(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体に道路走行用のタイヤ車輪と軌道走行用の鉄輪とを備え、さらに後輪側又は前輪側のいずれか一方の左右鉄輪を車体フレームの下部に上下揺動自在に枢支した揺動フレームの左右各端部に取付けた軌陸作業車において、
前記車体フレームと前記揺動フレームとの間に、該揺動フレームを前記車体フレームに対して揺動不能にロックするための揺動ロック手段を設け、
前記揺動ロック手段は、前記揺動フレームの枢支部を挟んだ左右2位置において、それぞれ前記車体フレームの下面に下向き姿勢で直接取付けた単動式のロックシリンダと、前記揺動フレームの上面に設けられていて前記ロックシリンダの伸長時にシリンダ伸縮部の下面が当接する当接部材とを有し、
前記ロックシリンダのシリンダ伸縮部下面と前記揺動フレーム上面との間に、前記シリンダ伸縮部を上方に付勢するスプリングを前記当接部材の外側に巻付けた状態で設置し、
前記シリンダ伸縮部の下端に水平方向の外側に突出するはみ出し部を設け、
前記当接部材は前記揺動フレームの上面に後で固定される台座上に取付け、
前記はみ出し部と前記台座との間に、前記スプリングを圧縮させた状態で前記台座を位置保持させる位置保持手段を設けている、
ことを特徴とする軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置。
【背景技術】
【0002】
この種の軌陸作業車は、道路走行用のタイヤ車輪と軌道走行用の鉄輪とを備え、道路を走行する際(道路走行モード時)には各タイヤ車輪を接地させる(鉄輪は浮上している)一方、軌道を走行する際(軌道走行モード時)には各鉄輪を軌道上に載せる。尚、軌陸作業車の機種としては、車体上にブーム式作業台を搭載した高所作業車や、車体上にブーム式クレーンを搭載したクレーン作業車や、荷物運搬用のトラック等がある。
【0003】
ところで、軌道がカーブしている場所では左右のレールに高低差(ねじれ)が生じ、そのような左右レールに高低差(特にねじれ)がある場所を前後・左右の4つの鉄輪で走行させる際に、該4つの鉄輪が全て車体フレームに対して固定されていると、4つの鉄輪のうちの1つがレールから浮き上がり、脱線の虞れが生じる。
【0004】
そこで、軌道のカーブ場所においても、4つの鉄輪を常時左右のレール上に接触させた状態で走行させ得るようにするために、本件出願人は、
図8に示す軌陸作業車において
図9に示すように後輪側の左右の鉄輪32,32をシーソー状に揺動させ得るようにしたものを既に実施している。
【0005】
図8及び
図9に示す軌陸作業車では、車体フレーム11の後端寄り下面に左右向きの揺動フレーム4の長さ方向中間部を前後向きの支軸40で枢支して、揺動フレーム4が上下にシーソー状に揺動し得るように構成されている。
【0006】
そして、
図8及び
図9に示す軌陸作業車では、鉄輪による軌道走行時に、軌道がカーブしていて左右のレールR,Rに高低差(ねじれ)があっても、揺動フレーム4が上下に揺動自在(
図9に鎖線図示する符号4′及び4″)となっているので左右の後側鉄輪32,32がレールの高低差に追従し、左右の前側鉄輪31,31(
図8)及び左右の後側鉄輪32,32の4輪が常にレールR,R上に接触した状態で走行させることができるようになっている。
【0007】
他方、軌陸作業車を軌道上に停車させて作業機による高所作業を行う場合は、作業車転倒防止性能を高める観点から、後側鉄輪32,32を取付けている揺動フレーム4を揺動不能にロックしておくことが望ましい。
【0008】
ところで、公知の軌陸作業車については、左右の鉄輪32,32を取付けた揺動フレーム4を揺動不能にロックし得るようにしたものは見当たらないが、例えば実開昭62−155013号公報(特許文献1)に示される作業車(高所作業車)には、前後一方の車軸(駆動側の車軸)を上下に揺動する可動車軸とし、該可動車軸の揺動を車軸ロック機構でロックし得るようにしたものが開示されている。
【0009】
そして、この公知(特許文献1)の作業車では、車軸ロック機構として可動車軸の枢支部を挟んだ左右2位置にそれぞれロックシリンダを配置したものを採用している。この各ロックシリンダは、それぞれ復動式の油圧シリンダであって、そのシリンダロッドの先端部を車体フレームの外側面に枢着している一方、シリンダチューブの基端部を可動車軸の前側面に枢着して取付けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、軌陸作業車においては、例えば
図8及び
図9に示すように、タイヤ車輪12とは別に4つの鉄輪31,32を装備する必要があることから、車体フレーム11の下面側には通常の作業車に装備される構造物のほかに、軌道走行用に必要な各種構造物が取付けられているが、それらの軌道走行用の各種構造物(例えば揺動フレーム4の揺動ロック手段)はコンパクトに配置することが望まれる。
【0012】
ところが、例えば
図8及び
図9の軌陸作業車に、揺動フレーム4に対する揺動ロック手段を装備する場合において、左右一対のロックシリンダとして、例えば上記特許文献1に採用しているような復動式の油圧シリンダを使用し、さらにそのシリンダロッドの先端部を車体フレームの外側面に枢着している一方、シリンダチューブの基端部を可動車軸の前側面に枢着して取付けていると、該各ロックシリンダの取付のために広いスペースが必要になる。
【0013】
このように、軌陸作業車において、各ロックシリンダの取付のために広いスペースを確保しようとすると、車体側を大型化したり、付近にある他の構造物を小さくしたり配置変えしたりすることが必要となるが、そのいずれの場合も悪影響(不必要な大型化や他の構造物への影響)が生じることになる。
【0014】
そこで、本願発明は、車体フレームに対して揺動可能な揺動フレームの左右各端部に左右の鉄輪を取付けた軌陸作業車において、作業車を軌道上に停車させて行うオンレール作業時に揺動フレームの揺動を禁止できるようにするとともに、その揺動ロック手段をコンパクトに設置できるようにした、軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、タイヤ車輪による道路走行と鉄輪(前後・左右に少なくとも4つある)による軌道走行とが行えるようにした軌陸作業車において、左右の鉄輪(後側鉄輪)を揺動可能にしたり揺動不能にロックしたりすることができる鉄輪揺動ロック装置を対象にしている。又、本願各発明の名称は「軌陸作業車の鉄輪揺動ロック装置」であるが、冗長であるので以下の説明では本願各発明の名称を単に「鉄輪揺動ロック装置」と表現することがある。
