(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記口金本体には、塗布液が一時的に貯留されるマニホールドと、このマニホールドに存在するエアを排出させるエアベント孔とが形成されており、それぞれ種別の異なる口金部それぞれのエアベント孔の位置は、長手方向において共通の位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記塗布装置では、塗布精度を維持することが困難であるという問題があった。すなわち、上記塗布装置では、スリットノズルの吐出口を移動可能な板により吐出口幅を調整する構成であるため、完全には板が固定されていない。そのため、塗布動作により塗布液に圧がかかると振動等が発生し、形成される塗布膜にムラが発生する場合があり、塗布幅変更機構を設けていない従来塗布装置に比べて塗布精度が悪く、塗布精度が要求される塗布基板の生産には用いることが難しいという問題があった。
【0006】
また、塗布幅を変更すると、基板に塗布するための塗布条件が変化するため、口金部に塗布液を供給するポンプの加減速、吐出速度、塗布量等の塗布条件は、塗布基板を生産する前に作業員が入力して設定する必要がある。このような作業を塗布幅に応じて塗布基板毎に行っていると、変更しなければならない塗布条件が多いため、人為的な入力ミスが生じ不良塗布基板が生産され歩留まりが悪くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、塗布精度を落とすことなく容易に口金部の塗布幅を変更することができ、また塗布幅が変更されても塗布条件の変更ミスが生じるのを抑えることのできる塗布装置及び口金認識方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、塗布液が貯留される口金本体と口金本体に貯留された塗布液が吐出される吐出口が一方向に延びて形成されるスリットノズルを有する口金部と、を備え、前記口金部と前記ステージとを相対的に移動させることにより、基板上に塗布膜を形成する塗布装置であって、前記口金部は、スリットノズルの長さが異なる複数の種類の口金部が載せ替え可能になっており、前記スリットノズルの長手方向端部には、吐出口位置よりも口金本体側に切り取られた切欠部が形成されており、前記スリットノズルとステージとの距離を計測するギャップセンサが前記ステージに取付けられており、このギャップセンサにより前記切欠部の位置を計測することにより、口金部の種別が判別されることを特徴としている。
【0009】
また、上記課題を解決するために本発明の口金認識方法は、基板を載置するステージと、塗布液が貯留される口金本体と口金本体に貯留された塗布液が吐出される吐出口が一方向に延びて形成されるスリットノズルを有する口金部と、を備え、前記口金部と前記ステージとを相対的に移動させることにより、基板上に塗布膜を形成する塗布装置の口金認識方法であって、前記口金部は、スリットノズルの長さが異なる複数の種類の口金部が載せ替え可能になっており、前記スリットノズルの長手方向端部に吐出口位置よりも口金本体側に切り取られた切欠部を、前記スリットノズルとステージとの距離を計測するギャップセンサで計測することにより、現在搭載されている口金部の種別を判別することを特徴としている。
【0010】
上記塗布装置及び口金認識方法によれば、スリットノズルの長さが異なる複数種類の口金部が載せ替えることによりスリットノズルの長さが異なる口金部自体を変更することができるため、スリットノズルの吐出口幅を調節する従来の塗布装置に比べて、塗布精度を落とすことなく容易に塗布幅を変更することができる。そして、スリットノズルの長手方向端部に設けられた切欠部をギャップセンサで計測することにより、現在搭載されている口金部の種別を判別できるため、この情報を基にして塗布条件の設定を行うことができる。したがって、従来の塗布装置に比べて塗布条件変更ミスにより不良基板が生産され歩留まりが悪くなるというという問題を抑えることができる。
【0011】
また、前記口金本体には、塗布液が一時的に貯留されるマニホールドと、このマニホールドに存在するエアを排出させるエアベント孔とが形成されており、それぞれ種別の異なる口金部それぞれのエアベント孔の位置は、長手方向において共通の位置に形成されている構成にしてもよい。
【0012】
