(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全体が円環状のズームレンズ群、ズーム保持枠、ズーム回転リングを有し、該ズーム回転リングとズームギアユニットとを連結させ、該ズームギアユニットに内蔵されたパルスモータの駆動力によって光軸方向に移動させて変倍の調整を行うズーム調整部と、
全体が円環状のフォーカス回転リング、フォーカスレンズ群、フォーカス保持枠を有し、該フォーカス回転リングとフォーカスギアユニットとを連結させ、該フォーカスギアユニットに内蔵されたパルスモータの駆動力によって光軸方向に移動させてフォーカスの調整を行うフォーカス調整部と、を有して変倍光学系であるバリフォーカルレンズであるレンズ本体と、
前記レンズ本体のズーム調整部とフォーカス調整部間に介装固定され、光路を形成する開口部を有する基板上に直線スライドが可能な絞り羽根のスライド量をパルスモータと直流モータとを駆動制御して光量の調整を行うアイリス調整部と、
全体が薄く長手状で可撓性部材からなるフレキシブル基板、
該フレキシブル基板上の長手方向の端部に外部から供給される電源、通信回路用の送受信信号接続用の端子が設けられた入出力端子、
該入出力端子の長手方向に離間して、前記ズーム調整部のパルスモータ、前記フォーカス調整部のパルスモータ、前記アイリス調整部のパルスモータ及び直流モータとそれぞれ接続されて電源、送受信信号の入出力を行うランド、
CPU、メモリを有する、マイクロコンピュータ、
前記ズーム調整部のパルスモータ、前記フォーカス調整部のパルスモータ、前記アイリス調整部のパルスモータ及び直流モータのそれぞれに駆動電圧を出力するモータドライバ回路、
を有して各パルスモータ及び直流モータの駆動制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記マイクロコンピュータ、ICチップ、部品が設けられているエリア以外は、湾曲若しくは折り曲げ可能であり、前記レンズ本体の光軸方向と交叉する方向に該レンズ本体の外縁の周囲に沿って装着してなり、前記各パルスモータの駆動制御を行うことによってズーム調整後にフォーカス調整を行うようにしたこと
を特徴とするCCTVカメラ用CCTVレンズ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明によるCCTVレンズ及びCCTVレンズの補正方法を実施するための形態について説明する。なお、本発明によるCCTVレンズは、ズーム調整部、フォーカス調整部を有するバリフォーカルレンズについて説明する。
【0027】
[バリフォーカルレンズの構成]
図1は、バリフォーカルレンズの外観を示す図、
図2は、バリフォーカルレンズ本体及び各ユニットの分解斜視図、
図3は、バリフォーカルレンズ本体の分解斜視図、
図4は、バリフォーカルレンズ本体の外縁に沿って設けられるフレキシブル回路の外観を示す図、
図5は、フレキシブル回路により構成された制御部を示すブロック図である。
【0028】
図1、
図2及び
図4に示すように、本発明に係るCCTVレンズの一例としてのバリフォーカルレンズ1は、フレキシブル回路41からなる制御部40と、レンズ本体2と、フォーカスギアユニット30、ズームギアユニット31及びアイリスユニット23とを有しており、レンズ本体2の外縁に沿って、フレキシブル回路41が設けられている。
【0029】
レンズ本体2は、
図3に示すように、フォーカス調整部5及びズーム調整部15からなる。最初に、レンズ本体2のフォーカス調整部5について説明する。
【0030】
[フォーカス調整部の構成]
図3に示すようにフォーカス調整部5は、フォーカスの調整を行うものであり、被写体側に位置し、レンズ枠にフォーカス用のレンズを取り付けたフォーカスレンズ群6と、フォーカスレンズ群6を移動するための駆動力を発生するフォーカス回転リング7と、フォーカスレンズ群6を収納し、フォーカスレンズ群6の光軸方向への移動を案内するフォーカス保持枠8とを有する。
【0031】
フォーカス調整部5は、最外部にフォーカス回転リング7が位置し、フォーカス回転リング7の内部にフォーカス保持枠8が内蔵されている。また、フォーカス保持枠8の内部には、フォーカスレンズ群6が組み込まれている。
図3に、点線で示す矢印でフォーカスレンズ群6、フォーカス保持枠8及びフォーカス回転リング7の結合の順序を示している。矢印Aは、フォーカスレンズ群6がフォーカス保持枠8と結合する状態を示し、フォーカスレンズ群6を内蔵したフォーカス保持枠8は、矢印Bで示すようにフォーカス回転リング7と結合する。
【0032】
フォーカスレンズ群6は、レンズを取り付ける円環状のレンズ枠を有し、レンズ枠の外周に移動ピン6aが突設されている。なお、フォーカスレンズ群6は複数のレンズから構成されているが、複数のレンズに代えて1枚のレンズで構成してもよい。
【0033】
フォーカス回転リング7は、円環状の形状を成し、外周後部にギア部7aを有し、内周部に凹部7bが螺旋状に形成されている。フォーカス回転リング7は、後述するフォーカスギアユニット30と連結して、フォーカスレンズ群6を移動させるための駆動力を伝達する部材として作用する。
【0034】
フォーカス保持枠8は、円筒形状で成り、円筒外周面上には光軸と平行に形成されたスリット状の移動ピン案内溝8aがフォーカス保持枠8の円筒の内壁を切り欠いて設けられている。フォーカス保持枠8の他端には、
図2に示すアイリスユニット23を取り付けるための金具8bを有している。フォーカス保持枠8の移動ピン案内溝8aの両端は、フォーカスレンズ群6の移動ピン6aが係合して移動するストロークのストッパーとして作用する。なお、フォーカス保持枠8の移動ピン案内溝8aの定義した端部(例えば、フォーカス保持枠8の金具8b側に位置する端部)を、フォーカスギアユニット30に内蔵されたパルスモータ30a(
