特許第5893758号(P5893758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893758
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】カメラを測定するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
   G01M11/02 A
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-550671(P2014-550671)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-504162(P2015-504162A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】EP2012075893
(87)【国際公開番号】WO2013102555
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2014年7月2日
(31)【優先権主張番号】102012200152.2
(32)【優先日】2012年1月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・アペル
(72)【発明者】
【氏名】カリーナ・ライツナー
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−132858(JP,A)
【文献】 特開2003−270093(JP,A)
【文献】 特開平05−157660(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02460654(GB,A)
【文献】 特開2006−146207(JP,A)
【文献】 特表2013−510496(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02426813(GB,A)
【文献】 特開2005−274925(JP,A)
【文献】 特表2007−528161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 − G01M 11/02
G02B 7/02
G02B 7/28
H04N 5/222 − H04N 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像センサ(21)を備えたカメラ(8)を測定するための装置(1)において、
該装置(1)が、少なくとも1つの検査しようとするカメラ(8)を少なくとも1つのカメラ位置(7)で保持するためのカメラホルダ(6)と、
様々な被写体幅を有するテストパターン(12)のコリメータ光(14)を出射するためのコリメータ装置(2)と、
前記コリメータ光(14)を前記カメラ位置(7)に向かって偏向させるためのミラー装置(4,5)と、
を有しており、
前記ミラー装置(4,5)が、ミラー調整装置(3)によって複数の旋回位置に旋回可能な少なくとも1つの第1のミラー装置(4)と、複数の第2のミラーユニット(18−i)を備えた第2のミラー装置(5)とを有しており、
前記テストパターン(12)を前記画像センサ(21)の様々な画像領域において結像させるために、前記第2のミラーユニット(18−i)が、前記第1のミラー装置(4)の様々な旋回位置において該第1のミラー装置(4)から出射された光(16−i)を前記カメラ位置(7)に反射する、
カメラを測定するための装置。
【請求項2】
前記カメラ(8)は固定焦点カメラ(8)であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のミラー装置(4)の各旋回位置のために、1つの第2のミラーユニット(18−i)が設けられており、該第2のミラーユニット(18−i)が、前記第1のミラー装置(4)から前記旋回位置において出射された光(16i)を、前記カメラ位置(7)に偏向させることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記カメラ位置(7)は、保持しようとする前記カメラ(8)の入射瞳(8a)の位置であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2のミラー装置(5)の複数の第2のミラーユニット(18−i)が互いに相対的に、かつ前記カメラホルダ(6)に対して固定された位置および固定された整列で配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のミラー装置(4)または該第1のミラー装置(4)の単数または複数の部分ミラーが、非平行な2つの旋回軸線(C,D)を中心にして、それぞれ複数の傾斜角度位置(α,β)に調節可能であることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