この構成によれば、種別の異なる口金部に載せ替えた場合であっても、マニホールドに存在するエアをスムーズに排出させることができる。すなわち、エアベント孔は通常マニホールドの長手方向端部位置に設けられており、スリットノズルの長手方向寸法が異なると、エアベント孔の位置も変更されるため、エアベント孔に接続される配管を再施工、交換が必要になるが、種別の異なる口金部のエアベント孔の位置を長手方向において共通の位置に形成しているため、口金部交換の際にエアベント孔に接続される配管を再施工、交換という不要な作業を避けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗布装置及び口金認識方法によれば、塗布精度を落とすことなく容易に口金部の塗布幅を変更することができ、また塗布幅が変更されても塗布条件の変更ミスが生じるのを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す斜視図であり、
図2は、
塗布ユニットの脚部付近を示す図である。
【0017】
図1、
図2に示すように、塗布装置は、基板10上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜を形成するものであり、基台2と、基板10を載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット30とを備えている。
【0018】
なお、以下の説明では、塗布ユニット30が移動する方向をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0019】
前記基台2には、その中央部分にステージ21が配置されている。このステージ21は、搬入された基板10を載置するものである。このステージ21には、基板保持手段が設けられており、この基板保持手段により基板10が保持されるようになっている。具体的には、ステージ21の表面に形成された複数の吸引孔が形成されており、この吸引孔に吸引力を発生させることにより基板10をステージ21の表面に吸着させて保持できるようになっている。
【0020】
また、ステージ21には、基板10を昇降動作させる基板昇降機構が設けられている。具体的には、ステージ21の表面には複数のピン孔が形成されており、このピン孔にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピン(不図示)が埋設されている。すなわち、ステージ21の表面からリフトピンを突出させた状態で基板10が搬入されるとリフトピンの先端部分が基板10に当接して基板10を保持することができる。そして、その状態からリフトピンを下降させてピン孔に収容させることにより、基板10をステージ21の表面に載置することができるようになっている。
【0021】
また、ステージ21の側面部分には、口金部34の高さを計測するギャップセンサ8が取付けられている。本実施形態では、Y軸方向両端部分に取付けられている。本実施形態では、Y軸方向端部に設けられている。
【0022】
これらのギャップセンサ8は、接触型のギャップセンサ8であって、後述の口金部34のスリットノズル34aに接触することにより口金部34の高さを計測できるようになっている。このギャップセンサ8は、センサ本体81とセンサ本体81から一方向に伸縮可能な接触軸82とを備えており、センサ本体81から接触軸82が延伸し、接触軸82が計測対象物に接触することにより、高さ位置を計測できるようになっている。具体的には、ステージ21の表面に石製ブロックを置き、この石製ブロックに接触軸82を当接させる。これによりステージ21の表面高さが計測され、この状態をギャップセンサ8の原点に設定される。そして、石製ブロックを取り去った後、搭載された口金部34を移動させてスリットノズル34aがギャップセンサ8上に位置する状態で停止させ、スリットノズル34aに接触軸82を当接させることにより、口金部34の高さを計測できる。すなわち、このギャップセンサ8により、ステージ21とスリットノズル34aとの距離が計測される。また、これらギャップセンサ8は、制御装置と接続されており、ギャップセンサ8で計測された計測値が制御装置に入力されるようになっている。
【0023】
また、塗布ユニット30は、基板10上に塗布液を吐出して塗布膜を形成するものである。この塗布ユニット30は、
図1,
図2に示すように、基台2と連結される脚部31とY軸方向に延びる口金部34とを有しており、基台2上をY軸方向に跨いだ状態でX軸方向に移動可能に取り付けられている。具体的には、基台2のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール22が設置されており、脚部31がこのレール22にスライド自在に取り付けられている。そして、脚部31にはリニアモータ33が取り付けられており、このリニアモータ33を駆動制御することにより、塗布ユニット30がX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0024】