【0016】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明で対象としている軌陸作業車は、車体に道路走行用のタイヤ車輪と軌道走行用の鉄輪とを備え、タイヤ車輪による道路走行モードと鉄輪による軌道走行モードとを選択して切り換え得るようにしたものである。
【0017】
ところで、この種の軌陸作業車は、車体フレーム上に伸縮ブーム式のクレーン作業機や伸縮ブーム式の高所作業機を搭載したものがあり、軌道上においても該クレーン作業機や高所作業機を使用して各種の作業が行われる。そして、各鉄輪を軌道(左右のレール)上に載せた状態で各種作業機を使用して作業を行う際には、作業車の転倒防止に関する制御が行われる。
【0018】
又、本願で使用される軌陸作業車は、作業車を各鉄輪により軌道上を走行させる際に、左右のレールの高低差(ねじれ)による鉄輪浮き上がり防止のために、後輪側又は前輪側のいずれか一方の左右鉄輪を車体フレームの下部に上下揺動自在に枢支した揺動フレームの左右各端部に取付けて、前後・左右の鉄輪が常に左右のレール上に接触した(載った)状態で走行させ得るようにしている。尚、上下に従動させるべき鉄輪は、一般に作業車の後輪側のものが適用されるが、前輪側のものであってもよい。
【0019】
このように、後輪側(又は前輪側)の左右鉄輪を揺動フレームの左右各端部に取付けた軌陸作業車では、鉄輪による軌道走行時に後輪側(又は前輪側)の左右鉄輪が上下に従動し得るので、左右のレールに高低差(ねじれ)があっても、従動可能な左右鉄輪が揺動フレームとともにシーソー状に従動することにより、全鉄輪が常にレール上に接触した状態で走行するようになる(全鉄輪がレールから浮き上がらないので脱線しない)。
【0020】
上記揺動フレームは、車体フレームの下面から所定間隔を隔てた下方位置において、該揺動フレームの左右長さの中間部を車体フレームの下面に前後向きの支軸(特許請求の範囲中の枢支部となる)で枢支して、該揺動フレームが車体フレームの下面側でシーソー状に揺動し得るように設置されている。
【0021】
ところで、このように後輪側(又は前輪側)の左右鉄輪を揺動フレームの各端部に取付けたものでは、揺動フレームが車体フレームに対して支軸部分の1点で支持されているだけなので、このままでは軌道上に載せられた作業車は、固定側の左右鉄輪の2点と揺動フレームの枢支部の1点との合計3点で支持されるようになる。このように作業車が3点で支持された状態では、作業車転倒防止性能に関する許容範囲が狭くなり、軌道上での作業機の限界範囲が狭くなる。
【0022】
そこで、本願請求項1の発明は、上記軌陸作業車に鉄輪揺動ロック装置を備えたものであるが、この請求項1の鉄輪揺動ロック装置は、車体フレームと揺動フレームとの間に、揺動フレームを車体フレームに対して揺動不能にロックするための揺動ロック手段を設けたものである。
【0023】
そして、この請求項1の鉄輪揺動ロック装置に使用される揺動ロック手段は、揺動フレームの枢支部を挟んだ左右2位置において、それぞれ車体フレームの下面に下向き姿勢で直接取付けた(いわゆる直付けした)単動式のロックシリンダと、揺動フレームの上面に設けられていてロックシリンダの伸長時にシリンダ伸縮部の下面が当接する当接部材とを有している。
【0024】
ところで、車体フレームと揺動フレーム間に介設される上記ロックシリンダは、車体フレームの外側面にピンで支持して下向きに設置することも考えられるが、該ロックシリンダが設置される付近の車体フレームの外側方には各種の構造物(例えば鉄輪、鉄輪上下動装置等)が設置される関係で、該ロックシリンダを車体フレーム下面(車体フレームの外側面からさほどはみ出さない位置を含む)の比較的邪魔にならない位置に設置することが望まれる。他方、車体フレーム下面と揺動フレーム上面との間の上下スペースは、軌道走行時に揺動フレームの下方に鉄輪が位置する関係で、さほど大きく取れないのが現状である。即ち、軌道走行時には揺動フレームの下方に鉄輪を降下させる高さスペースが必要であるので、揺動フレームの設置高さを所定高さまで高くする必要があり、他方、車体フレームの設置高さは機種によって定まっているので、必然的に車体フレーム下面と揺動フレーム上面との間の上下スペースは限られた高さになる。
【0025】
このような背景から、揺動ロック手段を車体フレーム下面と揺動フレーム上面間の上下スペース内に設置しようとすると、該揺動ロック手段全体を上下方向にかなりコンパクトに集約させる必要がある。尚、揺動フレームの許容(最大)傾動角度は、軌道のカーブ位置での左右レールの高低差に基づく最大傾斜角度よりやや大きい程度のものでよく、該揺動フレームの許容傾動角度内でのロックシリンダの伸長ストロークは比較的小さいものでよい。
【0026】
そこで、本願請求項1の鉄輪揺動ロック装置では、揺動ロック手段のロックシリンダとして単動式(伸長側にのみ油圧力が作用する形式)のものを採用し、且つ該ロックシリンダを車体フレーム下面に下向き姿勢で直接取付けている(いわゆる直付けしている)ことで、該ロックシリンダを車体フレーム下面と揺動フレーム上面(当接部材)との間でコンパクトに配置させている。尚、この請求項1の場合は、揺動フレーム上面に設けられた当接部材(ロックシリンダ伸長時にシリンダ伸縮部が当接する)の高さを可及的に低くすることができる。
【0027】
この請求項1の鉄輪揺動ロック装置を採用した軌陸作業車では、オンレール作業時(全鉄輪を軌道上に載せた停車状態)において、揺動ロック手段により揺動フレームをロック状態にすると該揺動フレームが揺動不能となり、軌陸作業車が前後・左右の各鉄輪で4点支持されるようになる。
【0028】
そして、軌陸作業車をオンレール状態で4点支持したものでは、上記のように前輪側の左右鉄輪(2点)と揺動フレームの枢支部(1点)による3点支持したものより支持面積が広くなり(2倍になる)、それによって作業車転倒防止性能が高くなる(作業機の転倒防止に関する限界範囲を拡大できる)。
【0029】
又、本願請求項1の発明では、ロックシリンダのシリンダ伸縮部下面と揺動フレーム上面との間に、シリンダ伸縮部を上方に付勢するスプリングを当接部材の外側に巻付けた状態で設置している。
