(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、そのカチオン性脂質の脂質部分(例えば疎水性鎖)の中心部分または遠位部分に位置する1つ以上の生分解性基を有するカチオン性脂質に関する。これらのカチオン性脂質は、核酸(例えばsiRNA)のような活性剤を送達するための脂質粒子に組み込んでよい。生分解性基(1つまたは複数)をカチオン性脂質に組み込むと、代謝が加速し、身体からカチオン性脂質が除去された後、活性剤が標的区域に送達される。その結果、上記のカチオン性脂質の毒性は、生分解性基を含まない類似のカチオン性脂質よりも実質的に低い。
【0014】
1つの実施形態では、カチオン性脂質は、下記の式
【化1】
の化合物、またはその塩(例えばその製薬学的に許容可能な塩)であり、
上記の式中、
R’は存在しないか、水素またはアルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)であり、
R
1およびR
2に関しては、
(i)R
1およびR
2はそれぞれ独立して、任意で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であるか、
(ii)R
1およびR
2は、それらが結合している窒素原子と一体になって、任意で置換されている複素環を形成するか、
(iii)R
1およびR
2のうちの一方は、任意で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であり、もう一方は、(a)隣接する窒素原子、および(b)その窒素原子に隣接する(R)
a基とともに、4〜10員の複素環またはヘテロアリール(例えば6員環)を形成し、
Rの各存在は独立して、−(CR
3R
4)−であり、
R
3およびR
4の各存在は独立して、H、OH、アルキル、アルコキシ、−NH
2、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであるか(1つの好ましい実施形態では、R
3およびR
4の各存在は独立して、Hまたは炭素数1〜4のアルキルである)、
R
3およびR
4は、それらが直接結合している炭素原子と一体になって、シクロアルキル基を形成し、その際、炭素C*に結合している各鎖中の3個以下のR基はシクロアルキル(例えばシクロプロピル)であり、
Qまでの点線は存在しないか、または結合であり、
Qまでの点線が存在しないときには、Qは存在しないか、−O−、−NH−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R
4)−、−N(R
5)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−O−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−OC(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)O−、−C(O)S−、−C(S)O−、または−C(R
5)=N−O−C(O)−であるか、
Qまでの点線が結合のときには、(i)bは0であり、(ii)Q、およびその点線に隣接する第3炭素(C*)は、5〜10個の環原子を有する置換または非置換の単環または二環式複素環基を形成し(例えば、この複素環基中のヘテロ原子は、OおよびSから選択し、好ましくはOである)、
Q
1およびQ
2はそれぞれ独立して、存在しないか、−O−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(O)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(S)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、または−OC(O)O−であり、
Q
3およびQ
4はそれぞれ独立して、H、−(CR
3R
4)−、アリール、またはコレステロール部分であり、
A
1、A
2、A
3、およびA
4の各存在は独立して、−(CR
5R
5−CR
5=CR
5)−であり、
R
5の各存在は独立して、Hまたはアルキルであり、
M
1およびM
2はそれぞれ独立して、生分解性基(例えば、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(R
5)=N−、−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−O−N=C(R
5)−、−C(O)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(S)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−OC(O)O−、−OSi(R
5)
2O−、−C(O)(CR
3R
4)C(O)−、または−OC(O)(CR
3R
4)C(O)−)であり、
Zは存在しないか、アルキレン、または−O−P(O)(OH)−O−であり、
Zに結合している各−−−−−−は任意の結合で、Zが存在しないときには、Q
3およびQ
4が直接共有結合しないようになっており、
aは1、2、3、4、5、または6であり、
bは0、1、2、または3であり、
c、d、e、f、i、j、m、n、q、およびrはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
gおよびhはそれぞれ独立して、0、1、または2であり、
kおよびlはそれぞれ独立して0または1であり、kおよびlのうちの少なくとも1つは1であり、
oおよびpはそれぞれ独立して、0、1、または2であり、
(i)上記の化合物は、下記の部分
【化2】
を含まず、
この式中、−−−−は任意の結合であり、
(ii)Q
3およびQ
4はそれぞれ独立して、アスタリスク(*)の付された第3炭素原子から8個以上の原子(例えば12または14個以上の原子)の鎖分、離れている。
【0015】
1つの実施形態では、(i)R
1およびR
2はそれぞれ独立して、任意で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であるか、(ii)R
1およびR
2は、それらが結合している窒素原子と一体になって、任意で置換されている複素環を形成する。
【0016】
式(I)の化合物の好ましい実施形態では、
(a)Q
1が生分解性基(例えば−C(O)O−)であるときには、cは少なくとも4であり、
(b)Q
2が生分解性基であるときには、dは少なくとも4であり、
(c)Q
3およびQ
4はそれぞれ独立して、アスタリスク(*)の付された第3炭素原子から10個以上の原子(例えば12または14個以上の原子)の鎖分、離れている。
【0017】
別の好ましい実施形態では、式(I)において生分解性基(例えば−C(O)O−)に結合している炭素原子αまたはβは、1つまたは2つのアルキル基(例えば、−CH
3置換基のような1つの炭素数1〜4のアルキル基、または、2つの−CH
3置換基のような2つの炭素数1〜4のアルキル基)で置換されていても、スピロ環基(例えば、炭素数3のシクロアルキルのような炭素数3〜5のシクロアルキル)を有してもよい。例えば、生分解性基に結合している炭素原子αまたはβは独立して、下記から選択できる。
【化3】
(式中、nは4〜6である。)
【0018】
1つの実施形態では、M
1またはM
2基、および隣接する可変基(1つまたは複数)は、下記の基を形成する。
【化4】
(式中、nは4〜6である。)
【0019】
さらに別の実施形態は、下記の式
【化5】
のカチオン性脂質、またはその塩(例えばその製薬学的に許容可能な塩)であり、上記の式中、
R
1、R
2、R、a、およびbは、式(I)に関しての定義と同じであり、
Qは存在しないか、−O−、−NH−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R
4)−、−N(R
5)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−O−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−OC(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)O−、−C(O)S−、−C(S)O−、または−C(R
5)=N−O−C(O)−であり、
R’は存在しないか、水素またはアルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)であり、
R
9およびR
10のそれぞれは独立して、1つ以上の生分解性基を有する炭素数12〜24のアルキル(例えば炭素数12〜20のアルキル)、炭素数12〜24のアルケニル(例えば炭素数12〜20のアルケニル)、または炭素数12〜24のアルコキシ(例えば炭素数12〜20のアルコキシ)であり、各生分解性基は独立して、上記の炭素数12〜24のアルキル基、アルケニル基、またはアルコキシ基に割り込んでいるか、上記の炭素数12〜24のアルキル基、アルケニル基、またはアルコキシ基の末端で置換されており、
(i)上記の化合物は、下記の部分
【化6】
を含まず、
この式中、−−−−は任意の結合であり、
(ii)R
9およびR
10の末端は、アスタリスク(*)の付された第3炭素原子から8個以上の原子(例えば12または14個以上の原子)の鎖分、離れている。
【0020】
別の実施形態では、カチオン性脂質は、下記の式
【化7】
の化合物、またはその塩(例えばその製薬学的に許容可能な塩)であり、上記の式中、
R’は存在しないか、水素またはアルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)であり、
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、任意で置換されている炭素数1〜4のアルキル、炭素数2〜4のアルケニル、炭素数2〜4のアルキニル、炭素数3〜6のシクロアルキル、(炭素数3〜6のシクロアルキル)炭素数1〜4のアルキル、または単環式複素環であるか、
R
1およびR
2は、それらが結合している窒素原子と一体になって、任意で置換されている5または6員の複素環(例えば炭素数5または6の複素環)を形成し、
Rの各存在は独立して、−(CR
3R
4)−であり、
R
3およびR
4の各存在は独立して、H、OH、アルキル、アルコキシ、−NH
2、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであるか(1つの好ましい実施形態では、R
3およびR
4の各存在は独立して、Hまたは炭素数1〜4のアルキルである)、
R
3およびR
4は、それらが直接結合している炭素原子と一体になって、炭素数3〜6のシクロアルキル基を形成し、その際、炭素C*に結合している各鎖中の3個以下のR基は、シクロアルキル(例えばシクロプロピル)であり、
Qまでの点線は存在しないか、または結合であり、
Qまでの点線が存在しないときには、Qは存在しないか、−O−、−NH−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R
4)−、−N(R
5)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−O−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−OC(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)O−、C(O)S−、−C(S)O−、または−C(R
5)=N−O−C(O)−であるか、
Qまでの点線が結合であるときには、bは0であり、Q、およびその点線に隣接する第3炭素(C*)は、5〜10個の環原子を有する置換または非置換の単環または二環式複素環基(例えば、この複素環基中のヘテロ原子は、OおよびSから選択し、好ましくはOである)を形成し、
Q
3およびQ
4はそれぞれ独立して、H、−(CR
3R
4)−、アリール、またはコレステロール部分であり、
A
1、A
2、A
3、およびA
4の各存在は独立して、−(CR
5R
5−CR
5=CR
5)−であり、
R
5の各存在は独立して、Hまたはアルキルであり、
M
1およびM
2はそれぞれ独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(R
5)=N−、−C(R
5)=N−O−、−O−C(O)O−、−C(O)N(R
5)−、−C(O)S−、−C(S)O−、−OSi(R
5)
2O−、−C(O)(CR
3R
4)C(O)O−、または−OC(O)(CR
3R
4)C(O)−であり、
Zは存在しないか、アルキレン、または−O−P(O)(OH)−O−であり、
Zに結合している各−−−−−−は任意の結合で、Zが存在しないときには、Q
3およびQ
4が直接共有結合しないようになっており、
aは1、2、3、4、5、または6であり、
bは0、1、2、または3であり、
d、e、i、j、m、n、q、およびrはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
gおよびhはそれぞれ独立して、0、1、または2であり、
d+3hの和は少なくとも4であり、e+3gの和は少なくとも4であり、
kおよびlはそれぞれ独立して、0または1であり、kおよびlのうちの少なくとも1つは1であり、
oおよびpはそれぞれ独立して、0、1、または2であり、
Q
3およびQ
4はそれぞれ独立して、アスタリスク(*)の付された第3炭素原子から8個以上の原子(例えば12または14個以上の原子)の鎖分、離れている。
【0021】
1つの実施形態では、式(IA−2)のR’は存在しないか、水素である。1つの実施形態では、式(IA−2)中のR’は存在しないか、アルキル(例えばメチル)である。
【0022】
1つの実施形態では、式(IA−2)のR
1およびR
2はそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチルまたはエチル)である。
【0023】
1つの実施形態では、式(IA−2)のRの各存在は独立して、−CH
2−、または−CH(CH
3)−である。
【0024】
1つの実施形態では、式(IA−2)のQ
3およびQ
4はそれぞれ独立して、H、アリール、またはコレステロール部分である。
【0025】
1つの実施形態では、式(IA−2)のA
1、A
2、A
3、およびA
4の各存在は独立して、−(CH
2−CH=CH)−である。
【0026】
1つの実施形態では、式(IA−2)のM
1およびM
2はそれぞれ−C(O)−O−である。
【0027】
式(IA−2)の化合物の1つの実施形態では、Zは存在せず、各−−−−−−は存在しない(すなわち、Q
3およびQ
4は直接共有結合していない)。
【0028】
1つの実施形態では、式(IA−2)のe+3g+i+m+3o+qの和は、約8〜約20である。別の実施形態では、式(IA−2)のe+3g+i+m+3o+qの和は、約12〜約20である。
【0029】
1つの実施形態では、式(IA−2)のd+3h+j+n+3p+rの和は、約8〜約20である。別の実施形態では、式(IA−2)のd+3h+j+n+3p+rの和は、約12〜約20である。
【0030】
別の実施形態では、カチオン性脂質は、下記の式
【化8】
の化合物であり、
上記の式中、
R
1、R
2、R、a、b、M
1、およびM
2は、式(I)に関しての定義と同じであり、
Qは存在しないか、−O−、−NH−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R
4)−、−N(R
5)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−O−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−OC(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)O−、C(O)S−、−C(S)O−、または−C(R
5)=N−O−C(O)−であり、
R’は存在しないか、水素またはアルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)であり、
R
9およびR
10のそれぞれは独立して、アルキレンまたはアルケニレンであり、
R
11およびR
12のそれぞれは独立して、任意でCOOR
13を末端とするアルキルまたはアルケニルであり、その際、各R
13は独立して、アルキル(例えば、メチルまたはエチルのような炭素数1〜4のアルキル)であり、
R
9、M
1、およびR
11は一体になって、少なくとも8個の炭素原子の長さ(例えば12または14個の炭素原子、またはそれを超える長さ)であり、
R
10、M
2、およびR
12は一体になって、少なくとも8個の炭素原子の長さ(例えば12または14個の炭素原子、またはそれを超える長さ)である。
【0031】
式(IB)の化合物の好ましい実施形態では、R
9およびR
10はそれぞれ独立して、炭素数4〜12のアルキレン、または炭素数4〜12のアルケニレンであり、M
1およびM
2は−C(O)O−であり、R
11およびR
12は、炭素数4〜12のアルキレン、または炭素数4〜12のアルケニレンである。1つの実施形態では、R
9、M
1、およびR
11は一体になって、12〜24個の炭素原子の長さである。別の実施形態では、R
9、M
1、およびR
11は一体になって、14〜18個の炭素原子の長さである。1つの実施形態では、R
10、M
2、およびR
12は一体になって、12〜24個の炭素原子の長さである。別の実施形態では、R
10、M
2、およびR
12は一体になって、14〜18個の炭素原子の長さである。
【0032】
R’R
1R
2N−(R)
a−Q−(R)
b−基は、後掲の表1に示されている頭部基を含め、本明細書に記載されている頭部基、およびそれらの塩のいずれであることもできる。1つの好ましい実施形態では、R’R
1R
2N−(R)
a−Q−(R)
b−は、(CH
3)
2N−(CH
2)
3−C(O)O−、(CH
3)
2N−(CH
2)
2−NH−C(O)O−、(CH
3)
2N−(CH
2)
2−OC(O)−NH−、または(CH
3)
2N−(CH
2)
3−C(CH
3)=N−O−である。
【0033】
さらに別の実施形態では、本発明のカチオン性脂質は、下記の式
【化9】
の化合物であり、
上記の式中、
R
1、R
2、R、a、およびbは、式(I)に関しての定義と同じであり、
Qは存在しないか、−O−、−NH−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R
4)−、−N(R
5)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−O−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−OC(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)O−、−C(O)S−、−C(S)O−、または−C(R
5)=N−O−C(O)−であり、R’は存在しないか、水素またはアルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)であり、
R
9およびR
10のそれぞれは独立して、その末端が−COOR
13のような生分解性基で置換されている炭素数12〜24のアルキルまたはアルケニルであり、各R
13は独立して、アルキル(好ましくは、メチルまたはエチルのような炭素数1〜4のアルキル)である。
【0034】
式(IC)の化合物の好ましい実施形態では、R
9およびR
10はそれぞれ独立して、炭素数14〜18のアルキレン、または炭素数14〜18のアルケニレンである。別の好ましい実施形態では、上記の生分解性基は−COOR
13であり、R
13は炭素数1〜4のアルキル(メチルまたはエチルなど)である。
【0035】
R’R
1R
2N−(R)
a−Q−(R)
b−基は、後掲の表1に示されている頭部基を含め、本明細書に記載されている頭部基のいずれであることもできる。1つの好ましい実施形態では、R’R
1R
2N−(R)
a−Q−(R)
b−は、(CH
3)
2N−(CH
2)
3−C(O)O−、(CH
3)
2N−(CH
2)
2−NH−C(O)O−、(CH
3)
2N−(CH
2)
2−OC(O)−NH−、または(CH
3)
2N−(CH
2)
3−C(CH
3)=N−O−である。
【0036】
さらに別の実施形態は、下記の式
【化10】
の中間体、またはその塩(例えばその製薬学的に許容可能な塩)であり、
上記の式中、
R’は存在しないか、水素またはアルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)であり、
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、任意で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環であるか、
R
1およびR
2は、それらが結合している窒素原子と一体になって、任意で置換されている複素環を形成し、
Rの各存在は独立して、−(CR
3R
4)−であり、
R
3およびR
4の各存在は独立して、H、OH、アルキル、アルコキシ、−NH
2、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであるか(1つの好ましい実施形態では、R
3およびR
4の各存在は独立してHまたはアルキルであるか)、
R
3およびR
4は、それらが直接結合している炭素原子と一体になって、シクロアルキル基を形成し、その際、炭素C*に結合している各鎖中の3個以下のR基は、シクロアルキル(例えばシクロプロピル)であり、
Qまでの点線は存在しないか、または結合であり、
Qまでの点線が存在しないときには、Qは存在しないか、−O−、−NH−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R
4)−、−N(R
5)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−O−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−OC(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)O−、−C(O)S−、−C(S)O−、または−C(R
5)=N−O−C(O)−であるか、
Qまでの点線が結合であるときには、bは0であり、Q、およびその点線に隣接する第3炭素(C*)は、5〜10個の環原子を有する置換または非置換の単環または二環式複素環基を形成し(例えば、この複素環基中のヘテロ原子は、OおよびSから選択し、好ましくはOである)、
Q
1およびQ
2はそれぞれ独立して、存在しないか、−O−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(O)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(S)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、または−OC(O)O−であり、
Q
3およびQ
4はそれぞれ独立して、H、−(CR
3R
4)−、アリール、−OH、またはコレステロール部分であり、
A
1、A
2、A
3、およびA
4の各存在は独立して、−(CR
5R
5−CR
5=CR
5)−であり、
R
5の各存在は独立して、Hまたはアルキルであり、
M
1およびM
2はそれぞれ独立して、生分解性基(例えば、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(R
5)=N−、−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−O−N=C(R
5)−、−C(O)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(S)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−OC(O)O−、−OSi(R
5)
2O−、−C(O)(CR
3R
4)C(O)O−、または−OC(O)(CR
3R
4)C(O)−)であり、
Zは存在しないか、アルキレン、または−O−P(O)(OH)−O−であり、
Zに結合している各−−−−−−は任意の結合で、Zが存在しないときには、Q
3およびQ
4が直接共有結合しないようになっており、
aは1、2、3、4、5、または6であり、
bは0、1、2、または3であり、
c、d、e、f、i、j、m、n、q、およびrはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり、
gおよびhはそれぞれ独立して、0、1、または2であり、
kおよびlはそれぞれ独立して、0または1であり、
oおよびpはそれぞれ独立して、0、1、または2であり、
(i)上記の化合物は、下記の部分
【化11】
を含まず、
この式中、−−−−は任意の結合であり、
(ii)Q
3およびQ
4はそれぞれ独立して、アスタリスク(*)の付された第3炭素原子から8個以上の原子(例えば12または14個以上の原子)の鎖分、離れている。
【0037】
さらなる実施形態では、カチオン性脂質は、下記の式IE
【化12】
の化合物、またはその塩(例えばその製薬学的に許容可能な塩)であり、
上記の式中、
R
1は、−L
1a−(CR
1aR
1b)
α−[L
1b−(CR
1aR
1b)
β]
γ−L
1c−R
1cという式を有する炭素数10〜30の基であり、この式中、L
1aは結合、−CR
1aR
1b−、−O−、−CO−、−NR
1d−、−S−、またはこれらの組み合わせであり、
各R
1aおよび各R
1bは独立して、Hか、ハロか、ヒドロキシか、シアノか、ハロ、ヒドロキシ、もしくはアルコキシによって任意で置換されている炭素数1〜6のアルキルか、ハロ、ヒドロキシ、もしくはアルコキシによって任意で置換されている炭素数3〜8のシクロアルキルか、−OR
1cか、−NR
1cR
1dか、アリールか、ヘテロアリールか、またはヘテロシクリルであり、
各L
1bは独立して、結合、−(CR
1aR
1b)
1−2−、−O−、−CO−、−NR
1d−、−S−、
【化13】
またはこれらの組み合わせであるか、下記の式
【化14】
を有することができ、この式中、j、k、およびlはそれぞれ独立して、0、1、2、または3であり(ただし、j、k、およびlの和が少なくとも1、かつ8以下であることを条件とする)、R
1fおよびR
1gはそれぞれ独立して、R
1bであるか、隣接するR
1fおよびR
1gは一体になって、任意で結合であるか、
下記の式
【化15】
を有することができ、この式中、jおよびkはそれぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり(ただし、jおよびkの和が少なくとも1であることを条件とする)、R
1fおよびR
1gはそれぞれ独立して、R
1bであるか、隣接するR
1fおよびR
1gは一体になって、任意で結合であるか、
下記の式
【化16】
を有することができ、この式中、−Ar−は、0〜6個の独立したR
1a基によって任意で置換されている6〜14員のアリーレン基であるか、
下記の式
【化17】
を有することができ、この式中、−Het−は、0〜6個の独立したR
1a基によって任意で置換されている3〜14員のヘテロシクリレンまたはヘテロアリーレン基であり、
L
1cは、−(CR
1aR
1b)
1−2−、−O−、−CO−、−NR
1d−、−S−、
【化18】
またはこれらの組み合わせであり、
R
1cはHか、ハロか、ヒドロキシか、シアノか、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、もしくはアリールによって任意で置換されている炭素数1〜6のアルキルか、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、もしくはアリールによって任意で置換されている炭素数3〜8のシクロアルキルか、アリールか、ヘテロアリールか、またはヘテロシクリルであるか、R
1cは、下記の式
【化19】
を有し、
R
1dはHか、ハロか、ヒドロキシか、シアノか、ハロ、ヒドロキシ、もしくはアルコキシによって任意で置換されている炭素数1〜6のアルキルか、ハロ、ヒドロキシ、もしくはアルコキシによって任意で置換されている炭素数3〜8のシクロアルキルか、アリールか、ヘテロアリールか、またはヘテロシクリルであり、
αは0以上6以下であり、
各βは独立して、0以上6以下であり、
γは0以上6以下であり、
R
2は、−L
2a−(CR
2aR
2b)
δ−[L
2b−(CR
2aR
2b)
ε]
ζ−L
2c−R
2cという式を有する炭素数10〜30の基であり、この式中、L
2aは結合、−CR
2aR
2b−、−O−、−CO−、−NR
2d−、−S−、またはこれらの組み合わせであり、
各R
2aおよび各R
2bは独立して、Hか、ハロか、ヒドロキシか、シアノか、ハロ、ヒドロキシ、もしくはアルコキシによって任意で置換されている炭素数1〜6のアルキルか、ハロ、ヒドロキシ、もしくはアルコキシによって任意で置換されている炭素数3〜8のシクロアルキルか、−OR
2cか、−NR
2cR
2dか、アリールか、ヘテロアリールか、またはヘテロシクリルであることができ、
各L
2bは独立して、結合、−(CR
2aR
2b)
1−2−、−O−、−CO−、−NR
2d−、−S−、
【化20】
またはこれらの組み合わせであることができるか、
下記の式
【化21】
を有することができ、この式中、j、k、およびlはそれぞれ独立して、0、1、2、または3であり(ただし、j、k、およびlの和が少なくとも1、かつ8以下であることを条件とする)、R
2fおよびR
2gはそれぞれ独立して、R
2bであるか、隣接するR
2fおよびR
2gは一体になって、任意で結合であるか、
下記の式
【化22】
を有することができ、この式中、jおよびkはそれぞれ独立して、0、1、2、3、または4であり(ただし、jおよびkの和が少なくとも1であることを条件とする)、R
2fおよびR
2gはそれぞれ独立して、R
2bであるか、隣接するR
2fおよびR
2gは一体になって、任意で結合であるか、
下記の式
【化23】
を有することができ、この式中、−Ar−は、0〜6個の独立したR
2a基によって任意で置換されている6〜14員のアリーレン基であるか、
下記の式
【化24】
を有することができ、この式中、−Het−は、0〜6個の独立したR
2a基によって任意で置換されている3〜14員のヘテロシクリレンまたはヘテロアリーレン基であり、
L
2cは、−(CR
2aR
2b)
1−2−、−O−、−CO−、−NR
2d−、−S−、
【化25】
またはこれらの組み合わせであり、
R
2cはHか、ハロか、ヒドロキシか、シアノか、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、もしくはアリールによって任意で置換されている炭素数1〜6のアルキルか、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、もしくはアリールによって任意で置換されている炭素数3〜8のシクロアルキルか、アリールか、ヘテロアリールか、またはヘテロシクリルであるか、R
2cは下記の式
【化26】
を有し、
R
2dはHか、ハロか、ヒドロキシか、シアノか、ハロ、ヒドロキシ、もしくはアルコキシによって任意で置換されている炭素数1〜6のアルキルか、ハロ、ヒドロキシ、もしくはアルコキシによって任意で置換されている炭素数3〜8のシクロアルキルか、アリールか、ヘテロアリールか、またはヘテロシクリルであり、
δは0以上6以下であり、
