(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る電動工具としてのレシプロソーの外観右側面図である。
【
図2】本実施形態に係る電動工具としてのレシプロソーの外観上面図である。
【
図3】本実施形態に係る電動工具としてのレシプロソーの縦断面側面図である。
【
図4】
図3において符号Aで示した位置でのレシプロソーの横断面を示す図である。
【
図5】
図3において符号Bで示した位置でのレシプロソーの横断面を示す図である。
【
図6】
図3において符号C−Cで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図である。
【
図7】
図3において符号Dで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図である。
【
図8】
図3において符号Eで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図である。
【
図9】
図3において符号Fで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図である。
【
図10】
図3において符号Gで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図である。
【
図11】
図3において符号Hで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図である。
【
図12】
図3において符号Jで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図である。
【
図13】本実施形態に係る工具取付部の構成を示す図であり、図中の分図(a)が上面視を、分図(b)が縦断面側面視を、分図(c)が正面視を示している。
【
図14】本実施形態に係る工具取付部の縦断面正面視を示す図であり、図中の分図(a)が
図13中の分図(b)におけるL−M断面を、分図(b)が
図13中の分図(b)におけるL−N断面を、分図(c)が工具の取り付け過程を示している。
【
図15】本実施形態の工具取付部が有する押圧手段としての工具固定ネジの変形形態例を示す図である。
【
図16】
図15で示す工具取付部の縦断面正面視を示す図であり、図中の分図(a)が
図15におけるP−Q断面を、分図(b)が
図15におけるP−R断面を示している。
【
図17】本実施形態の工具取付部が有する押圧手段としての工具固定ネジの別の変形形態例を示す図である。
【
図18】本発明に係る工具取付部が有する押圧手段に捻じりコイルバネを用いた場合を例示する図である。
【
図19】本発明に係る工具取付部が有する押圧手段にカム機構を用いた場合を例示する図である。
【
図20】孔のない工具であっても取り付け可能な本発明に係る工具取付部の形態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、以下の実施形態は、本発明に係る電動工具がレシプロソーとして構成される場合を例示して説明するが、本発明が適用可能な電動工具はレシプロソーに限られるものではなく、ジグソー等の工具が往復直線運動を行うあらゆる種類の電動工具に適用可能である。
【0019】
図1は、本実施形態に係る電動工具としてのレシプロソーの外観右側面図であり、
図2は、本実施形態に係る電動工具としてのレシプロソーの外観上面図である。また、
図3は、本実施形態に係るレシプロソーの縦断面側面図である。さらに、
図4は、
図3において符号Aで示した位置でのレシプロソーの横断面を示す図であり、
図5は、
図3において符号Bで示した位置でのレシプロソーの横断面を示す図であり、
図6は、
図3において符号C−Cで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図であり、
図7は、
図3において符号Dで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図であり、
図8は、
図3において符号Eで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図であり、
図9は、
図3において符号Fで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図であり、
図10は、
図3において符号Gで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図であり、
図11は、
図3において符号Hで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図であり、
図12は、