記2つの旋回軸線(C,D)は、直交し合う旋回軸線(C,D)であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コリメータ装置(2)から前記カメラ位置(7)までの光路(14,16−i,18−i)の全長が、前記第1のミラー装置(4)のすべての旋回位置において同じであるか、または公差範囲内にあることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記コリメータ装置(2)が、前記テストパターン(12)の平行な光を射出するための様々な焦点合わせまたは被写体幅を調節するために、調整装置(15)によって焦点合わせ可能であることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記コリメータ装置(2)が、前記調整装置(15)によって調整可能な前記テストパターン(12)と、光学装置(9)と、前記テストパターン(12)を透過または反射により照明するための照明装置(10)とを有していることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、制御および評価装置(30)を有しており、該制御および評価装置(30)が、前記カメラ(8)によって発生された画像信号(S1)を受信し、前記第1のミラー装置(4)の様々な旋回位置(α,β)、および前記コリメータ装置(2)の様々な焦点合わせまたは被写体幅を調節するための制御信号(S2,S3)をアウトプットし、
前記制御および評価装置(30)が、前記旋回位置および前記焦点合わせまたは前記被写体幅で発生された画像信号(S1)からそれぞれ変調伝達関数の演算によって、コントラストを算出することを特徴とする、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のミラー装置(5)が単数または複数のミラーセット(18,20,28)を有しており、各ミラーセットがそれぞれ複数の第2のミラーユニット(18−i,20i,28i)を有していて、これらのミラーユニットがそれぞれ、半球状または回転楕円体状の配置形式で互いに配置されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記第2のミラーユニットはフラットに構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2のミラー装置(5)が少なくとも2つのミラーセット(18,20)を有していて、各ミラーセット(18,20)が、様々な開放角度(γ)を有するカメラ(8)を測定するためにそれぞれ複数の第2のミラーユニット(18−i,20−i)を有しており、
より大きい開放角度(γ)を有するカメラ(8)のためのミラーセット(18)の2つの前記第2のミラーユニット(18i)が、より小さい開放角度(γ)を有するカメラ(8)のためのミラーセット(20)の前記第2のミラーユニット(20i)よりも、互いに大きく離れて配置されている、
ことを特徴とする、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
互いにずらして配置された2つの光軸(E1,E2)を有するステレオカメラシステムを測定するために構成されており、
前記第2のミラー装置(5)が2つのミラーセット(18,28)を有していて、各ミラーセット(18,28)の前記第2のミラーユニット(18i,28i)がそれぞれ、2つの前記光軸(E1,E2)のうちの一方に対して半球状または回転放物面体状の配置形式で配置されている、
ことを特徴とする、請求項12または13に記載の装置。
【請求項16】
測定装置において、請求項1から15のいずれか1項に記載の装置(1)、および画像信号(S1)をアウトプットする画像センサ(21)を備えた、カメラホルダ(6)内に保持されたカメラ(8)を有することを特徴とする、測定装置。
【請求項17】
求項1から15のいずれか1項に記載の装置(1)を使用してカメラ(8)を測定するための方法において、少なくとも、
画像センサ(21)を有するカメラ(8)をカメラホルダ(6)内に保持するステップを有し、
様々な被写体幅を有するテストパターン(12)のコリメータ光(14)を出射するためのコリメータ装置(2)の様々な被写体幅または焦点合わせを調節するステップを有し、
コリメータ装置(2)とカメラ(8)との間の光線の光路内に配置された、調整可能な第1のミラー装置(4)の様々な旋回位置(α,β)を調節することで、前記第1のミラー装置(4)から該第1のミラー装置の前記旋回位置(α,β)に反射される光(16−i)を、連続的に第2のミラー装置(5)の様々な第2のミラーユニット(18−i,20−i,28−i)に偏向させ、これらの第2のミラーユニット(18−i,20−i,28−i)によって、光をそれぞれ測定しようとするカメラ(8)に偏向させるステップを有しており、この際に、コリメータ装置(2)からカメラ(8)までの光路(14,16−i,18−i)の全長が、第1のミラー装置(4)のすべての旋回位置において同じであり、前記テストパターンが前記画像センサ(21)の様々な画像領域において様々な旋回位置で結像される、