また、塗布ユニット30の脚部31には、
図2に示すように、塗布液を塗布する口金部34が取り付けられている。具体的には、この脚部31にはZ軸方向に延びるレール37と、このレール37に沿ってスライドするスライダ35が設けられており、これらのスライダ35と口金部34とが連結されている。そして、スライダ35にはサーボモータにより駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータを駆動制御することにより、スライダ35がZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。すなわち、口金部34が、ステージ21に保持された基板10に対して接離可能に支持されている。
【0025】
また、口金部34は、塗布液を吐出して基板10上に塗布膜を形成するものである。この口金部34は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、塗布ユニット30の移動方向とほぼ直交するように設けられている。この口金部34は、塗布液を吐出するスリットノズル34aを有している。スリットノズル34aは長手方向に延びる形状を有しており、スリットノズル34aの先端部分には大気に開口する吐出口が長手方向に延びるように形成されている。そして、口金部34に供給された塗布液に圧力をかけるとスリットノズル34aの吐出口から塗布液が長手方向に亘って一様に吐出されるようになっている。したがって、このスリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30をX軸方向に走行させることにより、スリットノズル34aの長手方向に亘って基板10上に一定厚さの塗布膜が形成されるようになっている。なお、塗布液を塗布するために、スリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30を移動させる動作を本実施形態では、塗布動作と呼ぶことにする。
【0026】
また、
図3,
図4に示すように、口金部34は、塗布液を貯留するマニホールド41と、このマニホールド41に塗布液を供給する塗布液供給孔42と、マニホールド41に存在する気泡や空気溜まりなどのエアを排出させるエアベント孔43とを有している。ここで、
図3は、口金部と廃液タンクとを概略的に示す図、
図4は、口金部34のマニホールド41を示す図である。なお、エアベント孔43は、紙面に向かって左側にあるエアベント孔43を特にエアベント孔43Lと称し、右側にあるエアベント孔43を特にエアベント孔43Rと称し、それぞれ区別なく指す場合は、単にエアベント孔43と称す。
【0027】
マニホールド41は、供給された塗布液を一時的に貯留する部分であり、本実施形態では、口金部34の内部に長手方向に沿って形成されている。具体的には、口金部34の長手方向に沿って延びる形状を有しており、長手方向中央部分の中央部41aで最も高く、長手方向両端部分の側端部41bで低くなるように形成されており、下側部分はスリットノズル34aの吐出口に連通されている。中央部41aの頂上部分は、エア抜き穴44と連通しており、そのエア抜き穴44の下側部分には塗布液供給孔42が連通されている。この塗布液供給孔42は、塗布液を供給するポンプ51と供給配管55で連結されており、ポンプ51を作動させて塗布液を供給すると、塗布液供給孔42から塗布液がマニホールド41に供給される。そして、マニホールド41内のエアα及び、供給された塗布液中のエアαは、浮力によって中央部41aに集まり、エア抜き穴44を通じて排出されるようになっている。
【0028】
また、エア抜き穴44は、エア抜き配管52に接続されており、このエア抜き配管52は廃液タンク60に接続されている。すなわち、マニホールド41のエアα(エアαが混入した塗布液を含む)は、エア抜き穴44を通じてエア抜き配管52を通り、この廃液タンク60に排出される。この配管には、エア抜きバルブ52aが設けられている。塗布動作は、このエア抜きバルブ52aを閉めた状態で行われることにより、塗布動作中には供給された塗布液がエア抜き穴44を通じて漏れることがないようになっている。
【0029】
