(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893661
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】ピン碍子カバー
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20160310BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20160310BHJP
H02B 1/20 20060101ALI20160310BHJP
H01B 17/40 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
H02B1/20 C
H01B17/40 B
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-57000(P2014-57000)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-180158(P2015-180158A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】坂江 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】藤中 善夫
(72)【発明者】
【氏名】三間 和明
【審査官】
甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−060703(JP,A)
【文献】
特開2003−158803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/00
H02B 1/20
H01B 17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱上に取り付けられたピン碍子であって、外周に溝を有するピン碍子と、該ピン碍子の溝に部分的にはめ込まれるケーブルと、前記溝に引っ掛けられて該ケーブルに巻き回されることでケーブルをピン碍子に固定するバインド線とを覆うピン碍子カバーであって、ピン碍子の上部を覆うための第1のカバー部と、該第1のカバー部から延出した一対の第2のカバー部であって、延出方向に延びるスリットが形成され、ケーブル及びバインド線を覆うための第2のカバー部と、該第2のカバー部のスリットの両側に設けられた一対のガイド片であって、それぞれが第2のカバー部から径外方向に延出し、外方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように設けられた一対のガイド片とを備え、第1のカバー部は、ピン碍子の上部外周を覆うための筒状部であって、第2のカバー部のスリットを延長した切欠きが形成された筒状部を含む本体と、溝に嵌合される凸部であって、筒状部の中心線を通る仮想基準面を境とした第1の領域にある筒状部の内面の一部から径内方向に向けて突設される凸部と、筒状部の中心線を通る仮想基準面を境とした第2の領域にある筒状部から外方に向けて延出する延出部とを有することを特徴とするピン碍子カバー。
【請求項2】
延出部は、第1のカバー部から下方に延出し、第1のカバー部の径外方向に折り曲げ可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のピン碍子カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピン碍子、該ピン碍子に支持されたケーブル、及びケーブルをピン碍子に固定するバインド線を覆うピン碍子カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架設されるケーブルを支持するピン碍子であって、ケーブルと柱上構造物との絶縁を図るピン碍子が知られている。この種のピン碍子は、腕金上に立設され、ケーブル支持する部位を絶縁材料で形成されている。そして、この種のピン碍子は、絶縁材料で形成された部位の外周に溝が設けられている。
【0003】
ケーブルは、溝に部分的にはめ込まれた状態で、ピン碍子の溝に引っ掛けられたバインド線によって巻きつけられることで、ピン碍子に対して固定される。これにより、ケーブルは、ピン碍子の中心線と交差する方向に延びた状態でピン碍子に支持される。
【0004】
