特許第5893645号(P5893645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5893645超音波腐食監視センサアセンブリおよびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893645
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】超音波腐食監視センサアセンブリおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   G01N29/24
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-548476(P2013-548476)
(86)(22)【出願日】2012年1月4日
(65)【公表番号】特表2014-505247(P2014-505247A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】US2012020163
(87)【国際公開番号】WO2012094383
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】12/983,931
(32)【優先日】2011年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】ミナチ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】サラ,エイド,エス.
(72)【発明者】
【氏名】アル−スバイ,ギャザイ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】レイチ,エリカ
(72)【発明者】
【氏名】ライト,グレン
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−130710(JP,A)
【文献】 特開平06−347249(JP,A)
【文献】 特開2006−234761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01B 17/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの残壁厚を測定するために、前記パイプのパイプ外壁上に永久的に装着される、高精度腐食監視センサアセンブリであって、前記パイプは、事前に選択される直径範囲内の任意の直径を有し、前記高精度腐食監視センサアセンブリは、
パイプの残壁厚を測定するための超音波トランスデューサであって、前記超音波トランスデューサの第1の底部は、前記第1の底部が、第1の装着場所において前記パイプ外壁に対して実質的に接線方向に位置付けられる際、前記パイプのパイプ外壁の第1の装着場所に接着するように位置決めされる、超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサを収納するため、および前記超音波トランスデューサを前記パイプ外壁の第2の装着場所および第3の装着場所に接着するための調節可能なトランスデューサ取付け具とを備えて構成され、
前記トランスデューサ取付け具は、
前記超音波トランスデューサに取付けられる横断部材であって、前記横断部材の第1の遠位端は、それに取付けられた第1の枢動ピンを有し、前記横断部材の第2の遠位端は、それに取付けられた第2の枢動ピンを有し、前記第1の枢動ピンを中心とした第1の回転軸は、前記第2の枢動ピンを中心とした第2の回転軸に対して実質的に平行である、横断部材と、
前記調節可能なトランスデューサ取付け具を支持するための第1の塔状部であって、前記第1の塔状部の第2の底部は、磁性であり、前記第2の底部が、前記第2の装着場所に前記パイプ外壁に対して実質的に接線方向に位置付けられる際、前記パイプ外壁の前記第2の装着場所に接着するように位置決めされ、前記第1の塔状部は、第1のトラック内の可変位置に前記第1の枢動ピンを受容する、第1のトラックを有する、第1の塔状部と、
前記調節可能なトランスデューサ取付け具を支持するための第2の塔状部であって、前記第2の塔状部の第3の底部は、磁性であり、前記第3の底部が、前記第3の装着場所に前記パイプ外壁に対して実質的に接線方向に位置付けられる際、前記パイプ外壁の前記第3の装着場所に接着するように位置決めされ、前記第2の塔状部は、前記第のトラック内の可変位置に前記第2の枢動ピンを受容する、第2のトラックを有する、第2の塔状部と、
前記第1のトラック内の前記第1の枢動ピンを中心とした前記第1の塔状部の調節を制限することによって、および前記第2のトラック内の前記第2の枢動ピンを中心とした前記第2の塔状部の調節を制限することによって、前記調節可能なトランスデューサ取付け具共々剛性にするための2つ以上の締結具と、
を含む、高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項2】
前記超音波トランスデューサの前記第1の底部は、エポキシ接着を使用して、前記パイプのパイプ外壁に接着するように位置決めされる、請求項1に記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項3】
前記エポキシ接着は、超音波伝達媒質である、請求項2に記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項4】
前記第1の塔状部および前記第2の塔状部のそれぞれは、前記第2の底部および第3の底部のうちのそれぞれ1つに位置付けられる磁石を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項5】
前記超音波トランスデューサは、前記超音波トランスデューサによって行われる測定が向上されるように、前記超音波トランスデューサのセンサ要素を前記パイプ外壁160から分離するための遅延線を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の装着場所、前記第2の装着場所、および前記第3の装着場所は、前記パイプ外壁の共通弧の点であり、前記パイプ外壁は、6インチより大きい任意の直径を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項7】
1の軸および第2の軸は、前記共通弧を含有する平面と直交する、請求項6に記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項8】
前記第1のトラックおよび前記第2のトラックは、前記第1の塔状部の前記第2の底部および前記第2の塔状部の前記第3の底部を、前記パイプ外壁に対して実質的に接線方向に位置付けることができるように、前記第1の塔状部上および前記第2の塔状部上にそれぞれ位置決めされる、請求項1〜7のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項9】
前記第1の装着場所、前記第2の装着場所、および前記第3の装着場所は、同一平面上である、請求項1〜8のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項10】
1の軸および第2の軸は、前記第1の装着場所、前記第2の装着場所、および前記第3の装着場所を含有する平面に対して平行である、請求項1〜9のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項11】
前記横断部材は、前記超音波トランスデューサの筐体に取付けられ、前記筐体は、前記筐体によって適用される挟持力によって、前記超音波トランスデューサに取付けられる、請求項1〜10のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項12】
前記横断部材は、1つ以上の滑りねじを使用して、前記超音波トランスデューサの前記筐体に取付けられる、請求項11に記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項13】
1つ以上の滑りねじは、筐体および前記超音波トランスデューサを前記パイプ外壁の方向に付勢するように、実質的に同軸のコイルバネによって包まれる、請求項1〜12のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項14】
前記横断部材は、ねじ込み装着を使用して、前記超音波トランスデューサおよび筐体のうちの1つに取付けられ、前記横断部材、ならびに前記超音波トランスデューサおよび前記筐体のうちの1つは、適合するねじ山を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の高精度腐食監視センサアセンブリ。
【請求項15】
事前に選択される直径範囲内の任意の直径を有する容器の残壁厚を測定するための高精度腐食監視センサシステムであって、
それぞれの容器セグメントの残壁厚を測定するための、請求項1に記載の複数の高精度腐食監視センサアセンブリと、