図2に図示)のステップ数を計数するための基準位置としている。なお、ステップ数とは、基準位置でのパルスモータのステップ数を0とし、パルスモータの正転又は逆転用の入力端子に入力されるパルス数である。例えば、パルスモータの正転方向に入力したパルス数をカウンタで増加するようにカウントし、パルスモータの逆転方向に入力したパルス数をカウンタで減少するようにカウントしたときの、カウンタのカウント値に相当するものである。
【0035】
このフォーカス調整部5は、フォーカスレンズ群6の移動ピン6aがフォーカス保持枠8の移動ピン案内溝8aに挿通されている。また、フォーカス保持枠8の外周に回転可能に取り付けられたフォーカス回転リング7の内周部に設けられた凹部7bに、フォーカスレンズ群6の移動ピン6aの先端部が係合している。したがって、フォーカス回転リング7が回転すると、フォーカスレンズ群6の移動ピン6aがフォーカス回転リング7の凹部7bに沿って移動し、フォーカス保持枠8の移動ピン案内溝8aによってフォーカスレンズ群6が光軸方向に移動する。
【0036】
[ズーム調整部の構成]
一方、ズーム調整部15は変倍の調整を行うものであり、レンズ枠にズーム用のレンズを取りつけたズームレンズ群16と、ズームレンズ群16を収納しズームレンズ群16の光軸方向への移動を案内するズーム保持枠17と、ズームレンズ群16を移動するための駆動力を発生するズーム回転リング18とからなる。
【0037】
ズーム調整部15は、最外部にズーム回転リング18が位置し、ズーム回転リング18の内部にズーム保持枠17が内蔵されている。また、ズーム保持枠17の内部には、ズームレンズ群16が組み込まれている。
図3に、点線で示す矢印でズームレンズ群16、ズーム保持枠17及びズーム回転リング18の結合の順序を示している。矢印Cは、ズームレンズ群16がズーム保持枠17と結合する状態を示し、ズームレンズ群16を内蔵したズーム保持枠17は、矢印Dで示すようにズーム回転リング18と結合する。
【0038】
ズームレンズ群16は、レンズを取り付ける円環状のレンズ枠を有し、レンズ枠の外周に移動ピン16aが突設されている。なお、ズームレンズ群16は複数のレンズから構成されているが、複数のレンズに代えて1枚のレンズで構成してもよい。
【0039】
ズーム保持枠17は、円筒状の形状を成し、円筒上には光軸と平行に形成されたスリット状の移動ピン案内溝17aがズーム保持枠17の円筒の内壁を切り欠いて設けられている。ズーム保持枠17のフォーカス調整部5と結合する側の端部には、フォーカス調整部5と結合するための金具17bを有している。また、ズーム保持枠17の他端には、CCTVカメラ(図示せず)と結合するためのマウント部17cが設けられている。ズーム保持枠17の移動ピン案内溝17aの両端は、ズームレンズ群16の移動ピン16aのストッパーとして作用するようになっている。なお、ズーム保持枠17の移動ピン案内溝17aの定義した端部(例えば、ズーム保持枠17のマウント部17c側に位置する端部)を、ズームギアユニット31に内蔵されたパルスモータ31a(
図2に図示)のステップ数を計数するための基準位置とする。
【0040】
ズーム回転リング18は、円環状の形状を成し、外周面の一部にギア部18aを有し、内周部に凹部18bが形成されている。ズーム回転リング18は、後述するズームギアユニット31と連結して、ズームレンズ群16を移動させるための駆動力を伝達する部材として作用する。
【0041】
このズーム調整部15は、ズームレンズ群16の移動ピン16aが、ズーム保持枠17の移動ピン案内溝17aを挿通し、移動ピン16aの先端がズーム回転リング18の内周部の凹部18bと係合している。したがって、外周のズーム回転リング18が回転すると、ズームレンズ群16の移動ピン16aがズーム回転リング18の凹部18bに沿って移動し、ズーム保持枠17の移動ピン案内溝17aによってズームレンズ群16が光軸方向に移動する。
【0042】
フォーカス調整部5とズーム調整部15とは、フォーカス調整部5に設けられたネジ穴(図示せず)と金具17bの孔をネジ止めすることによって固定される。
【0043】
[フォーカスギアユニットの動作]
フォーカス回転リング7のギア部7aは、フォーカスギアユニット30と係合している。
図2に示すフォーカスギアユニット30には、パルスモータ30aとギアが内蔵されており、パルスモータ30aの回転軸に取り付けたギアを含むギア列(図示せず)を有している。フォーカスギアユニット30のパルスモータ30aの回転が、ギア列を介してフォーカス調整部5のフォーカス回転リング7のギア部7aに伝達されて、フォーカス回転リング7が回転する。
【0044】
フォーカス回転リング7が回転することにより、フォーカスレンズ群6の移動ピン6aがフォーカス回転リング7の凹部7bに沿って移動し、フォーカス保持枠8の移動ピン案内溝8aによってフォーカスレンズ群6が光軸方向に移動する。パルスモータ30aの回転方向によって、フォーカスレンズ群6の移動方向が決定される。パルスモータ30aは、1パルスに対する回転軸のステップ角が決まっているため、パルス数により回転軸が回転する角度が決定し、フォーカスギアユニット30のギア列のギア比及びフォーカス回転リング7のギア部7aのギア比により、パルスモータ30aのパルス数に対するフォーカスレンズ群6の移動量が決まる。また、パルスモータ30aのパルス数を基準位置からの計数値とすることにより、フォーカスレンズ群6の位置は、パルスモータ30aの基準位置からのステップ数で決定される。
【0045】
[ズームギアユニットの動作]
また、ズーム回転リング18のギア部18aは、ズームギアユニット31と係合している。
図2に示すズームギアユニット31には、パルスモータ31aとギアが内蔵されており、パルスモータ31aの回転軸に取り付けたギアを含むギア列32を有している。ズームギアユニット31のモータの回転が、ギア列32を介してズーム調整部15のズーム回転リング18のギア部18aに伝達されて、