このように、ケーブルがピン碍子に固定されることでケーブル及び柱上構造物の間の絶縁が図られるが、ケーブルの被覆の経年による劣化や、ケーブル及び柱上構造物への動物の接触等により、短絡事故や地絡事故が発生することがあった。
【0005】
そこで、このような短絡事故や地絡事故を防止すべく、ピン碍子、ケーブル、及びバインド線を保護するピン碍子カバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この種のピン碍子カバーは、ピン碍子の上部を覆うための第1のカバー部であって、ピン碍子の溝に嵌合する凸部を有する第1のカバー部と、ケーブル及びバインド線を覆うべく第1のカバー部から延出した第2のカバー部と、延出方向に延びるスリットと第2のカバー部から径外方向に延出し外方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように設けられた一対のガイド片とを備えている。
【0007】
この種のピン碍子カバーによれば、第2のカバー部でケーブル及びバインド線を覆い、第1のカバー部でピン碍子の上部を覆った上で、凸部を溝に嵌め合わせることで、ピン碍子、ケーブル、及びバインド線を保護している。この種のピン碍子カバーは、ピン碍子の上方からピン碍子、ケーブル、及びバインド線の位置に合わせて載せられる。そして、この種のピン碍子カバーは、第1のカバー部及び第2のカバー部をそれぞれピン碍子カバーの上方からピン碍子又はケーブルに向けて押し付けることで装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−221918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、このような作業は、間接活線工法で行われるので、作業員は、間接活線工具を用いてピン碍子の下方から作業をすることになる。そのため、ピン碍子の上方からピン碍子に向けて作業する機会が増えると、間接活線工法での作業であるがゆえに作業効率が下がる。この種のピン碍子カバーでは、ピン碍子の上からピン碍子カバーを載せた上で、第2のカバー部にケーブルを内装する作業や、第1のカバー部をピン碍子の頭部に挿入する作業をピン碍子の上からピン碍子に向けて行う必要があった。
【0010】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑み、作業性の向上を図ったピン碍子カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るピン碍子カバーは、電柱上に取り付けられたピン碍子であって、外周に溝を有するピン碍子と、該ピン碍子の溝に部分的にはめ込まれるケーブルと、前記溝に引っ掛けられて該ケーブルに巻き回されることでケーブルをピン碍子に固定するバインド線とを覆うピン碍子カバーであって、ピン碍子の上部を覆うための第1のカバー部と、該第1のカバー部から延出した一対の第2のカバー部であって、延出方向に延びるスリットが形成され、ケーブル及びバインド線を覆うための第2のカバー部と、該第2のカバー部のスリットの両側に設けられた一対のガイド片であって、それぞれが第2のカバー部から径外方向に延出し、外方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように設けられた一対のガイド片とを備え、第1のカバー部は、ピン碍子の上部外周を覆うための筒状部であって、第2のカバー部のスリットを延長した切欠きが形成された筒状部を含む本体と、溝に嵌合される凸部であって、筒状部の中心線を通る仮想基準面を境とした第1の領域にある筒状部の内面の一部から径内方向に向けて突設される凸部と、筒状部の中心線を通る仮想基準面を境とした第2の領域にある筒状部から外方に向けて延出する延出部とを有する。
【0012】
かかる構成によれば、ピン碍子カバーは、バインド線によりケーブルを固定したピン碍子の上に間接活線工具により載せられる。これにより、筒状部は、開口する一端側からピン碍子の外周を覆うようにピン碍子に嵌め合わされる。すると、筒状部の中心線を通る仮想基準面を境とした第1の領域の内面から突設された凸部がピン碍子の溝部に嵌り、一対のガイド片がケーブル及びバインド線を跨ぐようにして載る。そして、筒状部の中心線を通る仮想基準面を境とした第2の領域に形成される延出部が間接活線工具で把持されて下方に引っ張られることで、凸部は、ピン碍子の溝に嵌め合わされたままピン碍子の表面に対して摺動する。また、一対のガイド片は、ケーブル又はバインド線に対してそれぞれ摺動することで互いに離間し、スリットは、一対のガイド片の離間に応じて開く。