(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の非水電解液は、電解質(1)、溶媒とアミン系化合物を必須成分とし、アミン系化合物の含有量が特定量であることを特徴とする。またさらに後述の電解質(2)を含んでもよい。
【0010】
<一般式(1)で表される化合物(以下電解質(1)ともいう)>
本発明の非水電解液は、一般式(1);(XSO
2)(X’SO
2)N
−Li
+で表される化合物{式中X、X’は、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表し、X、X’の少なくとも一方はフッ素原子である。}(電解質(1))を含むことを特徴とする。上記一般式(1)で表される化合物を非水電解液中に含むことにより、電極(正極)上に被膜を形成し、正極活物質に含まれる金属成分溶出を抑制することができ、内部抵抗の上昇を抑制し、放電電圧を高い値に維持することができる。その結果としてサイクル特性を改善することができる。
【0011】
上記一般式(1)中、X、X’は、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表し、X、X’の少なくとも一方はフッ素原子である。炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、上記アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。上記アルキル基又はフルオロアルキル基の中でも、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。好ましい一般式(1)で表される化合物としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(メチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(エチルスルホニル)イミドが挙げられ、より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドであり、さらに好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)である。
【0012】
本発明の非水電解液中の一般式(1)で表される化合物(電解質(1))の濃度は、好ましくは0.01mol/L〜2mol/L、より好ましくは0.05mol/L〜1.5mol/L、さらに好ましくは0.1mol/L〜1.2mol/Lである。電解質(1)の濃度が0.01mol/L未満である場合は、電極上の被膜形成が充分でなく、所望の電池性能が得られないおそれがある。電解質(1)の濃度が2mol/Lを超える場合は非水電解液の粘度が高くなり電気伝導度が低下し電池性能が充分に発揮できないおそれがある。
【0013】
本発明のリチウム二次電池の非水電解液においては、電解質(1)は主たる電解質としてもよいし、他の電解質を主たる電解質としてもよい。
【0014】
電解質(1)は、市販品を使用してもよく、また、従来公知の方法により合成したものを用いてもよい。例えば、WO2009/123328号、WO2011/065502号、WO2011/149095号などに記載される方法により製造できる。
【0015】
<溶媒>
本発明の非水電解液において、上記電解質類を溶解させる溶媒としては、従来、非水電解液に使用されている種々の非水溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,1−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどのエーテル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;プロピオン酸メチルや酪酸メチルなどの鎖状カルボン酸エステル類などを使用することができる。これらの非水溶媒の中でも環状カーボネート類、鎖状カーボネート類等のカーボネート系溶媒は、電圧印加時に分解しにくく安定であるため好ましく使用できる。なお、上記非水溶媒は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。上記カーボネート系溶媒のなかでも、鎖状カーボネート類と環状カーボネート類を混合して使用することが好ましい。
【0016】
<アミン系化合物>
本発明の非水電解液においては、上記アミン系化合物を特定量含有することを特徴とする。非水電解液中に含まれるアミン系化合物が0.1ppm以上、1000ppm以下であることにより、非水電解液をリチウム二次電池などの蓄電デバイスに用いた際に、サイクル特性が良く、安定的に充放電を行うことができる。上記アミン系化合物の具体例としては、アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の炭素原子数1〜8のアルキル基を有する第一級、第二級または第三級のアルキルアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど炭素原子数1〜8のアルキレン基と2以上のアミノ基を有する脂肪族アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン;アニリン、ベンジルアミン、メタキシレンジアミンなどの芳香族アミン;これらのアミンのエチレンオキサイド付加物;ホルムアミジン;グアニジン;アミジン;ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、チアゾール、ピリジン、インドールなどの複素環式アミンなどが挙げられる。また、上記アミン系化合物を対応するアンモニウムカチオンとして含む塩化合物も、本発明のアミン系化合物に挙げることができる。上記塩化合物としては、上記アンモニウムカチオンのハロゲン化物、水酸化物、炭酸化物および炭酸水素化物などが挙げられる。
【0017】
上記アミン系化合物の中でも、電解質(1)や後述するフッ素を含有する塩化合物など、非水電解液の構成成分の製造中間体や原料の対カチオン、電解質(2)の対カチオンなどとして混入する可能性の高いアンモニア、エチルアミンなどのアルキルアミン、複素環式アミン又はそれらの塩の濃度が上記含有量であることが好ましい。中でも、安価で、入手が容易である点からは、アンモニア、トリエチルアミン又はその塩が上記含有量であることが好ましい。
【0018】