前記複数の高精度腐食監視センサアセンブリからの信号を送受信する、前記複数の高精度腐食監視センサアセンブリと通信しているパルス発生器と、
受信信号に応じるデータを獲得する、前記パルス発生器と通信しているオシロスコープと、
前記オシロスコープで獲得される前記データに応じる前記容器セグメントの残壁厚を推定する、前記オシロスコープと通信しているデータ分析システムと、
を備える、前記高精度腐食監視センサシステム。
【請求項16】
前記複数の高精度腐食監視アセンブリのそれぞれの前記第1の塔状部および前記第2の塔状部は、対応する容器の直径に応じるそれぞれの横断部材に対して位置決めされる、請求項15に記載の高精度腐食監視センサシステム。
【請求項17】
前記複数の高精度腐食監視センサアセンブリのそれぞれは、複数の同軸ケーブルのそれぞれの同軸ケーブルによって、前記パルス発生器に取付けられ、前記複数の同軸ケーブルのそれぞれは、50メートル以下の長さを有する、請求項15または16に記載の高精度腐食監視センサシステム。
【請求項18】
前記データ分析システムは、隣接する後壁信号の間の時間差に応じて壁厚を判定するように構成される、請求項15〜17に記載の高精度腐食監視センサシステム。
【請求項19】
前記データ分析システムは、1つの前壁信号および1つの後壁信号のエンベロープのパルス幅の分離に応じて壁厚を判定するように構成される、請求項15〜18に記載の高精度腐食監視センサシステム。
【請求項20】
前記高精度腐食監視センサシステムは、
前記複数の高精度腐食監視センサアセンブリのうちの1つに対応する、それぞれの容器セグメントの表面温度を測定するための複数の温度計をさらに備え、
前記データ分析システムは、表面温度にさらに応じて壁厚を推定するように構成される、
請求項15〜19に記載の高精度腐食監視センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、概して、石油化学パイプラインの分野に関し、より具体的には、石油化学パイプラインにおける腐食の電子的検出および監視の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
石油化学産業におけるパイプラインは、多くの場合、過度の腐食によってもたらされる損傷の影響を受けやすい。パイプに障害が発生する前の平均寿命は、大部分が搬送される気体または液体媒体の化学的および物理的特性、パイプの周囲の環境条件、ならびに金属損失につながる陽極挙動を防止する、好適な陰極防食(CP)システムに依存する。場合によっては、パイプの特定の場所のみが相当の腐食にさらされる。パイプのそのような腐食が検出され、監視されない場合、金銭的損失、安全上の問題、および環境被害を含む、望ましくない結果をもたらす可能性がある、損傷、故障、ならびに流出につながる可能性がある。したがって、パイプの定期的な稼働中検査(OSI)は、必要不可欠な危機管理手順である。
【0003】
鉄パイプラインの内壁の孔食等の腐食は、パイプの隔離された、いわゆる「限界(臨界)」領域または場所で発生する可能性が高い。時には、限界(臨界)位置は、OSIの目的で到達することが困難である。例えば、パイプの限界領域にアクセスするためには、通常、足場または掘削作業が必要とされる。そのような作業を定期的に実施することは、多くの場合、非現実的であり、高価であり、かつ機器および人材の大規模な移動を必要とする。
【0004】
例えば、パイプの外面上の電子モニタを使用する、パイプラインの限界領域の遠隔監視のための解決手段が、当該技術分野において既知である。しかしながら、そのような解決手段は、(i)目標とするパイプライン上の隔離された場所について高精度の一貫した測定を得られるための構造的剛性が欠如していること、(ii)より大きく、かつより正確な超音波トランスデューサ(超音波変換器)または遅延線の追加に適応できないこと、(iii)高温のパイプライン表面、風もしくは砂による浸食、またはトランスデューサもしくは挟持機器の腐食等の環境要因に耐えることができないこと、ならびに(iv)異なるパイプサイズもしくは平らな表面上への装着に容易に適応するための調節機能が欠如していることを含む、1つ以上の不利点を呈する。
【0005】
したがって、当該技術分野において、非常に正確な電子監視機器を遠隔パイプ位置上に装着でき、パイプライン上の精密な位置で一貫した測定を得るのに十分な構造的剛性を有する、高精度腐食監視アセンブリの必要性が存在する。また、当該技術分野において、永久的設置のために、環境要因に耐える構造および材料特性を有する、高精度腐食監視アセンブリの必要性も存在する。また、当該技術分野において、そのような剛性、そのような構造、およびそのような材料特性を提供することができ、一方、また、より大きく、より正確なトランスデューサおよび遅延線に適応することもできるような、アセンブリの必要性も存在する。また、当該技術分野において、施設内に見られ得る異なるパイプサイズまたは平らな表面のいずれの上にもアセンブリを容易に配備することを可能にする、剛性および調節機能の両方を有する、高精度腐食監視アセンブリの必要性も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願人は、関連技術の不利点を認識し、本発明において、有利に、それに取付けられた遅延線を有するトランスデューサを含む、より大きく、より正確なトランスデューサを、遠隔のアクセス不可能なパイプ位置上に永久的に装着することを可能にする、実施形態を提供した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、トランスデューサでの読み取り値の正確さを改善するように、それに取付けられた遅延線(約15mmの追加の積み重ね高さ)を有する、非常に正確な5MHz〜10MHzのトランスデューサの永久的設置を可能にする、トランスデューサ取付け具(THDF)と称される、改良された挟持固定具を提供する。特に、トランスデューサおよび取付けられた遅延線の高さに関して、現場の環境要因によりトランスデューサに作用する横力は、追加の支持体がなければ、トランスデューサ(または遅延線)とパイプとの間のエポキシ接着を損なわせる、またはそれを剥離する可能性が高い。本発明の実施形態は、パイプ上に2つの追加の接着点と、トランスデューサの装着場所を高精度で維持するのに十分な剛性を有する構造体とを有する、THDFを提供する。
【0008】
本発明の実施形態は、そのような非常に正確なトランスデューサおよび取付けられた遅延線の形状に適応するだけでなく、また、直径範囲から選択される任意の直径を有するパイプ上への設置に適応するように調節可能でもある、剛性構造体を提供する。例えば、本発明の実施形態は、平らな表面(「直径範囲」)を含む、6インチ以上の外径を有するパイプに装着する、剛性THDFを提供する。図4を参照して、直径範囲にわたり、遅延線を含む本明細書に記載のトランスデューサに適応するための調節機能のレベルを有する、THDFを提供するための限界(臨界)寸法を示すことができる。本発明の実施形態は、それが設置されるパイプの直径に関わらず、THDFの剛性およびTHDFによってパイプに適用される力が、直径範囲にわたって一定となるように調節可能である。本発明の実施形態は、剛性かつ調節可能であるため、ならびにTHDFの剛性およびそれによってパイプに適用される力は、直径範囲にわたって一定であるため、THDFは、トランスデューサが、パイプサイズによる、もしくは温度等の環境要因によるTHDFの構成のいかなる曲がりまたは変化に起因する誤差も最小となる測定を提供可能にする。
【0009】
本発明の実施形態は、トランスデューサを剥離する外部横力に対してそれほど脆弱ではないため、および本発明の実施形態は、トランスデューサのピンポイント位置への永久的かつ高精度な位置決めを可能にするため、本発明の実施形態は、人が、アセンブリの保守または再調節のために設置場所に日常的にアクセスする必要性を低減する。したがって、本発明の実施形態は、アクセスが不便な位置、または定期的にアクセス不可能な位置(掘削または足場が必要とされる際等)により効果的に設置することができる。例えば、本発明の実施形態が、パイプラインの20か所に設置される場合、OSIプログラムのための現行の足場および掘削費用における年間の節約は、約$25,000になる可能性がある。さらに、実施形態は、小さい設置面積を有するTHDFを提供し、これは、THDFをパイプに装着するために必要とされる掘削または足場の量を最小限にする。
【0010】
さらに、本発明の実施形態によって提供される測定の正確さおよび精度は、原油に添加される腐食防止剤の注入量の制御等において、高い忠実性で腐食率を確認するために、そのようなリアルタイム測定が使用され得る継続的な監視作業に、本発明の実施形態を採用することを可能にする。
【0011】
本発明の実施形態は、事前に選択される直径範囲内の任意の直径を有するパイプの残壁厚を測定するための、パイプのパイプ外壁上に永久的に装着される、高精度腐食監視センサアセンブリを提供する。
【0012】