廃液タンク60は、マニホールド41のエアα及び、塗布液に気泡として混在するエアαを貯めるものである。この廃液タンク60は、本実施形態では、塗布装置に1つだけ設けられており、塗布ユニット30の脚部31に設けられている(
図2参照)。この廃液タンク60には、口金部34と接続されるエア抜き配管52、後述する廃液配管53が接続されており、マニホールド41から排出されるエアα及びエアαを含む塗布液が廃液タンク60に溜められるようになっている。また、廃液タンク60には、液面センサ(不図示)が取付けられており、廃液が満量になったことを検知し、装置外部に設置された廃液ポンプ(不図示)により廃液タンク60から装置外部へ廃液を排出するようになっている。なお、廃液タンク60は、脚部31に取付けられているため、塗布ユニット30が移動しても口金部34と廃液タンク60との距離は変わらない。したがって、廃液タンク60に接続されるエア抜き配管52、廃液配管53は一定の長さに保たれている。
【0030】
エアベント孔43は、エアベント処理においてマニホールド41内のエアαを排出するためのものであり、口金部34の長手方向両端部に1つずつ計2つ設けられている。ここで、エアベント処理とは、基板10上にエアαがスリットノズル34aから吐出されることのないようにマニホールド41のエアαを除去する処理であり、通常、塗布動作が行われる前に行われる。具体的には、マニホールド41を洗浄した後、又は、口金部34を新しい口金部34に交換した後、塗布液供給孔42から塗布液を供給することによって行われる。すなわち、塗布液供給孔42から塗布液を供給することにより、マニホールド41のエアαをスリットノズル34a、エア抜き穴44、エアベント孔43から押し出すことにより、マニホールド41からエアαを排出する。
【0031】
このエアベント孔43は、マニホールド41に連通して形成されており、廃液配管53に接続されている。これにより、エアベント処理の際に、マニホールド41のエアα及びエアαを含む塗布液がエアベント孔43から廃液配管53を通じて廃液タンク60に排出されるようになっている。これらの廃液配管53は、共通の廃液タンク60に接続されており、いずれのエアベント孔43から排出されたエアα及びエアαを含む塗布液であっても、廃液タンク60に排出される。この廃液配管53は、口金部34に沿って延びる平行部分531と、これに直交する垂直部分532とを有している。すなわち、エアベント孔43に接続される側の反対側の平行部分531には、90度方向を変える継ぎ手54が連結されており、この継ぎ手54に連結される垂直部分532が廃液タンク60に接続されている。これにより、エアベント孔43を出たエアα及びエアαを含む塗布液は、平行部分531及び垂直部分532を経由し、廃液タンク60に排出される。
【0032】
また、廃液配管53は、その廃液配管53で生じる圧力損失が等しくなるように設定されている。具体的には、廃液配管53の配管径、配管長さを調節することにより圧力損失が設定されている。すなわち、
図3に示すように、廃液配管53は、その平行部分531は同径のものが使用されている(
図3では、廃液配管53を示す線の太さが配管内径を示している)。
【0033】
廃液タンク60は、エアベント孔43Rの近くに設置されているため、廃液配管53の平行部分531は、エアベント孔43Lに連結されるものに比べてエアベント孔43Rに接続されるものの方が短い。そのため、この平行部分531のみを比較した場合は、圧力損失がエアベント孔43Lの方が大きい。一方、垂直部分532を比較した場合、エアベント孔43Rに接続される廃液配管53は、エアベント孔43Lに接続される廃液配管53よりも小径に形成されている。すなわち、垂直部分532の圧力損失は、エアベント孔43Rに連結される廃液配管53の方が大きくなるように設定されている。すなわち、廃液タンク60を共通にすることでエアベント孔43に接続される廃液配管53の長さが異なるため、廃液配管53の一部を小径に形成することにより、廃液配管53全体に生じる圧力損失がいずれの廃液配管53においても等しくなるように設定されている。本実施形態では、エアベント孔43に接続される廃液配管53の平行部分531は同径の配管を使用し、垂直部分532のみ径の異なる廃液配管53を使用して圧力損失を調節している。このように、エアベント孔43に直接接続する廃液配管53の平行部分531を同径にすることで、口金部34の製作コストを下げることができるとともに、垂直部分532の径を変化させる方が圧力損失の調節が行いやすい。なお、圧力損失を等しく設定するとは、完全に一致させる場合のみではなく、いずれのエアベント孔43からもエアαがスムーズに排出され、排出の度合いが同程度になるように設定されていればよい。