各εは独立して、0以上6以下であり、
ζは0以上6以下であり、
L
1はC(R
a)、−(CR
5R
6)
xC(R
a)−、またはP(Q
2)であり、
R
aはH、アルキル、アルコキシ、−OH、−N(Q)Q、または−SQであり、
L
2は−(CR
5R
6)
x−、−C(O)−(CR
5R
6)
x−、−(CR
5R
6)
x−C(O)−、−(CR
5R
6)
x−CR
5=CR
5−(CR
5R
6)
y−、−C(O)−(CR
5R
6)
x−CR
5=CR
5−(CR
5R
6)
y−、−(CR
5R
6)
x−CR
5=CR
5−(CR
5R
6)
y−C(O)−、−O−、−S−、−N(Q)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)−、−N(Q)C(O)−、−C(O)N(Q)−、−N(Q)C(O)O−、−OC(O)N(Q)−、S(O)、−N(Q)S(O)
2N(Q)−、−S(O)
2−、−N(Q)S(O)
2、−SS−、−O−N=、=N−O−、−C(O)−N(Q)−N=、−N(Q)−N=、−N(Q)−O−、−C(O)S−、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、またはヘテロシクリレンであり、
各xは独立して、0以上6以下であることができ、
各yは独立して、0以上6以下であることができ、
R
3は下記の式
【化27】
の基であり、
Y
1はアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルキニルであり、Y
1は、0〜6個の独立したR
nによって任意で置換されており、
Y
2はアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルキニルであり、Y
2は、0〜6個の独立したR
nによって任意で置換されており、
Y
3は存在しないか、存在する場合には、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルキニルであり、Y
3は、0〜6個の独立したR
nによって任意で置換されており、
Y
4は存在しないか、存在する場合には、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルキニルであり、Y
4は、0〜6個の独立したR
nによって任意で置換されているか、
Y
1、Y
2、およびY
3のうちのいずれか2つは、それらが結合しているN原子と一体になって、0〜6個の独立したR
nによって任意で置換されている3〜8員の複素環を形成するか、
Y
1、Y
2、およびY
3のすべてが、それらが結合しているN原子と一体になって、0〜6個の独立したR
nによって任意で置換されている二環式の5〜12員の複素環を形成し、
各R
nは独立して、H、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであることができ、
L
3は結合、−N(Q)−、−O−、−S−、−(CR
7R
8)
a−、−C(O)−、またはこれらのうちのいずれか2つの組み合わせであり、
L
4は結合、−N(Q)−、−O−、−S−、−(CR
7R
8)
a−、−C(O)−、またはこれらのうちのいずれか2つの組み合わせであり、
L
4は結合、−N(Q)−、−O−、−S−、−(CR
7R
8)
a−、−C(O)−、またはこれらのうちのいずれか2つの組み合わせであり、
R
7およびR
8の各存在は独立して、H、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであるか、
隣接する炭素原子上の2つのR
7基は一体になって、それぞれの炭素原子間で二重結合を形成できるか、
隣接する炭素原子上の2つのR
7基、および同じ隣接する炭素原子上の2つのR
8基は一体になって、それぞれの炭素原子間で三重結合を形成できるか、
L
3、L
4、またはL
5のいずれかのR
7またはR
8置換基は任意で、L
3、L
4、またはL
5のいずれかのR
7またはR
8置換基と一体になって、3〜8員のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール基を形成できるか、
Y
1、Y
2、またはY
3のいずれか1つは任意で、L
3、L
4、およびL
5のいずれかのR
7またはR
8基、ならびに、それらが結合している原子と一体になって、3〜8員のヘテロシクリル基を形成でき、
各aは独立して、0、1、2、または3であることができ、
R
5およびR
6の各存在は独立して、H、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであることができ、
各Qは独立して、H、アルキル、アシル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、
各Q
2は独立して、O、S、N(Q)Q、アルキル、またはアルコキシである。
【0038】
いくつかの実施形態では、L
1は−C(R
5R
6)
xC(R
a)−であることができるか、L
1は−CH
2C(R
a)−であることができる。L
2は−C(O)O−、−OC(O)−、−N(Q)C(O)−、−C(O)N(Q)−、−N(Q)C(O)O−、−OC(O)N(Q)−、−SS−、−O−N=、または=N−O−であることができる。L
2は−C(O)O−、−OC(O)−、−SS−、または=N−O−であることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、−L
1a−(CR
1aR
1b)
αは−(CH
2)
8−であることができる。−L
2a−(CR
2aR
2b)
δは−(CH
2)
8−であることができる。L
1b−(CR
1aR
1b)
βはCH
2CH
2CH
2、CH=CH−CH
2、または
【化28】
であることができ、βは1、2、または3である。L
2b−(CR
2aR
2b)
εはCH
2CH
2CH
2、CH=CH−CH
2、または
【化29】
であることができ、εは1、2、または3である。
【0040】
式IEの化合物の1つの実施形態では、その化合物に存在する少なくとも1つのL
1a、L
1b、L
1c、L
2a、L
2b、またはL
2cは、エステル−C(O)O−、−OC(O)−、ジスルフィド(−S−S−)、−C(R
5)=N−、−O−C(O)O−、−C(O)N(R
5)、−N(R
5)C(O)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−C(O)S−、−SC(O)−、−C(O)(CR
1aR
1b)C(O)O−、または−OC(O)(CR
1aR
1b)C(O)−のような生分解性基である。式IEの化合物の別の実施形態では、その化合物に存在する少なくとも1つのL
1a、L
1b、およびL
1cは生分解性基であり、化合物に存在する少なくとも1つのL
2a、L
2b、またはL
2cは生分解性基(上述の生分解性基など)である。式IEの化合物のさらに別の実施形態では、R
1のαは少なくとも4であり、R
2のδは少なくとも4であり、化合物に存在する少なくとも1つのL
1a、L
1b、およびL
1cは生分解性基であり、化合物に存在する少なくとも1つのL
2a、L
2b、またはL
2cは生分解性基(上述の生分解性基など)である。別の実施形態では、R
1および/またはR
2の炭素鎖は飽和している。さらに別の実施形態では、R
1および/またはR
2の炭素鎖は、1つまたは2つの二重結合を含む。
【0041】
さらに別の実施形態では、カチオン性脂質は、下記の式II〜XXIII
【化30】
の化合物から選択した化合物、およびそれらの塩(例えばそれらの製薬学的に許容可能な塩)であり、
上記の式中、
m、n、o、およびpはそれぞれ個別に1〜25であり、ただし、
(i)式(II)、(IV)、(VI)、および(VII)では、mおよびpがいずれも4以上であること、
(ii)式(VIII)、(X)、(XII)、(XIV)、(XVI)、(XVIII)、(XXI)、および(XXIII)では、mが4以上であること、
(iii)式(VIII)、(IX)、(XII)、および(XIII)では、pが8以上(例えば12もしくは14、またはそれらを超える値)であることを条件とする。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、
(i)中心炭素原子と、
(ii)上記の中心炭素原子に直接結合している窒素含有頭部基と、
(iii)上記の中心炭素原子に直接結合している2つの疎水性テイル(各疎水性テイルは、上記の中心炭素原子に結合している炭素数8以上の脂肪族基(好ましくは炭素数14以上の脂肪族基)を含み、この脂肪族基の1つまたは両方は、(a)生分解性基に割り込まれて、その生分解性基と上記の中心炭素原子との間に、少なくとも4つの炭素原子の鎖が存在するようになっているか、(b)疎水性テイルの末端に、生分解性基を含む)と、
を有するカチオン性脂質またはその塩に関する。例えば、上記の生分解性基は、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(O)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(S)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、および−OC(O)O−から選択する。
【0043】
さらに別の実施形態は、本発明のカチオン性脂質を含む脂質粒子である。1つの実施形態では、この脂質粒子は、本明細書に記載されているような式II〜XXIIIのいずれかの化合物を含む。別の実施形態では、上記の脂質粒子は、本明細書に記載されているような式Iの化合物を含む。別の実施形態では、上記の脂質粒子は、本明細書に記載されているような式IA−1、IA−2、IB、IC、ID、またはIEの化合物を含む。
【0044】
好ましい実施形態では、上記の脂質粒子は、中性脂質と、凝集を低減できる脂質できる脂質と、カチオン性脂質と、任意でステロール(例えばコレステロール)とを含む。好適な中性脂質としては、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、POPC、DOPE、およびSMが挙げられるが、これらに限らない。凝集を低減できる好適な脂質としては、PEG−DMA、PEG−DMG、またはこれらの組み合わせのようなPEG脂質が挙げられるが、これらに限らない。
【0045】
上記の脂質粒子は、活性剤(例えば治療剤)をさらに含んでもよい。この活性剤は、プラスミド、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、アンタゴmir、アプタマー、またはリボザイムのような核酸であることができる。
【0046】
別の実施形態では、上記の脂質粒子は、本発明のカチオン性脂質と、中性脂質と、ステロールとを含む。上記の脂質粒子は、核酸のような活性剤をさらに含んでもよい。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態は、本発明の脂質粒子と、製薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物である。
【0048】
さらに別の実施形態は、被検体において核酸分子を送達する方法であって、その核酸分子とカチオン性脂質(またはその塩)とを含む脂質粒子を被検体に投与することを含み、上記のカチオン性脂質が、
(i)中心炭素原子と、
(ii)上記の中心炭素原子に直接結合している窒素含有頭部基と、
(iii)上記の中心炭素原子に直接結合している2つの疎水性テイル(各疎水性テイルは、上記の中心炭素原子に結合している炭素数8以上の脂肪族基(好ましくは炭素数14以上の脂肪族基)を含み、この脂肪族基の1つまたは両方は、(a)生分解性基に割り込まれて、その生分解性基と上記の中心炭素原子との間に、少なくとも4つの炭素原子の鎖が存在するようになっているか、(b)疎水性テイルの末端に、生分解性基を含む)とを有する方法である。
【0049】
1つの実施形態では、上記のカチオン性脂質は、核酸分子が送達されるまで無傷のままであり、送達後、疎水性テイルがインビボで切断される。
【0050】
さらに別の態様は、細胞に本発明の脂質粒子を供給することによって、その細胞内で標的遺伝子の発現を調節する方法である。活性剤は、プラスミド、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、アンタゴmir、アプタマー、およびリボザイムから選択した核酸であることができる。
【0051】
さらに別の態様は、被検体に本発明の医薬組成物を投与することによって、その被検体におけるポリペプチドの過剰発現によって特徴付けられる疾患または障害を治療する方法であり、その活性剤は、siRNA、マイクロRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択した核酸であり、このsiRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、上記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはその相補体に特異的に結合するポリヌクレオチドを含む。
【0052】
さらに別の態様は、被検体に本発明の医薬組成物を投与することによって、被検体におけるポリペプチドの過小発現によって特徴付けられる疾患または障害を治療する方法であり、その活性剤は、上記のポリペプチド、またはその機能的変異体もしくは断片をコードするプラスミドである。
【0053】
さらに別の態様は、被検体に医薬組成物を投与することによって、被検体において免疫反応を誘発する方法であり、その活性剤は免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。
【0054】
さらに別の態様は、上記の組成物または脂質粒子を含む転写剤であり、その組成物または脂質粒子は核酸を含む。この転写剤は、細胞と接触させると、核酸をその細胞に効率的に送達できる。さらに別の態様は、上記の組成物または脂質粒子を得るか、または形成するかして、その組成物または脂質粒子を細胞と接触させることによって、核酸を細胞の内部に送達する方法である。
【0055】
その他の特徴および態様は、本明細書および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0057】
1つの態様では、本発明は、中性脂質と、凝集を低減できる脂質と、カチオン性脂質と、任意でステロールとを含む脂質粒子に関する。特定の実施形態では、この脂質粒子は、活性剤(例えば治療剤)をさらに含む。これらの脂質、脂質粒子、およびそれらを含む組成物、ならびに、治療剤を送達する目的、遺伝子およびタンパクの発現を調節する目的でそれらを用いることのさまざまな例示的な実施形態について、以下でさらに詳細に説明する。
【0058】
カチオン性脂質
1つの実施形態では、カチオン性脂質は、式I〜XXIIIの化合物である。別の実施形態では、カチオン性脂質は、式II〜XXIIIのうちの1つの化合物である。1つの実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物である。別の実施形態では、カチオン性脂質は、式IA−1、IA−2、IB、IC、またはIDの化合物である。下記の開示内容は、式Iの化合物のさまざまな実施形態を表している。
【0059】
1つの実施形態では、M
1およびM
2はそれぞれ独立して、
−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(R
5)=N−、−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−O−N=C(R
5)−、−C(O)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(S)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−OC(O)O−、−OSi(R
5)
2O−、−C(O)(CR
3R
4)C(O)O−、または−OC(O)(CR
3R
4)C(O)−である。
【0060】
別の実施形態では、M
1およびM
2はそれぞれ独立して、
−OC(O)−、−C(O)−O−、−C(R
5)=N−、−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−O−N=C(R
5)−、−O−C(O)O−、−C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(O)S−、−SC(O)−、−C(S)O−、−OC(S)−、−OSi(R
5)
2O−、−C(O)(CR
3R
4)C(O)O−、または−OC(O)(CR
3R
4)C(O)−である。
【0061】
さらに別の実施形態では、M
1およびM
2はそれぞれ独立して、
−C(O)O−、−OC(O)−、−C(R
5)=N−、−C(R
5)=N−O−、−O−C(O)O−、−C(O)N(R
5)−、−C(O)S−、−C(S)O−、−OSi(R
5)
2O−、−C(O)(CR
3R
4)C(O)O−、または−OC(O)(CR
3R
4)C(O)−である。
【0062】
別の実施形態では、M
1およびM
2はそれぞれ−C(O)O−である。
【0063】
1つの実施形態では、R
1およびR
2はそれぞれ個別に、任意で置換されているアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、または複素環である。1つの実施形態では、R
1はアルキルであり、R
2はアルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルである。1つの実施形態では、R
1およびR
2はそれぞれ個別に、アルキル(例えば、メチル、エチル、またはイソプロピルのような炭素数1〜4のアルキル)である。1つの実施形態では、R
1およびR
2はいずれもメチルである。別の実施形態では、R
1およびR
2は、それらが結合している窒素原子と一体になって、任意で置換されている複素環(例えばN−メチルピペラジニル)を形成する。別の実施形態では、R
1およびR
2のうちの1つは、
【化31】
である(例えば、R
1は、上記の2つの基のうちの1つであり、R
2は水素である)。
【0064】
1つの実施形態では、R’は水素またはアルキルである。別の実施形態では、R’は水素またはメチルである。1つの実施形態では、R’は存在しない。1つの実施形態では、R’は存在しないか、メチルである。
【0065】
R’が存在しない化合物では、R’が結合している窒素原子は正電荷を有しており、その化合物も負荷電対イオンを含む。この対イオンは、有機または無機アニオンのようないずれかのアニオンであることができる。アニオンの好適な例としては、トシレート、メタンスルホネート、アセテート、シトレート、マロネート、タートレート、サクシネート、ベンゾエート、アスコルベート、α−ケトグルタレート、α−グリセロフォスフェート、ハロゲン化物(例えばクロリド)、サルフェート、ニトレート、バイカーボネート、およびカーボネートが挙げられるが、これらに限らない。1つの実施形態では、上記の対イオンはハロゲン化物(例えばCl)である。
【0066】
1つの実施形態では、各Rは独立して、−(CR
3R
4)−であり、このR
3およびR
4はそれぞれ独立して、Hまたはアルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)である。例えば、1つの実施形態では、各Rは独立して、−(CHR
4)−であり、この各R
4は独立して、Hまたはアルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)である。別の実施形態では、各Rは独立して、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、または−CH(iPr)−(iPrはイソプロピルである)である。別の実施形態では、各Rは−CH
2−である。
【0067】
別の実施形態では、R
5は、各ケースにおいて、水素またはメチルである。例えば、R
5は、各ケースにおいて、水素であることができる。
【0068】
1つの実施形態では、Qは存在しないか、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R
4)−、−N(R
5)C(O)−、−S−S−、−OC(O)O−、−C(R
5)=N−O−、−OC(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)O−、C(O)S−、−C(S)O−、または−C(R
5)=N−O−C(O)−である。1つの実施形態では、Qは−C(O)O−である。
【0069】
1つの実施形態では、Q
1およびQ
2はそれぞれ独立して、存在しないか、−O−である。例えば、1つの実施形態では、Q
1およびQ
2はそれぞれ存在しない。別の実施形態では、Q
1およびQ
2はそれぞれ−O−である。
【0070】
1つの実施形態では、Qまでの点線は存在せず、bは0であり、R’R
1R
2N−(R)
a−Q−、およびそれに隣接する第3炭素(C*)は下記の基
【化32】
を形成し、この式中、nは1〜4である(例えば、nは2である)。
【0071】
1つの実施形態では、Qまでの点線は存在せず、bは0であり、R’R
1R
2N−(R)
a−Q−、およびそれに隣接する第3炭素は下記の基
【化33】
を形成し、この式中、nは1〜4であり(例えば、nは2である)、R
1、R
2、R、a、およびbは、式(I)に関しての定義と同じである。1つの実施形態では、aは3である。
【0072】
1つの実施形態では、Qまでの点線は存在せず、bは0であり、R’R
1R
2N−(R)
a−Q−、およびそれに隣接する第3炭素は下記の基
【化34】
を形成し、この式中、nは1〜4であり(例えば、nは2である)、R
1、R
2、R、a、およびbは、式(I)に関しての定義と同じである。1つの実施形態では、aは0である。例えば、この基は、下記の基
【化35】
であることができる。
【0073】
1つの実施形態では、bは0である。別の実施形態では、aは2、3、または4であり、bは0である。例えば、1つの実施形態では、aは3であり、bは0である。別の実施形態では、aは3であり、bは0であり、Qは−C(O)O−である。
【0074】
1つの実施形態では、式(I)の化合物は、下記のサブ式
【化36】
のものであり、この式中、R、R’、R
1、R
2、A
1、A
2、A
3、A
4、Q
1、Q
2、Q
3、Q
4、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l、m、n、o、p、q、およびrは、本明細書に記載されている実施形態のいずれかにおいて定義されているとおりである。
【0075】
式(IF)の化合物の追加の実施形態では、下記のうちの1つ以上が適用される。
(i)Q
1およびQ
2は存在しない
(ii)M
1およびM
2はいずれも−C(O)O−である
(iii)gおよびhはいずれも1である
(iv)gおよびhはいずれも0である
(v)cおよびeの和は7である
(vi)dおよびfの和は7である
(vii)c、e、およびiの和は7である
(viii)d、f、およびjの和は7である
(ix)iおよびjはそれぞれ7である
(x)kおよびlはいずれも1である
(xi)mおよびnはいずれも0である
(xii)mおよびqの和は1であるか、mおよびqの和は2である
(xiii)mおよびlの和は6である
(xiv)rおよびnの和は6である
(xv)pおよびoはいずれも0である
(xvi)nおよびrの和は2であるか、nおよびrの和は1である
(xvii)Q
3はHである
【0076】
特定の実施形態では、本発明のカチオン性脂質に存在する生分解性基は、エステル(例えば−C(O)O−もしくは−OC(O)−)、ジスルフィド(−S−S−)、オキシム(例えば−C(H)=N−O−もしくは−O−N=C(H)−)、−C(O)−O−、−OC(O)−、−C(R
5)=N−、−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−O−N=C(R
5)−、−O−C(O)O−、−C(O)N(R
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(S)(NR
5)−、−(NR
5)C(S)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−C(O)S−、−SC(O)−、−C(S)O−、−OC(S)−、−OSi(R
5)
2O−、−C(O)(CR
3R
4)C(O)O−、または−OC(O)(CR
3R
4)C(O)−から選択する。
【0077】
1つの実施形態では、カチオン性脂質の疎水性テイルの1つまたは両方の脂肪族基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む。
【0078】
本発明のカチオン性脂質(式(I)、IA−2、ID、IE、およびIFの化合物を含む)に適したコレステロール部分は、下記の式
【化37】
を有する。
【0079】
追加の実施形態としては、頭部基と、1つ以上の疎水性テイルと、その頭部基と1つ以上のテイルとの間のリンカーとを有するカチオン性脂質が挙げられる。この頭部基は、アミン、例えば、所望のpK
aを有するアミンを含むことができる。このpK
aは、カチオン性脂質の構造、特に頭部基の性質、例えば、アニオン性官能基、水素結合ドナー官能基、水素結合アクセプター基、疎水性基(例えば脂肪族基)、親水性基(例えばヒドロキシルもしくはメトキシ)、またはアリール基のような官能基の有無および位置による影響を受け得る。上記の頭部基アミンは、カチオン性アミン、一級、二級、または三級アミンであることができ、上記の頭部基は、1つのアミン基(モノアミン)、2つのアミン基(ジアミン)、3つのアミン基(トリアミン)、または、オリゴアミンまたはポリアミンのように4個以上のアミン基を含むことができる。上記の頭部基は、例えばイミダゾール基、ピリジン基、またはグアニジニウム基など、アミンよりも塩基性の強さが弱い官能基を含むことができる。上記の頭部基は双性イオン性であることができる。他の頭部基も好適である。
【0080】
上記の1つ以上の疎水性テイルは、2つの疎水性鎖を含むことができ、これらの鎖は同じであっても異なっていてもよい。上記のテイルは、脂肪族であることができ、例えば、炭素および水素から構成されていることができる(飽和または不飽和のいずれかであるが、芳香環を有さない)。上記のテイルは脂肪酸テイルであることができる。いくつかのこのような基としては、オクタニル、ノナニル、デシル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、α−リノレイル、ステアリドニル、リノレイル、γ−リノレニル、アラカドニル、およびオレイルが挙げられる。他の疎水性テイルも好適である。
【0081】
上記のリンカーとしては、例えば、グリセリドリンカー、非環式グリセリドアナログリンカー、または環状リンカー(スピロリンカー、二環式リンカー、および多環式リンカーを含む)を挙げることができる。上記のリンカーは、エーテル、エステル、フォスフェート、ホスホネート、ホスホロチオエート、スルホネート、ジスルフィド、アセタール、ケタール、イミン、ヒドラゾン、またはオキシムのような官能基を含むことができる。他のリンカーおよび官能基も好適である。
【0082】
1つの実施形態では、カチオン性脂質はラセミ混合物である。別の実施形態では、カチオン性脂質では、1つのジアステレオマーが多くなっている。例えば、そのようなカチオン性脂質のジアステレオマー過剰率は、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、または少なくとも70%である。さらに別の実施形態では、カチオン性脂質では、1つの鏡像異性体の方が多くなっている。例えば、そのような脂質の鏡像異性体過剰率は、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、または少なくとも70%である。さらに別の実施形態では、カチオン性脂質はキラル純であり、例えば単一の光学異性体である。さらに別の実施形態では、カチオン性脂質では、1つの光学異性体が多くなっている。
【0083】
二重結合(例えば、炭素−炭素二重結合、または炭素−窒素二重結合)が存在する場合、その二重結合の立体配置で異性(すなわちシス/トランス、またはE/Zの異性)が存在し得る。二重結合の立体配置が化学構造中に示されている場合には、対応する異性体も存在し得ることが分かる。存在する異性体の量は、異性体の相対的安定性、および異性体間の変換に要するエネルギーに応じて変化し得る。したがって、実際上は、単一の立体配置のみに存在する二重結合もあれば、立体配置の非分離性平衡混合物として存在できる二重結合もある(例えば、異性体の相対的安定性が同程度であり、変換のエネルギーが低い場合)。
【0084】
いくつかのケースでは、不飽和二重結合は、不飽和環に置き換えることができる。この不飽和環は、不飽和脂環、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、またはシクロオクチル基であることができる。いくつかのケースでは、この環状基は、多環式基、例えば、二環式基または三環式基であることができる。二環式基は、架橋環であることも、縮合環であることも、スピロ構造を有することもできる。
【0085】
いくつかのケースでは、二重結合部分は、シクロプロピル部分に置き換えることができ、例えば、
【化38】
に置換できる。例えば、下記の部分は、2つの炭素−炭素二重結合を有し、そのそれぞれは独立して、環状部分、例えばシクロプロピル部分に置き換えることができる。したがって、
【化39】
に換わるものとしては、
【化40】
を挙げることができる。
【0086】
さらなる例として、
【化41】
に換わるものとしては、
【化42】
を挙げることができる。
【0087】
さらなる例として、
【化43】
に換わるものとしては、
【化44】
を挙げることができる。
【0088】
さらなる例として、
【化45】
に換わるものとしては、
【化46】
を挙げることができる。
【0089】
カチオン性脂質は1つ以上の生分解性基を含む。この生分解性基は、生物環境内、例えば、生体、器官、組織、細胞、または細胞小器官内で結合破壊反応を起こすことのできる1つ以上の結合を含む。生分解性結合を含む官能基としては、例えば、エステル、ジチオール、およびオキシムが挙げられる。生分解は、被検体に投与したときに、身体からの化合物の浄化に影響を及ぼす要因であり得る。生分解は、細胞ベースのアッセイで測定でき、このアッセイでは、カチオン性脂質を含む調合物を細胞に暴露させ、さまざまな時点でサンプルを採る。その脂質分画を上記の細胞から抽出し、分離して、LC−MSによって解析できる。LC−MSデータから、生分解の速度(例えばt
1/2の値として)を測定できる。
【0090】
例えば、下記の化合物
【化47】
は、各脂肪族鎖中にエステル結合を含み、生物環境内で、例えば、リパーゼまたはエステラーゼに例えば暴露されると、加水分解を起こし得る。上記の化合物の構造は、当然ながら、その化合物が生分解を起こす速度に影響を及ぼす。したがって、
【化48】
のような関連の化合物は、異なる生分解速度を示すと思われる。加水分解部位で上記の化合物の構造を変化させるほど、生分解速度への影響は大きくなると思われる。加水分解速度に影響を及ぼすことができるとともに、それによって、生分解速度と、被検体の身体からの浄化速度に影響を及ぼすことのできる修飾法の1つは、加水分解反応の脱離基が、二級アルコールではなく一級アルコールを有するようにすることである。
【0091】
例えば、理論に束縛されるものではないが、上記の化合物1および2は、
図2に示されているように、代謝され得る。