高精度腐食監視センサアセンブリを提供する本発明の実施形態は、パイプの残壁厚を測定するための超音波トランスデューサを含むことができる。そのような実施形態では、超音波トランスデューサの第1の底部は、第1の底部が第1の装着場所にパイプ外壁に対して実質的に接線方向に位置決めされる際、パイプのパイプ外壁の第1の装着場所に接着するように位置決めされる。
【0013】
高精度腐食監視センサアセンブリを提供する本発明の実施形態は、超音波トランスデューサを収納するため、および超音波トランスデューサをパイプ外壁の第2の装着場所および第3の装着場所に接着するための調節可能なトランスデューサ取付け具を含む。
【0014】
調節可能なトランスデューサ取付け具を備えた高精度腐食監視センサアセンブリを提供する本発明の実施形態は、超音波トランスデューサに取付けられた横断部材をさらに含む。横断部材の第1の遠位端は、それに取付けられた第1の枢動ピンを有し、横断部材の第2の遠位端は、それに取付けられた第2の枢動ピンを有する。第1の枢動ピンを中心とした第1の回転軸は、第2の枢動ピンを中心とした第2の回転軸に対して実質的に平行である。
【0015】
調節可能なトランスデューサ取付け具を備えた高精度腐食監視センサアセンブリを提供する本発明の実施形態は、調節可能なトランスデューサ取付け具を支持するための第1の塔状部をさらに含む。第1の塔状部の第2の底部は、磁性を有し、且つ、第2の底部が第2の装着場所においてパイプ外壁に対して実質的に接線方向に位置決めされる際、パイプ外壁の第2の装着場所に接着するように位置決めされる。第1の塔状部は、第1のトラック内の可変位置に第1の枢動ピンを受容する、第1のトラックを有する。
【0016】
調節可能なトランスデューサ取付け具を備えた高精度腐食監視センサアセンブリを提供する本発明の実施形態は、調節可能なトランスデューサ取付け具を支持するための第2の塔状部をさらに含む。第2の塔状部の第3の底部は、磁性を有し、且つ、第3の底部が第3の装着場所においてパイプ外壁に対して実質的に接線方向に位置決めされる際、パイプ外壁の第3の装着場所に接着するように位置決めされる。第2の塔状部は、第1のトラック内の可変位置に第2の枢動ピンを受容する、第2のトラックを有する。
【0017】
調節可能なトランスデューサ取付け具を備えた高精度腐食監視センサアセンブリを提供する本発明の実施形態は、第1のトラック内の第1の枢動ピンを中心とした第1の塔状部の調節を制限することによって、および第2のトラック内の第2の枢動ピンを中心とした第2の塔状部の調節を制限することによって、調節可能なトランスデューサ取付け具共々剛性にするための2つ以上の締結具をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の特長および利点、ならびに明らかになるその他のものが達成され、より詳細に理解することができるように、本明細書の一部を構成する添付の図面に図示される、その実施形態を参照することによって、上記に簡潔に要約される本発明のより具体的な説明が与えられ得る。しかしながら、図面は、本発明の実施形態のみを図示し、したがって、本発明は、他の同等に有効な実施形態を許容し得るため、その範囲の限定と見なされるべきでないことが留意される。
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態による、パイプおよびそれに取付けられたアセンブリの軸方向断面を示す概略図である。
【0020】
図2図2は、本発明の実施形態による、パイプおよびそれに取付けられたアセンブリの軸方向断面を示す概略図である。
【0021】
図3図3A図3Dは、本発明の実施形態による、アセンブリの構成要素部品の斜視図を示す概略図である。
【0022】
図4図4は、本発明の実施形態による、アセンブリの軸方向図を示す設計図である。測定値は、最初にインチで、括弧内にミリメートルで提供される。
【0023】
図5図5は、本発明の実施形態による、トランスデューサ信号およびトランスデューサ信号の正規化高速フーリエ変換を示すグラフである。
【0024】
図6図6は、本発明の実施形態による、トランスデューサ信号を示すグラフである。
【0025】
図7図7は、本発明の実施形態による、トランスデューサ信号を示すグラフである。
【0026】
図8図8は、本発明の実施形態による、トランスデューサ信号を示すグラフである。
【0027】
図9図9は、本発明の実施形態による、トランスデューサおよびそれに取付けられた遅延線を示す概略図面である。
【0028】
図10図10は、本発明の実施形態による、パイプに取付けられたアセンブリを示す概略図面である。
【0029】
図11図11は、本発明の実施形態による、システムを示す概略図である。
【0030】
図12図12A図12Bは、本発明の実施形態による、アセンブリの構成要素部品を示す概略図面である。
【0031】
図13図13は、本発明の実施形態による、コンピュータプログラム製品およびコンピュータ実行方法を示す、概略図ならびにフローチャートである。
【0032】
図14図14は、本発明の実施形態による、トランスデューサの周波数応答を示すグラフである。
【0033】
図15図15は、本発明の実施形態による、コンピュータプログラム製品およびコンピュータ実行方法を示す、概略図ならびにフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照して示すことができる本発明の実施形態は、パイプライン、パイプ、または容器の精密な場所で継続的な壁厚監視を実施することができるように、例えば、パイプ101のパイプ外壁102上のようなパイプライン、パイプ、または容器の外壁上に永久的に装着される、高精度腐食監視アセンブリ100(HPCM)を提供する。監視アセンブリ100は、本明細書において、HPCMもしくは「HPCMセンサ」または「HPCMアセンブリ」と称される場合がある。図10を参照すると、パイプ101に装着された、本発明の実施形態によるHPCM100が示されている。本発明の実施形態は、本明細書において、「パイプ」に関して記載されるが、本発明は、そのような実施形態に限定されず、また、平らな表面を有するものを含む、他のタイプの容器に関して使用することもできる。
【0035】
HPCM100の永久的な装着は、HPCM100が設置場所で環境的影響力にさらされる場合にさえ、ある期間にわたる複数の測定サイクルにおける一貫した測定を可能にする。例として、パイプ101は、2ミリメートル(mm)〜30mmの範囲の厚さ測定値を有する炭素鋼パイプまたは金属シートである。パイプ101は、例えば、摂氏120度(℃)と高い温度に達するパイプ外壁102をもたらす液体もしくは気体内容物を貯蔵または搬送することができる。パイプ101は、例えば、完全に、もしくは部分的に、地表下に埋められる、海面下に沈められる、または空中に持ち上げられる可能性がある。したがって、HPCM100は、例えば、砂、土、地下水、海水、または風によってもたらされる、横力、浸食、および腐食を含む環境要因にさらされる場合がある。
【0036】
図1を参照して見ることができるように、HPCM100は、パイプの内壁または表面103に沿って、以前に腐食孔104が検出されたパイプ101の領域等のパイプライン、パイプ、または容器の限界(臨界)領域に位置付けられる。例えば、C走査技術を使用して、腐食孔の場所を検出することができ、HPCM100は、腐食孔104の場所に対応するパイプの外面102上の位置に設置され得る(例えば、HPCM100が反転され得る6時の位置でさえ)。したがって、HPCM100は、腐食もしくは欠陥が進行する際の、腐食孔104または他の欠陥の進行の継続的かつ持続的な監視を可能にする。
【0037】
HPCM100は、30mm以下の厚さを有するパイプ厚測定における十分な分解能および感度を可能にする、例えば、10MHzの圧電トランスデューサによって生成される圧縮波または縦波による従来の超音波検査(UT)を実行することによって、パイプ残厚の深度を測定する。また、より厚い要素を測定するために、必要に応じて、5MHzの圧電トランスデューサを実装することもできる。
【0038】
図2を参照して示されるように、HPCM100は、超音波トランスデューサ210が、パイプ201の外壁202に対して実質的に垂直に位置決めされる際に、パイプ201の壁厚を測定する、超音波トランスデューサ210を含む。超音波トランスデューサ210は、例えば、垂直入射単一要素トランスデューサ、二要素トランスデューサ、遅延線トランスデューサ等であることができる。超音波トランスデューサ210は、±0.5mmの正確さで、2mm〜30mmの範囲の炭素鋼パイプ厚測定を分析することができるように選択することができる。また、超音波トランスデューサ210は、120℃と高い温度を含む温度範囲にわたり、継続的に動作し、指定の正確さを達成することができるように選択することもできる。
【0039】
1つの好ましい超音波トランスデューサの例は、垂直入射単一要素トランスデューサを含む。垂直入射単一要素トランスデューサは、例えば、図2に関して点261で、接触面に対して垂直な超音波信号を伝送するように配向される、単一の封入された水晶で構成される。垂直入射単一要素トランスデューサは、有利に、自律監視システムへの簡単な実装を可能にする。さらに、垂直入射単一要素トランスデューサは、他のトランスデューサタイプと比較して、最小数の無関係な信号を波形に導入し、これは、波形解析を簡単化する。複数の反射を捕獲することができ、厚さ測定における高レベルの信頼性を可能にする。しかしながら、垂直入射単一要素トランスデューサは、最小厚さ要件をほとんど解決することができない。