そして、スリットがケーブルの直径に対してケーブルを通すのに十分に開くと、第2のカバー部は、ケーブル及びバインド線を内装するように移動して、ケーブル及びバインド線を覆う。第2のカバー部がケーブル及びバインド線を覆うと、本体は、ピン碍子の外周及び天面を覆う。これにより、ピン碍子カバーは、ピン碍子に載せられた後、延出部の引っ張りだけでピン碍子、ケーブル、及びバインド線を覆うことができるので、ピン碍子カバーをピン碍子、ケーブル、及びバインド線に装着する作業の作業性の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明のピン碍子カバーの一態様として、延出部は、第1のカバー部から下方に延出し、第1のカバー部の径外方向に折り曲げ可能に構成されていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、延出部が間接活線工具により把持されて引っ張られる際に、延出部は、第1のカバー部の径外方向に折り曲げられることで作業員の位置に先端を向けるように折り曲げられる。これにより、ピン碍子カバーは、延出部を把持した間接活線工具を単に引っ張るだけでピン碍子、ケーブル、及びバインド線を覆うことができるので、ピン碍子カバーをピン碍子、ケーブル、及びバインド線に装着する作業のさらなる作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の如く、本発明に係るピン碍子カバーによれば、作業性が向上するというすぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るピン碍子カバーを示し、
図1(a)は、同実施形態に係るピン碍子カバーの概略上面図、
図1(b)は、同実施形態に係るピン碍子カバーの概略正面図を示す。
【
図2】同実施形態に係るピン碍子カバーの概略側面図を示す。
【
図3】同実施形態に係るピン碍子にピン碍子カバーを載せた概略側面図を示す。
【
図4】同実施形態に係る第2のカバー部をケーブルに取り付ける際の概略正面図を示す。
【
図5】同実施形態に係る第2のカバー部に取り付けられるクリップを示し、
図5(a)は、クリップの概略正面図、
図5(b)は、クリップの概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るピン碍子カバーにおける一実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。
【0018】
まず、本実施形態に係るピン碍子カバー1を説明する前に、ケーブルEを支持するピン碍子Aについて説明する。
【0019】
図2及び
図3に示すように、ピン碍子Aは、架設されたケーブルEを支持すべく、電柱上の腕金Bに立設される。ピン碍子Aは、ケーブルEに接触する部分を陶器等の絶縁材料で形成されており、支持するケーブルEと腕金Bとの間の絶縁を確保可能に構成されている。このように腕金Bに立設されたピン碍子カバー1は、その外周に溝を有する。ケーブルEは、ピン碍子カバー1の溝に部分的に嵌め込まれ、溝に引っ掛けられて巻き回しされるバインド線Dを用いてピン碍子Aに固定される。これにより、ケーブルEは、ピン碍子Aの中心線と交差する方向に延びた状態でピン碍子Aに支持される。本実施形態に係るピン碍子カバー1は、このようなピン碍子A、ケーブルE、及びバインド線Dを覆うべくピン碍子A、ケーブルE、及びバインド線Dに取り付けられる。
【0020】
次に、本実施形態に係るピン碍子カバー1の構成について説明する。
【0021】
図1(a)、
図1(b)、及び
図2に示すように、本実施形態に係るピン碍子カバー1に関し、電柱上に取り付けられたピン碍子Aであって、外周に溝を有するピン碍子Aと、該ピン碍子Aの溝に部分的に嵌め込まれるケーブルEと、上記溝に引っ掛けられて該ケーブルEに巻き回されることでケーブルEをピン碍子Aに固定するバインド線Dとを覆うピン碍子カバー1であって、ピン碍子Aの上部を覆うための第1のカバー部10と、該第1のカバー部10から延出した一対の第2のカバー部20であって、延出方向に延びるスリット21が形成され、ケーブルE及びバインド線Dを覆うための第2のカバー部20と、該第2のカバー部20のスリット21の両側に設けられた一対のガイド片30であって、それぞれが第2のカバー部20から径外方向に延出し、外方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように設けられた一対のガイド片30とを備える。ピン碍子カバー1は、全体を絶縁材料で形成されることで、ケーブルEの絶縁を確保可能になっている。