図3に示すズーム回転リング18が回転する。ズーム回転リング18が回転することにより、ズームレンズ群16の移動ピン16aがズーム回転リング18の凹部18bに沿って移動し、ズーム保持枠17の移動ピン案内溝17aによってズームレンズ群16が光軸方向に移動する。
【0046】
パルスモータ31aの回転方向によって、ズームレンズ群16の移動方向が決定される。パルスモータ31aは、1パルスに対する回転軸のステップ角が決まっているため、パルス数により回転軸が回転する角度が決定し、ズームギアユニット31のギア列のギア比及びズーム回転リング18のギア部18aのギア比により、パルスモータ31aのパルス数に対するズームレンズ群16の移動量が決まる。また、パルスモータ31aのパルス数を基準位置からの計数値とすることにより、ズームレンズ群16の位置は、パルスモータ31aの基準位置からのステップ数で決定される。
【0047】
フォーカスギアユニット30及びズームギアユニット31のモータにステップ角の制御が可能なパルスモータを使用したことにより、オープンループの制御が可能であり、位置検出器を必要としないため、レンズ回りを小型化することができる。
【0048】
[アイリスユニットの構成]
図2に示すアイリスユニット23は、対物レンズとしてのフォーカスレンズ群6からの光量を調整するアイリス調整部24を有している。アイリス調整部24は、パルスモータ24aと絞り羽根24bとを有している。アイリス調整部24は、光路を形成する開口部を有した基板上に直線スライド可能に構成された2枚の絞り羽根24bのスライド量をパルスモータ24aにより制御することにより、光量の調整を行うようにしている。
【0049】
また、アイリスユニット23には、光路上に光学フィルタ(NDフィルタ)を挿入する光学フィルタ部25を備えている。光学フィルタは、波長に応じた透過特性を有するもので、ここでは赤外線領域の光を遮断する赤外カットフィルタが使用されている。光学フィルタの光路上への挿入及び光路上からの取り出し動作は、光学フィルタ駆動用のアクチュエータとしての直流モータ25aによって行われる。なお、光路上に光学フィルタ(NDフィルタ)を挿入する光学フィルタ部25は、バリフォーカルレンズ1が使用される環境によっては設けなくてもよい。
【0050】
また、アイリス調整部24及び光学フィルタ部25は、
図3に示す金具8bに取り付けられることで、レンズ本体2のフォーカス調整部5とズーム調整部15との間に介装され、レンズ本体2に固定される。
【0051】
このように、バリフォーカルレンズ1は、フォーカス調整部5、ズーム調整部15及びアイリス調整部24の制御用に各々1個のパルスモータを有し、また、光学フィルタ部25で直流モータ25aを1個有している。
図1及び
図4に示す、制御部40は、フォーカス調整部5のフォーカスレンズ群6の光軸上での位置、ズーム調整部15のズームレンズ群16の光軸上での位置及びアイリス調整部24での絞り羽根24bの位置を管理するために、それぞれのパルスモータの基準位置からのステップ数を常時記憶しておくようにする。また、制御部40は、アイリスユニット23に内蔵されている光学フィルタ部25の光学フィルタの光路上への出し入れ状態を直流モータ25aの駆動状態で管理し、直流モータ25aの直前の回転方向等の駆動状態を常時記憶しておくようにする。
【0052】
[バリフォーカルレンズの制御部の構成]
次に、フォーカス調整部5、ズーム調整部15及びアイリス調整部24の各調整部のパルスモータ及び光学フィルタ部25の直流モータ25aを制御、管理する制御部について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、レンズ本体2の外縁に沿って設けられるフレキシブル回路の外観を示す図、
図5は、フレキシブル回路により構成された制御部を示すブロック図である。
【0053】
図4に示すように、制御部40は、フレキシブル基板42上に、マイクロコンピュータ43、モータドライバ回路44等のICチップ及び抵抗(図示せず)、コンデンサ(図示せず)等の部品が設けられたフレキシブル回路41からなる。なお、フィルム等の可撓性部材からなり、部品を実装するための基板をフレキシブル基板42と称し、フレキシブル基板42に部品を実装し回路を成す基板(回路基板)をフレキシブル回路41と称する。フレキシブル基板42は、高い屈曲性を有するポリミドフィルム等からなるため、ICチップ、部品が設けられているエリア以外は、湾曲させたり、折り曲げてレンズ本体2の表面に設けることができる。例えば、フレキシブル基板42上に示す点線の箇所を折り曲げることにより、フレキシブル基板42の一部の領域を約90度に曲げた状態で制御部40を構成することができる。
【0054】
図5に示すように、制御部40のマイクロコンピュータ43は、CPU、メモリ43a、入出力部を有し、メモリ43aには、外部との通信、モータの駆動制御、モータの管理等を行うためのプログラムが内蔵されている。マイクロコンピュータ43のメモリ43aには書き込み、読み出しが可能な不揮発性メモリが用いられている。これにより、メモリ43aに書き込まれたデータ等は、電源がOFFになっても記憶されている。また、入出力部は、外部との通信を行う通信回路、モータドライバ回路44に出力する出力回路を有している。
【0055】
制御部40と外部の制御装置60(外部からズームレンズを制御するための装置)との通信は、シリアル通信により行われる。
図5に示すように、制御部40の入出力端子47には、外部から供給される電源と、通信回路用の受信信号と送信信号の線が接続されている。なお、制御部40の入出力端子47は、
図4に示すフレキシブル回路41上の長手方向の端部に設けられている。
【0056】