【0092】
1つの実施形態では、本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれかのカチオン性脂質のインビボ半減期(t
1/2)(例えば肝臓中、脾臓中、または血漿中)は、約3時間未満(約2.5時間未満、約2時間未満、約1.5時間未満、約1時間未満、約0.5時間未満、または約0.25時間未満など)である。
【0093】
別の実施形態では、本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれかのカチオン性脂質であって、生分解性基(1つまたは複数)を含むカチオン性脂質のインビボ半減期(t
1/2)(例えば肝臓中、脾臓中、または血漿中)は、生分解性基(1つまたは複数)を含まない同じカチオン性脂質のインビボ半減期の約10%未満(例えば、約7.5%未満、約5%未満、約2.5%未満)である。
【0094】
いくつかのカチオン性脂質は好都合なことに、頭部基と組み合わせた疎水性基として表すことができる。例えば、下記の化合物
【化49】
は、下記のように、頭部基と疎水性基との組み合わせと考えることができる。
【化50】
【0095】
したがって、いくつかの好適な頭部基としては、下記の表1に示されているものが挙げられる。
【表1】
【0096】
いくつかの好適な疎水性テイル基としては、下記の表2に示されているものが挙げられる。
【表2】
【0097】
別の態様では、本発明は、式I〜XXIIIのいずれかの化合物を調製する方法に関する。好適な例示的合成法は、下記のスキームA〜Gに示されている。下記のスキーム中の可変基は、上記の式I〜XXIII中の同じ位置の可変基と同じである。
【0098】
【化51】
スキームAにおける脂質鎖の長さ、およびリンカーの長さは変更できる。加えて、エステル官能基中のR基、および窒素原子上の置換基は、誘導体化できる。
【0099】
【化52】
スキームBに示されているように、銅を媒介とするカップリングによって、末端官能基Rを有する脂質鎖を含むジ−インが得られ、これを還元して、脂質鎖を含むジ−エンを生成できる。リンカーおよび脂質鎖の長さは変更でき、官能置換基(R、R
1、R
2)は誘導体化できる。
【0100】
【化53】
上記の式中、Rxはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、または置換アリールであり、頭部基は、表1に定義されている。
【0101】
スキームCの頭部基は、本明細書に記載されているいずれの頭部基(例えば表1を参照されたい)であることもできる。
【0106】
本発明のカチオン性脂質の例としては、下記の表3〜13に示されているもの、およびそれらの塩(それらの製薬学的に許容可能な塩を含む)が挙げられる。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0107】
表14
下記の化合物は、本発明によるカチオン性脂質の合成において、中間体として用いてよい。
【表14】
【0108】
1つの実施形態では、本発明のカチオン性脂質は、下記の化合物、およびそれらの塩(それらの製薬学的に許容可能な塩を含む)から選択する。
【化58】
【0109】
カチオン性脂質としては、代替的な脂肪酸基、および、アルキル置換基が異なるジアルキルアミノ基を含む(例えば、N−エチル−N−メチルアミノ−、N−プロピル−N−エチルアミノ−など)その他のジアルキルアミノ基を有するものが挙げられる。R
1およびR
2がいずれも長鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルアルキル基である実施形態では、それらは同じであることも、異なることもできる。一般に、特に、ろ過滅菌の目的で、その複合体の大きさを約0.3マイクロメートル未満にするときには、飽和度の低いアシル鎖を有する脂質(例えばカチオン性脂質)の方が、サイズ調節が容易である。炭素鎖の長さが炭素数10〜20の範囲である、不飽和脂肪酸を含むカチオン性脂質が典型的である。その他の足場を用いて、アミノ基(例えば、カチオン性脂質のアミノ基)と、カチオン性脂質の脂肪酸または脂肪アルキル部分を分離することもできる。好適な足場は当業者に知られている。
【0110】
特定の実施形態では、カチオン性脂質は、少なくとも1つのプロトン化可能または脱プロトン化可能基を有し、その脂質が、生理的pH以下のpH(例えばpH7.4)においては正電荷を有し、第2のpH、好ましくは生理的pH以上のpHにおいては中性であるようになっている。このような脂質もカチオン性脂質と称される。当然ながら、pHに応じてプロトンを付加または除去することが平衡プロセスであること、および、荷電または中性脂質への言及が、主流をなす種の性質を指すとともに、すべての脂質が、荷電または中性形態で存在する必要は必ずしもないことが分かるであろう。脂質は、1つ超のプロトン化可能または脱プロトン化可能基を有することも、双性イオン性であることもできる。
【0111】
特定の実施形態では、プロトン化可能な脂質(すなわちカチオン性脂質)では、プロトン化可能基のpK
aは約4〜約11の範囲である。典型的には、脂質のpK
aは約4〜約7であり、例えば、脂質粒子に組み込んだときには約5〜7(約5.5、および6.8)である。このような脂質は、低pHの調合段階ではカチオン性となる一方で、粒子は概して(完全というわけではない)、pH7.4前後の生理的pHで表面中和されることになる。約4〜7の範囲のpK
aの利点の1つは、脂質粒子の外面に付随する少なくとも一部の核酸が、生理的pHでその静電相互作用を喪失し、単純な透析によって除去されることになり、その結果、その粒子の浄化に対する感受性が大きく低減される点である。脂質粒子内の脂質のpK
aの測定は、例えば、Cullis et al.,(1986)Chem Phys Lipids 40,127−144(参照によりその全体が組み込まれる)に記載されている方法を用いて、蛍光プローブ2−(p−トルイジノ)−6−ナフタレンスルホン酸(TNS)を用いることによって、行うことができる。
【0112】
特定的な実施形態では、脂質は荷電脂質である。本明細書で使用する場合、「荷電脂質」という用語は、1つまたは2つの脂肪酸アシルまたは脂肪酸アルキル鎖と、四級アミノ頭部基とを有する脂質を含むことを意味する。この四級アミンは、恒久的な正電荷を有する。上記の頭部基は任意で、生理的pHでプロトン化できる一級、二級、または三級アミンのようなイオン化基を含むことができる。四級アミンの存在によって、四級アミンを含まない(例えば、四級アミンが三級アミンに置き換えられている)構造的に類似の化合物中の基のpKaに対し、イオン化基のpKaを変えることができる。いくつかの実施形態では、荷電脂質は、「アミノ脂質」と称されている。例えば、2009年12月7日に提出された米国特許仮出願第61/267,419号(参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい。
【0113】
上で具体的に説明したものに加えて、生理的pH前後で正味の正電荷を有する1つ以上の追加のカチオン性脂質も、本明細書に記載されている脂質粒子および組成物に含めてもよい。このようなカチオン性脂質としては、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」)、N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N−N−トリエチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」)、N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」)、1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパンクロリド塩(「DOTAP.Cl」)、3β−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」)、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(「DOSPA」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)、1,2−ジオレオイル−sn−3−ホスホエタノールアミン(「DOPE」)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(「DODAP」)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」)、およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)が挙げられるが、これらに限らない。加えて、例えばLIPOFECTIN(DOTMAおよびDOPEを含む。GIBCO/BRLから入手可能)、およびLIPOFECTAMINE(DOSPAおよびDOPEを含む。GIBCO/BRLから入手可能)のようなカチオン性脂質の多数の市販の調製物を用いることができる。特定的な実施形態では、カチオン性脂質はアミノ脂質である。
【0114】
中性脂質
本明細書に記載されている脂質粒子および組成物は、1つ以上の中性脂質も含んでもよい。中性脂質は、存在するときには、生理的pHにおいて非荷電または中性双性イオン性形態のいずれかで存在する多数の脂質種のうちのいずれであることができる。このような脂質としては例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ケファリン、およびセレブロシドが挙げられる。本明細書に記載されている粒子中で用いる中性脂質の選択は一般に、例えばリポソームのサイズ、および血流中におけるリポソームの安定性を検討することによって導き出す。好ましくは、中性脂質構成成分は、2つのアシル基を有する脂質(すなわち、ジアシルホスファチジルコリン、およびジアシルホスファチジルエタノールアミン)である。さまざまな鎖長および飽和度のさまざまなアシル鎖基を有する脂質は入手可能であり、あるいは、周知の技法によって単離または合成してよい。1つの実施形態群では、炭素鎖長が炭素数10〜20の範囲である飽和脂肪酸を含む脂質が好ましい。別の実施形態群では、炭素鎖長が炭素数10〜20の範囲であるモノまたはジ不飽和脂肪酸を有する脂質を用いる。加えて、飽和脂肪酸鎖と不飽和脂肪酸鎖との混合物を有する脂質を用いることができる。好ましくは、用いる中性脂質は、DOPE、DSPC、POPC、DPPC、またはいずれかの関連するホスファチジルコリンである。これらの中性脂質は、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、または、セリンおよびイノシトールのような他の頭部基を有するリン脂質から構成されていてもよい。
【0115】
凝集を低減できる脂質
本明細書に記載されている脂質粒子および組成物は、凝集を低減できる脂質も1つ以上含んでよい。形成中に粒子の凝集を低減する脂質の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質、モノシアロガングリオシドGm1、およびポリアミドオリゴマー(「PAO」)(米国特許第6,320,017号(参照によりその全体が組み込まれる)に記載されているものなど)が挙げられる。PEG、Gm1、またはATTAのように、非荷電、親水性、立体障害部分を有する他の化合物のうち、調合中に凝集を防ぐ化合物も脂質にカップリングできる。ATTA−脂質は、例えば米国特許第6,320,017号に記載されており、PEG−脂質コンジュゲートは、例えば米国特許第5,820,873号、同第5,534,499号、および同第5,885,613号に記載されており、これらの特許のそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる。典型的には、凝集を低減する目的で選択する脂質構成成分の濃度は、約1〜15%(脂質のモルパーセント)である。
【0116】
PEG部分を脂質ベシクルの表面に固定するさまざまな「アンカリング」脂質部分を有することができるPEG修飾脂質(または脂質−ポリオキシエチレンコンジュゲート)の具体例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸、米国特許第5,820,873号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているPEG−セラミドコンジュゲート(例えば、PEG−CerC14またはPEG−CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、ならびに、PEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミンが挙げられる。特に好ましいのは、PEG修飾ジアシルグリセロールおよびジアルキルグリセロールである。
【0117】
PEGまたはATTAのような立体的に大きい部分を脂質アンカーにコンジュゲートさせる実施形態では、脂質アンカーの選択は、そのコンジュゲートにおける脂質粒子との結合がどのようなタイプのものであるかに左右される。粒子が、おそらく約数日で、循環血液から浄化されるまでは、mPEG(mw2000)−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)は、リポソームと結合したままとなることは周知である。PEG−CerC20のようなその他のコンジュゲートも、同様の滞留能力を有する。しかしながら、PEG−CerC14は、血清に暴露されると、いくつかのアッセイでは60分未満のt
1/2で、調合物外に急速に交換される。米国特許第5,820,873号に示されているように、アシル鎖の長さ、アシル鎖の飽和度、および立体障害頭部基のサイズという少なくとも3つの特徴が、交換速度に影響を及ぼす。これらの特徴の好適な変形形態を有する化合物が有用である場合がある。いくつかの治療用途では、PEG修飾脂質をインビボで核酸−脂質粒子から急速に喪失させること、すなわち、PEG修飾脂質が比較的短い脂質アンカーを有することになるのが好ましい場合がある。別の治療用途では、核酸−脂質粒子が、より長い循環血漿中滞留時間を示すこと、すなわち、PEG修飾脂質が、比較的長い脂質アンカーを有することになるのが好ましい場合がある。
【0118】
なお、凝集を防ぐ化合物は、適正に機能することを目的とする脂質のコンジュゲーションを必ずしも必要としない。溶液中の遊離PEGまたは遊離ATTAが、凝集を防ぐのに十分である場合もある。調合後、粒子が安定である場合、被検体への投与前に、PEGまたはATTAを透析することができる。
【0119】
脂質粒子
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されているカチオン性脂質を1つ以上含む脂質粒子に関する。1つの実施形態では、この脂質粒子は、式I〜XXIIIの1つ以上の化合物を含む。別の実施形態では、脂質粒子は、式II〜XXIIIの1つ以上の化合物を含む。別の実施形態では、脂質粒子は、式Iの1つ以上の化合物を含む。別の実施形態では、脂質粒子は、式IA−1、IA−2、IB、IC、ID、またはIEの化合物を含む。
【0120】
脂質粒子としてはリポソームが挙げられるが、これらに限らない。本明細書で使用する場合、リポソームは、水性の内部を取り囲む脂質含有膜を有する構造体である。リポソームは1つ以上の脂質膜を有してよい。リポソームは、一層であることも(単層リポソームと称される)、多層であることも(多重膜リポソームと称される)できる。核酸と複合するときには、脂質粒子はリポプレックスであってよく、このリポプレックスは、DNA層の間に挟まれたカチオン性脂質二重層から構成されている。
【0121】
上記の脂質粒子は、1つ以上の追加の脂質、および/またはコレステロールのようなその他の構成要素をさらに含んでもよい。その他の脂質は、脂質の酸化を防ぐ目的、またはリガンドをリポソーム表面に結合させる目的のようなさまざまな目的で、リポソーム組成物に含めてよい。両親媒性、中性、カチオン性、およびアニオン性脂質を含め、多数の脂質のうちのいずれも、リポソームに存在してよい。このような脂質は単独で用いることも、組み合わせて用いることもできる。
【0122】
脂質粒子に存在してもよい追加の構成成分としては、ポリアミドオリゴマー(例えば米国特許第6,320,017号(参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい)、ペプチド、タンパク、洗浄剤、脂質−誘導体(ホスファチジルエタノールアミンにカップリングしているPEG、およびセラミドにコンジュゲートしているPEGなど)のような二層安定化構成成分(米国特許第5,885,613号(参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい)が挙げられる。
【0123】
1つの実施形態では、脂質粒子は、第2のアミノ脂質またはカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、および、形成中に脂質粒子の凝集を低減する目的で選択した脂質のうちの1つ以上を含む。形成中における脂質粒子の凝集の低減は、形成中に電荷によって誘発される凝集を防ぐ粒子の立体安定化によってもたらすことができる。
【0124】
脂質粒子は2つ以上のカチオン性脂質を含むことができる。これらの脂質は、異なる有益な特性を付与する目的で選択することができる。例えば、アミンpK
a、化学的安定性、循環血液における半減期、組織における半減期、組織内への正味蓄積量、または毒性のような特性が異なるカチオン性脂質を脂質粒子中で用いることができる。具体的には、混合脂質粒子の特性が、個々の脂質のうちの単一の脂質粒子の特性よりも望ましくなるように、カチオン性脂質を選択することができる。
【0125】
カチオン性脂質の正味組織蓄積量、および長期毒性(存在する場合)は、所定の調合物において単一のカチオン性脂質を選択する代わりに、カチオン性脂質の混合物を選択することによって、好都合な形で調節できる。このような混合物は、薬物の封入および/または放出の改善も提供することができる。カチオン性脂質の組み合わせは、調合物中の単一のカチオン性脂質と比べると、全身的安定性に影響を及ぼし得る。
【0126】
1つの例では、構造的に類似する一連の化合物は、例えば1pK
a未満の単位、1〜2pK
aの単位の範囲、または2pK
aを超える単位の範囲に及ぶさまざまなpK
a値を有し得る。その群の中では、その範囲の中間のpK
aは、その範囲の終端の方のpK
a値を有する化合物との比較における、有益な特性の増強(効率の向上)、または不利益な特性の低減(例えば毒性の低下)と関係があることが明らかになる場合もある。このようなケースでは、脂質粒子中で併せて用いるものとして、その範囲の上限および下限の方のpK
a値を有する2つ(または2つ超)の異なる化合物を選択することができる。このようにして、脂質粒子の正味の特性(例えば、局所pHの関数としての電荷)は、pK
a値範囲の中央の単一の脂質を含む粒子の特性により近づけることができる。構造的に異なるカチオン性脂質(例えば、上記の構造的に類似する一連の化合物の一部ではないもの)も混合脂質粒子中で用いることができる。
【0127】
いくつかのケースでは、2つ以上の異なるカチオン性脂質は、大きく異なるpK
a値、例えば3以上のpK
a単位分異なる値を有してよい。このケースでは、混合脂質粒子の正味の挙動は、中間のpK
aを有する単一の脂質粒子の挙動に必ずしも似ることにはならない。むしろ、正味の挙動は、pK
a値の異なる2つの別個のプロトン化可能(または、場合の応じて脱プロトン化可能)部位を有する粒子の挙動となる場合がある。単一の脂質のケースでは、pHがpK
a未満からpK
a超に動くのに応じて、実際にプロトン化されるプロトン化可能部位の部分は、大幅に変化する(pHがpK
a値に等しいときには、プロトン化可能部位の50%がプロトン化される)。2つ以上の異なるカチオン性脂質が、大幅に異なるpK
a値を有し得る(例えば3以上のpK
a単位分異なる)とともに、脂質粒子中で組み合わされているときには、その脂質粒子は、pHが変化するのに応じて、非プロトン化状態からプロトン化状態への、よりなだらかな遷移を見せることができる。
【0128】
別の例では、他の検討事項に基づき、2つ以上の脂質を選択してよい。例えば、1つの脂質自体が極めて有効であるが、中程度の毒性である場合、その脂質よりも有効性は低いが、毒性も弱い脂質と組み合わせてよい。いくつかのケースでは、この組み合わせは、中程度の有効性しか有さず、毒性の低減もほんのわずかであると予測される場合でも、高い有効性を保つが、毒性が大きく低減されることもある。
【0129】
この選択は、実験によって割り出すことのできる特徴、例えば、実験結果から数値を割り当てることのできる特徴の測定値によって導き出すことができる。実験によって割り出すことのできる特徴としては、安全性の測定値、効能の測定値、所定の生分子との相互作用の測定、またはpK
aを挙げることができる。
【0130】
安全性の測定値としては、残存率、LD
50、または、組織損傷(例えば肝臓の肝臓酵素、筋肉のCPK、腎臓のイオンバランス)と関連するバイオマーカー(血清バイオマーカーなど)のレベルを挙げてよい。効能の測定値は、治療剤が効果をもたらしているか、特には、治療剤が所望の効果をもたらしているか、および/または、治療剤がどの程度、所望の効果をもたらしているか、例えば、疾患、障害、またはその他の病態を治療、予防、改善、またはその他の形で好転させているかを示すいずれかの測定値であることができる。効能の測定値は、間接的な測定値であることができ、例えば、治療剤が、細胞レベルで特定の効果をもたらすように意図されている場合、細胞培養物に対するその効果の測定値が、効能の測定値であることができる。所定の生分子との相互作用の測定値としては、特定のタンパクへの結合のK
d、または、その特徴の測定値、細胞膜、エンドソーム膜、核膜などの細胞サブ構造体を含む他の脂質との相互作用の度合いまたは程度などを挙げることができる。
【0131】
カチオン性脂質は、作用機構、例えば、どのような状況下で、またはどの程度まで、その脂質が所定の生分子と相互作用するかに基づき選択することができる。例えば、第1のカチオン性脂質は、部分的には、ApoEに依存する機構と関連するという理由から選択することができ、第2のカチオン性脂質は、部分的には、ApoEと独立した機構と関連するという理由から選択することができる。
【0132】
例えば、脂質粒子は、例えば国際公開第2009/086558号、および2008年10月9日に提出された米国特許仮出願第61/104,219号(これらの特許のそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる)に記載されているカチオン性脂質とそれらのエステルアナログの混合物も含むことができる。別の例では、脂質粒子は、脂質、例えば、2010年1月29日に提出されたPCT/US10/22614号に記載されている脂質A、および、2009年5月5日に提出された米国特許仮出願第61/175,770号に記載されている脂質、例えば式Vまたは式VIの脂質の混合物を含むことができる。
【0133】
特定の実施形態では、ある細胞型または組織に特異的な標的化部分を用いて、上記の脂質粒子を標的にするのが望ましい。リガンド、細胞表面受容体、糖タンパク、ビタミン(例えばリボフラビン)、およびモノクローナル抗体のようなさまざまな標的化部分を用いて、脂質粒子を標的にすることは、既に説明されてきている(例えば米国特許第4,957,773号、および同第4,603,044号(これらの特許のそれぞはれ、参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい)。この標的化部分は、タンパク全体またはその断片を含むことができる。標的化機構では一般に、標的部分が、標的、例えば細胞表面受容体との相互作用で利用可能であるような形で、脂質粒子の表面上に標的化作用物質を配置する必要がある。例えばSapra,P.and Allen,TM、Prog.Lipid Res.42(5):439−62(2003)、およびAbra,RM et al.,J.Liposome Res.12:1−3,(2002)に記載されているものを含め、多種多様な標的化作用物質および方法が当該技術分野において知られているとともに、利用可能である。
【0134】
ポリエチレングリコール(PEG)鎖のような親水性ポリマー鎖の表面コーティングを有する脂質粒子、すなわちリポソームを標的化で用いることが提案されている(Allen,et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1237:99−108(1995)、DeFrees,et al.,Journal of the American Chemistry Society 118:6101−6104(1996)、Blume,et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1149:180−184(1993)、Klibanov,et al.,Journal of Liposome Research 2:321−334(1992)、米国特許第5,013556号、Zalipsky,Bioconjugate Chemistry 4:296−299(1993)、Zalipsky,FEBS Letters 353:71−74(1994)、Zalipsky,in Stealth Liposomes Chapter 9(Lasic and Martin,Eds)CRC Press,Boca Raton Fl(1995))。1つのアプローチでは、脂質粒子を標的とする、抗体のようなリガンドは、脂質粒子を形成する、脂質の極性頭部基に結合させる。別のアプローチでは、標的化リガンドは、親水性ポリマーコーティングを形成するPEG鎖の遠位端に結合させる(Klibanov,et al.,Journal of Liposome Research 2:321−334(1992)、Kirpotin et al.,FEBS Letters 388:115−118(1996))。
【0135】
標的作用物質をカップリングする標準的な方法を用いることができる。例えば、標的作用物質の結合のために活性化できるホスファチジルエタノールアミン、または、脂質−誘導体化ブレオマイシンのような誘導体化脂肪親和性化合物を用いることができる。抗体標的リポソームは、例えば、プロテインAを組み込むリポソームを用いて構築できる(Renneisen,et al.,J.Bio.Chem.,265:16337−16342(1990)、およびLeonetti,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),87:2448−2451(1990)を参照されたい)。抗体コンジュゲーションのその他の例は、米国特許第6,027,726号に開示されており、その教示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。標的化部分の例としては、新生物または腫瘍と関連する抗原を含め、細胞構成成分に特異的なその他のタンパクも挙げることができる。標的化部分として用いるタンパクは、共有結合を介してリポソームに結合させることができる(Heath,Covalent Attachment of Proteins to Liposomes,149 Methods in Enzymology 111−119(Academic Press,Inc.1987)を参照されたい)。その他の標的化法としては、ビオチン−アビジン系が挙げられる。
【0136】
いくつかの実施形態では、脂質粒子は、カチオン性脂質と融合促進脂質との混合物を含む。脂質粒子は、中性脂質、ステロール、PEG修飾脂質、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。例えば、脂質粒子は、カチオン性脂質、融合促進脂質(例えばDPPC)、および中性脂質を含むが、ステロール、またはPEG修飾脂質を含まないことができる。脂質粒子は、カチオン性脂質、融合促進脂質、および中性脂質を含むが、ステロールまたはPEG修飾脂質を含まないことができる。脂質粒子は、カチオン性脂質、融合促進脂質、およびPEG修飾脂質を含むが、ステロールまたは中性脂質を含まないことができる。脂質粒子は、カチオン性脂質、融合促進脂質、ステロール、および中性脂質を含むが、PEG修飾脂質を含まないことができる。脂質粒子は、カチオン性脂質、融合促進脂質、ステロール、およびPEG修飾脂質を含むが、中性脂質を含まないことができる。脂質粒子は、カチオン性脂質、融合促進脂質、中性脂質、およびPEG修飾脂質を含むが、ステロールを含まないことができる。脂質粒子は、カチオン性脂質、融合促進脂質、ステロール、中性脂質、およびPEG修飾脂質を含むことができる。
【0137】
1つの例示的な実施形態では、脂質粒子は、カチオン性脂質と、融合促進脂質と、中性脂質(カチオン性脂質以外)と、ステロール(例えばコレステロール)と、PEG修飾脂質(例えばPEG−DMGまたはPEG−DMA)との混合物を含む。特定の実施形態では、脂質混合物は、カチオン性脂質、融合促進脂質、中性脂質、コレステロール、およびPEG修飾脂質からなるか、本質的にこれらからなる。さらに好ましい実施形態では、脂質粒子は、約20〜70%のカチオン性脂質:0.1〜50%の融合促進脂質:5〜45%の中性脂質:20〜55%のコレステロール:0.5〜15%のPEG修飾脂質というモル比の上記脂質混合物を含む。いくつかの実施形態では、融合促進脂質は、0.1〜50%、0.5〜50%、1〜50%、5%〜45%、10%〜40%、または15%〜35%のモル比で存在することができる。いくつかの実施形態では、融合促進脂質は、0.1〜50%、0.5〜50%、1〜50%、5%〜45%、10%〜40%、または15%〜35%のモル比で存在することができる。いくつかの実施形態では、融合促進脂質は、0.1〜50%、10〜50%、20〜50%、または30〜50%のモル比で存在することができる。いくつかの実施形態では、融合促進脂質は、0.1〜50%、0.5〜45%、1〜40%、1%〜35%、1%〜30%、または1%〜20%のモル比で存在することができる。
【0138】
さらに好ましい実施形態では、本発明の脂質粒子は、約20〜70%のカチオン性脂質:0.1〜50%の融合促進脂質:5〜45%の中性脂質:20〜55%のコレステロール:0.5〜15%のPEG修飾脂質というモル比の上記脂質混合物からなるか、このような脂質混合物から本質的になる。
【0139】
特定的な実施形態では、脂質モル比(単位:モル%、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGまたはPEG−DMA)は、約40/10/40/10、35/15/40/10、または52/13/30/5であり、この混合物は、0.1〜50%、0.1〜50%、0.5〜50%、1〜50%、5%〜45%、10%〜40%、または15%〜35%のモル比の融合促進脂質とさらに組み合わされており、換言すると、脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGまたはPEG−DMAが40/10/40/10の混合物は、50%のモル比の融合促進ペプチドと組み合わされており、得られた脂質粒子の総モル比(単位:モル%、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGまたはPEG−DMA/融合促進ペプチド)は20/5/20/5/50であることができる。別の実施形態群では、これらの組成物中の中性脂質DSPCは、POPC、DPPC、DOPE、またはSMに置き換えられている。
【0140】