【0030】
こ
のスプリングは、左右各側の当接部材をガイドとして(当接部材の外側に巻付けて)それぞれ設置されていて、単動式の各ロックシリンダをそれぞれ縮小させる(シリンダ伸縮部を上動させる)ときの付勢手段としての機能を有するものである。尚、この請求項
1の場合は、当接部材としてスプリングを巻付けるために適度の高さのものを採用するとよい。
【0031】
又、こ
のスプリングは、別の機能として揺動フレームに対するサスペンションとしての機能を有するものであって、このスプリングにはかなり強い弾発力を有したものが採用されている。
【0032】
さらに、本願請求項1の発明では、シリンダ伸縮部の下端に水平方向の外側に突出するはみ出し部を設け、当接部材は揺動フレームの上面に後で固定される台座上に取付けるとともに、前記はみ出し部と前記台座との間にスプリングを圧縮させた状態で台座を位置保持させる位置保持手段を設けている。
【0033】
ところで、この請求項
1で組付けられる揺動ロック手段では、左右の各スプリングは上記はみ出し部下面と上記台座上面との間で適度に圧縮させた状態で配置されているが、該スプリングを圧縮させた状態で配置するには、該スプリングを圧縮状態に維持したまま組付ける必要がある。
【0034】
そこで、この請求項
1では、シリンダ伸縮部下端のはみ出し部と後で揺動フレーム上に固定される台座との間にスプリングを圧縮させた状態で該台座を位置保持手段で位置保持させるようにしている。
【0035】
この請求項
1で使用される位置保持手段としては、例えば前記はみ出し部と前記台座とに跨がって該台座をはみ出し部側に引き寄せ得る2本のボルトを通したものを使用できる。そして、はみ出し部と台座間にスプリングを介在させた状態で、各ボルトにより台座をはみ出し部側に引き寄せることで、該はみ出し部と台座間にスプリングを圧縮させた状態で保持させることができる。
【0036】
尚、この請求項
1で使用される位置保持手段の具体例としては、はみ出し部をシリンダ伸縮部下端に固着し、該はみ出し部と当接部材付きの台座との間にスプリングを介在させ、はみ出し部の上面側から台座に対して2本のボルトの先端部を螺合させて該各ボルトを引き上げることにより、はみ出し部と台座間にスプリングを圧縮させた状態に維持させることができる。この状態では、ロックシリンダとはみ出し部とスプリングと当接部材付き台座とが一体に結合されている(一体結合体という)とともに、該一体結合体の全高さ(ロックシリンダ上端から台座下面までの高さ)が車体フレーム下面と揺動フレーム上面間の上下スペースの高さより小さくなっている。そして、この一体結合体をセットするには、該一体結合体を車体フレーム下面と揺動フレーム上面間の上下スペース内に介在させた後、ロックシリンダの上面を車体フレーム下面に固着し(例えば溶接する)、位置保持手段による台座の保持を解除して(各ボルトを外す)、該台座を揺動フレーム上面に接合させ、該台座を揺動フレーム上面に固着する(例えば溶接する)ことで行える。
【0037】
[本願請求項
2の発明]
本願請求項
2の発明は、上記請求項
1の鉄輪揺動ロック装置において、ロックシリンダの伸長時に、スプリングが密着する前にシリンダ伸縮部の下面が当接部材の上面に当接するように当接部材の高さを設定している。
【0038】
この請求項
2では、当接部材の高さを上記のように設定しているが、このように当接部材の高さを設定すると、揺動フレームが左右いずれかに最大揺動した状態又はロックシリンダが揺動ロック状態まで伸長した状態(何れもシリンダ伸縮部下面が当接部材上面に当接する)でも、各側のスプリングにそれぞれ圧縮代を残している。
【0039】
[本願請求項
3の発明]
本願請求項
3の発明は、上記請求項1
又は2の鉄輪揺動ロック装置において、ロックシリンダのシリンダ伸縮部の下面と当接部材の上面のいずれか一方に球面部を設けたものである。
【0040】
ところで、本願の鉄輪揺動ロック装置において、揺動フレームが傾斜状態で揺動ロック手段によるロックがかかったとき(シリンダ伸縮部下端が当接部材上面に対して直接的又は間接的に当接している)には、シリンダ伸縮部下端側の面と当接部材上面とが角度をもって当接するが、この請求項
3のように当接部分の上下いずれかの面(シリンダ伸縮部下面又は当接部材上面)に球面部を設けていると、該当接部分が点接触するようになる。
【0041】
[本願請求項
4の発明]
本願請求項
4の発明は、上記請求項1から
3のいずれか1項の鉄輪揺動ロック装置において、揺動フレームの枢支部と縮小状態にあるロックシリンダのシリンダ伸縮部の下面とをほぼ同高さに位置させている。
【0042】
この請求項
4のように、揺動フレームの枢支部と縮小状態にあるロックシリンダのシリンダ伸縮部の下面とをほぼ同高さに位置させていると、揺動フレームが揺動しても揺動フレーム側の当接部材の位置が左右方向(揺動フレームの長さ方向)にはほとんど変化しない。
【発明の効果】
【0043】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の鉄輪揺動ロック装置には、次のような効果がある。
【0044】
(1)左右の鉄輪を取付けた揺動フレームを揺動ロック手段でロックし得るようにしているので、揺動フレームの揺動により軌道走行時に鉄輪の浮き上がり(脱線)を防止し得るようにした軌陸作業車であっても、鉄輪によるオンレール作業時において揺動フレーム(左右の鉄輪)を揺動ロック手段で揺動不能にロックすることで、作業車を安定姿勢で支持(前後・左右の各鉄輪による4点支持)できる。
【0045】
(2)ロックシリンダが単動式であって該ロックシリンダを車体フレーム下面に下向き姿勢で直接取付けている(いわゆる直付けしている)ので、ロックシリンダが車体フレームの外側面から外方に突出する出幅を少なくできるとともに、該ロックシリンダの下方突出長さを短くできる。従って、ロックシリンダを車体フレーム下面と揺動フレーム上面との間の比較的狭い上下スペース内においてコンパクトに設置できる。
【0046】
(3)揺動フレーム上面側にシリンダ伸縮部の下面が当接する当接部材を設けているので、ロックシリンダが伸長してシリンダ伸縮部下面が揺動フレーム上面に直接当接する場合に比べて該シリンダ伸縮部下面の当接状態が安定する。
【0047】