図4に示すフレキシブル回路41上には、各パルスモータに供給する電圧の配線パターンが形成されており、配線パターンの端部に設けられたランド48にパルスモータの入力端子が半田等により接続されている。また、光学フィルタ部25の直流モータ25aの入力端子は、電圧供給の配線パターンのランド49と半田により接続されている。また、フレキシブル回路41上には、フレキシブル回路41をレンズ本体2に固定するためのランド50が設けられている。
【0057】
これにより、
図5に示すように、制御部40のモータドライバ回路44の各スイッチング回路44aから出力される駆動電圧は、パルスモータ31a、30a、24a及び直流モータ25aに入力される。パルスモータ31a、30a、24aでは、A相、B相用に各2コの入力端子を有し、合計4コの入力端子にモータドライバ回路44から電圧が供給される。このように、各モータへの電圧供給は、フレキシブル回路41のパターンから直接行われる。
【0058】
以上述べたように、制御部の回路基板をフレキシブル回路で構成し、レンズ本体に設けて、フレキシブル回路から直接パルスモータ等の入力端子に駆動電圧を印加するようにしたことにより、モータの電圧供給にコネクターを介する必要がないため、コネクターに起因する接触不良等を防止することができる。更に、従来は、3個のパルスモータの配線に12本、直流モータに2本の合計14本のモータの駆動用配線が必要であったが、コネクターによるモータの配線が不要となる。
【0059】
また、外部の制御装置との通信は、シリアル通信方式であるため、外部の制御装置との信号線の本数を減らすことができる。
【0060】
また、フレキシブル回路上には、表面実装用の電子部品以外の高さを有する突起物が設けられていないため、レンズ本体回りの小型化が可能となる。
【0061】
[制御部と外部の制御装置との通信形態]
次に、制御部40及び外部の制御装置との通信形態について
図6及び
図7を用いて説明する。
図6(a)は、制御部及び外部の制御装置との通信におけるバイト単位のデータの構成を示す図、
図6(b)は、通信パケットフォーマットの構成を示す図、
図7(a)は、外部の制御装置から制御部に対して、レンズ位置としてのパルスモータの基準位置からのステップ数のデータを要求する通信形態を示す図、
図7(b)は、制御部からの応答の通信形態を示す図である。
【0062】
制御部40及び外部の制御装置60は、前もって同一の通信速度が設定されており、バイト単位のデータでシリアル通信が行われる。
図6(a)に示すように、バイト単位のデータは、スタートビット(
図6(a)にSTARTと図示)、データビット0(
図6(a)にB0と図示)からデータビット7(
図6(a)にB7と図示)までの8ビットのコマンド又はデータ及びストップビット(
図6(a)にSTOPと図示)から構成される。また、制御コード、コマンド、データ等はASCIIコードが使用される。通信パケットフォーマットは、
図6(b)に示すように、テキスト部分の開始を表すSTX(Start of Text)、コマンド、モータ番号、データ部、テキスト部分の終了を表すETX(End of Text)及びSTXからETXまでのデータを加算した値を表すBCC(Block Checking Code)から構成される。
【0063】
STXは、1バイトからなりASCIIコードの02hが割り当てられている。なお、02hのhは、02が16進数であることを示す記号である。コマンドは、1バイトからなり各コマンド毎にASCIIコードが割り当てられている。モータ番号は、1バイトからなり各モータ毎にASCIIコードが割り当てられている。例えば、ズーム調整部15のズームレンズ群16を移動させるパルスモータ31aは、番号1を示す31hが割り当てられており、フォーカ調整部のフォーカスレンズ群6を移動させるパルスモータ30aは、番号2を示す32hが割り当てられている。
【0064】
また、アイリス調整部24の絞り羽根24bを制御するパルスモータ24aは、番号3を示す33hが割り当てられ、光学フィルタ部25を駆動する直流モータ25aは、番号4を示す34hが割り当てられている。データ部は、可変長であり、ASCIIコードからなるデータが割り当てられる。ETXは、1バイトからなりASCIIコードの03hが割り当てられている。BCCは、1バイトからなり、STXからETXまでのデータを加算した値である。
【0065】
また、制御部40は、外部の制御装置60からコマンドを受信後、正常に通信が行われた場合には、ACK(ACKnowledge)又は応答データ等を返信する。また、受信で通信エラーが発生したときには、NACK(Negative ACKnowledge)を出力して、送信元にコマンド等を再送信するよう要求する。また、送信元は、コマンド等を出力後、例えば、所定の時間に応答が確認できないときには、無応答として、再度コマンド等を出力するようになっている。
【0066】
通信形態の一例として、
図7を用いて制御部40が記憶しているパルスモータ31aの基準位置からのステップ数のデータに関する外部の制御装置60への送信について説明する。なお、パルスモータ31aの基準位置からのステップ数のデータは、ズームレンズ群16の位置を示すデータとして取り扱うようにする。
【0067】
図7(a)に示すように、外部の制御装置60は、コマンド(53h)を、モータ番号である(31h)と共に制御部40に出力する。制御部40のマイクロコンピュータ43は、外部の制御装置60からのコマンドに対して、メモリ43aからズームレンズ群16用のパルスモータ31aの基準位置からのステップ数のデータを読み出して、コマンド(52h)、モータ番号(31h)及び読み出したデータをASCIIに変換した3バイトのデータを
