特許第5893669号(P5893669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5893669回転砥石の製造法及び該製造法によって製造した回転砥石
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893669
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】回転砥石の製造法及び該製造法によって製造した回転砥石
(51)【国際特許分類】
   B24D 7/04 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   B24D7/04
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-93283(P2014-93283)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-208828(P2015-208828A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2014年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】501252995
【氏名又は名称】富士製砥株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】李 学勝
(72)【発明者】
【氏名】柳浦 芳一
(72)【発明者】
【氏名】孟 昭懿
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−213964(JP,A)
【文献】 特開2001−062735(JP,A)
【文献】 特開2014−108477(JP,A)
【文献】 特開平10−156726(JP,A)
【文献】 特開2001−054871(JP,A)
【文献】 特開2001−150352(JP,A)
【文献】 特開昭58−82681(JP,A)
【文献】 特開昭58−155174(JP,A)
【文献】 特開2004−50355(JP,A)
【文献】 特開昭53−137492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラインダの砥石回転駆動用シャフトを嵌合するための中空部を有し、且つ、補強材として用いられる一枚又は複数枚のガラスクロスに液状レジン樹脂を装着してプリプレグを形成し、該プリプレグに樹脂被膜砥粒層を積層して製造される回転砥石の製造法において、
上記ガラスクロスは直径0.1mmの捻糸から成り、且つ、縦横の長さが2.0mmのメッシュに形成される目抜平織・綾織又は絡み織にて織成され、該ガラスクロスに液状レジン樹脂を装着してプリプレグにした後、該プリプレグの両面に樹脂被膜砥粒を装着し、次に、両面に樹脂被膜砥粒層が形成されたプリプレグを圧搾機にて圧搾し、更に金型にて所定のプレス加工を施して前記樹脂被膜砥粒層中の各砥粒を前記ガラスクロスの各メッシュに夫々抱持させた後、焼成炉にて焼成して製造されることを特徴とする回転砥石の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転砥石の製造法及び該製造法によって製造した回転砥石に関するものであり、特に、補強材としてガラスクロスを設けた回転砥石の製造法及び該製造法によって製造した回転砥石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスクロスを補強材として用いた回転砥石は広く知られているが、特に、本発明に関連するものとして特許文献1及び2に開示されているものが知られている。
特許文献1に開示されている回転砥石は、並列された複数の経糸と、該経糸と斜交する複数の第1の斜交糸と、該第1の斜交糸と反対方向から該経糸に斜交する複数の第2の斜交糸とを有するガラスクロスの不織布を補強材として用いたものである。
【0003】
勿論、該ガラスクロスの不織布は熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグを形成し、このプリプレグを金型の中に1枚敷き、更に、この上に、液体フェノール樹脂にまぶした砥粒と粉末フェノール樹脂との混合物を均一な厚さに敷き詰め、更にこの上面に前記プリプレグを重ねて上方から加圧して成形するのである。即ち、プリプレグは上下面に配設され、この間に砥粒層が積層されて圧縮成形されるものである。
