特許第5893527号(P5893527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5893527加工中断時と再開時の状態の違いを表示する機能を有する数値制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893527
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】加工中断時と再開時の状態の違いを表示する機能を有する数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4063 20060101AFI20160310BHJP
   G05B 19/4067 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   G05B19/4063 L
   G05B19/4067
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-165686(P2012-165686)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-26430(P2014-26430A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】倍田 照生
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−373008(JP,A)
【文献】 特許第2998473(JP,B2)
【文献】 特開2011−154607(JP,A)
【文献】 特開平06−083428(JP,A)
【文献】 特開2004−252610(JP,A)
【文献】 特開平4−148305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18−19/416,19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転により加工プログラムを実行するとともに加工プログラムの実行による加工の中断と再開を行う機能を有する工作機械を制御する数値制御装置において、
加工を中断した時のプログラム番号、ブロック番号、Gコードの状態、座標値、工具補正量を記録する記録部と、
加工の中断後の前記数値制御装置に対する操作を記録する操作記録部と、
加工プログラムの再実行による加工の再開時に、再開時のプログラム番号、ブロック番号、Gコードの状態、座標値、および工具補正量と、中断時のプログラム番号、ブロック番号、Gコードの状態、座標値、および工具補正量とを比較する比較部と、
前記記録した加工の中断後の操作に予め設定された加工プログラムの内容を変更する操作があったかどうかを判定するプログラム変更操作判定部と、
前記比較部によって比較した結果、再開時と中断した時の、プログラムの番号、ブロックの番号、Gコードの状態、座標値、工具補正量の何れかが違っているか、または、前記プログラム変更操作判定部により中断時から再開時までの間に、プログラムの内容を変更する操作があったと判定された場合、前記プログラムの番号、ブロックの番号、Gコードの状態、座標値、工具補正量のうちで違っているものを表示し、または、加工の中断時の値と再開時の値および中断時から再開時までの操作を画面上に表示する表示部と、
を有することを特徴とする加工中断時と再開時の状態の違いを表示する機能を有する数値制御装置。
【請求項2】
加工プログラムの中断時から再開時までの間に許可された操作を画面から設定する設定部を有し、
加工プログラムの中断時から再開時までの間に、許可された操作以外の操作があれば、プログラムの実行を再開しないことを特徴とする加工中断時と再開時の状態の違いを表示する機能を有する請求項1に記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械を制御する数値制御において、加工の途中でプログラムの実行を停止して、その後、加工を再開する場合に、加工中断時と再開時の状態の違いを表示する機能を有する数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工を中断する状況について:
数値制御装置を備えた工作機械では、大量生産の場合は、同じ形状のものを大量に加工を行うために、同じ加工プログラムを繰り返して使用するが、少量生産の場合(特に大型のワーク)で、形状の一部が異なるワークを加工する場合がある。この場合は、同じプログラムを繰り返して加工するのではなく、1つの加工プログラムを使いまわして、プログラムの一部を修正しながら加工を行うことが行われている。加工プログラムで指令されたものと同じ形状の加工を行う加工プログラムのブロックまで実行し、加工プログラムで指令された形状と異なる加工を行う加工プログラムのブロックのところで、一旦加工プログラムの実行による加工を中断し、オペレータによる手動介入で工作機械の各軸を動かして、計測を行い、計測結果に基づいて加工プログラムの修正、あるいは、工具補正量などの設定を変更し、加工を再開する加工プログラムのブロックにカーソルを移動させて、自動運転により加工プログラムの実行を再開して加工を続行する場合がある。
【0003】
加工再開時の状況について:
加工を再開する方法に、大きく分けて2つの方法がある。
<1>加工プログラムの最初から加工する場合に、リセットを押してから加工を行う場合が多く、加工を再開する場合もリセットを押してから再開する場合と、
<2>リセットを押すとGコードの状態が変わってしまうので、リセットを押さずに加工を再開させる場合がある。なお、数値制御装置で実行される加工プログラムに使用されるGコードは、準備機能と言われており、数値制御装置の補間方式の選択など、数値制御の基本となる動作を規定するものである。
【0004】
上記の<1>は、リセットを押してから加工を再開する方法である。この方法は、工具径補正など、複数のブロックを先読みして、加工プログラムを実行している場合に用いられる。この方法では、加工プログラムの途中で止め、加工プログラムの一部の内容を変更して、その変更内容を反映させるために、リセットを入れて、既に先読みしている計算をクリアして、加工プログラムの一部の移動指令の変更を行った後、工具補正をかける前のブロックにカーソルを戻して、自動運転を再開する。
【0005】
また、上記の<2>は、リセットを押さずに加工を再開する方法である。この方法は、工具径補正など複数のブロックの先読みを必要とする機能を使わずに、シングルブロックで送ると、1ブロックしか先読みを行わないので、ブロックの終点の変更だけを行って、リセットを押さずに、変更したブロックよりも前のブロックにカーソルを移動させて、そのブロックから加工を再開する。
【0006】
ところが、<1>の中断した時に必ずリセットをして、再開させる場合に、工具径補正をかける前のブロックにカーソルを移動させて再開する手順になっているのに、リセットを押さない状態で誤ってプログラムを再開したために、前の工具径補正量が残った状態で再開したために誤動作を引き起こす場合がある。また、<2>のリセットを押さない手順のはずが、作業の途中でリセットを誤って押してしまったために、例えば、Gコードがアブソリュート送りのG90モードからインクリメンタル送りのG91にモーダル値が変わっていたことに気がつかず再開したために、工作機械の誤動作を引き起こしてしまう(図11参照)。
【0007】
下記の加工プログラムを例として図12を参照しながら説明する。ブロック[N0004]で加工を中断する。リセットしたために、G90(アブソリュート)から数値制御装置にデフォルト値として予め設定されているG91(インクリメンタル)にモーダル値が変更された。そして、ブロック[N0002]にカーソルを合わせて加工を再開する。モーダル値がG90ではなくG91で実行したため、誤動作を引き起こしてしまう。これによって、ブロックN0005で、X150.の位置に移動するはずが、150mmプラス方向に行ってしまう誤動作を引き起こす。(加工プログラム例)
01000
N0001 G90G00X−100.Y−100.;
N0002 G01X0Y0F1000;
N0003 G01X100.;
N0004 G01Y100.;
N0005 G01X150.;
【0008】
数値制御装置によって制御される工作機械では、加工プログラムの実行中に工具が折損したり、切粉が工具にからみ付いたときに、加工プログラムの実行を中断し、工具の交換や、切粉を除去した後に加工を再開させることがあり、中断時の工作機械の状態を記憶しておき、再開時の状態と比較して、中断時の状態に戻すための再開処理用プログラムを生成する技術がある(特許文献1参照)。また、操作履歴を取得する技術が特許文献2に開示されている。また、特許文献3には、加工再開時に必要な工具位置、モーダル情報等を記憶しておくことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2998473号公報
【特許文献2】特開平6−83428号公報
【特許文献3】特開平2−14303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