カメラを測定するための方法。
【請求項18】
前記様々な被写体幅または焦点合わせおよび前記様々な旋回位置(α,β)を、それぞれ連続的な内ループおよび外ループで連続的に調節し、前記外ループの各調節時にそれぞれ前記内ループの様々な調節を連続的に行うことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
次いで、前記カメラ(8)から前記第1のミラー装置(4)の様々な前記旋回位置(α,β)および様々な被写体幅においてアウトプットされた画像信号(S1)のコントラストを、変調伝達関数を形成しながら評価することを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両の運転者アシストシステムに使用されるカメラは、一般的に固定焦点構造、つまり焦点合わせが固定された構造を有して製造されている。カメラは、対物レンズの焦点面が画像センサの表面に正しく調整されているかどうかについて検査されなければならない。このために一般的に、モータ制御により同調可能なコリメータから投影される、様々な仮想の対象物間隔より成るテストパターンが視野内の様々な位置において撮像される。被検体が焦点合わせされる対象物間隔を算出するために、間隔範囲を、それぞれ複数のステップで無限大〜2mの間で変えることができる。各位置および各対象物間隔のために、好適な形式で、テストパターンの撮像された画像において規定可能なパルス応答から、コントラストの大きさとしてのMTF(modulation transfer function:変調伝達関数)が算出される。対象物間隔の同調は、スルーフォーカススキャン(Through−Focus−Scan)とも称呼される。
【背景技術】
【0002】
カメラは、一般的に、被写界深度が運転者アシスト機能にとって重要な間隔範囲を確実にカバーするように焦点合わせされ、一般的に、大きい間隔の対象物も、また短い間隔の対象物も十分良好なコントラストを有して結像されなければならない。このような特性は、視野の様々な位置において、つまり、例えばイメージャのコーナー若しくはイメージャにより提供された画像のコーナー等の、より大きく離れている画像領域においても得られなければならない。
【0003】
カメラの検査は、一般的に、テストパターンを様々な視野位置において撮像できるようにするために、カメラとコリメータとが互いに相対的に回動させられることによって行われる。従って、カメラを保持するホルダまたはコリメータが回転可能または旋回可能となっている。それに応じて、様々な旋回位置において同調可能なコリメータを用いて何度も測定する必要がある。
【0004】
検査しようとするカメラまたはコリメータが回転または傾倒させられる場合、その都度、整列調整装置の回転中心点に対する正確なセンタリングが必要である。このような測定においては、一般的にテストパターンが外ループとしての別の視野位置にずらされ、スルーフォーカススキャンが測定経過の内ループとして実施される。何故ならばテストパターンの整列調整のためには時間がかかるからである。
【0005】
従って、このような形式の測定は一般的に高価であり、様々な旋回位置におけるカメラおよび/またはコリメータの正確な調整が必要である。
【0006】
特許文献1には、カメラを製造するための装置について記載されており、この装置において、第1の較正フィールドが保持装置に保持され、より大きい仮想の対象物間隔のための第2の較正フィールドが保持装置から分離して設けられており、この場合、第2の較正フィールドは、保持装置内に保持された複数のミラーユニットを介してカメラによって検出され得る。カメラの画像センサの位置は、六脚装置によって正確に位置決めされ得る。従って、複数の較正フィールド、およびミラーユニットより成る偏向装置によって、仮想の対象物間隔のより広い領域が実現され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第102004010958号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明による、カメラを測定するための装置は、従来技術のものに対して多くの利点を有している。本発明によれば、カメラのイメージャの様々な画像領域若しくは領域を連続的に検査するために、旋回可能な第1のミラー装置を備えたミラーデバイスが設けられている。様々な旋回位置を調節することによって、コリメータ装置からアウトプットされたテストパターンが、イメージャチップの様々な画像領域若しくは領域に向けて偏向され、このためにカメラを調節する必要はない。調節可能な第1のミラー装置は、光を出射する装置からアウトプットされた光を、様々な傾斜角度で第2のミラー装置の第2のミラーユニットに向けて偏向させ、これらの第2のミラーユニットは、この光をカメラ若しくはカメラの入射瞳に向けて偏向させる。この場合、カメラ位置は、カメラホルダによって正確に規定されている。