本発明の非水電解液において、上記アミン系化合物の非水電解液中の含有量は、0.1ppm以上、1000ppm以下である。アミン系化合物の含有量が上記範囲であることにより、非水電解液を電池中で使用し電圧を引加した際の劣化が抑えられるため、サイクル特性のよいリチウム二次電池が提供できる。アミン系化合物の含有量は好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。また含有量の下限値は0.1ppm以上であればよい。
【0019】
上記アミン系化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより定量することができる。
【0020】
<電解質(2)>
本発明の非水電解液は、上記電解質(1)に加えて、これとは異なる他の電解質(電解質(2))を含んでいてもよい。電解質(2)については特に限定されず、各種蓄電デバイスの電解液において電解質として用いられる従来公知の電解質はいずれも使用することができるが、電解液中での解離定数が大きく、また、後述する溶媒と溶媒和し難いアニオンを生成するものが好ましい。具体的には、後述するフッ素含有塩化合物や、LiCF
3SO
3、NaCF
3SO
3、KCF
3SO
3等のトリフロロメタンスルホン酸の塩;LiClO
4、NaClO
4等の過塩素酸塩;LiI、LiAlO
4、LiAlCl
4、LiCl、NaI、KI等のアルカリ金属塩;(CH
3)
4P・BF
4、(C
2H
5)
4P・BF
4等の第4級ホスホニウム塩などが挙げられる。中でも、後述するフッ素含有塩化合物、LiAlO
4、LiAlCl
4が好ましい。
【0021】
電解質(2)としては、上記例示電解質(2)の内1種を単独で使用してもよく、また、2種以上の電解質(2)を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
<フッ素含有塩化合物>
電解質(2)としては、一般式(2):M’PF
a(C
mF
2m+1)
6−a(0≦a≦6、1≦m≦2)、一般式(3):M’BF
b(C
nF
2n+1)
4−b(0≦b≦4、1≦n≦2)、及び、一般式(4):M’AsF
6、で表されるフッ素を含有する塩化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが好ましい。式(2)〜(4)中、M’はアルカリ金属イオンを示す。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンが挙げられ、好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンである。
【0023】
これらフッ素含有塩化合物を併用することで、電解質(1)を単独で使用する場合に比べて、非水電解液の安定性が高められる。また、非水電解液のイオン伝導度、移動度も高められる。
【0024】
上記フッ素含有塩化合物の中では、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6が好ましく、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6がより好ましく、LiPF
6、LiBF
4がさらに好ましい。最も好ましくは、LiPF
6である。
【0025】
これら電解質(2)の使用量は、上記電解質(1)とフッ素含有塩化合物の使用量の合計を100質量部とした場合に、0質量部〜95質量部とするのが好ましく、より好ましくは5質量部〜90質量部であり、さらに好ましくは10質量部〜80質量部である。電解質(2)の使用量が多すぎると非水電解液の粘度が高くなり、伝導度が低下して、所期の電池性能が十分に発揮され難くなる虞があり、一方、電解質(2)の使用量が少なすぎると、電解質(2)に由来する効果が十分に得られ難い場合がある。
【0026】
なお、本発明の非水電解液中における電解質(2)の濃度は、0.01mol/L〜2mol/Lであるのが好ましい。より好ましくは0.05mol/L〜1.5mol/Lであり、さらに好ましくは0.1mol/L〜1.2mol/Lである。
【0027】
他の電解質は市販の物を使用してもよく、また、従来公知の方法で合成した物を使用してもよい。
【0028】
<その他の添加剤>
本発明の非水電解液にはサイクル特性の改善や安全性の向上のため、電解質(1)、フッ素含有塩化合物、溶媒以外に添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)などの不飽和結合を有する環状カーボネート化合物;フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩などのリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物などがあげられる。非水電解液にこれらの添加剤を用いる場合、その濃度としては0.1重量%〜10重量%であることが好ましい
<リチウム二次電池>
本発明の非水電解液は、一次電池、リチウム二次電池、溶融塩電池、イオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ、太陽電池、燃料電池などの蓄電デバイスの電解液として好適に使用することができるが、特にリチウム二次電池の非水電解液として好適に使用できる。
【0029】
本発明のリチウム二次電池とは、正極と負極とを備え、電解液として、上記本発明の非水電解液を備えているところに特徴を有する。より詳細には、上記正極と負極との間にはセパレータが設けられており、且つ、本発明の非水電解液は、上記セパレータに含浸された状態で、正極、負極等と共に外装ケースに収容されている。
【0030】
本発明に係るリチウム二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、リチウム二次電池の形状として従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V〜数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
【0031】
<正極>
正極は、正極活物質、導電助剤、結着剤及び分散用溶媒等を含む正極活物質組成物が正極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
【0032】
正極の製造方法としては、例えば、正極集電体に正極活物質組成物をドクターブレード法等で塗工したり、浸漬した後に、乾燥する方法;正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布又は流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸又は多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。