加工プログラム(NCプログラム)の実行中に中断し、加工プログラムの編集、軸の移動、工具補正量などの設定の変更を行い、加工プログラムや設定の変更後、再度開始するブロックにカーソルを動かし、加工プログラムを実行して、変更した加工プログラムや設定の動作確認を行い、手順と異なる操作のために、誤動作を行う場合ある(図11参照)。
【0011】
加工の中断の原因を取り除き、中断したところに復帰させて、再開する場合は特許文献1に開示される機能を使用すれば問題ないが、加工を中断した後に、加工プログラムの一部を変更して、加工や計測を行い、その後、中断したブロックとは異なるブロックから再開する場合には、特許文献1の技術のように中断したところに復帰させて再開する機能は使えないので、オペレータが、手順に注意して再開させていた。また、特許文献2に開示される技術は、操作を記録して、問題があった場合に後から操作を確認するのに有効であるが、間違った操作があったことで、警告を出すものではない。また、特許文献3には、加工再開時に必要な工具位置、モーダル情報等を記憶しておくことが開示されているが、加工再開時に中断時の情報と違っていればそのことを画面上に表示するものではない。
【0012】
そこで本発明は、自動運転を中断して、加工プログラムなどの変更を行い、加工プログラムの途中のブロックから、加工を再開させた場合において、加工の中断から加工プログラムの再開までの誤動作を防ぐために、再開しようとした時に自動運転を中断した時と再開する時のモーダル値、座標値と再開するブロック番号が違っていれば、その違いを画面上に表示して、オペレータに注意を促し、また、中断してから、加工プログラムの内容を変更する操作が行われれば、中断してからの操作を画面上に表示して、オペレータに注意を促すことができる加工中断時と再開時の状態の違いを表示する数値制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る発明は、自動運転により加工プログラムを実行するとともに加工プログラムの実行による加工の中断と再開を行う機能を有する工作機械を制御する数値制御装置において、加工を中断した時のプログラム番号、ブロック番号、Gコードの状態、座標値、工具補正量を記録する記録部と、加工の中断後の前記数値制御装置に対する操作を記録する操作記録部と、加工プログラムの再実行による加工の再開時に、再開時のプログラム番号、ブロック番号、Gコードの状態、座標値、および工具補正量と、中断時のプログラム番号、ブロック番号、Gコードの状態、座標値、および工具補正量とを比較する比較部と、前記記録した加工の中断後の操作に予め設定された加工プログラムの内容を変更する操作があったかどうかを判定するプログラム変更操作判定部と、前記比較部によって比較した結果、再開時と中断した時の、プログラムの番号、ブロックの番号、Gコードの状態、座標値、工具補正量の何れかが違っているか、または、前記プログラム変更操作判定部により中断時から再開時までの間に、プログラムの内容を変更する操作があったと判定された場合、前記プログラムの番号、ブロックの番号、Gコードの状態、座標値、工具補正量のうちで違っているものを表示し、または、加工の中断時の値と再開時の値および中断時から再開時までの操作を画面上に表示する表示部と、を有することを特徴とする加工中断時と再開時の状態の違いを表示する機能を有する数値制御装置である。
請求項2に係る発明は、加工プログラムの中断時から再開時までの間に許可された操作を画面から設定する設定部を有し、加工プログラムの中断時から再開時までの間に、許可された操作以外の操作があれば、プログラムの実行を再開しないことを特徴とする加工中断時と再開時の状態の違いを表示する機能を有する請求項1に記載の数値制御装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、自動運転を中断して、加工プログラムなどの変更を行い、加工プログラムの途中のブロックから、加工を再開させた場合において、加工の中断から加工プログラムの再開までの誤動作を防ぐために、再開しようとした時に自動運転を中断した時と再開する時のモーダル値、座標値と再開するブロック番号が違っていれば、その違いを画面上に表示して、オペレータに注意を促し、また、中断してから、加工プログラムの内容を変更する操作が行われれば、中断してからの操作を画面上に表示して、オペレータに注意を促すことができる加工中断時と再開時の状態の違いを表示する数値制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】工作機械を制御する数値制御装置を説明する図である。
図2】加工プログラムの中断および再開機能を有する数値制御装置を説明する機能ブロック図である。