【0009】
カメラ位置とは、光路を観察する際の、特に保持しようとするカメラの対物レンズの入射瞳の位置のことである。
【0010】
従って、カメラは、調節する必要のない固定的なカメラ保持部内で保持することができる。カメラ保持部は、特にコリメータ保持部と第2のミラー装置との間に固定的に若しくは堅固に配置され得る。
【0011】
従って、イメージャ若しくはカメラを測定するためには、第1のミラー装置の様々な傾斜角度を調節するだけでよく、カメラおよび/またはコリメータを全体的に傾倒または旋回させる必要はない。第1のミラー装置は、特に2つのずらされた軸線、例えば互いに直交し合う2つの旋回軸線を中心にして旋回せしめられ、これによってテストパターンが連続的にイメージャチップの2次元平面に結像される。第2のミラーユニットは好適にはフラットに構成されており、旋回可能または傾倒可能な第1のミラー装置も、好適な形式でフラットに構成されているので、焦点合わせはコリメータ装置だけによって行われる。
【0012】
特に好適な実施態様によれば、第2のミラー装置の複数の第2のミラーユニットは、コリメータ装置からカメラ位置若しくはカメラの入射瞳までの光路の全長が、様々な旋回位置において完全にまたは少なくとも実質的に同じであるように、配置されており、この場合、例えば公差値内の差異は許容される。従って、全長は特に、コリメータ装置から旋回可能な第1のミラー装置までの光路と、この第1のミラー装置から第2のミラー装置までの光路と、この第2のミラー装置からカメラまでの光路とから構成されている。このような構成は、特に第2のミラーユニットの半球状および/または回転楕円形体状の配置によって得られる。このために第2のミラーユニットは、第2のミラーホルダ内に保持され、例えば鋳込まれているかまたは堅固に固定されていてよい。
【0013】
好適な形式で、各旋回位置のために、つまり特に2つの傾斜角度の様々な値の対のために、それぞれ1つの第2のミラーユニットが設けられているので、光路長の正確な適合が行われ得る。
【0014】
本発明の特別な利点は、旋回させなければならない質量が小さく維持され得る、という点にある。何故ならば、第1のミラー装置だけを位置調節するだけで済むからである。この第1のミラー装置は、例えば、ミラー調整装置によって様々な傾斜角度に調節される唯一のフラットな第1のミラーであってよい。様々な被写体幅若しくは焦点合わせは、公知の形式で焦点合わせ可能なコリメータ装置によって行われるが、このコリメータ装置を補助的に旋回させる必要はない。
【0015】
従って、様々なカメラが連続的にカメラホルダ内に保持され、様々な焦点合わせを調節することによって、様々な傾斜角度が測定される。この調節は、内ループおよび外ループによって実施され得る。
【0016】
本発明の別の利点は、測定経過のループ構造を従来のシステムに対して変えることができるので、コリメータは、外ループ内で唯一のスルーフォーカススキャンを実施することができ、調節可能な第1のミラーユニットが内ループ内でそれぞれ迅速に相次いで画像位置を調節することができる、という点にある。
【0017】
別の利点は、カメラまたはコリメータ装置のような大きい質量を旋回させる場合と比較して、小さい質量で構成され得る、迅速かつ正確に調節可能な第1のミラーユニットを調節しながら、短縮された検査時間で測定を行うことができる、という点にある。
【0018】
それぞれ同じカメラの測定の他に、様々な開放角度を有するカメラを測定することもできる。このために、第2のミラー装置は好適な形式で、様々な開放角度を有するカメラのための様々なミラーセットを備えて設計されている。つまり、一般的に、より大きい開放角度を有するカメラのための、より大きく互いに離れているミラーユニットを備えて設計されている。従って、このような形式の第2のミラー装置は、様々なカメラのために使用することができ、このために交換、変更または調節を行う必要はなく、単にミラー調整装置および/またはコリメータ装置の調整装置を制御する制御信号のためのソフトウエア適合を行うだけでよい。
【0019】
単眼接眼レンズカメラの測定だけではなく、ステレオカメラシステムの測定も可能である。この場合、2つの個別のカメラを1つずつ、様々な旋回位置を調節することによって連続的に測定若しくは問い合わせることができるので、この場合も、制御信号を適合させるだけでよい。第2のミラー装置は、好適な形式で、ステレオカメラシステムの2つの軸線のための様々なミラーセットを有していて、これらのミラーセットは、互いにずらされた半球状若しくは回転放物面体状に配置されており、それによって、このような構成のためにも、定置に配置されたミラーセットを有する1つの共通の第2のミラー装置を必要とするだけであり、この場合、第2のミラー装置を変更または交換する必要はない。
【0020】
