特許第5893510号(P5893510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893510
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】パルス管冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   F25B9/00 311
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-120591(P2012-120591)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-245889(P2013-245889A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】池田 和也
(72)【発明者】
【氏名】平井 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 貞充
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−283580(JP,A)
【文献】 特表2003−532045(JP,A)
【文献】 特開2001−099506(JP,A)
【文献】 特開平10−232057(JP,A)
【文献】 特開2001−124426(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0040315(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動気体を吐出する高圧端と作動気体を吸入する低圧端とを有する圧縮機と、低温端および高温端を有する蓄冷器と、低温端および高温端を有するパルス管とを備えたパルス管冷凍機において、
前記圧縮機の高圧端に接続された第1流路と、該第1流路に設けられた高圧ガス制御バルブと、前記圧縮機の低圧端に接続された第2流路と、該第2流路に設けられた低圧ガス制御バルブと、前記第1流路および前記第2流路に前記蓄冷器の高温端が接続され、前記蓄冷器の低温端に前記パルス管の低温端が接続され、前記パルス管の高温端に接続された第3流路および第4流路と、前記第3流路に接続された高圧バッファと、前記第4流路に接続された低圧バッファと、前記第3流路に設けられた高圧バッファ制御バルブと、前記第4流路に設けられた低圧バッファ制御バルブと、前記高圧ガス制御バルブより圧縮機側の第1流路と、前記高圧バッファ制御バルブより高圧バッファ側の第3流路もしくは高圧バッファとを接続する第5流路と、前記低圧ガス制御バルブより圧縮機側の第2流路と、前記低圧バッファ制御バルブより低圧バッファ側の第4流路もしくは低圧バッファとを接続する第6流路と、前記第5流路に設けられた高圧開閉バルブと、前記第6流路に設けられた低圧開閉バルブを具備することを特徴とするパルス管冷凍機。
【請求項2】
請求項1記載のパルス管冷凍機において、前記高圧ガス制御バルブが閉状態の時の少なくとも一部の期間で前記高圧開閉バルブを開状態とし、前記低圧ガス制御バルブが閉状態の時の少なくとも一部の期間で前記低圧開閉バルブを開状態とすることを特徴とするパルス管冷凍機。
【請求項3】
請求項1記載のパルス管冷凍機において、前記高圧ガス制御バルブ、前記低圧ガス制御バルブおよび前記低圧バッファ制御バルブが閉状態で前記高圧バッファ制御バルブが状態の時の少なくとも一部の期間で前記低圧開閉バルブを開状態とし、前記高圧ガス制御バルブ、前記低圧ガス制御バルブおよび前記高圧バッファ制御バルブが閉状態で前記低圧バッファ制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記高圧開閉バルブを開状態とすることを特徴とするパルス管冷凍機。
【請求項4】
請求項1記載のパルス管冷凍機において、前記高圧バッファ制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記高圧開閉バルブを開状態とし、前記低圧バッファ制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記低圧開閉バルブを開状態とすることを特徴とするパルス管冷凍機。
【請求項5】