図3】本発明に係る加工を中断する際の処理を説明するフローチャートである。
図4】本発明に係る加工を再開する時の処理を説明するフローチャートである。
図5】加工プログラムの一例である。
図6】実行していたプログラム番号の加工プログラムを読み出して表示するために保存するデータの一例である。
図7】加工中断後から再開までの間に、カーソル操作、軸移動操作、編集操作を記録することを説明する図である。
図8】本発明における画面表示の一例である。
図9】加工中断時と再開時の相違点を表示する画面の一例である。
図10】自動運転中断後の操作の画面の一例である。
図11】加工プログラムの再開時に誤動作が生じる場合があることを説明する図である。
図12】作業の途中でリセットを押して誤作動が起きる場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は工作機械を制御する数値制御装置を説明する図である。
図1は本発明の一実施形態である数値制御装置10の要部ブロック図である。CPU11は数値制御装置10を全体的に制御するプロセッサであるCPU11は、ROM12に格納されたシステムプログラムを、バス19を介して読み出し、該システムプログラムにしたがって数値制御装置全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データおよびCRTや液晶などで構成される表示器とキーボードなどで構成される表示器/手動入力ユニット20を介してオペレータが入力した各種データが格納される。SRAM14は図示しないバッテリでバックアップされ、数値制御装置10の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。工作機械のオペレータは表示器/手動入力ユニット20を操作することによって、加工の中断と加工の再開を数値制御装置10に指令することができる。
【0017】
数値制御装置10は、加工の中断(加工プログラムの実行中断)から再開までの間にしても良い操作を設定し、設定した内容を画面表示することができる。設定された操作の情報はSRAM14に格納しておくことができる。また、SRAM14中には、インタフェース15を介して読み込まれた加工プログラムや表示器/手動入力ユニット20を介して入力された加工プログラムなどが記憶される。また、ROM12には、本発明に係るプログラム中断および再開機能を実現するためのプログラムがあらかじめ格納されている。
【0018】
インタフェース15は、数値制御装置10と外部機器との接続を可能とするものである。PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)16は、数値制御装置10に内蔵されたシーケンスプログラムで制御対象物の工作機械の補助装置(例えば、工具交換用のロボットハンドといったアクチュエータ)にI/Oユニット17を介して信号を出力し制御する。また、数値制御装置10で制御される制御対象物である工作機械の本体に配備された操作盤の各種スイッチなどの信号を受け、必要な信号処理をした後、CPU11に渡す。
【0019】
各送り軸の軸制御回路30〜32はCPU11からの各送り軸の移動指令量を受けて、各送り軸の指令をサーボアンプ40〜42に出力する。サーボアンプ40〜42はこの指令を受けて、機械(制御対象物)の各送り軸のサーボモータ50、51、52を駆動する。各送り軸のサーボモータ50〜52は位置・速度検出器を内蔵し、この位置・速度検出器からの位置、速度フィードバック制御を行う。なお、図1では、位置・速度制御のフィードバックについては省略している。また、スピンドル制御回路33は主軸回転指令を受け、スピンドルアンプ61にスピンドル速度信号を出力する。スピンドルアンプ61はスピンドル速度信号を受けて、スピンドルモータ62を指令された回転速度で回転させ、主軸を駆動する。ポジションコーダ63は、スピンドルモータ62の回転に同期して帰還パルスをスピンドル制御回路33にフィードバックし、速度制御を行う。
【0020】
図2は加工プログラムの中断および再開機能を有する数値制御装置を説明する機能ブロック図である。工作機械を制御する数値制御装置10は、NCプログラムである加工プログラム2を読み込み、プログラム実行部4において、加工プログラム2を解析し、処理、実行し、プログラム実行部4からサーボモータ制御部6にサーボモータの駆動指令を出力し、サーボモータ制御部6は、プログラム実行部4からの駆動指令に基づいてサーボモータ8を駆動するモータ動力を出力する。数値制御装置10は、例えば、加工プログラム2の実行中に、表示器/手動入力ユニット20に割り当てられた中断ボタン(図示せず)を押して入力される加工の中断指令(中断72)によって、加工を中断(つまり、加工プログラムの実行の中断)する。オペレータは加工の中断中に、プログラムの編集70、工具補正量の設定71、手動送り74などの操作を行うことができる。各種操作の後、オペレータは表示器/手動入力ユニット20に割り当てられた再開ボタンを押して入力される加工の再開指令(図73)によって、加工を再開する。表示器/手動入力ユニット20に備わった表示画面に各種操作の履歴などが表示される。
