(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、分散性や加工性に優れたゴムの製造方法として、ゴムラテックスとカーボンブラックやシリカ等の充填剤スラリーとを混合し、酸等の凝固剤によりゴムと充填剤の混合物を凝固させた、いわゆるウェットマスターバッチを用いる方法が用いられている。この方法で得られたウェットマスターバッチは、混練ロール等を用いて、ゴム成分に充填剤を他添加剤とともに添加して混練される、いわゆるドライ混練もしくは乾式混練に比べて、ゴム成分に対する充填剤の分散性に優れ、加硫後のゴム特性(破断強度、耐摩耗性等)に優れるという利点を有する。
【0003】
しかしウェットマスターバッチの製造工程において、ゴムラテックスと充填剤スラリーとの混合液を凝固させて得られた凝固物は、さらに個液分離して洗浄し、脱水して乾燥する工程が必要であり、全体として工程数が多く、生産効率が低いという問題があった。また、この方法でシリカ含有ウェットマスターバッチを製造した場合、シリカ表面には親水性のシラノール基(Si−OH)を有しているためゴム成分中に取り込まれ難く、シリカの表面処理(疎水化)や多量の界面活性剤の添加などの処置が必要であった。
【0004】
本発明者らは、シリカ含有ウェットマスターバッチの製造において、混合液を凝固させずに高温高速気流式乾燥機を使用して乾燥を行うことにより、シリカのゴム成分への取り込み性に優れ、且つ粒状態等が良好なシリカ含有ウェットマスターバッチが効率よく得られることを見出した。
【0005】
高温高速気流式乾燥機は、ジェットドライヤ、フラッシュジェットドライヤ、フラッシュドライヤ等と呼ばれるものであり、スラリー等の乾燥に従来から使用されているものであり、例えば特許文献1には、乾燥単糸架橋セルロースパルプ繊維の製造のためにジェットドライヤを使用することが開示されている。また、特許文献2には、沈降ケイ酸のケークを乾燥させる手段の一つとしてジェットドライヤを使用することが開示されている。
【0006】
しかしながら、シリカ高充填のマスターバッチの製造において、高温高速気流式乾燥機を使用することについて記載された文献はない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明のシリカ含有ウェットマスターバッチの製造方法は、上記の通り、(1)シリカ分散液とポリマーラテックスとから混合液を調製する工程、及び(2)混合液を凝固させずに高温高速気流式乾燥機で乾燥させる工程とを少なくとも有するものである。各工程について、以下に説明する。
【0018】
(1)シリカ分散液とポリマーラテックスとの混合液の調製
シリカ分散液としては、シリカを水等の分散媒に分散させたシリカスラリーが使用できる。また、コロイダルシリカも、シリカスラリーに替えて又はシリカスラリーと共に、シリカ分散液として使用することができる。
【0019】
使用するシリカは特に限定されないが、例としては、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイルミニウム等が挙げられる。なお、シリカ表面処理や界面活性剤の添加等は特に必要としない。
【0020】
シリカスラリー濃度(スラリー中のシリカの含有量)は5〜40質量%が好ましく、30〜40質量%がより好ましい。40質量%を超えると粘度が上昇し、液流れ性に問題が生じ、分散処理が困難になるおそれがある。5質量%未満では効果的には問題はないが、生産性が劣り、経済的に不利である。また、コロイダルシリカを使用する場合の、そのシリカ濃度はやはり生産性の面から高濃度タイプが好ましい。
【0021】
シリカスラリーを得るための分散操作には、公知の各種分散方法や装置を特に限定なく用いることができ、例としてはローターステーター型分散装置が挙げられる。
【0022】
上記により得られたシリカ分散液とポリマーラテックスを混合して、次の工程で高温高速気流式乾燥機に供する混合液を製造する。
【0023】
ポリマーラテックスは、合成ゴムラテックス、天然ゴム(NR)ラテックスのいずれでもよい。合成ゴムラテックスは特に限定されるものではないが、乾燥の容易さや、得られるマスターバッチ状態等の点からスチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックスが好ましい。
【0024】
