(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893490
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】パルス管冷凍機によるシールド板冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
F25B9/00 311
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-94324(P2012-94324)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-221702(P2013-221702A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】池田 和也
【審査官】
藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−071608(JP,A)
【文献】
特開2007−078310(JP,A)
【文献】
特開2002−324707(JP,A)
【文献】
特開平07−283022(JP,A)
【文献】
特開2000−161803(JP,A)
【文献】
特開2001−248927(JP,A)
【文献】
特開平02−016704(JP,A)
【文献】
特開2003−059713(JP,A)
【文献】
特開2011−035216(JP,A)
【文献】
特開2008−241090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス管冷凍機のクライオコイル型の冷端熱交換配管を超電導磁石の輻射シールド板に這わせて、前記輻射シールド板の温度を均一に77K以下に冷却させるパルス管冷凍機によるシールド板冷却装置であって、複数の第1の超電導コイルと、該第1の超電導コイルの内槽と、前記超電導コイルの第1の輻射シールド板と、第1の外槽と、複数の第2の超電導コイルと、該第2の超電導コイルの内槽と、前記超電導コイルの第2の輻射シールド板と、第2の外槽と、前記第1の輻射シールド板を冷却する第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管と、前記第2の輻射シールド板を冷却する第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管と、前記第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管に接続される1段パルス管冷凍機と、前記第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管に接続されるとともに、液体ヘリウムタンクの輻射シールド板を冷却する2段パルス管冷凍機と、前記1段パルス管冷凍機と前記2段パルス管冷凍機に接続されるヘリウム圧縮機とを具備することを特徴とするパルス管冷凍機によるシールド板冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス管冷凍機によるシールド板冷却装置に関するものであり、特に、リニアモーターカーの超電導磁石、NbTi超電導コイルの輻射シールド板冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は従来のリニアモーターカーの超電導磁石のシールド板冷却方式の模式図である。
【0003】
この図において、101Aは複数の第1の超電導コイル(NbTi線材)、102Aは複数の第1の超電導コイル101Aの内槽、103Aは第1の窒素シールド板、104Aは第1の超電導コイル101Aの外槽、101Bは複数の第2の超電導コイル(NbTi線材)、102Bは複数の第2の超電導コイル101Bの内槽、103Bは第2の窒素シールド板、104Bは第2の超電導コイル101Bの外槽、105は液体窒素タンク、106は液体ヘリウムタンク、107は液体ヘリウムタンク106の窒素シールド板、108はヘリウム圧縮機、109はヘリウム圧縮機108に接続され、液体窒素タンク105の蒸発ガス窒素を液化する80K冷凍機(単段GM)、110は、冷凍機自身のシールド及び液体ヘリウムタンク106を冷却する4K冷凍機(2段GM)である。
【0004】
ここでは、NbTi超電導コイル101A,101Bが超電導状態を得るためには、超電導コイル101A,101Bをヘリウム温度近くまで冷却しなければならず、超電導磁石としてクライオスタットを構成するためには、外気温度からの輻射熱除去に、超電導コイル101A,101Bを囲った窒素シールド板103A,103Bに配管を這わせ、液体窒素を循環させたり、液体窒素を充填補給したりして、液体窒素温度77Kに保持する方式が採られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】寺井元昭,他9名,「浮上式鉄道用80KGM冷凍システムの開発(4),4K/80K両用冷凍システム適用SCMの評価,第58回 1998年度春季低温工学・超電導学会,pp67