【0034】
さらに、本実施形態では、これらすべての廃液配管53で生じる圧力損失の合計値が、スリットノズル34aからエアαを吸い込まない範囲で、スリットノズル34aで生じる圧力損失よりも小さくなるように設定されている。これにより、エアベント処理の際、供給した塗布液をスリットノズル34aからムダに排出される量を抑えることができる。すなわち、エアベント処理の際、塗布液供給孔42から塗布液を供給すると、マニホールド41に存在するエアαはスリットノズル34a、エア抜き穴44及びエアベント孔43から排出され、マニホールド41に塗布液が貯留されると、エアαが浮力により上昇し、エアα及びエアαを含む塗布液がエア抜き穴44及びエアベント孔43から排出される。この状態で、すべての廃液配管53で生じる圧力損失の合計値よりスリットノズル34aで生じる圧力損失値が小さくなるほど、エアベント孔43から排出されるよりも、スリットノズル34aから排出されやすくなる。しかし、エアαは浮力で上昇してしまっているため、排出されやすいスリットノズル34aからは、エアαの混入しない塗布液が大量に排出されてしまう。したがって、廃液配管53で生じる圧力損失の合計値が、スリットノズル34aからエアαを吸い込まない範囲で、スリットノズル34aで生じる圧力損失よりも小さく設定することにより、スリットノズル34aから排出されにくくなり、エアαが浮力により上昇してもスリットノズル34aからの排出が抑えられ、塗布液がムダに捨てられるのを防止することができる。
【0035】
また、ここでいうスリットノズル34aからのエアα吸い込みとは、後述の廃液バルブ53aが開かれた全ての廃液配管53の圧力損失の合計値が、スリットノズル34aで生じる圧力損失に比べ、著しく小さい場合に、スリットノズル34aからエアαを吸い込んで、廃液配管53へ液が流れる現象のことで、通常は塗布液供給孔42より供給された塗液は圧損の比率により、スリットノズル34aと廃液配管53へ割り振られるが、この場合、塗布液供給孔42より供給された塗布液よりも多く廃液配管53へ液が流れる。すなわち、スリットノズル34aからエアαを吸い込まない範囲とは、塗布液供給孔42から供給された塗布液が、スリットノズル34aからエアαを吸い込まない程度に、最大限廃液配管53にエアα及びエアαを含む塗布液が排出される状態をいう。
【0036】
なお、この廃液配管53には、廃液バルブ53aが設けられている。塗布動作中は、この廃液バルブ53aを閉めた状態で行われることにより、塗布動作中には供給された塗布液がエアベント孔43を通じて漏れることがないようになっている。
【0037】
また、口金部34は載せ替え可能に構成されており、複数種類の口金部34を搭載することができる。これらの口金部34は、外形寸法が共通に設計されており、スリットノズル34aの長手方向寸法を変えて設計されている。これらの口金部34は、製品に必要な塗布幅に合わせて口金部34が選択されて搭載される。
【0038】
ここで、
図5は、口金部34の図であり、
図5(a)は口金部34を長手方向から見た図であり、
図5(b)は口金部34を側面から見た図である。
図5に示すように、口金部34は、口金本体341とスリットノズル34aを有しており、口金本体341に形成されたマニホールド41に貯留された塗布液に圧力をかけることにより、スリットノズル34aの吐出口から吐出されるようになっている。塗布幅は、スリットノズル34aの吐出口の幅寸法で決定され、製品の種類に応じて吐出口幅が設定されている。また、スリットノズル34aの長手方向端部には、切欠部34bが形成されている。
【0039】
この切欠部34bは、塗布幅の精度を出すために設けられており、スリットノズル34aの吐出口の位置よりも口金本体341側に切り取られることによって形成されている。すなわち、切欠部34bが設けられていない場合、スリットノズル34aの吐出口から吐出された塗布液は、スリットノズル34aの長手方向端部と基板10との隙間に回り込んで塗れ広がりが生じ、基板10上に形成された塗布膜が設計通りの塗布幅に形成されない問題が生じる場合がある。それを回避するため、吐出口の位置よりも口金本体341側に切り込まれる切欠部34bを設け、塗布液がスリットノズル34aの長手方向端部と基板10との隙間に回り込むのを防止することができる。この切欠部34bは、本実施形態では、スリットノズル34aの吐出口面と平行に形成されている。すなわち、吐出口幅に応じてスリットノズル34aの吐出口面と切欠部34bとの高さ方向における位置関係が精度よく形成されている。本実施形態では、吐出口幅が短くなるにしたがって、吐出口面と切欠部34bとの距離(切り上げ量)が大きくなるように形成されている。ここで、