図7(b)に示す通信フォーマットで外部の制御装置60に返答する。これにより、外部の制御装置60は、バリフォーカルレンズ1のパルスモータ31aの基準位置からのステップ数によりズームレンズ群16の位置を確認することができる。
【0068】
このように、制御部40をバリフォーカルレンズ1に設けたことにより、レンズを駆動するモータの管理等が一元化され、また、制御部40にそのレンズに関する情報を格納しておき、外部の制御装置60からその情報を読み出すことにより、外部からの制御を容易に行うことができる。
【0069】
また、制御部40は、バリフォーカルレンズ1の識別番号を記憶しておき、各モータの動作履歴の記憶することにより、外部の制御装置60は、制御部40からバリフォーカルレンズ1の各モータの動作履歴を読み出して、メンテナンス等の情報として活用することができる。
【0070】
また、バリフォーカルレンズ1を識別番号により管理することにより、例えば、通信パケットフォーマットにバリフォーカルレンズ1の識別番号を付加することにより、バリフォーカルレンズ毎に識別番号で管理することができる。これにより、他のバリフォーカルレンズ1と通信ラインを共用することが可能となるため、通信ラインを簡素化することができ、また、複数のバリフォーカルレンズを外部の制御装置60で一括制御することができる。
【0071】
[ズーム(変倍)操作によるフォーカスの自動調整]
次に、バリフォーカルレンズのズーム(変倍)操作によるフォーカスの自動調整について述べる。バリフォーカルレンズ1は、ズームの大きさ及びフォーカス位置の調整を個別に調整する必要がある。すなわち、バリフォーカルレンズ1は、まずズームレンズ群16を光軸方向に移動することによりズームの大きさを調整して、フォーカスレンズ群6を移動することによりズームレンズ群16の移動によるフォーカス位置のずれ(いわゆるピンボケ)を修正する。このように、バリフォーカルレンズ1は、ズームの大きさを調整後に、フォーカス位置のずれを修正する必要がある。
【0072】
以下に、本発明のCCTVレンズにおけるズーム(変倍)操作によるフォーカスの自動調整について述べる。
図8は、バリフォーカルレンズのズームレンズ群及びフォーカスレンズ群とCCTVカメラの撮像面との距離を示す図である。
図8では、撮像面36側の前面に厚さ3mmのカバーガラス35を配した構成であり、ズームレンズ群16とCCTVカメラの撮像面36との距離をAとし、フォーカスレンズ群6とCCTVカメラの撮像面36との距離をBとした図を示す。なお、
図8では、各レンズ群のCCTVカメラ側の端までの距離としたものである。
【0073】
本発明に係るCCTVレンズの一例としてのバリフォーカルレンズ1のズームレンズ群16の位置は、ズームレンズ群16用のパルスモータ31aの基準位置からのステップ数を基に決定される。例えば、広角、標準、望遠におけるズームレンズ群16の各位置(
図8に図示する距離Aに相当)は、パルスモータ31aの基準位置からのステップ数により管理される。例えば、広角でのズームレンズ群16とCCTVカメラの撮像面36との距離Aは、最小となり、望遠でのズームレンズ群16とCCTVカメラの撮像面36との距離Aは、最大となる。
【0074】
また、ズームレンズ群16の各位置での焦点(ピント)調整用のフォーカスレンズ群6の位置(
図8に図示する距離Bに相当)は、フォーカス調整用のパルスモータ30aの基準位置からのステップ数により決定される。
【0075】
広角、標準、望遠におけるズームレンズ群16のパルスモータ31aの基準位置からのステップ数、これに対応するフォーカスを調整するフォーカスレンズ群6のパルスモータ30aの基準位置からのステップ数は、バリフォーカルレンズ1の制御部40のメモリ43aに記憶している。このように、ズームレンズ群16の各位置におけるフォーカスレンズ群6の位置が前もって記憶されている。
【0076】
以下に、外部からのバリフォーカルレンズのズーム動作について、
図9を用いて説明する。
図9は、ズーム動作である広角から望遠間の視野の切り替えにおける制御部による「ズーム」、「フォーカス」の順で制御するモータ制御のフローチャートを示す図である。
【0077】
図9に示すように、制御部40は、最初に外部の制御装置60からコマンドを受信したかをチェックし、コマンドの入力がないときには、コマンド受信可能状態で待機する(ステップS1)。制御部40は、コマンドを受信したとき(ステップS1でYes)には、エラーがなく正常に受信したかをチェックする(ステップS2)。
【0078】
ステップS2で通信エラーが発生したとき(ステップS2でNo)には、外部の制御装置60に「NACK」を出力してエラー処理後にステップS1に移行する。
【0079】
ステップS2でコマンドを正常に受信したと判断した時(ステップS2でYes)には、コマンドの分析を行う(ステップS4)。外部の制御装置60からのコマンドが、ズームモードの指定、即ち、広角、標準又は望遠のいずれかの指定であるかをチェックする(ステップS5)。なお、ズームモードの指定とは、前もって制御部40に広角、標準及び望遠でのズームレンズ群16、フォーカスレンズ群6の位置データが記憶されており、記憶された位置データを基に、各パルスモータを制御するものである。
【0080】
一方、コマンドがズームモードの指定の場合(ステップS5でYes)には、マイクロコンピュータ43のメモリ43aに前もって記憶されているズームモードに対応したズームレンズ群16の位置データを読み出して、指定位置データ(以下指定位置データをMSと図示)として設定する。なお、ズームレンズ群16の指定位置データMSは、パルスモータ31aの基準位置からのステップ数で規定されたものである(ステップS6)。
【0081】
一方、ステップS5でズームモードの指定でない(ステップS5でNo)場合には、外部の制御装置60からズームレンズ群16の指定位置のデータであるパルスモータ31aの基準位置からのステップ数が送信され、受信したデータをズームレンズ群16の指定位置データMSとして設定する(ステップS7)。