【非特許文献2】中尾裕行 他7名,「浮上式鉄道用超電導磁石の4K/80K両用GM冷凍システムの開発−窒素自然循環方式熱シールド板の冷却特性−,低温工学,Vol.34,No.2(1999),pp.65〜72
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のシールド板冷却方式では「シールド板温度77K」という制約の下でクライオスタットを設計することになり、超電導コイル内槽102A,102B〜窒素シールド板103A,103B、窒素シールド板103A,103B〜超電導コイル外槽104A,104Bの距離が超電導コイル101A,101Bのスペックによって一様に定まることになる。
【0007】
本願発明者は、新たな冷却方式を採用して、1段PTC(1段パルスチューブクライオクーラー)であるパルス管冷凍機によりシールド板の温度を77Kよりも低くすることにより、低温超電導磁石の小型化を可能とするようにした。
【0008】
すなわち、本発明は、上記状況に鑑みて、シールド板の温度をパルス管冷凍機により77Kよりも低くすることにより、低温超電導磁石の小型化を図り得る、パルス管冷凍機によるシールド板冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1
〕パルス管冷凍機のクライオコイル型の冷端熱交換配管を超電導磁石の輻射シールド板に這わせて、前記輻射シールド板の温度を均一に77K以下に冷却させる
パルス管冷凍機によるシールド板冷却装置であって、複数の第1の超電導コイルと、この第1の超電導コイルの内槽と、前記超電導コイルの第1の輻射シールド板と、第1の外槽と、複数の第2の超電導コイルと、この第2の超電導コイルの内槽と、前記超電導コイルの第2の輻射シールド板と、第2の外槽と、前記第1の輻射シールド板を冷却する第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管と、前記第2の輻射シールド板を冷却する第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管と、前記第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管に接続される1段パルス管冷凍機と、前記第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管に接続されるとともに、液体ヘリウムタンクの輻射シールド板を冷却する2段パルス管冷凍機と、前記1段パルス管冷凍機と前記2段パルス管冷凍機に接続されるガス圧縮機とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0011】
(1)従来のパルス管冷凍機における液体窒素、液体窒素タンクが不要となる。そのために、タンク部の外槽が小さくなる。
【0012】
(2)輻射シールド板の温度を低くすることで、超電導コイル、液体ヘリウムタンク及び輻射シールド板の距離を短くすることができる。
【0013】
(3)上記(1),(2)により、超電導磁石の小型軽量化を図ることができる。
【0014】
(4)超電導コイル、液体ヘリウムタンクから輻射シールド板の距離が現行のままでも、超電導コイル、液体ヘリウムタンクへの熱輻射量が少なくなり、液体ヘリウムへの熱侵入量が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例を示すパルス管冷凍機によるシールド板冷却装置の模式図である。
【
図2】
図1における1段パルス管冷凍機の模式図である。
【
図3】従来のリニアモーターカーの超電導磁石のシールド板冷却方式の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のパルス管冷凍機によるシールド板冷却装置は、パルス管冷凍機のクライオコイル型の冷端熱交換配管を超電導磁石の輻射シールド板に這わせて、前記輻射シールド板の温度を均一に77K以下に冷却させる
パルス管冷凍機によるシールド板冷却装置であって、複数の第1の超電導コイルと、この第1の超電導コイルの内槽と、前記超電導コイルの第1の輻射シールド板と、第1の外槽と、複数の第2の超電導コイルと、この第2の超電導コイルの内槽と、前記超電導コイルの第2の輻射シールド板と、第2の外槽と、前記第1の輻射シールド板を冷却する第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管と、前記第2の輻射シールド板を冷却する第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管と、前記第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管に接続される1段パルス管冷凍機と、前記第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管に接続されるとともに、液体ヘリウムタンクの輻射シールド板を冷却する2段パルス管冷凍機と、前記1段パルス管冷凍機と前記2段パルス管冷凍機に接続されるガス圧縮機とを具備する。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施例を示すパルス管冷凍機によるシールド板冷却装置の模式図である。