図6は、スリットノズル34aの長さの異なる口金部34を上下方向に配置し、口金部34とステージ21のギャップセンサ8との関係を示す図であり、上から下に行くに従ってスリットノズル34aの長さが短い口金部34を配置している。
図6からわかるように、スリットノズル34aの長さが短くなるほど、切り上げ量は大きくなっている(切り上げ量a<切り上げ量b)。
【0040】
この切り上げ量は、スリットノズル34aの長さに応じて設定されており、切り上げ量を計測することにより塗布装置に現在搭載されている口金部34の種別が判別できるようになっている。本実施形態では、ステージ21に設けられたギャップセンサ8で切り上げ量を計測することにより現在搭載されている口金部34のタイプが判別できるようになっている。
【0041】
具体的には、ギャップセンサ8は、切欠部34bに接触する位置に設けられており、口金部34が搭載された状態で切欠部34bの高さ位置を測定することで口金部34のタイプが判別される。なお、スリットノズル34aが最も長いタイプの口金部34(最大塗布幅口金部34)におけるスリットノズル34aの長手方向端部位置に接触するように設けられている。すなわち、スリットノズル34aが最大塗布幅口金部34については吐出口面に接触し、スリットノズル34aがこれより短いタイプの口金部34については切欠部34bに接触する位置に設けられている。そして、制御装置には口金部34のタイプと切欠部34bの高さ位置のデータ(ステージ21を基準とした高さ位置データ)が関連づけて記憶されている。一方、口金部34は、載せ替え動作を行う際、スライダ35の位置が交換位置で停止した状態が保たれる。具体的には、直前に搭載していた口金部34のスリットノズル34aの高さ位置情報が制御装置に記憶されている。そのため、口金部34の搭載位置は口金部34の交換前後でほぼ変化しない。そして、この各種口金部34に設けられる切欠部34bの切欠量は、口金を交換する際の搭載位置の微少なズレ量や、各種口金の製作誤差を考慮し、これら微小なズレ量や各種口金の製作誤差に影響を受けない切欠量である。したがって、搭載された口金部34の切欠部34bの高さ位置を計測することにより、計測値が制御装置に入力され、その計測値を基に搭載された口金部34が判別できるようになっている。なお、最大塗布幅口金部34については、吐出口面の高さ位置を計測することにより判別される。
【0042】
また、口金部34は、上述したようにエアベント孔43が長手方向両端部に2つ設けられており、それぞれの口金部34において共通の位置に形成されている。具体的には、
図7に示すように、エアベント孔43はマニホールド41の長手方向両端位置に設けられており、スリットノズル34aの寸法が短い口金部34については、マニホールド41とエアベント孔43を連結する延長流路41aが設けられており、この延長流路41aによりすべての口金部34のエアベント孔43の位置が共通の位置に配置されるようになっている。これにより、口金部34を載せ替えた場合に、廃液配管53の連結に再施工、交換作業を不要にすることができる。
【0043】
この延長流路41aは、マニホールド41の径よりも小径になるように形成されている。すなわち、延長流路41aが必要な口金部34では、延長流路41aが不要な口金部34(最大塗布幅口金部34)に比べてスリットノズル34aの寸法が小さいことから、スリットノズル34aに発生する圧力損失は増大する。そのため、スリットノズル34aの寸法が小さくなるにしたがってエアベント孔43に流れやすくなるという現象が発生する。したがって、延長流路41aの径を小さくして圧力損失を高めることにより、すべての廃液配管53の圧力損失の合計値は、スリットノズル34aからエアαを吸い込まない範囲で、スリットノズル34aの圧力損失よりも小さくなるように設定されている。これにより、エアベント処理に使用する塗布液の量を抑えることができる。すなわち、エアベント処理を行うことによりマニホールド41が塗布液で満たされると、エアαが浮上しスリットノズル34a付近には残存するエアαが少なくなるため、スリットノズル34aから排出される塗布液にはほとんどエアが含まれず、塗布液がそのまま排出されるという捨て打ち状態になる。そこで、すべての廃液配管53の圧力損失の合計値は、スリットノズル34aからエアαを吸い込まない範囲で、スリットノズル34aの圧力損失よりも小さく設定されていることにより、マニホールド41のエアα及びエアαを含む塗布液が廃液配管53から流れやすくなり、すべての廃液配管53から排出されるエアαを含む塗布液の量が、スリットノズル34aを通じて排出されるエアαを含む塗布液の量よりも多量になるため、エアを含む塗布液が廃液配管53を通じて積極的に排出される。したがって、スリットノズル34aからムダに排出される塗布液の量(エアαを含まない塗布液の量)を抑えられ、エアベント処理に使用する塗布液の量を抑えることができる。