次に、特許文献2記載の回転砥石について説明する。
同文献に開示された回転砥石は、内部又は表面にガラスクロスを補強材として2層以上設けた回転砥石において、該ガラスクロスを互いに糸の織り方向が略45°又は135°に交錯するように配置されたものである。
而して、該ガラスクロスはメタノール溶性フェノールレジンでプリプレグに形成させ、このプリプレグの間に砥粒を挟んで所定の成形法により製造されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−315063
【特許文献2】特開昭57−66863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の上記特許文献1及び2に開示された回転砥石は何れもプリプレグと砥粒層とを積層成形したものであって、回転砥石としての回転破壊強度及び衝撃強度を向上させるものではあるが、この回転砥石はその使用中、自生作用を効率よく期待できないと言う欠陥がある。
即ち、回転砥石は、その使用中において、刃先の減った砥粒は、絶えず新しい刃を出現させるが、この新しい刃が駄目になると、該刃を構成する砥粒が脱落し、次の新しい砥粒が出現するのであるが、この新しい砥粒の出現時において、前記特許文献1及び2に開示された回転砥石は研削時において砥粒が欠けることなく、概してその儘の状態で脱落し、鋭い研削刃を形成することができない。
依って、研削時において、回転砥石の自生作用を最も効率良く期待できると共に、鋭い新しい刃の出現を可能にして研削作用が円滑且つ、正確に実現できるようにするために解決せられるべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は該課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、発明は、グラインダの砥石回転駆動用シャフトを嵌合するための中空部を有し、且つ、補強材として用いられる一枚又は複数枚のガラスクロスに液状レジン樹脂を装着してプリプレグを形成し、該プリプレグに樹脂被膜砥粒層を積層して製造される回転砥石の製造法において、
上記ガラスクロスは直径0.1mmの捻糸から成り、且つ、縦横の長さが2.0mmのメッシュに形成される目抜平織・綾織又は絡み織にて織成され、該ガラスクロスに液状レジン樹脂を装着してプリプレグにした後、該プリプレグの両面に樹脂被膜砥粒を装着し、次に、両面に樹脂被膜砥粒層が形成されたプリプレグを圧搾機にて圧搾し、更に金型にて所定のプレス加工を施して前記樹脂被膜砥粒層中の各砥粒を前記ガラスクロスの各メッシュに夫々抱持させた後、焼成炉にて焼成して製造されることを特徴とする回転砥石の製造法を提供するものである。
【0007】
この製造法によれば、ガラスクロスは極めて細い捻糸(直径0.1mm)によって目抜平織・綾織又は絡み織にて織成されるので、メッシュの縦横の長さを2.0mmに形成することが可能となる。そして、このガラスクロスを液状レジン樹脂に浸漬してプリプレグを形成し、次に、このプリプレグの両面から樹脂被膜砥粒を装着して、該プリプレグの両面に樹脂被膜砥粒層を形成し、この状態で圧搾機にて圧搾し、所定の金型等を用いて回転砥石が製造される。このとき、前記樹脂被膜砥粒はガラスクロスの各メッシュに抱持された状態で砥粒及び結合剤である樹脂並びにガラスクロスが一体的に結合される。
【発明の効果】
【0010】
発明において、ガラスクロスは0.1mmの捻糸を用いているので、目抜平織・綾織又は絡み織にて織成されるとき、縦横の長さは2.0mmのメッシュを形成することができる。そこで、このガラスクロスに液状レジン樹脂を装着してプリプレグを形成したので、このプリプレグ自身が極めて弾力性を有して不慮破損するようなことがなく、且つ、前記微細なメッシュが維持される。そこで、このプリプレグの両面に樹脂被膜砥粒を装着して樹脂被膜砥粒層を形成する。そして、之を圧搾機によって圧搾する。
【0011】
このとき、プリプレグの未硬化の前記液状レジン樹脂とプリプレグの両面に装着された前記樹脂被膜層を形成する樹脂とこの樹脂を結合材とする砥粒とが混成一体となり、各砥粒は前記ガラスクロスの夫々の微細なメッシュ間に強固に抱持された状態となってガラスクロス及び各樹脂が全体として一体的に結合される。
