特許第5893539号(P5893539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893539
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】差動式分布型感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/04 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   G08B17/04
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-214560(P2012-214560)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-71474(P2014-71474A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(72)【発明者】
【氏名】冨田 寿幸
【審査官】 安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭39−11654(JP,Y1)
【文献】 特開平1−108699(JP,A)
【文献】 実公昭41−10909(JP,Y2)
【文献】 実開昭49−22880(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00−17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
警戒区域に配置された空気管内の空気圧の変化を検知部で検出することで火災発生を感知するもので、前記空気管と前記検知部との間に空気通路を形成するコックスタンドを備えた差動式分布型感知器において、
前記コックスタンドは、
第1コック本体と第2コック本体とを重ねて構成される本体と、
前記本体内に形成された収納空間内に配置された通路部材とを備え、
前記本体の前記収納空間内に前記通路部材が収納されて構成された組立体に、前記第1及び前記第2コック本体の積層方向に貫通した第1及び第2空気通路を離間して設け、前記第1及び前記第2空気通路のそれぞれにおいて前記第1コック本体に位置する部分が、前記空気管の一端と他端に接続される第1及び第2空気管用ノズルとなり、前記第1及び前記第2空気通路のそれぞれにおいて前記第2コック本体に位置する部分が、前記検知部に空気を流入させるための検出用ノズル及び前記空気管の内部で緩慢に膨張した空気を前記本体の外部に排出するためのリーク孔となり、前記通路部材の前記第1又は前記第2コック本体との接触面に、前記検出用ノズルと前記リーク孔とを連通させる溝が設けられていることを特徴とする差動式分布型感知器。
【請求項2】
警戒区域に配置された空気管内の空気圧の変化を検知部で検出することで火災発生を感知するもので、監視状態と各種試験時のそれぞれとで空気通路を切り換えるコックスタンドを備えた差動式分布型感知器において、
前記コックスタンドは、
第1コック本体と第2コック本体とを重ねて構成されるコック本体と、
前記コック本体内に形成された収納空間内に、前記第1、第2コック本体の積層方向に延びる軸周りに回転可能に収納される切換弁と備え、
前記第1コック本体には、前記空気管の一端と他端に接続される第1空気管用ノズル及び第2空気管用ノズルが前記積層方向に貫通形成され、
前記第2コック本体には、前記検知部に空気を流入させるための検出用ノズルと、前記空気管の内部で緩慢に膨張した空気を前記コック本体の外部に排出するためのリーク孔と、試験空気を注入するための試験用ノズルとが前記積層方向に貫通形成され、
前記切換弁には、前記軸を中心とした同心円上に4つの空気通路が前記積層方向に貫通形成されると共に、前記切換弁において前記第1又は前記第2コック本体との対向面に、3つの前記空気通路において周方向に隣接する同士を連通させる2つの溝が形成され、
前記切換弁の前記軸を中心とした回転により、前記4つの空気通路の位置を変えることで、前記第1コック本体側に設けた前記第1及び第2空気管用ノズルと、前記第2コック本体側に設けた前記検出用ノズル、前記リーク孔及び前記試験用ノズルとの間の空気通路が、前記監視状態と前記各種試験のそれぞれとで切り換えられる