【0022】
第1のカバー部10は、ピン碍子Aの外周を覆うための筒状部11であって、第2のカバー部20のスリット21を延長した切欠き16が形成された筒状部11を含む本体17と、溝に嵌合される凸部14であって、筒状部11の中心線を通る仮想基準面100を境とした第1の領域101にある筒状部11の内面の一部から径内方向に向けて突設される凸部14と、筒状部11の中心線を通る仮想基準面100を境とした第2の領域102にある筒状部11から外方に向けて延出する延出部15とを有する。
【0023】
筒状部11は、円筒形に形成され、ピン碍子Aの径に合わせた内径をもつ。また、筒状部11は、ピン碍子Aの外周に形成される溝の下端から天面までの長さよりも長い軸心方向長さで形成されている。これにより、筒状部11は、開口する軸心方向一端からピン碍子Aの頭部に嵌め合わされることで、ピン碍子Aの溝の下端よりも上部の外周を覆うことが可能になっている。また、筒状部11は、第2のカバー部20のスリット21を延長した切欠き16により、開口する軸心方向一端まで切欠けられている。これにより、筒状部11は、開口する軸心方向一端からピン碍子Aの上部に嵌め込まれ得るとともに、バインド線Dによりピン碍子Aに固定されたケーブルEを切欠き16から内装することが可能になっている。本実施形態において、筒状部11は、開口する軸心方向一端部にフランジ部13を有し、該フランジ部13は、溝の下端から下部のピン碍子Aの径に合わせ、ピン碍子Aの溝の下端よりも下部にある外周に嵌め込まれ得る。
【0024】
本体17はさらに、筒状部11の一端でピン碍子Aの天面を覆うための天板部12を含む。
【0025】
天板部12は、筒状部11の軸方向他端を閉塞して形成される。本実施形態において、天板部12は、板状に形成され、内面をピン碍子Aの天面に対向させて、天面を覆うことが可能になっている。
【0026】
凸部14は、ピン碍子Aの溝の深さに対応する長さで筒状部11の中心線を通る仮想基準面100を境とした第1の領域101の内面から突設される。これにより、凸部14は、筒状部11をピン碍子Aの天面から嵌め込むことで、ピン碍子Aの溝に嵌る。本実施形態において、凸部14は、ケーブルEが部分的に固定されたピン碍子Aの溝に対して真逆の位置となる溝に嵌合する位置に形成される。
【0027】
延出部15は、板状に形成され、第1のカバー部10のから下方に延出する。より具体的には、延出部15は、筒状部11の中心線を通る仮想基準面100を境とした第2の領域102から下方に延出して形成される。また、延出部15は、筒状部11の径に対して板面を交差させるように形成される。延出部15は、
図3に示すように、間接活線工具Cで把持可能な大きさで形成され、関節活線工具により把持されて引っ張られることで、ケーブルE及びバインド線Dに第2のカバー部20を押し付けることが可能になっている。
【0028】
本実施形態において、延出部15は、
図3に示すように、第1のカバー部10(筒状部11)の径外方向に折り曲げ可能に構成されている。これにより、第1のカバー部10がピン碍子Aの上部に嵌め込まれるにつれて、延出部15は、第1のカバー部10の外周に近づくが、延出部15が折り曲げられることで、延出部15の先端が第1のカバー部10の外周から離れる方向(作業員の位置に向ける方向)に向くので、間接活線工具Cがピン碍子Aの外周に触れず、作業性の向上を図ることができる。
【0029】
第2のカバー部20は、円筒状に形成され、バインド線Dを巻き付けられたケーブルEを内装するのに十分な軸方向長さで形成されている。そして、第2のカバー部20は、軸方向に所定の間隔で配置される蛇腹部(採番しない)を有しており、蛇腹部の位置で折り曲げられることで、所定の方向に曲げられ得る。そして、第2のカバー部20には、軸方向に延びるスリット21が形成され、該スリット21は、軸心から下方に向けて伸ばした線と交差する位置に形成される。
【0030】
一対のガイド片30,30は、第2のカバー部20の軸方向に沿って所定の間隔で複数個配置される。そして、一対のガイド片30,30のそれぞれは、相手側のガイド片30との間でケーブルE上に載置可能な突出方向長さ及び角度で第2のカバー部20から突出する。これにより、一対のガイド片30,30は、それぞれの配置されている位置で、ケーブルE上に第2のカバー部20を位置させることが可能になっている。
【0031】
本実施形態に係るピン碍子カバー1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るピン碍子カバー1の作用について説明する。
