【実施例】
【0222】
本発明は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、あくまでも例示として提供されるに過ぎないことは理解されなければならない。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができ、及びその趣旨及び精神から逸脱することなく本発明の様々な変更及び修正を行い、本発明を様々な利用法及び条件に適合させることができる。
【0223】
一般的方法
実施例において用いられる標準的な組換えDNA及び分子クローニング技術は当該技術分野において公知であり、1)Sambrook,J.、Fritsch,E.F.及びManiatis,T、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989年)(Maniatis);2)T.J.Silhavy、M.L.Bennan、及びL.W.Enquist、「Experiments with Gene Fusions」;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984年);及び、3)Ausubel,F.M.ら、「Current Protocols in Molecular Biology」、刊行元Greene Publishing Assoc.及びWiley−Interscience、Hoboken,NJ(1987年)により記載がなされている。
【0224】
微生物培養物の維持及び成長に好適な材料及び方法は、当該技術分野において公知である。以下の例における使用に好適な技法は、「Manual of Methods for General Bacteriology」(Phillipp Gerhardt、R.G.E.Murray、Ralph N.Costilow、Eugene W.Nester、Willis A.Wood、Noel R.Krieg及びG.Briggs Phillips編)、American Society for Microbiology:Washington,D.C.(1994年))において;又はThomas D.Brockにより「Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology」、第2版、Sinauer Associates:Sunderland,MA(1989年)において示されるとおり見出され得る。微生物細胞の成長及び維持に使用される全ての試薬、制限酵素及び材料は、特記されない限り、Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI)、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、New England Biolabs,Inc.(Beverly,MA)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、又はSigma Chemical Company(St.Louis,MO)から得た。大腸菌(E.coli)株は、基本的にはルリア・ベルターニ[「LB」]プレートにおいて37℃で増殖した。
【0225】
全般的な分子クローニングは標準方法により実施した(Sambrookら、上記)。サブクローニングにPCR又は部位特異的突然変異誘発が関わった場合、コンストラクトを配列決定し、配列にエラーが導入されていないことを確認した。PCR産物は、PromegaのpGEM−T−easyーベクター(Madison,WI)にクローニングした。
【0226】
略称の意味は以下のとおりである:「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kB」はキロベースを意味し、「DCW」は乾燥細胞重量を意味し、及び「TFA」は全脂肪酸を意味する。
【0227】
発現カセットの命名法
発現カセットの構造は「X::Y::Z」の単純な表記法により表され、ここではXがプロモーター断片を表し、Yが遺伝子断片を表し、及びZがターミネーター断片を表し、これらは全て、互いに作動可能に連結されている。
【0228】
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換及び培養
American Type Culture Collection(Rockville,MD)からヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株ATCC番号20362を購入した。ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株は、以下に示す配合によるいくつかの培地中、28〜30℃でルーチン的に増殖した。寒天プレートは、標準方法論に従い、各液体培地に20g/Lの寒天を添加することにより必要に応じて調製した。
YPD寒天培地(リットル当たり):10gの酵母エキス[Difco]、20gのBactoペプトン[Difco]、及び20gのグルコース。
基本最少培地[「MM」](リットル当たり):20gのグルコース、アミノ酸を含まない1.7gの酵母窒素ベース、1.0gのプロリン、及びpH6.1(調整不要)。
最少培地+ウラシル[「MM+ウラシル又はMMU」](リットル当たり):上記のMM培地を調製し、0.1gのウラシル及び0.1gのウリジンを添加する。
最少培地+ウラシル+スルホニル尿素[「MMU+SU」](リットル当たり):上記のMMU培地を調製し、280mgのスルホニル尿素を添加する。
最少培地+ウラシル+リジン[「MMUraLys」](リットル当たり):上記のMM培地を調製し、0.1gのウラシル、0.1gのウリジン及び0.1gのリジンを添加する。
最少培地+5−フルオロオロチン酸[「MM+5−FOA」](リットル当たり):20gのグルコース、6.7gの酵母窒素ベース、75mgのウラシル、75mgのウリジン及び適当量のFOA(Zymo Research Corp.、Orange,CA)、100mg/L〜1000mg/Lの濃度範囲に対するFOA活性試験に基づく(供給業者から受け取る各バッチ内でばらつきが生じるため)。
高グルコース培地[「HGM」](リットル当たり):80のグルコース、2.58gのKH
2PO
4及び5.36gのK
2HPO
4、pH7.5(調整不要)。
酵母エキス非含有発酵培地[「YE非含有FM」](リットル当たり):6.70g/Lの酵母窒素ベース、6.00gのKH
2PO
4、2.00gのK
2HPO
4、1.50gのMgSO
4*7H
2O、及び20gのグルコース。
発酵培地[「FM」](リットル当たり):6.70g/Lの酵母窒素ベース、6.00gのKH
2PO
4、2.00gのK
2HPO
4、1.50gのMgSO
4*7H
2O、20gのグルコース及び5.00gの酵母エキス(BBL)。
【0229】
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の形質転換は、本明細書によって参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に記載されるとおり実施した。
【0230】
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の脂肪酸分析
脂肪酸[「FA」]分析のため、Bligh,E.G.及びDyer,W.J.(Can.J.Biochem.Physiol.,37:911〜917頁(1959年))に記載されるとおり遠心により細胞を回収し、脂質を抽出した。脂質抽出物のナトリウムメトキシドとのエステル交換反応により脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製し(Roughan,G.、及びNishida I.、Arch Biochem Biophys.、276(1):38〜46頁(1990年))、続いて30m×0.25mm(内径)HP−INNOWAX(Hewlett−Packard)カラムを装着したHewlett−Packard 6890 GCにより分析した。オーブン温度は、3.5℃/分で170℃(25分間維持)から185℃とした。
【0231】
直接的な塩基エステル交換反応のため、ヤロウイア属(Yarrowia)細胞(0.5mL培養物)を回収し、蒸留水で1回洗浄し、Speed−Vacにおいて5〜10分間真空乾燥した。ナトリウムメトキシド(1%の100μl)及び既知量のC15:0トリアシルグリセロール(C15:0 TAG;カタログ番号T−145、Nu−Check Prep、Elysian,MN)を試料に添加し、次に試料をボルテックスにかけ、50℃で30分間揺動させた。3滴の1M NaCl及び400μlヘキサンを添加した後、試料をボルテックスにかけ、回転させた。上層を取り出し、GCにより分析した。
【0232】
GC分析によって記録されたFAMEピークを、既知の脂肪酸と比較したときのその滞留時間により特定し、FAMEピーク面積について既知量の内部標準(C15:0 TAG)と比較することにより定量化した。従って、任意の脂肪酸FAMEの近似量(μg)[「μg FAME」]は式:(特定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)*(標準C15:0 TAGのμg)により計算され、一方、C15:0 TAGの1μgは0.9503μgの脂肪酸に等しいため、任意の脂肪酸の量(μg)[「μg FA」]は式:(特定の脂肪酸についてのFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)*(標準C15:0 TAGのμg)*0.9503により計算される。0.9503の変換係数は、0.95〜0.96の範囲をとる多くの脂肪酸について決定される値の近似であることに留意されたい。
【0233】
各個別の脂肪酸の量をTFAの重量パーセントとして要約する脂質プロファイルを、個別のFAMEピーク面積を全てのFAMEピーク面積の合計で除して100を乗じることにより決定した。
【0234】
フラスコアッセイによるヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中の全脂質含量及び組成の分析
特定のY.リポリティカ(Y.lipolytica)株中の全脂質含量及び組成を詳細に分析するため、以下のとおりフラスコアッセイを実施した。具体的には、新しく画線した細胞の1つのループを3mLのFM培地に接種し、250rpm及び30℃で一晩増殖した。OD
600nmを計測し、125mLフラスコ内の25mLのFM培地に0.3の最終OD
600nmまで細胞のアリコートを添加した。振盪インキュベーターにおいて250rpm及び30℃で2日後、遠心により6mLの培養物を回収し、125mLフラスコ内の25mLのHGM中に再懸濁した。振盪インキュベーターにおいて250rpm及び30℃で5日後、1mLのアリコートを用いて脂肪酸分析(上記)を行い、及び10mLを乾燥させて乾燥細胞重量[「DCW」]を決定した。
【0235】
DCWを決定するため、Beckman GS−6R遠心分離機のBeckman GH−3.8ロータにおいて4000rpmで5分間遠心することにより、10mLの培養物を回収した。ペレットを25mLの水中に再懸濁し、再度上記のとおりに回収した。洗浄したペレットを20mLの水中に再懸濁し、予め秤量したアルミニウム皿に移した。細胞懸濁液を真空オーブンにおいて80℃で一晩乾燥させた。細胞の重量を決定した。
【0236】
細胞の全脂質含量[「TFA % DCW」]を計算し、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「% TFA」]、及び乾燥細胞重量の百分率としてのEPA含量[「EPA % DCW」]を表にまとめたデータと併せて検討する。フラスコアッセイからのデータは、細胞の全乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の全脂質含量[「TFA % DCW」]、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「% TFA」]及び乾燥細胞重量の百分率としてのEPA含量[「EPA % DCW」]を要約する表として提供する。より具体的には、脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトオレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPA及びその他として特定され得る。
【0237】
実施例1
全脂肪酸の約46%のDGLAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)L135株(Ura3+、Leu−、Δpex3)の生成
本実施例は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に由来する、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現により全脂質に対して約46%のDGLAを産生する能力を有するL135株の構築について記載する。
【0238】
要約すれば、
図2に図解されるとおり、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362から、Y2224株(野生型ヤロウイア属(Yarrowia)株ATCC番号20362のUra3遺伝子の自律的突然変異によるFOA耐性突然変異体)、Y4001株(17%EDAを産生、Leu−表現型)、Y4001U1株(Leu−及びUra−)、Y4036株(18%DGLAを産生、Leu−表現型)及びY4036U株(Leu−及びUra−)の構築を介してL135株を誘導した。Y2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株及びY4036U株の構築に関するさらなる詳細は、本明細書によって参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2008−0254191号明細書の一般的方法に記載されている。
【0239】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY4036U株の最終的な遺伝子型は、Ura3−、YAT1::ME3S::Pex16、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::OCTであった(ここでFmD12はフザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)Δ12デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,504,259号明細書]であり;ME3Sはモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)に由来するコドン最適化C
16/18エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,470,532号明細書]であり;EgD9eはユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)Δ9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,645,604号明細書]であり;EgD9eSはユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,645,604号明細書]であり;EgD8Mは合成突然変異Δ8デサチュラーゼ[米国特許第7,709,239号明細書]であって、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)に由来するもの[米国特許第7,256,033号明細書]である)。
【0240】
Pex3の染色体欠失を有するL135株の生成