【0040】
また、超音波トランスデューサ210は、例えば、二要素トランスデューサであることもできる。二要素トランスデューサは、伝送器の初期パルスが確実に受信波形に影響を及ぼさないようにするために、別個の伝送要素および受信要素を使用する。伝送要素および受信要素の両者は、典型的に、単一ケース内に含まれる。超音波信号は、典型的に、垂直入射に向けられておらず、そのため、多くの場合、波形解析において波形補正が必要である。受信器−トランスデューサ測定は、伝送信号によって最小限にしか影響を及ぼされず、これは、有利に、より薄い材料の測定を可能にする。特定の温度範囲内でパイプ厚測定を行うことができる、2.25MHz〜5MHzの範囲内の二要素トランスデューサには、例えば、1mmまでの厚み測定を行うことができると理解される、5MHzのトランスデューサである、Olympus D790−SMが挙げられる。しかしながら、二要素トランスデューサは、不利なことに、多くの場合、1つの信頼性のある後壁反射しか検出することができない。また、伝送要素および受信要素の両方が同一のケース内に収納されるため、2つの要素は、クロストークを経験し、それによって、測定における音響および電気ノイズを増加させる。また、不利なことに、二要素トランスデューサからの測定値は、典型的に、飛行時間解析単独で解釈することができない。
【0041】
二要素トランスデューサでは、独立した動作特性を伴う2つの要素が使用されるため、伝送信号が、典型的に、垂直入射ではないため、ならびに伝送要素および受信要素における時間遅延が、多くの場合、同等ではないため、真の材料厚を判定するために、多くの場合、追加の較正ステップが必要とされる。特定の実施形態では、各トランスデューサモデル、および場合によっては、それぞれ個々のトランスデューサは、使用の前に較正が必要とされる。較正されていない二要素トランスデューサである超音波トランスデューサ210を有するHPCM100の試験は、厚さ測定において、大幅な誤差(2.5mm〜4.5mmの誤差)を有する結果をもたらした。したがって、自律型監視センサ内に含まれる二要素トランスデューサは、パイプ上への設置の前に、トランスデューサのそれぞれを較正することを必要とする。しかしながら、較正手順は、費用を増加させ、技術者がHPCM100を正しく設置するためのより一層の訓練を必要とする、または技術者にHPCM100を正しく設置することに対するより一層の責任を要求する。
【0042】
超音波トランスデューサ210は、好ましくは、遅延線トランスデューサである。遅延線トランスデューサは、垂直入射単一要素トランスデューサと同一の設計を使用するが、遅延線トランスデューサは、トランスデューサ前面をパイプの表面から分離する、材料の柱状物(「遅延線」)を含む。遅延線910がトランスデューサ要素930の前面920に接着された、例示的な遅延線トランスデューサが、図9を参照して示される。
【0043】
遅延線910は、有利に、初期パルスから前面反射を分離し、これは、初期パルスからの干渉なく、非常に薄い壁材料内の複数の後壁反射の獲得を可能にする。また、遅延線910は、有利に、トランスデューサ前面920とパイプの表面との間の断熱および放熱も提供し、これは、パイプの表面温度がトランスデューサ930の動作温度を超えることを可能にする。しかしながら、遅延線は、波形に反射を加える可能性があり、これは、超音波ノイズレベルを増加させ、波形の自律解釈を複雑にする可能性がある。
【0044】
HPCM100は、例えば、4サイクル未満での広帯域幅能力、合理的な減衰特性、およびノイズのない伝送信号を可能にするために、2.25MHz、5MHz、10MHz、または15MHzに近い中心周波数を有する超音波トランスデューサ210を含むことができる。これらの特性は、反射信号の時間を短くすることを可能にし、これは、複数の壁反射が薄いパイプ壁内で重なることを防止する。そのような信号の例が、前述の動作特性を備えたトランスデューサからの伝送信号および信号の対応する高速フーリエ変換(FFT)を示す、図5のグラフを参照して示される。遅延線を有する垂直入射単一要素トランスデューサを含む本発明の実施形態は、十分に高い周波数で動作し、それによって2mm〜30mmの全厚さ範囲にわたって正確な厚さ測定値を分析し、自律型監視センサの実装に最小限の複雑性をもたらす。
【0045】
図11を参照して示すことができるように、パイプライン1100上の超音波トランスデューサ1110は、Panametrics 5072パルス発生器等のパルス発生器1120を用いて、パルスエコーモードで駆動される。信号劣化は、トランスデューサ1110とパルス発生器1120との間のケーブル1111が、50メートル以下の長さであることを要求する。パルス発生器1120は、約20個のトランスデューサを含む、複数のトランスデューサ1112を駆動させることができなければならない。ローカル測定システムは、パルス発生器1120と、オシロスコープ1131を有するデータ獲得システムと、自律型データ解析ステーション1140とを備える。結果としてもたらされる波形は、Tektronix TDS2024Bオシロスコープ等のオシロスコープ1131を用いて収集され、収集された波形は、例えば、オシロスコープ1131と、および、GSM電気通信ネットワーク(Global System for Mobile Communications)等の無線通信ネットワーク1152上で同様に無線ネットワークインターフェース1151を有するベースステーション1160と接続するための無線ネットワークインターフェース1150とに接続する、入力/出力ユニット1143を有する監視システム1140上のプロセッサ1141によって実行される、MATLABで書かれた関数であることができる自律型コンピュータプログラム製品1300または1500を使用して解析される。ベースステーション1160は、複数のローカルシステムを制御し、ユーザ主導型データ解析ソフトウェアを実行するためのソフトウェアを含む、コンピュータであることができる。ベースステーション1160の人ユーザは、無線通信1152を通してローカルステーションを設定し、制御することができる。図11に図示される一実施形態では、データ解析ステーション1140は、データ獲得ステーション1130、パルス発生器1120、およびトランスデューサ1110を備えたローカル環境に接続される。しかしながら、他の実施形態では、データ解析ステーション1140は、例えば、データ獲得ステーション1130およびデータ解析ステーション1140を無線通信ネットワーク1152等の無線通信ネットワークに接続する、1つ以上の無線ネットワークインターフェース(描写せず)を使用して、遠隔に接続することができる。データ解析ステーション1140をデータ獲得ステーション1130の遠隔に位置付けることは、有利に、1つのデータ解析ステーション1140が、複数の遠隔場所にあるものを含む複数のデータ獲得ステーション1130とインターフェースで接続することを可能にする。
【0046】
図11を参照して示すことができるように、データ解析ステーション1140は、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ならびに本明細書に記載される機能を実施するように構成された他のアナログ、および/又は、デジタル回路構成要素であってもよい、またはそれらを含むことができる、プロセッサ1141を含む。プロセッサ1141は、データ解析ステーション1140の「頭脳」であり、そのようなものとして、コンピュータプログラム製品(単数または複数)を実行し、データを持続性メモリ1142に向けるように、および持続性メモリ1142からデータベース、ネットワークインターフェース、および周辺機器もしくは設置された構成要素にデータまたはコマンドを送信するように、I/O1143と連動して動作する。プロセッサ1141は、データ解析ステーション1140で、またはそれと共に使用するために適合された任意の市販のプロセッサ、または複数のプロセッサ、例えば、Intel(登録商標)Xeon(登録商標)マルチコアプロセッサ、Intel(登録商標)マイクロアーキテクチャNehalem、およびAMD Opteron(商標)マルチコアプロセッサであることができる。当業者が理解するように、また、プロセッサ1141は、当業者によって理解されるように、データ解析ステーション1140を、キーボードまたはユーザが遠隔ベースステーション端末1160を通して直接または間接的にプロセッサ1141および持続性メモリ1142にアクセスすることを可能にし得る他の周辺機器を有するベースステーション端末1160に接続することを可能にする、構成要素も含むことができる。
【0047】