【0044】
また、この塗布装置には制御装置(不図示)が設けられている。この制御装置は、塗布装置の動作を統括的に制御するものであり、各サーボモータ、リニアモータ33を駆動制御する。そして、制御装置には、記憶装置が備えられており、この記憶装置に各種必要なデータが記憶されている。具体的には、口金部34の種別に応じた切欠量、各塗布幅に応じた塗布ユニット30の移動速度、塗布量、ポンプ吐出速度等の塗布条件(塗布レシピ)が記録されている。
【0045】
次に、本実施形態の塗布装置における口金認識方法について、
図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
まず、ステップS1において、口金部34の交換を行う。具体的には、これから生産する製品に対応した塗布幅で塗布できる口金部34を選定し、現在、塗布装置に搭載されている口金部34を選定された口金部34に載せ替える。本実施形態では、現在搭載されている口金部34が最大塗布幅口金部34であり、この最大塗布幅口金部34をスリットノズル34aの短い口金部34(例えば最小塗布幅口金部34)に載せ替える場合について説明する。この載せ替え動作の際、口金部34に連結されるスライダー35はロックされるため、口金部34の載せ替え動作で口金部34のZ方向位置はほぼ変化しないようになっている。
【0047】
次に、口金部34の種別を入力する(ステップS2)。具体的には、生産する基板10の塗布幅に応じた口金部34、例えば、最小塗布幅口金部34を入力する。ここで入力された口金部34の種別情報は、制御装置で一時的に記憶される。
【0048】
次に、ノズルギャップの測定が行われる(ステップS3)。すなわち、搭載された口金部34のスリットノズル34aのZ方向位置が測定される。具体的には、塗布ユニット30を移動させてスリットノズル34がギャップセンサ8の接触軸82上に位置した状態で停止させる。そして、センサ本体81から接触軸82を延伸させてスリットノズル34aに接触軸82を接触させることによりスリットノズル34aのZ方向位置を測定する。ここで、搭載されている口金部34が最小塗布幅口金部34であるため、ギャップセンサ8の接触軸82は、スリットノズル34aではなく、切欠部34bに接触する。すなわち、ステージ21の表面から切欠部34bまでの高さが測定される。
【0049】
次に、口金部34の種別が判定される(ステップS4)。具体的には、ギャップセンサ8による測定値が制御装置に入力され、制御装置に記憶されたデータから、現在搭載されている口金部34の種別が判別される。本実施形態では、最小塗布幅口金部34と判別される。そして、この判別された情報と、ステップS2で入力された情報とが一致しているか否かが判定される。すなわち、口金部34の種別を入力した作業者の意思と塗布ユニット30に搭載された口金部34とが一致している場合には、ステップS4においてYESの方向に進み、塗布レシピの変更が行われ(ステップS5)、各塗布幅に応じた塗布ユニットの移動速度、塗布量、ポンプ吐出速度等の塗布条件が最小塗布幅口金部34に応じた塗布条件に変更される。
【0050】
次にエアベント処理が行われる(ステップS6)。このエアベント処理によりマニホールド41のエアαをスムーズに排出させることができる。具体的には、塗布液供給孔42から塗布液を供給することにより、マニホールド41に塗布液が満たされると共に、すでに存在していた空気溜まりがスリットノズル34a、エア抜き穴44、エアベント孔43から押し出されることにより排出される。このとき、スリットノズル34a、エア抜き穴44、エアベント孔43からは、エアαのみならず、エアαを含む塗布液も同時に排出される。そして、マニホールド41にほぼ塗布液が満たされた状態になると、空気溜まりはほぼなくなるものの、満たされた塗布液中には気泡などのエアαが存在しているため、塗布液供給孔42から塗布液を供給し続けることにより、残存している気泡を押し出して排出する。すなわち、残存しているエアαは浮力により上昇し、主にエア抜き穴44から排出される。そして、エア抜き穴44に移動しないエアαについては、塗布液の供給圧でエアベント孔43から押し出して排出される。本実施形態では、エアベント孔43に連結されるそれぞれの廃液配管53の圧力損失が、ほぼ等しく設定されているため、塗布液供給孔42から供給される塗布液の供給圧がエアベント孔43から廃液配管53に抜ける方向に伝わり、エア抜き穴44から排出されきれないエアαがエアベント孔43を通じてエアαを含む塗布液が廃液タンク60に排出される。