【0021】
本発明の実施形態において、加工中に、加工を中断(加工プログラムの実行を中断)した時に、モーダル値、座標値、プログラム番号とブロック番号をSRAM14などの記憶装置に記憶する。そして、2加工プログラムを再開した時に再開時と中断した時の、モーダル値、座標値、加工プログラムのブロック番号が違っているかを確認し、また、中断時から再開時までの間に、カーソル移動や編集操作があれば、警告を画面上に表示し、中断時と再開時の違いと操作内容を表示する。また、加工プログラム2の中断から再開までの間にしても良い操作を設定する画面を設け、しても良い操作以外が行われた場合には、再開できないようにすることにより、オペレータの手動介入時の操作による誤動作を防ぐようにする。
【0022】
以下、図3図4を用いて、数値制御装置10で実行される加工の中断時と再開時における処理のフローを説明する。
図3は本発明に係る加工を中断する際の処理を説明するフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。なお、この処理は、例えば、オペレータが中断の指令を数値制御装置10に入力した時に実行される。
●[ステップSA01]数値制御装置において加工プログラムのブロックを読み込み、プログラム運転を実行する。
●[ステップSA02]加工の終了か否かを判断し(つまり、加工プログラムのプログラムエンドまで終了したか否かを判断し、加工が終了した場合(YES)には処理を終了し、加工が終了ではない場合(NO)にはステップSA03へ移行する。
●[ステップSA03]加工の中断か否か判断し、中断ではない場合にはステップSA01へ移行し、プログラム運転を継続し、中断である場合にはステップSA04へ移行する。
●[ステップSA04]実行していたプログラム番号、ブロック番号、Gコードのモーダル値、各軸の座標値、及び、工具補正量を保存する。
●[ステップSA05]プログラムの実行を中断した後、オペレータによるカーソル操作、リセット操作、手動入力による各軸の軸移動操作、及び、加工プログラムの編集操作があれば、それらの操作があったことを記録(具体的には各操作に割り当てられたフラグを立てる。)し、処理を終了する。
【0023】
図4は加工を再開する時の本発明に係る処理を説明するフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。なお、この処理は、例えば、オペレータが再開の指令を数値制御装置10に入力した時に実行される。
●[ステップSB01]加工中断時と加工再開時で、プログラム番号、ブロック番号、Gコードのモーダル値、各軸の座標値、及び、工具補正量を比べて変化があったかどうかをチェックする。
●[ステップSB02]加工中断時から加工再開時までにカーソル操作、リセット操作、各軸の軸移動操作、及び、加工プログラムの編集操作があったかどうかをチェックする。●[ステップSB03]加工の中断中にしても良い操作が設定されていて、それらの設定された、しても良い操作以外が行われたか否か(つまり、設定された操作以外の操作が行われたか否か)を判断し、YESの場合にはステップSB04へ移行し、NOの場合にはステップSB05へ移行する。
●[ステップSB04]加工の再開(つまり、加工プログラムの再開実行)を不可とする。
●[ステップSB05]加工の中断後、座標値、工具補正量の変化、Gコードのモーダル値の変化、カーソルの操作、リセット操作、各軸の軸移動操作、および、加工プログラムの編集操作があったか否か判断し、NOの場合にはステップSB06へ移行し、YESの場合にはステップSB07へ移行する。
●[ステップSB06]加工の再開を行う(加工プログラムの実行を再開する。)。
●[ステップSB07]加工の中断時と加工の再開時、プログラム番号、ブロック番号、Gコードのモーダル値、座標値、工具補正量の異なっているものを表示する。また、加工中断時から加工再開時までの操作を表示する。
●[ステップSB08]オペレータが画面をチェックして、問題が無ければ、オペレータは加工の再開の開始を指令し、数値制御装置10は加工を再開する(加工プログラムの実行を再開する。)。
【0024】
以下、本発明に加工の中断と加工の再開を加工プログラム例を用いて説明する。