ことを特徴とする差動式分布型感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災警戒区域にはりめぐらせた空気管の内部空気の熱による膨張を検知部で検出して火災発生を感知する差動式分布型感知器に係り、より詳しくは空気管と検知部との間の空気通路が形成されたコックスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、火災警戒区域にはりめぐらせた空気管の内部空気の熱による膨張を検出して火災発生を感知するようにした差動式分布型感知器は知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなものにおいては、信頼性確保のため、各種の流通試験が必要である。そのため、差動式分布型感知器は、複数の空気通路とこれら空気通路に連通する取付孔を有するコック本体と、その空気通路を切り換えるための複数の通気路を有し前記取付孔に回動自在に挿着された可動軸と、からなるコックスタンドを備えている。そして、そのコックスタンドによって空気の通路を切り換えることで、各種の流通試験を行えるようになっている。
【0003】
これを更に詳述するために図11及び図12を用いて従来技術について説明する。コックスタンドのコック本体2には、火災警戒区域にはりめぐらせた空気管1Aの両端が接続される第1及び第2空気管用ノズルP1、P2を備えている。更にコック本体2には、緩慢な温度変化に対して空気管1A内の空気圧を大気圧に合わせるためのリーク孔Lと、検出用ノズルFと、試験用ノズルTとが設けられている。また、切換弁2aを回動自在に取り付けるための円錐台状の取付孔が、第1及び第2空気管用ノズルP1、P2とリーク孔Lと検出用ノズルFと試験用ノズルTとに連通させて設けられている。
【0004】
切換弁2aは、取付孔の略全長に亘って密嵌状態かつ回動自在となるように取付孔と同様の円錐台状に形成されている。更に切換弁2aには、その回転操作によって各前記ノズルやリーク孔に選択的に連通接続可能となる複数の通気路6が形成されている。これにより、切換弁2aを回転操作して通気路6を切り換えることで、各種の流通試験が行え、コック本体2の取付孔内周面と可動軸外周面との間の密閉性も確保できるようになっている。
【0005】
ここで、各種試験について説明する。各種試験には、(a)ポンプ試験、(b)リーク試験、(c)ダイアフラム試験、(d)流通試験、の4つがある。
【0006】
ポンプ試験は、試験用ノズルTに注射器等の試験ポンプTPを接続し、この状態で試験ポンプTPから試験用ノズルTに作動空気圧に相当する空気を注入し、これによって検出用ノズルFに接続されているダイアフラム3が変位して接点4、5がオンとなるまでの作動時間と、復旧するまでの復旧時間を測定する。これらの時間が所定時間範囲以内であれば正常、所定時間範囲外であれば異常と判断し、異常箇所を調査する。このように、ダイアフラム3及び接点4、5が検知部として作用する。
【0007】
リーク試験は、リーク孔Lが正常に機能しているかを確認するための試験である。リーク試験では、第2空気管用ノズルP2に試験ポンプTPとマノメータ等の圧力計Mを接続して、この状態で試験ポンプTPから第2空気管用ノズルP2に空気を注入する。このとき、リーク孔Lから空気が漏れて圧力が低下する速度を測定する。
【0008】
ダイアフラム試験は、第1の空気管用ノズルP1に試験ポンプTPと圧力計Mを接続して、この状態で試験ポンプTPから第1の空気管用ノズルP1に徐々に空気を注入する。このとき、ダイアフラム3が変位して接点4、5がオンとなるときの空気圧を圧力計Mで測定し、その空気圧が基準範囲に収まっていることを確認する。
【0009】
流通試験は、空気管1Aに穴等がなく、正常に機能しているかを確認するための試験である。流通試験では、試験用ノズルTに試験ポンプTPを接続し、更に空気管1Aの他端にマノメータ等の圧力計Mを接続して、この状態で試験ポンプTPから試験用ノズルTに所定の空気を注入する。このとき、空気管1Aに接続された圧力計で所定の圧力が安定して測定できれば、この空気管1Aから空気が漏れていないことになる。
【0010】
これらの各試験によって規定の状態に調整された空気管1Aの空気圧は、その敷設された部屋の温度の変化に応じて変化する。気温の変化や冷暖房等のように室内の温度変化が緩慢であれば、コックスタンドのリーク孔Lを通して少量の空気が空気管1Aに出入りする。これにより、空気管1A内の空気圧が大気圧と釣り合いを保ち、ダイアフラム3は所定の位置に保持され、接点4,5はオフの状態に保たれる。一方、火災が発生した場合には、周囲の急激な温度上昇に伴って、空気1A内の空気がリーク孔Lから漏れる以上に急激に膨張し、ダイアフラム3を押し上げて接点4,5がオンとなる。そして、接点4,5の情報は発報信号OUTとして図示しない受信機に伝えられる。