図3において符号Jで示した位置でのレシプロソーの縦断面を示す図である。なお、
図3〜
図12については、説明の便宜のために、部分的に透視図として描かれている箇所がある。また、本明細書では、説明の便宜のために、レシプロソー10の方向を
図1及び
図2で示すように定義した。すなわち、本実施形態に係るレシプロソー10を作業者が把持したときに、作業者から見た場合の方向に基づいて「前、後、上、下、左、右」を決定してある。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るレシプロソー10は、外郭形状を構成するハウジング11と、このハウジング11の前方先端部に着脱自在な状態で取り付けられる工具12とを有して構成されている。なお、本実施形態の工具12には、片刃のカッター刃を有する刃物工具が用いられる場合が例示されている。
【0021】
本実施形態のハウジング11は、工具12の取り付け位置の後方近傍に左右方向に抜ける開口孔13を有している。この開口孔13の上方に位置する部位には、前方側にトリガースイッチ14が設置されており、また、トリガースイッチ14の後方側には、作業者が把持するための把持部11aが形成されている。したがって、作業者は、手指で把持部11aを握るとともに、指でトリガースイッチ14を上方に向けて押し込んだり開放したりすることで、レシプロソー10のオン・オフ制御を行うことができるようになっている。このように、本実施形態のハウジング11は、工具12と把持部11aとの距離が非常に近接して構成されているので、作業者はダイレクトな感覚を持って操作力を工具12に及ぼすことができるようになっている。よって、本実施形態に係るレシプロソー10は、従来技術に比べて操作性を飛躍的に向上させた外郭構成が採用されている。また、本実施形態の装置構成の場合には、工具と把持部とが近接しているので、工具を被加工材に強く押し当てることが容易に可能となっている。なお、ハウジング11の後方には、レシプロソー10に対して電力を供給するための電源コード15が取り付けられており、不図示の外部電源からの電力をレシプロソー10に対して好適に取り込むことができるようになっている。
【0022】
以上、本実施形態に係るレシプロソー10の外郭構成について説明した。次に、
図3〜
図12を参照して、本実施形態に係るレシプロソー10の内部構造について詳細に説明する。
【0023】
本実施形態に係るレシプロソー10は、工具12を駆動するための動力源となるモータ21と、モータ21によって得られる回転駆動力を往復駆動力に変換する駆動力変換機構31と、工具12を着脱自在に取り付け可能な工具取付部51と、駆動力変換機構31によって得られる往復駆動力を工具取付部51に伝達する伝達部として機能するブレードアーバー41と、を有して構成されている。
【0024】
本実施形態のモータ21は、モータ軸21aを縦(上下)方向に向けて設置されており、ハウジング11内での設置スペースが最小限に抑えられている。すなわち、本実施形態の様にモータ21を縦置きにした方が、モータを横方向で配置する場合に比べてハウジング11の後方側のスペースを小さくすることができるので、レシプロソー10のコンパクト化を実現することができている。なお、電源コード15によってレシプロソー10内に供給された不図示の外部電源からの電力は、トリガースイッチ14の上方に設置されたスイッチ装置14aに送られており、トリガースイッチ14の押し込み・開放動作に応じてスイッチ装置14aのオン・オフ制御が行われ、スイッチ装置14aがオンとなったときに電力がモータ21へ供給されることで、モータ軸21aの回転駆動が実施されるようになっている。
【0025】
また、本実施形態のモータ21が有するモータ軸21aの軸先端には、ピニオン22が設置されている。このピニオン22は、後述する駆動力変換機構31が有する駆動ギア32と噛み合っており、モータ21によって得られる回転駆動力を駆動力変換機構31へと伝達できるように構成されている。
【0026】
なお、本実施形態では、モータ軸21aの軸先端に設置されたピニオン22が金属材料によって形成される一方、駆動ギア32は樹脂材料によって形成されている。駆動ギア32を絶縁材料である樹脂材料によって形成することで、電力を供給されるモータ21と工具12との電気的な絶縁状態が実現するので、本実施形態に係るレシプロソー10の安全性が担保される。
【0027】
