特許第5893879号(P5893879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000002
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000003
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000004
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000005
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000006
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000007
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000008
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000009
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000010
  • 特許5893879-ガスタービン燃焼器 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893879
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/16 20060101AFI20160310BHJP
   F23R 3/06 20060101ALI20160310BHJP
   F23R 3/18 20060101ALI20160310BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20160310BHJP
   F23R 3/14 20060101ALI20160310BHJP
【FI】
   F23R3/16
   F23R3/06
   F23R3/18
   F23R3/30
   F23R3/14
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-206804(P2011-206804)
(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2013-68348(P2013-68348A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】石坂 浩一
(72)【発明者】
【氏名】谷村 聡
(72)【発明者】
【氏名】赤松 真児
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−78127(JP,A)
【文献】 特開平3−225117(JP,A)
【文献】 特開2003−14232(JP,A)
【文献】 特開2002−168134(JP,A)
【文献】 特開2010−281483(JP,A)
【文献】 米国特許第4184326(US,A)
【文献】 米国特許第4567724(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0262844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/16
F23R 3/06
F23R 3/14
F23R 3/18
F23R 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予混合燃焼を行う予混合バーナの外部から取り込んだ外部空気を、予混合ノズルよりも下流側に位置する前記予混合バーナの内周面に沿うように、当該予混合バーナの下流側に向けてフィルム状に噴射することにより、フラッシュバックの発生を抑制するようにしたガスタービン燃焼器において、
前記予混合バーナは、
前記予混合ノズルが挿入されるスワラ筒と、
前記スワラ筒の下流側端部が上流側端部内に嵌合されるフィルムリングとを備え、
前記スワラ筒は、
前記スワラ筒の上流側端部を形成する大径部と、
外径が前記大径部の外径よりも小径で、且つ、前記スワラ筒の前記下流側端部を形成する小径部と
前記大径部の下流側端部に設けられ、前記大径部と前記小径部との間の外径寸法差によって形成される下流側角部とを有し、
前記フィルムリングは、
前記フィルムリングの前記上流側端部に開口して外部空気を取り込むと共に、嵌合時に前記小径部と対向するように配置される空気取込孔と、
前記フィルムリングの前記上流側端部に、当該フィルムリングの径方向外側に向けて凹むように形成され、前記下流側角部と嵌合する上流側段部とを有し、
前記下流側角部と前記上流側段部とを嵌合させて、前記小径部と前記フィルムリングの前記上流側端部との間に、環状の空気通路を形成し、