L135株の構築については、本明細書によって参照により本明細書に援用される国際公開第2009/046248号パンフレットの実施例12に記載されている。要約すれば、コンストラクトpY157を使用して、Y4036U株においてペルオキシソーム生合成因子3タンパク質[ペルオキシソーム形成タンパク質ペルオキシン3又は「Pex3p」]をコードする染色体遺伝子をノックアウトし、それによりL135株(Y4036株(Δpex3)とも称される)を産生した。L135株における染色体Pex3遺伝子のノックアウトは、Y4036株(その天然Pex3pがノックアウトされていない)と比較して以下をもたらした:より高い脂質含量(TFA % DCW)(約6.0%、対4.7%)、より高いDGLA % TFA(46%、対19%)、より高いDGLA % DCW(約2.8%、対0.9%)及びLA % TFAの低下(12%、対30%)。加えて、Δ9エロンガーゼ変換効率が、Y4036株における約48%からL135株における83%に増加した。
【0241】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するL135株の最終的な遺伝子型は、Ura3+、Leu−、Pex3−、未知1−、YAT1::ME3S::Pex16、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::OCTであった。
【0242】
実施例2
全脂肪酸[「TFA」]の約18%〜約41%のARAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株の生成
本実施例は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に由来する、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現により全脂質に対して約41%のARAを産生する能力を有するY8006株の構築について記載する。
【0243】
Y8006株(
図2)を生じさせるには、Y2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株、Y4036U株及びL135株(実施例1に記載される)の構築、並びにL135U9株及びY8002株の構築が必要であった。
【0244】
L135U9(Leu−、Ura3−)株の生成
L135株中のプラスミドpY116(
図3;配列番号127;本明細書によって参照により本明細書に援用される国際公開第2008/073367号パンフレットの実施例7に記載される)においてCreリコンビナーゼ酵素を一時的に発現させることによりL135U株を作成し、Leu−及びUra−表現型を産生した。プラスミドpY116を使用して、新しく増殖したL135細胞の形質転換を一般的方法に従い行った。形質転換体細胞をMMLeuUraに播種し、30℃で3〜4日間維持した。3つのコロニーを選び取り、30℃の3mLの液体YPD培地に接種して250rpm/分で1日間振盪した。培養物を液体MMLeuUra培地で1:50,000希釈し、100μLを新しいYPD培地に播種して30℃で2日間維持した。3つのプレートの各々から8つのコロニーを選び取り(合計24コロニー)、MMLeu及びMMLeuUra選択プレート上に画線した。MMLeuUraプレートで増殖でき、しかしMMLeuプレートでは増殖できなかったコロニーを選択し、GCにより分析してC20:2(EDA)の存在について確認した。Leu−及びUra−表現型を有する1つの株をL135U9と命名した。
【0245】
TFAの約32%のARAを産生するY8002株の生成
コンストラクトpZKSL−5S5A5(
図4A;配列番号128)を生成して3つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子をL135U9株のLys遺伝子座に組み込み、それによりARAの産生を可能にした。pZKSL−5S5A5プラスミドは以下の成分を含んだ。
【0246】
【表7】
【0247】
pZKSL−5S5A5プラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるL135U9株の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMUraLysプレートに播種し、30℃で2〜3日間維持した。次に単一コロニーをMMUraLysプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMUraLysに接種して250rpm/分で2日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0248】
GC分析により、pZKSL−5S5A5の3つのキメラ遺伝子を含む形質転換体にはARAが存在し、しかし親L135U9株には存在しないことが示された。TFAの約32.2%、32.9%、34.4%、32.1%及び38.6%のARAを産生した5個の株(すなわち、#28、#62、#73、#84及び#95)を、それぞれY8000株、Y8001株、Y8002株、Y8003株及びY8004株と命名した。さらなる分析により、pZKSL−5S5A5の3つのキメラ遺伝子がY8000株、Y8001株、Y8002株、Y8003株及びY8004株のLys5部位に組み込まれなかったことが示された。全ての株がLys+表現型を有した。
【0249】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8000株、Y8001株、Y8002株、Y8003株及びY8004株の最終的な遺伝子型は、Ura−、Pex3−、未知1−、未知2−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Octであった。
【0250】
TFAの約41%のARAを産生するY8006株の生成
コンストラクトpZP3−Pa777U(
図4B;配列番号129;本明細書によって参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表9に記載される)を生成して3つのΔ17デサチュラーゼ遺伝子をY8002株のPox3遺伝子座(GenBank受託番号AJ001301)に組み込んだ。
【0251】
pZP3−Pa777UプラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるY8002株の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で2〜3日間維持した。次に単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0252】
GC分析により、pZP3−Pa777Uの3つのキメラ遺伝子を含む選択された96個の形質転換体のほとんどにTFAの26%〜31%のEPAが存在し、しかし親Y8002株には存在しないことが示された。株#69はTFAの約38%のEPAを産生し、Y8007と命名した。EPAを産生せず、しかしTFAの約41%のARAを産生した株が1つあった(すなわち、株#9)。この株はY8006と命名した。Y8006株におけるEPA産生の欠如に基づき、野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するその遺伝子型は、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、Leu+、Lys+、Ura+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Octであると推定された。
【0253】
対照的に、野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8007株の最終的な遺伝子型は、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、Leu+、Lys+、Ura+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Oct、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Acoであった(ここでPaD17は、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)Δ17デサチュラーゼ[米国特許第7,556,949号明細書]であり、PaD17Sは、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)由来のコドン最適化Δ17デサチュラーゼである[米国特許第7,556,949号明細書]。
【0254】
Y8006株及びY8007株におけるPox3遺伝子座(GenBank受託番号AJ001301)へのpZP3−Pa777Uの3つのキメラ遺伝子の組込みは確認されなかった。
【0255】
実施例3
全脂肪酸[「TFA」]の約24%〜約56%のEPAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株の生成
本実施例は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に由来する、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現により全脂質に対して約56%のEPAを産生する能力を有するY8412株の構築について記載する。
【0256】
Y8412株(
図2)を生じさせるには、Y2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株、Y4036U株及びL135株(実施例1に記載される)、L135U9株及びY8002株(実施例2に記載される)、並びにY8006U6株、Y8069株、Y8069U株、Y8154株、Y8154U株、Y8269株及びY8269U株の構築が必要であった。
【0257】
Y8006U6(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;本明細書によって参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用してUra3突然変異遺伝子をY8006株のUra3遺伝子に組み込んだ。
【0258】
プラスミドpZKUMをSalI/PacIで消化し、次に一般的方法によるY8006株の形質転換に使用した。形質転換後、細胞をMM+5−FOA選択プレートに播種し、30℃で2〜3日間維持した。
【0259】
MM+5−FOAプレート上で成長した合計8個の形質転換体を選び取り、MMプレート及びMM+5−FOAプレートに別個に再度画線した。8株全てがUra−表現型を有した(すなわち、細胞はMM+5−FOAプレート上では増殖できたが、MMプレート上では増殖できなかった)。細胞をMM+5−FOAプレートから剥がし取り、一般的方法により脂肪酸分析に供した。
【0260】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#1、#2、#4、#5、#6及び#7に、それぞれ22.9%、25.5%、23.6%、21.6%、21.6%及び25%のARAが存在することが示された。これらの6個の株は、それぞれY8006U1株、Y8006U2株、Y8006U3株、Y8006U4株、Y8006U5株及びY8006U6株(まとめて、Y8006U株)と命名した。
【0261】
TFAの約37.5%のEPAを産生するY8069株の生成
コンストラクトpZP3−Pa777U(
図4B;配列番号129;本明細書によって参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表9に記載される)を使用して3つのΔ17デサチュラーゼ遺伝子をY8006U6株のPox3遺伝子座(GenBank受託番号AJ001301)に組み込んだ。
【0262】
pZP3−Pa777UプラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるY8006U6株の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で2〜3日間維持した。次に単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0263】
GC分析により、pZP3−Pa777Uの3つのキメラ遺伝子を含む形質転換体にEPAが存在し、しかし親Y8006U6株には存在しないことが示された。選択した24個の株のほとんどが、TFAの24〜37%のEPAを産生した。TFAの37.5%、43.7%、37.9%及び37.5%のEPAを産生した4つの株(すなわち、#1、#6、#11及び#14)を、それぞれY8066、Y8067、Y8068及びY8069と命名した。pZP3−Pa777Uの3つのキメラ遺伝子の、Y8066株、Y8067株、Y8068株及びY8069株のPox3遺伝子座(GenBank受託番号AJ001301)への組込みは確認されなかった。
【0264】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8066株、Y8067株、Y8068株及びY8069株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Oct、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Acoであった。
【0265】
Y8069U株(Ura3−)の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(上記)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8069株のUra3遺伝子に組み込んだ。合計3個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0266】
GC分析により、MM+5−FOAプレート上で成長したpZKUM形質転換体株#1、#2及び#3に、それぞれ22.4%、21.9%及び21.5%のEPAが存在することが示された。これらの3個の株を、それぞれY8069U1株、Y8069U2株、及びY8069U3株(まとめて、Y8069U株)と命名した。
【0267】
TFAの約44.8%のEPAを産生するY8154株の生成
コンストラクトpZKL2−5mB89C(
図5B;配列番号131)を生成して1つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子、1つのΔ9エロンガーゼ遺伝子、1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子、及び1つのヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(CPT1)をY8069U3株のLip2遺伝子座(GenBank受託番号AJ012632)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。pZKL2−5mB89Cプラスミドは以下の構成要素を含んだ。
【0268】
【表8】
【0269】
pZKL2−5mB89CプラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるY8069U3株の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で3〜4日間維持した。単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心により回収し、HGM中に再懸濁した後、250rpm/分で5日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0270】
GC分析により、選択した96個の株のほとんどがTFAの約38〜44%のEPAを産生したことが示された。TFAの約44.7%、45.2%、45.4%、44.8%、46.1%、48.6%及び45.9%のEPAを産出した7個の株(すなわち、#1、#39、#49、#62、#70、#85及び#92)を、それぞれY8151株、Y8152株、Y8153株、Y8154株、Y8155株、Y8156株及びY8157株と命名した。これらのEPA株においてLip2遺伝子のノックアウトは確認されなかった。