請求項1記載のパルス管冷凍機において、前記高圧ガス制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記高圧開閉バルブを開状態とし、前記低圧ガス制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記低圧開閉バルブを開状態とすることを特徴とするパルス管冷凍機。
【請求項6】
請求項5記載のパルス管冷凍機において、前記高圧ガス制御バルブが開くのと概略同時に前記高圧開閉バルブを開き、前記高圧バッファ制御バルブよりも早く前記高圧開閉バルブを閉じ、前記低圧ガス制御バルブが開くのと概略同時に前記低圧開閉バルブが開き、前記低圧バッファ制御バルブよりも早く前記低圧開閉バルブを閉じるようにしたことを特徴とするパルス管冷凍機。
【請求項7】
請求項1から6記載のパルス管冷凍機において、前記第5流路および第6流路には絞り機構を付設することを特徴とするパルス管冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス管冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来のアクティブバッファ方式パルス管冷凍機システム構成図、図5はそのアクティブバッファ方式パルス管冷凍機システムのP−V(圧力−容積)曲線〔図5(a)〕および制御バルブ開閉シーケンス〔図5(b)〕である(下記特許文献1参照)。なお、図5(b)において、線分部分はバルブが開いている状態を示している。
これらの図において、101はパルス管、102は冷端熱交換器、103は蓄冷器、104は低圧ガス制御バルブ(LC)、105はガス圧縮機、106は高圧ガス制御バルブ(HC)、107は高圧バッファ制御バルブ(HB)、108は高圧バッファタンク、109は低圧バッファ制御バルブ(LB)、110は低圧バッファタンクである。
【0003】
また、Pclは圧縮機戻り圧力、Pchは圧縮機供給圧力、Prは蓄冷器常温側圧力、Ppはパルス管常温側圧力、Pbhは高圧バッファ圧力、Pblは低圧バッファ圧力である。
パルス管冷凍機はGM冷凍機等と同様に蓄冷器103を備えた冷凍機である。他の冷凍機と比べて特異な点は、冷凍部(膨張機)に動く固体部分がないことである。機械的可動部分は常温部のみであるため、伝導冷却で超電導コイルを冷却する場合、超電導コイル部分を昇温せずともメンテナンスが可能となる。パルス管冷凍機は、圧力振動源(ガス圧縮機)105と、膨張機(蓄冷器103、パルス管101で構成)、そして位相調節機構(種々の方式がある)からなっている。アクティブバッファ方式は位相調節方法の一つであり、現在もっとも優れた冷凍能力を達成できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2553822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のアクティブバッファ方式パルス管冷凍機システムでは、運転時の圧力波形において、ガス圧縮機105の圧縮機供給圧力Pchとガス圧縮機105の戻り圧力Pclが鋸波形となり、電動機トルクが大きくなる。また、ガス圧縮機105の圧縮機供給圧力Pchに対して蓄冷器常温側圧力Prの振幅が小さく、圧力損失が大きいため、圧縮・膨張が十分なされていないといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、パルス管冷凍機の圧力振動源の圧縮比を低減させ、かつ冷凍機内の圧縮・膨張の仕事量を増やし、パルス管内のPV(圧力−容積)曲線を最適化することによって、さらなる冷凍能力・COP(エネルギー消費効率)の向上を図り得るパルス管冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕作動気体を吐出する高圧端と作動気体を吸入する低圧端とを有する圧縮機と、低温端および高温端を有する蓄冷器と、低温端および高温端を有するパルス管とを備えたパルス管冷凍機において、前記圧縮機の高圧端に接続された第1流路と、この第1流路に設けられた高圧ガス制御バルブと、前記圧縮機の低圧端に接続された第2流路と、この第2流路に設けられた低圧ガス制御バルブと、前記第1流路および前記第2流路に前記蓄冷器の高温端が接続され、前記蓄冷器の低温端に前記パルス管の低温端が接続され、前記パルス管の高温端に接続された第3流路および第4流路と、前記第3流路に接続された高圧バッファと、前記第4流路に接続された低圧バッファと、前記第3流路に設けられた高圧バッファ制御バルブと、前記第4流路に設けられた低圧バッファ制御バルブと、前記高圧ガス制御バルブより圧縮機側の第1流路と、前記高圧バッファ制御バルブより高圧バッファ側の第3流路もしくは高