従って、複数のミラーセットを有する第2のミラー装置を使用することによって、様々な開放角度を有するカメラおよび/またはステレオカメラのために複雑な測定が可能であり、この場合、ミラー調整装置の制御および/またはコリメータ装置の焦点合わせの制御のためのソフトウエアの構成の適合が必要なだけである、という利点もある。
【0021】
調節可能な第1のミラーユニットは、特に2つの軸線を中心にして傾倒可能な第1のミラーを有していてよい。これは例えば、モータ制御式の2軸ユニットによって実現され得る。しかしながら、選択的に、異なる傾斜角度を中心にして旋回可能な2つのミラーより成る組合せ式システム、例えば検流計ミラーも実現可能であり、これは例えばレーザ加工において既に公知である。
【0022】
本発明によればさらに、所定の気象条件も調節することができる。従って、様々な気象条件下、つまり様々な温度条件下または湿気条件下で複数の測定を、検査しようとするカメラにおいて連続的に調節することができる。カメラはカメラホルダ内に、固定的におよび様々な旋回角度の調節を行うことなしに、保持されるので、旋回可能なカメラ保持部の絶縁の問題は省くことができる。従って、定置に保持されたカメラは、高価な費用をかけることなしに、様々な条件下に晒すことができる。
【0023】
別の利点は、評価および制御装置によって正確に調節され得る、3つの軸線だけ、つまり光を出射する装置若しくはコリメータ装置のスルーフォーカススキャンのための1つの軸線、および第1のミラー装置の2つの旋回軸線だけを、モータ制御式に構成すればよい、という点にある。コリメータの無限大位置の、測定精度のために重要な較正は、単独のコリメータのためだけに必要であり、様々な測定フィールド位置のための歪みは避けられる。
【0024】
テストパターンを様々な測定位置に偏向させるために唯一のコリメータを使用することによって、例えば暗視システムまたは画像評価システムの測定のために必要な、光源のスペクトル配置の適合も簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】1実施例による測定装置の側面図である。
図2】定置の第2のミラー装置の原理を示す正面図である。
図3】2つの異なるカメラを連続的に測定するための別の実施例による定置の第2のミラー装置の正面図である。
図4】2つの個別のカメラを備えたステレオカメラ装置を測定するための別の実施例による定置の第2のミラー装置の正面図である。
図5】1実施例による測定法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
測定装置1は、図1に示した、コリメータ装置として用いられる焦点合わせ可能なコリメータ2と、旋回可能に保持された第1のミラー4を備えたミラー調整装置3と、定置の第2のミラー装置5と、カメラ位置7に収容された、検査しようとするカメラ8を備えたカメラホルダ6とを有している。
【0027】
コリメータ2は公知の形式で、
ハウジング2aと、光学装置9と、ハウジング2aの後部領域内に配置された光源としての例えばLEDユニット10と、調整装置15によってハウジング2a内で光軸Aに沿って調節可能なテストパターン(Testpattern)12とを有している。
【0028】
光学装置9は、好適な形式で、ハウジング2a内における定置の位置を有する接眼レンズ(集光レンズ)である。テストパターン12は、例えばエッチングされたプレートまたはガラス板、例えば図3に示された十字形のテストパターン12であってよく、このテストパターン12は、後方からLEDユニット10によって照明され、それによって、前方つまり接眼レンズ9に向かって、次にカメラ8の全光学装置を介して結像されるべき、光を出射する被写体として現れる。従って、コリメータ2内におけるテストパターン12の様々な長手方向位置は、検査しようとするカメラ8によって結像されるべき被写体幅若しくは対象物幅を表示するために用いられる。
【0029】
コリメータ2若しくはそのコリメータハウジング2aは、測定装置1のコリメータ収容部11内に固定的に支承されており、それによってコリメータ2の焦点合わせを調整するための調整装置15は、コリメータ収容部11に対して調整可能である。コリメータ2から出射された光14は、光軸Aに沿って、旋回可能な第1のミラー4に向かって進む。第1のミラー4は、ミラー調整装置3を介して、光軸Aに対して平行ではない2つの直交旋回軸線CおよびDを中心にして旋回可能である。第1のミラー4はその複数の旋回位置において、それぞれ光軸Aに対して直交する位置に配置されないので、入射する光14はコリメータ2に向かって直接的に戻し反射されるのではなく、第2のミラー装置5に向かって反射される。旋回軸線CおよびDは、好適な形式で第1のミラー4に対して平行に延在している。2つの旋回軸線CおよびDを中心にして旋回可能な唯一のミラーの代わりに、基本的にそれぞれ旋回軸線を中心にして旋回可能な2つの第1のミラーを備えたミラー装置が設けられていてもよい。
【0030】