【0271】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8151株、Y8152株、Y8153株、Y8154株、Y8155株、Y8156株及びY8157株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Acoであった。
【0272】
Y8154U1(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(上記)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8154株のUra3遺伝子に組み込んだ。合計8個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0273】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#7においてTFAの23.1%のEPAがあったことが示された。この株をY8154U1株と命名した。
【0274】
TFAの約45.3%のEPAを産生するY8269株の生成
コンストラクトpZKL1−2SR9G85(
図6A;配列番号132)を生成して1つのDGLAシンターゼ、1つのΔ12デサチュラーゼ遺伝子及び1つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子をY8154U1株のLip1遺伝子座(GenBank受託番号Z50020)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。DGLAシンターゼは、Δ8デサチュラーゼに連結されたΔ9エロンガーゼを含むマルチザイムである。
【0275】
pZKL1−2SR9G85プラスミドは以下の構成要素を含んだ。
【0276】
【表9】
【0277】
pZKL1−2SR9G85プラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるY8154U1株の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で3〜4日間維持した。単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心により回収し、HGM中に再懸濁した後、250rpm/分で5日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0278】
GC分析により、選択した96個の株のほとんどが全脂質の40〜44.5%のEPAを産生したことが示された。TFAの約44.8%、45.3%、47%、44.6%及び44.7%のEPAを産生した5個の株(すなわち、#44、#46、#47、#66及び#87)を、それぞれY8268、Y8269、Y8270、Y8271及びY8272と命名した。Lip1遺伝子座(GenBank受託番号Z50020)のノックアウトは、これらのEPA株では確認されなかった。
【0279】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8268株、Y8269株、Y8270株、Y8271株及びY8272株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、YAT1::ME3S::Pex16、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Acoであった。
【0280】
Y8269U(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(上記)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8269株のUra3遺伝子に組み込んだ。合計8個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0281】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#2、#3及び#5において、それぞれTFAの23.0%、23.1%及び24.2%のEPAがあったことが示された。これらの株を、それぞれY8269U1株、Y8269U2株及びY8269U3株(まとめて、Y8269U株)と命名した。
【0282】
TFAの約51.2%のEPA及び55.8%のEPAを産生するY8406株及びY8412株の生成
コンストラクトpZSCP−Ma83(
図6B;配列番号133)を生成して1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子、1つのC
16/18エロンガーゼ遺伝子及び1つのマロニルCoAシンテターゼ遺伝子をY8269U1株のSCP2遺伝子座(GenBank受託番号XM_503410)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。pZSCP−Ma83プラスミドは以下の構成要素を含んだ。
【0283】
【表10】
【0284】
pZSCP−Ma83プラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるY8269U1株、Y8269U2株及びY8269U3株の別個の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で3〜4日間維持した。単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心により回収し、HGM中に再懸濁した後、250rpm/分で5日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0285】
各pZSCP−Ma83形質転換(すなわち、Y8269U1、Y8269U2及びY8269U3)により得られた合計96個の株をGCにより分析した。選択した288個の株のほとんどがTFAの43〜47%のEPAを産生した。TFAの約51.3%、47.9%、50.8%、48%、47.8%、47.8%及び47.8%のEPAを産生した7個のY8269U1のpZSCP−Ma83による形質転換株(すなわち、#59、#61、#65、#67、#70、#81及び#94)を、それぞれY8404株、Y8405株、Y8406株、Y8407株、Y8408株、Y8409株及びY8410株と命名した。TFAの約48.8%、50.8%、及び49.3%のEPAを産生したこれらのY8269U2のpZSCP−Ma83による形質転換株(すなわち、#4、#13及び#17)を、それぞれY8411、Y8412及びY8413と命名した。さらに、TFAの約49.3%及び53.5%のEPAを産生した2個のY8269U3のpZSCP−Ma83による形質転換株(すなわち、#2及び#16)を、それぞれY8414及びY8415と命名した。
【0286】
Y8404株、Y8405株、Y8406株、Y8407株、Y8408株、Y8409株、Y8410株、Y8411株、Y8412株、Y8413株、Y8414株及びY8415株におけるSCP2遺伝子座(GenBank受託番号XM_503410)のノックアウトは、pZSCP−Ma83による形質転換によって産生されたこれらのEPA株のいずれにおいても確認されなかった。
【0287】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8404株、Y8405株、Y8406株、Y8407株、Y8408株、Y8409株、Y8410株、Y8411株、Y8412株、Y8413株、Y8414株及びY8415株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、未知7−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1であった。
【0288】
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406株は2009年5月14日にAmerican Type Culture Collectionに寄託され、指定番号ATCC PTA−10025を有する。ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8412株は2009年5月14日にAmerican Type Culture Collectionに寄託され、指定番号ATCC PTA−10026を有する。
【0289】
フラスコアッセイによる全脂質含量及び組成の分析
Y8404株、Y8405株、Y8406株、Y8407株、Y8408株、Y8409株、Y8410株、Y8411株、Y8412株、Y8413株、Y8414株及びY8415株のYPDプレートからの細胞を増殖し、一般的方法に従い全脂質含量及び組成について分析した。表10は、細胞の全乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の全脂質含量[「TFA % DCW」]、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「% TFA」]及び乾燥細胞重量の百分率としてのEPA含量[「EPA % DCW」]を要約する。より具体的には、脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトオレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPA及びその他として特定され得る。
【0290】
【表11】
【0291】
実施例4
37.6%の全脂質含量で全脂肪酸[「TFA」]の約53.6%のEPAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8647株の生成
本実施例は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に由来する、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現により37.6%の全脂質含量[「TFA % DCW」]で全脂質に対して約53.6%のEPAを産生する能力を有するY8647株の構築について記載する。Y8647株(
図2)を生じさせるには、Y2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株、Y4036U株及びL135株(実施例1に記載される)、L135U9株及びY8002株(実施例2に記載される)、Y8006U6株、Y8069株、Y8069U株、Y8154株、Y8154U株、Y8269株及びY8269U株(実施例3に記載される)、並びにY8412U6株の構築が必要であった。
【0292】
Y8412U6(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8412株(実施例3)のUra3遺伝子に組み込んだ。合計8個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0293】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#4及び#6において、それぞれTFAの25.9%及び26.9%のEPAがあったことが示された。これらの2個の株を、それぞれY8412U6株及びY8412U8株(まとめて、Y8412U株)と命名した。
【0294】
Y8647株の生成
コンストラクトpZKL4−398F2(
図7A;配列番号134)を生成して1つのC
16/18エロンガーゼ遺伝子、1つのDGLAシンターゼ、及び1つのΔ12デサチュラーゼ遺伝子をY8412U6株のヤロウイア属(Yarrowia)リパーゼ様遺伝子座(Lip4と命名される、GenBank受託番号XM_503825)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。pZKL4−398F2プラスミドは以下の構成要素を含んだ。
【0295】
【表12】
【0296】
pZKL4−398F2プラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるY8412U6株の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で3〜4日間維持した。単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心により回収し、HGM中に再懸濁した後、250rpm/分で5日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0297】
GC分析により、選択した96個の形質転換体株のほとんどがTFAの50〜52.7%のEPAを産生したことが示された。TFAの約52.8%、53.1%、52.8%、53.2%、53.1%、52.8%、及び52.9%のEPAを産生した7個の株(すなわち、#31、#35、#38、#41、#60、#61及び#95)を、それぞれY8646、Y8647、Y8648、Y8649、Y8650、Y8651及びY8652と命名した。
【0298】
これらのEPA株におけるLip4遺伝子座(GenBank受託番号XM_503825)のノックアウトは確認されなかった。
【0299】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8646株、Y8647株、Y8648株、Y8649株、Y8650株、Y8651株及びY8652株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、未知7−、未知8−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM:Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1であった。
【0300】
フラスコアッセイによる全脂質含量及び組成の分析
Y8647株、Y8648株、Y8649株及びY8650株のYPDプレートからの細胞を増殖し、一般的方法に従い全脂質含量及び組成について分析した。表12は、細胞の全乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の全脂質含量[「TFA % DCW」]、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「% TFA」]及び乾燥細胞重量の百分率としてのEPA含量[「EPA % DCW」]を要約する。脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトオレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPA及びその他として特定される。
【0301】
【表13】
【0302】
実施例5
39.6%の全脂質含量で全脂肪酸[「TFA」]の約54.5%のEPAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9028株の生成
本実施例は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に由来する、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現により39.6%の全脂質含量[「TFA % DCW」]で全脂質に対して約54.5%のEPAを産生する能力を有するY9028株の構築について記載する。Y9028株(