前記空気取込孔から取り込んだ外部空気を、前記フィルムリングの内周面に沿うように、前記空気通路から前記フィルムリングの下流側に向けてフィルム状に噴射する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
予混合燃焼を行う予混合バーナの外部から取り込んだ外部空気を、予混合ノズルよりも下流側に位置する前記予混合バーナの内周面に沿うように、当該予混合バーナの下流側に向けてフィルム状に噴射することにより、フラッシュバックの発生を抑制するようにしたガスタービン燃焼器において、
前記予混合バーナは、
前記予混合ノズルが挿入されるスワラ筒と、
前記スワラ筒の下流側端部が上流側端部内に嵌合されるフィルムリングとを備え、
前記スワラ筒は、
前記スワラ筒の上流側端部を形成する大径部と、
外径が前記大径部の外径よりも小径で、且つ、前記スワラ筒の前記下流側端部を形成する小径部と、
前記大径部の下流側端部に設けられ、前記大径部と前記小径部との間の外径寸法差によって生じる下流側角部を、前記大径部の径方向内側に向けて凹ますように形成される下流側段部とを有し、
前記フィルムリングは、
前記フィルムリングの前記上流側端部に開口して外部空気を取り込むと共に、嵌合時に前記小径部と対向するように配置される空気取込孔と、
前記フィルムリングの前記上流側端部に形成され、前記下流側段部と嵌合する上流側角部とを有し、
前記下流側段部と前記上流側角部とを嵌合させて、前記小径部と前記フィルムリングの前記上流側端部との間に、環状の空気通路を形成し、
前記空気取込孔から取り込んだ外部空気を、前記フィルムリングの内周面に沿うように、前記空気通路から前記フィルムリングの下流側に向けてフィルム状に噴射する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガスタービン燃焼器において、
前記フィルムリングの前記上流側端部に、前記空気通路の空気噴射孔における径方向の開口幅を、前記空気通路における径方向の開口幅よりも狭くするように、絞り部を形成する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気取込孔を前記フィルムリングの周方向に配置する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気取込孔を千鳥状に配置する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気取込孔における前記フィルムリングの周方向の端面は、前記空気取込孔の開口面積が前記フィルムリングの径方向内側に向かうに従って拡がるように、前記フィルムリングの周方向に向けて傾斜すると共に、
前記空気取込孔における前記フィルムリングの軸方向の端面は、前記フィルムリングの径方向内側に向かうに従って、前記フィルムリングの下流側に向けて傾斜する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気取込孔を、前記フィルムリングの外周面よりも径方向外側に張り出すように形成する
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュバックの発生を抑制することができるガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスタービン用の燃焼器においては、NOxの低減等を図ることを目的として、予混合燃焼方式を採用したものが多くなっている。このような、予混合燃焼方式を採用したガスタービン燃焼器では、予混合燃焼を行うメインバーナ(予混合バーナ)に加えて、拡散燃焼を行うパイロットバーナを備えている。これにより、パイロットバーナによって生成された拡散炎を、メインバーナが予混合炎を生成するための種火として使用することができるため、そのメインバーナによって生成された予混合気を、拡散炎を用いて燃焼させることにより、予混合燃焼を可能としている。
【0003】
しかしながら、メインバーナの出口付近においては、予混合気がその内周面に沿うように流れるため、境界層の発達により流速が低下した部分が生じてしまい、この流速が低下した部分に、予混合気による燃料高濃度領域が発生する場合がある。このように、メインバーナの出口付近に、低速で、且つ、燃料高濃度の領域が発生すると、このような領域に対して、その下流側に生成された火炎が燃え移るという、所謂、フラッシュバック(逆火)が発生するおそれがある。
【0004】
そこで、従来のガスタービン燃焼器においては、メインバーナを、スワラ筒とフィルムリングとの嵌め合い構造として、これらスワラ筒とフィルムリングとの間に隙間を形成することにより、取り込んだ外部空気を、その隙間内からフィルム状に噴射して、フィルムリングの内周面に沿うように流している。これにより、フィルムリングの内周面近傍における予混合気の燃料高濃度領域(低流速域)を、噴射したフィルム空気によって排除して、フラッシュバックの発生を抑制するようにしている。