本明細書に記載されている脂質粒子は、1つ以上の治療剤をさらに含んでもよい。したがって、脂質粒子および活性剤を含む組成物であって、その活性剤が脂質粒子と結合している組成物を提供する。特定的な実施形態では、この活性剤が治療剤である。特定的な実施形態では、この活性剤は、脂質粒子の水性の内部に封入されている。別の実施形態では、上記の活性剤は、脂質粒子の1つ以上の脂質層内に存在する。別の実施形態では、活性剤は、脂質粒子の外側または内側の脂質表面に結合している。
【0141】
本明細書で使用する場合、「完全封入」とは、遊離核酸を有意に分解するものである血清またはヌクレアーゼアッセイへの暴露後に、その粒子中の核酸が有意には分解されないことを示す。完全封入系では、遊離核酸の100%を通常分解するものである処理において、好ましくは25%未満の粒子核酸が分解され、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の粒子核酸が分解される。あるいは、完全封入は、Oligreen(登録商標)アッセイによって判断してもよい。Oligreen(登録商標)は、溶液中のオリゴヌクレオチドおよび一本鎖DNAを定量するための超高感度蛍光核酸染色法である(カリフォルニア州カールズバッドのInvitrogen Corporationから入手可能)。完全封入は、粒子が血清安定性を有すること、すなわち、インビボ投与しても、粒子が急速には、その粒子の構成成分部分に分解しないことも暗に示す。
【0142】
1つの実施形態では、脂質粒子は、本発明のカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、およびPEG修飾脂質を含む。1つの実施形態では、脂質粒子はカチオン性脂質をモルベースで約25%〜約75%、例えば、モルベースで約35〜約65%、約45〜約65%、約60%、約57.5%、約57.1%、約50%、または約40%含む。1つの実施形態では、脂質粒子は中性脂質をモルベースで約0%〜約15%、例えば、モルベースで約3〜約12%、約5〜約10%、約15%、約10%、約7.5%、約7.1%、または約0%含む。1つの実施形態では、中性脂質はDPPCである。1つの実施形態では、中性脂質はDSPCである。
【0143】
1つの実施形態では、調合物は、ステロールをモルベースで約5%〜約50%、例えば、モルベースで約15〜約45%、約20〜約40%、約48%、約40%、約38.5%、約35%、約34.4%、約31.5%、または約31%含む。1つの実施形態では、ステロールはコレステロールである。
【0144】
1つの実施形態では、脂質粒子は、PEG修飾脂質をモルベースで約0.1%〜約20%、例えば、モルベースで約0.5〜約10%、約0.5〜約5%、約10%、約5%、約3.5%、約1.5%、約0.5%、または約0.3%含む。1つの実施形態では、PEG修飾脂質はPEG−DMGである。1つの実施形態では、PEG修飾脂質はPEG−c−DMAである。1つの実施形態では、本発明の脂質粒子は、モルベースで25〜75%のカチオン性脂質、0.5〜15%の中性脂質、5〜50%のステロール、および0.5〜20%のPEG修飾脂質を含む。
【0145】
1つの実施形態では、本発明の脂質粒子は、モルベースで35〜65%のカチオン性脂質、3〜12%の中性脂質、15〜45%のステロール、および0.5〜10%のPEG修飾脂質を含む。
【0146】
1つの実施形態では、本発明の脂質粒子は、モルベースで45〜65%のカチオン性脂質、5〜10%の中性脂質、25〜40%のステロール、および0.5〜5%のPEG修飾脂質を含む。1つの実施形態では、PEG修飾脂質は、平均分子量2,000DaのPEG分子を含む。1つの実施形態では、PEG修飾脂質はPEG−ジスチリルグリセロール(PEG−DSG)である。
【0147】
1つの実施形態では、脂質:siRNA比は少なくとも約0.5:1、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約11:1、または少なくとも約33:1である。1つの実施形態では、脂質:siRNA比は約1:1〜約35:1、約3:1〜約15:1、約4:1〜約15:1、または約5:1〜約13:1である。1つの実施形態では、脂質:siRNA比は約0.5:1〜約12:1である。
【0148】
1つの実施形態では、本発明の脂質粒子はナノ粒子である。追加の実施形態では、本発明の脂質粒子の平均径サイズは約50nm〜約300nm(約50nm〜約250nm、例えば約50nm〜約200nmなど)である。
【0149】
1つの実施形態では、本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれかのカチオン性脂質を含む脂質粒子のインビボ半減期(t
1/2)(例えば肝臓中、脾臓中、または血漿中の半減期)は、約3時間未満(約2.5時間未満、約2時間未満、約1.5時間未満、約1時間未満、約0.5時間未満、または約0.25時間未満など)である。
【0150】
別の実施形態では、本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれかのカチオン性脂質を含む脂質粒子のインビボ半減期(t
1/2)(例えば肝臓中、脾臓中、または血漿中の半減期)は、生分解性基(1つまたは複数)を含まない同じカチオン性脂質のインビボ半減期の約10%未満(例えば約7.5%未満、約5%未満、約2.5%未満)である。
【0151】
追加の構成成分
本明細書に記載されている脂質粒子および組成物は、アポリポタンパクをさらに含むことができる。本明細書で使用する場合、「アポリポタンパク」または「リポタンパク」という用語は、当業者に知られているアポリポタンパク、ならびに、それらの変異体およびそれらの断片と、下記のアポリポタンパクアゴニスト、そのアナログまたは断片を指す。
【0152】
好適なアポリポタンパクとしては、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、ApoA−V、およびApoE、ならびに、それらの活性多型、アイソフォーム、変異体、突然変異体、および、断片またはトランケート型が挙げられるが、これらに限らない。特定の実施形態では、アポリポタンパクは、チオール含有アポリポタンパクである。「チオール含有アポリポタンパク」とは、少なくとも1つのシステイン残基を含むアポリポタンパク、変異体、断片、またはアイソフォームを指す。最も一般的なチオール含有アポリポタンパクは、1つのシステイン残基を含むApoA−I Milano(ApoA−I
M)およびApoA−I Paris(ApoA−I
P)である(Jia et al.,2002,Biochem.Biopyhs.Res.Comm.297:206−13、Bielicki and Oda,2002,Biochemistry 41:2089−96)。ApoA−II、ApoE2、およびApoE3もチオール含有アポリポタンパクである。単離ApoE、ならびに/または、その活性断片およびポリペプチドアナログは、その、組み換え技術によって作製した形態を含め、米国特許第5,672,685号、同第5,525,472号、同第5,473,039号、同第5,182,364号、同第5,177,189号、同第5,168,045号、同第5,116,739号(これらの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ApoE3は、Weisgraber,et al.,“Human E apoprotein heterogeneity:cysteine−arginine interchanges in the amino acid sequence of the apo−E isoforms,”J.Biol.Chem.(1981)256:9077−9083、およびRall,et al.,“Structural basis for receptor binding heterogeneity of apolipoprotein E from type III hyperlipoproteinemic subjects,”Proc.Nat.Acad.Sci.(1982)79:4696−4700に開示されている。GenBank受託番号K00396も参照されたい。
【0153】
特定の実施形態では、アポリポタンパクは、その成熟型、そのプレプロアポリポタンパク形態、またはそのプロアポリポタンパク形態であることができる。前駆物質および成熟形態のApoA−I(Duerger et al.,1996,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.16(12):1424−29)、ApoA−I Milano(Klon et al.,2000,Biophys.J.79:(3)1679−87、Franceschini et al.,1985,J.Biol.Chem.260:1632−35)、ApoA−I Paris(Daum et al.,1999,J.Mol.Med.77:614−22)、ApoA−II(Shelness et al.,1985,J.Biol.Chem.260(14):8637−46、Shelness et al.,1984,J.Biol.Chem.259(15):9929−35)、ApoA−IV(Duverger et al.,1991,Euro.J.Biochem.201(2):373−83)、およびApoE(McLean et al.,1983,J.Biol.Chem.258(14):8993−9000)のホモおよびヘテロダイマー(実現可能な場合)も用いることができる。
【0154】
特定の実施形態では、アポリポタンパクは、そのアポリポタンパクの断片、変異体、またはアイソフォームであることができる。「断片」という用語は、天然アポリポタンパクのアミノ酸配列よりも短いアミノ酸配列を有するとともに、その断片が、天然アポリポタンパクの活性(脂質結合特性を含む)を保持するいずれかのアポリポタンパクを指す。「変異体」とは、そのアポリポタンパクのアミノ酸配列を置換または変更したものであって、その置換または変更、例えばアミノ酸残基の付加および欠失によって、天然アポリポタンパクの活性(脂質結合特性を含む)が失われないものを意味する。したがって、変異体は、本明細書に示されている天然アポリポタンパクと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパクまたはペプチドであって、1つ以上のアミノ酸残基が化学的に類似のアミノ酸で保存的に置換されたタンパクまたはペプチドを含むことができる。保存的置換の例としては、少なくとも1つの疎水性残基(イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンなど)を別の疎水性残基に置換することが挙げられる。同様に、例えば少なくとも1つ親水性残基の置換、例えば、アルギニンおよびリシン間の置換、グルタミンおよびアスパラギン間の置換、ならびに、グリシンおよびセリン間の置換(米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号、および同第6,046,166号を参照されたい)などが保存的置換である。「アイソフォーム」という用語は、同じ機能、より高い機能、または部分的な機能と、類似の配列、同一の配列、または部分的な配列とを有するタンパクを指し、同じ遺伝子の産物であってもなくてもよく、通常は組織特異的である(Weisgraber 1990,J.Lipid Res.31(8):1503−11、Hixson and Powers 1991,J.Lipid Res.32(9):1529−35、Lackner et al.,1985,J.Biol.Chem.260(2):703−6、Hoeg et al.,1986,J.Biol.Chem.261(9):3911−4、Gordon et al.,1984,J.Biol.Chem.259(1):468−74、Powell et al.,1987,Cell 50(6):831−40、Aviram et al.,1998,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.18(10):1617−24、Aviram et al.,1998,J.Clin.Invest.101(8):1581−90、Billecke et al.,2000,Drug Metab.Dispos.28(11):1335−42、Draganov et al.,2000,J.Biol.Chem.275(43):33435−42、Steinmetz and Utermann 1985,J.Biol.Chem.260(4):2258−64、Widler et al.,1980,J.Biol.Chem.255(21):10464−71、Dyer et al.,1995,J.Lipid Res.36(1):80−8、Sacre et al.,2003,FEBS Lett.540(1−3):181−7、Weers,et al.,2003,Biophys.Chem.100(1−3):481−92、Gong et al.,2002,J.Biol.Chem.277(33):29919−26、Ohta et al.,1984,J.Biol.Chem.259(23):14888−93、および米国特許第6,372,886号を参照されたい)。
【0155】
特定の実施形態では、本明細書に記載されている脂質粒子および組成物は、アポリポタンパクのキメラ構造を含む。例えば、アポリポタンパクのキメラ構造は、虚血再灌流保護特性を有するアポリポタンパクドメインと結合している脂質結合能力の高いアポリポタンパクドメインからなることができる。アポリポタンパクのキメラ構造は、1つのアポリポタンパク中に別個の領域を含む構造(すなわち同種構造)であることができ、あるいは、キメラ構造は、異なるアポリポタンパク間の別個の領域を含む構造(すなわち異種構造)であることができる。キメラ構造を含む組成物は、アポリポタンパク変異体であるセグメント、または、特有の特徴(例えば、脂質結合特性、受容体結合特性、酵素特性、酵素活性化特性、抗酸化特性、または酸化還元特性)を有するように設計したセグメントも含むことができる(Weisgraber 1990,J.Lipid Res.31(8):1503−11、Hixson and Powers 1991,J.Lipid Res.32(9):1529−35、Lackner et al.,1985,J.Biol.Chem.260(2):703−6、Hoeg et al,1986,J.Biol.Chem.261(9):3911−4、Gordon et al.,1984,J.Biol.Chem.259(1):468−74、Powell et al.,1987,Cell 50(6):831−40、Aviram et al.,1998,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.18(10):1617−24、Aviram et al.,1998,J.Clin.Invest.101(8):1581−90、Billecke et al.,2000,Drug Metab.Dispos.28(11):1335−42、Draganov et al.,2000,J.Biol.Chem.275(43):33435−42、Steinmetz and Utermann 1985,J.Biol.Chem.260(4):2258−64、Widler et al.,1980,J.Biol.Chem.255(21):10464−71、Dyer et al.,1995,J.Lipid Res.36(1):80−8、Sorenson et al.,1999,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.19(9):2214−25、Palgunachari 1996,Arterioscler.Throb.Vasc.Biol.16(2):328−38、Thurberg et al.,J.Biol.Chem.271(11):6062−70、Dyer 1991,J.Biol.Chem.266(23):150009−15、Hill 1998,J.Biol.Chem.273(47):30979−84を参照されたい)。
【0156】
用いるアポリポタンパクは、組み換えアポリポタンパク、合成アポリポタンパク、半合成アポリポタンパク、または精製アポリポタンパクも含む。アポリポタンパクまたはその等価物を得る方法は、当該技術分野において周知である。例えば、アポリポタンパクは、例えば密度勾配遠心または免疫アフィニティークロマトグラフィーによって、血漿または天然産物から分離することも、合成的に作製することも、半合成的に作製することも、当業者にとって既知の組み換えDNA技法を用いて作製することもできる(例えば、Mulugeta et al.,1998,J.Chtomatogr.798(1−2):83−90、Chung et al.,1980,J.Lipid Res.21(3):284−91、Cheung et al.,1987,J.Lipid Res.28(8):913−29、Persson,et al.,1998,J.Chromatogr.711:97−109、米国特許第第5,059,528号、同第5,834,596号、同第5,876,968、および同第5,721,114号、ならびに、国際公開第86/04920号、および国際公開第87/02062号を参照されたい)。
【0157】
アポリポタンパクは、ApoA−I、ApoA−I Milano(ApoA−I
M)、ApoA−I Paris(ApoA−I
P)、ApoA−II、ApoA−IV、およびApoEの活性を模倣するペプチドおよびペプチドアナログのようなアポリポタンパクアゴニストをさらに含む。例えば、アポリポタンパクは、米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号、同第6,046,166、および同第5,840,688号(これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているもののいずれであることもできる。
【0158】
アポリポタンパクアゴニストペプチドまたはペプチドアナログは、例えば、米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号、および6,046,166号に記載されている技法を含め、当該技術分野において既知のペプチド合成のためのいずれかの技法を用いて、合成または製造できる。例えば、このようなペプチドは、Merrifieldが初めて説明した固相合成法(1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154)を用いて調製してよい。その他のペプチド合成法は、Bodanszky et al.,Peptide Synthesis,John Wiley & Sons,2d Ed.,(1976)、および当業者には容易に入手可能なその他の文献で見ることができる。ポリペプチド合成法の概要は、Stuart and Young,Solid Phase Peptide.Synthesis, Pierce Chemical Company,Rockford,Ill.,(1984)で見ることができる。ペプチドは、The Proteins,Vol.II,3d Ed.,Neurath et al.,Eds.,p.105−237,Academic Press,New York,N.Y.(1976)に記載されているような溶液法によって合成してもよい。さまざまなペプチド合成で用いるのに適した保護基は、上記の文献とともに、McOmie,Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press,New York,N.Y.(1973)に記載されている。ペプチドは、例えばアポリポタンパクA−Iの大部分から化学的または酵素的に切断することによって調製してもよい。
【0159】
特定の実施形態では、アポリポタンパクは、アポリポタンパクの混合物であることができる。1つの実施形態では、アポリポタンパクは、同種混合物、すなわち、単一種のアポリポタンパクであることができる。別の実施形態では、アポリポタンパクは、アポリポタンパクの異種混合物、すなわち、2つ以上の異なるアポリポタンパクの混合物であることができる。アポリポタンパクの異種混合物の実施形態は、例えば、動物供給源由来のアポリポタンパクと半合成供給源由来のアポリポタンパクとの混合物を含むことができる。特定の実施形態では、異種混合物は、例えば、ApoA−IとApoA−I Milanoとの混合物を含むことができる。特定の実施形態では、異種混合物は例えば、ApoA−I MilanoとApoA−I Parisとの混合物を含むことができる。本明細書に記載されている方法および組成物で用いるのに適した混合物は、当業者には明らかであろう。
【0160】
アポリポタンパクを天然供給源から得る場合には、植物または動物供給源から得ることができる。アポリポタンパクを動物供給源から得る場合には、アポリポタンパクは、いずれの種に由来するものであることもできる。特定の実施形態では、アポリポタンパクは、動物供給源から得ることができる。特定の実施形態では、アポリポタンパクは、ヒト供給源から得ることができる。好ましい実施形態では、アポリポタンパクは、そのアポリポタンパクの投与対象である個体と同じ種に由来する。
【0161】
本明細書に記載されている脂質粒子および組成物は、脂質混合物のステロール構成成分をさらに含んでよい。ステロールは、存在する場合、リポソーム、脂質ベシクル、または脂質粒子の調製の分野で従来用いられてきたステロールのいずれであることもできる。1つの実施形態では、ステロールはコレステロールである。
【0162】
本明細書に記載されている脂質粒子および組成物は、アニオン性脂質をさらに含んでもよい。脂質粒子で用いるのに適したアニオン性脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N−グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、および中性脂質に結合したその他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これらに限らない。
【0163】
追加の実施形態では、両親媒性脂質も、本明細書に記載されている脂質粒子および組成物に含まれている。「両親媒性脂質」とは、その脂質材の疎水性部分が疎水性相の中まで配向しており、親水性部分が水相の方に配向しているいずれかの好適な物質を指す。このような化合物としては、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限らない。代表的なリン脂質としては、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられる。スフィンゴ脂質、グリコスフィンゴ脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ−アシルオキシ酸のようなその他の無リン化合物も用いることができる。加えて、このような両親媒性脂質は、トリグリセリドおよびステロールのようなその他の脂質と容易に混合できる。
【0164】
プログラム可能な融合脂質または融合促進脂質も、本明細書に記載されている脂質粒子および組成物に含めるのに適している。このような脂質粒子は、細胞膜と融合する傾向がほとんどなく、所定のシグナルイベントが生じるまではそのペイロードを送達する。これによって、その脂質粒子は、細胞との融合を始める前に、生体または疾患部位に注入した後、より均一に分配可能となる。上記のシグナルイベントは、例えば、pH、温度、イオン環境、または時間の変化であることができる。融合促進脂質は、例えば、上記のような式(I)の化合物であることができる。いくつかのケースでは、上記のシグナルイベントは、pHの変化、例えば、細胞外環境と細胞内環境との間、または、細胞内環境とエンドソーム環境との間のpH差であることができる。
【0165】
時間がシグナルイベントであるときには、ATTA−脂質コンジュゲートまたはPEG−脂質コンジュゲートのような融合遅延または「隠蔽(cloaking)」構成成分は単に、時間の経過とともに交換されて、脂質粒子膜から出ることができる。脂質粒子が体内で好適に分配されるまでには、融合性となるのに十分な隠蔽作用物質は喪失されている。その他のシグナルイベントにおいては、炎症部位における温度上昇など、疾患部位または標的細胞と関連するシグナルを選択するのが望ましいことがある。
【0166】
活性(治療)剤
本明細書に記載されている脂質粒子および組成物は、1つ以上の活性剤(例えば治療剤)をさらに含んでよい。本明細書で使用する場合、活性剤には、細胞、組織、器官、または被検体に所望の効果を及ぼすことのできるいずれかの分子または化合物が含まれる。このような効果は、例えば、生物学的、生理学的、または美容的効果であってよい。本発明の脂質粒子および組成物を用いて、さまざまな活性剤のいずれかを送達できる。この活性剤は、核酸、ペプチド、ポリペプチド(例えば抗体)、サイトカイン、増殖因子、アポトーシス因子、分化誘発因子、細胞表面受容体およびそのリガンド、ホルモン、ならびに小分子であることができる。好適な治療剤としては、抗炎症化合物、抗うつ薬、興奮薬、鎮痛薬、抗生物質、避妊薬、解熱剤、血管拡張薬、血管新生阻害剤、細胞血管作動薬(cytovascular agents)、シグナル伝達阻害剤、心臓血管薬、例えば、抗不整脈剤、血管収縮薬、ホルモン、およびステロイドも挙げられる。本発明の脂質粒子は、アプタマーを送達することもできる。
【0167】
特定の実施形態では、治療剤はオンコロジー薬であり、このオンコロジー薬は、抗腫瘍薬、抗癌薬、腫瘍薬、抗腫瘍剤などとも称される場合もある。用いてよいオンコロジー薬の例としては、アドリアマイシン、アルケラン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、araC、三酸化ヒ素、アザチオプリン、ベキサロテン、biCNU、ブレオマイシン、静注ブスルファン、経口ブスルファン、カペシタビン(Xeloda)、カルボプラチン、カルムスチン、CCNU、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロスポリンA、シタラビン、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、シトキサン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、デクスラゾキサン、ドデタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン、DTIC、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシドフォスフェート、エトポシドおよびVP−16、エキセメスタン、FK506、フルダラビン、フルオロウラシル、5−FU、ゲムシタビン(Gemzar)、ゲムツズマブ−オゾガミシン、ゴセレリンアセテート、ハイドレア、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブメシレート、インターフェロン、イリノテカン(Camptostar、CPT−111)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイスタチン、ロイプロリド、レバミゾール、アリトレチノイン、メゲストロール、メルファラン、L−PAM、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、プレドニゾン、リツキサン、ストレプトゾシン、STI−571、タモキシフェン、タキソテール、テモゾロミド、テニポシド、VM−26、トポテカン(Hycamtin)、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ベルバン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP16、およびビノレルビンが挙げられるが、これらに限らない。用いてよいオンコロジー薬の他の例は、エリプチシンおよびエリプチシンアナログまたは誘導体、エポチロン、細胞内キナーゼインヒビター、ならびにカンプトテシンである。
【0168】
好ましい実施形態では、活性剤は、siRNAのような核酸である。例えば、活性剤は、目的の産物によってコードされる核酸であることができ、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンタゴmir、aDNA、プラスミド、リボソームRNA(rRNA)、マイクロRNA(miRNA)(例えば、一本鎖であるとともに、17〜25個のヌクレオチドの長さであるmiRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、抗原、その断片、タンパク、ペプチド、ワクチン、および小分子、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限らない。1つのより好ましい実施形態では、核酸はオリゴヌクレオチド(例えば15〜50個のヌクレオチドの長さ(または、15〜30もしくは20〜30個のヌクレオチドの長さ))である。siRNAは、例えば、16〜30個のヌクレオチドの長さである二本鎖領域を有することができる。別の実施形態では、核酸は、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、デコイオリゴヌクレオチド、スーパーmir、miRNA模倣体、またはmiRNAインヒビターである。スーパーmirとは、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)、またはこれらの両方、あるいは、これらの変性体の一本鎖、二本鎖、または部分的に二本鎖のオリゴマーまたはポリマーであって、miRNAと実質的に同一のヌクレオチド配列を有するとともに、その標的に対してアンチセンスであるオリゴマーまたはポリマーを指す。miRNA模倣体は、1つ以上のmiRNAの遺伝子サイレンシング能を模倣する目的で用いることのできる分子群を表す。したがって、「マイクロRNA模倣体」という用語は、RNAi経路に入れるとともに、遺伝子発現を調節することができる合成非コードRNAを指す(すなわち、miRNAは、内在性miRNAの供給源から精製することによっては得られない)。
【0169】
脂質−核酸粒子中に存在する核酸は、いずれの形態であることもできる。この核酸は、例えば、一本鎖DNAもしくはRNA、二本鎖DNAもしくはRNA、または、DNA−RNAハイブリッドであることができる。二本鎖RNAの非限定例としてはsiRNAが挙げられる。一本鎖核酸としては、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、および三本鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。本発明の脂質粒子は、1つ以上のリガンドにコンジュゲートされている核酸を送達することもできる。
【0170】
医薬組成物
脂質粒子は、特に治療剤と結合させるときには、例えば、投与経路および標準的な薬務に従って選択した製薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、または担体(生理的食塩水またはフォスフェート緩衝液など)をさらに含む医薬組成物として調合してよい。
【0171】
特定の実施形態では、siRNA分子の送達のための組成物が説明されている。これらの組成物は、標的タンパクのタンパクレベルおよび/またはmRNAレベルをダウンレギュレートするのに有効である。これらの組成物の活性は、調合物にカチオン性脂質が存在すること、および調合物中のカチオン性脂質のモル比の影響を受け得る。
【0172】