圧バッファとを接続する第5流路と、前記低圧ガス制御バルブより圧縮機側の第2流路と、前記低圧バッファ制御バルブより低圧バッファ側の第4流路もしくは低圧バッファとを接続する第6流路と、前記第5流路に設けられた高圧開閉バルブと、前記第6流路に設けられた低圧開閉バルブを具備することを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載のパルス管冷凍機において、前記高圧ガス制御バルブが閉状態の時の少なくとも一部の期間で前記高圧開閉バルブを開状態とし、前記低圧ガス制御バルブが閉状態の時の少なくとも一部の期間で低圧開閉バルブを開状態とすることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載のパルス管冷凍機において、前記高圧ガス制御バルブ、前記低圧ガス制御バルブおよび前記低圧バッファ制御バルブが閉状態で前記高圧バッファ制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記低圧開閉バルブを開状態とし、前記高圧ガス制御バルブ、前記低圧ガス制御バルブおよび前記高圧バッファ制御バルブが閉状態で前記低圧バッファ制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記高圧開閉バルブを開状態とすることを特徴とする。
【0009】
〔4〕上記〔1〕記載のパルス管冷凍機において、前記高圧バッファ制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記高圧開閉バルブを開状態とし、前記低圧バッファ制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記低圧開閉バルブを開状態とすることを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕記載のパルス管冷凍機において、前記高圧ガス制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記高圧開閉バルブを開状態とし、前記低圧ガス制御バルブが開状態の時の少なくとも一部の期間で前記低圧開閉バルブを開状態とすることを特徴とする。
【0010】
〔6〕上記〔5〕記載のパルス管冷凍機において、前記高圧ガス制御バルブが開くのと概略同時に前記高圧開閉バルブを開き、前記高圧バッファ制御バルブよりも早く前記高圧開閉バルブを閉じ、前記低圧ガス制御バルブが開くのと概略同時に前記低圧開閉バルブを開き、前記低圧バッファ制御バルブよりも早く前記低圧開閉バルブを閉じるようにしたことを特徴とする。
【0011】
〔7〕上記〔1〕から〔6〕記載のパルス管冷凍機において、前記第5流路および前記第6流路には絞り機構を付設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)高低圧開閉バルブを動作させることで、バッファタンクがガス圧縮機の高低圧バッファの役割を担い、圧縮機内のガス流が常時あるいは一時的に連続となることにより、圧力の脈動を緩衝し、ガス圧縮機の圧縮比を減少させることにより、運転負荷を少なくすることができ、COP(エネルギー消費効率)が大きくなる。
(2)バッファタンクの高低圧力差が圧縮機高低圧力差に近づくことにより、パルス管内のPV(圧力−容積)の仕事量が大きくなり、冷凍能力が大きくなる。
(3)以上により、冷凍機冷凍能力、COPの向上を図ることができる。
(4)請求項2および3の制御により、圧縮機の圧縮比を減らし、パルス管と蓄冷器による膨張の仕事量を増加させることで、冷凍機の効率の向上を図ることができる。
(5)請求項4〜6の制御により、パルス管内の最適なPV(圧力−容積)曲線を得ることができる。
(6)高低圧開閉制御バルブのCv値を調整(若しくは手動流量調整バルブやオリフィスなどの絞り機構を付設)することにより、ガス圧縮機性能に応じたパルス管内の最適なPV(圧力−容積)曲線を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例を示すパルス管冷凍機システム構成図である。
図2】本発明の第1実施例を示すパルス管冷凍機システムのP−V(圧力−容積)曲線および制御バルブ開閉シーケンスを示す図である。
図3】本発明の第2実施例を示すパルス管冷凍機システムのP−V(圧力−容積)曲線および制御バルブ開閉シーケンスを示す図である。
図4】従来のアクティブバッファ方式パルス管冷凍機システム構成図である。