【0011】
以上の試験の際には、切換弁2aを回転させて各ノズルの空気経路と切換弁の通気路を切り換えて試験を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−281068号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1のコックスタンドは、一つのブロック体で構成されており、そのブロック体内で複数の空気通路を交差させる構造であることから、各空気通路を形成するにあたり、多方面からの加工を必要としていた。このため、多軸の加工機が必要になったり、一面ずつ加工する必要があったり等でコスト高となるという問題があった。
【0014】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、コックスタンド内の複数の空気通路の加工を一方向からの加工で済ますことができ、コスト低減が可能な差動式分布型感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る差動式分布型感知器は、警戒区域に配置された空気管内の空気圧の変化を検出部で検出することで火災発生を感知するもので、空気管と検知部との間に空気通路を形成するコックスタンドを備えた差動式分布型感知器において、コックスタンドは、第1コック本体と第2コック本体とを重ねて構成される本体と、本体内に形成された収納空間内に配置された通路部材とを備え、本体の収納空間内に通路部材が収納されて構成された組立体に、第1及び第2コック本体の積層方向に貫通した第1及び第2空気通路を離間して設け、第1及び第2空気通路のそれぞれにおいて第1コック本体に位置する部分が、空気管の一端と他端に接続される第1及び第2空気管用ノズルとなり、第1及び第2空気通路のそれぞれにおいて第2コック本体に位置する部分が、検知部に空気を流入させるための検出用ノズル及び空気管の内部で緩慢に膨張した空気をコック本体の外部に排出するためのリーク孔となり、通路部材の第1又は第2コック本体との接触面に、検出用ノズルとリーク孔とを連通させる溝が設けられているものである。
【0016】
また、本発明に係る差動式分布型感知器は、警戒区域に配置された空気管内の空気圧の変化を検知部で検出することで火災発生を感知するもので、監視状態と各種試験時のそれぞれとで空気通路を切り換えるコックスタンドを備えた差動式分布型感知器において、コックスタンドが、第1コック本体と第2コック本体とを重ねて構成されるコック本体と、コック本体内に形成された収納空間内に、第1、第2コック本体の積層方向に延びる軸周りに回転可能に収納される切換弁と備え、第1コック本体には、空気管の一端と他端に接続される第1空気管用ノズル及び第2空気管用ノズルが積層方向に貫通形成され、第2コック本体には、検知部に空気を流入させるための検出用ノズルと、空気管の内部で緩慢に膨張した空気を本体の外部に排出するためのリーク孔と、試験空気を注入するための試験用ノズルとが積層方向に貫通形成され、切換弁には、軸を中心とした同心円上に4つの空気通路が積層方向に貫通形成されると共に、切換弁において第1又は第2コック本体との対向面に、3つの空気通路において周方向に隣接する同士を連通させる2つの溝が形成され、切換弁の軸を中心とした回転により、4つの空気通路の位置を変えることで、第1コック本体側に設けた第1及び第2空気管用ノズルと、第2コック本体側に設けた検出用ノズル、リーク孔及び試験用ノズルとの間の空気通路が、監視状態と各種試験のそれぞれとで切り換えられるものである。
【0017】
また、切換弁の切換位置を、火災監視を行う監視位置に切り換えた状態において、検出用ノズルとリーク孔とが連通し、切換弁の切換位置を第1試験位置に切り換えた状態において、検出用ノズル、リーク孔及び試験用ノズルが連通し、切換弁の切換位置を第2試験位置に切り換えた状態において、リーク孔と試験用ノズルとが連通すると共に、この連通路とは独立して第1空気管用ノズルと検出用ノズルとが連通するものである。
【0018】