第1のミラー4は好適な形式でフラットに構成されている。図1において、旋回軸線Cは投影平面に対して垂直に延在し、別の旋回軸線Dは投影平面に延在している。
【0031】
第1のミラー4は、入射した光14をその旋回位置に応じて様々な方向に、光路16−1,16−2として、つまりi=1,2,3を有する16iとして反射し、図1には例として光路16−iおよび16−(i+1)が示されている。各光路16−iは、第2のミラー装置5の、i=1,2,…を有する第2のミラーユニット18−iに向かって偏向される。個別の第2のミラーユニット18−1,18−2,…は、好適な形式でやはりフラットに構成されていて、凹状、球面状若しくは半球状または楕円状に成形された第2のミラーホルダ19に収容されている。
【0032】
好適には、第1のミラー4および第2のミラーユニット18−iのフラットな構成によって、焦点合わせはコリメータ2だけによって定められ、ミラー4およびミラーユニット18−iの正確な製造が安価に得られる。しかしながら基本的に、第1のミラー4および/または第2のミラーユニット18−iの非扁平な構成も可能であるが、この場合は、それぞれの被写体幅を算出する際にカメラ8に応じて考慮する必要がある。
【0033】
個別の第2のミラーユニット18−iは、入射する光路16−iをそれぞれカメラ8の対物レンズの入射瞳8aに反射し、それによって、その画像センサ(Imagerchip)21が、(実質的に)図2に示された第2のミラー装置5の正面図に相当する画像を供給する。
【0034】
図2、および図3図4の別の実施例には、第2のミラーユニット18−iの複数の位置におけるテストパターンの相応の画像B12が示されており、従って図2図4は、見やすくするために、第2のミラーユニットの正面図に、カメラの画像センサ21によって撮像された画像若しくは発生された画像信号S1を重ね合わせた図を示す。
【0035】
画像信号S1は、制御および評価装置30にアウトプットされ、また制御および評価装置30は制御信号S2をミラー調整装置3および調整装置15にアウトプットする。制御および評価装置30はここでは概略的に示されていて、相応に制御および評価するための複数のユニットから形成されていてもよい。
【0036】
従って、ミラー4のC軸線周りの旋回角度(傾斜角)αおよびD軸線周りの旋回角度βの調節に応じて、テストパターン12の画像B12は、カメラ8からアウトプットされた画像信号S1の様々な水平方向位置(x軸)および垂直方向位置(y軸)で示される。従って、αおよびβの様々な角度値におけるテストパターン12の画像B12のマトリックス配置が得られる。
【0037】
従って、カメラ8の画像センサ21内の様々な視野位置が、ミラー調整装置3の旋回角度αおよびβによって調節されるので、位置および品質の検査を行うことができる。
【0038】
個別の第2のミラーユニット18−iは好適な形式で、様々な角度位置における第1のミラー4から、第2のミラーユニット18−iを介してカメラ8の入射瞳8aまでの全光路が、すべてのiのために同じであるように配置されている。これは、第2のミラーホルダ19における第2のミラーユニット18−iの半球状若しくは楕円状の配置によって得られる。何故ならば、このような配置形式においては、第1のミラー4(若しくはミラー4における旋回軸線CおよびDの交差点)から、それぞれの第2のミラーユニット18−iを介して対物レンズ8aまでの間隔の合計が一定だからである。
【0039】
従って、コリメータ収容部11、第2のミラーホルダ19およびカメラホルダ6は、互いに定置に配置されていて、好適な形式で測定装置1のフレーム内に収容されている。カメラホルダ6は、カメラ8の光学配置における規定されたカメラ位置7を可能にする。
【0040】
基本的に、例えば1つの定置のミラー装置5より多くのミラー、または2つの異なる旋回軸線を中心にして傾倒可能な2つのミラーを有する複雑なミラー構造も可能であるが、図示の構成が、第2のミラーユニット18−iの半球状若しくは楕円状の配置による同じ光路長の構成に関連して有利である。
【0041】
光学式のカメラ8の結像特性を完全に測定するために、カメラ8の画像信号S1が、様々な位置の様々な仮想の対象物間隔において、画像センサ(イメージャ)21によって記録される。様々な仮想の対象物間隔は、コリメータ2の調整装置15によって調整され、実際の対象物間隔例えば2m〜無限大の間に相当する。
【0042】
好適な形式で、すべての値を検出するために、内ループおよび外ループが実施される。好適な形式で、角度調節αおよびβは、画像センサ2内のx方向およびy方向に従って内ループとして実施され、外ループとしてのコリメータ21の調節によって、スルーフォーカススキャン(Through−Focus−Scan)が実施される。従ってその都度、調整装置15によってコリメータ2の焦点調節が行われ、続いて、この焦点調節のために、αおよびβのすべての値が測定され、この際に、それぞれ画像信号S1が記録され、続いて、調整装置15の次の調節が行われ、この際に、すべての角度値αおよびβが再び連続的に調節され、画像信号S1の記録その他が行われる。