(4)ロックシリンダのシリンダ伸縮部下面と揺動フレーム上面との間にスプリングを設置しているが、このスプリングは、単動式のロックシリンダの縮小動作用の付勢部材としての機能と車体フレームのサスペンションとしての機能とを有しているので、上記請求項1の効果に加えて、単一のスプリングを、ロックシリンダ縮小動作用の付勢部材と揺動フレームのサスペンションとに兼用でき
る。
【0048】
(5)鉄輪揺動ロック装置に使用されているスプリングは、当接部材の外側に巻付けた状態で設置しているので、該スプリングをコンパクトに設置でき
る。
【0049】
(6)シリンダ伸縮部下端のはみ出し部と当接部材を取付けた台座との間にスプリングを圧縮させた状態で台座を位置保持させる位置保持手段を設けているので、自然状態(スプリング伸長状態)におけるロックシリンダ上面と台座下面との間の全高が車体フレーム下面と揺動フレーム上面との間の上下スペースより長いものであっても、位置保持手段でスプリングを圧縮状態に維持させることにより、上記一体結合体を上記上下スペース間の高さより短くした状態で取り扱える
。従って、スプリング込みの一体結合体を車体フレーム下面と揺動フレーム上面との間に介設させる作業が容易に行え
る。
【0050】
[本願請求項
2の発明の効果]
本願請求項
2の発明は、上記請求項
1の鉄輪揺動ロック装置において、ロックシリンダの伸長時に、スプリングが密着する前にシリンダ伸縮部の下面が当接部材の上面に当接するように当接部材の高さを設定しているので、揺動フレームが左右いずれかに最大揺動した状態又はロックシリンダが揺動ロック状態まで伸長した状態でも、各側のスプリングにそれぞれ圧縮代を残している。
【0051】
従って、この請求項
2の鉄輪揺動ロック装置では、上記請求項
1の効果に加えて、揺動フレームが左右いずれかに最大揺動した状態又はロックシリンダが揺動ロック状態まで伸長した状態(何れもシリンダ伸縮部下面が当接部材上面に当接する)でも、各側のスプリングが過圧縮されないので、該スプリングを保護できるという効果がある。
【0052】
[本願請求項
3の発明の効果]
本願請求項
3の発明は、上記請求項1
又は2の鉄輪揺動ロック装置において、ロックシリンダのシリンダ伸縮部の下面と当接部材の上面のいずれか一方に球面部を設けている。
【0053】
従って、この請求項
3の鉄輪揺動ロック装置では、上記請求項1〜
2の効果に加えて、シリンダ伸縮部下面と当接部材上面とが接触したときにその接触部分が常に点接触するので、揺動フレームが傾斜した状態で上記両面が接触しても該接触部分にこねるような作用が働かない(該接触部分が損傷しない)という効果がある。
【0054】
[本願請求項
4の発明の効果]
本願請求項
4の発明は、上記請求項1から
3のいずれか1項の鉄輪揺動ロック装置において、揺動フレームの枢支部と縮小状態にあるロックシリンダのシリンダ伸縮部の下面とをほぼ同高さに位置させているので、揺動フレームが揺動しても揺動フレーム側の当接部材の位置が左右方向(揺動フレームの長さ方向)にはほとんど変化しない。
【0055】
従って、この請求項
4の鉄輪揺動ロック装置では、上記請求項1〜
3の効果に加えて、揺動フレームが揺動して当接部材上面がシリンダ伸縮部下面に当接したときの該当接位置が左右にほとんど位置ずれしないという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1〜
図7を参照して本願の実施例を説明すると、この実施例では軌陸作業車として、
図1に示すように高所作業車を採用している。そして、以下の説明では、軌陸作業車を高所作業車ということがある。
【0058】
尚、他の実施例では、軌陸作業車として、クレーン作業車や荷物運搬用のトラック等を採用することができる。
【0059】
図1の高所作業車は、
図8に示す公知例のものと同じものであるが、本願実施例で使用するものとして若干の説明を追加する。
【0060】
図1の高所作業車は、車両1の車体フレーム11上に高所作業機2を搭載している。高所作業機2は、車体フレーム11上に設けた旋回台21と、該旋回台21に起伏自在に取付けた伸縮ブーム22と、伸縮ブーム22の先端部に装備した作業台23を備えている。
【0061】
車体フレーム11の前後・左右の4箇所には、それぞれアウトリガ(ジャッキ装置)13を設けている。
【0062】
図1に示す高所作業車は、軌陸両用に使用できるもので、車体フレーム11に道路走行用のタイヤ車輪(前後・左右の4箇所にある)12と、軌道走行用の軌道走行装置3(前後・左右の4箇所にある)とを備え、各タイヤ車輪12,12による道路走行と各軌道走行装置3,3による軌道走行とを選択して行えるようになっている。
【0063】
又、
図1の高所作業車には、車両1を浮上させた状態で方向転換させるための転車装置9を設けている。この転車装置9は、上下動装置(油圧シリンダ)90により転車台(接地板)91を上方格納位置(実線図示位置)と下方突出位置(符号91′で示す鎖線図示位置)との間で上下動させ得るようにしたものである。尚、転車台91部分には、ターンテーブル機構を有している。
【0064】
前後・左右(合計4つ)の各軌道走行装置3は、相互にほぼ同構造のものであって、車体フレーム11の前端部と後端部にそれぞれ左右対称形のものが一対ずつ配置されている。
【0065】
前輪側の各軌道走行装置3は、鉄輪(前側鉄輪)31を保持台33で保持し、該保持台33を車体フレーム11に設けたサポート14に軸15で枢支するとともに、保持台33を上下動装置(油圧シリンダ)30で上下に揺動させ得るように構成されている。
図1の実施例の高所作業車では、前輪側の左右各軌道走行装置3が駆動側で、各前側鉄輪31,31が駆動モータ34で駆動されるようになっている。鉄輪の駆動モータ34は、電動モータが使用されており、
図3に示すように駆動モータ用のスイッチ35をON操作することで、該駆動モータ34を作動させ得るようになっている。尚、他の実施例では、鉄輪の駆動モータ34として油圧モータを使用してもよい。又、この実施例では、後側鉄輪32,32が従動輪となっているが、他の実施例では駆動側鉄輪を前側鉄輪31,31から後側鉄輪32,32に変更してもよく、さらに他の実施例では全部の鉄輪(4輪)をそれぞれ駆動させる(4駆にする)ようにしたものでもよい。
【0066】
後輪側の各軌道走行装置3は、
図2及び
図3に拡大図示するように、鉄輪(後側鉄輪)32を保持台33で保持し、該保持台33を後述する揺動フレーム4の両端部(サポート41)に軸42で枢支するとともに、保持台33を上下動装置(油圧シリンダ)30で上下に揺動させ得るように構成されている。