図11を参照して示すことができるように、データ解析ステーション1140は、持続性メモリ1142または2つ以上の持続性メモリをさらに含む。持続性メモリ1142は、プロセッサ1141上で実行するための命令を備えるコンピュータプログラム製品(単数または複数)を保存するように構成される。持続性メモリ1142は、本発明の実施形態をサポートするのに必要とされるように、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、光ディスク等の不揮発性メモリ、ならびに例えば、SRAM、DRAM、およびSDRAM等の揮発性メモリの両方を含む。当業者が理解するように、持続性メモリ1142は、例えば、データ解析ステーション1140のマザーボード上に描写されているが、持続性メモリ1142は、I/O1143を通してデータ解析ステーション1140に接続される別個の構成要素またはデバイス、例えば、フラッシュメモリであることもできる。例えば、ベースステーション1160のユーザは、持続性メモリ1142上に保存されているアプリケーションおよびコンピュータプログラム製品にアクセスし、プロセッサ1141上で実行することができる。当業者が理解するように、プログラム製品(単数または複数)は、1つ以上のデータベース、データライブラリ、データテーブル、データフィールド、もしくは他のデータ記録と共に、持続性メモリ1142に、または例えば、I/O1143を通してデータ解析ステーション1140と通信するように位置付けられる記憶媒体と関連付けられる別個の持続性メモリ1142のいずれかに保存することができる。
【0048】
図13を参照して示すことができるように、そのようなコンピュータプログラム製品機能は、最初に、波形およびそれぞれの後続反射内の後壁信号を識別し1301、次いで、それぞれの隣接する後壁信号の間の時間差を測定する1302ことによって、測定される試験試料の厚みを報告する。時間差測定1302は、隣接する後壁信号の相互相関を通して、またはピーク検出アルゴリズムによって行うことができる。測定された時間差は、パイプ101の材料速度に基づき、パイプ101の厚みを計算する1303ために使用することができる。また、本機能は、例えば、後壁信号の中心周波数および帯域幅、ならびに各後壁間の信号減衰に関する情報を返す1304こともできる。結果としてもたらされる注釈付きの波形の例を、そのような機能の波形出力を示す図6を参照して示すことができる。最初に識別された後壁は、区域601であり、後続反射は、区域602内である。機能は、2.55mmの材料厚を報告した(実際の厚さは、2.54mmであった)。信号帯域幅は、1.3MHz〜6.7MHzの範囲に及び、3.9MHzの中心周波数を伴い、反射間の平均減衰は、1.7dBであった。
【0049】
2.25MHzに近い中心周波数を有する超音波トランスデューサ210を有するHPCM100の試験は、2.25MHzのトランスデューサが、不利に、ノイズの多い収集波形、および明確な後壁信号の限られた検出を提供することを示唆する。特に、パイプ101の厚みが小さい場合、2.25MHzのトランスデューサは、初期パルスからの後壁信号の限られた分解能をもたらし、同様に、第2の反射は、第1の反射で畳み込まれる可能性がある。7.62mmの厚さの試料上で2.25MHzのトランスデューサを用いて記録された例示的な厚さ測定値が、図7を参照して示されている。
【0050】
5MHzに近い、または10MHzに近い中心周波数を有する超音波トランスデューサ210を有するHPCM100の試験は、パイプ101の厚さが12.7mm〜2.5mmの範囲に及ぶ場合に、2.5MHzのトランスデューサと比較して、5MHzのトランスデューサおよび10MHzのトランスデューサが、有利に、明確な後壁反射および複数の明確な検出可能な反射を提供することを示唆する。例として、図8は、10MHzのトランスデューサを用いて、7.62mmの厚みの鋼ブロック上で行われた、複数の後壁信号が検出され、ノイズレベルが低い、例示的な厚み測定値を示す。したがって、HPCM100の試験は、5MHz〜10MHzの周波数の単一要素縦型トランスデューサが、条件とされた2mm〜30mmの範囲内で、±0.5mmの正確さのパイプ厚測定を行うことが可能であり得ることを示唆する。
【0051】
15mmの長さのRexolite遅延線に取付けられた、直径が9.5mmの10MHzのトランスデューサである、超音波トランスデューサ210を有するHPCM100の試験は、伝送信号の中心周波数を大幅に減衰させることができることを示唆する。例えば、遅延線なしでは、伝送信号の中心周波数は、約8MHzであり、帯域幅は、中心周波数の両側が極めて対称である。遅延線が組み込まれた状態では、中心周波数の測定値は、2.25MHzであり、帯域幅は、より高い周波数範囲に伸びる。図14を参照して、エポキシのフィルムを使用してトランスデューサ上に15mm厚のRexolite遅延線が設置された、10MHzの垂直入射トランスデューサの周波数応答が示される。トランスデューサに取付けられた遅延線が、1つの前壁信号および1つの後壁信号の両方を検出する場合、これらの信号のそれぞれのエンベロープを生成し、次いで、これらのエンベロープに応じるパルス幅の中心を画定するために、波形解析が必要とされる。次いで、材料厚を推定するために、2つのパルス幅の分離を使用することができる。信号のパルス幅が使用されるため、信号ピークに関する情報は、不要であり、より高い感度設定を有する波形を使用することができる。したがって、この測定解決手段は、波形内の複数の後壁反射を探すことが、信頼性のない、壁厚測定を行う手法を提示する場合の代替を提示する。
【0052】
典型的なパイプライン上で、トランスデューサ210は、気候条件により、0℃〜120℃の温度変動を経験することが予期される。トランスデューサは、最大で120℃の温度で長期間動作すること、およびパイプ温度に関わらず、最大で30mmの厚さのパイプ壁の厚さ読み取り値を±0.5mmの正確さで返すことの両方が可能でなければならない。さらに、8.01510−4mm/μs/℃の速度変化率を有する、1018炭素鋼で作製されたパイプ201上のHPCM100の室温(22℃)での試験は、規定される動作温度の範囲内でのパイプ201材料の厚さ変化が、0.5mmの許容誤差を超える誤差を極めてまれにしかもたらさないことを示唆する。例えば、1018炭素鋼の室温(22℃)での速度は、約5.856mm/μsと測定され、30mmの最大許容可能パイプ厚を有するパイプ201は、室温で獲得される波形と最大指定温度で獲得される波形との間で、0.41mmの見掛け上の厚さ変化を経験する。最大パイプ厚で、この変化は、システムに固有の他の測定誤差に加えて、指定される許容誤差を超える可能性がある。したがって、指定される正確さを達成することが重要である場合、波形解析が温度変動を考慮するように、厚さ測定システム上に温度測定能力を含むことが必要である場合がある。炭素鋼における温度の関数としてのパイプの材料速度の変化が十分に小さい場合、温度変化による見掛け上の厚さの変動は、無視することができる。試験は、例えば、30mmの最大パイプ厚の場合、室温で獲得される波形と最大指定温度で獲得される波形との間に、0.41mmの見掛け上の厚み変化が生じることを示した。
【0053】
トランスデューサ210は、本発明の実施形態による、トランスデューサがパイプ201に固定される屋外環境において、一貫した測定をもたらすことができる。図2を参照して示すことができるように、HPCM100は、トランスデューサ底部212が、パイプ外壁202の第1の装着場所261に機械的に接着するように、超音波トランスデューサ210をパイプ外壁202上の位置に固定することを可能にする。トランスデューサ底部212は、受信および送信するための超音波トランスデューサ210の要素を含む。第1の装着場所261でのトランスデューサ底部212とパイプ外壁202との間の接着は、空隙を排除することによって、パイプ外壁202と超音波トランスデューサ210との間の超音波エネルギーの伝達を向上させるように機能し、また、超音波伝達媒体または結合媒体としても機能する、エポキシを使用して形成することができる。エポキシは、例えば、3M(登録商標)Scotch−Weld(登録商標)DP125エポキシであることができる。エポキシは、トランスデューサ底部212が、第1の装着場所261においてパイプ外壁202に対して実質的に接線方向に位置付けられる場合に、トランスデューサ底部212とパイプ外壁202との間の効果的な接着を可能にする。特定の実施形態では、トランスデューサ底部212は、直径範囲の任意の直径を有するパイプ外壁202に適応するために、または潜在的に、平らな表面に装着するために、平らであることができる。トランスデューサ底部212とパイプ外壁202との間の効果的な接着が達成されるように、およびトランスデューサ底部212とパイプ外壁202との間の効果的な超音波伝送が達成されるように、HPCM100は、6インチ以上のパイプ外壁202の外径を有するパイプ201に適応する。
【0054】