特定的な実施形態では、脂質−核酸粒子を含む医薬組成物は、標準的な技法に従って調製するとともに、製薬学的に許容可能な担体をさらに含む。一般に、生理食塩水が製薬学的に許容可能な担体として採用されることになる。その他の好適な担体としては例えば、水、緩衝水、0.9%食塩水、0.3%グリシンなど(安定性向上のための糖タンパク、例えばアルブミン、リポタンパク、グロブリンなどを含む)が挙げられる。食塩水またはその他の塩含有担体を含む組成物中では、担体は好ましくは、脂質粒子の形成の後に加える。したがって、脂質−核酸組成物を形成した後に、その組成物を生理食塩水のような製薬学的に許容可能な担体で希釈することができる。
【0173】
得られた医薬調製物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌してよい。続いて、その水溶液を使用状態で包装することも、無菌条件下でろ過し、凍結乾燥し、その凍結乾燥した調合物を投与前に滅菌水溶液と組み合わせることもできる。この組成物は、生理的状態に近づけるために、必要に応じて製薬学的に許容可能な補助剤(pH調整剤、緩衝化剤、張度調整剤など、例えば、ナトリウムアセテート、ナトリウムラクテート、ナトリウムクロリド、カリウムクロリド、カルシウムクロリドなど)を含んでもよい。加えて、その脂質懸濁液は、脂質を保管状態におけるフリーラジカルおよび脂質過酸化損傷から保護する脂質保護剤を含んでもよい。α−トコフェロールのような脂肪親和性フリーラジカルクエンチャー、および、フェリオキサミンのような水溶性鉄特異的キレーターが好適である。
【0174】
医薬製剤中の脂質粒子または脂質−核酸粒子の濃度は、非常に様々であることができる。すなわち、約0.01重量%未満、通常は約0.05〜5重量%または少なくとも約0.05〜5重量%から、10〜30重量%ほどであることができ、この濃度は、選択した特定的な投与方法に従って、主に流体体積、粘度などによって選択することになる。例えば、上記の濃度は、処置に伴う流体負荷を下げる目的で上昇させてもよい。これは、アテローム動脈硬化性うっ血性心不全または重症高血圧症の患者の場合、特に望ましい場合がある。あるいは、刺激性脂質から構成される複合体は、投与部位の炎症を低減させる目的で、低濃度まで希釈してもよい。1つの実施形態群では、核酸は、結合させた標識を有することになるとともに、(相補的核酸の存在を示すことによって)診断で用いられることになる。このケースでは、投与する複合体の量は、用いる具体的な標識、診断している病状、および臨床医の判断によって決まることになるが、一般には、体重1キログラム当たり約0.01〜約50mg、好ましくは体重1キログラム当たり約0.1〜約5mgとなる。
【0175】
上記のとおり、脂質−治療剤(例えば核酸)粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)修飾リン脂質、PEG−セラミド、またはガングリオシドG
M1修飾脂質、または、凝集を防ぐか、または抑えるのに有効なその他の脂質を含んでよい。このような構成成分の追加によって、複合体の凝集が防がれるのみではない。それどころか、循環血液中滞留時間を延長させるとともに、脂質−核酸組成物の標的組織への送達を向上させる手段ももたらす場合もある。
【0176】
脂質−治療剤組成物は、キット形態で提供することもできる。このキットは典型的には、そのキットのさまざまな要素を保持するように仕切られている容器から構成されることになる。このキットは、粒子または医薬組成物を好ましくは脱水形態または濃縮形態で、再水和または希釈、および投与についての説明書とともに含むことになる。特定の実施形態では、上記の粒子は活性剤を含む一方で、別の実施形態では、活性剤を含まない。
【0177】
製造法
カチオン性脂質、そのカチオン性脂質を含む脂質粒子、ならびに、そのカチオン性脂質および/または脂質粒子を含む医薬組成物を作製する方法は、例えば国際公開第2010/054406号、国際公開第2010/054401号、国際公開第2010/054405号、および国際公開第2010/054384号、国際公開第2010/042877号、国際公開第2010/129709号、国際公開第2009/086558号、および国際公開第2008/042973号(これらの特許のそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる)に記載されている。
【0178】
脂質粒子、およびその脂質粒子を含む医薬組成物を作製する方法は、例えば、米国特許出願公開第2004/0142025号、同第2006/0051405号、および同第2007/0042031号(これらの特許のそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる)にも記載されている。加えて、治療剤、例えば核酸と結合されている脂質粒子をを含め、脂質粒子を調製する方法も記載されている。本明細書に記載されている方法では、脂質の混合物を核酸の緩衝化水溶液と組み合わせて、脂質粒子中に封入された核酸を含む中間体混合物を作製する。1つの実施形態では、封入された核酸は、核酸/脂質比率約3重量%〜約25重量%、好ましくは5〜15重量%で存在する。その脂質部分が、好ましくは直径30〜150nm、より好ましくは約40〜90nmの単層ベシクルである脂質封入核酸粒子を得る目的で、上記の中間体混合物を任意でサイズ調節してよい。続いてpHを上昇させて、脂質−核酸粒子上の表面電荷の少なくとも一部を中和し、それによって、少なくとも部分的に表面が中和された脂質−封入核酸組成物をもたらす。
【0179】
例えば、1つの実施形態では、1つ以上の脂質(本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれかのカチオン性脂質を含む)を有機溶液(例えばエタノール)に溶解させた溶液を調製する。同様に、1つ以上の活性(治療)剤(例えば1種類のsiRNA分子、または2種類のsiRNA分子の1:1モル混合物など)を水性緩衝化(例えばシトレート緩衝液)溶液に溶解させた溶液を調製する。この2つの溶液を混合し、希釈して、siRNA脂質粒子のコロイド懸濁液を形成させる。1つの実施形態では、上記のsiRNA脂質粒子の平均粒径は約80〜90nmである。さらなる実施形態では、この分散体を0.45/2マイクロメートルのフィルターに通してろ過し、濃縮し、タンジェンシャルフローろ過によってダイアフィルトレーションにかけてもよい。さらなる実施形態では、得られた生成物の濃度を約2mg/mLに調節する。さらなる実施形態では、この生成物を滅菌ろ過し、無菌ろ過し、包装する。上記のとおり、これらのカチオン性脂質のいくつかは、アミノ基のpK
a未満のpHでは帯電しており、アミノ基のpK
aを超えるpHでは実質的に中性であるアミノ脂質である。これらのカチオン性脂質は、滴定可能なカチオン性脂質と称され、2つの工程からなるプロセスを用いて、調合物中で用いることができる。第1に、低いpHで、滴定可能なカチオン性脂質、およびその他のベシクル構成成分によって、核酸の存在下で、脂質ベシクルを形成できる。この方式では、ベシクルが核酸を被包して取り込む。第2に、存在する滴定可能なカチオン性脂質のpK
aを超えるレベルまで、すなわち、生理的pH以上まで培地のpHを上昇させることによって、新たに形成されたベシクルの表面電荷を中和することができる。このプロセスの特に有益な側面としては、いずれの表面吸着した核酸も容易に除去されること、および、中性表面を有する核酸送達ビヒクルが得られることの両方が挙げられる。中性表面を有するリポソームまたは脂質粒子は、循環血液からの急速な浄化を回避するとともに、カチオン性リポソーム調製物と関連する特定の毒性を回避すると思われる。上記のような滴定可能なカチオン性脂質を核酸−脂質粒子の調合で上記のように用いることに関するさらなる詳細は、米国特許第6,287,591号、および米国特許第6,858,225号(参照により本明細書に組み込まれる)に示されている。
【0180】
このようにして形成されるベシクルは、核酸含有量の多い、均一なベシクルサイズの調合物をもたらすこともさらに注目される。加えて、このベシクルのサイズは、約30〜約150nm、より好ましくは約30〜 約90nmの範囲であってよい。
【0181】
いずれの特定の理論に束縛されるものではないが、非常に高い効率の核酸封入は、低pHでの静電相互作用によるものと考えられる。酸性pH(例えばpH4.0)では、ベシクル表面は帯電しており、静電相互作用を通じて核酸の一部を結合させる。外部酸性緩衝液を、より中性の緩衝液(例えばpH7.5)に換えると、脂質粒子またはリポソームの表面が中和され、いずれの外部核酸も除去できるようになる。この調合プロセスに関するより詳細な情報は、さまざまな公報(例えば米国特許第6,287,591号、および米国特許第6,858,225)に示されている。
【0182】
上記に鑑み、脂質/核酸調合物を調製する方法を説明する。本明細書に記載されている方法では、脂質の混合物を核酸の緩衝化水溶液と組み合わせて、脂質粒子中に封入された核酸を含む中間体混合物を作製するが、例えば、その際には、封入された核酸は、核酸/脂質比率約10重量%〜約20重量%で存在する。その脂質部分が、好ましくは直径30〜150nm、より好ましくは約40〜90nmの単層ベシクルである脂質封入核酸粒子を得る目的で、上記の中間体混合物を任意でサイズ調節してよい。続いてpHを上昇させて、脂質−核酸粒子上の表面電荷の少なくとも一部を中和し、それによって、少なくとも部分的に表面が中和された脂質−封入核酸組成物をもたらす。
【0183】
特定の実施形態では、脂質の混合物は、その脂質が、そのpK
aを下回るpHではカチオン性となり、そのpK
aを上回るpHでは中性となるようなpK
aを有する脂質の中から選択する第1の脂質構成成分と、脂質核酸粒子の形成中に粒子の凝集を防ぐ脂質の中から選択する第2の脂質構成成分という少なくとも2つの脂質構成成分を含む。特定的な実施形態では、アミノ脂質はカチオン性脂質である。
【0184】
核酸−脂質粒子を調製する際には、脂質の混合物は典型的には、脂質を有機溶媒に溶解させた溶液である。続いて、この脂質の混合物を乾燥して、薄膜を形成させることも、凍結乾燥して、粉末を形成させてから、水性緩衝液で水和して、リポソームを形成させることもできる。あるいは、好ましい方法では、脂質混合物をエタノールのような水混和性アルコールに可溶化でき、このエタノール溶液を水性緩衝液に加え、その結果、自然発生的にリポソームが形成される。大半の実施形態では、上記のアルコールは、市販されている形状で用いる。例えば、エタノールは、無水エタノール(100%)として、または、95%エタノール(残部は水である)として用いることができる。この方法は、米国特許第5,976,567号で、より詳細に説明されている。)
【0185】
1つの例示的な実施形態では、脂質の混合物は、アルコール溶媒中のカチオン性脂質、中性脂質(カチオン性脂質以外のもの)、ステロール(例えばコレステロール)、およびPEG修飾脂質(例えばPEG−DMGまたはPEG−DMA)の混合物である。好ましい実施形態では、脂質混合物は、アルコール、より好ましくはエタノール中のカチオン性脂質、中性脂質、コレステロール、およびPEG修飾脂質から本質的になる。さらに好ましい実施形態では、第1の溶液は、約20〜70%のカチオン性脂質、5〜45%の中性脂質、20〜55%のコレステロール、0.5〜15%のPEG修飾脂質というモル比の上記の脂質混合物からなる。さらに好ましい実施形態では、第1の溶液は、表1〜5に記載されている脂質から選択したカチオン性脂質、DSPC、コレステロール、およびPEG−DMGまたはPEG−DMAの混合物(より好ましくは、約20〜60%のカチオン性脂質、5〜25%のDSPC、25〜55%のコレステロール、0.5〜15%のPEG−DMGまたはPEG−DMAというモル比)から本質的になる。特定的な実施形態では、脂質のモル比は、おおよそ40/10/40/10(単位:モル%、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGもしくはPEG−DMA)、35/15/40/10(単位:モル%、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGもしくはPEG−DMA)、または52/13/30/5(単位:モル%、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGもしくはPEG−DMA)である。別の好ましい実施形態群では、上記の組成物中の中性脂質は、POPC、DPPC、DOPE、またはSMに置き換えられている。
【0186】
脂質混合物は、核酸を含んでよい緩衝化水溶液と組み合わせる。この緩衝化水溶液は典型的には、緩衝液のpHが、脂質混合物中のプロトン化可能な脂質のpK
a未満である溶液である。好適な緩衝液の例としては、シトレート、フォスフェート、アセテート、およびMESが挙げられる。特に好ましい緩衝液はシトレート緩衝液である。好ましい緩衝液は、封入されている核酸の化学的性質に応じて、アニオンが1〜1000mMの範囲であり、高い負荷レベルを得るには、緩衝液濃度の最適化が重要である場合がある(例えば、米国特許第6,287,591号、および米国特許第6,858,225号(それぞれ、参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい)。あるいは、クロリド、サルフェートなどでpH5〜6に酸性化した純水も有用である場合がある。このケースでは、粒子を透析してエタノールを除去するか、pHを上昇させるか、または生理食塩水のような製薬学的に許容可能な担体と混合すると、粒子膜内外の浸透ポテンシャルを平衡化する5%グルコースまたは別の非イオン性溶質を加えるのが好適である場合がある。緩衝液中の核酸の量はさまざまであることができるが、典型的には約0.01mg/mL〜約200mg/mL、より好ましくは約0.5mg/mL〜約50mg/mLとなる。
【0187】
脂質の混合物と、治療用核酸の緩衝化水溶液を組み合わせて、中間体混合物をもたらす。この中間体混合物は典型的には、封入させた核酸を有する脂質粒子の混合物である。加えて、上記の中間体混合物は、脂質粒子表面上の負荷電核酸と正荷電脂質とのイオン引力によって、脂質粒子(リポソームまたは脂質ベシクル)の表面に結合される核酸の一部も含んでよい(アミノ脂質またはプロトン化可能な第1の脂質構成成分を構成するその他の脂質は、pHが、その脂質上のプロトン化可能基のpK
a未満である緩衝液中で正電荷を有する)。好ましい実施形態群では、脂質の混合物は、脂質のアルコール溶液であり、各溶液を組み合わせたときに、得られるアルコール含有率が約20体積%〜約45体積%になるように、各溶液の体積を調節する。これらの混合物を組み合わせる方法は、多くの場合、作製する調合物の規模に応じて、さまざまなプロセスのいずれかを含むことができる。例えば、総体積が約10〜20mL以下であるときには、溶液を試験管で組み合わせて、ボルテックスミキサーを用いて攪拌することができる。大規模プロセスは、好適な生成規模のガラス器具で行うことができる。
【0188】
任意により、脂質混合物と治療剤(核酸)の緩衝化水溶液を組み合わせることによって作製した脂質−封入治療剤(例えば核酸)複合体をサイズ調節して、所望のサイズ範囲と、比較的狭い脂質粒径分布を得ることができる。好ましくは、本明細書で提供する組成物は、平均径約70〜約200nm、より好ましくは約90〜約130nmにサイズ調節することになる。リポソームを所望のサイズに調節するためのいくつかの技法が利用可能である。1つのサイズ調節法は、米国特許第4,737,323号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。バス超音波処理またはプローブ超音波処理のいずれかによってリポソーム懸濁液を超音波処理すると、約0.05マイクロメートル未満のサイズの小単層ベシクル(SUV)まで徐々にサイズが小さくなる。ホモジナイズは、剪断エネルギーに依存して大きなリポソームを小さなリポソームに断片化する別の方法である。典型的なホモジナイズ手順では、選択されたリポソームサイズ、典型的には約0.1〜0.5マイクロメートルが観察されるまで、多重膜層ベシクルを標準的なエマルジョンホモジナイザーに繰り返し循環させる。いずれの方法においても、従来のレーザービームによる粒径測定法によって、粒径分布をモニタリングできる。本明細書における特定の方法では、押出法を用いて、均一なベシクルサイズを得る。
【0189】
リポソーム組成物を細孔のポリカーボネート膜または非対称セラミック膜に通して押し出すことによって、比較的明確なサイズ分布を得られる。典型的には、所望のリポソーム複合体サイズ分布が得られるまで、懸濁液を膜に1回以上循環させる。リポソームは、徐々に細孔の小さくなる膜に通して押し出して、リポソームサイズを徐々に小さくするようにしてもよい。いくつかのケースでは、形成される脂質−核酸組成物は、いずれのサイズ調節もせずに用いることもできる。
【0190】
特定的な実施形態では、製造法は、脂質−核酸組成物の脂質部分の少なくとも一部の表面電荷を中和する工程をさらに含む。この表面電荷を少なくとも部分的に中和することによって、封入されなかった核酸が脂質粒子表面から遊離され、従来の技法を用いて、その核酸を組成物から除去できる。好ましくは、封入されずに表面吸着した核酸を得られた組成物から、緩衝液溶液の交換を通じて除去する。例えば、シトレート緩衝液(pH約4.0、組成物の形成のために用いる)をHEPES−緩衝化食塩水(HBSのpH約 7.5)溶液に置き換えると、リポソーム表面が中和され、その表面から核酸が放出される。続いて、標準的な方法を用いるクロマトグラフィーによって、放出された核酸を除去してから、用いた脂質のpK
aを超えるpHの緩衝液に換えることができる。
【0191】
任意により、水性緩衝液で水和させて脂質ベシクル(すなわち脂質粒子)を形成し、核酸を加える前に、上記の方法のいずれかを用いて、サイズ調節するができる。上記のとおり、水性緩衝液のpHは、アミノ脂質のpK
a未満である必要がある。続いて、サイズ調節して予形成した上記のベシクルに、核酸の溶液を加えることができる。このような「予形成」ベシクルに核酸を封入させるには、その混合物は、エタノールのようなアルコールを含む必要がある。エタノールのケースでは、エタノールは、約20%(w/w)〜約45%(w/w)の濃度で存在する必要がある。加えて、脂質ベシクルの組成と、核酸の性質に応じて、水性緩衝液−エタノール混合物中の予形成ベシクルと核酸との混合物を約25℃〜約50℃の温度まで加温する必要がある場合もある。脂質ベシクルの核酸のレベルを所望のものにするために、封入プロセスを最適化するには、エタノール濃度および温度のような変数の操作が必要であることは当業者には明らかであろう。核酸の封入に適した条件の例は、実施例に示されている。予形成ベシクルに核酸を封入したら、外部pHを上昇させて、表面電荷を少なくとも部分的に中和することができる。続いて、封入されずに表面吸着した核酸を上記のように除去することができる。
【0192】
治療法
本明細書に記載されている脂質粒子および組成物は、インビトロおよびインビボの両方で、結合または封入させた治療剤を細胞に送達することを含むさまざまな目的で利用してよい。したがって、疾患または障害の治療を必要とする被検体の疾患または障害を治療する方法は、好適な治療剤と結合している脂質粒子と被検体を接触させることを含むことができる。
【0193】
本明細書に記載されているように、脂質粒子は、例えばsiRNA分子およびプラスミドを含む核酸の送達に特に有用である。このため、脂質粒子および組成物を用いて、標的遺伝子の発現を低減する核酸(例えばsiRNA)、または所望のタンパクの発現を増加させる目的で用いることができる核酸(例えば、所望のタンパクをコードするプラスミド)と結合している脂質粒子と細胞を接触させることによって、インビトロおよびインビボの両方で、標的遺伝子およびタンパクの発現を調節してよい。
【0194】
脂質粒子を用いて、インビトロまたはインビボで、治療剤を細胞に送達してよい。特定的な実施形態では、この治療剤は核酸であり、この核酸は核酸−脂質粒子を用いて、細胞に送達する。脂質粒子、および関連する医薬組成物を用いるさまざまな方法の下記の説明は、核酸−脂質粒子に関する説明によって例示されているが、これらの方法および組成物は、治療剤の送達による治療が有効であると思われるいずれかの疾患または障害の治療を目的とするいずれの治療剤の送達にも容易に適応させることができることを理解されたい。
【0195】
特定の実施形態では、核酸を細胞に導入する方法が説明されている。細胞に導入するのに好ましい核酸は、siRNA、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、プラスミド、アンチセンス、およびリボザイムである。これらの方法は、細胞内送達を行うのに十分な期間にわたって、粒子または組成物を細胞と接触させることによって行ってよい。
【0196】
組成物は、ほぼすべての細胞型に吸着できる。吸着すると、核酸−脂質粒子は、その細胞の一部に取り込まれ得るか、脂質を細胞膜と交換し得るか、または、その細胞と融合し得るかのいずれかである。上記の複合体の核酸部分の転移または組み込みは、これらの経路のいずれか1つによって行うことができる。限定されるものではないが、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる粒子のケースでは、その粒子は、エンドソーム膜と相互作用し、その結果、おそらく非二重層相の形成によってエンドソーム膜が不安定化し、その結果、封入核酸が細胞質に導入されると考えられる。同様に、脂質粒子が細胞血漿膜と直接融合するケースでは、融合が起きると、リポソーム膜が細胞膜に統合され、リポソームの内容物が細胞内液と組み合わされる。細胞と脂質−核酸組成物との接触は、インビトロで行うときには、生物学的に適合する培地中で行うことになる。組成物の濃度は、具体的な用途に応じて非常にさまざまであり得るが、一般には約1μモル〜約10ミリモルである。特定の実施形態では、細胞の脂質−核酸組成物による処理は一般に、生理学的温度(約37℃)で、約1〜24時間、好ましくは約2〜8時間の期間で行うことになる。インビトロ用途では、核酸の送達は、植物由来であるか動物由来であるか、脊椎動物であるか脊椎動物でないか、いずれの組織または型であるかを問わず、培養液中で増殖させたいずれかの細胞に対するものであることができる。好ましい実施形態では、細胞は動物細胞、より好ましくは哺乳類細胞、最も好ましくはヒト細胞となる。
【0197】
1つの実施形態群では、細胞密度が約10
3〜約10
5個/mL、より好ましくは約2×10
4個/mLの60〜80%コンフルエントな播種細胞に、脂質−核酸粒子懸濁液を加える。上記の細胞に加える懸濁液の濃度は、好ましくは約0.01〜20μg/mL、よ好ましくは約1μg/mLである。
【0198】
別の実施形態では、脂質粒子を用いて、核酸を細胞または細胞株(例えば腫瘍細胞株)に送達できる。このような細胞株の非限定例としては、HELA(ATCC Cat N:CCL−2)、KB(ATCC Cat N:CCL−17)、HEP3B(ATCC Cat N:HB−8064)、SKOV−3(ATCC Cat N:HTB−77)、HCT−116(ATCC Cat N:CCL−247)、HT−29(ATCC Cat N:HTB−38)、PC−3(ATCC Cat N:CRL−1435)、A549(ATCC Cat N:CCL−185)、MDA−MB−231(ATCC Cat N:HTB−26)が挙げられる。
【0199】
典型的な用途としては、siRNAを細胞内送達させるための周知の手順を用いて、特定の細胞標的をノックダウンまたはサイレンシングすることが挙げられる。あるいは、用途としては、治療上有用なポリペプチドをコードするDNAまたはmRNA配列の送達が含まれる。このようにして、欠損または不存在遺伝子産物を供給することによって、遺伝病に対して治療を提供する(すなわち、デュシェンヌ型ジストロフィーについては、Kunkel,et al.,Brit.Med.Bull.45(3):630−643(1989)を、嚢胞性線維症については、Goodfellow,Nature 341:102−103(1989)を参照されたい)。組成物の他の用途としては、細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入することが挙げられる(Bennett,et al.,Mol.Pharm.41:1023−1033 (1992)を参照されたい)。
【0200】
あるいは、組成物は、当業者にとって既知である方法を使用して、インビボで核酸を細胞に送達する目的で用いることもできる。DNAまたはmRNA配列の送達に関しては、Zhu,et al.,Science 261:209−211(1993)(参照により本明細書に組み込まれる)に、DOTMA−DOPE複合体を用いて、サイトメガロウイルス(CMV)−クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)発現プラスミドを静脈内送達することについて記載されている。Hyde,et al.,Nature 362:250−256(1993)(参照により本明細書に組み込まれる)には、リポソームを用いて、マウスの肺の気道上皮と肺胞に嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)遺伝子を送達することが記載されている。Brigham,et al.,Am.J.Med.Sci.298:278−281(1989)(参照により本明細書に組み込まれる)には、細胞内酵素であるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする機能性原核生物遺伝子によるマウス肺のインビボトランスフェクションが記載されている。したがって、組成物は、感染症の治療に使用することができる。
【0201】
インビボ投与では、医薬組成物は、好ましくは非経口投与、すなわち、関節内投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、または筋肉内投与する。特定的な実施形態では、医薬組成物は、ボーラス注入によって静脈内投与または腹腔内投与する。1つの例としては、Stadlerらの米国特許第5,286,634号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。細胞内核酸送達は、Straubringer,et al.,Methods in Enzymology,Academic Press,New York.101:512−527(1983)、Mannino,et al.,Biotechniques 6:682−690(1988)、Nicolau,et al.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.6:239−271(1989)、およびBehr,Acc.Chem.Res.26:274−278(1993)でも論じられている。脂質系治療薬を投与するさらに別の方法は、例えば、Rahmanらの米国特許第3,993,754号、Searsの米国特許第4,145,410号、Papahadjopoulosらの米国特許第4,235,871号、Schneiderの米国特許第4,224,179号、Lenkらの米国特許第 4,522,803号、およびFountainらの米国特許第4,588,578号に記載されている。
【0202】
別の方法では、医薬調製物を標的組織に直接塗布することによって、医薬調製物を標的組織と接触させてもよい。この塗布は、局所的な「開口」または「閉鎖」法によって行ってよい。「局所的」とは、皮膚、中咽頭部、外耳道などのように、環境に暴露されている組織に、医薬調製物を直接塗布することを意味する。「開口」法は、患者の皮膚を切開し、医薬調製物を塗布する下層組織を直接可視化することを含む処置法である。この処置法は一般に、肺に達するようにする開胸術、腹部内臓に達するようにする腹式開腹術、または標的組織に達するようにするその他の直接的な外科的アプローチのような外科的処置によって行う。「閉鎖」法は、内部の標的組織を直接可視化はしないが、皮膚の小さな創傷から器具を挿入することによって到達するようにする侵襲的処置である。例えば、医薬調製物は、針洗浄により腹膜に投与してよい。同様に、本発明の医薬調製物は、脊髄麻酔または脊髄のメトリザマイドイメージングで一般的に実施されるように、腰椎穿刺してから、患者に適切な体位を取らせた状態で、点滴によって髄膜または脊髄に投与してよい。あるいは、本発明の医薬調製物は、内視鏡器具によって投与してもよい。
【0203】
脂質−核酸組成物は、肺に吸入させるエアロゾルで(Brigham,et al.,Am.J.Sci.298(4):278−281(1989)を参照されたい)、または、疾患部位への直接注射によって(Culver,Human Gene Therapy,MaryAnn Liebert,Inc.,Publishers,New York.pp.70−71(1994))投与することもできる。
【0204】
本発明の脂質−治療剤粒子の用量は、治療剤の脂質に対する比率、および、患者の年齢、体重、状態に基づく投薬医師の見解によって決まることになる。
【0205】
1つの実施形態では、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節する方法が記載されている。これらの方法は一般に、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を調節できる核酸と結合している脂質粒子と細胞を接触させることを含む。本明細書で使用する場合、「調節する」という用語は、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を変化させることを指す。異なる実施形態では、調節は、上昇または増強を意味することも、低下または低減を意味することもできる。標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現レベルを測定する方法は、当該技術分野において既知かつ利用可能であり、その方法としては、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)および免疫組織化学的技法を用いる方法が挙げられる。特定的な実施形態では、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現レベルは、適切なコントロール値と比べて、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、または50%超上昇するか、または低減される。
【0206】
例えば、ポリペプチドの発現の上昇が望ましい場合、核酸は、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターであってよい。その一方で、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現の低減が望ましい場合、核酸は、例えば、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし、それによって、標的ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を妨害するポリヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、またはマイクロRNAであってよい。あるいは、核酸は、上記のようなアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、またはマイクロRNAを発現するプラスミドであってもよい。
【0207】
特定的な実施形態では、治療剤は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および、siRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現できるプラスミドから選択し、このsiRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスRNAは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはその相補体に特異的に結合して、そのポリペプチドの発現が低減されるようにするポリヌクレオチドを含む。