【0067】
そして、各前側鉄輪31,31及び各後側鉄輪32,32は、
図1において実線図示する上動格納位置と鎖線図示する下動使用位置との間をそれぞれ上下動装置30により同時に上下揺動せしめられる。尚、前輪側及び後輪側の各左右鉄輪31,31(及び32,32)間の間隔は、適用される軌道幅(左右のレールR,Rの間隔)と同じに設定される。
【0068】
図1に示す軌陸作業車(高所作業車)において、タイヤ車輪12による道路走行モードから各鉄輪31,32による軌道走行モードに切換えるには、次のように操作する。即ち、作業車を走行させて前後のタイヤ車輪12,12が軌道(両レールR,R)を跨いだ位置で停車させ→転車装置9の上下動装置90を伸長させて転車台91下面を
図1に鎖線図示(符号91′)するように下動させて各タイヤ車輪12を地面から浮上させ→転車装置9を中心にして前後4つの鉄輪31,32が左右レールR,Rの直上方に位置するように車両1を旋回させ→前後・左右の4つの鉄輪31,32をそれぞれ鎖線図示するように下方に張り出させ→該各4つの鉄輪31,32がそれぞれ左右レールR,R上に対応した状態で転車装置9の上下動装置90を縮小させることで、
図2及び
図3に示すように4つの各鉄輪31,32をそれぞれ左右レールR,R上に載せることができる。
【0069】
尚、4つの鉄輪31,32を左右のレールR,R上に載せた状態で、前側鉄輪31の駆動モータ34(
図1)を作動させると作業車を軌道走行させることができる一方、作業車を軌道上に停車させた状態で高所作業機2により各種の作業を行うことができる。又、高所作業機2による作業時には、各鉄輪31,32をブレーキ装置36(
図3参照)でロックしておくとよい。
【0070】
この実施例の軌陸作業車(高所作業車)では、左右のレールR,Rに高低差(特にねじれ)がある場所を鉄輪走行させる場合に、4つの鉄輪31,32のうちの1つがレールから浮き上がる現象を防止するために、後輪側の左右の鉄輪32,32をシーソー状に揺動させ得るようにしたものを採用している。
【0071】
即ち、この実施例の軌陸作業車では、
図3に示すように車体フレーム11の後端寄り下面に左右向きの揺動フレーム4の長さ方向中間部を前後向きの支軸40で枢支して、該揺動フレーム4が車体フレーム11の下方位置において上下にシーソー状に揺動し得るように支持している一方、該揺動フレーム4の左右各端部に後輪側の左右鉄輪32,32をそれぞれ取付けている。
【0072】
そして、
図3に示す実施例の後側鉄輪取付構造を採用した軌陸作業車(
図1、
図2)では、鉄輪による軌道走行時に、軌道がカーブしていて左右のレールR,Rに高低差(ねじれ)があっても、揺動フレーム4が上下に揺動する(
図4の符号4′,4″参照)ことで左右の後側鉄輪32,32がレールの高低差に追従し、左右の前側鉄輪31,31及び左右の後側鉄輪32,32の4輪が常にレールR,R上に接触した状態で走行させることができる。
【0073】
ところで、このように揺動フレーム4が常時揺動し得る状態にあるものでは、作業車を軌道上に載せた状態では、4つの鉄輪が左右のレール上に載っているものの、作業車は
図6に示すように左右の各前側鉄輪31,31の2点(符号A、B)と各後側鉄輪32,32を取付けている揺動フレーム4の枢支部(支軸)40の1点(符号M)との実質3点で支持されることになり、比較的狭い範囲の転倒防止制御しか行えない。
【0074】
そこで、この実施例の軌陸作業車(高所作業車)には、軌道上において高所作業機2による作業を行う際に揺動フレーム4(左右の後側鉄輪32,32)の揺動をロックし得るようにした鉄輪揺動ロック装置を備えている。
【0075】
この実施例で使用されている鉄輪揺動ロック装置は、
図2〜
図5に示すように、車体フレーム11と揺動フレーム4との間に、揺動フレーム4を車体フレーム11に対して揺動不能にロックするための揺動ロック手段5を設けたものである。
【0076】
この実施例の揺動ロック手段5は、
図3及び
図4に示すように、揺動フレーム4の支軸40を挟んで左右2つのロックシリンダ50,50を使用しているとともに、揺動フレーム4の上面に各ロックシリンダ50,50が伸長したときにピストンロッド51の下端が当接する当接部材43を設けて構成されている。尚、ピストンロッド51は、特許請求の範囲中のシリンダ伸縮部となるものであり、以下の説明では、このピストンロッド51をシリンダ伸縮部ということがある。
【0077】
ところで、車体フレーム11と揺動フレーム4間に介設されるロックシリンダ50は、車体フレーム11の外側面にピンで支持して下向きに設置することも考えられるが、該ロックシリンダ50が設置される付近の車体フレーム11の外側方には各種の構造物(例えば鉄輪32、鉄輪上下動装置30等)が設置される関係で、該ロックシリンダ50を車体フレーム11下面(車体フレームの外側面からさほどはみ出さない位置)の比較的邪魔にならない位置に設置することが望まれる。他方、車体フレーム11下面と揺動フレーム4上面との間の上下スペースは、軌道走行時に揺動フレーム4の下方に鉄輪32が位置する関係で、さほど大きく取れないのが現状である。即ち、軌道走行時には揺動フレーム4の下方に鉄輪32を降下させる高さスペースが必要であるので、揺動フレーム4の設置高さを所定高さまで高くする必要があり、他方、車体フレーム11の設置高さは機種によって定まっているので、必然的に車体フレーム11下面と揺動フレーム4上面との間の上下スペースは限られた高さになる。
【0078】
このような背景から、揺動ロック手段5を車体フレーム11下面と揺動フレーム4上面間の上下スペース内に設置しようとすると、該揺動ロック手段5全体を上下方向にかなりコンパクトに集約させる必要がある。
【0079】
そこで、この実施例の鉄輪揺動ロック装置は、上記背景に鑑みて次のように構成している。
【0080】
各ロックシリンダ50,50には、比較的小ストロークの油圧シリンダが採用されている。尚、揺動フレーム4の許容(最大)傾動角度は、軌道のカーブ位置での左右レールの高低差に基づく最大傾斜角度よりやや大きい程度のものでよく、該揺動フレーム4の許容傾動角度内でのロックシリンダ50の伸長ストロークは比較的小さいものでよい。
【0081】
各ロックシリンダ50,50は、ピストンロッド(シリンダ伸縮部)51が下向きに出没する状態で、シリンダチューブの基端部(
