特許第5893695号(P5893695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5893695
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】物品搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   B25J13/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-184545(P2014-184545)
(22)【出願日】2014年9月10日
【審査請求日】2015年7月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100182660
【弁理士】
【氏名又は名称】三塚 武宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】小田 勝
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−118274(JP,A)
【文献】 特開平09−160651(JP,A)
【文献】 特開2009−148845(JP,A)
【文献】 特開平08−153768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を対象物における目標位置まで搬送する指令に従って前記被搬送物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置による搬送後の前記被搬送物と前記対象物の両方を含む画像を取得できるように前記搬送装置に取り付けられた撮像装置、及び前記撮像装置が取得した前記画像を解析して前記被搬送物及び前記対象物のそれぞれの位置を検出する視覚検出装置と、
前記視覚検出装置が検出した前記被搬送物の位置が、前記対象物の位置に対して設定された許可領域内に在るかどうかを判定する判定装置と、を備える物品搬送システムであって、
前記搬送装置は、前記視覚検出装置が検出した前記被搬送物の位置が前記許可領域内には無い場合に、前記被搬送物を前記目標位置に向かって移送する移送工程を実行し、
前記視覚検出装置は、前記移送工程による移送後の前記被搬送物の位置を検出する二次検出工程を実行し、
前記判定装置は、前記二次検出工程で検出された前記被搬送物の位置が前記許可領域内に在るかどうかを判定する二次判定工程を実行し、
前記物品搬送システムは、前記移送工程、前記二次検出工程、及び前記二次判定工程が所定の回数を上限に繰り返し実行されるように前記搬送装置、前記視覚検出装置、及び前記判定装置を制御する制御装置をさらに含んでおり、
前記制御装置は、前記移送工程における移送距離の設定値として、前記視覚検出装置が検出した前記被搬送物の位置と前記目標位置との間の距離よりも小さい値を設定する、物品搬送システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記移送工程の繰り返しの序数が大きくなるのに従って前記距離に対する前記移送距離の設定値の割合が小さくなるように、前記移送距離の設定値を変更する、請求項に記載の物品搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を対象物に向かって搬送する搬送工程において被搬送物が対象物に対して正確に位置決めされたかどうかを確認できる物品搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の被搬送物を対象物に向かって搬送する物品搬送システムが従来から公知である。また、近年では、被搬送物及び対象物の位置を視覚的に検出可能な視覚センサを備えた物品搬送システムが普及しつつある。例えば、特許文献1には、視覚センサが取得した位置情報を用いて、被搬送物を対象物に向かって搬送するロボットシステムが提案されている。より具体的に、特許文献1に記載のロボットシステムでは、先ず、第2のハンドに装着された視覚センサが、第1のハンドに把持されているコネクタ付きケーブルの位置情報と、テーブルに置かれている相手コネクタの位置情報と、を取得する。次いで、第1のハンドが、視覚センサにより取得された位置情報を用いて、コネクタ付きケーブルを相手コネクタに向かって搬送する。このようにして被搬送物(コネクタ付きケーブル)が対象物(相手コネクタ)に組み付けられる。
【0003】