【0032】
ケーブルEは、電柱上の腕金Bに取り付けられたピン碍子Aの溝に部分的に嵌め込まれ、バインド線Dによってピン碍子Aに固定されている。これにより、ケーブルEは、ピン碍子Aの中心線に対して交差してピン碍子Aに支持されている。
【0033】
ピン碍子カバー1は、間接活線工具Cにより延出部15を把持され、ケーブルEを支持しているピン碍子Aの上方からピン碍子Aに載せられる。このとき、
図3に示すように、第1のカバー部10は、軸方向一端側の開口からピン碍子Aの上部に被せられ、第2のカバー部20は、一対のガイド片30の間にケーブルEを介入することでケーブルE上に載せられる。そして、第1のカバー部10の凸部14は、ピン碍子Aの溝のうち、ケーブルEに固定されている溝の位置とは逆側の溝の位置に嵌め込まれる。
【0034】
このようにピン碍子Aに対して凸部14を溝に嵌め込んだ状態で、間接活線工具Cにより延出部15が下方に向けて引っ張られると、凸部14は、ピン碍子Aの溝に嵌め込まれた状態のまま、ピン碍子Aの表面に対して摺動する。すると、一対のガイド片30のそれぞれは、ケーブルEの表面に向けて押し付けられる。一対のガイド片30のそれぞれがケーブルEの表面に向けて押し付けられることで、一対のガイド片30のそれぞれは、ケーブルEの周に沿って、相手側のガイド片30から離間するように動く。このとき、延出部15は、間接活線工具Cの引っ張り方向に向けて折れ曲がる。
【0035】
一対のガイド片30がこのように動くことで、第2のカバー部20のスリット21は、一対のガイド片30のそれぞれにより開かれる。そして、一対のガイド片30のそれぞれによりスリット21が十分に開かれることで、第2のカバー部20は、ケーブルEを内装可能になる。一対のガイド片30がケーブルEに対して押し付けられているので、第1のカバー部10(ピン碍子A)に近い位置のケーブルEが、第2のカバー部20に内装される。また、ケーブルEは、第1のカバー部10の切欠き16から、第1のカバー部10に内装される。そして、
図4に示すように、第2のカバー部20が、その延出方向に沿って順にケーブルEを内装することで、第2のカバー部20は、ケーブルE及びバインド線Dを覆う。
【0036】
第2のカバー部20がケーブルE及びバインド線Dを内装すると、第1のカバー部10は、ピン碍子Aの上部に嵌め込まれる。具体的には、天板部12の板面方向が、ピン碍子Aの天面に沿う方向に向く。これにより、ピン碍子カバー1は、ピン碍子A、ケーブルE、及びバインド線Dを覆う。
【0037】
以上より、本実施形態に係るピン碍子カバー1に関し、電柱上に取り付けられたピン碍子Aであって、外周に溝を有するピン碍子Aと、該ピン碍子Aの溝に部分的にはめ込まれるケーブルEと、前記溝に引っ掛けられて該ケーブルEに巻き回されることで該ケーブルEをピン碍子Aに固定するバインド線Dとを覆うピン碍子カバー1であって、ピン碍子Aの上部を覆うための第1のカバー部10と、該第1のカバー部10から延出した一対の第2のカバー部20であって、延出方向に延びるスリット21が形成され、ケーブルE及びバインド線Dを覆うための第2のカバー部20と、該第2のカバー部20のスリット21の両側に設けられた一対のガイド片30であって、それぞれが第2のカバー部20から径外方向に延出し、外方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように設けられた一対のガイド片30とを備え、第1のカバー部10は、ピン碍子Aの上部外周を覆うための筒状部11であって、第2のカバー部20のスリット21を延長した切欠き16が形成された筒状部11と、該筒状部11の一端でピン碍子Aの天面を覆うための天板部12と、溝に嵌合される凸部14であって、筒状部11の中心線を通る仮想基準面100を境とした第1の領域101にある筒状部11の内面の一部から径内方向に向けて突設される凸部14と、筒状部11の中心線を通る仮想基準面100を境とした第2の領域102にある筒状部11の外方に向けて延出する延出部15とを有する。
【0038】