【0033】
正極集電体の材料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS(ステンレス鋼)、チタン等の導電性金属が使用できる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であるという観点からは、アルミニウムが好ましい。
【0034】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であれば良く、リチウム二次電池で使用される従来公知の正極活物質が用いられる。
【0035】
具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、LiNi
1−x−yCo
xMn
yO
2やLiNi
1−x−yCo
xAl
yO
2(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される三元系酸化物等の遷移金属酸化物、LiAPO
4(A=Fe、Mn、Ni、Co)等のオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のLi
2MnO
3と、電気化学的に活性な層状のLiM’’O[M’’=Co、Ni等の遷移金属]との固溶体)等が正極活物質として例示できる。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、又は、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、金属粉末材料、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維等が挙げられる。
【0037】
結着剤としては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム等の合成ゴム;ポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリアクリル酸;カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂;等が挙げられる。これらの結着剤は単独で使用してもよく、複数種を混合して使用してもよい。また、これらの結着剤は、使用の際に溶媒に溶けた状態であっても、溶媒に分散した状態であっても構わない。
【0038】
導電助剤及び結着剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
【0039】
正極を製造するに際して、正極活物質組成物に用いられる溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、酢酸エチル、水等が挙げられる。これらの溶媒は組み合わせて使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されず、製造方法や、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。
【0040】
<負極>
負極は、負極活物質、分散用溶媒、結着剤及び必要に応じて導電助剤等を含む負極活物質組成物が負極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
【0041】
負極集電体の材料としては、銅、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼(SUS)等の導電性金属を用いることができる。なお、薄膜への加工が容易である観点からは、銅が好ましい。
【0042】
負極活物質としては、リチウム二次電池で使用される従来公知の負極活物質を用いることができ、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであればよい。具体的には、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭・石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料、Si、Si合金、SiO等のSi系負極材料、Sn合金等のSn系負極材料、リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金等のリチウム合金を用いることができる。
【0043】
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用することができる。また、負極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極で用いられるものと同様のものが用いられる。
【0044】
<セパレータ>
セパレータは正極と負極とを隔てるように配置されるものである。セパレータには、特に制限がなく、本発明では、従来公知のセパレータはいずれも使用することができる。具体的なセパレータとしては、例えば、非水電解液を吸収・保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータやセルロース系セパレータなど)、不織布セパレータ、多孔質金属体等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を有するため好適である。
【0045】
上記多孔性シートの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を有する積層体等が挙げられる。
【0046】
上記不織布セパレータの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、アラミド、ガラス等が挙げられ、非水電解液層に要求される機械強度等に応じて、上記例示の材質を単独で、又は、混合して用いることができる。
【0047】
正極、負極、セパレータ及び本発明の非水電解液等を備えた電池素子は、電池使用時の外部からの衝撃、環境劣化等から電池素子を保護するため電池外装材に収容される。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
製造例1
500mLの反応容器にビス(クロロスルホニル)イミド20.0g(93mmol)、バレロニトリル180gを加え、攪拌した。ここに、ZnF