本実施形態の駆動力変換機構31は、モータ21からの回転駆動力を受ける回転体である駆動ギア32の回転を、駆動ギア32及び偏心カム34を介して後述するブレードアーバー41の往復直線運動に変換するように構成される機構である。この駆動力変換機構31は、軸33と、駆動ギア32と、偏心カム34とを有して構成されている。そして、モータ軸21aから前方に距離を取った箇所に対して、軸33が縦(上下)方向に軸線方向を向けた状態で設置されている。この軸33は、上方側の軸端がハウジング11に固定されるとともに、下方側の軸端がアーバーメタル11bに形成された孔に挿嵌されているので、ハウジング11内で固定された状態で設置された軸体である。また、この軸33には、駆動ギア32及び偏心カム34が軸33の軸周りを回動可能な状態で嵌合されている。なお、駆動ギア32と偏心カム34とは、互いの接合面に形成されたセレーションによって一体的に結合されている。そして、モータ軸21aのピニオン22と、軸33に対して回動可能に設置された駆動ギア32とは、噛み合い状態となるように構成されているので、モータ21の駆動によってモータ軸21a及びピニオン22に生じる回転駆動力は、駆動ギア32に伝達されるとともに、駆動ギア32との噛み合いによって減速するようになっている。
【0028】
さらに、本実施形態の偏心カム34は、駆動ギア32の上方側に配置される上方側偏心カム34aと、駆動ギア32の下方側に配置される下方側偏心カム34bとの2つで構成されており、これら2つの偏心カム34a,34bは、
図8にて示されるように、軸33の軸中心から各偏心カム34a,34bのカム面外周のうちの最も長い距離の箇所が180度異なる方向を向くように配置されている。すなわち、本実施形態に係る2つの偏心カム34a,34bは、駆動ギア32に対してカム面の長辺が逆側となるように設置されているのである。そして、駆動ギア32の下方側に配置される下方側偏心カム34bにはブレードアーバー41が、駆動ギア32の上方側に配置される上方側偏心カム34aにはバランスウエイト45に接続するウエイト保持プレート46が接続されている。
【0029】
本実施形態において伝達部として機能するブレードアーバー41は、特に
図3及び
図4に示すように、横方向に延びて形成された長尺の板材であり、ハウジング11内の下方の位置で前後方向に伸びるように配置されている。このブレードアーバー41の後方側の端部の左右側面は、ハウジング11内の左右に配置された軸受であるアーバーメタル11bによって左右方向の動きを規制されている。アーバーメタル11bと接触するブレードアーバー41の左右側面の形状は、丸みを帯びた円弧形状を有する突状で形成されているので、ブレードアーバー41が前後方向でスムーズなスライド運動ができるようになっている。
【0030】
また、ブレードアーバー41の後方側の端部には、カム溝41aが形成されている。このカム溝41aには、上述した下方側偏心カム34bが転動可能な状態で設置されている。これにより、モータ21の回転駆動によってピニオン22が回転すると、軸33に対して回動可能に設置された駆動ギア32にその回転駆動力が伝達され、駆動ギア32と一緒に偏心カム34(下方側偏心カム34b)が回転運動を行う。すると、下方側偏心カム34bとカム溝41aとの摺接作用によって、ブレードアーバー41が前後方向に往復直線運動を行うこととなる。このとき、ブレードアーバー41は、アーバーメタル11bによって左右方向の動きを規制されているので、ブレードアーバー41は、前後方向でのスムーズなスライド運動が可能となっている。
【0031】
一方、本実施形態のウエイト保持プレート46は、特に
図3及び
図5に示すように、横方向に延びて形成された長尺の板材であり、その前方にバランスウエイト45を備えるとともに、ハウジング11内におけるブレードアーバー41の上方の位置で前後方向に伸びるように配置されている。このウエイト保持プレート46の後方側の端部近傍には長孔46bが形成されており、この長孔46bは、ウエイト保持プレート46の前後方向での往復直線運動に沿った方向に延びて開口している。また、長孔46bには、ハウジング11内に固定設置されたガイドピン35が挿入設置されており(
図7参照)、ウエイト保持プレート46の前後方向での往復直線運動を案内する機能を発揮している。したがって、ウエイト保持プレート46は、ハウジング11内に固定配置されたガイドピン35によって左右方向の動きを規制されている。
【0032】
さらに、ウエイト保持プレート46の前後方向中央部には、カム溝46aが形成されている。このカム溝46aには、上述した上方側偏心カム34aが転動可能な状態で設置されている。これにより、モータ21の回転駆動によってピニオン22が回転すると、軸33に対して回動可能に設置された駆動ギア32にその回転駆動力が伝達され、駆動ギア32と一緒に偏心カム34(上方側偏心カム34a)が回転運動を行う。すると、上方側偏心カム34aとカム溝46aとの摺接作用によって、ウエイト保持プレート46が前後方向に往復直線運動を行うこととなる。このとき、ウエイト保持プレート46は、自身に形成された長孔46bとハウジング11内に固定配置されたガイドピン35との協働作用によって左右方向の動きを規制されているので、ウエイト保持プレート46は、前後方向でのスムーズなスライド運動が可能となっている。
