61及び後絞り側部分62について、第1傾斜部61a,62a同士及び第2傾斜部61b,62b同士を比較すると、先絞り側部分61の半径R1が後絞り側部分62の半径R3よりも小さくされている。この場合、先絞り側部分61の湾曲が後絞り側部分62の湾曲よりも大きくなっている。その一方で、第3傾斜部61c,62c同士を比較すると、先絞り側部分61の半径R2と後絞り側部分62の半径R4とは同じ大きさとされている。
【0117】
スプール21において第1弁部31及び第3弁部33を開閉する各部分の形状は、第2弁部32を開閉する部分の形状とほぼ同じにされている。ちなみに、第1弁部31の排出ポート27に対する後絞り側部分62と第2弁部32の供給ポート26に対する先絞り側部分61とについて第1傾斜部61a,62a同士及び第2傾斜部61b,62b同士を比較すると、後絞り側部分62の半径R3が先絞り側部分61の半径R1よりも大きくされている。これは、第2弁部32に対する開放部43での先絞り側部分61と後絞り側部分62との関係と同様である。
【0118】
また、第3傾斜部61c,62c同士を比較すると、第1弁部31の排出ポート27に対する後絞り側部分62の半径R4が、第2弁部32の供給ポート26に対する先絞り側部分61の半径R2よりも小さくされている。これは、第2弁部32に対する開放部43での先絞り側部分61と後絞り側部分62との関係とは異なる。
【0119】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0120】
供給ポート26に対する第1傾斜部61a、第2傾斜部61b及び第3傾斜部61cは、それぞれ湾曲していても全体として先絞り閉鎖部45から遠ざかる側に向けて徐々に縮径しているため、上記第1の実施形態と同様に、供給ポート26での流量が小さいほどその流量制御の精度が低下するということを抑制できる。これは、排出ポート27に対する第1傾斜部62a、第2傾斜部62b及び第3傾斜部62cについても同様である。
【0121】
第2弁部32が先絞り状態にある場合、供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bは、先絞り閉鎖部45から遠ざかるほど先絞り閉鎖部45の外周面に対する傾きが徐々に大きくなる。このため、スプール21が摺動に伴って供給ポート26の開放面積が大きくなると、重なり境界部XAにおける第1傾斜部61aの凹み寸法が増加するのはもちろんのこと、その増加率が徐々に大きくなる。しかも、重なり境界部XAにおける凹み寸法は第2傾斜部61bにおいてさらに増加し、その増加率は供給ポート26の開放面積が大きくなるほど大きくなる。さらに、第1傾斜部61aの外周面と第2傾斜部61bの外周面との境界部が折れた形状となっていないため、その境界部が流量変曲点にならない。したがって、供給ポート26が第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bと重なる状態で開放されている場合、供給ポート26の開放面積とその供給ポート26での流量との関係を比例関係により一層近付けることができる。
【0122】
また、供給ポート26に対する第3傾斜部61cは、第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bとは反対側に向けて湾曲し、且つそれら傾斜部61a,61bの外周面と連続した外周面を有している。このため、スプール21の摺動に伴って、重なり境界部XAが第2傾斜部61b及び第3傾斜部61cの境界部と重なっても、供給ポート26での流体増減量が大きくなるということを抑制できる。これにより、第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bの外周面が曲面的に傾斜している構成において、第2傾斜部61b及び第3傾斜部61cの境界部において流量制御の精度が低下するということを抑制できる。
【0123】
後絞り状態にある排出ポート27についても、先絞り状態にある供給ポート26と同様に、流量が小さいほどその流量制御の精度が低下するということを抑制できる。
【0124】
先絞り状態及び後絞り状態の両方に移行可能な第2弁部32については、先絞り状態での供給ポート26と後絞り状態での排出ポート27とが同じ開放面積にされていても、供給ポート26側の重なり境界部XAにおける開放部43の凹み寸法が、排出ポート27側の重なり境界部XBにおける開放部43の凹み寸法より大きくなっている。つまり、供給ポート26側の連通路38の断面積が排出ポート27側の連通路38の断面積よりも大きくなっている。この場合、供給ポート26の方が排出ポート27よりも流体が流れやすくなるため、先絞り状態の方が後絞り状態よりも流量が小さくなるという問題を解消できる。
【0125】