図5は加工プログラムの一例である。[N0003]は工具径補正をかけるブロックである。図5に示される加工プログラムを実行中に加工を中断して、編集操作を行っても、その[N0004]のブロックから加工プログラムを再開させると、G41の工具径補正モード中であり、工具径補正は複数のブロックを読み込んで経路を作っているため、中断したときも、編集前の加工プログラムで経路が計算されてしまっている。編集して、そのまま再開させると、編集した加工プログラムが経路に反映されない。そのため、一旦計算された経路をキャンセルするためにリセットをする必要がある。また、編集を行った後は、工具径補正をかける前のブロックにカーソルを持って行って再開する必要がある。
【0025】
そこで本発明の実施形態の数値制御装置10は、図3のフローで説明したように、加工プログラム実行中に、リセット、フィードホールド、シングルブロック、アラームによる停止など、加工プログラムの実行が中断(加工の中断)した時に、実行していた加工プログラム2のプログラム番号、ブロック番号、Gコードのモーダル値、座標値、及び、工具補正量を数値制御装置10の記憶装置に保存する。これは、実行していた加工プログラムのブロック番号のブロックを読み出して、表示するために保存しておく(図6参照)。
【0026】
図6に示される例では、プログラム番号「O01000」、ブロック番号「3」、ブロック「G91G00X100.Y100」、モーダル値「G00」,「G91」、座標値「機械座標X100.Y100.Z0.0」、工具補正量「工具長補正量100.000mm、工具径補正量20.000mm」が保存される。
【0027】
加工中断後から再開までの間に、リセットが押された(リセット操作)かどうかを記録するとともに、カーソル操作、各軸の軸移動操作、編集操作を記録する(図7参照)。図7に示される例では、自動運転運団以後の操作が記録され、自動運転モードから編集モードへの変更操作、リセット操作、カーソルの下への移動(3回)、座標値のX200.000への変更、カーソルの上への移動(2回)と、編集モードから自動運転モードへの変更操作が記録される。
【0028】
次に、数値制御装置10は、加工再開時(加工プログラムの実行を再開時)に、加工中断時に保存した、加工プログラムのプログラム番号、ブロック番号、Gコードのモーダル値、座標値、工具補正量と、再開時のプログラム番号、ブロック番号、Gコードのモーダル値、座標値、工具補正量が同じかどうかを比較する。また、加工中断時から再開時までに編集操作があったかどうかをチェックする。編集操作があったかどうかは、挿入キー、変更キー、削除キーを押したがどうかでチェックすることができる。
【0029】
同じでなかった場合に、加工中断時と加工再開時のプログラム番号、ブロックの内容、Gコードのモーダル値、座標値と工具補正量を変わっているところは色を変えて画面上に表示する。加工の中断(加工プログラムの実行中断)以降の操作(中断の指令が入力され再開の指令が入力されるまでの期間の操作)も画面に表示する。オペレータは画面を見て、変更内容、およびプログラムを中断した以降の操作に問題なければ、続けて加工を行う。中断中に許可した操作以外の操作があれば、再開させたくない場合がある。Gコードのモーダル状態、座標値、工具補正量が書き換えられていた場合のどれかに変更があった場合は中断時より、操作があった場合に、実行しないようにパラメータあるいは、設定で選択できるようにする(図8参照)。
【0030】
図8は、加工の中断(加工プログラムの実行中断)から再開までの間にしても良い操作を設定し、設定した内容を画面表示する例である。図8では、加工プログラムの中断から再開までの間にしてもよい操作と変化しても良い状態が一覧表示されており、してもよい操作は1:OK、よくない操作は0:NGで表され、変化しても良い状態は1:OK、変化してはいけない状態は0:NGで表される。そして、リセットは0、カーソル操作は1、加工プログラムの編集操作は1に設定され、Gコードのモーダル値は0、座標値は1、工具補正量は0に設定されている。
【符号の説明】
【0031】
10 数値制御装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 SRAM
15 インタフェース
16 PMC
17 I/Oユニット
18 メモリ
19 バス
20 表示器/手動入力ユニット

30,31,32 軸制御回路
33 スピンドル制御回路

40,41,42 サーボアンプ

50,51,52 モータ

61 スピンドルアンプ
62 スピンドルモータ
63 ポジションコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12