図5】従来のアクティブバッファ方式パルス管冷凍機システムのP−V(圧力−容積)曲線および制御バルブ開閉シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のパルス管冷凍機は、作動気体を吐出する高圧端と作動気体を吸入する低圧端とを有する圧縮機と、低温端および高温端を有する蓄冷器と、低温端および高温端を有するパルス管とを備えたパルス管冷凍機において、前記圧縮機の高圧端に接続された第1流路と、この第1流路に設けられた高圧ガス制御バルブと、前記圧縮機の低圧端に接続された第2流路と、この第2流路に設けられた低圧ガス制御バルブと、前記第1流路および前記第2流路に前記蓄冷器の高温端に接続され、前記蓄冷器のの低温端に前記パルス管の低温端が接続され、前記パルス管の高温端に接続された第3流路および第4流路と、前記第3流路に接続された高圧バッファと、前記第4流路に接続された低圧バッファと、前記第3流路に設けられた高圧バッファ制御バルブと、前記第4流路に設けられた低圧バッファ制御バルブと、前記高圧ガス制御バルブより圧縮機側の第1流路と、前記高圧ガス制御バルブより高圧バッファ側の第3流路もしくは高圧バッファとを接続する第5流路と、前記低圧ガス制御バルブより圧縮機側の第2流路と、前記低圧バッファ制御バルブより低圧バッファ側の第4流路もしくは低圧バッファとを接続する第6流路と、前記第5流路に設けられた高圧開閉バルブと、前記第6流路に設けられた低圧開閉バルブを具備するようにした。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示すパルス管冷凍機システム構成図である。
本発明のパルス管冷凍機は、図1に示すように、作動気体を吐出する高圧端Pchと作動気体を吸入する低圧端Pclとを有する圧縮機5と、低温端Lrおよび高温端Prを有する蓄冷器3と、低温端Lpおよび高温端Ppを有するパルス管1とを備えており、蓄冷器3の低温端Lrにパルス管1の低温端Lpが接続されている。圧縮機5の高圧端Pchには第1流路21が接続され、この第1流路21に高圧ガス制御バルブ(HC)6が配置されている。圧縮機5の低圧端Pclには第2流路22が接続され、この第2流路22に低圧ガス制御バルブ(LC)4が接続されている。これら第1流路21および第2流路22は蓄冷器3の高温端Prに接続されている。また、パルス管1の高温端Ppには高圧バッファ8と接続する第3流路23、ならびに低圧バッファ10と接続する第4流路24が設けられている。第3流路23には高圧バッファ制御バルブ(HB)7が、第4流路24には低圧バッファ制御バルブ(LB)9がそれぞれ配置されている。さらに、高圧ガス制御バルブ(HC)6より圧縮機5側の第1流路21と、前記高圧バッファ制御バルブ(HB)7より高圧バッファ8側の第3流路23もしくは高圧バッファ8とを接続する第5流路25が設けられ、低圧ガス制御バルブ(LC)4より圧縮機5側の第2流路22と、前記低圧バッファ制御バルブ(LB)9より低圧バッファ10側の第4流路24もしくは低圧バッファ10とを接続する第6流路26が設けられる。第5流路25および第6流路26には高圧開閉バルブ(AHC)11、低圧開閉バルブ(ALC)12を配置するようにした。
【0016】
以下、本発明のパルス管冷凍機の制御方法について説明する。
〔A〕実施例1
図2は本発明の第1実施例を示すパルス管冷凍機システムのP−V(圧力−容積)曲線および制御バルブ開閉シーケンスを示す図である。なお、図2(a)において、点線は図5にも示した従来の方式でのP−V(圧力−容積)曲線であり、実線は本実施例により改善されたP−V(圧力−容積)曲線を示す。また、図2(b)において、実線部分は、バルブが開いている状態(開状態)を示している。また、破線部分は、その線の一部の期間でバルブが開いている状態を示している。
【0017】
(1)図2に示すように、高圧ガス制御バルブ(HC)6が閉状態の時の少なくとも一部の期間で高圧開閉バルブ(AHC)11が開状態であり、低圧ガス制御バルブ(LC)4が閉状態の時の少なくとも一部の期間で低圧開閉バルブ(ALC)12が開状態であるように制御することで、前記圧縮機の圧縮比を減らし、前記パルス管と前記蓄冷器による膨張の仕事量を増加させるようにした。
【0018】