図2)を生じさせるには、Y2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株、Y4036U株及びL135株(実施例1に記載される)、L135U9株及びY8002株(実施例2に記載される)、Y8006U6株、Y8069株、Y8069U株、Y8154株、Y8154U株、Y8269株及びY8269U株(実施例3に記載される)、Y8412U6株及びY8647株(実施例4に記載される)、並びにY8467U株の構築が必要であった。
【0303】
Y8647U(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8647株(実施例4)のUra3遺伝子に組み込んだ。合計12個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0304】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#1、#3、#4及び#12において、それぞれTFAの30.2%、29.2%、28.1%及び29.9%のEPAがあったことが示された。これらの4個の株を、それぞれY8647U1株、Y8647U2株、Y8647U3株、及びY8647U6株(まとめて、Y8647U株)と命名した。
【0305】
株Y9028の生成
コンストラクトpZP2−85m98F(
図7B;配列番号135)を生成して1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子、1つのDGLAシンターゼ及び1つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子を、Y8647U3株のヤロウイア属(Yarrowia)Pox2遺伝子座(GenBank受託番号AJ001300)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。pZP2−85m98Fプラスミドは以下の構成要素を含んだ。
【0306】
【表14】
【0307】
pZP2−85m98FプラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるY8647U1株、Y8647U2株、Y8647U3株及びY8647U6株の個別の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で3〜4日間維持した。単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心により回収し、HGM中に再懸濁した後、250rpm/分で5日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0308】
GC分析により、Y8647U1のpZP2−85m98Fによる形質転換株の選択した48個のほとんどが、TFAの49〜52%のEPAを産生したことが示された。TFAの約52.6%及び52.1%のEPAを産生した2個の株(すなわち、#30及び#31)を、それぞれY9024及びY9025と命名した。
【0309】
Y8647U2のpZP2−85m98Fによる形質転換株の選択した60個のほとんどが、TFAの49〜51.9%のEPAを産生した。株#6はTFAの約52%のEPAを産生し、Y9026と命名した。
【0310】
Y8647U3のpZP2−85m98Fによる形質転換株の選択した60個のほとんどが、TFAの50〜52.2%のEPAを産生した。TFAの約53.2%、53.7%、54.0%、52.9%、53.4%及び52.3%のEPAを産生した6個の株(すなわち、#5、#6、#14、#15、#20及び#34)を、それぞれY9027、Y9028、Y9029、Y9030、Y9031及びY9032と命名した。
【0311】
同様に、GC分析により、Y8647U6のpZP2−85m98Fによる形質転換株の選択した48個のほとんどが、TFAの50〜52.1%のEPAを産生したことが示された。TFAの約52.2%及び52.8%のEPAを産生した2個の株(すなわち、#27及び#44)を、それぞれY9033及びY9034と命名した。
【0312】
Y9024株、Y9025株、Y9026株、Y9027株、Y9028株、Y9029株、Y9030株、Y9031株、Y9032株、Y9033株及びY9034株におけるPox2遺伝子座(GenBank受託番号AJ001300)のノックアウトは、pZP2−85m98Fによる形質転換によって産生されたこれらのEPA株のいずれにおいても確認されなかった。
【0313】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するこれらの株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、未知7−、未知8−、未知9−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::;Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1であった。
【0314】
フラスコアッセイによる全脂質含量及び組成の分析
Y9028株、Y9029株及びY9031株のYPDプレートからの細胞を増殖し、一般的方法に従い全脂質含量及び組成について分析した。
【0315】
以下の表14は、細胞の全乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の全脂質含量[「TFA % DCW」]、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「% TFA」]及び乾燥細胞重量の百分率としてのEPA含量[「EPA % DCW」]を要約する。より具体的には、脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトオレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPA及びその他として特定される。
【0316】
【表15】
【0317】
実施例6
少なくとも約35%の全脂質含量で全脂肪酸[「TFA」]の少なくとも約57%のEPAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9481株及びY9502株の生成
本実施例は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に由来し、且つΔ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路を発現するY9481株及びY9502株の構築について記載する。Y9481株は35%の全脂質含量[「TFA % DCW」]で全脂質に対して約60.9%のEPAを産生する能力を有し、一方Y9502株は、37.1%のTFA % DCWで全脂質に対して約57%のEPAを産生する能力を有する。
【0318】
Y9481株及びY9502株(
図2)を生じさせるには、Y2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株、Y4036U株及びL135株(実施例1に記載される)、L135U9株及びY8002株(実施例2に記載される)、Y8006U6株、Y8069株、Y8069U株、Y8154株、Y8154U株、Y8269株及びY8269U株(実施例3に記載される)、Y8412U6株及びY8647株(実施例4に記載される)、Y8467U株及びY9028株(実施例5に記載される)及びY9028U株の構築が必要であった。
【0319】
Y9028U(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY9028株(実施例5)のUra3遺伝子に組み込んだ。合計8個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0320】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#1、#3、#4、及び#5において、それぞれTFAの24.1%、24.9%、24.5%及び24.5%のEPAがあったことが示された。これらの4個の株を、それぞれY9028U1株、Y9028U2株、Y9028U3株、及びY9028U4株(まとめて、Y9028U株)と命名した。
【0321】
組込みベクターpZK16−ML8Nの構成要素
コンストラクトpZK16−ML8N(
図8A;配列番号136)を生成して1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子、1つのマロニルCoAシンテターゼ遺伝子、及び1つのリゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ遺伝子[「LPAAT」]をY9028U2株のヤロウイア属(Yarrowia)YALI0B14795p遺伝子座(GenBank受託番号XM_500900)に組み込んだ。pZK16−ML8Nプラスミドは以下の構成要素を含んだ。
【0322】
【表16】
【0323】
組込みベクターpZK16−MLの構成要素
コンストラクトpZK16−ML(
図8B;配列番号137)を生成して1つのマロニルCoAシンテターゼ遺伝子及び1つのリゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼ遺伝子[「LPAAT」]をY9028U2株のヤロウイア属(Yarrowia)YALI0B14795p遺伝子座(GenBank受託番号XM_500900)に組み込んだ。pZK16−MLプラスミドの構成要素はpZK16−ML8N(上記)の構成要素と同じである;しかしながら、pZK16−ML8NのキメラYAT1::EgD8M::Pex20遺伝子はない。
【0324】
Y9481株及びY9502株の生成
pZK16−ML8Nプラスミド及びpZK16−MLプラスミドを各々AscI/SphIで個別に消化し、次に一般的方法によるY9028U2株の形質転換に別個に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で3〜4日間維持した。単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心により回収し、HGM中に再懸濁した後、250rpm/分で5日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0325】
GC分析により、pZK16−ML8Nを含むY9028U2株の選択した96個のほとんどがTFAの50〜55.4%のEPAを産生したことが示された。TFAの約58.1%、61.4%、56.2%、58.1%、57.5%、57.0%、55.9%、57.6%、57.8%、55.5%、57.6%、58.1%、57.1%、56.2%及び58.6%のEPAを産生した15個の株(すなわち、#8、#18、#21、#24、#29、#48、#60、#66、#68、#75、#76、#78、#90、#95及び#96)を、それぞれY9472、Y9473、Y9474、Y9475、Y9476、Y9477、Y9478、Y9479、Y9480、Y9481、Y9482、Y9483、Y9484、Y9485及びY9486と命名した。
【0326】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するこれらのpZK16−ML8N形質転換体株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、未知7−、未知8−、未知9−、未知10−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、YAT1::EgD8M::Pex20、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1、FBA::MCS::Lip1、YAT1::MaLPAAT1S::Pex16であった。
【0327】
同様に、GC分析により、pZK16−MLを含むY9028U2株の選択した96個のほとんどがTFAの51〜55.5%のEPAを産生したことが示された。TFAの約56.5%、57.4%、56.8%、57.0%、56.4%、57.3%、58.2%、55.6%、57.8%、55.6%、57.6%、56.8%、55.8%、56.4%、56.1%及び57%のEPAを産生した16個の株(すなわち、#4、#8、#15、#16、#39、#44、#46、#63、#66、#80、#85、#86、#88、#89、#90及び#96)を、それぞれY9496、Y9497、Y9498、Y9499、Y9500、Y9501、Y9502、Y9503、Y9504、Y9505、Y9506、Y9507、Y9508、Y9509、Y9510及びY9511と命名した。
【0328】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するこれらのpZK16−ML形質転換体株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、未知7−、未知8−、未知9−、未知10−、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、YAT1::ME3S::Lip1、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、GPAT::EgD9e::Lip2、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD8M::Lip1、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::Aco、GPDIN::FmD12::Pex16、EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、FBAINm::PaD17::Aco、EXP1::PaD17::Pex16、YAT1::PaD17S::Lip1、YAT1::YlCPT::Aco、YAT1::MCS::Lip1、FBA::MCS::Lip1、YAT1::MaLPAAT1S::Pex16であった。
【0329】
Y9472株、Y9473株、Y9474株、Y9475株、Y9476株、Y9477株、Y9478株、Y9479株、Y9480株、Y9481株、Y94782株、Y9483株、Y9484株、Y9485株、Y9486株、Y9496株、Y9497株、Y9498株、Y9499株、Y9500株、Y9501株、Y9502株、Y9503株、Y9504株、Y9505株、Y9506株、Y9507株、Y9508株、Y9509株、Y9510株及びY9511株におけるYALI0B14795p遺伝子座(GenBank受託番号XM_500900)のノックアウトは、pZK16−ML8N又はpZK16−MLによる形質転換によって産生されたこれらのEPA株のいずれにおいても確認されなかった。
【0330】
フラスコアッセイによる全脂質含量及び組成の分析
Y9477株、Y9481株、Y9486株、Y9497株、Y9502株、Y9504株、Y9508株及びY9510株のYPDプレートからの細胞を増殖し、一般的方法に従い全脂質含量及び組成について分析した。
【0331】
以下の表16は、細胞の全乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の全脂質含量[「TFA % DCW」]、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「% TFA」]及び乾燥細胞重量の百分率としてのEPA含量[「EPA % DCW」]を要約する。より具体的には、脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトオレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPA及びその他として特定される。
【0332】
【表17】
【0333】
実施例7
26.5%の全脂質含量で全脂肪酸[「TFA」]の約61.8%のEPAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8672株の生成