【0005】
また、フィルム空気の膜厚は、上記隙間における径方向の開口幅によって規定されるため、スワラ筒及びフィルムリングの熱変形や、これらの間の組付誤差が生じると、フィルム空気の膜厚がその周方向において不均一となってしまう。そこで、このような問題を解決する手段として、特許文献1に開示されるように、隙間内にスペーサ等を介在させて、フィルム空気の膜厚管理を行うようにしたガスタービン燃焼器も提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−171894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、隙間内にスペーサ等を介在させると、隙間内を流れるフィルム空気が、スペーサの下流側において、ウェイク(低流速域)を発生させることになる。これにより、従来のガスタービン燃焼器においては、フラッシュバックの発生を十分に抑制することができないおそれがある。
【0008】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、簡素な構成で、フィルム空気を均一に流すことにより、フラッシュバックの発生を抑制することができるガスタービン燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係るガスタービン燃焼器は、
予混合燃焼を行う予混合バーナの外部から取り込んだ外部空気を、予混合ノズルよりも下流側に位置する前記予混合バーナの内周面に沿うように、当該予混合バーナの下流側に向けてフィルム状に噴射することにより、フラッシュバックの発生を抑制するようにしたガスタービン燃焼器において、
前記予混合バーナは、
前記予混合ノズルが挿入されるスワラ筒と、
前記スワラ筒の下流側端部が上流側端部内に嵌合されるフィルムリングとを備え、
前記スワラ筒は、
前記スワラ筒の上流側端部を形成する大径部と、
外径が前記大径部の外径よりも小径で、且つ、前記スワラ筒の前記下流側端部を形成する小径部と
前記大径部の下流側端部に設けられ、前記大径部と前記小径部との間の外径寸法差によって形成される下流側角部とを有し、
前記フィルムリングは、
前記フィルムリングの前記上流側端部に開口して外部空気を取り込むと共に、嵌合時に前記小径部と対向するように配置される空気取込孔と、
前記フィルムリングの前記上流側端部に、当該フィルムリングの径方向外側に向けて凹むように形成され、前記下流側角部と嵌合する上流側段部とを有し、
前記下流側角部と前記上流側段部とを嵌合させて、前記小径部と前記フィルムリングの前記上流側端部との間に、環状の空気通路を形成し、
前記空気取込孔から取り込んだ外部空気を、前記フィルムリングの内周面に沿うように、前記空気通路から前記フィルムリングの下流側に向けてフィルム状に噴射する
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係るガスタービン燃焼器は、
予混合燃焼を行う予混合バーナの外部から取り込んだ外部空気を、予混合ノズルよりも下流側に位置する前記予混合バーナの内周面に沿うように、当該予混合バーナの下流側に向けてフィルム状に噴射することにより、フラッシュバックの発生を抑制するようにしたガスタービン燃焼器において、
前記予混合バーナは、
前記予混合ノズルが挿入されるスワラ筒と、
前記スワラ筒の下流側端部が上流側端部内に嵌合されるフィルムリングとを備え、
前記スワラ筒は、
前記スワラ筒の上流側端部を形成する大径部と、
外径が前記大径部の外径よりも小径で、且つ、前記スワラ筒の前記下流側端部を形成する小径部と、
前記大径部の下流側端部に設けられ、前記大径部と前記小径部との間の外径寸法差によって生じる下流側角部を、前記大径部の径方向内側に向けて凹ますように形成される下流側段部とを有し、
前記フィルムリングは、
前記フィルムリングの前記上流側端部に開口して外部空気を取り込むと共に、嵌合時に前記小径部と対向するように配置される空気取込孔と、
前記フィルムリングの前記上流側端部に形成され、前記下流側段部と嵌合する上流側角部とを有し、
前記下流側段部と前記上流側角部とを嵌合させて、前記小径部と前記フィルムリングの前記上流側端部との間に、環状の空気通路を形成し、
前記空気取込孔から取り込んだ外部空気を、前記フィルムリングの内周面に沿うように、前記空気通路から前記フィルムリングの下流側に向けてフィルム状に噴射する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係るガスタービン燃焼器は、
前記フィルムリングの前記上流側端部に、前記空気通路の空気噴射孔における径方向の開口幅を、前記空気通路における径方向の開口幅よりも狭くするように、絞り部を形成する