図7の符号50a)を車体フレーム11の下面の左右端部位置においてそれぞれ直接取付けている(いわゆる直付けしている)。尚、ロックシリンダ50の取付方法は、そのシリンダチューブの基端部を車体フレーム11の下面に対して溶接やボルト止め等の適宜の方法で行うことができる。
【0082】
又、この各ロックシリンダ50,50は、単動式のものであって後述する油圧装置6によりシリンダの伸長側油室53に高圧作動油が供給されることで、各側のピストンロッド51,51が同時に押下げられる(シリンダが伸長する)ようになっている。尚、この各ロックシリンダ50,50の縮小動作は、伸長側油室53に対する油圧力がなくなったときに、後述のスプリング55の付勢力により各側のピストンロッド51,51が同時に押上げられる(シリンダが縮小する)ようになっている。
【0083】
各ロックシリンダ50,50のピストンロッド51の下端部には、それぞれ大形板52が取付けられている。この大形板52は、本願請求項
1における「水平方向の外側に突出するはみ出し部」に対応するものであり、以下の説明では該大形板52をはみ出し部ということがある。
【0084】
揺動フレーム4の上面における各ロックシリンダ50,50の直下位置には、シリンダ伸縮部(ピストンロッド)51の下動時に該シリンダ伸縮部51の下端(大形板52の下面)を当接させる当接部材43,43が取付けられている。各当接部材43,43は、シリンダ伸縮部51の下端(大形板52の下面)を当接させたときの当接状態を安定させる機能と、後述するようにスプリング55の取付用ガイドとしての機能も有している。
【0085】
各側の当接部材43,43は、それぞれ台座45の上面に上方突出状態で取付けられているが、この当接部材43付きの台座45は、後述(
図7)するようにロックシリンダ50に一体結合させた状態で揺動フレーム4の上面に取付け得るようになっている。
【0086】
各当接部材43,43の上面は、球面部44としている。そして、このように当接部材43の上面を球面部44としていると、シリンダ伸縮部51下面(大形板52下面)と当接部材43上面とが接触したときにその接触部分を常に点接触させることができる。従って、揺動フレーム4が上下に揺動した状態で、シリンダ伸縮部51下面(大形板52下面)と当接部材43上面とが接触したときでも、該接触部分にこねるような作用が働かない(該接触部分が損傷しない)。尚、この球面部44は本願請求項
3に対応するものであって、該球面部44は、この実施例のように当接部材43の上面に形成したものでも、シリンダ伸縮部51の下端(大形板52の下面)に形成したものでもよい。
【0087】
この実施例の鉄輪揺動ロック装置では、
図3及び
図4に示すように、各ロックシリンダ50,50が縮小している状態では、各大形板(はみ出し部)52,52の下面と各当接部材43,43の上面との間に適宜間隔の隙間が形成されていて、
図4に鎖線図示(符号4′、4″)するように該隙間の範囲内(当接部材43上面が大形板52下面に当接するまでの範囲内)で揺動フレーム4が支軸40を中心にしてシーソー状に揺動し得るようになっている。尚、各ロックシリンダ50,50の縮小状態における揺動フレーム4の揺動可能範囲は、軌道の左右レールの高低差が最大である場所での走行時においても、左右の各後側鉄輪32,32が各レール高さに追従し得るように設定されている。
【0088】
各ロックシリンダ50,50を作動させる油圧装置6は、
図3に示すように、作動油タンク60と、油圧ポンプ61と、電磁切換弁62と、2系統の油路63,64と、2つのチェック弁65,65とを有している。2系統の油路のうちの実線図示する油路64は、単動式の各ロックシリンダ50,50を作動させるメイン油路であり、点線表示する符号63の油路は、チェック弁65,65を解放するためのパイロット油路である。
【0089】
そして、この油圧装置6は、各ロックシリンダ50,50に対して次のように作動させる。
【0090】
まず、電磁切換弁62が非励磁状態(
図3の状態)で油圧ポンプ61を作動させると、作動油が点線図示するパイロット油路63を通って各チェック弁65,65を開弁させる。すると、各ロックシリンダ50,50の伸長側油室53,53と作動油タンク60とがメイン油路64を介して連通し、各ピストンロッド51,51(大形板52,52)がスプリング55,55で付勢されていることにより、各ロックシリンダ50,50が縮小状態を維持するようになる。尚、この各ロックシリンダ50,50の縮小状態が揺動ロック手段5のロック解除状態となる。
【0091】
又、
図3に示すように電磁切換弁62が非励磁状態で油圧ポンプ61を停止させた状態では、各チェック弁65,65が閉弁しても各ロックシリンダ50,50をそれぞれスプリング55,55で縮小側に付勢しているので、該各ロックシリンダ50,50は
図3及び
図4に示す縮小状態(ロック解除状態)に維持される。従って、この状態では、揺動フレーム4は支軸40を中心にして上下に揺動可能となっている。
【0092】
他方、
図5に示すように、油圧ポンプ61を作動させた状態で電磁切換弁62を励磁させる(電磁切換弁操作用のスイッチ66をONにする)と、作動油がメイン油路64及び各チェック弁65,65を通って各ロックシリンダ50,50の伸長側油室53,53に導入され、両ロックシリンダ50,50を同時に伸長させる。すると、各ピストンロッド51,51の下端にある各大形板52,52がスプリング55の付勢力に抗して押し下げられて、該各大形板52,52が揺動フレーム4側の各当接部材43,43の上面にそれぞれ押し付けられる。尚、この
図5のロックシリンダ50,50の伸長状態が揺動ロック手段5のロック状態となる。
【0093】
又、この
図5の状態(電磁切換弁62が励磁状態)で油圧ポンプ61を停止させても、メイン油路64中の各チェック弁65,65が閉状態であるので、各ロックシリンダ50,50の伸長状態(ロック状態)が維持される。従って、この状態では、揺動フレーム4は上下に揺動不能となっている。
【0094】
各ロックシリンダ50,50のピストンロッド51の下端(大形板52の下面)と揺動フレーム4の上面との間には、それぞれピストンロッド51,51を上方に付勢するスプリング55,55が介設されている。尚、このスプリング55,55は、本願請求項
1の一部を構成するものである。
【0095】