本実施例は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に由来する、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現により26.5%の全脂質含量[「TFA % DCW」]で全脂質に対して約61.8%のEPAを産生する能力を有するY8672株の構築について記載する。Y8672株(
図9)を生じさせるには、Y2224株、Y4001株、Y4001U株、Y4036株、Y4036U株及びL135株(実施例1に記載される)、L135U9株及びY8002株(実施例2に記載される)、Y8006U6株、Y8069株、Y8069U株(実施例3に記載される)及びY8145株、Y8145U株、Y8259株、Y8259U株、Y8367株及びY8367U株の構築が必要であった。
【0334】
TFAの約48.5%のEPAを産生するY8145株の生成
コンストラクトpZKL2−5m89C(
図10;配列番号138)を生成して1つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子、1つのΔ9エロンガーゼ遺伝子、1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子、及び1つのY.リポリティカ(Y.lipolytica)ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(CPT1)をY8069U3株(実施例3)のLip2遺伝子座(GenBank受託番号AJ012632)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。pZKL2−5m89Cプラスミドは以下の構成要素を含んだ。
【0335】
【表18】
【0336】
pZKL2−5m89CプラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般的方法によるY8069U3株の形質転換に使用した。形質転換体細胞をMMプレートに播種し、30℃で3〜4日間維持した。単一コロニーをMMプレートに再度画線し、次に30℃の液体MMに接種して250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心により回収し、HGM中に再懸濁した後、250rpm/分で5日間振盪した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0337】
GC分析により、選択した96個の株のほとんどがTFAの38〜44.5%のEPAを産生したことが示された。TFAの約45.1%、45.6%、45.0%及び45.6%のEPAを産生した4個の株(すなわち、#10、#50、#70及び#89)を、それぞれY8143、Y8144、Y8145及びY8146と命名した。Lip2遺伝子座(GenBank受託番号AJ012632)のノックアウトは、これらのEPA株では確認されなかった。
【0338】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8143株、Y8144株、Y8145株及びY8146株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1、EXP1::EgD8M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、YAT1::EgD5SM::Aco、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Oct、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Aco、GPD::YlCPT1::Acoであった。
【0339】
フラスコアッセイによる全脂質含量及び組成の分析
Y8143株、Y8144株、Y8145株及びY8146株のYPDプレートからの細胞を増殖し、一般的方法に従い全脂質含量及び組成について分析した。
【0340】
【表19】
【0341】
Y8145U(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8145株のUra3遺伝子に組み込んだ。合計8個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0342】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#5、#6及び#7において、それぞれTFAの22.5%、22.6%及び23.4%のEPAがあったことが示された。これらの3つの株を、それぞれY8145U1株、Y8145U2株及びY8145U3株(まとめて、Y8145U株)と命名した。
【0343】
TFAの約53.9%EPAを産生するY8259株の生成
コンストラクトpZKL1−2SR9G85(実施例3、
図6A;配列番号132)を生成して1つのDGLAシンターゼ遺伝子、1つのΔ12デサチュラーゼ遺伝子及び1つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子を、Y8145U株のLip1遺伝子座(GenBank受託番号Z50020)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。
【0344】
pZKL1−2SR9G85プラスミドをAscI/SphIで消化し、次にY8154U1株のpZKL1−2SR9G85形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でY8145U1株の形質転換に使用した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0345】
GC分析により、選択した96株のほとんどが全脂質の40〜44.0%のEPAを産生したことが示された。TFAの約45.2%、47%、44.4%、44.3%及び45.2%のEPAを産生した5個の株(すなわち、#7、#14、#48、#56及び#60)を、それぞれY8255、Y8256、Y8257、Y8258及びY8259と命名した。Lip1遺伝子座(GenBank受託番号Z50020)のノックアウトは、これらのEPA株では確認されなかった。
【0346】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するこれらの株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::ACO、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1、EXP1::EgD8M::Pex16、YAT1::E389S/EgD8M::Lip1、FBAIN::EgD5SM::Pex20、YAT1::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5M::Pex16、YAT1::EaD5SM::Oct; YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Aco、GPD::YlCPT1::Acoであった。
【0347】
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8259株は、2009年5月14日にAmerican Type Culture Collectionに寄託され、指定番号ATCC PTA−10027を有する。
【0348】
フラスコアッセイによる全脂質含量及び組成の分析
Y8256株及びY8259株のYPDプレートからの細胞を増殖し、一般的方法に従い全脂質含量及び組成について分析した。
【0349】
【表20】
【0350】
Y8259U(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8259株のUra3遺伝子に組み込んだ。合計8個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0351】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#3においてTFAの26.6%のEPAがあったことが示された。この株をY8259U株と命名した。
【0352】
TFAの約58.3%EPAを産生するY8367株の生成
コンストラクトpZP2−85m98F(実施例5、
図7B;配列番号135)を生成して1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子、1つのDGLAシンターゼ、及び1つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子を、Y8259U株のヤロウイア属(Yarrowia)Pox2遺伝子座(GenBank受託番号AJ001300)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。
【0353】
pZP2−85m98FプラスミドをAscI/SphIで消化し、次にY8647U3株のpZP2−85m98F形質転換についての記載(実施例5)と同様の方法によるY8259U株の形質転換に使用した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0354】
GC分析により、pZP2−85m98Fを含むY8259U株の選択した96個のほとんどがTFAの41〜46%のEPAを産生したことが示された。TFAの約46.7%、46.5%、47.4%及び46.9%のEPAを産生した4個の株(すなわち、#26、#33、#77及び#81)を、それぞれY8367、Y8368、Y8369及びY8370と命名した。Pox2遺伝子座(GenBank受託番号AJ001300)のノックアウトは、これらのEPA株では確認されなかった。
【0355】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8367株、Y8368株、Y8369株及びY8370株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、未知7−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::ACO、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1、EXP1::EgD8M::Pex16、GPD::EaD8S::Pex16、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAIN::EgD5SM::Pex20、YAT1::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5M::Pex16、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Aco、GPD::YlCPT1::Acoであった。
【0356】
フラスコアッセイによる全脂質含量及び組成の分析
Y8367株、Y8368株、Y8369株及びY8370株のYPDプレートからの細胞を増殖し、一般的方法に従い全脂質含量及び組成について分析した。
【0357】
【表21】
【0358】
Y8367U(Ura3−)株の生成
Ura3遺伝子を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8367株のUra3遺伝子に組み込んだ。合計8個の形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0359】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#2、#3及び#6において、それぞれTFAの25.6%、25.5%及び25.4%のEPAがあったことが示された。これらの3つの株を、それぞれY8367U1株、Y8367U2株及びY8367U3株(まとめて、Y8367U株)と命名した。
【0360】
TFAの約61.8%のEPAを産生するY8672株の生成
コンストラクトpZSCP−Ma83(実施例3、
図6B;配列番号133)を生成して1つのΔ8デサチュラーゼ遺伝子、1つのC
16/18エロンガーゼ遺伝子及び1つのマロニルCoAシンテターゼ遺伝子をY8637U株のSCP2遺伝子座(GenBank受託番号XM_503410)に組み込み、それによりEPAの高レベル産生を可能にした。
【0361】
pZSCP−Ma83プラスミドをAscI/SphIで消化し、次にY8269U1株のpZSCP−Ma83形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でY8367U1株の形質転換に使用した。一般的方法に従い細胞を脂肪酸分析に供した。
【0362】
GC分析により、pZSCP−Ma83を含むY8367U1株の選択した96個のほとんどがTFAの46〜52.5%のEPAを産生したことが示された。TFAの約53.2%、52.8%、52.7%、52.9%、53.0%、52.6%、53.1%及び52.7%のEPAを産生した8個の株(すなわち、#8、#40、#43、#44、#61、#63、#68及び#70)を、それぞれY8666、Y8667、Y8668、Y8669、Y8670、Y8671、Y8672及びY8673と命名した。SCP2遺伝子座(GenBank受託番号XM_503410)のノックアウトは、これらのEPA株では確認されなかった。
【0363】
野生型ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362に対するY8666株、Y8667株、Y8668株、Y8669株、Y8670株、Y8671株、Y8672株及びY8673株の最終的な遺伝子型は、Ura+、Pex3−、未知1−、未知2−、未知3−、未知4−、未知5−、未知6−、未知7−、未知8−、Leu+、Lys+、YAT1::ME3S::Pex16、GPD::ME3S::Pex20、GPD::FmD12::Pex20、YAT1::FmD12::Oct、EXP1::FmD12S::ACO、GPAT::EgD9e::Lip2、FBAINm::EgD9eS::Lip2、EXP1::EgD9eS::Lip1、YAT1::EgD9eS::Lip2、FBAINm::EgD8M::Pex20、FBAIN::EgD8M::Lip1、EXP1::EgD8M::Pex16、GPD::EaD8S::Pex16(2コピー)、YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1、YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco、FBAIN::EgD5SM::Pex20、YAT1::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5M::Pex16、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct、YAT1::PaD17S::Lip1、EXP1::PaD17::Pex16、FBAINm::PaD17::Aco、GPD::YlCPT1::Aco、YAT1::MCS::Lip1であった。
【0364】
フラスコアッセイによる全脂質含量及び組成の分析
Y8666株、Y8669株、Y8679株及びY8672株のYPDプレートからの細胞を増殖し、一般的方法に従い全脂質含量及び組成について分析した。
【0365】
【表22】
【0366】
実施例8
種々のLPLAT ORFを含む様々な発現ベクターの構築