また、切換弁の切換位置を、監視位置、第1試験位置又は第2試験位置に位置決めする位置決め機構を有し、位置決め機構は、第1コック本体又は第2コック本体の切換弁との対向面に積層方向に延びるように形成され、軸を中心として対称位置に形成された少なくとも一対のバネ収容凹部と、一対のバネ収容凹部に収容された少なくとも一対のバネと、一対のバネによって切換弁側に付勢された一対のクリックボールと、切換弁に設けられ、切換弁が監視位置、第1試験位置又は第2試験位置に位置したときに、一対のクリックボールが係止する少なくとも4つのクリック凹部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、コックスタンドを、第1コック本体と第2コック本体とを重ねて構成される本体内に通路部材を収納した構成とし、空気管と検知部との間の空気通路及びリーク孔を、一方向からの加工で形成可能な貫通孔及び溝の組み合わせで構成する構造としたので、加工が簡単で生産性を向上でき、コスト低減が可能となる。
【0020】
また、本発明では、コックスタンドを、第1コック本体と第2コック本体とを重ねて構成される本体内に通路部材を収納した構成とし、監視状態と各種試験時のそれぞれにおける空気通路を、各構成部材のそれぞれにおいて一方向からの加工で形成可能な貫通孔及び溝の組み合わせで構成する構造とした。このため、加工が簡単で生産性を向上でき、コスト低減が可能となる。
【0021】
また、切換弁の切換位置を、火災監視を行う監視位置に切り換えた状態において、検出用ノズルとリーク孔とが連通し、切換弁の切換位置を第1試験位置に切り換えた状態において、検出用ノズル、リーク孔及び試験用ノズルが連通し、切換弁の切換位置を第2試験位置に切り換えた状態において、リーク孔と試験用ノズルとが連通すると共に、この連通路とは独立して第1空気管用ノズルと検出用ノズルとが連通する。このため、切換弁の切換位置に応じてコックスタンドにおける空気通路の切り換えが可能である。
【0022】
また、切換弁の切換位置を、監視位置、第1試験位置又は第2試験位置に位置決めする位置決め機構を有し、位置決め機構は、第1コック本体又は第2コック本体の切換弁との対向面に積層方向に延びるように形成され、軸を中心として対称位置に形成された少なくとも一対のバネ収容凹部と、一対のバネ収容凹部に収容された少なくとも一対のバネと、一対のバネによって切換弁側に付勢された一対のクリックボールと、切換弁に設けられ、切換弁が監視位置、第1試験位置又は第2試験位置に位置したときに、一対のクリックボールが係止する少なくとも4つのクリック凹部とを備えた。このため、切換弁を、監視位置、第1試験位置又は第2試験位置に容易に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態に係る差動式分布型感知器のコックスタンド1の分解斜視図である。
図2図1のコックスタンド1を組み立てた状態のA−A断面図である。
図3図1の第1コック本体10の説明図である。
図4図1のコックスタンド1を組み立てた状態の図1のB−B断面図である。
図5図1の第2コック本体20の説明図である。
図6図1の切換弁30の説明図である。
図7図1のコックスタンド1における監視状態の空気通路の説明図である。
図8図1のコックスタンド1におけるポンプ試験時の空気通路の説明図である。
図9図1のコックスタンド1におけるリーク試験時の空気通路の説明図である。
図10図1のコックスタンド1におけるダイアフラム試験時の空気通路の説明図である。
図11】従来の差動式分布型感知器の構成図である。
図12】従来の差動式分布型感知器の試験方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る差動式分布型感知器のコックスタンド1の分解斜視図である。図2は、図1のコックスタンド1を組み立てた状態のA−A断面図である。
本実施形態の差動式分布型感知器は、警戒区域に配置された空気管60内の空気圧の変化を検知部で検出することで火災発生を感知するものであり、検知部は図示しないダイアフラム及び接点機構からなる。そして、本実施形態の差動式分布型感知器は、コックスタンド1が、第1コック本体10と、第2コック本体20と、火災監視時と各種試験時とで空気通路を切り換える切換弁30とを有している。切換弁30は、本発明の通路部材に相当する。
【0025】
切換弁30は、全体略円柱状に形成され、第1コック本体10と第2コック本体20とを重ねて構成される本体100内に形成された略円柱状の収納空間内に、第1、第2コック本体10、20の積層方向に延びる軸Ax周りに回転可能に収納されている。なお、収納空間には、切換弁30を積層方向の両側から挟むようにしてパッキン40、50も収納されている。
【0026】