遅延線を有する本発明の実施形態では、遅延線は、トランスデューサ210とパイプ201との間でトランスデューサ210に接着する。遅延線を有する実施形態では、パイプ外壁202の第1の装着場所261に、遅延線の底面が機械的に接着される(図示せず)。遅延線の上面および超音波トランスデューサの底面は、図9を参照して示されるように、機械的に接着される(920)。本明細書に記載される本発明の実施形態の構造体は、第1の装着場所に機械的に接着されるトランスデューサ底部212または遅延線の底部のいずれかに適用されることが理解される。例えば、直径が約0.625インチ、および厚みが0.5インチであってもよい遅延線は、エポキシの薄いフィルムを用いて、トランスデューサに接着する。取付けられた遅延線を有するトランスデューサは、本明細書に記載されるように、パイプ外壁202の第1の装着場所261に構造的に接着される。トランスデューサおよび接着された遅延線が、図9を参照して示される。
【0055】
図2を参照して示すことができるように、トランスデューサ210は、HPCMアセンブリの一部である、トランスデューサ取付け具(「THDF」)と呼ばれる固定具200を使用して、パイプ201にさらに接着することができる。THDF200は、直径範囲内の任意の直径を有するパイプ上にHPCM100を装着するための、剛性だが調節可能なフレームをもたらす。トランスデューサ210(または備えている場合には遅延線)とパイプ201の第1の装着場所261との間のエポキシ接着に加えて、THDF200は、HPCM100とパイプ201の第2の装着場所262および第3の装着場所263との間の2つの追加の接着をもたらす。第2の装着場所262および第3の装着場所263での接着の追加は、より大きく、より正確なトランスデューサ210の使用を可能にし、遅延線の使用(すなわち、遅延線を有するトランスデューサは、必然的にトランスデューサ単独より背が高い)をさらに可能にする。例えば、遅延線を伴うより大きいトランスデューサ(単数または複数)は、トランスデューサをパイプに接着する唯一の手段であるエポキシ接着を破砕し得る横力にさらされる。第2の装着場所262および第3の装着場所263での接着は、例えば、より大きいトランスデューサまたは遅延線を使用するトランスデューサによってもたらされるレバーアーム上に作用する横力によって作り出される、増加したトルクに関して、装着場所261での接着に追加の支持体を提供する。
【0056】
図2に示されるように、トランスデューサ210は、THDF200の、トランスデューサ筐体横断部材270と称されるTHDFの一部に付着される。トランスデューサ210は、トランスデューサ筐体挟持部213を使用して、筐体横断部材270に取付けられる。他の実施形態では、トランスデューサは、例えば、雌ねじ山付きトランスデューサ筐体横断部材270内のソケットにねじ込む雄ねじ山付きトランスデューサを使用して、トランスデューサ筐体横断部材270に直接取付けられる。トランスデューサ筐体横断部材は、図3Cのプレート330を参照して示され、トランスデューサ筐体挟持部は、図3D図3Eの挟持ブロック340および350を参照して示される。図2および図3D図3Eを参照して示されるように、トランスデューサ210は、挟持ブロック340の半円筒形のチャネル343と挟持ブロック350の半円筒形のチャネル353との間の空間内に収容される(トランスデューサ筐体挟持部213は、挟持ブロック340および350を、両方のブロックの組み立てられたユニットとして示す)。図2を参照して示すことができるように、トランスデューサ210は、トランスデューサ210および遅延線(図示せず)を環境的影響力から保護する、トランスデューサ筐体挟持部213によって実質的に包囲される(パイプ201の外面202まで点線で続くトランスデューサ210)。
【0057】
図3D図3Eを参照して示されるように、挟持ブロック340および350は、ソケット349および359を貫通するねじを用いて、挟持ブロック340および350を共にねじ止めすることによって、挟持ブロック340および350をトランスデューサ210の周囲に挟持することができるように、ソケット349および359を含む。共にねじ止めされている挟持ブロック340および350を示す、図12A図12Bがさらに参照されてもよい。トランスデューサ210が挟持ブロック340および350の中に挟持される際、トランスデューサ210のトランスデューサ底部(または遅延線の底部)は、トランスデューサ挟持ブロック340および350の底部と同一高さまたは同一平面であるべきである。同一平面適合は、トランスデューサ表面または遅延線が挟持底面を越えて突出する場合に起こる可能性がある、トランスデューサがパイプ上に定置される際の「揺動」を防止する。また、同一平面適合は、トランスデューサがパイプ表面にエポキシ接着される際の、陥凹内での気泡の形成、およびトランスデューサ底部または遅延線と挟持底面との間に陥凹が存在する場合に起こる可能性がある、結果としてもたらされる超音波エネルギーの減衰をさらに防止する。
【0058】
その中に挟持されるトランスデューサ220を有する挟持ブロック340および350は、例えば、横断部材330のソケット333〜336、挟持ブロック340のソケット341〜342、および挟持ブロック350のソケット351〜352を貫通する、滑りねじ214を使用して、横断部材330に取付けられる。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサをパイプ外壁の方向に付勢するために、バネ張力がもたらされてもよい。そのような実施形態では、図10に示すことができるように、1つ以上の滑りねじ214は、横断部材330と挟持ブロック340および350との間の実質的に同軸のコイルバネ215によって包囲される。横断部材330内の切り取り部339は、様々なサイズのトランスデューサ(それに付着された遅延線を有するトランスデューサを含む)に適応するように、トランスデューサ210の上部がトランスデューサ筐体横断部材270から突出することを可能にする。代替の実施形態では、横断部材330内の切り取り部339は、挟持ブロック340または350の厚みを減少させ、トランスデューサを切り取り部339から突出させることができる、様々な構成に適応するように、トランスデューサ210の上部がトランスデューサ筐体横断部材270から突出することを可能にする。例えば、HPCM100への環境的影響力の影響を低減するように、または小さい直径を有するパイプ上への適合を可能にするように、THDF200のサイズを減少させるために、挟持ブロック340および350のサイズを減少させることができる。
【0059】
図2を参照してさらに示すことができるように、トランスデューサ筐体横断部材270は、トランスデューサ210だけでなく、また、第1の塔状部220および第2の塔状部230にも取付けられ、これは、本明細書にさらに記載されるように、HPCM100のパイプ201への接着における、2つの追加の場所でのさらなる支持をHPCM100にもたらす。第1の塔状部220および第2の塔状部230は、第1の塔状部220、トランスデューサ210、および第2の塔状部230が、パイプ201の外壁202に沿った共通弧に沿って整列するように、トランスデューサ210およびトランスデューサ筐体横断部材270のいずれかの側の側面に位置する。図2ならびに図3A図3Bを参照して示すことができるように、横断部材330は、横断部材330の遠位端のヒンジピンソケット331および332への封入によって、横断部材330に取付けられるヒンジピン271および272によって、第1の塔状部220および第2の塔状部230の両方に取付けられる。図2を参照して示すことができるように、塔状部120および130は、ヒンジピン271および272を受容する、ヒンジトラック223および233を含む。ヒンジピン271および272は、ヒンジピンソケット331および332内、ならびにヒンジトラック223および233内で自由に回転することができ、これは、THDF200を調節可能な関節アセンブリにすることができる。ヒンジピン271および272は、例えば、ヒンジピン271および272が、それぞれ1つ以上のねじ山付き端部を有し、ナット等のねじ山付き締結具を含む場合、例えば、ヒンジピンソケット331および332またはトラック223および233内で回転するヒンジピン271および272の能力を制限するように締め付けることができ、それによって剛性構造を作り出す、滑りねじである。図2を参照して示されるトラック223および233は、細長く、横断部材270のいずれかの遠位端と同一の方向に沿って延在し、それによって、ヒンジピン271および272がトラック223および233内を摺動することを可能にし、これは、横断部材270と塔状部220および230との間の距離が調節されるようにする。また、ヒンジピン271および272を締め付けることは、ヒンジピン271および272の、トラック223および233内を摺動する能力を制限する。したがって、ヒンジピン271および272は、THDF200の関節形状を、塔状部120および130の角度に関して、ならびに塔状部120および130の配置に関して調節することを可能にし、それによって、異なる直径を有するパイプの複数の構成を可能にする。
【0060】