【0082】
次に、ズームレンズ群16の現在位置を示す現在位置データ(以下現在位置データをMaと図示)としてパルスモータ31aの基準位置からのステップ数をメモリ43aから読み出す(ステップS8)。現在位置データMaをメモリ43aから読み出した後に、ズームレンズ群16の移動量の算出を行う。移動量の算出は、指定位置データMSから現在位置データMaを減算して行う。減算により、パルスモータ31aの回転方向(ズームレンズの移動方向)とパルスモータ31aのパルス数(ズームレンズ群16の移動量)が決定する(ステップS9)。算出したズームレンズ群16の移動量に基づきパルスモータ31aを駆動する(ステップS10)。また、移動先のデータである指定位置データMSを現在位置データMaとしてメモリ43aに記憶する。これにより、ズームレンズ群16は、指定した位置に移動する。
【0083】
次に、ズームを調整後にフォーカスの制御を行う。フォーカスの制御は、メモリ43aから前もって設定されているズームレンズ群16が移動した位置MSに対応したフォーカスレンズ群6の指定位置データとしてのパルスモータ30aの基準位置からのステップ数を読み出す(ステップS11)。即ち、ズームレンズ群6の移動によりフォーカスを調整するための、フォーカスレンズ群6が移動すべき位置データを設定するものである。
【0084】
フォーカスレンズ群6の現在位置データであるパルスモータ30aの基準位置からのステップ数をメモリ43aから読み出して、フォーカスレンズ群6の移動量の算出を行う。移動量の算出は、指定位置データから現在位置データを減算して行う。減算により、パルスモータ30aの回転方向(フォーカスレンズの移動方向)とパルスモータ30aのパルス数(フォーカスレンズの移動量)が決定する(ステップS12)。算出したフォーカスレンズの移動量に基づきパルスモータを駆動する(ステップS13)。その後、フォーカスレンズの移動先のデータである指定位置データを現在位置データとしてメモリ43aに記憶する(ステップS14)。
【0085】
これにより、バリフォーカルレンズ1は、ズームレンズと同様にズーム(変倍)操作を行っても自動的にフォーカス(結像)調整が行われるため、取り扱いが容易となる。
【0086】
また、バリフォーカルレンズ1の制御部40は、電源入力時にズームレンズ群及びフォーカスレンズ群を予め設定されている位置、例えば、広角、標準又は望遠のいずれかに相当する位置に、パルスモータを制御することも可能である。
【0087】
[レンズ周辺光量補正の処理]
次に、レンズ周辺光量補正、レンズの歪曲収差補正及びレンズの解像度アップ補正に関する処理について説明する。最初に、レンズ周辺光量補正について
図10、
図11を用いて説明する。
図10は、像高に対するレンズの周辺での明るさの変化を示す図、
図11は、周辺光量補正に関する処理を示すフローチャートである。
【0088】
レンズの周辺での明るさ(周辺光量)は、入射光の光軸に対する傾きが増加するにつれて減少する。レンズ周辺光量補正は、像の明るさが画面の周辺にいくほど低下するため、レンズの周辺での明るさの減少を補正するための処理である。
図10に示すように、像高が大きくなるにつれてレンズの周辺での明るさが減少する。レンズ周辺光量補正においては、前もって、像高に対するレンズの光量の値を求めておく。この光量の値は、ズームレンズの焦点距離毎、即ち、広角(
図10にWIDEと図示)焦点距離が3.44mm、標準(
図10にMIDDLEと図示)焦点距離が5.33mm及び望遠(
図10にTELEと図示)焦点距離が11.56mmのそれぞれについて求めておく。また、
図10に示すように、広角と標準の中間(
図10にW−Mと図示)、標準と望遠との中間(
図10にM−Tと図示)に関する光量の値を準備してもよい。
【0089】
なお、像高0即ちレンズの中心での光量を1とし、光量の値は、レンズの中心以外では、1未満の値となる。例えば、像高のある値に対して光量の値が0.8とは、レンズの中心と比較して80%の明るさであり、補正として光量の値を1.25倍することにより、レンズの中心と同等の明るさとなる。
【0090】
周辺光量補正は、像高とカメラの撮像エリアの大きさ及びカメラからの信号とにより、カメラから出力されて外部のメモリ等に記憶された画像データの明るさの補正を行う。補正処理は、撮像面の中心位置から像高に対応した撮像面での2次元のXY座標毎に画像データの明るさの補正を行うようにする。これにより、モニター等に表示される画像が補正される。
【0091】
図10に示す像高に対する光量の値の変化をズームモード毎に、多項式からなる式1で表し、式1の周辺光量係数A、B、Cを前もって算出しておき、制御部40のメモリ43aに記憶しておく。
【0092】
y=A×x
2+B×x+C ・・(式1)
但し、y:光量の値、x:像高 A、B、C:周辺光量係数
例えば、広角(WIDE)では、式1のA=−0.0248、B=−0.1334、C=0.9979をメモリ43aに記憶しておく。
【0093】
周辺光量補正は、処理プログラムを内蔵したコンピュータ(PC)にカメラからの画像を転送して、PC上で行うようにする。以下に、周辺光量補正について、
図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0094】
最初に、ズームレンズ群16用のパルスモータ31aの基準位置からのステップ数のデータを読み出して、ズームレンズ群16の位置を確認する(ステップS20)。即ち、ワイド(WIDE)、標準(MIDDLE)又は望遠(TELE)状態のいずれであるかを確認し(ステップS21)、ワイド、標準又は望遠のいずれも該当しない(ステップS21でNo)ときには、周辺光量補正の処理を行わない。ワイド、標準又は望遠のいずれかの場合(ステップS21でYes)には、ズームレンズ群16の位置に応じた周辺光量係数A、B、Cのデータを制御部40から読み出す(ステップS22)。