【0033】
なお、以上のように上下配置されるブレードアーバー41とウエイト保持プレート46であるが、ウエイト保持プレート46の前方に設置されるバランスウエイト45の設置箇所では、ブレードアーバー41とバランスウエイト45とが、同一の平面内で重畳するように設けられている。すなわち、ブレードアーバー41の中間の位置には、上下方向に開口した貫通孔41bが形成されており、この貫通孔41b内には、その孔内周面に摺接可能な状態で当接するバランスウエイト45が配置されている。
【0034】
上述したように、ブレードアーバー41は、カム溝41aを介して下方側偏心カム34bに取り付けられており、バランスウエイト45を備えるウエイト保持プレート46は、カム溝46aを介して上方側偏心カム34aに取り付けられている。したがって、モータ21が回転駆動を行うと、カム面の長辺が逆側で配置された2つの偏心カム34a,34bの作用によって、ブレードアーバー41とバランスウエイト45とは前後逆方向での往復直線運動を行うように構成されている。すなわち、ブレードアーバー41が装置前方に突出するとバランスウエイト45は装置後方に移動し、ブレードアーバー41が装置後方に向けて移動するとバランスウエイト45は装置前方に移動することとなる。ブレードアーバー41とバランスウエイト45とが、このような駆動配置関係とされることで、ブレードアーバー41の前後方向での往復直線運動に基づく重心位置の移動がバランスウエイト45によって打ち消され、ブレードアーバー41の往復直線運動による振動が低減することとなる。また、本実施形態では、ブレードアーバー41とバランスウエイト45とが、同一の平面内で重畳するように設けられているので、装置自体のコンパクト化が実現している。かかる効果は、作業者に与える疲労感を極小化できることにもつながるものである。
【0035】
なお、バランスウエイト45と貫通孔41bとが接触する面は、平滑面として形成されている。これにより、駆動ギア32の回転とともに2つの偏心カム34a,34bが回転するときに、互いに逆方向に往復直線運動を行うブレードアーバー41とバランスウエイト45とは、互いの平滑面で摺接して案内されることになるので、ブレードアーバー41の駆動時の振動が低減することとなる。
【0036】
また、
図9と
図10の比較に表われるように、ウエイト保持プレート46におけるバランスウエイト45が設置された箇所の一部の領域は、ブレードアーバー41との距離を縮めるように曲げ加工が施されている(
図10参照)。この曲げ加工により、ウエイト保持プレート46とバランスウエイト45とでブレードアーバー41を挟み込むような形状が形成されるので、ブレードアーバー41とバランスウエイト45とは安定して逆向きの往復直線運動を行うことが可能となる。
【0037】
なお、
図9及び
図10に示されるように、バランスウエイト45におけるブレードアーバー41との摺接箇所の下方側は、左右に延びる鍔状の形状として形成されている。かかる鍔状形状は、狭いスペースにバランスウエイト45を収納することで、必要となるウエイトを効率良く確保することを目的として採用されたものである。かかる形状の採用によっても、装置自体のコンパクト化が実現するので、本実施形態によれば、作業者に与える疲労感を極小化することが可能な電動工具を提供することが可能となる。
【0038】
さらに、ブレードアーバー41の前方側の端部には、工具12を着脱自在に取り付け可能な工具取付部51が止めネジ52によって着脱自在に連結されており、ブレードアーバー41と工具取付部51とは、前後方向で一体的に往復直線運動できるようになっている。
【0039】
またさらに、
図3、
図4及び
図12に示すように、ブレードアーバー41の前方側における工具取付部51の取り付け位置直後の位置には、ブレードアーバー41を支承するための軸受け44が設置されている。この軸受け44は、特に
図12に示されるように、ブレードアーバー41の全周を取り囲んで設置される部材である。また、この軸受け44の左右両側には、左右方向に軸線方向を向けて取り付けられる調整ネジ44aが設置されている。この調整ネジ44aの左右方向でのネジ込み量を調整することで、軸受け44の左右方向での位置が微調整される。つまり、調整ネジ44aの作用によって、ブレードアーバー41の左右方向での取り付け位置、すなわち、工具12の左右方向での取り付け角度を調整することが可能となっている。また、調整ネジ44aに公知の緩み止め機能を付加してもよい。
【0040】
さらにまた、
図3及び
図11に示すように、ブレードアーバー41における軸受け44の取り付け位置の後方側には、焼入れプレート47が設置されている。この焼入れプレート47は、ハウジング11内で上面を開放状態で設置される部材であり、その上面でブレードアーバー41の下面側を支える役割を担っている。