このスプリング55は、揺動フレーム4上にある当接部材43の外側に巻付けた状態で(該当接部材43をガイドとして)設置されている。そして、この各スプリング55,55は、それぞれ単動式ロックシリンダ50の縮小用の付勢部材となるとともに、揺動ロック手段5がロック解除状態にある状態での揺動フレーム4に対する車体フレーム11のサスペンション機能を有している。
【0096】
この実施例では、本願請求項
2に対応する構成として、ロックシリンダ50の伸長時に、スプリング55が密着する前にシリンダ伸縮部52の下面が当接部材43の上面(球面部44)に当接するように、当接部材43の高さを設定している。このようにすると、揺動フレーム4が左右いずれかに最大揺動した状態又はロックシリンダが揺動ロック状態まで伸長した状態(何れもシリンダ伸縮部下面が当接部材上面に当接する)でも、各側のスプリング55,55にそれぞれ圧縮代が残る(スプリングが過圧縮されない)ので、該スプリング55を保護できる。
【0097】
ところで、この実施例で組付けられる揺動ロック手段5では、左右の各スプリング55,55は大形板(はみ出し部)52下面と上記台座45上面との間で適度に圧縮させた状態で配置されているが、該スプリング55を圧縮させた状態で配置するには、該スプリング55を圧縮状態に維持したまま組付ける必要がある。
【0098】
そこで、この実施例では、
図7に示すように、シリンダ伸縮部51下端の大形板(はみ出し部)52と後で揺動フレーム4上に固定される台座45との間にスプリング55を圧縮させた状態で位置保持手段56により台座45を位置保持させ得るようにしている。尚、この位置保持手段56は、本願請求項
1の一部を構成するものである。
【0099】
図7に示す実施例の位置保持手段56は、シリンダ伸縮部51の下端に取付けた大形板(はみ出し部)52と当接部材43付きの台座45とに跨がって該台座45を大形板52側に引き寄せ得る2本のボルト57,57を通したものを使用している。
【0100】
この実施例の場合は、ロックシリンダ50及び当接部材43付きの台座45をそれぞれ所定位置(車体フレーム下面11a又は揺動フレーム上面4a)に固定する前に、
図7に符号Aで示すように該ロックシリンダ50とスプリング55を当接部材43付きの台座45を一体化させておく(一体結合体Aとなる)。その際、大形板52と台座45間にスプリング55を介在させ、大形板52の外周寄り対向位置において各ボルト57,57を大形板52の上面側から該大形板52に設けたボルト挿通穴に挿通させ、該ボルト57,57の下端部を台座45に設けたネジ穴に螺合させておき、その後にボルト57,57に螺合している各ナット58,58を締め込んで、当接部材43の上面(球面部44)が大形板52下面に当接するまで台座45を大形板52側に引き寄せる(このときスプリング55は圧縮される)。他方、ロックシリンダ50は最縮小させておく。
【0101】
この状態では、
図7に実線図示するように、ロックシリンダ50とスプリング55と当接部材43付きの台座45とが一体化され(一体結合体Aとなる)、しかもスプリング55が圧縮状態を維持していることにより、一体結合体Aの全高H1が車体フレーム下面11aと揺動フレーム上面4aとの間の上下高さH2より小さくなっている。
【0102】
そして、この一体結合体Aの全高H1を低くしたままで、該一体結合体Aを車体フレーム下面11aと揺動フレーム上面4aとの間の上下スペース内に配置し、鎖線図示(符号A′)するようにロックシリンダ上面部50a′を車体フレーム下面11aの所定位置に固定(溶接)し、次に各ボルト57′57′を抜き外すと台座45′がスプリング55′で押し下げられて揺動フレーム上面4aに当接し、該台座45′を揺動フレーム上面4aに固定(溶接)することで、
図3に示す状態にセットできる。
【0103】
このように、位置保持手段56により、スプリング55を圧縮させた状態で台座45を位置保持しておくと、スプリング55込みの一体結合体Aを車体フレーム下面11aと揺動フレーム上面4aとの間に介設させる作業が容易に行える。
【0104】
又、この実施例の鉄輪揺動ロック装置には、本願請求項
4に対応する構成として、
図3及び
図4に示すように、揺動フレーム4の枢支部(支軸)40と縮小状態にあるロックシリンダ50のシリンダ伸縮部51の下面(大形板52の下面)とをほぼ同高さに位置させている。このようにすると、揺動フレーム4が揺動しても揺動フレーム4側の当接部材43の位置が左右方向(揺動フレームの長さ方向)にはほとんど変化しない。従って、揺動フレーム4が揺動して当接部材上面(球面部44)がシリンダ伸縮部下面(大形板52下面)に当接したときの該当接位置が左右にほとんど位置ずれしなくなる。
【0105】
ところで、上記構成の鉄輪揺動ロック装置を備えた軌陸作業車(高所作業車)では、次のような機能がある。
【0106】
まず、軌道走行時には、
図3及び
図4に示すように、揺動ロック手段5をロック解除状態にしておくことにより、作業車を上記した3点支持状態で軌道走行させることができるので、4つの鉄輪がいずれもレールから浮き上がることがない。尚、作業車を3点支持した状態とは、
図6において左右の各前側鉄輪31,31の2点(符号A,B)と揺動フレーム4の支軸40部分の1点(符号M)の合計3点で支持された状態のことであり、この3点支持状態では、オンレール作業時における作業車転倒防止性能が低い状態となる。
【0107】
他方、オンレール作業時には、
図5に示すように、揺動ロック手段5をロック状態にする(各ロックシリンダ50,50を伸長させる)ことにより揺動フレーム4が揺動不能になるので、作業車を
図6において左右の各前側鉄輪31,31の2点(符号A,B)と各後側鉄輪32,32の2点(符号C,D)の合計4点で支持させることができる。
【0108】
そして、このように作業車を4つの鉄輪位置からなる4点(A,B,C,D)で支持させた状態では、上記3点(A,B,M)で支持させたときの支持面積より広くなるので(支持面積が2倍になる)、作業車転倒防止性能が高くなる。尚、このことは、オンレール作業時において、作業機2の転倒防止に関する限界範囲を拡大できる(広範囲の作業が行える)という利点がある。
【0109】
又、上記実施例のように、揺動ロック手段5として左右2つのロックシリンダ50,50を使用したものでは、揺動フレーム4を左右両側からバランスよくロックすることができるので、揺動フレーム4を安定状態でロックできるという機能がある。