また、第2弁部32の供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bの半径1が、第1弁部31の排出ポート27に対する第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bよりも小さくされているため、第2弁部32の供給ポート26の方が第1弁部31の排出ポート27よりも流体が流れやすくなる。このため、スプール21の位置が、第1弁部31を後絞り状態とし且つ第2弁部32を先絞り状態とする位置にある場合、第1弁部31の排出ポート27と第2弁部32の供給ポート26とで各開放面積が同じにされているにもかかわらず第1弁部31での流量が第2弁部32での流量よりも大きくなるということを抑制できる。
【0126】
[他の実施形態]
本発明は上記各実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0127】
(1)上記第2の実施形態では、供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bが、同じ中心O1を有し同じ半径R1を有していたが、これら中心O1や半径R1は異なっていてもよい。この場合でも、第1傾斜部61aの凹み寸法が隣り合う閉鎖部42から遠ざかるにつれて徐々に大きくなり、第2傾斜部61bの凹み寸法が第1傾斜部61aから遠ざかるにつれて徐々に大きくなる構成を実現できる。
【0128】
ちなみに、第1傾斜部61aの半径が第2傾斜部61bの半径よりも大きいことが望ましい。これは、第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bが曲面的に傾斜しており、閉鎖部42から遠ざかるにつれて各傾斜部61a,61bの傾斜角度が大きくなる構成において、傾斜角度の増加率が第2傾斜部61bの方が大きくなるためである。これにより、供給ポート26の開放面積が小さい場合には、その開放面積の増減量に対して流量の増減量が大きくなってしまうことを第1傾斜部61aにより抑制できるとともに、供給ポート26の開放面積がある程度大きくされた場合には、その開放面積の増減量に対して流量の増減量が小さくなってしまうことを第2傾斜部61bにより抑制できる。
【0129】
なお、排出ポート27に対する第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bについても同様に、中心O2や半径R2が異なっていてもよい。
【0130】
(2)上記第1の実施形態では、第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bにより開放部43の外周面が2段階で傾斜しているが、外周面は3段階以上で傾斜していてもよい。例えば、閉鎖部42側から第1傾斜部、第2傾斜部、第3傾斜部の順で3つの傾斜部が並べて設けられている構成とする。この構成では、各傾斜部の傾きは閉鎖部42から遠いものほど大きくされている。この場合、傾斜部が多いほど隣り合う傾斜部同士の傾きの差が小さくなり、傾斜部同士の境界部が流量変曲点になりにくくなるため、スプールの変位量とポートでの流量との関係を略比例関係にすることができる。
【0131】
ちなみに、開放部43の外周面が2段階で傾斜している構成においては、第1傾斜部61a,62aの傾斜角度A1,B1が小さいほど、ポート26,27での流体増減量が小さくなり、流量の微調整を行うことができる。一方、第2傾斜部61b,62bの傾斜角度A2,B2が大きいほど、ポート26,27の開放面積が大きくされた場合の流量を増加させることができる。これらのことから、第1傾斜部61a,62aの傾斜角度A1,B1と、第2傾斜部61b,62bの傾斜角度A2,B2との差が大きく、第1傾斜部61a,62aと第2傾斜部61b,62bとの境界部が流量変曲点になりやすい構成でも、流量調整を好適に行うことができる。例えば、3つの弁部31〜33の開閉により流体を分配又は混合して流体の温度調整が行われる構成においては、流体温度の微調整を行うことができる。ちなみに、傾斜部同士の境界部が流量変曲点になりやすい構成では、スプールの変位量とポートでの流量との関係が比例関係から遠ざかることになる。
【0132】
(3)上記各実施形態において、供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bのうち、一方が直線的に傾斜しており、他方が曲面的に傾斜していてもよい。例えば、先絞り閉鎖部45に対して第1傾斜部61aが直線的に傾斜しており、第2傾斜部61bが曲面的に傾斜している構成とする。この構成では、第2傾斜部61bにおいて最も傾きの小さい接線の傾斜角度が、第1傾斜部61aの傾斜角度よりも大きくされていることが好ましい。これは、排出ポート27に対する第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bについても同様である。
【0133】
(4)上記第1の実施形態では、第2弁部32について、供給ポート26に対する第1傾斜部61aの傾斜角度A1は、排出ポート27に対する第1傾斜部62aの傾斜角度B1と同じにされていたが、傾斜角度B1よりも大きくされていてもよい。要は、1つの弁部について、供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bは、排出ポート27に対する第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bのそれぞれと比べて、少なくとも一方の傾きが大きくされていればよい。