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第4の発明に係るガスタービン燃焼器は、
前記空気取込孔を前記フィルムリングの周方向に配置する
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第5の発明に係るガスタービン燃焼器は、
前記空気取込孔を千鳥状に配置する
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第6の発明に係るガスタービン燃焼器は、
前記空気取込孔における前記フィルムリングの周方向の端面は、前記空気取込孔の開口面積が前記フィルムリングの径方向内側に向かうに従って拡がるように、前記フィルムリングの周方向に向けて傾斜すると共に、
前記空気取込孔における前記フィルムリングの軸方向の端面は、前記フィルムリングの径方向内側に向かうに従って、前記フィルムリングの下流側に向けて傾斜する
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第7の発明に係るガスタービン燃焼器は、
前記空気取込孔を、前記フィルムリングの外周面よりも径方向外側に張り出すように形成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
従って、本発明に係るガスタービン燃焼器によれば、スワラ筒における大径部の下流側角部とフィルムリングの上流側段部とを嵌合させることにより、スワラ筒の小径部とフィルムリングの上流側端部との間に、当該スワラ筒及びフィルムリングの周方向において、均一な隙間となる空気通路を形成することができる。これにより、簡素な構成で、外部空気を均一なフィルム状にして流すことができるので、フラッシュバックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係るガスタービン燃焼器の概略構成図である。
図2】矩形の空気取込孔をフィルムリングに形成したときのメインバーナの側面図である。
図3図2のI−I矢視断面図である。
図4】他のメインバーナの断面図である。
図5】丸形の空気取込孔をフィルムリングに形成したときのメインバーナの側面図である。
図6】空気通路内におけるウェイクの発生を示した図であって、(a)は上流側の空気取込孔から取り込んだ圧縮空気によってウェイクを排除する様子を示した図、(b)は下流側の空気取込孔から取り込んだ圧縮空気によってウェイクを排除する様子を示した図である。
図7】丸形及び台形の空気取込孔をフィルムリングに形成したときのメインバーナの側面図である。
図8】台形の空気取込孔における端面形状を示した図であって、(a)は図7のII−II矢視断面図、(b)は図7のIII−III矢視断面図である。
図9】スリット状の空気取込孔をフィルムリングに形成したときのメインバーナの側面図である。
図10】更なる他のメインバーナの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るガスタービン燃焼器について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1に示すように、ガスタービン用の燃焼器1は、予混合燃焼方式を採用したものであって、燃料Fと燃焼用の圧縮空気Aとを混合させる燃焼器内筒11と、この燃焼器内筒11の下流側端部(後端部)に接続された、燃焼室としての燃焼器尾筒12とを備えている。更に、燃焼器内筒11の上流側端部(前端部)には、パイロットバーナ13と複数のメインバーナ(予混合バーナ)14とが収納されている。
【0020】
パイロットバーナ13は、燃焼器内筒11と同軸上に配置されており、パイロットコーン21、パイロットノズル22、パイロットスワラ23から構成されている。パイロットコーン21内には、パイロットノズル22が、そのパイロットコーン21と同軸になるように挿入されている。そして、パイロットコーン21の内周面とパイロットノズル22の外周面との間には、パイロットスワラ23が介在されている。
【0021】
また、メインバーナ14は、パイロットバーナ13の径方向外側において、燃焼器内筒11の周方向に等角度間隔で設けられており、スワラ筒31、フィルムリング32、メインノズル(予混合ノズル)33、メインスワラ34から構成されている。スワラ筒31内及びフィルムリング32内には、メインノズル33が、そのスワラ筒31及びフィルムリング32と同軸になるように挿入されている。そして、スワラ筒31の内周面とメインノズル33の外周面との間には、メインスワラ34が介在されている。一方、フィルムリング32は、基板35を介して、燃焼器内筒11の内周面に支持されている。
【0022】
ここで、スワラ筒31とフィルムリング32とは、それぞれの端部同士を突き合わせて嵌合させることにより接続されている。次に、このような、スワラ筒31とフィルムリング32との間の嵌め合い構造について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。