【0095】
また、バリフォーカルレンズ1に結合されたカメラからの画像を取得し、画像データとして外部のメモリ等に一時格納する(ステップS23)。画像データをPCに転送して、周辺光量係数に基づき周辺光量補正プログラムを実行する(ステップS24)。補正処理した画像データをモニターに出力し、また、画像データとしてメモリに記憶する(ステップS25)。これにより、レンズの周辺光量補正が行われて、画像全体が均一な明るさに補正される。
【0096】
[レンズの歪曲収差補正の処理]
レンズの歪曲収差補正は、レンズによる像の歪みを補正するための処理である。次に、レンズの歪曲収差補正について、
図12、
図13を用いて説明する。
図12は、バリフォーカルレンズ1の広角、標準又は望遠における理想像高に対する歪曲収差D(%)の一例を示す図、
図13は、歪曲収差補正に関する処理を示すフローチャートである。
【0097】
レンズの歪曲収差補正においては、前もって、
図12に示すように、レンズの焦点距離毎、即ち、ズームモードである広角、標準及び望遠のそれぞれの像高に対するレンズの歪曲収差を求めておく。また、
図12に示すように、広角(WIDE)と標準(MIDDLE)の中間(
図12にWIDEからMIDDLEにかけてM1、M2、M3、M4と図示)に関する歪曲収差を準備してもよい。
【0098】
レンズは、光軸に垂直な平面内の被写体と光軸に垂直な像面上でその像の相似性が成り立たない歪みである歪曲収差を有している。レンズは、ズームレンズの位置、即ち、広角、標準又は望遠によって、生じる歪曲収差の大きさが異なる。レンズの歪曲収差Dは、式2に示すようにズームモードの各焦点距離における像の大きさの変化(像高の変化)の理想像高に対する百分比で表される。
歪曲収差D(%)=(y−y’)/y’×100(%) ・・(式2)
但し、yは実際の主光線像高、y’は理想像高である。
【0099】
図12に示すように、例えば、理想像高2.1mmにおける広角での歪曲収差Dは、−20.7%、標準での歪曲収差Dは、−3.1%、望遠での歪曲収差Dは、−1.1%である。
図12に示す歪曲収差は負の値であり、正方形の被写体では、タル型の歪みとなる。特に、広角での歪曲収差Dが大きく、画像として歪んでしまうため、補正が必要となる。
【0100】
なお、像高0、即ちレンズの中心での歪曲収差を100%とし、歪曲収差の値は、レンズの中心以外では、100%未満の値となる。例えば、理想像高のある値に対して歪曲収差が−20%とは、実際の像高が、理想像高に対して20%歪んでおり、即ち、理想像高よりも小さい値であるため、該当する位置に対して補正値として1.25倍することにより、位置の歪みが補正される。
【0101】
図12に示す像高に対する歪曲収差Dの値の変化をズームモード毎に、多項式からなる式3で表し、式3の係数E、F、G、H、Iを前もって算出しておき、制御部40のメモリ43aに記憶しておく。
【0102】
y=E×x
4+F×x
3+G×x
2+H×x+I ・・(式3)
但し、y:歪曲収差の値(式2のD)、x:像高、E、F、G、H、I:係数
例えば、標準(MIDDLE)では、E=−0.0119、F=−0.0686、G=−0.8461、H=0.023、I=−0.0012をメモリ43aに記憶しておく。
【0103】
レンズの歪曲収差の補正処理は、カメラから出力されて外部のメモリ等に記憶された画像データを撮像面の中心位置から像高に対応した撮像面での2次元のXY座標毎に水平、垂直位置の補正を行う。これにより、モニター等に表示される画像が補正される。レンズの歪曲収差の補正は、処理プログラムを内蔵したコンピュータ(PC)にカメラからの画像を転送して、PC上で行うようにする。
【0104】
以下に、歪曲収差補正について、
図13を用いて説明する。
図13は、歪曲収差補正に関する処理を示すフローチャートである。最初に、ズームレンズ群16用パルスモータ31aの基準位置からのステップ数のデータを読み出して、ズームレンズ群16の位置を確認する(ステップS30)。即ち、ワイド(WIDE)、標準(MIDDLE)又は望遠(TELE)状態のいずれであるかを確認し(ステップS31)、ワイド、標準又は望遠のいずれも該当しない(ステップS31でNo)ときには、歪曲収差補正の処理を行わない。ワイド、標準又は望遠のいずれかの場合(ステップS31でYes)には、ズームレンズ群16の位置に応じた係数E、F、G、H、Iのデータを制御部40から読み出す(ステップS32)。
【0105】
また、バリフォーカルレンズ1に結合されたカメラからの画像を取得し、画像データとして外部のメモリ等に一時格納する(ステップS33)。画像データをPCに転送して、係数E、F、G、H、Iのデータに基づき歪曲収差補正プログラムを実行する(ステップS34)。補正処理した画像データをモニターに出力し、また、メモリに記憶する(ステップS35)。これにより、レンズの歪曲収差補正が行われて、画像全体が歪みのない画像に補正される。
【0106】
[解像度アップ補正の処理]
次に、解像度アップ補正について、
図14乃至
図16を用いて説明する。
図14は、バリフォーカルレンズ1の広角におけるFnoとMTF解像度との関係の一例を示す図、
図15は、バリフォーカルレンズ1のアイリス調整部のパルスモータの基準位置からのステップ数に対するFnoの変化を示す図、
図16は、解像度アップ補正に関する処理を示すフローチャートである。
【0107】