ところが、視覚センサを用いて正確な位置情報を取得しても、ロボットの動作精度が不十分である場合には、ロボットによる搬送工程中に或る程度の搬送誤差が生じることが避けられない。つまり、視覚センサを用いて正確な位置情報を取得しても、対象物に対する被搬送物の位置決め精度を保証することはできない。また、特許文献1に記載のロボットシステムにおいて、被搬送物が対象物に対して正確に位置決めされたどうかを確認するためには、例えば、第2ハンドに装着された視覚センサを被搬送物及び対象物の近くに移動させ、次いで、視覚センサによって被搬送物及び対象物の両方を含む画像を取得する必要がある。このように従来の物品搬送システムでは、被搬送物が対象物に対して正確に位置決めされたかどうかを確認するのに多くの作業工数が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−11580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被搬送物を対象物に向かって搬送する搬送工程において被搬送物が対象物に対して正確に位置決めされたかどうかを簡易に確認できる物品搬送システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、被搬送物を対象物における目標位置まで搬送する指令に従って被搬送物を搬送する搬送装置と、搬送装置による搬送後の被搬送物と対象物の両方を含む画像を取得できるように搬送装置に取り付けられた撮像装置、及び撮像装置が取得した画像を解析して被搬送物及び対象物のそれぞれの位置を検出する視覚検出装置と、視覚検出装置が検出した被搬送物の位置が、対象物の位置に対して設定された許可領域内に在るかどうかを判定する判定装置と、を備える物品搬送システムであって、前記搬送装置は、前記視覚検出装置が検出した前記被搬送物の位置が前記許可領域内には無い場合に、前記被搬送物を前記目標位置に向かって移送する移送工程を実行し、前記視覚検出装置は、前記移送工程による移送後の前記被搬送物の位置を検出する二次検出工程を実行し、前記判定装置は、前記二次検出工程で検出された前記被搬送物の位置が前記許可領域内に在るかどうかを判定する二次判定工程を実行し、前記物品搬送システムは、前記移送工程、前記二次検出工程、及び前記二次判定工程が所定の回数を上限に繰り返し実行されるように前記搬送装置、前記視覚検出装置、及び前記判定装置を制御する制御装置をさらに含んでおり、前記制御装置は、前記移送工程における移送距離の設定値として、前記視覚検出装置が検出した前記被搬送物の位置と前記目標位置との間の距離よりも小さい値を設定する、物品搬送システムが提供される。
発明の第の態様によれば、第の態様において、制御装置が、移送工程の繰り返しの序数が大きくなるのに従って距離に対する移送距離の設定値の割合が小さくなるように、移送距離の設定値を変更する、物品搬送システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、搬送装置による搬送後の被搬送物及び対象物のそれぞれの位置が、搬送装置に取り付けられた視覚検出装置によって検出されるとともに、視覚検出装置が検出した位置情報に基づいて、被搬送物が対象物に対して正確に位置決めされたかどうかが判定される。従って、第1の態様によれば、被搬送物を対象物に向かって搬送する搬送工程において被搬送物が対象物に対して正確に位置決めされたかどうかを簡易に確認できるようになる。また、視覚検出装置が検出した被搬送物の位置が許可領域内に入るまで、被搬送物の移送工程が繰り返されるので、被搬送物を対象物に対して高精度に位置決めできるようになる。また、被搬送物の移送距離として、被搬送物の検出位置と目標位置との間の距離よりも小さい値が設定されるので、搬送装置の位置決め誤差が原因で被搬送物が目標位置を通り越して移送されるのを防止できるようになる。
本発明の第の態様によれば、移送工程の繰り返しの序数が大きくなるのに従って上記の距離に対する移送距離の設定値の割合が小さくなるように、移送距離の設定値が変更されるので、被搬送物の移送工程が繰り返し実行される場合にも、搬送装置の位置決め誤差が原因で被搬送物が目標位置を通り越して移送されるのを防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による物品搬送システムの構成を示すブロック図である。
図2図1の物品搬送システムの搬送装置及び視覚検出装置を示す斜視図である。
図3図2の視覚検出装置の撮像装置による撮影画像の一例を示す概略図である。
図4】本実施形態の物品搬送システムによる搬送・位置決め工程の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。各図面において、同様の構成要素には同様の符号が付与されている。なお、以下に記載される内容は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲や用語の意義等を限定するものではない。