本実施例は、各々がヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)での発現に好適なLPLAT ORFを含む一連のベクターの構築について記載する。LPLAT ORFは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ale1、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Ale1、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)LPAAT1、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPAAT1及びカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)LPCATを含んだ。実施例9は、これらのベクターをヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406U株に形質転換した後に得られた結果について記載する。
【0367】
LPLATの起源
特許及び公開文献において様々なLPLATが同定されているが、それらの遺伝子の機能についてはこれまで直接比較されたことがない。表22は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)での発現に対して異種遺伝子をコドン最適化した後に(下記)本実施例で利用される、公開されているLPLAT(すなわち、ScAle1、ScLPAAT、MaLPAAT1及びCeLPCAT)及び本明細書で同定されるLPLATオルソログ(すなわち、YlAle1及びYlLPAAT1)を要約する。
【0368】
【表23】
【0369】
より具体的には、ScLPAAT(配列番号32)及びScAle1(配列番号15)タンパク質配列を問い合わせ配列として使用して、「Yeast project Genolevures」(Center for Bioinformatics、LaBRI、Talence Cedex、仏国)の公開されているY.リポリティカ(Y.lipolytica)タンパク質データベースからオルソログを同定した(Dujon,B.ら、Nature、430(6995):35〜44頁(2004年)もまた参照のこと)。ベストヒットの分析に基づき、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来のAle1及びLPAATオルソログが、本明細書ではそれぞれYlAle1(配列番号17)及びYlLPAAT(配列番号31)として同定される。それぞれScAle1及びScLPAATのオルソログとしてのYlAle1及びYlLPAAT1のアイデンティティについて、レシプロカルBLAST(reciprocal BLAST)を行うことによりさらに確認し、すなわち配列番号17及び31をサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)公開タンパク質データベースに対する問い合わせ配列として使用して、ベストヒットとしてそれぞれScAle1及びScLPAATを求めた。
【0370】
ScAle1(配列番号15)、YlAle1(配列番号17)、ScLPAAT(配列番号32)、MaLPAAT1(配列番号29)、YlLPAAT1(配列番号31)及びCeLPCAT(配列番号25)として上記で同定されたLPLATタンパク質を、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR,Inc.、Madison,WI)のMegAlign(商標)プログラム(バージョン8.0.2)のClustal W(スロー(slow)、アキュレート(accurate)、Gonnetオプション;Thompsonら、Nucleic Acids Res.、22:4673〜4680頁(1994年))の方法を用いてアラインメントした。その結果から表23を作成し、ここでは類似性パーセントが表の上三角部分に示され、一方、分散パーセント(percent divergence)が下三角部分に示される。
【0371】
【表24】
【0372】
この方法により明らかにされる同一性パーセントから、LPAATポリペプチドの各々の間の最小同一性パーセント及びAle1ポリペプチドの各々の間の最小同一性パーセントを決定することが可能となった。LPAATポリペプチド間の同一性の範囲は34.0%同一性(MaLPAAT1及びYlLPAAT1)〜43.9%同一性(ScLPAAT及びYlLPAAT1)であった一方、ScAle1及びYlAle1ポリペプチド間の同一性は45%であった。
【0373】
膜結合型O−アシルトランスフェラーゼ[「MBOAT」]ファミリーモチーフ:National Center for Biotechnology Information[「NCBI」]BLASTP2.2.20(タンパク質−タンパク質Basic Local Alignment Search Tool;Altschulら、Nucleic Acids Res.、25:3389〜3402頁(1997年);及びAltschulら、FEBS J.、272:5101〜5109頁(2005年))検索を、「nr」タンパク質データベース(全ての非重複GenBank CDS翻訳、Brookhaven Protein Data Bank[「PDB」]からの三次元構造に由来する配列、SWISS−PROTタンパク質配列データベースの最新の大規模な公開に含まれる配列、WGSプロジェクトからの環境試料のものを除くPIR及びPRFを含む)における真菌タンパク質に対する問い合わせ配列としてScAle1(配列番号15)を使用し、デフォルトパラメータ(期待値閾値=10;ワードサイズ=3;スコアリングパラメータ行列=BLOSUM62;ギャップコスト:存在=11、伸長=1)を使用して行うことにより、ScAle1タンパク質配列(配列番号15)のオルソログを同定した。以下のヒットが得られた。
【0374】
【表25-1】
【表25-2】
【0375】
表24の酵母及び真菌タンパク質配列を、DNASTARを使用してアラインメントした。Clustal Wアラインメント法を用いて多重配列アラインメント及び同一性パーセント計算を実施した(上記)。
【0376】
より具体的には、Clustal Wアラインメント法を用いた多重タンパク質アラインメントのデフォルトパラメータは、以下に対応した:ギャップペナルティ=10、ギャップ長ペナルティ=0.2、ディレイディバージェント配列(Delay Divergent Seqs)(%)=30、DNAトランジションウェイト(DNA Transition Weight)=0.5、タンパク質ウェイト行列=Gonnetシリーズ、DNAウェイト行列=IUB、「スロー−アキュレート(slow−accurate)」オプション付き。得られたアラインメントを分析し、米国特許出願公開第2008−0145867−A1号明細書に特定されるとおりの、Ale1相同体についての非植物モチーフの存在又は不在を決定した。具体的にそれらとしては、M−[V/I]−[L/I]−xxK−[L/V/I]−xxxxxxDG(配列番号102)、RxKYYxxWxxx−[E/D]−[A/G]xxxxGxG−[F/Y]−xG(配列番号103)、EX
11WNX
2−[T/V]−X
2W(配列番号21)及びSAxWHGxxPGYxx−[T/F]−F(配列番号104)(式中、Xは任意のアミノ酸残基をコードする)が挙げられる。配列番号104のHis残基は、タンパク質内における活性部位残基と見られることが報告されている。
【0377】
アラインメントを行った33個の生物全てにおいて完全に保存されていたのは、1つのモチーフ、すなわちEX
11WNX
2−[T/V]−X
2W(配列番号21)のみであった。他のM−[V/I]−[L/I]−xxK−[L/V/I]−xxxxxxDG(配列番号102)、RxKYYxxWxxx−[E/D]−[A/G]xxxxGxG−[F/Y]−xG(配列番号103)及びSAxWHGxxPGYxx−[T/F]−F(配列番号104)モチーフは、部分的にのみ保存されていた。従って、本方法論の目的上、これらのモチーフを適切に切断し、0ミスマッチ(すなわち、SAxWHG[配列番号20])、1ミスマッチ(すなわち、RxKYYxxW[配列番号19])、又は2ミスマッチ(すなわち、M(V/I)(L/I)xxK(LVI)[配列番号18])に適合させた。
【0378】
1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ[「LPAAT」]ファミリーモチーフ:ScLPAAT(配列番号18)、MaLPAAT1(配列番号15)及びYlLPAAT1(配列番号17)を含むタンパク質アラインメントの分析から、1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼファミリーモチーフEGTR(配列番号20)がLPAATオルソログの各々に存在することが明らかとなった。これに基づき、MaLPAAT1をLPAAT候補として同定し、これは国際公開第2004/087902号パンフレットに開示されるモルティエレラ・アルピナ(Morteriella alpina)LPAAT様タンパク質(すなわち、配列番号93及び95)とは明確に区別可能なものであった。
【0379】
EGTR(配列番号20)モチーフは、国際公開第2004/087902号パンフレットではLPCAT配列中にないものの、CeLPCAT(配列番号2)に存在することは注目に値する。他の残基がLPAAT配列及びLPAAT様タンパク質のLPCAT配列を区別しているように思われる。かかる残基の一つは、EGTR(配列番号20)モチーフの伸長部であり得る。具体的には、ScLPAAT(配列番号18)、MaLPAAT1(配列番号15)及びYlLPAAT1(配列番号17)のEGTRモチーフは直後にセリン残基が続くが、CeLPCATのEGTRモチーフは直後にアスパラギン残基が続く。対照的に、国際公開第2004/087902号パンフレットの2つのLPCATは、EGTRモチーフにおいてアルギニン残基の代わりにバリンを有し、このモチーフは直後にバリン残基が続く。
【0380】
コドン最適化サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ale1遺伝子を含むpY201の構築
「ScAle1」(配列番号14)と命名されるサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ORFを、DNA2.0(Menlo Park、CA)によってヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)での発現に最適化した。コドン最適化に加え、合成遺伝子には5’Pci1及び3’Not1クローニング部位を導入した(すなわち、ScAle1S;配列番号22)。ScAle1S遺伝子のいずれの修飾によっても、コードされるタンパク質のアミノ酸配列は変化しなかった(すなわち、コドン最適化遺伝子によりコードされるタンパク質配列[すなわち、配列番号23]は、野生型タンパク質配列[すなわち、配列番号15]と同じである)。ScAle1SをpJ201(DNA2.0)にクローニングしてpJ201:ScAle1Sを得た。
【0381】
ScAle1Sを含む1863bpのPci1/Not1断片をpJ201:ScAle1Sから切り取り、それを使用してpY201(配列番号139;表25;
図10A)を作成した。キメラYAT1::ScAle1S::Lip1遺伝子を含むことに加え、pY201はまた、必要に応じて、Creリコンビナーゼ媒介組換えにより続いて除去するためのLoxP部位が隣接するY.リポリティカ(Y.lipolytica)URA3選択マーカーも含む。YAT1::ScAle1S::Lip1キメラ遺伝子及びURA3遺伝子の双方とも、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Pox3遺伝子の5’領域及び3’領域との相同性を有する断片が隣接し、それにより二重相同組換えによる組込みが促進されるが、しかしながらY.リポリティカ(Y.lipolytica)への組込みは、通常は相同組換えなしに行われることが知られている。従って、これによりコンストラクトpY201は以下の構成要素を含んだ。
【0382】
【表26】
【0383】
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Ale1遺伝子を含むpY168の構築
「YlAle1」と命名されるヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ORF(GenBank受託番号XP_505624;配列番号16)をヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362 cDNAライブラリからPCRプライマー798及び799(それぞれ配列番号141及び142)を使用してPCR増幅した。加えて、YATプロモーターをpY201(配列番号139)からPCRプライマー800及び801(それぞれ配列番号143及び144)により増幅した。互いにいくらかの重複を有する2つのPCR産物が生じるようにプライマー対を設計したため、次にYAT1::YlAle1融合断片を、プライマー798及び801(それぞれ配列番号141及び144)並びに鋳型としての2つのPCR断片を使用して重複PCRにより増幅した。PCRは、RoboCycler Gradient 40 PCR機(Stratagene)において、製造者の推奨及びPfu Ultra(商標)High−Fidelity DNAポリメラーゼ(Stratagene、カタログ番号600380)を用いて実行した。増幅は以下のとおり実行した:95℃で4分間の初期変性、続いて95℃で30秒間の変性を30サイクル、55℃で1分間のアニーリング、及び72℃で1分間の伸長。72℃で10分間の最終伸長サイクルを実行した後、4℃で反応を終了させた。
【0384】
YAT1::YlAle1融合断片を含むPCR産物をゲル精製し、ClaI/NotIで消化した。このCla1−Not1断片を、同様に消化した(それによりYAT1::ScAle1S断片を除去した)pY201にライゲートし、キメラYAT1::YlAle1::Lip1遺伝子を含むpY168(配列番号145)を生じさせた。ヤロウイア属(Yarrowia)Ale1 ORFのDNA配列をDNA配列決定によって確認した。pY168(
図10B;配列番号145)中に存在する構成要素は、pY201においてYAT1::ScAle1S::Lip1遺伝子(
図10A)である代わりにpY168ではYAT1::YlAle1::Lip1遺伝子であることを除き、pY201中に存在する構成要素と同じである。YlAle1は
図10Bでは「Yl LPCAT」と表示されることに留意されたい。
【0385】
モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)LPAAT1遺伝子を含むpY208の構築
「MaLPAAT1」(配列番号28)と命名されるモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)ORFを、DNA2.0(Menlo Park、CA)によってヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)での発現に最適化した。コドン最適化に加え、合成遺伝子には5’Pci1及び3’Not1クローニング部位を導入した(すなわち、MaLPAAT1S;配列番号35)。MaLPAAT1S遺伝子のいずれの修飾によっても、コードされるタンパク質のアミノ酸配列は変化しなかった(すなわち、コドン最適化遺伝子によりコードされるタンパク質配列[すなわち、配列番号36]は野生型タンパク質配列[すなわち、配列番号29]と同じである)。MaLPAAT1SをpJ201(DNA2.0)にクローニングしてpJ201:MaLPAAT1Sを得た。
【0386】
MaLPAAT1Sを含む945bpのPci1/Not1断片をpJ201:MaLPAAT1Sから切り取り、それを使用して、pY201(配列番号139)の2つの断片との3ウェイライゲーションでpY208(配列番号146)を作成した。具体的には、MaLPAAT1断片を3530bpのSph−NotI pY201断片及び4248bpのNcoI−SphI pY201断片とライゲートしてpY208を得た。pY208(