バリフォーカルレンズ1は、広角、標準又は望遠、即ち、焦点距離によって、Fナンバー(Fnoと図示)に対するレンズのMTF(Modulation Transfer Function コントラスト伝達関数)解像度が異なる。なお、Fナンバー(Fno)とは、焦点距離とレンズに入射する有効光束の径との比で表され、レンズの明るさを示すものである。レンズのMTF解像度の最適化は、広角、標準又は望遠でのズームレンズの焦点距離で最もMTF解像度が最大解像度となるように、アイリス調整部24の絞りの位置を調整するものである。アイリス調整部24は、パルスモータ24aによって絞りが制御され、パルスモータ24aの基準位置からのステップ数に対するFnoが規定されている。
【0108】
これにより、ズームレンズの各位置における最大のMTF解像度を示すFnoが決定し、Fnoを設定するアイリス調整部24の絞り位置を調整するパルスモータ24aの基準位置からのステップ数が決定する。
【0109】
図14は、バリフォーカルレンズ1の広角におけるFnoとMTF解像度との関係の一例を示す図である。
図14に示すように、バリフォーカルレンズ1の広角におけるMTF最大解像度(
図14に丸印で示す位置)は、Fnoが4のときである。同様に、標準、望遠でのMTF最大解像度におけるFnoが決まっており、制御部40に広角、標準、望遠のズームモード毎にFnoが記憶されている。
【0110】
図15は、バリフォーカルレンズ1のパルスモータ24aの基準位置からのステップ数に対するFnoの変化を示す図である。アイリス調整部24のパルスモータ24aを、前もって設定されている広角(
図15にWIDEと図示)におけるFnoとパルスモータ24aの基準位置からのステップ数を基に、Fnoが4(
図15に丸印で示す位置)となるようにパルスモータ24aを駆動する。このときのパルスモータ24aの基準位置からのステップ数は51である。なお、制御部40は、ズームモード毎にFnoに対するアイリス調整部のパルスモータの基準位置からのステップ数を記憶している。
【0111】
以下に、解像度アップ補正について、
図16を用いて説明する。
図16は、解像度アップ補正に関する処理を示すフローチャートである。
【0112】
最初に、ズームレンズ用パルスモータ24aの基準位置からのステップ数のデータを読み出して、ズームレンズ群16の位置を確認する(ステップS40)。即ち、ワイド(WIDE)、標準(MIDDLE)又は望遠(TELE)状態のいずれであるかを確認し(ステップS41)、ワイド、標準又は望遠のいずれも該当しない(ステップS41でNo)ときには、解像度アップの処理を行わない。ワイド、標準又は望遠のいずれかの場合(ステップS41でYes)には、ズームレンズ群16の位置に応じた最大解像度のFnoの選定を行う(ステップS42)。
【0113】
次に、選定したFnoに対応するズームレンズの位置に応じたパルスモータ24aの基準位置からのステップ数である絞り羽根24bの位置データを読み出す(ステップS43)。また、絞り羽根24bの現在位置を示すパルスモータ24aの現在値のデータを読み出し(ステップS44)、アイリス調整部のパルスモータ24aを駆動して絞り羽根24bが所定の絞り位置になるように設定する(ステップS45)。これにより、ズームレンズの位置に応じて、MTF解像度が最高となり解像度アップが図られて、より鮮明な画像を得ることができる。
【0114】
このように、本発明のCCTVレンズは、レンズ周辺光量補正、レンズの歪曲収差補正及びレンズの解像度アップ補正を行うことにより、歪みが少なく、鮮明な画像を得ることができる。
【0115】
[その他の実施例]
また、本発明は、高い屈曲性を有するフレキシブル回路41について説明したが、制御部40は、フレキシブル基板42に代えて、屈折率が低い硬質の材質からなる基板(図示せず)を、レンズ本体2の周囲に密着するような形状で成型し、前記基板上に、マイクロコンピュータ43、モータドライバ回路44等のICチップ及び抵抗(図示せず)、コンデンサ(図示せず)等の部品が設け、レンズ本体2の周囲に装着するようにしても良い。
【0116】
以上述べたように、本発明のCCTVレンズは、従来と比べて小型化が可能であり、外部から容易に制御できるため、ネットワークカメラとしても使用することができる。
【0117】
また、本発明のCCTVレンズは、車載カメラ用のレンズとして使用することができる。例えば、車のフロントにカメラを搭載して、車速に応じて画角を切り替えることにより、状況に応じた的確な画像を得ることができる。また、車のリアに設けて、前もって設定した複数の視野から適切な視野を高速で選択することにより、運転者のサポートを行うことができる。
【0118】
以上述べたように、本発明によれば、通信機能を有するマイクロコンピュータ及びモータ駆動回路を搭載したフレキシブル回路からなる制御部が、CCTVレンズに設けられているため、フレキシブル回路に電源及び外部から通信を介してコマンドを入力することにより、CCTVレンズを容易に制御することができる。
【0119】
また、フレキシブル回路からレンズ駆動用の各モータへ直接配線することが可能であり、これにより、配線数を抑制することができ、モータ配線を簡素化することができる。
【0120】
また、外部の制御装置との通信は、シリアル通信方式であるため、外部の制御装置との信号線の本数を減らすことができる。
【0121】
また、マイクロコンピュータによりレンズの位置を管理することができるため、焦点距離を可変して変倍するワイド、標準、望遠等の画角設定が容易に行うことができため、マイクロコンピュータにより最適な画像を得ることができる。
【0122】
また、従来は、モータの位置検出をポテンショメータの抵抗値から行っており、これらはアナログ値であるため、デジタル値に変換して位置検出を算出していた。本発明は、モータにパルスモータを使用したことにより、オープンループの制御が可能であり、位置検出器を必要としないため、レンズ本体回りを小型化することができる。
【0123】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。