混合液の固形分(有効成分)濃度は10〜60質量%が好ましく、乾燥効率を上げるためには30〜60質量%がより好ましい。この固形分濃度が60質量%を超えると粘度上昇に伴いラテックスとシリカスラリーの液混合性が低下し、シリカの分散性悪化に繋がる。一方、10質量%未満では生産効率が低下し、経済的に不利となる。固形分濃度が60質量%を超える場合は、水等で所望の濃度まで希釈することが好ましい。
【0025】
噴霧乾燥機(スプレードライヤ)を使用した場合は、固形分濃度が30質量%では吐出口詰まり等が発生するが、本発明では60質量%でも処理可能であるため、生産効率を大幅に向上させることができる。また、各成分を原液のまま希釈せずに使用することができるという利点も得られる。
【0026】
(2)混合液の高温高速気流乾燥
本工程では、上記混合液を凝固させずに、そのまま高温高速気流式乾燥機により乾燥させる。
【0027】
本発明で使用する高温高速気流式乾燥機は特に限定されず、通常、ジェットドライヤ、フラッシュジェットドライヤ、又はフラッシュドライヤ等と呼ばれる公知の装置を使用することができる。
【0028】
図1に基づいて高温高速気流式乾燥機の一例の概略を説明する。
図1に示すように、高温高速気流式乾燥機Aは、管状でその内部を気流が循環する乾燥室(ドライングチャンバー)2、この乾燥室2内に未乾燥物を導入する未乾燥物導入口1、乾燥物と未乾燥物とを分離する分級部3、乾燥物の回収口4、高温気流の導入口5を有する。
【0029】
本装置においては、ブロワーにより発生した圧縮空気がヒーターにより所定の温度まで加熱され、図中に矢印で示した方向に、高温気流導入口5を経て乾燥室2内に超高速で吐出される。乾燥対象物は、その状態によりスクリューフィーダー又はスラリーポンプ等により、導入口1から定量的に乾燥室2内に導入され、高温高速気流により微分散化され、乾燥が行われる。乾燥された粉体は乾燥室2内を矢印の方向に空気輸送され、乾燥室2上部に取り付けられた分級部3で乾燥物と未乾燥物に分離され、乾燥物のみが乾燥物回収口4を経て、サイクロンやバグフィルターで回収される。
【0030】
乾燥装置の温度は、入口温度(未乾燥物導入口付近の温度)は180〜250℃が好ましい。180℃未満ではマスターバッチ水分率を十分低減させるのが困難になり、250℃を超えるとゴムの劣化が懸念されるためである。また出口温度(乾燥物回収口付近の温度)は120℃以上に保持されていることが好ましい。120℃未満ではマスターバッチ水分率を十分低減させるのが困難になる。
【0031】
なお、乾燥室内の風量はその乾燥室の容積等により変わるので、その装置に適合する風量を適宜選択すればよい。乾燥室内の風圧も特に限定されず、その装置に適合する風圧を適宜選択すればよいが、通常は10〜50kPa程度である。
【0032】
本発明では、上記のようにSBRラテックス及びシリカ分散液を含む混合液を高温高速気流乾燥することにより、粒状態等の良好なシリカ高充填のマスターバッチが極めて効率的に得られる。
【0033】
すなわち、従来の凝固法を用いた場合の、混合、凝固、固液分離、洗浄、脱水、乾燥という工程を踏む製造方法と比べて、工程数を大幅に減らすことが可能である。
【0034】
また、噴霧乾燥機(スプレードライヤ)を使用した場合と比較しても、噴霧乾燥では乾燥のために液滴サイズを小さく(霧状)して装置内に吐出する必要があるが、高温高速気流乾燥では高速で循環している熱風中に液体を投入することにより液が微細化するため、あえて霧状にする必要がない。従って、上記の通り、高濃度混合液も問題なく処理可能なので、生産効率の点で大幅に向上し、よってコストも低減でき、また各成分を原液のまま希釈せずに使用することができるという利点も得られる。
【0035】
また、高温高速気流乾燥では上記混合液から瞬時に水分のみ除去するため、シリカの表面処理(疎水化)や多量の界面活性剤の添加などが必要なく、ほぼ理論値通りのシリカ含有量のマスターバッチが得られるという利点もある。
【0036】
本発明に係るシリカ含有ウェットマスターバッチには、本発明の目的を離れない範囲であれば、上記各成分以外に通常ゴム組成物に配合される亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、WAX、加硫剤、加硫促進剤などの配合薬品等の添加剤を配合することができる。
【0037】
なお、上記シリカ分散液、ポリマーラテックス、その他の添加物は、混合液とせずに、定量的に個別に装置に導入することによっても、目的とするマスターバッチが得られる。
【0038】