第1の塔状部310および第2の塔状部320は、図3Aおよび図3Bを参照して示すことができる。第1の塔状部310および第2の塔状部320の両方を説明するために、図3Aおよび図3Bの塔状部310および320を参照して示すことができるように、設計および構造が同一であることができる、いずれかの塔状部を参照することができる。したがって、塔状部310および320が、2つの別個の塔状部であると理解されるべきではあるが、図3Aへの番号参照は、また、図3Bにも適用される。
【0061】
塔状部310は、また、図2の水平出っ張り部279を参照して示すこともできるように、塔状部310の上方部分に水平出っ張り部314を含み、これは、また、図2のHPCM100を参照しても示すことができるように、THDF200の内部に位置付けられる。図3Aの参照に戻ると、トラック223は、塔状部310上に、少なくとも部分的に水平出っ張り部分314上に位置付けられている。図2を参照して示すことができるように、その上に位置付けられ、かつ塔状部220から内向きに延在するトラック223を有する水平出っ張り部分314は、例えば、THDF200が特定の直径のパイプ200に適合するように調節される際、パイプ201の外面202付近の塔状部220とトランスデューサ210との間の接触を回避するように、塔状部220が、ヒンジピン271を中心とした回転における自由度の範囲を有することを可能にする。図3に戻ると、特定の実施形態は、例えば、THDF200が特定の直径のパイプ200に適合するように調節される際、塔状部310とトランスデューサ210との間の接触を回避するように、塔状部310が、ヒンジピン271を中心とした回転の自由度の範囲を有することができるように、水平出っ張り部314内に緩和空間をもたらす、中心切り取り部313を有する、水平出っ張り部分314を備える。水平出っ張り部314は、開放中心空洞317を有するように示されているが、また、中心空洞は、閉鎖中空空間であってもよく、または水平出っ張り部314は、固体塊であってもよい。開放中心空洞317を有する実施形態では、トラック223は、図3Aを参照してさらに示すことができるように、2つのトラック切り取り部311を含むことができる。
【0062】
塔状部310の、水平出っ張り部314より下の部分は、塔脚部316を参照して示すことができる。塔脚部316は、図3Aを参照して示すことができる、磁石切り取り部315を有する。特定の実施形態では、磁石切り取り部315は、塔脚部316の底部の塔脚部316の中空チャネルであり、磁石224は、図2を参照して示すことができるように、磁石切り取り部315を完全に、または部分的に包囲する塔脚部316の底部の部分318と実質的に同一平面に設置される。代替の実施形態では、磁石切り取り部315がなくてもよく、磁石224は、塔脚部316と同一の長さおよび幅を有し、塔状脚部316の複数の側部と同一平面に装着される。そのような実施形態では、磁石224は、塔脚部316上にねじ込まれてもよい。他の実施形態では、磁石224は、磁石224が、塔状部330によって完全に囲まれ、磁石224とパイプ201との間に物理的接触を有することなく、パイプ201に磁性接着することができるように、塔脚部316の中空部分内に完全に囲まれてもよい。特定の実施形態では、磁石は、塔状材料ならびにエポキシによって、環境から保護される。図3Aでは、塔脚部316の壁318は、磁石224の2つの側部のみを包囲するように示されているが、他の実施形態は、塔脚部316の壁318が、磁石224の4つの側部を完全に包囲することを可能にする。磁石224を包囲する塔脚部316の壁318は、トランスデューサ210を磁石224との干渉から遮蔽する働き、ならびに磁石224を環境要因もしくは環境的影響力による腐食または浸食から保護する働きをする。特定の実施形態では、塔状部310および320は、ポリ塩化ビニル(PVC)もしくは繊維ガラス補強ナイロン等の高耐久性かつ耐腐食性のプラスチックまたは複合材で構築される。特定の実施形態は、トランスデューサ210を磁石224および234の磁界から遮蔽する、パーマロイフィルムを備えた積層体をさらに含む。磁石224および234は、好ましくは、高強力ネオジム磁石またはフェライト磁石である。
【0063】
特定の実施形態では、磁石224の底部および塔脚部316の底部の両方が、平らかつ同一平面であり、幅広い直径範囲のパイプ201のパイプ外面202に適応する、平らな底面を提供する。他の実施形態では、磁石224の底部および塔脚部316の底部は、平らではあるが、磁石224の底部は、より狭い直径範囲のパイプ201のパイプ外面202により良好に合致するように、塔状脚部316の底部から陥凹している。他の実施形態では、陥凹の大きさは、より幅広い直径範囲のパイプ201のパイプ外面202により良好に合致するように、例えば、バネ張力を使用して調節可能である。他の実施形態では、磁石224の底部および塔脚部316の底部は、特定の直径のパイプ201のパイプ外面202に最適に合致するように湾曲している。
【0064】
図2を参照して示すことができるように、塔状部220および230は、ヒンジピン271および272によって、横断部材270に取付けられる。ヒンジピン271および272が剛性固定具を作り出すように締め付けられる前に、塔状部220および230は、ヒンジピン271および272を中心に回転され、塔状部220および230は、内向きまたは外向きに、場合によってはトランスデューサからトラック223および233の内部を進むヒンジピン271および272に沿って、摺動される。THDF200に対する塔状部220および230の「位置決め」または「位置」は、ヒンジピン271および272のトラック223および233内での回転(角度)ならびに摺動(距離)の両方を指す。したがって、塔状部220および230の位置は、したがってパイプ201の直径に応じて調節することができる。HPCM100が平らな表面上に装着される場合、塔状部220および230の角度は、塔状部220および230の底部、ならびにトランスデューサ210のトランスデューサ底部212(または備えている場合には遅延線の底部)が、同一平面上にあるように構成することができる。HPCM100が、パイプ201の外面202上等の湾曲した表面上に装着される場合、塔状部220および230の位置は、塔状部220および230の底部、ならびにトランスデューサ210のトランスデューサ底部212(または遅延線)が、パイプ201の外面202によって画定される共通弧上に存在するように構成することができる。塔状部220および230の底部、ならびにトランスデューサ210のトランスデューサ底部212(または遅延線)は、例えば、これら三つの底部のそれぞれが、共通弧に対して実質的に接線である際、共通弧上に存在する。特に、塔状部220および230の底部が、トランスデューサ220のトランスデューサ底部212(または遅延線)と物理的に干渉しないように、塔状部220および230の距離を、塔状部220および230の角度に関して構成することができる。例えば、より小さい直径を有するパイプは、より大きい角度ならびにより大きい距離を有する構成を必要とする。図2に示される実施形態では、トラック223および233は、直線状である。他の実施形態では、トラック223および233は、図3Aおよび図3Bのトラック311ならびに321によって示されるように、共通弧と同一の方向に湾曲している。そのような湾曲は、例えば、HPCM100の塔状部および調節機能のより大きい範囲の移動を可能にする。図2図3A、および図3Bに示されるように、ヒンジピン271および272は、共通弧を含有する平面に対して垂直な回転軸で、トラック223および233に受容され、したがって、回転軸を中心とした角度調節は、塔状部220および230の底部を、それらがパイプ外壁の共通弧に対して実質的に接線方向になるように位置決めされることを可能にする。
【0065】
塔状部220および230が、図1および図2に図示されるように位置決めされた状態、すなわち、塔状部220および230の底部、ならびに磁石224および234の底部が、パイプ201のパイプ外面202に対して実質的に接線方向に位置決めされた状態で、横断部材270に関する塔状部220および230の角度ならびに距離のさらなる調節を防止するように、第1のヒンジピン271および第2のヒンジピン272を締め付け、それによって、THDF200およびHPCM100を剛性構造にすることができる。したがって、HPCM100が剛性にされた場合、磁石224および234は、第1の塔状部220の第2の装着場所222での第2の接着、および第2の塔状部230の第3の装着場所232での第3の接着を形成する。それによって、HPCM100とパイプ201との間の第2および第3の接着は、トランスデューサ210のトランスデューサ底部212を、パイプ201のパイプ外面202に向かって、パイプ201に関して半径方向に押圧する挟持力を提供する。THDF200の、パイプ201のパイプ外面202の直径に対応する構成で剛性になる能力は、THDF200によって、第2の装着位置222および第3の装着位置232に及ぼされる力が、パイプ201に関して半径方向を有し、重力によるいかなる力も無視することを可能にする。THDF200が剛性であり、第2の装着位置222および第3の装着位置232での力が半径方向であるため、パイプ201上のHPCM100の安定性が向上され、HPCM100が、より大きい環境的影響力に耐えることを可能にする。さらに、任意の構成でのTHDF200の剛性は、第1の接着212、第2の接着222、および第3の接着232での力が、THDF200のパイプの極限を含む直径範囲にわたって一貫することを可能にする。パイプの直径範囲にわたって一貫した挟持力は、パイプ201の直径が所与の直径範囲内であるという条件で、有利に、トランスデューサ220が、THDF200のパイプの直径範囲にわたって一貫した測定をもたらし、THDF200が装着されるパイプ201の直径に応じた較正の変更または保守を必要としない、HPCM100をもたらす。図4を参照して示すことができるように、遅延線を含む、本明細書に記載されるトランスデューサに適応するためのレベルの調節機能を有するTHDFの実施形態は、直径範囲(最小直径要件)にわたり、以下の寸法を含む。