【0041】
そして、本実施形態に係るレシプロソー10では、後述する工具取付部51に取り付けられる工具12を利用して加工を行う場合、工具12には、下方側から上方に向けて力が加わるので、その加工の際の外力は、ブレードアーバー41を上方に向けて押し付ける力となって作用することとなる。このとき、工具取付部51の設置位置後方近傍であり、かつ、工具取付部51とバランスウエイト45との設置位置の中間に配置された軸受け44と焼入れプレート47とが機能することで、ブレードアーバー41に加わる外力を軸受け44と焼入れプレート47とが支承し、バランスウエイト45設置位置への外力の影響をほぼなくすことが可能となる。つまり、軸受け44と焼入れプレート47との作用によって、ブレードアーバー41とバランスウエイト45との逆方向でのスムーズな往復直線運動が維持されるので、レシプロソー10の制振化や静音化が実現されることとなる。
【0042】
次に、本実施形態に係る工具取付部51について、
図13及び
図14を参照図面に加えて詳細に説明を行う。ここで、
図13は、本実施形態に係る工具取付部の構成を示す図であり、図中の分図(a)が上面視を、分図(b)が縦断面側面視を、分図(c)が正面視を示している。また、
図14は、本実施形態に係る工具取付部の縦断面正面視を示す図であり、図中の分図(a)が
図13中の分図(b)におけるL−M断面を、分図(b)が
図13中の分図(b)におけるL−N断面を、分図(c)が工具の取り付け過程を示している。
【0043】
本実施形態に係る工具取付部51は、伝達部であるブレードアーバー41の先端部に設置されるとともに工具12を着脱自在に取り付け可能な部材である。具体的には、工具取付部51は、工具12の取り付け面となる基準壁面51aと、工具12が有する取り付け用の孔12aに挿入するために基準壁面51aに立設される取付軸53と、工具12の長手方向における取付軸53の設置位置より前方位置で、工具12の反刃先側を支持するために基準壁面51aに立設される工具保持形状部51bと、工具12の長手方向における取付軸53の設置位置より後方位置で、工具12の反刃先側を刃先側に向かって押圧する押圧手段としての工具固定ネジ54と、を備えて構成されている。
【0044】
本実施形態に係る工具取付部51に取り付けられる工具12は、プレート状のカッター刃を想定しており、このカッター刃としての工具12には、工具取付部51が有する取付軸53に嵌め込むことの可能な孔12aが予め形成されている。したがって、
図14中の分図(c)で示すように、カッター刃としての工具12の反刃先側を工具保持形状部51bに付け当てた状態から、
図14中の分図(b)で示すように、カッター刃としての工具12の側面を基準壁面51aに密着するように添わせると、工具12に形成された孔12aに工具取付部51が有する取付軸53が嵌め込まれる。この状態から、
図14中の分図(a)で示すように、工具固定ネジ54を下方に締め込むと、工具固定ネジ54の先端部がカッター刃としての工具12の反刃先側を刃先側に向かって押圧することとなる。この状態は、
図13中の分図(b)に示されており、カッター刃としての工具12は、取付軸53と工具保持形状部51bと工具固定ネジ54とによって三点支持され、工具取付部51に対する工具12の確実な固定保持状態が実現されることとなる。なお、工具取付部51に対して工具12を取り付ける作業において、工具12の孔12aを取付軸53に嵌め込んだ状態で反刃先側を工具保持形状部51bに当てると、その状態で工具12は工具取付部51に仮保持されるので、この状態から工具固定ネジ54を締め込めば容易に工具12の取り付け作業が完了するようになっている。すなわち、工具12の取付作業においては、その作業中に工具12を手で工具取付部51に常時仮保持しておく必要がないので、片手であっても工具12の取り付けは可能である。すなわち、本実施形態に係る工具取付部51には、非常に作業性の高い構成が採用されている。
【0045】
また、本実施形態では、工具12を三点支持する部材である取付軸53と工具保持形状部51bと工具固定ネジ54の全てにテーパー形状が形成されており、かかるテーパー形状の作用によって工具12が確実に固定保持されるようになっている。具体的に説明すると、取付軸53は、基準壁面51aに近付くほどその軸径が小さくなるように形成されている(