【0012】
そして、之を所定のプレス加工及び焼成工程を経て仕上げ加工が施されるので、本発明の回転砥石は被研削物の研削時において、前記メッシュに強固に抱持されている砥粒は一部欠けて被研削物を研削すると同時に、この欠け面が鋭い次の刃面を形成して、次の研削が実行されるのである。このような動作を繰り返すことにより本発明の回転砥石は極めて効率の良い自生作用が期待でき、且つ、砥粒が欠けて鋭利な次の刃面が出現するので、研削抵抗が減少して被研削物と回転砥石間に発生する研削熱は従来の回転砥石による研削に比し極めて低い。
【0013】
依って、本発明の回転砥石による研削は研削能率が向上し、被研削物が研削撓み、研削割れ或いは、研削面の精度不良等が発生するようなことも一切なくなり、極めて効率の良い自生作用が期待できるのであり、且つ、このような回転砥石は従来品に比し、極端に薄型に形成できるので材料も低減し、且つ、簡単な設備によって効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例に係る回転砥石の平面図。
図2図1のA−A線断面図。
図3図2の円内の拡大断面図。
図4】本発明に係るガラスクロスの平面図
図5】本発明の回転砥石の製造工程のフローチャート
図6】本発明の回転砥石によって被研削物を研削している状態を示す解説図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、グラインダの砥石回転駆動用シャフトを嵌合するための中空部を有し、且つ、補強材として用いられる一枚又は複数枚のガラスクロスに液状レジン樹脂を装着してプリプレグを形成し、該プリプレグに樹脂被膜砥粒層を積層して製造される回転砥石の製造法において、上記ガラスクロスは直径0.1mmの捻糸から成り、且つ、縦横の長さが2.0mmのメッシュに形成される目抜平織・綾織又は絡み織にて織成され、該ガラスクロスに液状レジン樹脂を装着してプリプレグにした後、該プリプレグの両面に樹脂被膜砥粒を装着し、次に、両面に樹脂被膜砥粒層が形成されたプリプレグを圧搾機にて圧搾し、更に金型にて所定のプレス加工を施して前記樹脂被膜砥粒層中の各砥粒を前記ガラスクロスの各メッシュに夫々抱持させた後、焼成炉にて焼成して製造されることを特徴とする回転砥石の製造法を提供することにより実現した。

【実施例】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至6に従って詳述する。
図1乃至図3は、回転砥石1を示し、図1はその平面図、図2図1のA−A線断面図、第3図は図2の○内の拡大断面図である。同図に示すように、回転砥石1は中央部に設けた中央孔2に金属製の補強リング3を嵌着させ、ここにグラインダ等の回転砥石駆動モーターのシャフトが嵌着されて回転砥石1が回転駆動され、被研削物を研削するように構成されている。
【0017】
尚、本発明に係る回転砥石1は、後述の製造工程を経て製造されるのであるが、本発明において、最も重要な構成要件の一つとして強調されるものは、補強材として設けられるガラスクロス4の特殊の構成が挙げられる。即ち、本発明に係るガラスクロス4は、図4に示す如く、直径0.1mmの捻糸を用いて目抜平織・綾織又は絡み織にて織成したとき、メッシュ4a、4a・・の夫々の縦横の長さを夫々2.0mmに形成することが可能となる。勿論、捻糸の直径は複数の単糸を捻った後の直径である。そこで、このメッシュ4a、4a・・には夫々各砥粒5、5・・が後述の樹脂(砥粒5、5・・の結合材を含む)と共に、一体的に強固に抱持されることができる。若し、このメッシュ4a、4a・・を大きくした場合はたとえ、そのメッシュ間に砥粒が存在したとしても各砥粒は該メッシュに強固に抱持されることはない。本発明の回転砥石1は前述したように各メッシュ4a、4a・・に夫々強固に樹脂と共に一体的に抱持されるもので、研削時において、各砥粒5、5・・は欠け、該欠け面が鋭利な次の刃面を形成することになる
【0018】