以上の製造方法により得られるシリカ含有ウェットマスターバッチは、例えばタイヤ用等の加硫ゴム組成物の配合成分として好適に用いることができ、そのゴム組成物を、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、目的とするゴム製品を形成することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下で示す配合割合は、特にことわらない限り質量基準(「質量部」、「質量%」等)とする。
【0040】
[実施例・比較例]
下記表1に示す配合(固形分換算)に従い、シリカ分散液とラテックスとから混合液を調製し、高温高速気流乾燥の入口温度を表に示した温度に調整し、混合液を乾燥機に吐出(又は噴霧)して乾燥させ、乾燥サンプルを回収した。表1中の各配合物の詳細、操作条件等は以下の通りである。
【0041】
<SBRラテックス>
JSR株式会社製 「ローデックス」
【0042】
<シリカスラリー>
シリカ:東ソーシリカ株式会社製 「ニップシールAQ」
シリカスラリー濃度:40.0質量%
分散装置:ローターステーター型分散装置
<コロイダルシリカ>
日産化学工業株式会社製 「スノーテックス50」
コロイダルシリカ濃度:48.0質量%
【0043】
<混合液の調製>
上記シリカ分散液とポリマーラテックス、各有効成分が表1に示した割合になるように希釈調製後、プロペラ羽根で撹拌した。
【0044】
<高温高速気流乾燥>
上記混合液を表1に示した温度に設定した高温高速気流乾燥機(セイシン企業株式会社製「フラッシュジェットドライヤ」)又は噴霧乾燥機(ヤマト科学株式会社製「スプレードライヤ」)で乾燥させた。
【0045】
乾燥操作中の状態の観察、乾燥時間の測定等を行い、かつ得られた各マスターバッチについて、以下の通り、粒サイズの測定及びその評価を行った。詳細は以下の通りである。結果を表1に示す。
【0046】
<乾燥処理安定性>
液吐出状態:混合液の導入口(比較例では噴霧口)を目視で観察し、次の基準で判断した。
良好:特に問題なく安定して吐出している
詰り:熱により凝固したゴムが導入口(又は噴霧口)に堆積し、吐出困難となった
問題発生頻度:次の基準で判断した。
大:頻繁に問題が発生し、サンプリング困難である
中:わずかにサンプリングできる程度で、製造は困難である
小:たまに問題が発生する程度で、製造は可能である
無:問題なく安定して製造可能な状態である
【0047】
<乾燥時間>
混合液を乾燥機に投入(又は噴霧)してから乾燥マスターバッチが排出されるまでの時間を測定した。
【0048】
<製造効率>
比較例1(所定量の15%濃度溶液を処理するのに3秒かかるもの)を「1」とし、混合液の固形分濃度と乾燥時間とから求めた。例えば、同濃度で乾燥時間が1秒であれば、製造効率「3」とし、濃度が3倍で乾燥時間が1秒であれば、製造効率「9」とした。数値が大きいほど効率が高いことを示す。なお、この製造効率とは装置サイズによる処理能力等は加味しておらず、単に乾燥方式の違いによる効率差を表したものである。
【0049】
<マスターバッチの評価>
・粒サイズ:ふるい振とう器を使用して、以下の条件で調べた。
【0050】
装置:電磁式ふるい振とう器(レッチェ社製 AS200デジット)
ふるい:JIS Z 8801−1に準拠
ふるいの目開き:1.00mm、2.00mm、3.25mm、4.00mm、4.75mm、5.60mm
振とう条件:振幅2.00mm、時間3分間
判定条件:分級された試料の重量が、全投入量の90%以上を占める範囲を示した。例えば、投入した試料の90%以上が、目開き1.00mm、2.00mmの各ふるい上にそれぞれ残っている場合、「1〜3.25mm」とした。
【0051】
・状態
使用しにくい大きな塊状のものや微細なパウダー状ではないものを「良好」とした。
【0052】
<マスターバッチのシリカ含有率及び水分率>
熱重量測定器(TGA)にて測定した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示された結果から分かるように、実施例ではいずれもシリカ含有量70phr以上と高充填であり、粒サイズ、粒状態が良好であり、水分率の低いマスターバッチが1秒以下という極めて短時間で得られ、製造効率は比較例1の3〜11倍という高効率となった。
【0055】
これに対し、混合液の固形分濃度が15%でスプレードライヤで噴霧乾燥を行った比較例1,3は、マスターバッチ状態は良好であったが、乾燥に時間を要し、製造効率が劣っていた。また、固形分濃度30%の比較例2,4は、吐出口詰まりが頻繁に発生して、目的とするマスターバッチを得ることができなかった。