【0010】
図1図4を参照して、本発明の1つの実施形態の物品搬送システムについて説明する。図1は、例示的な物品搬送システム1の構成を示すブロック図である。ここで、本例の物品搬送システム1は、所定の供給位置に供給された被搬送物W1を対象物W2に設定された目標位置に向かって搬送し、次いで、搬送後の被搬送物W1を目標位置に対して位置決めする自動化システムである(図2も参照)。物品搬送システム1が被搬送物W1を目標位置に向かって搬送する工程を以下では「搬送工程」と称し、物品搬送システム1が被搬送物W1を目標位置に対して位置決めする工程を以下では「位置決め工程」と称する。さらに、搬送工程及び位置決め工程から成る一連の工程を以下では「搬送・位置決め工程」と称する。
【0011】
図1のように、本例の物品搬送システム1は、搬送装置2、視覚検出装置3、判定装置4、及び制御装置5を含んでいる。ここで、本例の搬送装置2は、被搬送物W1を対象物W2における目標位置まで搬送する指令に従って、被搬送物W1を搬送する。このような指令は制御装置5の記憶部50に予め格納されている。また、本例の視覚検出装置3は、搬送装置2が搬送した被搬送物W1の位置情報を取得する。また、本例の判定装置4は、視覚検出装置3が取得した位置情報を用いて所定の判定を実行する。そして、本例の制御装置5は、判定装置4による判定結果を用いて搬送装置2及び視覚検出装置3等の動作を制御する。これら装置の機能及び構造等について以下に詳細に説明する。
【0012】
図2は、図1の物品搬送システム1における搬送装置2及び視覚検出装置3を、被搬送物W1及び対象物W2と一緒に示す斜視図である。図2のように、本例の被搬送物W1は、細長い板材の形態を呈し、本例の対象物W2は、被搬送物W1よりも大型かつ厚手の板材の形態を呈する。つまり、対象物W2の延在方向の長さは被搬送物W1の延在方向の長さよりも大きく、かつ、対象物W2の延在方向に垂直な幅は被搬送物W1の延在方向に垂直な幅よりも大きい。そのため、被搬送物W1が対象物W2に対して適切に位置決めされると、被搬送物W1の主面S11の全体が、対向する対象物W2の主面S2に接触するようになる。なお、本例の対象物W2は、搬送工程に先立ち、搬送装置2の近傍に配置される。図2は、物品搬送システム1による搬送工程が終了した直後の被搬送物W1と対象物W2との位置関係を示している。
【0013】
図2のように、本例の搬送装置2は、手首部RWを先端に有するアームRAと、手首部RWに装着されたハンドRHと、から構成される垂直多関節ロボットである。より具体的に、本例のアームRAは、床面に固定された固定基部21と、固定基部21に取り付けられた旋回基部22と、旋回基部22の上端部に連結された回動式の下腕部23と、下腕部23の先端部に連結された回動式の上腕部24と、上腕部24の先端部に連結された回動式の手首部RWと、を有している。そして、本例のアームRAは、サーボモータ等の駆動装置を用いて各部を駆動することによって、手首部RWに装着されたハンドRHの位置及び姿勢を自在に変更することができる。これにより、本例のアームRAは、上記の供給位置でハンドRHが把持した被搬送物W1を、予め搬送装置2の近傍に配置された対象物W2に向かって搬送することができる。ハンドRHが被搬送物W1を把持する原理については後述する。
【0014】
図2のように、本例のハンドRHは、アームRAの手首部RWに装着された基端部25と、基端部25から延在する本体部26と、本体部26の先端部に取り付けられた吸着部27と、を有している。より具体的に、ハンドRHの本体部26は、基端部25から手首部RWの反対側に突出する突出部分と、突出部分の先端部から垂直に延在する垂直部分と、を含むL字状の形態を呈している。また、ハンドRHの吸着部27は、本体部26の垂直部分に設けられた貫通穴に嵌入されるノズル271と、ノズル271の先端部に取り付けられる真空パッド272と、を有している。そして、ノズル271の基端部は、図示しないエアチューブを介して真空ポンプ等の真空供給源に接続されている。従って、真空パッド272を被搬送物W1の主面S12に接触させた状態で、真空パッド272内の気体を真空供給源によって排出すると、真空パッド272内に形成される負圧の作用によって被搬送物W1が真空パッド272に吸着される。
【0015】