そこで、本発明の回転砥石1の製造工程を図5のフローチャートに従って説明する。本発明の回転砥石1は、同図のステップ1において、先ず補強材としてガラスクロス4が織成される。該ガラスクロス4は、0.1mmの捻糸を用いて目抜平織・綾織又は絡み織にて織成されるが、経糸と緯糸にて形成されるメッシュ4a、4a・・を縦横の長さを2.0mmに形成される。そこで、極めて小さいメッシュ4a、4a・・には各砥粒5、5・・を夫々強固に抱持することができる。斯くの如く織成されたガラスクロス4は、ステップ2において、液状樹脂を装着してプリプレグ6に形成される。従って、該プリプレグ6は、該液状樹脂が未硬化の状態で存在することになる。次に、該プリプレグ6はステップ3において、その両面に樹脂被膜砥粒層が形成される。
【0019】
この樹脂被膜砥粒層を形成するに当たっては、砥粒5、5・・と結合材としての樹脂を混合して樹脂砥粒を形成し、この樹脂砥粒を前記プリプレグ6の両面に装着することにより樹脂被膜砥粒層を形成する。この樹脂被膜砥粒はプリプレグ6の両面に刷毛にて塗布するか、或いは、スプレーガンを用いるか、又はヘラ塗り、或いは、弾性ローラを用いる等、種々の方法が考えられるが、何れの方法によってもプリプレグの両面に樹脂被膜砥粒層を装着することができ、その装着法は特定されるものではない。次に、ステップ4において、両面に前記樹脂被膜砥粒層が装着されたプリプレグ6は圧搾機によって圧搾される。このとき、各砥粒5、5・・は何れかの前記メッシュ4a、4a・・の何れかに前記各樹脂と共に一体的に抱持された状態で全体が極めて偏平に形成される。次に、ステップ5において、金型にて所定の形状に形成され、ステップ6にてプレス機にて加圧され、ステップ7において、焼成炉にて焼成仕上げされるのである。
【0020】
上記工程を経て製造された本発明の回転砥石1は、試験の結果、従来の最高品と言われている比較例との間に著大なる性能上の差異が存在することが判明した。
【0021】
表1は、比較例と本発明の回転砥石とを比較した例を示す。表1の上方のカーブが比較例を示し、下方のカーブが本発明の回転砥石のカーブである。即ち、各カーブの試験点において、夫々5分ずつ20回の回転研削を実行して夫々の100分間の摩耗量を検出したものであり、この表1に示すように比較例との間には夫々の回転砥石の摩耗量に大きな差異があることが判明した。
【0022】
【表1】
【0023】
又、上記比較例と本発明との100分間の研削量累計を下記の表2に示す。表2に於いて、上方のカーブが本発明の回転砥石の研削量累計のカーブを示し、下方のカーブが比類例の研削量累計のカーブである。
【0024】
表2に示すように本発明の回転砥石と比較例との間には、同一条件に於いて、被研削物の研削量が極めて大なる差異を有し、本発明の回転砥石の性能の優秀さが判明されるものである。
【0025】
【表2】
【0026】
以上表1及び表2のグラフから、本発明に於いては砥粒及び砥粒の結合材の使用量を比較例に対して約半分の量にて同一の性能を発揮することができ、材料使用量の節減によりコストダウンにも寄与することができる。
【0027】
そこで、本発明の回転砥石1によって、被研削物6を研削している状態を図6によって説明する。同図に示すように、各砥粒5、5・・は、夫々のメッシュ4a、4a・・に樹脂(之はプリプレグ6に装着した未硬化の樹脂及び砥粒5、5・・の結合材としての樹脂8を含む)と共に一体的に強固に包合され、更に又、プリプレグ6も該樹脂8とが一体的に結合して固結した状態を示す。尚、同図は本発明の回転砥石1の特徴を説明するものである。
【0028】
図6に示すように、被研削物7を回転砥石1によって研削するとき、前記メッシュ4a、4a・・に強固に抱合されている各砥粒5、5・・は夫々研削面に於いて欠け、この欠けることにより、次の刃面を形成する。即ち、該欠け面は丁度爪のように鋭く出現する結果、被研削物7を極めて正確、且つ、効率良く、迅速に研削することができ、回転砥石の自生作用を最も効率良く期待できるのである。
【0029】
勿論、本発明の回転砥石が回転破壊強度及び衝撃強度を向上させることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の回転砥石は、研削のみならず、研磨用のオフセット形回転砥石、切断用の平形回転砥石等の製造方法にも利用可能である。
【0031】
尚、本発明は本発明の精神を逸脱しない限り、種々の改変をなすことが出き、そして,本発明が改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0032】
1 回転砥石
2 中央孔
3 補強材
4 ガラスクロス
5 砥粒
6 プリプレグ
7 被研磨物
8 樹脂

図1
図2
図3
図4
図5
図6