(2)また、高圧ガス制御バルブ(HC)6、低圧ガス制御バルブ(LC)4および低圧バッファ制御バルブ(LB)9が閉状態の時で高圧バッファ制御バルブ(HB)7が開状態の時の少なくとも一部の期間で低圧開閉バルブ(ALC)12が開状態であり、高圧ガス制御バルブ(HC)6、低圧ガス制御バルブ(LC)4および高圧バッファ制御バルブ(HB)7が閉状態の時で低圧バッファ制御バルブ(LB)9が開状態の時の少なくとも一部の期間で高圧開閉バルブ(AHC)11が開状態であるように制御することで、前記圧縮機の圧縮比を減らし、前記パルス管と前記蓄冷器による膨張の仕事量を増加させるようにした。
【0019】
図3は本発明の第2実施例を示すパルス管冷凍機システムのP−V(圧力−容積)曲線および制御バルブ開閉シーケンスを示す図である。なお、図3(a)において、点線は図5にも示した従来の方式でのP−V(圧力−容積)曲線であり、実線は本実施例により改善されたP−V(圧力−容積)曲線を示す。また、図3(b)において、実線部分は、バルブが開いている状態(開状態)を示している。また、破線部分は、その線の一部の期間でバルブが開いている状態を示している。
【0020】
〔B〕実施例2
(1)図3に示すように、高圧バッファ制御バルブ(HB)7が開状態の時の少なくとも一部の期間で高圧開閉バルブ(AHC)11が開状態であり、低圧バッファ制御バルブ(LB)9が開状態の時の少なくとも一部の期間で低圧開閉バルブ(ALC)12が開状態であるように制御することで、PV(圧力−容積)曲線を改善するようにした。
【0021】
(2)また、高圧ガス制御バルブ(HC)6が開状態の時の少なくとも一部の期間で高圧開閉バルブ(AHC)11が開状態であり、低圧ガス制御バルブ(LC)4が開状態の時の少なくとも一部の期間で低圧開閉バルブ(ALC)12が開状態であるように、制御することで、PV(圧力−容積)曲線を改善するようにした。
さらに、上記(2)において、高圧ガス制御バルブ(HC)6が開くのと概略同時に高圧開閉バルブ(AHC)11が開き、高圧ガス制御バルブ(HC)6よりも早く高圧開閉バルブ(AHC)12が閉じ、低圧ガス制御バルブ(LC)4が開くのと概略同時に低圧開閉バルブ(ALC)12が開き、低圧ガス制御バルブ(LC)4よりも早く低圧開閉バルブ(ALC)12が閉じるように制御することで、PV(圧力−容積)曲線を改善するようにした。
【0022】
上記2つの実施例のような開閉シーケンスで制御バルブの開閉制御を行うことで、80Kでの冷凍能力が165.2Wから171.3Wに向上した。また、COPでは3.1%の向上が見られた。
さらに、このパルス管冷凍機において、上記した第5流路25および第6流路26には絞り機構、例えば、手動流量調整バルブ11′,12′又はオリフィスなどを付設することにより、開閉バルブのCv値を調整することで、ガス圧縮機性能に応じたパルス管内の最適なPV(圧力−容積)曲線を作ることができるようになり、なお良い。この実施例では、パルス管冷凍機の例としてエア・ウォーター株式会社製パルス管冷凍機システム、型番:GP1580Sを用いた。
【0023】
このように本発明によれば、
(1)バッファタンクがガス圧縮機の高低圧バッファの役割を担い、圧縮比を減少させることにより、運転負荷を少なくすることができる。
(2)バッファタンクの高低圧力差が圧縮機高低圧力差に近づくことにより、パルス管内のPV(圧力−容積)の仕事量が大きくなり、冷凍能力が大きくなる。(3)以上により、冷凍機冷凍能力、COPの向上を図ることができる。
(4)請求項2および3の制御により、圧縮機の圧縮比を減らし、パルス管と蓄冷器による膨張の仕事量を増加させることで、冷凍機の効率の向上を図ることができる。
(5)請求項4〜6の制御により、パルス管内の最適なPV(圧力−容積)曲線を得ることができる。
(6)高低圧開閉制御バルブのCv値を調整(若しくは手動流量調整バルブやオリフィスなどの絞り機構を付設)することにより、ガス圧縮機性能に応じたパルス管内の最適なPV(圧力−容積)曲線を作ることができる。
【0024】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のパルス管冷凍機は、パルス管冷凍機の圧力振動源のエネルギー損失を低減させ、圧縮・膨張の仕事量を増やすことによって、さらなる冷凍能力の向上を図り得るパルス管冷凍機として利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 パルス管
2 冷端熱交換器
3 蓄冷器
4 低圧ガス制御バルブ(LC)
5 ガス圧縮機
6 高圧ガス制御バルブ(HC)
7 高圧バッファ制御バルブ(HB)
8 高圧バッファ
9 低圧バッファ制御バルブ(LB)
10 低圧バッファ
11 高圧開閉バルブ(AHC)
12 低圧開閉バルブ(ALC)
11′,12′ 手動流量調整バルブ
図1
図2
図3
図4
図5