【0134】
(5)上記第1の実施形態では、第1傾斜部61a,62aの傾斜角度A1,A2及び第2傾斜部61b,62bの傾斜角度B1,B2が45度以下とされていたが、第2傾斜部61b,62bの傾斜角度A2,B2は45度よりも大きくされていてもよい。要は、第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bのうち少なくとも第1傾斜部61a,62aが45度以下(凹み寸法がスプール21の軸線方向の長さ寸法以下)とされていればよい。
【0135】
(6)上記各実施形態では、第2弁部32及び第3弁部33が同時に開放状態とされる場合、第2弁部32及び第3弁部33の両方が後絞り状態とされていたが、それら弁部32,33の一方が先絞り状態とされ、他方が後絞り状態とされてもよい。要は、複数の弁部が同時に開放状態とされる場合に、先絞り状態の弁部及び後絞り状態の弁部が少なくとも1つずつ含まれていればよい。
【0136】
この場合、上記第1の実施形態においては、先絞り状態の弁部の供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bが、後絞り状態の弁部の排出ポート27に対する第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bのそれぞれと比べて、少なくとも一方の傾きが大きくされていればよい。
【0137】
一方、上記第2の実施形態においては、先絞り状態の弁部の供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bが、後絞り状態の弁部の排出ポート27に対する第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bよりも湾曲が大きくされていればよい。換言すれば、先絞り状態の弁部の供給ポート26に対する第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bの半径R1が、後絞り状態の弁部の排出ポート27に対する第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bの半径R3よりも小さくされていればよい。
【0138】
(7)上記第2の実施形態では、第1傾斜部61a,62a、第2傾斜部61b,62b及び第3傾斜部61c,62cが、スプール21の軸線側又はそれとは反対側に中心を有する円弧状に形成されていたが、楕円の一部の形状に形成されていてもよい。要は、第1傾斜部61a,62a及び第2傾斜部61b,62bはスプール21の外側に向けて膨らむように曲面的に傾斜していれば円弧状でなくてもよく、第3傾斜部61c,62cはスプール21の内側に向けて膨らむように曲面的に傾斜していれば円弧状でなくてもよい。
【0139】
(8)スプール周溝部41は、スプール21の周方向において少なくとも一部に設けられていてもよい。つまり、スプール21の外周面に、径方向内側に向けて凹んだ凹部が設けられ、その凹部の内部空間により連通路38が形成されていてもよい。この場合でも、スプール21においては凹部が形成された部分(開放部43)と、凹部が形成されていない部分(閉鎖部42)とが軸線方向に交互に配置されることになる。
【0140】
(9)スプール弁11は混合弁として使用されてもよい。例えば、排出ポート27に供給配管が接続され、供給ポート26に排出配管が接続される構成とする。この場合、スプール弁11において流体の流れる方向が逆になるため、第1の実施形態においては、先絞り側部分61の傾斜部61a,61bが、後絞り側部分62の傾斜部62a,62bのそれぞれと比べて、少なくとも一方の傾きが小さくされることが好ましい。第2の実施形態においては、先絞り側部分61の第1傾斜部61a及び第2傾斜部61bが、後絞り側部分62の第1傾斜部62a及び第2傾斜部62bよりも湾曲が小さくされる(半径が大きくされる)ことが好ましい。
【0141】
なお、この場合、流体は加熱ライン、バイパスライン及び冷却ラインから各排出接続部29を介して第3弁部33、第2弁部32及び第1弁部31にそれぞれ流れ込み、供給接続部28で混合されながら処理装置側に供給される。
【0142】
(10)弁室24は、スリーブ部材22及び弁ボディ23のうち、スリーブ部材22の内部空間により形成されていてもよく、弁ボディ23の内部空間により形成されていてもよい。
【0143】
(11)スプール弁11においては、弁部の数(連通路38の数)は3つよりも少なくてもよく、多くてもよい。
【符号の説明】
【0144】
11…スプール弁、21…スプール、22…弁室を構成するスリーブ部材、23…弁室を構成する弁ボディ、24…弁室、26…ポートとしての供給ポート、27…ポートとしての排出ポート、31…第1弁部、32…第2弁部、33…第3弁部、38…連通路、42…閉鎖部、43…開放部、45…先絞り閉鎖部、46…後絞り閉鎖部、61a…第1傾斜部、61b…第2傾斜部、61c…第3傾斜部、62a…第1傾斜部、62b…第2傾斜部、62c…第3傾斜部。
図1
図2
図3
図4
図5