図14等参照)。したがって、取付軸53に対して孔12aを介して嵌め込まれた工具12は、取付軸53のテーパー形状の作用によって基準壁面51aの方向に移動し、基準壁面51aに密着するように位置することとなる。また、工具保持形状部51bについても、基準壁面51aに近付くほどその厚み寸法が小さくなるように形成されているので、工具保持形状部51bが有するテーパー形状の奥側に嵌め込まれた工具12は、テーパー形状の作用によって基準壁面51aの方向に固定され、基準壁面51aに密着するように位置することとなる。さらに、工具固定ネジ54についても、工具12と接触して押圧するネジの先端部分がテーパー形状を有して構成されているので、工具固定ネジ54から押圧を受けた工具12は、工具固定ネジ54が有するテーパー形状の作用によって基準壁面51aの方向に移動し、基準壁面51aに密着するように位置することとなる。以上のように、本実施形態に係る工具取付部51は、工具12を三点支持する箇所の全てにテーパー形状を有しているので、工具12の確実な固定保持が可能となっている。また、本実施形態に係る工具取付部51では、工具12を基準壁面51aに対して押圧(密着)して固定することができるので、工具12の取り付け精度が高いという効果を得ることができる。さらに、従来技術に係る固定方法の場合、工具を刃先側と反刃先側から挟持する方式が取られており、このような従来の固定方式の場合には、その挟持力によって工具が変形(座屈)してしまう虞が存在していたが、本実施形態の場合には、工具12を基準壁面51aに対して押圧(密着)して固定することが行われるので、工具12が変形(座屈)してしまう虞がない。
【0046】
さらに、本実施形態の基準壁面51aには、押圧手段である工具固定ネジ54が工具12を押圧する箇所の位置に対して、工具12の弾性変形を許容する逃がし部51cが形成されている。この逃がし部51cが存在することで、工具固定ネジ54から押圧力を受けた工具12は、工具固定ネジ54との接触箇所が逃がし部51cの側に撓んで押し付けられるので、さらに強固に工具12を工具取付部51に対して固定設置することが可能となる。また、この逃がし部51cが存在することで、工具12の撓み量分の工具固定ネジ54の締め込み代が発生するので、操作者は高い操作感を得ることが可能となる。
【0047】
なお、工具12を三点支持する部材である取付軸53と工具保持形状部51bと工具固定ネジ54の配置関係について、本実施形態では、取付軸53が下方に配置されるとともに、工具保持形状部51bと工具固定ネジ54が取付軸53の上方かつ前後に分かれて配置されている。つまり、取付軸53と工具保持形状部51bと工具固定ネジ54は、設置位置をつなぐと逆三角形となるように配置されている。かかる配置関係は、操作者が操作することとなる工具固定ネジ54に加わる力を少なくする目的で採用された配置構成であり、上方かつ前後に分かれて配置される工具保持形状部51bと工具固定ネジ54に加わる力は、取付軸53に加わる力の二分の一となるように構成されている。したがって、本実施形態において、工具固定ネジ54を操作する操作者は、少ない力によって工具12の確実な固定保持状態を実現できるようになっている。また、かかる構成によって、工具使用時に工具12にかかる負荷は、取付軸53と工具保持形状部51bとで支持されるため、工具固定ネジ54に対して負荷の影響が及ぶことがない。したがって、本実施形態に係る工具取付部51は、非常に耐久性の高い構成を有しているということができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る工具取付部51では、
図13等で示すように、工具12の刃先以外の箇所で固定保持することが可能となっている。したがって、従来技術のように工具の刃先で工具取付部自体に傷が付くことがないので、本実施形態に係る工具取付部51は、装置寿命の長い装置であるということができる。
【0049】
またさらに、本実施形態に係る工具取付部51では、
図13等で示すように、工具12を固定保持した状態で当該工具12を目視可能な構成となっているので、常に取付状態を確認することができる。したがって、従来技術に比べて安全性に優れるとともにメンテナンス性のよい装置であるということができる。
【0050】
以上、本実施形態に係るレシプロソー10の装置構成を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0051】
例えば、上述した本実施形態の工具取付部51では、押圧手段としての工具固定ネジ54が上下方向で締め込み可能に配置されていたが、工具固定ネジ54が及ぼす押圧力の方向については、どの様な方向であってもよい。すなわち、
図15及び
図16で示されるように、押圧手段としての工具固定ネジ54aを水平方向に向け、カッター刃としての工具12の側面から基準壁面51aに向けて押圧するように構成することも可能である。かかる構成によっても、工具12の三点支持による確実な固定保持状態を実現することが可能である。
【0052】
また、
図17に示すように、押圧手段としての工具固定ネジ54bを斜め方向に向けることでも、工具12を基準壁面51aに向けて押圧することが可能である。