【0208】
別の実施形態では、核酸は、ポリペプチド、またはその機能的変異体もしくは断片をコードして、そのポリペプチド、またはその機能的変異体もしくは断片の発現が上昇するようにするプラスミドである。
【0209】
関連する実施形態では、被検体の体内でのポリペプチドの過剰発現によって特徴付けられる疾患または障害を治療する方法は、その被検体に医薬組成物を投与することを含み、この治療剤は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および、siRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現できるプラスミドから選択し、このsiRNA、マイクロRNA、またはアンチセンスRNAは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはその相補体に特異的に結合するポリヌクレオチドを含む。
【0210】
1つの実施形態では、医薬組成物は、表1〜5に記載されている脂質から選択したカチオン性脂質と、DSPCと、コレステロールと、PEG−DMGまたはPEG−DMAとの混合物(例えば約20〜60%のカチオン性脂質:5〜25%のDSPC:25〜55%のコレステロール:0.5〜15%のPEG−DMGまたはPEG−DMAというモル比の混合物)からなるか、またはこのような混合物から本質的になる脂質粒子であって、治療用核酸と結合している脂質粒子を含む。特定的な実施形態では、脂質のモル比は、おおよそ40/10/40/10(単位:モル%、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGもしくはPEG−DMA)、35/15/40/10(単位:モル%、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGもしくはPEG−DMA)、または52/13/30/5(単位:モル%、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG−DMGもしくはPEG−DMA)である。別の実施形態群では、これらの組成物中の中性脂質は、POPC、DPPC、DOPE、またはSMに置き換えられている。
【0211】
別の関連する実施形態では、被検体におけるポリペプチドの過小発現によって特徴付けられる疾患または障害を治療する方法は、被検体に医薬組成物を投与することを含み、この治療剤は、ポリペプチド、またはその機能的変異体もしくは断片をコードするプラスミドである。
【0212】
被検体の体内で免疫反応を誘発する方法は、被検体に医薬組成物を投与することを含むことができ、この治療剤は免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、上記の免疫反応は、体液性免疫反応または粘膜免疫反応である。
【0213】
さらなる実施形態では、本発明の医薬組成物は、ワクチンまたは抗原と併せて被検体に投与する。したがって、ワクチンは、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含み、免疫反応が所望される抗原と結合もしている脂質粒子を含むことができる。特定的な実施形態では、この抗原は腫瘍抗原であるか、例えばウイルス、細菌、または寄生虫のような感染体と関連するものである。
【0214】
さまざまな腫瘍抗原、感染体抗原、およびその他の疾患と関連する抗原は、当該技術分野において周知であり、これらの例は、本明細書で引用されている参考文献に記載されている。好適な抗原の例としては、ポリペプチド抗原およびDNA抗原がが挙げられるが、これらに限らない。抗原の具体例は、A型肝炎抗原、B型肝炎抗原、天然痘抗原、ポリオ抗原、炭疽菌抗原、インフルエンザ抗原、チフス抗原、破傷風抗原、麻疹抗原、ロタウイルス抗原、ジフテリア抗原、百日咳抗原、結核抗原、および風疹抗原である。好ましい実施形態では、抗原はB型肝炎組み換え抗原である。別の態様では、抗原はA型肝炎組み換え抗原である。別の態様では、抗原は腫瘍抗原である。このような腫瘍関連抗原の例は、MUC−1、EBV抗原、およびバーキットリンパ腫と関連する抗原である。さらなる態様では、抗原は、チロシナーゼ関連タンパク腫瘍抗原組み換え抗原である。当業者であれば、用いるのに適する他の抗原を知っているであろう。
【0215】
用いるのに適する腫瘍関連抗原には、単一の腫瘍型を示す場合があったり、いくつかの型の腫瘍に共有されている場合があったり、および/または、正常細胞と比べて腫瘍細胞で排他的に発現されるか、もしくは過剰表現される場合があったりする突然変異分子および非突然変異分子の両方が含まれる。タンパクおよび糖タンパクに加えて、炭水化物、ガングリオシド、糖脂質、およびムチンの発現の腫瘍特異的パターンも説明されている。本主題の癌ワクチンで用いられる例示的な腫瘍関連抗原としては、腫瘍細胞に特有の突然変異または再配列を有する癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、およびその他の遺伝子のタンパク産物、再活性化胚性遺伝子産物、腫瘍胎児抗原、組織特異的(ただし腫瘍特異的ではない)分化抗原、増殖因子受容体、細胞表面炭水化物残基、外来ウイルスタンパク、および多数のその他の自己タンパクが挙げられる。
【0216】
腫瘍関連抗原の具体的な実施形態としては、例えば、Ras p21癌原遺伝子、腫瘍抑制因子p53、およびBCR−abl癌遺伝子のタンパク産物、ならびにCDK4、MUM1、カスパーゼ8、およびベータカテニンのような突然変異抗原と、ガレクチン4、ガレクチン9、炭酸脱水酵素、アルドラーゼA、PRAME、Her2/neu、ErbB−2、およびKSAのような過剰発現抗原と、アルファフェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン(hCG)のような腫瘍胎児抗原と、癌胎児抗原(CEA)、ならびに、Mart 1/Melan A、gp100、gp75、チロシナーゼ、TRP1、およびTRP2のようなメラノサイト分化抗原のような自己抗原と、PSA、PAP、PSMA、PSM−P1、およびPSM−P2のような前立腺関連抗原と、MAGE1、MAGE3、MAGE4、GAGE1、GAGE2、BAGE、RAGE、ならびに、NY−ESO1、SSX2、およびSCP1のような他の癌精巣抗原のような再活性化胚性遺伝子産物と、Muc−1およびMuc−2のようなムチンと、GM2、GD2、およびGD3のようなガングリオシド、Lewis(y)およびglobo−Hのような中性糖脂質および糖タンパクと、Tn、トンプソン・フリーデンライヒ抗原(TF)、およびsTnのような糖タンパクとが挙げられる。また、本明細書における腫瘍関連抗原としては、全細胞および腫瘍細胞溶解物、ならびに、その免疫原性部分と、B細胞リンパ腫に対して用いられる、Bリンパ球の単クローン性増殖で発現される免疫グロブリンイディオタイプも挙げられる。
【0217】
病原体としては、哺乳類、より具体的にはヒトに感染する感染体、例えばウイルスが挙げられるが、これらに限らない。感染性ウイルスの例としては、レトロウイルス科(例えば、HIV−1のようなヒト免疫不全ウイルス(HTLV−III、LAV、HTLV−III/LAV、またはHIV−IIIとも称される、およびHIV−LPなどの他の単離体、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス)、カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす菌株)、トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス)、フラビウイルス科(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス)、コロナウイルス科(例えばコロナウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス)、コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス)、フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、おたふくかぜウイルス、はしかウイルス、RSウイルス)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、ブニヤウイルス科(例えば、ハンタウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス)、アレナウイルス科(出血熱ウイルス)、レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、およびロタウイルス)、ビルナウイルス科、ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス)、パルボウイルス科(パルボウイルス)、パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス)、アデノウイルス科(大半のアデノウイルス)、ヘルペスウイルス科単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス)、イリドウイルス科(例えば、アフリカブタコレラウイルス)、ならびに、未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症の原因菌、デルタ肝炎の原因菌(B型肝炎ウイルスの欠損付随体であると考えられる)、非A型、非B型肝炎の原因菌(クラスI=内部的に伝染、クラス2=非経口的に伝染(すなわちC型肝炎)、ノーウォークおよび関連ウイルス、ならびにアストロウイルス)が挙げられるが、これらに限らない。
【0218】
また、グラム陰性菌およびグラム陽性菌は、脊椎動物の抗原としての機能を果たす。このようなグラム陽性菌としては、パスツレラ菌、ブドウ球菌、および連鎖球菌が挙げられるが、これらに限らない。グラム陰性菌としては、大腸菌、シュードモナス菌、およびサルモネラ菌が挙げられるが、これらに限らない。感染性細菌の具体例としては、ヘリコバクターピロリ、ボレリアブルグドルフェリ、レジュネラニューモフィラ、ミコバクテリア(例えば、ヒト型結核菌、トリ型結核菌、バテー杆菌、M.カンサシ、M.ゴルドネ)、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌、リステリア菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(ヴィリダンス型)、Streptococcusfaecalis、Streptococcus bovis、連鎖球菌(嫌気性)、肺炎連鎖球菌、病原性カンピロバクター菌、腸球菌、インフルエンザ菌、炭疽菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム属菌、豚丹毒菌、ウェルシュ菌、破傷風菌、Enterobacter aerogenes、肺炎杆菌、Pasturella multocida、バクテロイデス属菌、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマ、レプトスピラ属菌、リケッチア属菌、およびイスラエル放線菌が挙げられるが、これらに限らない。
【0219】
病原体の追加の例としては、哺乳類、より具体的にはヒトに感染する感染性真菌が挙げられるが、これらに限らない。感染性真菌の例としては、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Coccidioids immitis、Blastomyces dermatitidis、トラコーマクラミジア、Candida albicansが挙げられるが、これらに限らない。感染性寄生虫の例としては、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、および三日熱マラリア原虫のようなPlasmodiumが挙げられる。その他の感染性生体(すなわち原生生物)としては、トキソプラスマが挙げられる。
【0220】
1つの実施形態では、本発明の調合物を用いて、FVII、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA、TTR、RSV、PDGFベータ遺伝子、Erb−B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL−2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT−1遺伝子、ベータ−カテニン遺伝子、c−Met遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サーバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、SORT1遺伝子、XBP1遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIアルファ遺伝子、p73遺伝子、p21(WAF1/CIP1)遺伝子、p27(KIP1)遺伝子、PPM1D遺伝子、RAS遺伝子、カベオリンI遺伝子、MIB I遺伝子、MTAI遺伝子、M68遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、p53腫瘍抑制遺伝子、p53ファミリーメンバーDN−p63、pRb腫瘍抑制遺伝子、APC1腫瘍抑制遺伝子、BRCA1腫瘍抑制遺伝子、PTEN腫瘍抑制遺伝子、mLL融合遺伝子、BCR/ABL融合遺伝子、TEL/AML1融合遺伝子、EWS/FLI1融合遺伝子、TLS/FUS1融合遺伝子、PAX3/FKHR融合遺伝子、AML1/ETO融合遺伝子、アルファv−インテグリン遺伝子、Flt−1受容体遺伝子、チューブリン遺伝子、ヒトパピローマウイルス遺伝子、ヒトパピローマウイルスの複製に必要な遺伝子、ヒト免疫不全ウイルス遺伝子、ヒト免疫不全ウイルスの複製に必要な遺伝子、A型肝炎ウイルス遺伝子、A型肝炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、B型肝炎ウイルス遺伝子、B型肝炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、C型肝炎ウイルス遺伝子、C型肝炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、D型肝炎ウイルス遺伝子、D型肝炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、E型肝炎ウイルス遺伝子、E型肝炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、F型肝炎ウイルス遺伝子、F型肝炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、G型肝炎ウイルス遺伝子、G型肝炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、H型肝炎ウイルス遺伝子、H型肝炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、RSウイルス遺伝子、RSウイルスの複製に必要な遺伝子、単純ヘルペスウイルス遺伝子、単純ヘルペスウイルスの複製に必要な遺伝子、ヘルペスサイトメガロウイルス遺伝子、ヘルペスサイトメガロウイルスの複製に必要な遺伝子、ヘルペスエプスタインバーウイルス遺伝子、ヘルペスエプスタインバーウイルスの複製に必要な遺伝子、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス遺伝子、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスの複製に必要な遺伝子、JCウイルス遺伝子、JCウイルスの複製に必要なヒト遺伝子、ミクソウイルス遺伝子、ミクソウイルス遺伝子の複製に必要な遺伝子、ライノウイルス遺伝子、ライノウイルスの複製に必要な遺伝子、コロナウイルス遺伝子、コロナウイルスの複製に必要な遺伝子、西ナイルウイルス遺伝子、西ナイルウイルスの複製に必要な遺伝子、セントルイス脳炎遺伝子、セントルイス脳炎の複製に必要な遺伝子、ダニ媒介脳炎ウイルス遺伝子、ダニ媒介脳炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、マリーバレー脳炎ウイルス遺伝子、マリーバレー脳炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、デング熱ウイルス遺伝子、デング熱ウイルス遺伝子の複製に必要な遺伝子、シミアンウイルス40遺伝子、シミアンウイルス40の複製に必要な遺伝子、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス遺伝子、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルスの複製に必要な遺伝子、モロニーマウス白血病ウイルス遺伝子、モロニーマウス白血病ウイルスの複製に必要な遺伝子、脳心筋炎ウイルス遺伝子、脳心筋炎ウイルスの複製に必要な遺伝子、はしかウイルス遺伝子、はしかウイルスの複製に必要な遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルス遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルスの複製に必要な遺伝子、アデノウイルス遺伝子、アデノウイルスの複製に必要な遺伝子、黄熱病ウイルス遺伝子、黄熱病ウイルスの複製に必要な遺伝子、ポリオウイルス遺伝子、ポリオウイルスの複製に必要な遺伝子、ポックスウイルス遺伝子、ポックスウイルスの複製に必要な遺伝子、プラスモジウム遺伝子、プラスモジウム遺伝子の複製に必要な遺伝子、Mycobacterium ulcerans遺伝子、Mycobacterium ulceransの複製に必要な遺伝子、結核菌遺伝子、結核菌遺伝子の複製に必要な遺伝子、癩菌遺伝子、癩菌の複製に必要な遺伝子、黄色ブドウ球菌遺伝子、黄色ブドウ球菌の複製に必要な遺伝子、肺炎連鎖球菌遺伝子、肺炎連鎖球菌の複製に必要な遺伝子、化膿連鎖球菌遺伝子、化膿連鎖球菌の複製に必要な遺伝子、クラミジア肺炎病原体遺伝子、クラミジア肺炎病原体の複製に必要な遺伝子、肺炎ミコプラズマ遺伝子、肺炎ミコプラズマの複製に必要な遺伝子、インテグリン遺伝子、セレクチン遺伝子、補体系遺伝子、ケモカイン遺伝子、ケモカイン受容体遺伝子、GCSF遺伝子、Gro1遺伝子、Gro2遺伝子、Gro3遺伝子、PF4遺伝子、MIG遺伝子、前血小板塩基性タンパク遺伝子、MIP−1I遺伝子、MIP−1J遺伝子、RANTES遺伝子、MCP−1遺伝子、MCP−2遺伝子、MCP−3遺伝子、CMBKR1遺伝子、CMBKR2遺伝子、CMBKR3遺伝子、CMBKR5v、AIF−1遺伝子、I−309遺伝子、イオンチャネルの構成要素の遺伝子、神経伝達物質受容体の遺伝子、神経伝達物質リガンドの遺伝子、アミロイドファミリー遺伝子、プレセニリン遺伝子、HD遺伝子、DRPLA遺伝子、SCA1遺伝子、SCA2遺伝子、MJD1遺伝子、CACNL1A4遺伝子、SCA7遺伝子、SCA8遺伝子、LOH細胞に見られる対立遺伝子、または多形型遺伝子の1つの対立遺伝子のような(これらに限らない)標的遺伝子をサイレンシングまたは調節できる。
【0221】
別の実施形態では、本発明は、核酸分子を送達する方法であって、核酸分子とカチオン
性脂質とを含む核脂質粒子を投与することを含み、このカチオン性脂質が、
(i)中心炭素原子と、
(ii)上記の中心原子に直接結合している頭部基と、
(iii)上記の中心炭素原子に直接結合している2つの疎水性テイル(各疎水性テイルは、上記の中心原子に結合している炭素数14以上の脂肪族基を含み、この脂肪族基は、(a)生分解性基に割り込まれて、その生分解性基と上記の中心炭素原子との間に、少なくとも4つの炭素原子の鎖が存在するようになっているか、(b)疎水性テイルの末端に、生分解性基を含み、上記の核酸分子が送達されるまでカチオン性脂質が無傷のままであり、送達後、疎水性テイルがインビボで切断されるようになっている)と、
を有する方法に関する。
【0222】
定義
本明細書で使用する場合、「カチオン性脂質」という用語には、1つまたは2つの脂肪酸または脂肪族鎖と、プロトン化すると、生理的pHでカチオン性脂質を形成できるアミノ頭部基(アルキルアミノまたはジアルキルアミノ基を含む)とを有する脂質が含まれる。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、「アミノ脂質」と称される。
【0223】
複合体の投与が疾患または障害の有効な治療レジメンである検体または患者は、好ましくはヒトであるが、臨床試験、またはスクリーニング、または活性実験と関連する実験動物を含め、いずれの動物であることもできる。したがって、当業者であれば容易に分かるように、本発明の方法、化合物、および組成物は特に、いずれの動物、特には哺乳類(ヒト、ネコ科またはイヌ科の被検体のような家庭用動物、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、およびブタの被検体(これらに限らない)のような家畜、野生動物(自然にいるものか、動物園にいるものかは問わない)、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、およびネコのような研究動物、鶏、七面鳥、および鳴き鳥のような鳥類、すなわち獣医学用途の動物が挙げられるが、これらに限らない)に投与するのに適している。
【0224】
上記の一般式中に示されている化学基の多くは、特定の順番で書かれている(例えば−OC(O)−)。別段の指示のない限り、示されている順番でその化学基を一般式に組み込むことが意図されている。例えば、−(R)
i−(M
1)
k−(R)
m−(式中のM
1は−C(O)O−であり、kは1である)という形の一般式は、別段の定めのない限り、−(R)
i−C(O)O−(R)
m−を指す。化学基が特定の順番で書かれているときには、別段の定めのない限り、逆の順番も考えられることを理解されたい。例えば、−(R)
i−(M
1)
k−(R)
m−(式中のM
1は、−C(O)NH−である)という一般式(すなわち−(R)
i−C(O)−NH−(R)
m−)では、別段の定めのない限り、M
1が−NHC(O)−である化合物(すなわち−(R)
i−NHC(O)−(R)
m−)も考えられる。
【0225】
本明細書で使用する場合、「生分解性基」という用語は、生物環境内、例えば、生体、器官、組織、細胞、または細胞小器官内で、結合破壊反応を起こし得る結合を1つ以上含む基を指す。例えば、生分解性基は、ヒトのような哺乳類の身体によって(例えば加水分解によって)代謝可能であり得る。生分解性結合を含むいくつかの基としては例えば、エステル、ジチオール、およびオキシムが挙げられるが、これらに限らない。生分解性基の非限定例は、−OC(O)−、−C(O)O−、−SC(O)−、−C(O)S−、−OC(S)−、−C(S)O−、−S−S−、−C(R
5)=N−、−N=C(R
5)−、−C(R
5)=N−O−、−O−N=C(R
5)−、−C(O)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−C(S)(NR
5)−、−N(R
5)C(O)−、−N(R
5)C(O)N(R
5)−、−OC(O)O−、−OSi(R
5)
2O−、−C(O)(CR
3R
4)C(O)O−、または−OC(O)(CR
3R
4)C(O)−である。
【0226】
本明細書で使用する場合、「脂肪族」基は、炭素原子が鎖状に結合している非芳香族基であり、飽和または不飽和のいずれかである。
【0227】
「アルキル」および「アルキレン」という用語は、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素部分を指す。1つの実施形態では、アルキル基は直鎖の飽和炭化水素である。別段の定めのない限り、「アルキル」または「アルキレン」基は1〜24個の炭素原子を含む。代表的な飽和直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシルが挙げられる。代表的な飽和分岐アルキル基としては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、およびイソペンチルが挙げられる。
【0228】
「アルケニル」という用語は、炭素−炭素二重結合を1つ以上有する直鎖または分岐鎖の炭化水素部分を指す。1つの実施形態では、アルケニル基は、1つ、2つ、または3つの二重結合を含み、さもなければ飽和されている。別段の定めのない限り、「アルケニル」基は2〜24個の炭素原子を含む。アルケニル基には、シス異性体およびトランス異性体の両方が含まれる。代表的な直鎖および分岐アルケニル基としては、エチレニル、プロピレニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、および2,3−ジメチル−2−ブテニルが挙げられる。
【0229】
「アルキニル」という用語は、炭素−炭素三重結合を1つ以上有する直鎖または分岐鎖の炭化水素部分を指す。別段の定めのない限り、「アルキニル」基は2〜24個の炭素原子を含む。代表的な直鎖および分岐アルキニル基としては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、および3−メチル−1−ブチニルが挙げられる。
【0230】
「アシル」という用語は、水素、アルキル、部分飽和もしくは完全飽和シクロアルキル、部分飽和もしくは完全飽和複素環、アリール、またはヘテロアリールで置換されたカルボニル基を指す。例えば、アシル基としては、(炭素数1〜20の)アルカノイル(例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、カプロイル、およびt−ブチルアセチル)、(炭素数3〜20の)シクロアルキルカルボニル(例えばシクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、およびシクロヘキシルカルボニル)、複素環式カルボニル(例えばピロリジニルカルボニル、ピロリド−2−オン−5−カルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピペラジニルカルボニル、およびテトラヒドロフラニルカルボニル)、アロイル(例えばベンゾイル)、ならびにヘテロアロイル(例えばチオフェニル−2−カルボニル、チオフェニル−3−カルボニル、フラニル−2−カルボニル、フラニル−3−カルボニル、1H−ピロイル−2−カルボニル、1H−ピロイル−3−カルボニル、およびベンゾ[b]チオフェニル−2−カルボニル)のような基が挙げられる。
【0231】
「アリール」という用語は、芳香族の単環式、二環式、または三環式炭化水素環系を指す。別段の定めのない限り、「アリール」基は6〜14個の炭素原子を含む。アリール部分の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびピレニルが挙げられるが、これらに限らない。
【0232】
「シクロアルキル」および「シクロアルキレン」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルのような飽和単環式または二環式炭化水素部分を指す。別段の定めのない限り、「シクロアルキル」または「シクロアルキレン」基は3〜10個の炭素原子を含む。
【0233】
「シクロアルキルアルキル」という用語は、アルキル基に結合しているシクロアルキル基であって、そのアルキル基が、その分子の残部に結合している基を指す。
【0234】
「複素環」(または「ヘテロシクリル」)という用語は、飽和または不飽和のいずれかである非芳香族の5〜8員の単環式環系、または7〜12員の二環式環系、または11〜14員の三環式環系であって、単環式の場合には、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択した1〜3個のヘテロ原子を含み、二環式の場合には、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択した1〜6個のヘテロ原子を含み、三環式の場合には、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択した1〜9個のヘテロ原子を含み、上記の窒素および硫黄ヘテロ原子が任意で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子が任意で四級化されていてもよい環系を指す。例えば、複素環はシクロアルコキシ基であってよい。複素環は、その複素環中のいずれかのヘテロ原子または炭素原子を介して、その分子の残部に結合していてもよい。複素環としては、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、およびテトラヒドロチオピラニルが挙げられるが、これらに限らない。
【0235】
「ヘテロアリール」という用語は、芳香族の5〜8員の単環式環系、7〜12員の二環式環系、または11〜14員の三環式環系であって、単環式の場合には1〜3個のヘテロ原子を有し、二環式の場合には1〜6個のヘテロ原子を有し、三環式の場合には1〜9個のヘテロ原子を有し、これらのヘテロ原子をO、N、またはSから選択する環系を指す(例えば、単環式の場合には、炭素原子とN、O、またはSのうちの1〜3個のヘテロ原子を有し、二環式の場合には、炭素原子とN、O、またはSのうちの1〜6個のヘテロ原子を有し、三環式の場合には、炭素原子とN、O、またはSのうちの1〜9個のヘテロ原子を有する)。本明細書に記載されているヘテロアリール基は、1つの共通の炭素−炭素結合を共有する融合環も含んでよい。
【0236】
「置換」という用語は、別段の指示のない限り、所定の構造体中の1つ以上の水素ラジカルを指定の置換基のラジカルと置き換えることを指し、この置換基としては、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、チオール、アルキルチオ、オキソ、チオキシ、アリールチオ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、アリールスルホニルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロアルキル、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアミノアルキル、アリールアミノアルキル、アミノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノカルボニルアルキル、アシル、アラルコキシカルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルホニル、ホスホン酸、アリール、ヘテロアリール、複素環、および脂肪族基が挙げられるが、これらに限らない。上記の置換基は、さらに置換されていてもよいことが分かる。例示的な置換基としては、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、および環状アミノ化合物が挙げられる。
【0237】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。
【0238】
「アルキルアミン」という用語は−NH(アルキル)ラジカルを指し、「ジアルキルアミン」という用語は−N(アルキル)