【0043】
測定装置1による測定は、異なる気象条件においても実施される。従って、異なる温度値および/または湿気値のために、すべての焦点調節および角度調節α,βを伴う測定がそれぞれ行われる。この場合、このような形式の異なる温度条件および/または気象条件に合わせたミラー4の傾き調整は技術的に容易に実現可能である。何故ならば第2のミラー4は僅かな質量しか有していないからである。
【0044】
測定装置1によって、異なる開放角度γを有するカメラ8を使用することもできる。好適な形式で、改造若しくはハードウエア的な変更を行うことなしに、画像信号S1を評価若しくは処理するための評価ソフトウエアの構造的な適合だけで、異なる開放角度γを有するカメラ8のための測定装置1が実現される。
【0045】
図3は、第2のミラー装置5の正面図を示し、この第2のミラー装置5は、2つのミラーセット、つまり広い開放角度γを有するカメラ8のための、i=1〜9を有するミラーユニット18−iより成るミラーセット18と、狭い開放角度γを有する別のカメラ8のためのi=1〜9を有するミラーユニット20−iより成る別のミラーセット20とを有している。カメラ8の光軸Eは、2つのミラーセット18および20を通って対称的に延在しており、従ってこれらのミラーセット18および20は、互いに対称的に設計されているか、または拡大若しくは縮小された結像のために設計されている。
【0046】
従って図3においては、第2のミラー装置5の外側のケースは、より大きい開放角度を有するカメラ8の画像センサ21に相当し、それに対応して、ミラーユニット20−iを包囲する内側のケースは、小さい開放角度を有するカメラ8の画像センサ21に相当し、この外側のケースおよび内側のケースは、同じ光軸Eを有している。
【0047】
図4は、2つのカメラつまり互いにずらされた2つの光軸E1およびE2を有するステレオカメラ装置を測定するための第2のミラー装置5の構成を示す。このために、やはり1つの共通の第1の調節可能なミラー4と、1つの共通の第2のミラー装置5とが使用され、これらの第1のミラー4および第2のミラー装置5は、ステレオカメラ装置の左のカメラのためのi=1〜9を有する左の第2のミラーユニット18−iを有する左のミラーセット18と、右のカメラのためのi=1〜9を有する右の第2のミラーユニット28−iを有する右のミラーセット28とを有している。従って、左のミラーユニット18−iは、光軸E1を有する第1の半球体若しくは第1の回転放物面体に配置され、右のカメラ8の右のミラーユニット28−iは、前記光軸E1に対してずらされた光軸E2を有する第2の半球体若しくは第2の回転楕円形体に配置されており、この場合、すべてのミラーユニット18−iおよび28−iは、第2のミラー装置5内に固定的に保持されている。
【0048】
本発明による測定法は、図5のフローチャートに例として示されている。ステップSt0において開始され、次いで外ループSt1および内ループSt2が実施される。外ループSt2は、様々なスルーフォーカス値(Through−Focus−Werten)の調節のために使用され、このためにコリメータ2の調整装置15によって、k=1〜k=までのパラメータの値の調節が行われる。内ループSt2は、異なる傾斜角度α,βの調節のために用いられ、このためにn=1〜n=jのパラメータが実行される。
【0049】
図5に示したループでは、最初にパラメータkおよびが1に設定されており、それに続く増分は例として示されているだけである。
【0050】
ステップSt3で、それぞれカメラ8によって画像が撮像され、画像信号S1が発生され、この画像信号S1がステップSt4で評価され、図2に示した実施例では、この方法はステップSt5で終了する。様々な開放角度γを有するカメラ8の測定のために、様々なカメラ8が連続的にカメラホルダ6内に設置され、図5に示した測定方法が実施される。ステレオカメラの測定のためには、ステップSt0におけるスタート後に、同様に2つの個別のカメラ8のために、内ループSt2および外ループSt1が実施され、次いでステップSt3で測定が行われ、次いでステップSt4で共通の評価が行われる。
【符号の説明】
【0051】
1 測定装置
2 コリメータ
2a ハウジング
3 ミラー調整装置
4 第1のミラー
5 第2のミラー装置
6 カメラホルダ
7 カメラ位置
8 カメラ
8a 入射瞳、対物レンズ
9 光学装置
10 LEDユニット
11 コリメータ収容部
12 テストパターン
14 光
15 調整装置
16−i,16−(i+1) 光路
18 ミラーセット
18−i,20−i,28−i 第2のミラーユニット
19 ミラーホルダ
20 ミラーセット
21 画像センサ
30 制御および評価装置
A,E1,E2 光軸
C,D 旋回軸線
B12 画像
S1,S2 画像信号
α,β 旋回角度、角度値
γ 開放角度
St0,St3〜St5 ステップ
St1 外ループ
St2 内ループ
図1
図2
図3
図4
図5