コックスタンド1は、全体直方体状に形成され、第1コック本体10の四隅に設けた貫通孔10aに組立ネジ2(図1には1本のみ図示)を通し、第2コック本体20に設けたネジ穴20aに螺合することで、全体が一体化された構成を有している。
【0027】
このように全体を一体化した状態において、切換弁30の回転軸部32は、図2に示すようにその先端が第1コック本体10から突出しており、この回転軸部32にハンドル70がネジ72により一体に取り付けられる。回転軸部32の先端には楕円状のハンドル固定用凸部35が設けられており、ハンドル固定用凸部35がハンドル70の貫通孔71に嵌め込まれることで、ハンドル70の操作に連動して回転軸部32が回動操作されるようになっている。
【0028】
コックスタンド1を構成する各構成部材のそれぞれには、以下に詳しく説明するが、空気通路となる複数の貫通孔及び溝が設けられている。そして、切換弁30を軸Ax周りに回転させて各構成部材同士の各貫通孔の連通、非連通を切り換えることで、上述の監視状態、ポンプ試験、ダイアフラム試験、リーク試験を切り換える。本実施の形態のコックスタンド1は、空気通路となる複数の貫通孔が何れも同一方向に延びる構成としており、一方向からの加工を可能としてコスト低減を可能としながらも、火災監視時と各種試験時とで空気通路を切り換え可能なコックスタンドしての機能を実現できるようになっている。
【0029】
以下、各構成部材それぞれの構成について順に説明する。
【0030】
図3は、図1の第1コック本体10の説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)の矢印a方向の矢視図、(c)は(a)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図、(e)は(a)の矢印b方向の矢視図である。図4は、図1のコックスタンド1を組み立てた状態の図1のB−B断面図である。
第1コック本体10の、第2コック本体20との接触面には略円柱状の収納凹部11が設けられており、第2コック本体20に設けた後述の収納凹部21と共に、切換弁30を収納するための収納空間を形成している。第1コック本体10には更に、火災警戒区域にループ状にはりめぐらせた空気管60(図1参照)の両端が接続される第1、第2空気管用ノズルP1、P2が積層方向(図1の上下方向)に貫通して設けられている。また、切換弁30の後述の回転軸部32が挿通される挿通孔12が形成されている。第1、第2空気管用ノズルP1、P2は、軸Axを中心とした同心円C1上に互いに90°ずれた位置に設けられている。
【0031】
第1、第2空気管用ノズルP1、P2には、空気管60の一端と他端がそれぞれ接続されており、図1に示すように空気管60の端部が銅管端子61を介して固定ネジ62により接続される。固定ネジ62の軸部の外表面には軸方向に延びる溝(図示せず)が形成されており、空気管60の内部空気が、銅管端子61及び固定ネジ62の溝(図示せず)を介して第1、第2空気管用ノズルP1、P2からコックスタンド1内に流入するようになっている。
【0032】
また、第1コック本体10の収納凹部11には、図3に示すように軸Axを中心とした同心円C2上に2つのバネ収容凹部13が互いに180°ずれた位置に設けられている。バネ収容凹部13には、図4に示すようにコイルバネ14が収容され、切換弁30に設けたクリック凹部34に収容されるクリックボール15をクリック凹部34に押し込む方向に付勢する。
【0033】
切換弁30には図1及び後述の図6に示すように90°間隔で4つのクリック凹部34が形成され、切換弁30の回転時に、2つのクリックボール15が4つのクリック凹部34のうちの2箇所に選択的に係合するように構成されている。この構成により、ハンドル70を90°回転する毎にクリックボール15がクリック凹部34に係合し、切換弁30を複数の所定位置(監視位置、ポンプ試験位置、リーク試験位置及びダイアフラム試験位置)に位置させることができるようになっている。
【0034】
なお、バネ収容凹部13、コイルバネ14及びクリックボール15は一組のみで切換弁30を複数の所定位置に位置させることができるが、上述の通り、バネ収容凹部13は軸Axを中心として対称位置に少なくとも一対形成されていれば、切換弁30の回転時のバランスが良くなる。従って、バランスの良い切換弁30を構成するには、バネ収納凹部13に収納されるコイルバネ14及びクリックボール15も少なくとも一対で足りることになる。
【0035】