続いて、本例の視覚検出装置3について説明する。本例の視覚検出装置3は、所定の装着部材311を介してハンドRHに装着された撮像装置31と、撮像装置31が取得した画像を解析する解析装置32と、を含んでいる。本例の撮像装置31は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子を備えたデジタルカメラである。図2のように、本例の撮像装置31は、搬送工程の完了時に被搬送物W1と対象物W2の両方を含む画像を取得できるようにハンドRHに取り付けられている。より具体的に、本例の撮像装置31は、その撮像面の前方に位置する組レンズの前端面312が、真空パッド272の吸着面を含む仮想平面から上方に離間し、かつ撮像面が上記の仮想平面と概ね平行になるように、ハンドRHに取り付けられている。そのため、撮像装置31は、搬送後の被搬送物W1の主面S12を、その背後に位置する対象物W2の主面S2と一緒に撮影することができる。なお、本例の物品搬送システム1では、被搬送物W1及び対象物W2の全体が撮影される必要は無く、被搬送物の主面S12の一部と、その背後に位置する対象物W2の主面S2の一部と、が撮影されればよい。
【0016】
図3は、図2の視覚検出装置3の撮像装置31による撮影画像の一例を示す概略図である。このような撮影画像は視覚検出装置3の解析装置32に送信される(図1を参照)。視覚検出装置3の解析装置32は、撮像装置31から独立した装置であってもよいし、撮像装置31に内蔵されていてもよい。また、視覚検出装置3の解析装置32は、上記の判定装置4又は制御装置5に内蔵されていてもよい。そして、本例の解析装置32は、受信した撮影画像を解析することによって対象物W2及び被搬送物W1のそれぞれの位置を検出する。より具体的に、本例の解析装置32は、受信した撮影画像の解析結果から、被搬送物W1の代表点P1の位置と、対象物W2の代表点P2の位置と、を検出する。解析装置32が検出した代表点の位置を以下では検出位置と称する。
【0017】
図3の例では、被搬送物W1の代表点P1として、被搬送物W1の矩形状の主面S12の右上の頂点が選択されており、対象物W2の代表点P2として、対象物W2の矩形状の主面S2の右上の頂点が選択されている。ただし、上記の代表点P1,P2は、被搬送物W1及び対象物W2の主面において任意に選択されうる。なお、図3の撮影画像では、搬送工程後の被搬送物W1の検出位置が実線で示されており、対象物W2の主面S2に予め設定された上記の目標位置が一点鎖線で示されている。さらに、図3の撮影画像では、目標位置に対応する被搬送物W1の代表点が符号P0で表されている。視覚検出装置3の解析装置32が検出した被搬送物W1及び対象物W2の位置情報は上記の判定装置4に送信される。
【0018】
続いて、本例の判定装置4について説明する。図1のように、本例の判定装置4は、視覚検出装置3から取得した位置情報に基づいて、被搬送物W1の検出位置が、対象物W2の検出位置に対して設定された許可領域A内に在るかどうかを判定する機能を有する。図3を参照すると、本例の物品搬送システム1では、対象物W2の代表点P2を中心とした半径rの扇形領域が上記の許可領域Aとして設定されている。そして、本例の判定装置4は、視覚検出装置3から取得した位置情報に基づいて、被搬送物W1の代表点P1の検出位置が、上述した扇形の許可領域Aの内側に在るかどうかを判定する。
【0019】
なお、上記の許可領域Aの大きさ、すなわち、扇形の半径rは、目標位置に対する被搬送物W1の位置決め誤差の許容範囲を考慮して決定される。つまり、被搬送物W1の代表点P1の検出位置が許可領域A内に在る場合には、目標位置に対する被搬送物W1の位置決め誤差が許容範囲内であると見做される。その場合には上記の位置決め工程が省略される。他方、被搬送物W1の代表点P1の検出位置が許可領域A内に無い場合には、搬送装置2、視覚検出装置3、及び判定装置4によって上記の位置決め工程が実行される。この点についてはさらに後述する。判定装置4による判定結果は、上記の制御装置5に送信されるとともに、必要に応じて、物品搬送システム1内に設けられた表示装置に表示されうる。このような表示装置は、例えば判定装置4又は制御装置5に設けられる。
【0020】
続いて、本例の制御装置5について説明する。図1のように、本例の制御装置5は、種々のデータを格納する記憶部50と、上記の搬送工程におけるシステムの動作を制御する搬送制御部51と、上記の位置決め工程におけるシステムの動作を制御する位置決め制御部52と、を有している。ここで、本例の搬送制御部51は、記憶部50に格納された上記の指令に従って、搬送工程における搬送装置2の動作を制御する。その結果、搬送装置2が上記の供給位置で被搬送物W1を把持し、次いで、被搬送物W1を対象物W2における目標位置に向かって搬送する。また、本例の位置決め制御部52は、位置決め工程における搬送装置2、視覚検出装置3、及び判定装置4の動作を制御する。本例の位置決め工程における各装置の動作について以下に詳細に説明する。
【0021】