図11A;配列番号146)中に存在する構成要素は、pY201においてYAT1::ScAle1S::Lip1遺伝子(
図10A)である代わりにpY208ではYAT1::MaLPAAT1S::Lip1遺伝子であることを除き、pY201中に存在する構成要素と同じである。
【0387】
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPAAT1遺伝子を含むpY207の構築
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)由来の推定LPAAT1(本明細書では「YlLPAAT1」と命名される;配列番号30及び31)については、米国特許第7,189,559号明細書及びGenBank受託番号XP_504127に記載がなされた。このタンパク質は、「uniprot|P33333サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YDL052c SLC1脂肪酸アシルトランスフェラーゼと同様」との注釈が付けられている。
【0388】
鋳型としてのヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC番号20362 cDNAライブラリ並びにPCRプライマー856及び857(それぞれ配列番号147及び148)を使用して、YlLPAAT1 ORF(配列番号30)をPCR増幅した。PCRは、pY168の合成前のYAT1::Yl Ale1融合断片の増幅についての上記の記載と同じ構成要素及び条件を用いて実行した。
【0389】
YlLPAAT1 ORFを含むPCR産物をPciI及びNotIで消化し、次にpY168からの2つの断片との3ウェイライゲーションに利用した。具体的には、YlLPAAT1断片を3530bpのSph−NotI pY168断片及び4248bpのNcoI−SphI pY168断片とライゲートし、キメラYAT1::YlLPAAT1::Lip1遺伝子を含むpY207を産生した。DNA配列決定によりY.リポリティカ(Y.lipolytica)LPAAT1 ORFを確認した。pY207(
図11B;配列番号149)中に存在する構成要素は、pY201においてYAT1::ScAle1S::Lip1遺伝子(
図10A)である代わりにpY207ではキメラYAT1::YlLPAAT1::Lip1遺伝子であることを除き、pY201中に存在する構成要素と同じである。YlLPAAT1は
図11Bでは「Yl LPAT1 ORF」と表示されることに留意されたい。
【0390】
カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)LPCAT遺伝子を含むpY175の構築
「CeLPCAT」と命名されるカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)ORF(配列番号24)を、GenScript Corporation(Piscataway,NJ)によりヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)での発現に最適化した。コドン最適化に加え、合成遺伝子には5’Nco1及び3’Not1クローニング部位を導入した(すなわち、CeLPCATS;配列番号26)。CeLPCATS遺伝子のいずれの修飾によっても、コードされるタンパク質のアミノ酸配列は変化しなかった(すなわち、コドン最適化遺伝子によりコードされるタンパク質配列[すなわち、配列番号27]は、野生型タンパク質配列[すなわち、配列番号25]と同じである)。
【0391】
CeLPCATSを含むNco1−Not1断片を使用して、pY168(配列番号145)からの2つの断片との3ウェイライゲーションでpY175(配列番号150)を作成した。具体的には、CeLPCATSを含むNco1−Not1断片を3530bpのSph−NotI pY168断片及び4248bpのNcoI−SphI pY168断片とライゲートしてpY175を得た。pY175(
図12A;配列番号150)中に存在する構成要素は、pY201においてYAT1::ScAle1S::Lip1遺伝子(
図10A)である代わりにpY175ではYAT1::CeLPCATS::Lip1遺伝子であることを除き、pY201中に存在する構成要素と同じである。CeLPCATSは
図12Aでは「Ce.LPCATsyn」と表示されることに留意されたい。
【0392】
実施例9
EPA産生ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406株における種々のLPLATの機能に関する特性決定
EPAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406U株を使用して、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ale1、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Ale1、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)LPAAT1、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPAAT1及びカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)LPCATの過剰発現の効果について、それらをヤロウイア属(Yarrowia)宿主染色体に安定的に組み込んだ後、機能に関して特性決定した。これは、宿主がその天然LPLAT、すなわちAle1及びLPAAT1を含むにもかかわらずであった。
【0393】
形質転換及び増殖
Ura3遺伝子(実施例3)を破壊するため、コンストラクトpZKUM(
図5A;配列番号130;米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、Y8006株のpZKUM形質転換についての記載(実施例3)と同様の方法でUra3突然変異遺伝子をY8406株のUra3遺伝子に組み込んだ。いくつかの形質転換体を増殖させ、Ura−表現型を有することを確認した。
【0394】
GC分析により、pZKUM形質転換体株#4及び#5においてFAMEの26.1%のEPAがあったことが示された。これらの2つの株を、それぞれY8406U1株及びY8406U2株(まとめて、Y8406U株)と命名した。
【0395】
次にヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406U株を、実施例8に記載される組込みベクターの直鎖状SphI−AscI断片により個々に形質転換し、ここで各LPLATはヤロウイア属(Yarrowia)YAT1プロモーターの制御下にあった。具体的には、ベクターpY201(YAT1::ScAle1S::Lip1)、pY168(YAT1::YlAle1::Lip1)、pY208(YAT1::MaLPAAT1S::Lip1)、pY207(YAT1::YlLPAAT1::Lip1)及びpY175(YAT1::CeLPCATS::Lip1)を一般的方法に従い形質転換した。
【0396】
各形質転換混合物をMM寒天プレートに播種した。いくつかの得られたURA+形質転換体を選び取り、アミノ酸を含まない6.7gのDifco酵母窒素ベース、5gの酵母エキス、6gのKH
2PO
4、2gのK
2HPO
4、1.5gのMgSO
4・7H
2O、1.5mgのチアミンHCl、及び20gのグルコースをL当たりに含有する3mLのFM培地(Biomyxカタログ番号CM−6681、Biomyx Technology、San Diego,CA)に接種した。シェーカーにおいて200rpm及び30℃で2日間増殖した後、培養物を遠心により回収し、pH7.5に調整された、0.63%リン酸一カリウム、2.7%リン酸二カリウム、8.0%グルコースを含有する3mLのHGM培地(カタログ番号2G2080、Teknova Inc.、Hollister,CA)に再懸濁した。シェーカーにおいて200rpm及び30℃で5日間増殖した後、培養物の1mLアリコートを遠心により回収し、GCにより分析した。具体的には、培養細胞を13,000rpmで1分間遠心することにより回収し、全脂質を抽出し、エステル交換により脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製し、続いてHewlett−Packard 6890 GCで分析した(一般的方法)(一般的方法)。
【0397】
3mL培養物の脂肪酸組成に基づき、選択した形質転換体をさらに特性決定した。具体的には、発現ベクターpY201(ScAle1Sを含む)により形質転換したY8406U株のクローン#5及び#11を選択し、それぞれ「Y8406U::ScAle1S−5」及び「Y8406U::ScAle1S−11」と命名した;発現ベクターpY168(YlAle1を含む)により形質転換したY8406U株のクローン#16を選択し、「Y8406U::YlAle1」と命名した;発現ベクターpY208(MaLPAAT1Sを含む)により形質転換したY8406U株のクローン#8を選択し、「Y8406U::MaLPAAT1S」と命名した;発現ベクターpY207(YlLPAAT1を含む)により形質転換したY8406U株のクローン#21を選択し、「Y8406U::YlLPAAT1」と命名した;及び発現ベクターpY175(CeLPCATSを含む)により形質転換したY8406U株のクローン#23を選択し、「Y8406U::CeLPCATS」と命名した。加えて、Y8406株(Y8406U(Ura−)株に対する親であったUra+株)を対照として使用した。
【0398】
各選択した形質転換体及び対照をMM寒天プレートに画線した。次に、新しく画線した細胞の1つのループを3mLのFM培地に接種し、250rpm及び30℃で一晩増殖した。OD
600nmを計測し、125mLフラスコ内の25mLのFM培地に0.3の最終OD
600nmまで細胞のアリコートを添加した。振盪インキュベーターにおいて250rpm及び30℃で2日後、遠心により6mLの培養物を回収し、125mLフラスコ内の25mLのHGM中に再懸濁した。振盪インキュベーターにおいて250rpm及び30℃で5日後、1mLのアリコートを用いてGC分析(上記)を行い、及び10mLを乾燥させて乾燥細胞重量[「DCW」]を決定した。
【0399】
DCWを決定するため、Beckman GS−6R遠心分離機のBeckman GH−3.8ロータにおいて4000rpmで5分間遠心することにより、10mLの培養物を回収した。ペレットを25mLの水中に再懸濁し、再度上記のとおりに回収した。洗浄したペレットを20mLの水中に再懸濁し、予め秤量したアルミニウム皿に移した。細胞懸濁液を真空オーブンにおいて80℃で一晩乾燥させた。細胞の重量を決定した。
【0400】
脂質含量、脂肪酸組成及び変換効率
同じ条件下で合計4つの別個の実験を実施した。実験1は対照Y8406株をY8406U::ScAle1S−5株と比較した。実験2は対照Y8406株をY8406U::YlAle1株と比較した。実験3は対照Y8406株をY8406U::YlAle1株、Y8406U::ScAle1S−11株、及びY8406U::MaLPAAT1S株と比較した。実験4は対照Y8406株をY8406U::MaLPAAT1S株、Y8406U::YlLPAAT1株及びY8406U::CeLPCATS株と比較した。
【0401】
各実験において、対照Y8406株及び形質転換体Y8406U株の1、2又は3個の同型培養物[「レプリケート」]について、DCWの百分率として脂質含量、脂肪酸組成及びEPAを定量化した。加えて、各Y8406U形質転換体のデータをY8406対照の%として表す。以下の表26は、細胞の全脂質含量[「TFA % DCW」]、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「% TFA」]及び乾燥細胞重量の百分率としてのEPA含量[「EPA % DCW」]を要約する。より具体的には、脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトオレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA及びEPAとして特定される。
【0402】
表27は、PUFA生合成経路で機能し、且つEPA産生に必要な各デサチュラーゼ及びΔ9エロンガーゼの変換効率を要約する。具体的には、Δ12デサチュラーゼ変換効率[「Δ12 CE」]、Δ8デサチュラーゼ変換効率[「Δ8 CE」]、Δ5デサチュラーゼ変換効率[「Δ5 CE」]、Δ17デサチュラーゼ変換効率[「Δ17 CE」]及びΔ9伸長変換効率[「Δ9e CE」]が、各対照Y8406株及び形質転換体Y8406U株について提供される;各Y8406U形質転換体のデータをY8406対照の%として表す。変換効率は以下の式により計算した:産物/(産物+基質)*100(ここで産物は、産物と産物誘導体との双方を含む)。
【0403】
【表27】
【0404】
【表28】
【0405】
表26及び表27の実験1、2及び3に関するデータに基づけば、EPA株のY8406U::ScAle1S−5、Y8406U::ScAle1S−11、Y8406U::YlAle1及びY8406U::MaLPAAT1SにおけるLPLATの過剰発現は、TFAの重量%としてのLA(18:2)濃度[「LA % TFA」]の大幅な低下(対照の67%以下に至る)、TFAの重量%としてのEPA濃度[「EPA % TFA」]の増加(対照の少なくとも12%に上る)、及びΔ9エロンガーゼの変換効率の増加(対照の少なくとも16%に上る)をもたらす。Y8406U::ScAle1S−5及びY8406U::ScAle1S−11と比較して、Y8406U::YlAle1はより低いLA % TFA、より高いEPA % TFA、より良好なΔ9伸長変換効率、並びに僅かに低いTFA % DCW及びEPA % DCWを有する。Y8406U::YlAle1とY8406U::MaLPAAT1Sとは、MaLPAAT1Sの過剰発現がより低いLA % TFA、EPA % TFA、及びEPA % DCWをもたらしたことを除き、同程度である。
【0406】
実験4は、EPA株のY8406U::YlAle1、Y8406U::MaLPAAT1S及びY8406U::CeLPCATSにおけるLPLATの過剰発現が、LA % TFAの大幅な低下(対照の67%以下に至る)、EPA % TFAの増加(対照の少なくとも9%に上る)、及びΔ9エロンガーゼの変換効率の増加(対照の少なくとも13%に上る)をもたらすことを示す。Y8406U::CeLPCATSと比較して、Y8406U::YlLPAAT1及びY8406U::MaLPAAT1Sの双方が、より低いLA % TFA、より高いEPA % TFA、より高いEPA % DCW、及び僅かに良好なTFA % DCWを有する。Y8406U::YlLPAAT1とY8406U::MaLPAAT1Sとは、MaLPAAT1Sの過剰発現がより低いLA % TFA、僅かに低いEPA % TFA及びEPA % DCW、並びに僅かに良好なΔ9エロンガーゼ変換効率をもたらすことを除き、同程度である。
【0407】
当該技術分野では、ほとんどの不飽和化がリン脂質のsn−2位で起こり、一方脂肪酸伸長がアシルCoAで起こることが公知である。さらに、ScAle1S、YlAle1、MaLPAAT1S及びYlLPAAT1は、アシルCoAプールからアシル基のみをリゾリン脂質、例えばリゾホスファチジン酸[「LPA」]及びリゾホスファチジルコリン[「LPC」]のsn−2位に組み込むものと予想された。従って、ScAle1S、YlAle1、MaLPAAT1S、及びYlLPAAT1の発現により、リン脂質における基質の利用能が向上するため不飽和化の向上がもたらされ、且つCoAプールにおける基質の利用能の向上を必要とする伸長の向上はもたらされないものと予想された。本発明者らのデータ(上記)は、意外にも、ScAle1S、YlAle1、MaLPAAT1S及びYlLPAAT1の発現によって、EPAを産生するヤロウイア属(Yarrowia)株におけるΔ9エロンガーゼ変換効率が大幅に向上し、しかし不飽和化(Δ12デサチュラーゼ変換効率、Δ8デサチュラーゼ変換効率、Δ5デサチュラーゼ変換効率又はΔ17デサチュラーゼ変換効率として計測される)は向上しなかったことを示している。