図17に例示する構成についても、上述した実施形態、並びに
図15及び
図16で例示した変形形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
また、上述した本実施形態の工具取付部51では、押圧手段として工具固定ネジ54が採用された場合を例示したが、本発明に係る押圧手段はネジに限られるものではない。例えば、
図18に示すように、捻じりコイルバネ84を用いることも可能である。捻じりコイルバネ84の弾性力を利用することで、カッター刃としての工具12は、取付軸53と工具保持形状部51bと捻じりコイルバネ84とによって三点支持され、工具取付部51に対する工具12の確実な固定保持状態が実現されることとなる。
【0054】
さらに、本発明に係る押圧手段は、
図19に示すような、カム機構85によっても実現することができる。カム機構85が有するカム面の作用による押圧力を利用することで、カッター刃としての工具12は、取付軸53と工具保持形状部51bとカム機構85が有するカム面とによって三点支持され、工具取付部51に対する工具12の確実な固定保持状態が実現されることとなる。
【0055】
また、上述した本実施形態の工具取付部51では、カッター刃としての工具12に対して予め孔12aが形成されている場合が例示されていたが、孔12aのない工具12であっても取り付け可能な工具取付部を実現することもできる。例えば、
図20に示すように、上述した本実施形態に係る工具保持形状部51bと同様の工具保持形状部91bを工具保持形状部51bに対向するように配置させ、工具保持形状部51bと工具保持形状部91bとで工具12を挟み込んだ状態にしておき、この状態から水平方向に向けた押圧手段としての工具固定ネジ54aを締め込むことで、カッター刃としての工具12を三点支持して確実に固定保持することが可能となる。
【0056】
また例えば、上述した実施形態では、駆動ギア32に設置された2つの偏心カム34a,34bが、駆動ギア32の異なるギア側面(すなわち、駆動ギア32の上面と下面)にそれぞれ配置されていた。しかしながら、これら2つの偏心カムは、上述した実施形態の場合と同様の作用効果を発揮できるものであればどの様な配置関係であってもよい。すなわち、駆動ギア32の上面側に対して両方の偏心カムを配置したり、駆動ギア32の下面側に対して両方の偏心カムを配置したりするなどのように、いずれの偏心カムも駆動ギアのギア側面の一方側に配置されている形態を採用することができる。
【0057】
また例えば、上述した実施形態では、工具12としてカッター刃を有する刃物工具が用いられる場合が例示されており、この刃物工具の刃は下方を向いた状態で用いられるものであった。しかしながら、本発明に適用可能な工具については、その工具の方向を水平方向や斜め方向などの任意の方向に向けることが可能である。なお、このような変形形態を採用した場合には、上述した調整手段による調整方向を工具の向く方向に応じて変更すればよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、工具12として片刃の刃物工具を利用した場合を例示したが、本発明に係る電動工具に適用可能な工具は、両刃の刃物工具であってもよい。
【0059】
さらに、上述した実施形態では、工具として刃物工具を利用した場合を例示したが、本発明に係る電動工具に適用可能な工具は、刃物工具には限られない。本発明に係る工具は、鋸刃を有する工具やケレン作業を行うための工具、やすり工具など、往復直線運動で利用可能な工具であれば、どのようなものであってもよい。
【0060】
またさらに、上述した実施形態では、電源コード15を介して外部電源からの電力供給を受ける形式の電動工具が例示されていたが、本発明に係る電動工具は、バッテリを装着することで電力供給を受ける形式の電動工具として構成することも可能である。
【0061】
さらにまた、上述した実施形態では、説明の便宜のために「前、後、上、下、左、右」の方向を定義して説明したが、この方向については、適宜変更が可能である。すなわち、上述した実施形態等では、工具12が前後方向に往復直線運動する場合を例示したが、例えば、ジグソー等のように、工具が「上下」方向で往復直線運動を行うような形式の電動工具であっても、本発明を適用可能である。工具が「上下」方向で往復直線運動を行う電動工具の場合、上述した実施形態等で採用した「前、後、上、下、左、右」の方向は、それぞれ順に「下、上、前、後、左、右」の方向に置き換えることができる。したがって、明細書又は特許請求の範囲で規定される方向を表す用語については、本発明の技術思想に基づいて判断すべきものである。
【0062】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。