第1コック本体10において収納凹部11には、内周面から外方に延びる2つの位置決め凹部16が形成されている。2つの位置決め凹部16は、同心円C1上において第1空気管用ノズルP1と第2空気管用ノズルP2との間の中間点cと、軸Axとを結ぶ直線l1を中心として対称となる位置に形成されている。
【0036】
パッキン40は、例えばフッ素樹脂製シートで構成され、収納凹部11と同様の外型形状に形成されており、円形状部分40aと円形状部分40aの外周面から突出する2つの位置決め凸部40bとを有している。この位置決め凸部40bが位置決め凹部16に位置することで、切換弁30の回転によりパッキン40が回転するのが防止されるようになっている。
【0037】
また、パッキン40には、第1コック本体10の第1、第2空気管用ノズルP1、P2及び挿通孔12のそれぞれ対向する各部分に貫通孔41、42、43が設けられており、これら貫通孔が第1コック本体10と切換弁30との間の空気通路を形成している。また、パッキン40には、4つのクリック凹部34と対向する位置に貫通孔44が設けられている。また、パッキン40も直線l1(図1参照)を中心として対称に形成されており、裏表逆にしても収納凹部11内にセットできるようになっている。このように構成されたパッキン40は、第1コック本体10と切換弁30との間の空気漏れを抑制すると共に、組立ネジ2で全体を一体化する際の占めすぎを緩和する役割を有している。
【0038】
図5は、図1の第2コック本体20の説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図、(d)は(a)の矢印a方向の矢視図、(e)は(a)の矢印b方向の矢視図、である。
第2コック本体20の第1コック本体10との接触面には切換弁30を収納する収納空間を形成する円柱状の収納凹部21が設けられている。そして、収納凹部21の底面には、緩慢な温度変化に対して空気管60内の空気圧を大気圧に合わせるためのリーク孔Lと、ダイアフラム(図示せず)を接続するための検出用ノズルFと、試験用の空気を注入するための試験用ノズルTとが積層方向に貫通して設けられている。リーク孔Lと検出用ノズルFと試験用ノズルTとは、軸Axを中心とした同心円C1上に90°間隔で配置されている。この同心円C1の半径は、図3に示した第1コック本体10において第1、第2空気管用ノズルP1、P2が設けられた同心円C1の半径と同様である。
【0039】
収納凹部21は、内周面の1箇所から外方に延びる位置決め凹部22を有している。収納凹部21は、中心軸Axと検出用ノズルFとを結ぶ直線l2を中心として対称となるように形成されている。なお、第2コック本体20と上述の第1コック本体10とでは、位置決め凹部の個数を敢えて異ならせており、コックスタンド1を組み立てる際に、パッキン40、50を間違って逆に装着されないようにしている。
【0040】
パッキン50は、パッキン40と同様に例えばフッ素樹脂製シートで構成され、収納凹部21と同様の外型形状に形成されており、円形状部分50aと円形状部分50aの外周面から突出する1つの位置決め凸部50bとを有している。パッキン50には、リーク孔Lと、検出用ノズルFと、試験用ノズルTと対向する部分に貫通孔51、52、53が形成され、これら貫通孔が切換弁30と第2コック本体20との間の空気通路を形成している。
【0041】
パッキン50は、直線l2(図1図5参照)を中心として対称の形状を有しており、裏表逆にしても収納凹部21内にセットできるようになっている。また、パッキン50の位置決め凸部50bが収納凹部21の位置決め凹部22に位置することで、切換弁30の回転によりパッキン50が回転するのが防止されるようになっている。
【0042】
図6は、図1の切換弁30の説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図、(d)は(a)のC−C断面図、(e)は(a)のD−D断面図、(f)は矢印a方向の矢視図、(g)は(a)の矢印b方向の矢視図である。
【0043】
切換弁30は、円柱状の通路切換部31と、通路切換部31の中心から外方に延びる回転軸部32とを有している。通路切換部31には、積層方向に貫通する4つの空気通路H1〜H4が、軸Axを中心とした同心円C1上に90°間隔で設けられている。この同心円C1の半径は、図3及び図5に示した第1コック本体10及び第2コック本体20の同心円C1の半径と同様である。4つの空気通路H1〜H4のうち、周方向に隣接する3つの空気通路H1〜H3同士は、通路切換部31の第1コック本体10側の面に形成された溝33a、33bで互いに連通し、空気通路H4は空気通路H1〜H3とは独立して設けられている。図1において溝33a、33b部分をハッチングで示している。なお、ここでは溝33a、33bを通路切換部31の第1コック本体10側の面に設けた構成を示したが、第2コック本体20側の面に設けた構成としてもよい。