【0408】
CeLPCATは、LA又はGLAを供給されたサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)においてΔ6伸長変換効率を向上させることが過去に示された(国際公開第2004/076617号パンフレット)。これは、リン脂質からCoAプールに脂肪酸を放出するその可逆的なLPCAT活性に起因した。脂肪酸の供給なしに高レベルLC−PUFAを産生するよう改変された油性微生物、例えばヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)におけるΔ9伸長変換効率の向上は、国際公開第2004/076617号パンフレットでは企図されなかった。
【0409】
さらに、EPAを産生するヤロウイア属(Yarrowia)株におけるPUFAの蓄積レベル又は全脂質含量のいずれかが、ScAle1S、YlAle1、MaLPAAT1S、YlLPAAT1及びCeLPCATSの発現によって大きく変化することはなかった。
【0410】
先行研究は、Δ6伸長及びΔ9伸長の双方が、リン脂質とアシルCoAプールとの間でのアシル基の転移の不足により長鎖PUFA生合成における障害となることを示している。上記に実証される、LPLATの過剰発現によりもたらされるΔ9エロンガーゼ変換効率の向上に基づけば、本明細書に記載されるLPLAT及びそれらのオルソログ、例えばScLPAATもまたΔ6伸長変換効率を向上させるであろうことが予想される。
【0411】
実施例10
LPAAT ORF及び自己複製配列を含む発現ベクターの構築
本実施例は、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に組み込まないLPAAT遺伝子発現に好適な、自己複製配列[「ARS」]とLPAAT ORFとを含むベクターの構築について記載する。ORFは、配列番号32をコードするサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)LPAATと、配列番号31をコードするヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPAAT1とを含んだ。実施例11は、これらのベクターをY.リポリティカ(Y.lipolytica)に形質転換した後に得られた結果について記載する。
【0412】
コドン最適化サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)LPAAT遺伝子を含むpY222の構築
「ScLPAAT」と命名されるサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ORF(配列番号32)を、DNA2.0(Menlo Park,CA)によってヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)での発現に最適化した。コドン最適化に加え、合成遺伝子には5’Pci1及び3’Not1クローニング部位を導入した(すなわち、ScLPAATS;配列番号151)。ScLPAATS遺伝子のいずれの修飾によっても、コードされるタンパク質のアミノ酸配列は変化しなかった(すなわち、コドン最適化遺伝子によりコードされるタンパク質配列[すなわち、配列番号152]は、野生型タンパク質配列[すなわち、配列番号32]と同じである)。ScLPAATSをpJ201(DNA2.0)にクローニングしてpJ201:ScLPAATSを得た。
【0413】
ScLPAATSを含む926bpのPci1/Not1断片をpJ201:ScLPAATSから切り取り、NcoI−Not1で切断したpYAT−DG2−1にクローニングしてpY222(配列番号153;表28;
図14A)を作成した。従って、pY222は以下の構成要素を含んだ。
【0414】
【表29】
【0415】
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPAAT1遺伝子を含むpY177の構築
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)セントロメア及び自己複製配列[「ARS」]を、プライマー869(配列番号154)及びプライマー870(配列番号155)を使用する標準的なPCRにより、プラスミドpYAT−DG2−1を鋳型として増幅した。PCR産物をAscI/AvrIIで消化し、AscI−AvrII消化pY207(配列番号149;実施例8)にクローニングしてpY177(配列番号156;表29;
図14B)を作成した。従って、pY177中に存在する構成要素は、AscIとAvrIIとの間の373bpのpY207配列がARSを含む1341bpの配列に置き換えられたことを除き、pY207(
図12A)中に存在するものと同じである。より具体的には、pY177は以下の構成要素を含んだ。
【0416】
【表30】
【0417】
実施例11
EPA産生ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406株における種々のLPAATの機能に関する特性決定
EPAを産生するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406U株を使用して、自己複製プラスミドに組み込まないサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)LPAATS(配列番号151)及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LPAAT1(配列番号30)の発現の効果を、機能に関して特性決定した。これは、宿主がその天然LPAATを含むにもかかわらずであった。
【0418】
形質転換及び増殖
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406U株(実施例9)を実施例10の切断していないプラスミドにより個々に形質転換した。具体的には、ベクターpY177(YAT1::YlLPAAT1::Lip1)[配列番号156]及びpY222(YAT1::ScLPAATS::Lip1)[配列番号153]を一般的方法に従い形質転換した。
【0419】
各形質転換混合物をMM寒天プレートに播種した。いくつかの得られたURA+形質転換体を選び取り、3mLのCSM−U培地(Teknovaカタログ番号C8140、Teknova Inc.、Hollister,CA)に接種した。ここでCSM−U培地は、ウラシル非含有0.13%アミノ酸ドロップアウトパウダー、0.17%酵母窒素ベース、0.5%(NH
4)
2SO
4、及び2.0%グルコースを含むグルコース含有ウラシル非含有CMブロスを指す。シェーカーにおいて200rpm及び30℃で2日間増殖した後、培養物を遠心により回収し、3mLのHGM培地(カタログ番号2G2080、Teknova Inc.)に再懸濁した。シェーカーにおいて5日間増殖した後、培養物の1mLアリコートを回収し、実施例9に記載するとおりGCにより分析した。
【0420】
3mL培養物の脂肪酸組成に基づき、選択した形質転換体をフラスコアッセイによりさらに特性決定した。具体的には、発現ベクターpY222(ScLPAATSを含む)により形質転換したY8406U株のクローン#5及び#6を選択し、それぞれ「Y8406U::ScLPAATS−5」及び「Y8406U::ScLPAATS−6」と命名した;発現ベクターpY177(YlLPAAT1を含む)により形質転換したY8406U株のクローン#1を選択し、「Y8406U::YlLPAAT1」と命名した。加えて、Y8406株(Y8406U(Ura−)株に対する親であったUra+株)を対照として使用した。
【0421】
各選択した形質転換体及び対照をMM寒天プレートに画線した。次に、新しく画線した細胞の1つのループを3mLのCSM−U培地に接種し、250rpm及び30℃で一晩増殖した。OD
600nmを計測し、125mLフラスコ内の25mLのCSM−U培地に0.3の最終OD
600nmまで細胞のアリコートを添加した。振盪インキュベーターにおいて250rpm及び30℃で2日後、遠心により6mLの培養物を回収し、125mLフラスコ内の25mLのHGM中に再懸濁した。振盪インキュベーターにおいて250rpm及び30℃で5日後、実施例9に記載されるとおり1mLのアリコートを用いてGC分析を行い、及び10mLを乾燥させて乾燥細胞重量[「DCW」]を決定した。
【0422】
脂質含量、脂肪酸組成及び変換効率
対照Y8406株及び形質転換体Y8406U株の2個の同型培養物[「レプリケート」]について、DCWの百分率として脂質含量、脂肪酸組成及びEPAを定量化した。加えて、各Y8406U形質転換体のデータをY8406対照の%として表す。以下の表30は、細胞の全脂質含量[「TFA % DCW」]、TFAの重量パーセントとしての各脂肪酸の濃度[「% TFA」]及び乾燥細胞重量の百分率としてのEPA含量[「EPA % DCW」]を要約する。より具体的には、脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトオレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA及びEPAとして特定される。
【0423】
表31は、実施例9の記載と同じ方法で、PUFA生合成経路で機能し、且つEPA産生に必要な各デサチュラーゼ及びΔ9エロンガーゼの変換効率を要約する。
【0424】
【表31】
【0425】
【表32】
【0426】
上記の表30及び表31におけるデータに基づけば、EPA株のY8406U::YlLPAAT1、Y8406U::ScLPAATS−5及びY8406U::ScLPAATS−6におけるScLPAATS及びYlLPAAT1の双方の過剰発現は、TFAの重量%としてのLA(18:2)濃度[「LA % TFA」]の低下(対照の76%以下に至る)、及びΔ9エロンガーゼの変換効率の増加(対照の少なくとも7%に上る)をもたらした。ScLPAATSとYlLPAAT1とは脂質プロファイルに対して同様の効果を有する。
【0427】
次に上記で得られた結果を実施例9で得られた結果と比較したが、LPLATの特性決定には異なる手段を利用した。具体的には、実施例9では、ベクターがARS配列を含まなかったため、LPLATを有する直鎖化DNAを染色体に組み込むことにより形質転換した。その結果、安定的な組み込みがもたらされ、前培養及び2日間の増殖の双方の間に比較的高濃度の非選択的FM増殖培地で株を増殖し、その後HGMに移した。
【0428】
実施例11では、複製プラスミドに対するYlLPAAT1及びScLPAATSの機能に関する特性決定を行った。従って、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406株を、各LPAAT及びARS配列を含む環状DNAにより形質転換した。これらのプラスミドを維持し、組込みなしに遺伝子発現をアッセイするため、HGMに移す前に、前培養及び2日間の増殖の双方の間に選択培地(すなわち、CSM−U培地)で形質転換体を増殖させる必要があった。
【0429】
上記に記載されるこれらの違いは、実施例9及び11においてYlLPAAT1の発現により示されるとおり、脂質プロファイル及び含量の違いに寄与し得る。実施例9でYlLPAATを発現させたとき、対照と比べたLA % TFA、EPA % TFA、及びΔ9エロンガーゼ変換効率の変化は、それぞれ63%、115%、及び115%であったが、一方、実施例11でYlLPAATを発現させたときの対照と比べたLA % TFA、EPA % TFA、及びΔ9エロンガーゼ変換効率の変化は、それぞれ76%、101%、及び107%であった。従って、実施例11におけるΔ9伸長及びLC−PUFA生合成の改良は、実施例9で観察されるものと比較したとき最小限となる。これらの違いは、染色体への組込みの「位置効果」及び/又は異なる増殖条件に起因し得る。
【0430】
LC−PUFA生合成の改良(LA % TFAの低下、EPA % TFAの増加及びΔ9エロンガーゼ変換効率の増加として計測される)は、複製プラスミド上のヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406株に形質転換されたときのScLPAATS及びYlLPAATの双方について同程度であるため、双方のLPLAATとも宿主染色体に安定的に組み込まれた場合には同様に機能し得ると予想される。従って、ScLPAATSは、宿主染色体に安定的に組み込まれた場合、実施例9での観察と同様に脂質プロファイルを改良する可能性が高い。
本発明の例示的態様を以下に列挙する。
(1)(a)全脂肪酸の重量パーセントとして計測して少なくとも50重量パーセントのエイコサペンタエン酸、
を含む油であって、
(b)前記油は、全脂肪酸の重量パーセントとして計測したエイコサペンタエン酸の、全脂肪酸の重量パーセントとして計測したリノール酸に対する比が少なくとも3.1である、
油を産生する組換えヤロウイア・エスピー(Yarrowia sp.)宿主細胞。
(2)
(a)少なくとも1つのΔ8デサチュラーゼに連結された少なくとも1つのΔ9エロンガーゼを有するポリペプチドを含む少なくとも1つのマルチザイムと、
(b)発現が下方制御された少なくとも1つのペルオキシソーム生合成因子タンパク質と、
(c)マロニルCoAシンテターゼ及びアシルCoAリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼからなる群から選択される酵素をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの組換えコンストラクトと、
を含む、(1)に記載の組換えヤロウイア・エスピー(Yarrowia sp.)宿主細胞。
(3)前記マロニルCoAシンテターゼが、配列番号40及び配列番号42からなる群から選択される配列から本質的になる、(2)に記載の組換え宿主細胞。
(4)前記アシルCoAリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号15、配列番号17、配列番号25、配列番号29、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択される配列から本質的になる、(2)に記載の組換え宿主細胞。
(5)前記マルチザイムリンカーが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択される、(2)に記載の組換え宿主細胞。
(6)前記マルチザイムが、配列番号9、配列番号11及び配列番号13からなる群から選択される配列から本質的になる、(2)に記載の組換え宿主細胞。
(7)エイコサペンタエン酸を含む微生物油の作製方法であって、
a)(1)〜(5)のいずれかに記載の宿主細胞を培養するステップであって、エイコサペンタエン酸を含む微生物油が産生されるステップと、
b)ステップ(a)の前記微生物油を回収してもよいステップと、
を含む方法。
(8)ステップ(b)の前記回収された油がさらに処理される、(7)に記載の方法。
(9)全脂肪酸の重量パーセントとして計測して少なくとも50重量パーセントのエイコサペンタエン酸を含む油を産生するための組換え宿主細胞であって、ATCC指定番号ATCC PTA−10025を有するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8406;ATCC指定番号ATCC PTA−10026を有するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8412;及びATCC指定番号ATCC PTA−10027を有するヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8259からなる群から選択される宿主細胞。