【0019】
この図において、1Aは超電導コイルの第1の輻射シールド板、2Aは超電導コイルの第1の外槽、1Bは超電導コイルの第2の輻射シールド板、2Bは超電導コイルの第2の外槽、3Aは第1の輻射シールド板1Aを冷却する第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管、3Bは第2の輻射シールド板1Bを冷却する第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管、4は液体ヘリウムタンク、5は液体ヘリウムタンク4の輻射シールド板、6は第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管3Aに接続される1段パルス管冷凍機(1段PTC)、7は第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管3Bに接続されるとともに、液体ヘリウムタンク4の輻射シールド板5を冷却する4K2段パルス管冷凍機(2段PTC)、8は1段パルス管冷凍機6と4K2段パルス管冷凍機7に接続されるヘリウム圧縮機である。なお、
図1では超電導コイル及び内槽は省略されているが、それらの配置は
図3と同様である。また、4K2段パルス管冷凍機7は、1段を輻射シールド板冷却に使用し、2段は従来同様ガスヘリウムの液化に使用する。
【0020】
この実施例では、パルス管冷凍機によるシールド板冷却装置において、パルス管冷凍機6,7に接続されるクライオコイル型の冷端熱交換配管3A,3Bを超電導磁石の輻射シールド板1A,1Bに這わせて、輻射シールド板1A,1Bの温度を均一に77K以下に冷却させる。
【0021】
図2は本発明の実施例を示すパルス管冷凍機によるシールド板冷却装置の1段パルス管冷凍機の模式図である。
【0022】
この図において、第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管3Aに接続される1段パルス管冷凍機(1段PTC)6は、超電導コイルの第1の外槽2Aに接続される蓄冷器11と、この蓄冷器11に接続される圧縮機低圧側制御バルブ12と圧縮機高圧側制御バルブ13とヘリウム圧縮機14とを具備し、一方、超電導コイルの第1の外槽2Aに接続される管状のパルス管15と、高圧側バッファタンク制御バルブ16と、低圧側バッファタンク制御バルブ17と、高圧側バッファタンク18と、低圧側バッファタンク19とを具備している。
【0023】
このように、パルス管冷凍機のクライオコイル型の冷端熱交換配管3Aを輻射シールド板1Aに這わせているので、このクライオコイル型の冷端熱交換配管3Aにより熱交換が行われて、輻射シールド板1Aの温度を均一に77K以下に冷却させることができる。図示しないが、パルス管冷凍機のクライオコイル型の冷端熱交換配管3Bにおいても同様に冷却させることができる。
【0024】
本発明によれば、
(1)従来の液体窒素、液体窒素タンクが不要となり、タンク部の外槽を小さくすることができる。
(2)輻射シールド板の温度を低くすることで、超電導コイル、液体ヘリウムタンク及び輻射シールド板の距離を短くすることができる。
(3)上記(1),(2)により、超電導コイル(超電導磁石)の小型軽量化を図ることができる。
(4)超電導コイル、液体ヘリウムタンクから輻射シールドの距離が現行のままでも、超電導コイル、液体ヘリウムタンクへの熱輻射量が少なくなり、液体ヘリウムへの熱侵入量を小さくすることができる。
【0025】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のパルス管冷凍機によるシールド板冷却装置は、シールド板の温度を冷凍機により77Kよりも低くすることにより、低温超電導磁石の小型化を図り得る、パルス管冷凍機によるシールド板冷却装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1A 超電導コイルの第1の輻射シールド板
1B 超電導コイルの第2の輻射シールド板
2A 超電導コイルの第1の外槽
2B 超電導コイルの第2の外槽
3A 第1のクライオコイル型の冷端熱交換配管
3B 第2のクライオコイル型の冷端熱交換配管
4 液体ヘリウムタンク
5 液体ヘリウムタンクの輻射シールド板
6 1段パルス管冷凍機(1段PTC)
7 4K2段パルス管冷凍機(2段PTC)
8,14 ヘリウム圧縮機
11 蓄冷器
12 圧縮機低圧側制御バルブ
13 圧縮機高圧側制御バルブ
15 パルス管
16 高圧側バッファタンク制御バルブ
17 低圧側バッファタンク制御バルブ
18 高圧側バッファタンク
19 低圧側バッファタンク