210.1g(98mmol)を加え、室温(25℃)で3時間反応を行った。得られた反応溶液を
19F−NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ビス(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した(
19F−NMR(CD
3CN):δ56.0)。
【0050】
次いで、500mLの分液ロートに反応溶液を移し、ここにトリエチルアミンの塩酸塩25.7g(187mmol)を蒸留水18gに溶解した水溶液を加え、混合し、分液操作により水相を除去した。さらに蒸留水18gを加え、混合した後、水相を除去する分液操作を4回繰り返し行った。得られた有機相を乾燥した後、
19F−NMR分析し、ビス(フルオロスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム塩20.2g(72mmol)が生成していることを確認した(
19F−NMR(CD
3CN):δ56.0、
1H−NMR(CD
3CN):δ3.1(6H)、1.2(9H))。
【0051】
さらに、得られたビス(フルオロスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム塩を500mLの分液ロートに移し、ここに水酸化リチウム一水和物9.1g(216mmol)を蒸留水55gに溶解した水溶液に加え、混合した。分液操作により、水相を除去した。同様の分液操作を2回繰り返し行った。得られた有機相を蒸発乾固することで、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド7.5g(40mmol)を得た。なお、目的物の生成は、
19F−NMRより確認した(
19F−NMR(CD
3CN):δ56.0)。
ガスクロマトグラフィーによる分析により、トリエチルアミン(TEA)が100ppm含有していた。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(A)とする。
【0052】
製造例2
製造例1により得られたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(A)に、トリエチルアミンを500ppmになるよう添加した。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(B)とする。
【0053】
製造例3
製造例1により得られたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(A)にトリエチルアミンを1000ppmになるよう添加した。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(C)とする。
【0054】
実施例1
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを、3:7(体積比)で混合した非水溶媒に対し、上記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(A)(TEA含有量100ppm)とLiPF
6の濃度がそれぞれ0.2、1.0mol/Lとなるように溶解させ非水電解液(1)を調整した。ついで、正極活物質層の面積がφ12mmの市販の正極シート(活物質:コバルト酸リチウム、3mAh/cm
2)と負極面積がφ14mmの黒鉛負極シートを用いて、宝泉株式会社より購入したCR2032コイン型電池用部品を用いて、ガスケットを装着した負極キャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、負極(負極の銅箔側がスペーサーと対向するように設置した。)、セパレータの順に重ねた後、上記非水電解液(1)70μLをセパレータ上に含浸させた。さらに正極活物質が負極活物質と対向するように正極を設置し、その上に正極ケースを順に重ね、カシメ機でかしめることによりコイン型リチウム電池を作製した。
【0055】
また、上記コイン型リチウム電池について、充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を用いて、充放電速度0.2C(定電流モード)、3.0〜4.2Vの条件にて、各充放電時には10分の充放電休止時間を設けてサイクル試験を行った。上記コイン型リチウムイオン電池の1サイクル目の放電容量を100%とした場合の各サイクルでの放電容量を表1に示す。なお、TEA含有量は非水電解液の組成から算出した非水電解液中に含まれるトリエチルアミン(TEA)の濃度を示す。
【0056】
実施例2
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(B)を用いた以外は、実施例1と同様に非水電解液(2)を調整した。非水電解液(2)を用いて実施例1と同様にコイン型リチウム電池を作製し、サイクル試験を行った。結果を表1に示す。
【0057】
実施例3
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(C)を用いた以外は、実施例1と同様に非水電解液(3)を調整した。非水電解液(3)を用いて実施例1と同様にコイン型リチウム電池を作製し、サイクル試験を行った。結果を表1に示す。
【0058】
実施例4
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(A)とLiPF
6の濃度をそれぞれ1.0、0.2mol/Lとした以外は、実施例1と同様に非水電解液(4)を調整した。非水電解液(4)を用いて実施例1と同様にコイン型リチウム電池を作製し、サイクル試験を行った。結果を表1に示す。
【0059】
実施例5
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(B)とLiPF
6の濃度をそれぞれ1.0、0.2mol/Lとした以外は、実施例1と同様に非水電解液(5)を調整した。非水電解液(5)を用いて実施例1と同様にコイン型リチウム電池を作製し、サイクル試験を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の実施例1〜5より、電解液中のTEA含有量が0〜100ppmの範囲である場合には、同等のサイクル特性のリチウム二次電池となることが判った。TEAの含有量を特定の範囲内にすることによって、サイクル特性に優れた二次電池とすることができることが判明した。