【0110】
又、この実施例の鉄輪揺動ロック装置には、上記した各構成のほかに次の構成を有している。
【0111】
まず、
図3〜
図5に示すように、揺動ロック手段5がロック状態にあるかロック解除状態にあるのかを検出するロック状態検出手段7を有している。このロック状態検出手段7は、
図3〜
図5に示すように、各ロックシリンダ50,50の伸縮状態を直接検出するリミットスイッチ71,71と、油圧装置6のパイロット油路63中の作動油圧力を検出する圧力スイッチ72とを併用している。
【0112】
上記各リミットスイッチ71,71は、各ロックシリンダ50,50の各大形板52,52の位置を検出するもので、
図3(及び
図4)に示すようにロックシリンダ50の最縮小状態(大形板52の最上動状態)においてONになる一方、
図5に示すようにロックシリンダ50が伸長するとOFFになる。そして、両リミットスイッチ71,71のON・OFF状態をコントローラの判別手段(図示省略)で判別することにより、各ロックシリンダ50,50が縮小状態(揺動ロック手段5がロック解除状態)であるか伸長状態(揺動ロック手段5がロック状態)であるかを認知できるようになっている。
【0113】
上記圧力スイッチ72は、電磁切換弁62が非励磁状態(
図3)で油圧ポンプ61が作動し、パイロット油路63中の作動油が昇圧することでONになるものである。即ち、パイロット油路63中の作動油圧力が高くなると、各チェック弁65,65が解放されて各ロックシリンダ50,50が縮小する(ロック解除状態になる)が、該パイロット油路63中の作動油圧力の変化による圧力スイッチ72のON・OFF状態をコントローラの判別手段(図示省略)で判別することにより、各ロックシリンダ50,50が縮小状態(揺動ロック手段5がロック解除状態)であるか伸長状態(揺動ロック手段5がロック状態)であるかを認知できるようになっている。
【0114】
尚、この実施例では、ロック状態検出手段7として、上記各リミットスイッチ71,71と圧力スイッチ72の両方を併用している(検出精度を高くできる)が、他の実施例では、いずれか一方の検出スイッチのみでもよい。
【0115】
このように、ロック状態検出手段7(71,72)を備えたものでは、揺動ロック手段5がどの状態にあるのかをオペレータが確認できるので、オンレール作業時(ロック状態にする)及びオンレール状態から発進時(ロック解除状態にする)等に揺動ロック手段5の状態が適正状態であるかどうかをオペレータが確認することで、不適正状態での作業(又は操作)を防止するのに役立つ。
【0116】
又、この実施例の鉄輪揺動ロック装置では、揺動ロック手段5は、鉄輪31を走行作動させる信号を受けて自動的にロック解除されるようにしたものを採用している。
【0117】
鉄輪31を走行作動させる信号は、この実施例では
図3及び
図5に示すように鉄輪駆動モータ34を作動させるスイッチ35をONすることで発せられる。そして、この実施例では、電磁切換弁62の操作回路中にスイッチ66とは直列に常閉スイッチ67を設けて、鉄輪駆動モータ作動用のスイッチ35のON操作に連動して上記常閉スイッチ67をOFFさせるようにしたものを採用している。即ち、
図5に示す電磁切換弁62の励磁状態(揺動ロック手段5のロック状態)で鉄輪駆動モータ作動用のスイッチ35がON操作されると、それに連動して上記常閉スイッチ67がOFFになって、電磁切換弁62が非励磁状態(
図3の状態)になるようにしている。
【0118】
尚、鉄輪駆動モータ作動用のスイッチ35は、以下の各条件を満たした状態でON操作されるようになっている。即ち、4つの鉄輪が全て下方に張り出していること、高所作業機2の姿勢が走行可能な範囲内であること、アウトリガが全て格納状態であること、転車装置9が格納されていること、各鉄輪のブレーキ装置36が解除されていること、等が鉄輪駆動モータ作動用のスイッチ35をONし得る条件となる。
【0119】
ところで、オンレール作業時には、上記のように揺動ロック手段5をロック状態(上記4点支持状態)にして作業を行うが、オンレール作業後に軌道走行させるときには揺動ロック手段5をロック解除状態(上記3点支持状態)にする必要がある。そして、上記のように鉄輪駆動モータ作動用のスイッチ35をONにすることで電磁切換弁62を自動的に非励磁状態にするようにしていると、揺動ロック手段5が自動的にロック解除されることにより、揺動ロック手段5をロック解除し忘れたままで(電磁切換弁操作用のスイッチ66のOFF操作せずに)軌道走行させる(脱線の虞れが生じる)というトラブル発生要因を未然に排除できる。
【0120】
又、この実施例の鉄輪揺動ロック装置では、
図3及び
図5の油圧回路中に左右のロックシリンダ50,50にそれぞれ接続されている各油路(メイン油路64から分岐させたもの)を接続油路68で接続するとともに、該接続油路68の途中に手動式の切換弁69を介設している。
【0121】
そして、この接続油路68と切換弁69とは、次の目的で使用されるものである。即ち、
図5に示す揺動ロック手段5(各ロックシリンダ50,50)のロック状態でオンレール作業を行った後、作業車を軌道走行させるには、該揺動ロック手段5をロック解除して揺動フレーム4を揺動可能にしておく必要があるが、該揺動ロック手段5をロック解除させるには、電磁切換弁62が非励磁状態(
図3の状態)で油圧ポンプ61を作動させることで行う。ところが、何らかの理由で油圧ポンプ61が作動しない場合には、各チェック弁65,65を開弁させるためのパイロット油路63に作動油を供給することができない。そこで、この実施例では、上記接続油路68と切換弁69とを設け(切換弁69は通常閉鎖状態である)、何らかの理由で揺動ロック手段5がロック解除できない場合(ロック状態検出手段7で検出できる)には、上記切換弁69を手動で開放側に切換えることで、左右のロックシリンダ50,50の各伸長側油室53,53同士を接続油路68で連通させることができる。
【0122】
このように、各伸長側油室53,53同士を接続油路68で連通させると、揺動フレーム4に揺動作用が働いたときに、圧縮側の油室の作動油が伸長側の油室に移動できるので、該揺動フレーム4を揺動可能状態にすることができる。従って、もし揺動ロック手段5を油圧装置6でロック解除できない事態が発生しても、上記切換弁69を操作することで揺動フレーム4を揺動可能にすることができるので、安全に軌道走行させることができる。