2ラジカルを指す。
【0239】
「アルキルフォスフェート」という用語は、−O−P(Q’)(Q”)−O−R(式中のQ’およびQ”はそれぞれ独立してO、S、N(R)
2、任意で置換されているアルキル、またはアルコキシであり、Rは、任意で置換されているアルキル、ω−アミノアルキル、またはω−(置換)アミノアルキルである)を指す。
【0240】
「アルキルホスホロチオエート」という用語は、Q’またはQ”の少なくとも1つがSであるアルキルフォスフェートを指す。
【0241】
「アルキルホスホネート」という用語は、Q’またはQ”の少なくとも1つがアルキルであるアルキルフォスフェートを指す。
【0242】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、−O−アルキルラジカルを指す。
【0243】
「アルキル複素環」という用語は、少なくとも1つのメチレンが複素環に置き換えられているアルキルを指す。
【0244】
「ω−アミノアルキル」という用語は、−アルキル−NH
2ラジカルを指す。「ω−(置換)アミノアルキル」という用語は、N上のHのうちの少なくとも1つがアルキルと置き換えられているω−アミノアルキルを指す。
【0245】
「ω−ホスホアルキル」という用語は、−アルキル−O−P(Q’)(Q”)−O−R(式中のQ’およびQ”はそれぞれ独立して、OまたはSであり、Rは、任意で置換されているアルキルである)を指す。
【0246】
「ω−チオホスホアルキル」という用語は、Q’またはQ”の少なくとも1つがSであるω−ホスホアルキルを指す。
【0248】
DSPCはジステアロイルホスファチジルコリンである。DPPCは1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンである。POPCは1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−ホスファチジルコリンである。DOPEは1,2−ジオレオイル−sn−3−ホスホエタノールアミンである。PEG−DMGは一般には、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロール−メトキシポリエチレングリコール(例えばPEG2000)を指す。TBDPSClはtert−ブチルクロロジフェニルシランである。DMAPはジメチルアミノピリジンである。NMOはN−メチルモルホリン−N−オキシドである。LiHDMSはリチウムビス(トリメチルシリル)アミドである。HMPAはヘキサメチルホスホラミドである。EDCは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。DIPEAはジイソプロピルエチルアミンである。DCMはジクロロメタンである。TEAはトリエチルアミンである。TBAFはテトラブチルアンモニウムフルオリドである。
【0249】
いくつかの実施形態では、本発明の方法では、保護基を用いる必要がある場合がある。保護基法は、当業者には周知である(例えば
Protective Groups in Organic Synthesis,Green,T.W.et al.,Wiley−Interscience,New York City,1999を参照されたい)。簡潔に言うと、保護基は、官能基の無用の反応性を低減または排除するいずれかの基である。保護基を官能基に付加して、特定の反応中にその官能基の反応性を隠し、その後、保護基を除去して、元の官能基を暴露させることができる。いくつかの実施形態では、「アルコール保護基」を用いる。「アルコール保護基」は、アルコール官能基の無用の反応性を低下または排除するいずれかの基である。保護基は、当該技術分野において周知の技法を用いて付加および除去することができる。
【0250】
化合物は、本明細書に記載されている技法、または既知の有機合成法のうちの少なくとも1つによって調製してよい。
実施例
【0252】
化合物2:化合物1(10.0g、18.8ミリモル、国際公開第2010/054406号参照)をCH
2Cl
2(80mL)に溶解させた溶液に、トリエチルアミン(7.86mL、56.4ミリモル)、DMAP(459mg、3.76ミリモル)、およびtert−ブチル(クロロ)ジフェニルシラン(9.62mL、37.6ミリモル)を加えた。この反応混合物を24時間攪拌した。続いて、その混合物をCH
2Cl
2で希釈し、飽和NaHCO
3水溶液で洗浄した。有機層を分離し、無水Na
2SO
4で乾燥した。ろ過および濃縮後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中0〜5%EtOAc)によって精製して、化合物2を得た(12.4g、16.1ミリモル、86%、ヘキサンを用いた場合のR
f=0.24)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ7.66−7.68(m、4H)、7.33−7.42(m、6H)、5.30−5.39(m、4H)、3.67−3.72(m、1H)、1.97−2.04(m、8H)、1.07−1.42(m、52H)、1.05(s、9H)、0.88(t、J=6.8Hz、6H)
【0253】
化合物3:化合物2(12.4g、16.1ミリモル)をtert−ブタノール(100mL)、THF(30mL)、およびH
2O(10mL)に溶解させた溶液に、4−メチルモルホリンN−オキシド(4.15g、35.4ミリモル)およびオスミウムテトロキシド(41mg、0.161mg)を加えた。この反応混合物を16時間攪拌してから、重硫酸ナトリウムを加えることによってクエンチした。蒸発によって溶媒を除去した後、残渣をEt
2O(500mL)およびH
2O(300mL)で抽出した。有機層を分離し、無水Na
2SO
4で乾燥した。ろ過および濃縮後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=1:1、R
f=0.49)によって精製して、化合物3を得た(12.7g、15.1ミリモル、94%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ7.66−7.68(m、4H)、7.33−7.43(m、6H)、3.67−3.73(m、1H)、3.57−3.62(m、4H)、1.82(t、J=5.0Hz、4H)、1.10−1.51(m、60H)、1.04(s、9H)、0.88(t、J=6.8Hz、6H)
【0254】
化合物4:化合物3(12.6g、15.0ミリモル)を1,4−ジオキサン(220mL)、CH
2Cl
2(70mL)、MeOH(55mL)、およびH
2O(55mL)に溶解させた溶液に、NaIO
4(7.70g、36.0ミリモル)を加えた。この反応混合物を16時間、室温で攪拌した。この混合物をEt
2O(500mL)およびH
2O(300mL)で抽出した。有機層を分離し、無水Na
2SO
4で乾燥した。ろ過および濃縮後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=9:1、R
f=0.30)によって精製して、化合物4を得た(7.98g、14.5ミリモル、97%)、C
35H
54NaO
3Si(M+Na)
+の分子量計算値:573.3740、実測値:573.3
【0255】
化合物7:化合物5(Tetrahedron,63,1140−1145,2006参照、1.09g、2.18ミリモル)をTHF(20mL)およびHMPA(4mL)に溶解させた溶液に、LiHMDS(1M THF溶液、4.36mL、4.36ミリモル)を−20℃で加えた。得られた混合物を20分間、−20℃で攪拌してから、−78℃まで冷却した。化合物4(500mg、0.908ミリモル)をTHF(4mL)に溶解させた溶液を加えた。この混合物を攪拌し、一晩で室温まで温めた。MS解析によって、二酸の形成が示された(化合物6、C
53H
85O
5Si(M−H)
−の計算値:829.6166、観察値:829.5)。この混合物に、NaHCO
3(1.10g、13.1ミリモル)およびジメチルサルフェート(1.24mL、13.1ミリモル)を加え、2時間、室温で攪拌した。飽和NH
4Cl水溶液(50mL)を加えることによって、この反応物をクエンチしてから、Et
2O(2×100mL)で抽出した。有機層を分離し、無水Na
2SO
4で乾燥した。ろ過および濃縮後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=9:1、R
f=0.35)によって精製して、化合物7を得た(270mg、0.314ミリモル、35%)。C
55H
90NaO
5Si(M+Na)
+の分子量計算値:881.6455、実測値:881.6484
【0256】
化合物8:化合物7(265mg、0.308ミリモル)をTHF(2.5mL)に溶解させた溶液に、n−TBAF(1M THF溶液、0.555mL、0.555ミリモル)を加えた。この反応混合物を14時間、45℃で攪拌した。濃縮後、この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=3:1、R
f=0.52)によって精製して、化合物8を得た(155mg、0.250ミリモル、81%)。C
39H
72NaO
5(M+Na)
+の分子量計算値:643.5277、実測値643.5273
【0257】
化合物9:化合物8(150mg、0.242ミリモル)および4−(ジメチルアミノ)酪酸ヒドロクロリド(49mg、0.290ミリモル)をCH
2Cl
2(5mL)に溶解させた溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.126mL、0.726ミリモル)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(56mg、0.290ミリモル)、およびDMAP(6mg、0.0484ミリモル)を加えた。この反応混合物を室温で14時間攪拌した。続いて、この反応混合物をCH
2Cl
2(100mL)で希釈し、飽和NaHCO
3水溶液(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2中の0〜5%MeOH)によって精製して、化合物9を得た(121mg、0.165ミリモル、68%、R
f=0.25(CH
2Cl
2中の5%MeOHで展開))。C
45H
84NO
6(M+H)
+の分子量計算値734.6299、実測値734.5
【0258】
化合物10:化合物9をCH
3CNおよびCHCl
3中のCH
3Clで処理することによって、化合物10を得ることができる。
【0260】
化合物12:化合物11(J.Med.Chem.,38,636−46,1995参照、1.25g、2.58ミリモル)をTHF(20mL)およびHMPA(4mL)に溶解させた溶液に、LiHMDS(1M THF溶液、2.58mL、2.58ミリモル)を−20℃で加えた。この混合物を20分間、−20℃で攪拌してから、−78℃まで冷却した。化合物4(500mg、0.908ミリモル)をTHF(9mL)およびHMPA(0.9mL)に溶解させた溶液を加えた。この混合物を攪拌し、一晩で室温まで温めた。H
2O(40mL)を加えることによって、この反応物をクエンチしてから、Et
2O(150mL×3)で抽出した。有機層を分離し、無水Na
2SO
4で乾燥した。ろ過および濃縮後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=9:1、R
f=0.35)によって精製して、化合物12を得た(136mg、0.169ミリモル、19%)。C
51H
82NaO
5Si(M+Na)
+の分子量計算値:825.5829、実測値825.5
【0261】
化合物5の代わりに化合物13を用いて、化合物7に関して記載した手順と同様の手順に従って、化合物12を得た(135mg、0.168ミリモル、46%)。
【0262】
化合物15/化合物16:化合物12(800mg、0.996ミリモル)をTHF(5mL)に溶解させた溶液に、n−TBAF(1M THF溶液、5mL、5.00ミリモル)を加えた。この反応混合物を16時間、45℃で攪拌した。濃縮後、この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物15(ヘキサン:EtOAc=3:1、R
f=0.46、372mg、0.659ミリモル、66%)および化合物16(CH
2Cl
2:MeOH=95:5、R
f=0.36、135mg、0.251ミリモル、25%)を得た。化合物15の分子量(C
35H
64NaO
5(M+Na)
+)計算値:587.4651、実測値:587.4652、化合物16の分子量(C
33H
61O
5(M+H)
+)計算値:537.4519、実測値:537.5
【0263】
化合物17:化合物15(164mg、0.290ミリモル)および4−(ジメチルアミノ)酪酸ヒドロクロリド(58mg、0.348ミリモル)をCH
2Cl
2(5mL)に溶解させた溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.152mL、0.870ミリモル)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(67mg、0.348ミリモル)、およびDMAP(7mg、0.058ミリモル)を加えた。この反応混合物を室温で14時間攪拌した。この反応混合物をCH
2Cl
2(100mL)で希釈し、飽和NaHCO
3水溶液(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2中の0〜5%MeOH)によって精製して、化合物17を得た(158mg、0.233ミリモル、80%、R
f=0.24(CH
2Cl
2中の5%MeOHで展開))。C
45H
84NO
6(M+H)
+の分子量計算値:734.6299、実測値734.5
【0264】
化合物18:化合物17をCH
3CNおよびCHCl
3中のCH
3Clで処理することによって、化合物18を得ることができる。.
【0265】
化合物19:化合物16(130mg、0.242ミリモル)をTHF(2mL)およびMeOH(2mL)に溶解させた溶液に、トリメチルシリルジアゾメタン(2M Et
2O溶液、0.158mL、0.315ミリモル)を加えた。この反応混合物を14時間攪拌した。蒸発後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=3:1、R
f=0.50)によって精製して、化合物19を得た(99mg、0.180ミリモル、74%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ5.29−5.40(m、4H)、4.12(q、J=7.1Hz、2H)、3.66(s、3H)、3.55−3.59(m、1H)、2.30(dd、J=14.7、7.2Hz、4H)、1.98−2.07(m、8H)、1.60−1.68(m、4H)、1.23−1.43(m、37H)
【0266】
化合物20:化合物19(95mg、0.168ミリモル)、および4−(ジメチルアミノ)酪酸ヒドロクロリド(42mg、0.252ミリモル)をCH
2Cl
2(3mL)に溶解させた溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.088mL、0.504ミリモル)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(48mg、0.504ミリモル)、およびDMAP(4mg、0.034ミリモル)を加えた。この反応混合物を室温で14時間攪拌した。この反応混合物をCH
2Cl
2(100mL)で希釈し、飽和NaHCO
3水溶液(50mL)で洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2中の0〜5%MeOH)によって精製して、化合物20を得た(103mg、0.155ミリモル、92%、R
f=0.19(CH
2Cl
2中の5%MeOHで展開))。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ5.29−5.40(m、4H)、4.83−4.89(m、1H)、4.12(q、J=7.1Hz、2H)、3.67(s、3H)、2.28−2.34(m、8H)、2.23(s、6H)、1.98−2.07(m、8H)、1.76−1.83(m、2H)、1.60−1.68(m、4H)、1.23−1.51(m、35H)
【0267】
化合物21:化合物20をCH
3CNおよびCHCl
3中のCH
3Clで処理することによって、化合物21を得ることができる。
【0268】
実施例3:ジ−アルデヒド中間体4の代替的な合成法
【化61】
【0269】
ジ−アルデヒド4は、スキーム3に示されているように、1−ブロモ−9−デセンを用いて合成できる。頭部基27を含むジ−アルデヒドは、例えばウィッティング反応を用いて、末端エステル置換脂質を合成するのに有用であり得る。オゾン分解によってジ−アルデヒド4および頭部基27を得ることができる。
【0270】
実施例4:化合物8の代替的な合成法
【化62】
化合物8は、スキーム4に示されているように合成することができる。
【0271】
化合物29:NaH(油中60%、82g、1.7096モル)を500mLの無水DMFに攪拌懸濁させた液に、滴下漏斗を用いて、化合物28(250g、1.7096モル)を1.5LのDMFに溶解させた溶液を0℃でゆっくり加えた。この反応混合物を30分間攪拌してから、ベンジルブロミド(208.86mL、1.7096モル)を窒素雰囲気下でゆっくり加えた。続いて、この反応物を周囲温度まで温め、10時間攪拌した。続いて、砕いた氷(約2kg)でこの混合物をクエンチし、エチルアセテート(2×1L)で抽出した。有機層を水(1L)で洗浄して無用のDMFを除去し、Na
2SO
4で乾燥し、真空で蒸発乾固させた。粗化合物を60〜120のシリカゲルで精製し、DCM中の0〜5%MeOHで溶出して、化合物29を黄白色の液体として得た(220g、54%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=7.33−7.24(m、5H)、4.49(s、2H)、3.63−3.60(m、2H)、3.47−3.43(m、2H)、1.63−1.51(m、4H)、1.39−1.23(m、8H)
【0272】
化合物30:化合物29(133g、0.5635モル)を1.5LのDCMに溶解させ、この攪拌溶液にCBr
4(280.35g、0.8456モル)を加え、その反応混合物を0℃まで不活性雰囲気下で冷却した。続いて、温度を20℃未満に保ちながら、PPh
3(251.03g、0.9571モル)を少しずつ加えた。完全に加えた後、この反応混合物を3時間、室温で攪拌した。反応の完了後、反応混合物から沈殿した固体(PPh
3O)をろ過によって除去し、砕いた氷(約1.5kg)でろ液を希釈し、DCM(3×750mL)で抽出した。有機層を分離し、無水Na
2SO
4で乾燥し、真空下で蒸留した。ヘキサン中の0〜5%エチルアセテートを溶出系として用いて、得られた粗化合物を60〜120メッシュのシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけて、化合物30を黄白色の液体として得た(150g、89%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=7.33−7.25(m、5H)、4.49(s、2H)、3.47−3.41(m、2H)、3.41−3.37(m、2H)、1.86−1.80(m、4H)、1.62−1.56(m、2H)、1.42−1.29(m、8H)
【0273】
化合物31:新たに活性化した削り状Mg(24.08g、1.003モル)に、200mLの無水THFを加えてから、この混合物に少量のヨウ素を不活性雰囲気下で加えた。発熱反応を制御しながら、化合物30(150g、0.5016モル)を1Lの乾燥THFに入れた溶液をゆっくり加えた。続いて、この反応物を1時間加熱還流してから、室温まで冷却した。続いて、メチルフォーメート(60.24g、1.0033モル)をゆっくり加え、その反応を2時間継続させた。完了後、10%HCl、続いて水(1L)をゆっくり加えることによって、その反応物をクエンチし、エチルアセテート(3×1L)で抽出した。有機層を5リットルのビーカーに取り、500mLのメタノールで希釈し、0℃まで冷却した。この溶液に、過剰のNaBH
4(約5当量)を少しずつ加え、HClを加えても切断されなかったフォーメートエステルを加水分解させるようにした。得られた溶液を1時間攪拌してから、揮発性物質を真空下で除去した。残渣を水(1L)中に取り、10%HCl溶液によって酸性化した(pH4)。続いて、この生成物をエチルアセテート(3×1L)で抽出した。続いて、有機相をロータリーエバポレーターで乾燥および抽出濃縮して、所望の化合物31を固体として得た(57g、24%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=7.35−7.32(m、8H)、7.29−7.24(m、2H)、4.49(s、4H)、3.56(m、1H)、3.46−3.43(m、4H)、1.63−1.56(m、4H)、1.44−1.34(m、28H)、
13C NMR(100MHz、CDCl
3):δ=138.56、128.21、127.49、127.34、72.72、71.76、70.37、37.37、29.64、29.56、29.47、29.33、26.07、25.54
【0274】
化合物32:化合物31(56g、0.1196モル)を700mLの乾燥THFに溶解させ、0℃まで冷却した。TBSCl(36.06g、0.2396モル)をゆっくり加えてから、イミダゾール(32.55g、0.4786モル)を不活性雰囲気下で加えた。続いて、この反応物を室温で18時間攪拌した。完了したら、その反応物を氷(約1kg)でクエンチし、エチルアセテート(3×500mL)で抽出した。有機層を分離し、飽和NaHCO
3溶液で洗浄して酸性不純物を除去し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で蒸発させて粗化合物を得て、この粗化合物をシリカゲル(60〜120メッシュ)によって精製し、0〜10%エチルアセテートヘキサンで溶出して、化合物32を黄色っぽい油として得た(60g、82%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=7.33−7.24(m、10H)、4.49(s、4H)、3.60−3.57(m、1H)、3.46−3.43(m、4H)、1.61−1.54(m、4H)、1.41−1.26(m、28H)、0.87(s、9H)、0.02(s、6H)
【0275】
化合物33:化合物32(60g、0.1030モル)を500mLのエチルアセテートに溶解させ、N
2で20分間脱気した。パラジウム炭素(Pd10重量%)(12g)を加え、その反応物を水素雰囲気下で18時間攪拌した。完了後、その混合物をセライト床でろ過し、エチルアセテートで洗浄した。このろ液を真空下で蒸発させて、次の合成手順で用いるのに十分な純度である化合物33を得た(19g、46%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=3.64−3.58(m、5H)、1.59(br、2H)、1.57−1.51(m、4H)、1.38−1.22(m、28H)、0.87(s、9H)、0.02(s、6H)
【0276】
化合物34:化合物33(8.2g、0.0199モル)を100mLの乾燥DCMに溶解させ、0℃まで冷却した。TEA(22.14mL、0.1592モル)を不活性雰囲気下で加えた。この混合物を5分間攪拌後、メシルクロリド(4.6mL、0.059モル)を滴下し、その反応物をさらに3時間攪拌した。反応の完了後、その混合物を氷(約200g)でクエンチし、DCM(3×75mL)で抽出した。有機層を無水ナトリウムサルフェートで乾燥し、蒸発させ、粗化合物を得て、ヘキサン中の0〜30%エチルアセテートを溶出系として用いて、この粗化合物を60〜120メッシュのシリカゲルカラムで精製して、化合物34を黄白色の液体として得た(8.2g、73%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=4.22−4.19(m、4H)、3.60−3.58(m、1H)、2.99(s、6H)、1.75−1.69(m、4H)、1.38−1.28(m、28H)、0.86(s、9H)、0.02(s、6H)
【0277】
化合物35:化合物34(8.2g、0.0146モル)を400mLの乾燥エーテルに溶解させた溶液に、MgBr
2Et
2O(22.74g、0.08817モル)を0℃で窒素雰囲気下にて少しずつ加えた。加え終わった後、この反応混合物を28時間加熱還流した。反応の完了後、この反応で形成された無機物質をろ過によって除去した。このろ液を蒸発させ、ヘキサン中の0〜3%エチルアセテートを溶出系として用いて、得られた粗化合物を60〜120メッシュのシリカゲルカラムで精製して、化合物35を無色の液体として得た(6.6g、85%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=3.61−3.58(m、1H)、3.41−3.37(t、4H、J=6.8Hz)、1.87−1.80(m、4H)、1.42−1〜25(m、24H)、0.87(s、9H)、0.012(s、6H)
【0278】
化合物36:エチニルトリメチルシラン(5.3mL、0.0378モル)を60mLの乾燥THFに溶解させた溶液を−78℃まで冷却し、ヘキサン中の1.4M n−BuLi(23mL、0.03405モル)を不活性雰囲気下でゆっくり加えた。この反応物を10分間攪拌してから、HMPA(2.3g、0.01324モル)を加え、続いて、得られた混合物を2時間、0℃で攪拌してから、−78℃まで冷却した。これに、化合物35(5g、0.0094モル)を60mLの乾燥THFに溶解させた溶液をゆっくり加え、加え終わった後に、その反応物を室温まで温め、18時間置いた。反応の進行を
1H NMRによってモニタリングした。完了後、この反応混合物を0℃まで冷却し、飽和NH
4Cl溶液(50mL)に続いて水(200mL)を慎重に加えることによってクエンチした。水相をヘキサン(3×250mL)で抽出した。有機層を乾燥し、溶媒を真空下で除去して、化合物36を得た(5g、94%)(化合物36は、さらなる精製なしに使用した)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=3.62−3.56(m、1H)、2.21−2.17(m、4H)、1.49−1.47(m、4H)、1.37−1.26(m、24H)、0.87(s、9H)、0.13(s、18H)、0.021(s、6H)
【0279】
化合物37:化合物36(5g、0.0088モル)を50mLメタノールに攪拌溶解させた液に、K
2CO
3(6.1g、0.044モル)を一度に加えてから、得られた混合物を18時間、周囲温度で攪拌した。続いて、揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去し、その粗混合物を100mLの水で希釈し、ヘキサン(3×100mL)で抽出した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、真空下で蒸発させて、化合物37を得た(3.5g、97%)(化合物37は、さらなる精製なしに使用した)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=3.60−3.58(m、1H)、2.19−2.14(m、4H)、1.93−1.92(m、2H)、1.54−1.49(m、4H)、1.37−1.27(m、24H)、0.87(s、9H)、0.02(s、6H)
【0280】
化合物39:化合物37(2.5g、0.00598モル)を25mLの乾燥THFに溶解させ、−40℃まで冷却した。n−BuLi(ヘキサン12.9mL中1.4M、0.01794モル)をゆっくり加え、10分間隔を置いた後に、HMPA(25mL)をゆっくり加えた。得られた混合物を窒素雰囲気下で30分間、−40℃に保った。続いて、冷却した反応混合物に、化合物38(3.5g、1.01196モル)を25mLの乾燥THFに溶解させた溶液を滴下した。得られた混合物を室温まで2時間かけて温めてから、室温で18時間攪拌した。続いて、飽和NH
4Cl溶液(約50mL)を加えることによって、混合物をクエンチし、その生成物をエチルアセテート(3×50mL)で抽出した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、ジクロロメタン中の0〜3%エチルアセテートを溶出系として用いて、得られた粗生成物を(100〜200メッシュの)シリカゲルカラムによって精製して、化合物39を黄色油として得た(0.9g、18%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=4.56−4.55(m、2H)、3.87−3.83(m、2H)、3.74−3.68(m、2H)、3.59−3.57(m、1H)、3.49−3.46(m、2H)、3.39−3.33(m、2H)、2.13−2.10(m、8H)、1.87−1.75(m、2H)、1.74−1.66(m、2H)、1.57−1.42(m、20H)、1.40−1.19(m、40H)、0.87(s、9H)、0.02(s、6H)
【0281】
化合物40:化合物39(504mg、0.598ミリモル)を10mLの乾燥エーテルに溶解させた溶液に、MgBR
2Et
2O(926mg、3.59ミリモル)を加えた。この反応混合物を14時間攪拌してから、飽和NaHCO
3水溶液を加えることによってクエンチした。この生成物をCH
2Cl
2で抽出した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物40を得た(307mg、0.455ミリモル、76%、R
f=0.36(ヘキサン:EtOAc=2:1で展開))。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ3.59−3.66(m、5H)、2.14(t、J=6.6Hz、8H)、1.21−1.59(m、52H)、0.88(s、9H)、0.03(s、6H)
【0282】
化合物41:化合物40(180mg、0.267ミリモル)を無水DMF(5mL)に攪拌溶解させた液に、ピリジニウムジクロメート(603mg、1.60ミリモル)を加えた。この反応混合物を48時間攪拌した。水(20mL)で希釈後、この混合物をEt
2O(3×40mL)で抽出した。有機層をNa
2SO
4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物41を得た(53mg、0.075ミリモル、28%、R
f=0.25(CH
2Cl
2:MeOH:AcOH=95:4.5:0.5で展開))。C
43H
77O
5Si(M−H)
−の分子量計算値:701.5540、実測値:701.5。この化合物は、TEMPO酸化によって合成することができる。
【0283】
化合物42:化合物19に関して記載した手順と同様の手順によって化合物42を得た(23mg、0.032ミリモル、化合物40から21%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ3.67(s、6H)、3.59−3.62(m、1H)、2.30(t、J=7.5Hz、4H)、2.13(t、J=6.8Hz、8H)、1.27−1.64(m、48H)、0.88(s、9H)、0.03(s、6H)
【0284】
P−2ニッケル条件を用いる還元によって、化合物43を得ることができ、続いて、TBAFによる脱保護によって、化合物8を得ることができる。