【表1】
【0066】
HPCM100は、単一の場所で、高精度および正確さを伴ってパイプならびに容器における金属損失を監視するように設計される。HPCM100は、小さい領域しか監視することができないため、HPCMは、探索ツールというよりはむしろ、腐食が既に検出されている場所に永久的に設置されるように設計される。HPCM100は、定期的にアクセス不可能な場所に設置することができ、データ収集のために、リード線をHPCMから遠隔場所に延在させることができる。リード線は、センサから約50メートル離れて延在させることができる。
【0067】
試験は、最大で50mの長さを有する同軸ケーブルが、厚さ測定に影響を及ぼさないことを裏付けた。典型的な同軸ケーブルでは、ケーブルの各単位長さが、一連の低域通過フィルタと解釈することができる、ある直列インダクタンス、およびある並列容量を終端負荷に与え、各差長は、低域通過フィルタの状態に寄与することが留意される。このことから、より高い周波数は、同軸ケーブルによってより激しく減衰されること、およびより長いケーブルは、その上を搬送される信号により大きい影響を与えることが理解される。また、非常に長いケーブルは、より高い周波数信号の広がりをもたらす可能性もある。さらに、同軸ケーブルは、時間遅延線としての機能を果たし、そのため、より長いケーブルは、反射信号を送信パルスに対して位相シフトさせる傾向がある。厚さ測定システムの限界(臨界)測定が、飛行時間のみである場合、これらの影響は、(1)ノイズレベルを超える反射信号振幅が、明確に検出可能なままであり、(2)トランスデューサ中心周波数が、激しく減衰されず、(3)2つの後壁信号の間、または検出可能な前壁信号と後壁信号との間の時間差が、測定正確さ仕様を超えるのに十分に大幅にシフトしない限り、最小限である。
【0068】
試験は、5MHzのトランスデューサおよび10MHzのトランスデューサの両方が、50mの最大ケーブル長さであっても、正確かつ一貫した厚み測定値を返すことができることを裏付けた。しかしながら、同一の一貫性は、2.25MHzのトランスデューサでは提供されない(少なくとも一部おいて、観測される高レベルの音響ノイズおよびより高い信号減衰に起因する)。2.25MHzのトランスデューサの複数の後壁反射の振幅は、音響ノイズの振幅より大幅に大きくはないため、ノイズは、複数の後壁反射を変形させ、それによって、測定正確さを低下させる。5MHzおよび10MHzのトランスデューサは、はるかにより優れた正確さを伴う厚さ測定をもたらすが、また、それらは、ケーブル長さを増加することによって、より大幅に影響を及ぼされる。5MHzおよび10MHzのトランスデューサの両方の試料の信号減衰は、典型的に、約2〜3dBであった。対称的に、試験は、5MHzの信号が、ケーブルにおいて0.09dB/mの減衰を経験したこと、および10MHzのトランスデューサが、0.11dB/mの減衰を経験したことを示した。したがって、最大ケーブル長さでの大幅により小さい信号振幅がもたらされる。しかしながら、この減衰は、最大ケーブル長さであっても、5MHzおよび10MHzのトランスデューサ上で獲得される反射は、振幅がノイズレベルよりはるかに大きいため、許容される。
【0069】
また、試験は、同軸ケーブルが低域通過フィルタとしての機能を果たす傾向も示した。ケーブルの長さに関わらず、2.25MHzおよび5MHzのトランスデューサの中心周波数は、概して影響を及ぼされないままであった。しかしながら、10MHzのトランスデューサの中心周波数は、最短ケーブル長さでの獲得から最長ケーブル長さでの獲得までで、約1.6MHz降下する可能性がある。したがって、10MHzの中心周波数を有するトランスデューサが使用される場合、低容量を有する同軸ケーブルが必要とされる。飛行時間を使用して厚さを測定する機能では、より長いケーブルに関して時間シフトが生じることに留意することが重要である。試験は、トランスデューサ周波数に関わらず、ケーブルが1メートル追加される毎に、約10ナノ秒の時間遅延がもたらされることを裏付けた。例えば、50mのケーブルは、初期パルスとすべての後続の信号との間に0.5μsを追加し、これは、電気信号がケーブルの長さを上下に進むのにかかる時間に正比例する。信号処理機能が、複数の後壁信号または後壁および前壁反射を捕獲しない場合、厚さ測定機能において、時間遅延が考慮されなければならない。選択されるトランスデューサが、複数の後壁反射または後壁および前壁反射のいずれかを捕獲できる限り、トランスデューサとパルス発生器との間への長いケーブルの追加は、許容誤差を超える測定誤差をもたらさない。
【0070】
遅延線に取付けられた単一要素垂直入射トランスデューサを使用する、本発明の実施形態は、較正を必要とする。トランスデューサを較正することは、例えば、基線を確立するために、現行の較正証明を有し、読み取り値を監視する、超音波欠陥検出機を使用することを含むことができる。さらなる読み取り値のパラメータを発見することを可能にする、ステップウェッジ較正ブロックを使用して、初期較正を実施することができる。較正は、(i)遅延制御もしくはその均等物によって、トランスデューサの主パルスまたは主バング(電子的ゼロ)を発見するステップと、(ii)鋼の理論上の縦速度(5900m/s)を対照として入力するステップと、(iii)最新のものが、トランスデューサに取付けられたウェッジ極縁部に対応する、主パルスおよび第1の遅延線エコーの両方が画面上に表示されるように、必要に応じて、範囲制御を調節するステップと、(iv)遅延線指標の後の第1の後壁エコーを知ることができるように、較正ブロックのステップ上にトランスデューサを定置するステップと、(v)明確かつ安定したエコーピークおよび信号対ノイズ比を得るために、周波数、ダンピング、またはそれらの均等物を調節するステップとを含む。較正プロセスが実施された後、較正された速度が理論値(5900m/s)に近いかを確認することができ、+/−50m/sである値は、較正プロセス中の間違いを示唆する。較正は、較正プロセスに選択されたステップの範囲内に含まれる厚さにのみ有効である。
【0071】
較正は、塗料のない、平らな表面上で実施されるため、塗料厚みおよび曲率効果を補償する必要がある。例えば、HPCM100を、検査すべき部分上に定置することができ、第1の後壁エコーから信号を得ることができる。さらに、第1および第2のエコーのピークを比較することができる(エコー2の読み取り値−エコー1の読み取り値)。差が0.2mmを超える場合、波の入点(機械的ゼロ)を変更するように、ゼロ(μs)を、読み取り値を減少させるためにより大きく、または読み取り値を増加させるためにより小さく変化させることができる。ゼロは、第1のエコーからの読み取り値、および第1のエコーと第2のエコーとの間の差に対応する読み取り値が同一になるまで変化させることができる。
【0072】
前述は、本発明の実施形態が、本発明の特定の請求項の対象を形成する、本明細書に記載される本発明の特長および利点を考慮して、より良く理解され得るように、本発明の特定の目的、特長、および技術的利点、ならびに本発明の詳細な説明を広く概説してきた。開示される構想および具体的な実施形態は、本発明の同一の目的を遂行するための他の構造を修正または設計するための基礎として、容易に利用されてもよいことを理解されたい。また、そのような均等構造は、添付の特許請求の範囲に説明される本発明から逸脱しないことも理解されたい。本明細書および特許請求の範囲において、「第1の」、「第2の」、「第3の」等と称される用語は、これらの修飾語句が、同様の名称を有する要素を区別することのみが意図されるため、順序要素を組み込むと解釈されるべきではない。その構成および動作の方法の両方に関して、本発明の特徴であると考えられる新規の特長は、さらなる目的および利点と共に、以下の説明から、添付の図面と関連して熟考される際により理解される。しかしながら、そのような説明および図面は、図示および説明のためのみに提供され、本発明の限定の定義であることは意図されないことが明確に理解される。
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