【0044】
次に、通常の監視状態と各種試験時のコックスタンド1の空気通路の切り換えについて図7図10を参照して説明する。図7図10では、切換弁30が収納された状態の第2コック本体20を平面的に見た状態を示している。なお、図7図10では第1コック本体10自体の図示は省略しているが、位置関係をわかりやすくするため、第1、第2空気管用ノズルP1、P2の位置については図示している。
【0045】
図7図10において、第1、第2空気管用ノズルP1、P2、リーク孔L、検出用ノズルF及び試験用ノズルTの位置は固定であり、切換弁30の回転により空気通路H1〜H4の位置が移動することで、コックスタンド1内の空気通路が、監視状態、ポンプ試験、リーク試験及びダイアフラム試験のそれぞれに対応した空気通路に切り換えられる。なお、第1空気管用ノズルP1と検出用ノズルF、並びに第2空気管用ノズルP2とリーク孔Lが積層方向に連通可能に対向配置して固定されている。また、図7図10では、第1コック本体10、切換弁30及び第2コック本体20の各貫通孔(第1空気管用ノズルP1、第2空気管用ノズルP2、空気通路H1〜H4、リーク孔L、検出用ノズルF、試験用ノズルT)のうち、積層方向に連通して監視時又は各種試験時に空気が通過する部分を黒丸●としている。
【0046】
以下、まずは監視状態について説明し、その後、ポンプ試験、リーク試験、ダイアフラム試験及び流通試験について順に説明する。
【0047】
(監視状態)
図7は、図1のコックスタンド1における監視状態の空気通路の説明図である。
監視状態では、切換弁30を図7に示す監視位置に回転させる。図1は切換弁30を監視位置に位置させた状態を示している。
【0048】
この状態では、切換弁30の空気通路H1、H2が第1コック本体側の第1、第2空気管用ノズルP1、P2と、第2コック本体20側のリーク孔L、検出用ノズルFとに連通する。また、空気通路H1と空気通路H2とは溝33aで連通している。したがって、第1コック本体側の第1、第2空気管用ノズルP1、P2と、第2コック本体20側のリーク孔L、検出用ノズルFとが、コックスタンド1内部で相互に連通し、火災監視可能な監視用空気通路が形成される。なお、この監視状態では、試験用ノズルTは空気通路H4に連通して空気通路H1〜H3から独立した状態となり、監視用空気通路から切り離される。
【0049】
監視状態では、第1空気管用ノズルP1及び第2空気管用ノズルP2に空気管60が接続され、空気管60内で空気が急激に膨張すると、膨張した空気がダイアフラム(図示せず)に流入し、火災検知を行うことができる。
【0050】
ここで、検出用ノズルF、空気通路H1及び第1空気管用ノズルP1で本発明の第1空気通路が形成され、リーク孔L、空気通路H2及び第2空気管用ノズルP2で本発明の第2空気通路が形成されている。すなわち、コックスタンド1には、第1コック本体10と第2コック本体20の積層方向に貫通した第1及び第2空気通路を離間して設けられている。
【0051】
(ポンプ試験)
図8は、図1のコックスタンド1におけるポンプ試験時の空気通路の説明図である。
ポンプ試験では、切換弁30を図8に示すポンプ試験位置に回転させる。この状態では、ダイアフラム(図示せず)が接続された検出用ノズルFとリーク孔Lと試験用ノズルTとが、切換弁30の空気通路H2、H3、H1、溝33b、33aを介して連通する。また、第1空気管用ノズルP1と第2空気管用ノズルP2には空気管60が接続される。以上によりポンプ試験用空気通路が形成される。
【0052】
そして、ポンプ試験では、試験用ノズルTに試験ポンプ(図示せず)を接続し、この状態で試験ポンプから試験用ノズルTに空気を注入すると、注入された空気が、切換弁30の空気通路H1及び溝33aを介して空気通路H2に流入する。空気通路H2に流入した空気は、第1空気管用ノズルP1を介して空気管60に流入する。そして、空気管60に流入した空気は、空気管60内を通過後、第2空気管用ノズルP2に流入し、空気通路H3、溝33b及び空気通路H2を介して検出用ノズルFからダイアフラム(図示せず)に流入する。その間、リーク孔Lから一定量の空気が放出されている。そして、ポンプ試験用空気通路内の圧力が高まると、ダイアフラムが作動する。このようにダイアフラムが作動するまでの作動時間と、復旧するまでの復旧時間を測定する。これらの時間が所定時間範囲以内であれば正常、所定時間範囲外であれば異常と判断し、異常箇所を調査する。