本例の位置決め工程では、先ず、搬送装置2が、上記の指令に記述された目標位置に向かって被搬送物W1を移送する。この工程を以下では「移送工程」と称することがある。移送工程において被搬送物W1が移送される方向が図3中の矢印A30で表されている。本例の位置決め工程では、次いで、視覚検出装置3が、移送工程後の被搬送物W1の位置を検出する。この工程を以下では「二次検出工程」と称することがある。本例の位置決め工程では、次いで、判定装置4が、二次検出工程で検出された被搬送物W1の位置が上記の許可領域A内に在るかどうかを判定する。この工程を以下では「二次判定工程」と称することがある。このように、本例の位置決め工程は、搬送装置2による移送工程と、視覚検出装置3による二次検出工程と、判定装置4による二次判定工程と、から構成されている。そして、本例の位置決め制御部52は、上記の移送工程、二次検出工程、及び二次判定工程が所定の回数を上限に繰り返し実行されるように、搬送装置2、視覚検出装置3、及び判定装置4のそれぞれの動作を制御する。ただし、それら工程の繰り返しの序数が上限に達していなくても、二次判定工程での判定結果が真になった時点で(すなわち、移送工程後の被搬送物W1の検出位置が許可領域A内に入った時点で)位置決め工程は終了となる。
【0022】
次に、本実施形態の物品搬送システム1の動作の概要について説明する。図4は、本実施形態の物品搬送システム1による搬送・位置決め工程の手順を示すフローチャートである。図4のように、先ず、ステップS401では、搬送装置2のハンドRHが、所定の供給位置に供給された被搬送物W1を吸着して把持する。次いで、ステップS402では、搬送装置2もアームRAが、ハンドRHで把持している被搬送物W1を対象物W2における目標位置に向かって搬送する。ステップS401及びS402で表される一連の手順が上記の搬送工程に相当する。上述した通り、搬送装置2は、制御装置5の記憶部50に格納された指令に従って搬送工程を実行する。
【0023】
次いで、ステップS403では、視覚検出装置3が、搬送工程後の被搬送物W1の位置を対象物W2の位置とともに検出する(図3を参照)。ステップS403で検出された被搬送物W1及び対象物W2の位置情報は判定装置4に送信される。次いで、ステップS404では、判定装置4が、ステップS403での被搬送物W1の検出位置が上記の許可領域A内に在るかどうかを判定する。ここで、被搬送物W1の検出位置が許可領域内A内に在る場合には(ステップS404のYES)、物品搬送システム1は位置決め工程を省略してステップS407に進む。他方、被搬送物W1の検出位置が許可領域A内に無い場合には(ステップS404のNO)、搬送装置2が上記の移送工程を実行する(ステップS405)。
【0024】
より具体的に、ステップS405では、搬送装置2が、被搬送物W1を対象物W2における目標位置に向かって移送する。上述した通り、図3では、被搬送物W1の検出位置が実線で示されており、被搬送物W1の目標位置が一点鎖線で示されている。また、図3では、移送工程における被搬送物W1の移送方向が矢印A30で表されている。引き続き図3を参照すると、移送工程(ステップS405)の際に、上記の位置決め制御部52は、被搬送物W1の移送距離として、被搬送物W1の検出位置(P1)と目標位置(P0)との間の距離dよりも小さい値を設定する。これにより、搬送装置2の位置決め誤差が原因で被搬送物W1が目標位置を通り越して移送されるのを防止できる。このように被搬送物W1が目標位置を通り越して移送される現象は「オーバーシュート」と称される。なお、被搬送物W1の検出位置(P1)と目標位置(P0)との間の距離dに対する移送距離の設定値xの割合αは、例えば70%にされる(α=x/d=0.7)。
【0025】
再び図4を参照すると、ステップS406では、視覚検出装置3が上記の二次検出工程を実行する。より具体的に、ステップS406では、視覚検出装置3が、移送工程後の被搬送物W1の位置を検出する。ステップS406で検出された被搬送物W1の位置情報は判定装置4に送信される。次いで、2回目以降のステップS404では、判定装置4が、上記の二次判定工程を実行する。より具体的に、2回目以降のステップS404では、判定装置4が、直前の二次検出工程(ステップS406)での被搬送物W1の検出位置が上記の許可領域A内に在るかどうかを判定する。このようなステップS405、S406、及びS404で表される一連の手順が、繰り返し実行される位置決め工程の1サイクルに相当する。この一連の手順は、二次判定工程(2回目以降のステップS404)での判定結果が真になるまで、すなわち、二次検出工程(ステップS406)での被搬送物W1の検出位置が許可領域A内に入るまで繰り返される。
【0026】