【0051】
このエアベント処理が終了すると、塗布動作を開始させ塗布幅変更後の製品の生産が開始される(ステップS7)。
【0052】
なお、ステップS4において、口金部34の種別が異なる場合、すなわち、切欠部34bを測定することにより判別された情報と、ステップS2で入力された情報とが一致していない場合には、ステップS4においてNOの方向に進み、口金部34の種別判定エラーとなりアラームにより作業者に知らせるようになっている。
【0053】
スリットノズル34aの長さが異なる複数種類の口金部34が載せ替えることによりスリットノズル34aの長さが異なる口金部自体を変更することができるため、スリットノズル34aの吐出口幅を調節する従来の塗布装置に比べて、塗布精度を落とすことなく容易に塗布幅を変更することができる。そして、スリットノズル34aの長手方向端部に設けられた切欠部34bをギャップセンサ8で計測することにより、現在搭載されている口金部34の種別を判別できるため、この情報を基にして塗布条件の設定を行うことができる。したがって、従来の塗布装置に比べて塗布条件変更ミスにより不良基板10が生産され歩留まりが悪くなるというという問題を抑えることができる。
【0054】
上記実施形態では、口金部34の載せ替え動作の際、スライダ35が固定されるため、。すなわち、制御装置に記憶されているスリットノズル34aのZ方向位置の情報に基づき、ステージ21から切欠部34bの高さ位置により口金部34の種別を判定する例について説明したが、切欠部34bの切欠量から口金部34の種別を判定するものであってもよい。例えば、口金部34にスリットノズル34aよりも前方側に、スリットノズル34aと異物との衝突を避けるためのガードバー34cが設けられている場合、そのガードバーをスリットノズル34の先端位置と同じ位置に設定しておき、口金部34を載せ替えた際に、まず、ギャップセンサ8によりガードバー34cの高さ位置を測定し、次いで、塗布ユニットを移動させて切欠部34bを測定することにより、ガードバー34cの高さ位置と切欠部34bの高さ位置から、切欠部34bの切欠量を算出し、この切欠部34bの切欠量から口金部34の種別を判定するものであってもよい。
【0055】
この場合、なんらかの事情により装置電源を切った場合や、制御装置に記憶されているZ方向位置の情報が消失した場合にでも、ガードバー34cと切欠部34bの切欠量を算出することで、装置の状況によらず口金部34の種別を正確に判別することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、スリットノズル34aの長さが短くなるにしたがって、切欠部34bの切欠量を大きくする例について説明したが、スリットノズル34aの長さが長くなるに従って、切欠部34bの切欠量を大きくするものであってもよい。ただ、上記実施形態のように、スリットノズル34aの長さが長くなる場合に切欠量が小さくなる構成の方が、スリットノズル34aの最大長の場合に、切欠部34bを設けず、ギャップセンサ8による測定箇所を吐出面に設定できるため、長手方向が同じ寸法の口金部34であってもスリットノズル34aの長手方向寸法を大きくとれる点で好ましい。
【0057】
なお、上記実施形態では、最大塗布幅口金部34については、吐出面の高さ位置を計測することにより判別される例について説明したが、最大塗布幅口金部34であっても、切欠部34bを設け、この切欠部34bをギャップセンサ8で測定することにより、口金部34の種別を判定するものであってもよい。
【0058】
この場合、常に液が吐出されない部分を測定できる為、スリットノズル34aに接触するギャップセンサ8の接触軸82が塗布液で汚染されない。これにより附着した塗布液が固化することによる、高さ測定精度の悪化や異物がスリットノズル34aに再付着することを回避することができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、ギャップセンサ8の接触軸82がスリットノズル34aに接触する場合について説明したが、ギャップセンサ8はレーザや超音波による非接触センサでスリットノズル34aのZ方向位置を測定するものであってもよい。