【0285】
実施例5:化合物8の代替的な合成法
【化63】
化合物8は、スキーム5に示されているように合成することができる。ブロミド51をグリニャール試薬に変換してから、エチルフォーメートとカップリングさせて、化合物52を得ることができる。続いて酸処理、酸化、および還元を行うことによって、化合物8を得ることができる。
【0286】
実施例6:化合物8の代替的な合成法
【化64】
化合物8は、スキーム6に示されているように合成することができる。化合物58、60、または62のいずれかのブロミドをエチルフォーメートと反応させて、末端官能化ジオレフィン鎖を生成させることができる。続いて、標準的な化学反応を用いて、このジオレフィン鎖化合物から化合物8を調製することができる。
【0287】
実施例7
スキーム7:
【化65】
8−ベンジルオキシ−オクタン−1−オール(2)の合成:
NaH(油中60%、82g、1.7096モル)を500mLの無水DMFに攪拌懸濁させた液に、滴下漏斗を用いて、化合物1(250g、1.7096モル)を1.5LのDMFに溶解させた溶液を0℃でゆっくり加えた。この反応混合物を30分間攪拌してから、ベンジルブロミド(208.86mL、1.7096モル)を窒素雰囲気下でゆっくり加えた。続いて、この反応物を周囲温度まで温め、10時間攪拌した。反応の完了後、混合物を、砕いた氷(約2kg)でクエンチし、エチルアセテート(2×1L)で抽出した。有機層を水(1L)で洗浄して無用のDMFを除去し、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で蒸発乾固した。この粗化合物を60〜120のシリカゲルで精製し、DCM中の0〜5%MeOHで溶出して、化合物2を黄白色の液体として得た(220g、54%)。H
1 NMR(400MHz、CDCl
3):δ=7.33−7.24(m、5H)、4.49(s、2H)、3.63−3.60(m、2H)、3.47−3.43(m、2H)、1.63−1.51(m、4H)、1.39−1.23(m、8H)
【0288】
(8−ブロモ−オクチルオキシメチル)−ベンゼン(3)の合成:化合物2(133g、0.5635モル)を1.5LのDCMに溶解させ、この攪拌溶液にCBr
4(280.35g、0.8456モル)を加え、その反応混合物を0℃まで不活性雰囲気下で冷却した。続いて、温度を20℃未満に保ちながら、PPh
3(251.03g、0.9571モル)を少しずつ加え、加え終わった後、その反応混合物を3時間、室温で攪拌した。反応の完了後、この反応混合物から沈殿した固体(PPh
3O)をろ過によって単離し、このろ液を、砕いた氷(約1.5kg)で希釈し、DCM(3×750mL)で抽出した。有機層を分離し、無水Na
2SO
4で乾燥し、真空下で蒸留した。ヘキサン中の0〜5%エチルアセテートを溶出系として用いて、得られた粗化合物を60〜120メッシュのシリカゲルカラムでマトグラフィーにかけて、化合物3を黄白色の液体として得た(150g、89%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=7.33−7.25(m、5H)、4.49(s、2H)、3.47−3.41(m、2H)、3.41−3.37(m、2H)、1.86−1.80(m、4H)、1.62−1.56(m、2H)、1.42−1.29(m、8H)
【0289】
1,17−ビス−ベンジルオキシ−ヘプタデカン−9−オール(4)の合成:
新たに活性化した削り状Mg(24.08g、1.003モル)を200mLの無水THFに加えてから、その混合物に少量のヨウ素を不活性雰囲気下で加えた。グリニャール形成の開始後、発熱反応を制御しながら、化合物3(150g、0.5016モル)を1Lの乾燥THFに溶解させた溶液をゆっくり加えた。加え終わった後、その反応物を1時間加熱還流してから、室温まで冷却した。続いて、メチルフォーメート(60.24g、1.0033モル)をゆっくり加え、反応を2時間継続させた。完了後、10%HClに続いて水(1L)をゆっくり加えることによって、その反応物をクエンチし、エチルアセテート(3×1L)で抽出した。有機層を5リットルのビーカーに取り、500mLのメタノールで希釈し、0℃まで冷却した。この溶液に、過剰のNaBH
4(約5当量)を少しずつ加えて、HClを加えても切断されなかったフォーメートエステルを加水分解させるようにした。得られた溶液を1時間攪拌してから、揮発性物質を真空下で除去した。残渣を水(1L)中に取り、10%HCl溶液によって酸性化した(P
H4)。続いて、この生成物をエチルアセテート(3×1L)で抽出した。続いて、有機相をロータリーエバポレーターで乾燥および濃縮して、化合物4を固体として得た(57g、24%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=7.35−7.32(m、8H)、7.29−7.24(m、2H)、4.49(s、4H)、3.56(m、1H)、3.46−3.43(m、4H)、1.63−1.56(m、4H)、1.44−1.34(m、28H)。C
13 NMR(100MHz、CDCl
3):δ=138.56、128.21、127.49、127.34、72.72、71.76、70.37、37.37、29.64、29.56、29.47、29.33、26.07、25.54
【0290】
[9−ベンジルオキシ−1−(8−ベンジルオキシ−オクチル)−ノニルオキシ]−tert−ブチル−ジメチルシラン(5)の合成:
化合物4(56g、0.1196モル)を700mLの無水THFに溶解させ、0℃まで冷却した。TBMS−Cl(36.06g、0.2396モル)をゆっくり加えてから、イミダゾール(32.55g、0.4786モル)を不活性雰囲気下で加えた。続いて、この反応物を室温で18時間攪拌してから、氷(約1kg)でクエンチした。この生成物をエチルアセテート(3×500mL)で抽出した。有機層を分離し、飽和NaHCO
3溶液で洗浄して酸性不純物を除去し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧下で蒸発させ粗化合物を得て、この粗化合物をシリカゲル(60〜120メッシュ)によって精製し、0〜10%エチルアセテートヘキサンで溶出して、化合物5を黄色っぽい油として得た(60g、82%)。H
1 NMR(400MHz、CDCl
3):δ=7.33−7.24(m、10H)、4.49(s、4H)、3.60−3.57(m、1H)、3.46−3.43(m、4H)、1.61−1.54(m、4H)、1.41−1.26(m、28H)、0.87(s、9H)、0.02(s、6H)
【0291】
9−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−ヘプタデカン−1,17−ジオール(6)の合成:
化合物5(60g、0.1030モル)を500mLのエチルアセテートに溶解させ、N
2で20分間脱気した。パラジウム炭素(Pd10重量%)(12g)を加え、反応物を水素雰囲気下で18時間攪拌した。完了後、この混合物をセライト床でろ過し、エチルアセテートで洗浄した。ろ液を真空下で蒸発させた。このようにして得られた化合物6(19g、46%)は、次の反応を行うのに十分な純度であった。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=3.64−3.58(m、5H)、1.59(br、2H)、1.57−1.51(m、4H)、1.38−1.22(m、28H)、0.87(s、9H)、0.02(s、6H)
【0292】
9−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−ヘプタデカン二酸(7)の合成:
化合物6(2g、0.0049モル)を無水DMF(40mL)に攪拌溶解させた液に、ピリジニウムジクロメート(2.7g、0.0074モル)を0℃にて不活性雰囲気下で加えた。続いて、この反応混合物を10〜15分間かけて室温まで温め、24時間置いた。続いて、この反応物を水(100mL)で希釈した。DCM(3×40mL)を用いて水相を抽出した。有機相をブライン(1×25mL)で洗浄し、真空下で濃縮し粗酸を得て、続いて、ヘキサン系中の0〜30%エチルアセテートを用いて、この酸を(100〜200メッシュの)シリカゲルカラムによって精製した。純粋な生成物(化合物7)を黄白色の油として得た(0.7g、33%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ=3.61−3.56(m、1H)、2.35−2.32(m、4H)、1.64−1.59(m、4H)、1.40−1.19(m、24H)、0.86(s、9H)、0.017(s、6H)、LC−MS[M+H]−431.00、HPLC(ELSD)純度−96.94%
【0293】
ジ((Z)−ノン−2−エン−1−イル)9−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(8)の合成
二酸7(0.42g、0.97ミリモル)を20mLのジクロロメタンに溶解させ、これに、シス−2−ノネン−1−オール(0.35g、2.44ミリモル)を加えてから、ヒューニッヒ塩基(0.68g、4.9ミリモル)およびDMAP(12mg)を加えた。この混合物に、EDCI(0.47g、2.44ミリモル)を加え、その反応混合物を室温にて一晩攪拌した。続いて、この反応混合物をCH
2Cl
2(40mL)で希釈し、飽和NaHCO
3(50mL)、水(60mL)、およびブライン(60mL)で洗浄した。合わせた有機層を無水Na
2SO
4で乾燥し、溶媒を真空で除去した。このようにして得た粗生成物をCombiflash Rfの精製系(40gシリカゲル、CH
2Cl
2中の0〜10%MeOH)によって精製して、純粋な生成物8を無色の油として得た(0.35g、53%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ5.64(dt、J=10.9、7.4Hz、2H)、5.58−5.43(m、2H)、4.61(d、J=6.8Hz、4H)、3.71−3.48(m、1H)、2.30(t、J=7.6Hz、4H)、2.20−1.98(m、4H)、1.71−1.53(m、4H)、1.31(ddd、J=8.3、7.0、3.7Hz、34H)、1.07−0.68(m、14H)、0.02(s、5H)、
13C NMR(101MHz、CDCl
3)δ178.18、139.81、127.78、81.73、81.42、81.10、76.72、64.59、41.52、41.32、38.76、36.09、34.10、33.93、33.80、33.70、33.59、33.55、33.26、31.95、30.34、29.69、29.58、29.39、27.01、22.56、18.48、0.01
【0294】
ジ((Z)−ノン−2−エン−1−イル)9−ヒドロキシヘプタデカンジオエート(9)の合成
シリル保護ジエステル8(0.3g、0.44ミリモル)をTBAFの1M THF溶液(6mL)に溶解させ、この溶液を40℃で2日間置いた。この反応混合物を水(60mL)で希釈し、エーテル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を濃縮し、このようにして得た粗生成物をカラムによって精製して、純粋な生成物を単離した(0.097g、39%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ5.64(dt、J=10.9、7.4Hz、2H)、5.52(dt、J=11.0、6.8Hz、2H)、4.61(d、J=6.8Hz、4H)、3.57(s、1H)、2.30(t、J=7.5Hz、4H)、2.09(q、J=7.1Hz、4H)、1.75−1.53(m、4H)、1.53−1.06(m、36H)、0.88(t、J=6.8Hz、 6H)、
13C NMR(101MHz、CDCl
3)δ173.98、135.64、123.57、77.54、77.22、76.91、72.14、60.41、37.69、34.54、31.89、29.70、29.60、29.44、29.29、29.07、27.76、25.80、25.15、22.82、14.29
【0295】
ジ((Z)−ノン−2−エン−1−イル)9−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエートの合成
アルコール9(0.083g、0.147ミリモル)を20mLのジクロロメタンに溶解させ、これに、ジメチルアミノ酪酸ヒドロクロリド(0.030g、0.176ミリモル)を加えてから、ヒューニッヒ塩基(0.045g、0.44ミリモル)およびDMAP(2mg)を加えた。この混合物に、EDCI(0.034g、0.176ミリモル)を加え、その反応混合物を室温にて一晩攪拌し、TLC(シリカゲル、CH
2Cl
2中の10%MeOH)によって、出発物質のアルコールが完全に消失したことが示された。この反応混合物をCH
2Cl
2(40mL)で希釈し、飽和NaHCO
3(50mL)、水(60mL)、およびブライン(60mL)で洗浄した。合わせた有機層を無水Na
2SO
4で乾燥し、溶媒を真空で除去した。このようにして得られた粗生成物をCombiflash Rfの精製系(40gシリカゲル、CH
2Cl
2中の0〜10%MeOH)によって精製して、純粋な生成物を無色の油として単離した(0.062g、62%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ5.74−5.58(m、2H)、5.51(dtt、J=9.7、6.8、1.3Hz、2H)、4.95−4.75(m、1H)、4.61(d、J=6.8Hz、4H)、2.35−2.24(m、8H)、2.22(d、J=7.9Hz、6H)、2.09(q、J=6.9Hz、4H)、1.83−1.72(m、2H)、1.60(dd、J=14.4、7.2Hz、4H)、1.49(d、J=5.7Hz、4H)、1.41−1.13(m、30H)、0.88(t、J=6.9Hz、6H)、
13C NMR(101MHz、CDCl
3)δ173.72、173.36、135.40、123.35、74.12、60.18、58.95、45.46、34.30、34.11、32.45、31.67、29.38、29.35、29.17、29.07、28.84、27.53、25.28、24.93、23.16、22.59、14.06、C
41H
75NO
6(MH
+)の分子量計算値:678.04、実測値:678.5
【0296】
実施例8
本発明の化合物1の合成には、下記のさらに短いルートを用いてもよい。市販の9−ブロモノン−1−エン10をマグネシウムで処理して、対応するグリニャール試薬を形成させ、この試薬をエチルフォーメートと反応させ、対応する付加体11を得て、この付加体をブロモブチリルクロリドで処理して、ブロモエステル12を得た。このブロモエステル12をRuO
4で処理して、二酸13を得た。このブロモ二酸13をジメチルアミンで処理して、アミノ二酸14を得た。このアミノ二酸14をアルコール15とカップリングして、目的の生成物を良好な収量で得た。
スキーム8
【化66】
【0297】
ノナデカ−1,18−ジエン−10−オール(11)の合成
火力乾燥した500mLの丸底フラスコに、新たに活性化した削り状Mg(9g)を加え、そのフラスコにマグネチックスターバー、滴下漏斗、および還流冷却器を取り付けた。この装置を脱気し、アルゴン置換し、シリンジを介して100mLの無水エーテルをフラスコに加えた。ブロミド3(51.3g、250ミリモル)を無水エーテル(100mL)に溶解させ、上記の滴下漏斗に加えた。勢いよく攪拌しながら、このエーテル溶液約5mLを上記の削り状Mgに加えた。発熱反応が確認され(グリニャール試薬の形成の確認/促進を行うために、5mgのヨウ素を加え、急速な脱色が確認され、グリニャール試薬の形成が確認された)、エーテルの還流を開始した。フラスコを水中で冷やすことによって、穏やかな還流下で反応を維持しながら、ブロミド溶液の残りを滴下した。加え終わった後に、その反応混合物を35℃に1時間保ってから、氷浴で冷やした。エチルフォーメート(9g、121ミリモル)を無水エーテル(100mL)に溶解させ、上記の滴下漏斗に移し、攪拌しながら上記の反応混合物に滴下した。発熱反応が観察され、上記の反応混合物の還流を開始した。反応の開始後、フォーメートのエーテル溶液の残りを液流として素早く加え、その反応混合物をさらに1時間、周囲温度で攪拌した。10mLのアセトンに続いて、氷冷水(60mL)を滴下することによって、上記の反応物をクエンチした。溶液が均一になるまで、上記の反応混合物をH
2SO
4水溶液(10体積%、300mL)で処理し、層を分離した。水相をエーテル(2×200mL)で抽出した。合わせたエーテル層を乾燥し(Na
2SO
4)、濃縮し粗生成物を得て、この粗生成物をカラム(シリカゲル、ヘキサン中の0〜10%エーテル)クロマトグラフィーによって精製した。この生成画分を蒸発させて、純粋な生成物11を白色固体として得た(30.6g、90%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ7.26(s、1H)、5.81(ddt、J=16.9、10.2、6.7Hz、8H)、5.04−4.88(m、16H)、3.57(dd、J=7.6、3.3Hz、4H)、2.04(q、J=6.9Hz、16H)、1.59(s、1H)、1.45(d、J=7.5Hz、8H)、1.43−1.12(m、94H)、0.88(t、J=6.8Hz、2H)、
13C NMR(101MHz、cdcl
3)δ139.40、114.33、77.54、77.22、76.90、72.21、37.70、34.00、29.86、29.67、29.29、29.12、25.85
【0298】
ノナデカ−1,18−ジエン−10−イル4−ブロモブタノエート(12)の合成
アルコール11(5.6g、20モル)を無水DCM(300mL)に溶解させた溶液に、ブロモブチルクロリド(20ミリモル)を0℃にて不活性雰囲気下でゆっくり慎重に加えた。この反応混合物を室温まで温め、20時間攪拌し、TLC(シリカゲル、ヘキサン中の10%エチルアセテート)によってモニタリングした。反応が完了したら、混合物を水(400mL)で希釈し、有機層を分離した。続いて、有機相をNaHCO
3飽和溶液(1×400mL)に続いてブライン(1×100mL)で洗浄し、真空下で濃縮した。続いて、粗生成物をシリカゲル(100〜200メッシュ)カラムによって精製し、ヘキサン中の2〜3%エチルアセテート溶液で溶出して、6g(90%)の所望の生成物12を無色の液体として得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ5.80(ddt、J=16.9、10.2、6.7Hz、2H)、5.05−4.81(m、5H)、3.46(t、J=6.5Hz、2H)、2.48(t、J=7.2Hz、2H)、2.17(p、J=6.8Hz、2H)、2.11−1.93(m、4H)、1.65−1.44(m、4H)、1.43−1.17(m、19H)、
13C NMR(101MHz、cdcl
3)δ172.51、139.37、114.35、77.54、77.23、76.91、74.86、34.31、33.99、33.01、32.96、29.65、29.56、29.24、29.09、28.11、25.52.
【0299】
9−((4−ブロモブタノイル)オキシ)ヘプタデカン二酸(13)の合成
ブロモエステル12(12.1g、28.2ミリモル)のジクロロメタン(300mL)およびアセトニトリル(300mL)溶液に、RuCl
3(1.16g、5モル%)を加え、その混合物を10℃まで冷却し、水(400mL)中のナトリウムメタペリオデート(60g)を滴下した。これを10℃で20時間攪拌した。この反応混合物を水で希釈した。その層を分離し、有機層に、飽和ブライン溶液を攪拌しながら加え、続いて、脱色(濃緑色から黄白色への脱色)のために、3%ナトリウムスルフィド溶液を滴下した。層を分離し、有機層をナトリウムサルフェートで乾燥し、減圧で蒸発させ、純粋な生成物を得た。C
20H
35BrO
7の分子量計算値:467.39、実測値:465.4(M−2H)
【0300】
9−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカン二酸(14)の合成
ジメチルアミンの2M THF溶液(20mL)に、ブロモ酸13(2ミリモル)を溶解させ、これに、1gの無水K
2CO
3を加え、この混合物を耐圧瓶中で50℃にて一晩加熱した。TLCによって、反応の完了が示された。この反応混合物を酢酸で酸性化し、水(100mL)で希釈し、ジクロロメタン(2×60mL)で抽出した。合わせた有機層を濃縮乾燥し、そのままの状態で次の反応で用いた。C
23H
43NO
6の分子量計算値:429.59、実測値:430.6(MH)
+
【0301】
ジ((Z)−ノン−2−エン−1−イル)9−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエートの合成
化合物8の合成に関して記載したように、二酸14を対応するジエステルに変換したところ、解析データとスペクトルデータは、上記の生成物のデータと整合していた。
【0302】
実施例9
別のアプローチでは、本発明の化合物1の合成には、下記の合成アプローチを用いる。
スキーム9
【化67】
【0303】
実施例10:本発明のカチオン性脂質由来のリポソームを用いたFVIIのインビボ評価
C57BL/6マウス(マサチューセッツ州のCharles River Labs)に、食塩水または所望の調合物中のsiRNAのいずれかを尾静脈注射によって、0.01mL/gの体積で接種する。投与後さまざまな時点に、イソフルレン吸入によってマウスに麻酔し、眼窩後部採血によって血液を血清分離管中に採取した。発色アッセイ(オハイオ州DiaPharma GroupのCoaset Factor VII、または、オハイオ州Aniara CorporationのBiophen FVII)をメーカーのプロトコールに従って用いて、サンプルにおいて、第VII因子タンパクの血清レベルを測定する。食塩水で処理したマウスから採取した血清を用いて、検量線を作成した。肝臓中mRNAレベルを評価する実験では、投与後のさまざまな時点で、マウスを殺処分し、肝臓を回収し、液体窒素で急速冷凍する。冷凍した肝臓組織は粉砕する。組織溶解物を調製し、分岐DNAアッセイ(カリフォルニア州のPanomicsのQuantiGene Assay)を用いて、第VII因子およびapoBの肝臓中mRNAレベルを測定する。
【0304】
実施例11:インビボのげっ歯類第VII因子サイレンシングモデルによる、さまざまなカチオン性脂質を含む脂質粒子調合物の効能の測定
第VII因子(FVII)(凝固カスケードにおける顕著なタンパク)は肝臓(肝細胞)で合成され、血漿に分泌される。血漿中のFVIIレベルは、簡単なプレートベースの比色アッセイによって測定することができる。したがって、FVIIは、肝細胞由来タンパクのsiRNA媒介性ダウンレギュレーションを割り出すとともに、核酸脂質粒子およびsiRNA(表19に示されているsiRNAなど)の血漿中濃度および組織分布をモニタリングするための利便的なモデルの代表的なものである。
【表15】
【0305】
本明細書に記載されているカチオン性脂質を用いて、国際公開第2010/088537号(参照によりその全体が組み込まれる)に記載されているように、インライン混合法を用いて、AD−1661の二本鎖を含むリポソームを調合する。脂質粒子は、50%のカチオン性脂質/10%のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/38.5%のコレステロール/1.5%のPEG−DMG(1−(モノメトキシ−ポリエチレングリコール)−2,3−ジミリストイルグリセロール、平均PEG分子量:2000)というモル比を用いて調合する。
【0306】
C57BL/6マウス(マサチューセッツ州のCharles River Labs)に、尾静脈注射によって、食塩水、または調合したsiRNAのいずれかを接種する。投与後のさまざまな時点に、眼窩後部採血によって血清サンプルを採取する。発色アッセイ(オハイオ州のAniara CorporationのBiophen FVII)を用いて、サンプルにおいて、第VII因子タンパクの血清レベルを測定する。第VII因子の肝臓中mRNAレベルを測定するために、マウスを殺処分し、肝臓を回収し、液体窒素で急速冷凍した。冷凍した組織から組織溶解物を調製し、分岐DNAアッセイ(カリフォルニア州のPanomicsのQuantiGene Assay)を用いて、第VII因子の肝臓中mRNAレベルを定量化する。
【0307】
FVII活性は、FVII siRNAで処理したマウスで、C57BL/6マウスへの静脈内(ボラス)注射後48時間の時点に評価する。血清または組織中のタンパクレベルを測定するための市販のキットをメーカーの指示に従ってマイクロプレート規模で用いて、FVIIを測定する。FVIIの減少は、未処理のコントロールマウスを対照として測定し、その結果は、残存FVIIの割合(%)として表す。それぞれの新規リポソーム組成物のスクリーニングでは、2つの投与レベル(0.05および0.005mg/kgのFVII siRNA)を用いる。
【0308】
実施例12:予形成ベシクルを用いる、siRNAの調合
予形成ベシクル法を用いて、カチオン性脂質含有粒子を作製する。カチオン性脂質、DSPC、コレステロール、およびPEG−脂質をそれぞれ40/10/40/10というモル比で、エタノールに可溶化する。この脂質混合物を混合しながら水性緩衝液(50mMシトレート、pH4)に加え、最終的なエタノール濃度がが30%(体積/体積)、最終的な脂質濃度が6.1mg/mLになるようにし、室温で2分間平衡化してから押し出す。ベシクルの直径(Nicomp解析によって割り出す)が70〜90nmになるまで、Lipex Extruder(ブリティッシュコロンビア州バンクーバーのNorthern Lipids)を用いて、22℃で、ポアサイズ80nmのフィルター(Nuclepore)を2枚積み重ねたものに水和脂質を通して押し出す。このためには一般に、1〜3回通す必要がある。小ベシクルを形成しないいくつかのカチオン性脂質混合物では、その脂質混合物を低pH緩衝液(50mMシトレート、pH3)で水和させて、DSPC頭部基上のフォスフェート基をプロトン化することによって、安定的な70〜90nmのベシクルの形成を助ける。
【0309】
FVII siRNA(50mMシトレートに可溶化したもの、30%エタノールを含むpH4の水溶液)を混合しながら、35℃に予め平衡化したベシクルに、約5mL/分の速度で加える。最終的な標的siRNA/脂質比0.06(wt/wt)になったら、その混合物をさらに30分間、35℃でインキュベートして、ベシクルの再構成とFVII siRNAの封入を行う。続いて、エタノールを除去し、透析、またはタンジェンシャルフローダイアフィルトレーションにかけるかのいずれかによって、外部緩衝液をPBS(155mM NaCl、3mM Na2HPO4、1mM KH2PO4、pH7.5)と置き換える。サイズ排除スピンカラムまたはイオン交換スピンカラムを用いて、非封入siRNAの除去後、封入siRNAの脂質に対する最終的な比率を割り出す。
【0310】
実施例13:脂質調合物の効能のインビボ測定
最初に、雌7〜9週齢、15〜25gの雌C57BL/6マウスで、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1.0mg/kg、および5.0mg/kg(処理グループ当たり3匹のマウス)にて、試験調合物のFVIIノックダウンを評価する。すべての調査には、フォスフェート緩衝化食塩水(PBS、コントロールグループ)またはベンチマーク調合物のいずれかを接種したマウスが含まれている。調合物は、試験直前に、PBS中における適切な濃度まで希釈する。マウスの体重を測定し、適切な投与量を計算する(体重1g当たり10μl)。試験およびベンチマーク調合物、ならびにPBS(コントロールマウス用)を外側尾静脈によって静脈内投与する。24時間後、ケタミン/キシラジンの腹腔内注射によってマウスに麻酔し、心臓穿刺によって、血清分離管(BD Microtainer)に500〜700μlの血液を採取する。血液を2,000×gで10分間、15℃で遠心分離し、血清を回収し、解析まで−70℃で保管する。血清サンプルを37℃で30分間解凍し、PBSで希釈し、96ウェルのアッセイプレートに分注する。発色アッセイ(Hyphen BioMedのBiophen FVIIキット)をメーカーの指示に従って用いて、第VII因子レベルを評価し、405nm波長フィルターを備えたマイクロプレートリーダーで吸光度を測定する。血漿中FVIIレベルを定量化し、コントロールマウスから採取した血清のプールサンプルから作成した検量線を用いて、ED
50(コントロールマウスのFVIIレベルと比べて、血漿中FVIIレベルを50%低下させる投与量)を計算する。高レベルのFVIIノックダウン(ED
50<<0.1mg/kg)を示した当該調合物を、さらに低い投与量範囲の別個の実験で再試験して、効力を確認するとともに、ED
50レベルを定める。
【0311】
実施例14:マウスにおける脂質プロファイルと組織浄化を割り出すための調査
本発明によるカチオン性脂質の、マウスにおける脂質プロファイルと組織浄化を割り出す目的で調査を行った。
【0312】
雄マウス(C57BL、20〜30g)を4つのグループに分け、下記の表20に示されているように、本発明の化合物1、2、もしくは3、または対照脂質のいずれかを(静脈内)投与した。
【表16】
【化68】
【0313】
マウスは絶食させなかった。投与後0.17時間、8時間、24時間、72時間、168時間、336時間、および672時間に、血液、肝臓、および脾臓のサンプル(グループ当たりタイムポイントごとに2つのサンプル)を回収した。
【0314】
図1は、グループI〜IVのそれぞれのマウスの経時肝臓中脂質濃度を示している。肝臓中薬物動態データを下記の表21に示す。
【表17】
【0315】
化合物1および3の予想代謝経路が
図2に示されている。これらの代謝産物の濃度は、肝臓で測定した。その結果は下記の表22に示されている。24時間後のすべての測定値は、(投与後72時間、168時間、336時間、および672時間の測定値を含め、)定量化レベルを下回っていた(BLQ)。
【表18】
【0316】
図3は、グループI〜IVのそれぞれのマウスの経時脾臓中脂質濃度を示している。脾臓中薬物動態データを下記の表23に示す。
【表19】
【0317】
脾臓中の化合物1〜3の代謝産物の濃度を測定し、その結果は下記の表24に示されている。
【表20】
【0318】
図4は、グループI〜IVのそれぞれのマウスの経時血漿中脂質濃度を示している。血漿中薬物動態データを下記の表25に示す。
【表21】
【0319】
血漿中の化合物1〜3の代謝産物の濃度を測定し、その結果は下記の表26に示されている。24時間後のすべての測定値は、(投与後72時間、168時間、336時間、および672時間の測定値を含め、)定量化レベルを下回っていた(BLQ)。
【表22】
【0320】
図1、3、および4、ならびに表22、24、および26から分かるように、本発明の化合物1、2、および3は、対照脂質と比べると、組織浄化性と活性が大幅に向上している。
【0321】
上記の詳述に鑑み、実施形態に対して上記およびその他の変更を行うことができる。一般に、下記の特許請求の範囲では、用いられている用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲に開示されている具体的な実施形態に限定するものと解釈すべきではなく、本発明の特許請求に付与されるすべての範囲の均等物とともに、考え得るあらゆる実施形態を含むものと解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。