なお、被搬送物W1の移送工程(ステップS405)が2回以上繰り返される場合には、上記の距離dに対する移送距離の設定値xの割合αが、移送工程の繰り返しの序数に応じて徐々に小さくなるように、移送距離の設定値xが変更される。例えば、1回目の移送工程における上記の割合αが70%である場合には、2回目の移送工程における上記の割合αが40%になるように移送距離の設定値xが変更される。そして、3回目の移送工程が実行される場合には、上記の割合αが40%よりも小さくなるように移送距離の設定値xがさらに変更される。通常は、移送工程の繰り返しの序数が大きくなるのに従って、被搬送物W1の検出位置(P1)と目標位置(P0)との間の距離dが縮小されるので、搬送装置2の位置決め誤差を原因とするオーバーシュートが発生しやすくなる。ところが、上記の割合αが徐々に小さくなるように移送距離の設定値xを適切に変更すれば、2回目以降の移送工程においてもオーバーシュートの発生を防止できるようになる。その結果、被搬送物W1を徐々に目標位置に近づけることができるので、被搬送物W1の検出位置が許可領域A内に入るまでの移送工程の繰り返し回数を減らすことができる。これにより搬送・位置決め工程の所要時間を短縮することができる。
【0027】
再び図4を参照すると、ステップS407では、搬送装置2のハンドRHが被搬送物W1の吸着を解除する。これにより被搬送物W1がハンドRHから解放されるので、被搬送物W1が対象物W2の主面S2に載置される。次いで、ステップS408では、搬送装置2のアームRAが、ハンドRHを対象物W2の周辺領域から退避させる。その後、物品搬送システム1は搬送・位置決め工程を終了するものの、必要に応じて新たな被搬送物W1に対する搬送・位置決め工程を開始する。
【0028】
以上のように、本実施形態の物品搬送システム1では、搬送装置2による搬送後の被搬送物W1及び対象物W2のそれぞれの位置が、搬送装置2に取り付けられた視覚検出装置3によって検出されるとともに、視覚検出装置3が検出した位置情報に基づいて、被搬送物W1が対象物W2に対して正確に位置決めされたかどうかが判定される。従って、本実施形態の物品搬送システム1によれば、被搬送物W1を対象物W2に向かって搬送する搬送工程において被搬送物W1が対象物W2に対して正確に位置決めされたかどうかを簡易に確認できるようになる。
【0029】
本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々改変されうる。例えば、上記の実施形態では、搬送装置2として垂直多関節ロボットを例示したものの、本発明における物品搬送システム1の搬送装置2は、水平多関節ロボット及び直交ロボット等を含む、被搬送物W1を予め設定された目標位置に向かって搬送可能な任意の機械装置でありうる。また、本発明における物品搬送システム1の搬送装置2は、上記の実施形態で例示した真空吸着式のハンドRHの代わりに、電磁吸着式又はサーボ駆動式のハンドRHを備えてもよい。また、上記の実施形態に記載された物品搬送システム1の各装置の構造及び機能等は一例にすぎず、本発明の効果を達成するために多様な構造及び機能等が採用されうる。さらに、上記の実施形態に記載された被搬送物W1及び対象物W2の寸法及び形状等は一例にすぎず、種々の寸法及び形状等を有する被搬送物W1及び対象物W2が採用されうる。
【符号の説明】
【0030】
1 物品搬送システム
2 搬送装置
21 固定基部
22 旋回基部
23 下腕部
24 上腕部
25 基端部
26 本体部
27 吸着部
271 ノズル
272 真空パッド
3 視覚検出装置
31 撮像装置
311 装着部材
312 前端面
32 解析装置
4 判定装置
5 制御装置
A 許可領域
P0 代表点
P1 代表点
P2 代表点
RA アーム
RH ハンド
RW 手首部
S11 主面
S12 主面
S20 主面
W1 被搬送物
W2 対象物
r 半径
d 距離
x 設定値
【要約】
【課題】被搬送物を対象物に向かって搬送する搬送工程において被搬送物が対象物に対して正確に位置決めされたかどうかを簡易に確認できる物品搬送システムを提供する。
【解決手段】被搬送物W1を対象物W2における目標位置まで搬送する指令に従って被搬送物W1を搬送する搬送装置2と、搬送装置2による搬送後の被搬送物W1と対象物W2の両方を含む画像を取得できるように搬送装置2に取り付けられた撮像装置31、及び撮像装置31が取得した画像を解析して被搬送物W1及び対象物W2のそれぞれの位置を検出する視覚検出装置3と、視覚検出装置3が検出した被搬送物W1の位置が、対象物W2の位置に対して設定された許可領域A内に在るかどうかを判定する判定装置4と、を備える物品搬送システム1。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4