かかる構成によれば、ピン碍子カバー1は、バインド線DによりケーブルEを固定したピン碍子Aの上に間接活線工具Cにより載せられる。これにより、筒状部11は、開口する一端側からピン碍子Aの外周を覆うようにピン碍子Aに嵌め合わされる。すると、筒状部11の中心線を通る仮想基準面100を境とした第1の領域101の内面から突設された凸部14がピン碍子Aの溝部に嵌り、一対のガイド片30がケーブルE及びバインド線Dを跨ぐようにして載る。そして、筒状部11の中心線を通る仮想基準面100を境とした第2の領域102から延出する延出部15が間接活線工具Cで把持されて下方に引っ張られることで、凸部14は、ピン碍子Aの溝に嵌め合わされたままピン碍子Aの表面に対して摺動する。また、一対のガイド片30は、ケーブルE又はバインド線Dに対してそれぞれ摺動することで互いに離間し、スリット21は、一対のガイド片30の離間に応じて開く。そして、スリット21がケーブルEの直径に対してケーブルEを通すのに十分に開くと、第2のカバー部20は、ケーブルE及びバインド線Dを内装するように移動して、ケーブルE及びバインド線Dを覆う。第2のカバー部20がケーブルE及びバインド線Dを覆うと、本体17は、ピン碍子Aの天面を覆う。これにより、ピン碍子カバー1は、ピン碍子Aに載せられた後、延出部15の引っ張りだけでピン碍子A、ケーブルE、及びバインド線Dを覆うことができるので、ピン碍子カバー1をピン碍子A、ケーブルE、及びバインド線Dに装着する作業の作業性の向上を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態のピン碍子カバー1の一態様として、延出部15は、第1のカバー部10の外周から下方に延出し、第1のカバー部10の径外方向に折り曲げ可能に構成されていてもよい。
【0040】
かかる構成によれば、延出部15が間接活線工具Cにより把持されて引っ張られる際に、延出部15は、第1のカバー部10の径外方向に折り曲げられることで作業員の位置に先端を向けるように折り曲げられる。これにより、ピン碍子カバー1は、延出部15を把持した間接活線工具Cを単に引っ張るだけでピン碍子A、ケーブルE、及びバインド線Dを覆うことができるので、ピン碍子カバー1をピン碍子A、ケーブルE、及びバインド線Dに装着する作業の作業性の向上を図ることができる。
【0041】
なお、本発明に係るピン碍子カバーは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0042】
例えば、上記実施形態に係るピン碍子カバー1は、
図5に示すように、クリップ40により第2のカバー部20がケーブルEに留められる構成であってもよい。クリップ40は、スリットが形成されている円形部41であって、第2のカバー部20の外径に合わせて内径の形成される円形部41と、該円形部41のスリットの両側に設けられた一対の突片42であって、それぞれが円形部41から径外方向に延出し、外方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように設けられた一対の突片42を有する。このような構成により、一対の突片42は、ケーブルE及びバインド線Dを覆った第2のカバー部20に押し当てられることで、互いに離間する方向に移動される。これにより、円形部41は、スリットを開かれることで、第2のカバー部20の外周に取付可能となる。円形部41が第2のカバー部20の外周に取り付けられることで、円形部41は、第2のカバー部20をケーブルE及びバインド線Dから外れないようにすることができる。
【0043】
また、上記実施形態に係るピン碍子カバー1において、筒状部11は、円筒形であるとしたが、これに限定されない。例えば、筒状部11は、方筒状等、筒状であれば種々の形状とすることができる。
【0044】
また、上記実施形態に係るピン碍子カバー1において、第2のカバー部20は、延出方向に所定の間隔を空けて設けられた蛇腹を有するとしたが、第2のカバー部20を可撓性のある材料で形成することで、蛇腹を設けずともよい。
【0045】
また、上記実施形態に係るピン碍子カバー1において、ケーブルの架設方向に複数のピン碍子(例えば2つ)が並んで配置されるような場合、第2のカバー部を延出方向に対して交差する方向に適宜切断し、2つのピン碍子カバー1を並べるようにしてもよい。これにより、並設されるピン碍子のそれぞれを第1のカバー部10で覆うことができる。
【0046】
また、上記実施形態に係るピン碍子カバー1において、ケーブルEは、架線であり、架設された通信ケーブルや、送電ケーブル等の種々のケーブルであってよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ピン碍子カバー
10 第1のカバー部
11 筒状部
12 天板部
13 フランジ部
14 凸部
20 第2のカバー部
21 スリット
30 ガイド片
40 クリップ
41 円形部
42 突片
A ピン碍子
B 腕金
C 間接活線工具
D バインド線
E ケーブル