【0053】
(リーク試験)
図9は、図1のコックスタンド1におけるリーク試験時の空気通路の説明図である。
リーク試験では、切換弁30を図9に示すリーク試験位置に回転させる。この状態では、リーク孔Lと試験用ノズルTとが、切換弁30の空気通路H1、溝33a、空気通路H2、溝33b、空気通路H3を介して連通する。そして、空気管60は取り外され、第2空気管用ノズルP2には例えばネジ留めキャップが装着されてシールされる。よって、漏れが生じる部分はリーク孔Lだけであり、リーク試験を行うことができる。以上によりリーク試験用空気通路が形成される。
【0054】
そして、リーク試験では、試験用ノズルTに試験ポンプ(図示せず)と圧力計(図示せず)を接続し、この状態で試験ポンプから試験用ノズルTに空気を注入すると、注入された空気は、リーク試験用空気通路を通ってリーク孔Lから漏れる。そして、リーク孔Lから空気が漏れて圧力が低下する速度を測定する。
【0055】
(ダイアフラム試験)
図10は、図1のコックスタンド1におけるダイアフラム試験時の空気通路の説明図である。
ダイアフラム試験における切換弁30の切換位置(ダイアフラム試験位置)はリーク試験位置と同様である。ダイアフラム試験では、空気管60を取り外し、第1空気管用ノズルP1に試験ポンプ(図示せず)と圧力計(図示せず)を接続する。また、検出用ノズルFにはダイアフラムが接続されている。この状態では、第1空気管用ノズルP1とダイアフラム(図示せず)とが空気通路H4を介して連通するダイアフラム試験用空気通路が形成される。
【0056】
そして、ダイアフラム試験では、試験ポンプから第1空気管用ノズルP1に空気を注入する。注入された空気は、ダイアフラム試験用空気通路を通ってダイアフラムに流入する。そして、ダイアフラムが変位して接点がONになるときの空気圧を圧力計で測定し、その空気圧が基準範囲に収まっている確認する。
【0057】
(流通試験)
従来構造では、空気管の漏れ又は詰まり等の試験を行う流通試験を、コックスタンド1を介して行っていたが、本実施の形態では、コックスタンド1を用いず、空気管60をコックスタンド1から外して、空気管60の一端に試験ポンプ、他端に圧力計を接続して試験を行えばよい。
【0058】
以上説明したように本実施の形態では、コックスタンド1を、第1コック本体10と第2コック本体20とを重ねて構成した本体100内に、積層方向に延びる軸Axを中心として回転可能な切換弁30を収納した、いわば3部材積層構造とした。そして、監視用空気通路及び各種試験用空気通路を、各構成部材のそれぞれにおいて一方向からの加工で形成可能な貫通孔(第1空気管用ノズルP1、第2空気管用ノズルP2、空気通路H1〜H4、リーク孔L、検出用ノズルF、試験用ノズルT)及び溝(溝33a、33b)の組み合わせで構成する構造とした。
【0059】
すなわち、コックスタンド1内に監視用空気通路及び各種試験用空気通路を形成するための加工を、一方向からの加工で済むコックスタンド構造とした。このため、従来の複数方向からの加工が必要なコックスタンド1に比べて加工が簡単で生産性を向上でき、コスト低減が可能なコックスタンド1を得ることできる。
【符号の説明】
【0060】
1 コックスタンド、2 組立ネジ、10 第1コック本体、10a 貫通孔、11 収納凹部、12 挿通孔、13 バネ収容凹部、14 コイルバネ、15 クリックボール、16 位置決め凹部、20 第2コック本体、20a ネジ穴、21 収納凹部、22 位置決め凹部、30 切換弁、31 通路切換部、32 回転軸部、33a 溝、33b 溝、34 クリック凹部、35 ハンドル固定用凸部、40 パッキン、40a 円形状部分、40b 位置決め凸部、41 貫通孔、42 貫通孔、43 貫通孔、44 貫通孔、50 パッキン、50a 円形状部分、50b 位置決め凸部、51 貫通孔、60 空気管、61 銅管端子、62 固定ネジ、70 ハンドル、71 貫通孔、72 ネジ、100 本体、F 検出用ノズル、H1 空気通路、H2 空気通路、H3 空気通路、H4 空気通路、L リーク孔、P1 第1空気管用ノズル、P2 第2空気管用ノズル、T 試験用ノズル。
図1
図2
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図7
図8
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図12