【0023】
図2及び図3に示すように、スワラ筒31の外径は、フィルムリング32の外径よりも小径となるように形成されており、そのスワラ筒31の下流側端部は、フィルムリング32の上流側端部内に嵌合可能となっている。
【0024】
スワラ筒31は、大径部41と小径部42とから構成されている。大径部41は、スワラ筒31の上流側端部を構成するものであって、その下流側端部に下流側角部41aを有している。また、小径部42は、スワラ筒31の下流側端部を構成するものであって、その外径は、大径部41の外径よりも小径となるように形成されている。
【0025】
一方、フィルムリング32の上流側端部には、環状の上流側段部51及び複数の空気取込孔52が形成されている。上流側段部51は、フィルムリング32の内周面から径方向外側に向けて凹むように形成されており、スワラ筒31における大径部41の下流側角部41aと嵌合可能となっている。また、空気取込孔52は、メインバーナ14の周囲に供給された圧縮空気(外部空気)Aを取り込むものであって、フィルムリング32の周方向において等角度間隔に開口されると共に、凸状の下流側角部41aと凹状の上流側段部51とが嵌合したときには、小径部42と対向するように配置されている。なお、空気取込孔52の孔形状は、矩形となっている。
【0026】
そして、上述したように、スワラ筒31における大径部41の下流側角部41aと、フィルムリング32の上流側段部51とを嵌合させることにより、スワラ筒31の小径部42とフィルムリング32の上流側端部との間に、当該スワラ筒31及びフィルムリング32の周方向において均一な隙間(開口幅)となる空気通路61及び空気噴射孔62が、環状に形成される。
【0027】
即ち、空気通路61は、空気取込孔52と、スワラ筒31内及びフィルムリング32内とに連通するものであって、空気噴射孔62は、空気通路61の最下流側部分、即ち、小径部42の下流側端部とフィルムリング32の上流側端部との間の部分に、形成されることになる。
【0028】
これにより、空気取込孔52から取り込まれた圧縮空気Aは、空気通路61内を通過した後、その空気噴射孔62から噴射される。そして、このように、取り込んだ圧縮空気Aが空気通路61内を流れて空気噴射孔62から噴射されることにより、当該圧縮空気Aは、フィルム状に形成され、フィルム空気Afとして、フィルムリング32の内周面に沿うように、その下流側に向けて流れることになる。
【0029】
次に、燃焼器1の運転時における各動作について説明する。
【0030】
燃焼器1の運転時においては、高温・高圧の圧縮空気Aが、燃焼器内筒11の上流側端部内に流れ込んだ後、パイロットバーナ13内及びメインバーナ14内に供給されると共に、燃料Fがそれらのパイロットノズル22内及びメインノズル33内に供給されている。
【0031】
ここで、パイロットバーナ13内では、先ず、供給された圧縮空気Aが、パイロットスワラ23によって旋回されることにより、パイロットノズル22から噴射された燃料Fと混合される。次いで、このように混合された燃料混合気に対して着火を行うことにより、パイロットコーン21の内部及び下流側(燃焼器尾筒12の内部)において拡散燃焼が行われる。そして、その拡散燃焼によって発生した燃焼ガスは、燃焼器尾筒12の内部において、タービン側に供給される。
【0032】
一方、メインバーナ14内では、先ず、供給された圧縮空気Aが、メインスワラ34によって旋回されることにより、メインノズル33の燃料噴射孔33aから噴射された燃料Fと混合され、予混合気が生成される。次いで、旋回した予混合気は、フィルムリング32から燃焼器尾筒11内に向けて供給された後、パイロットバーナ13により生成された拡散炎によって燃焼され、予混合燃焼が行われる。
【0033】
このとき、上述したような、燃焼器1の運転時においては、燃焼器内筒11の周囲にも、圧縮空気Aが供給されているため、常に、その圧縮空気Aは、空気取込孔52によって、その燃焼器内筒11内に取り込まれている。即ち、空気取込孔52から取り込まれた圧縮空気Aが、空気通路61の空気噴射孔62から噴射されることにより、フィルム空気Afとなり、このフィルム空気Afが、フィルムリング32の内周面に沿うように、その下流側に向けて流れている。
【0034】
これにより、フィルムリング32の内周面近傍においては、予混合気の流速が低下するため、フラッシュバックが発生するおそれがあるが、そのフィルムリング32の内周面に沿って、フィルム空気Afを高流速で流すことにより、フラッシュバックの発生を抑制している。
【0035】
従って、本発明に係るガスタービン燃焼器によれば、スワラ筒31における大径部41の下流側角部41aと、フィルムリング32の上流側段部51とを嵌合させることにより、スワラ筒31の小径部42とフィルムリング32の上流側端部との間に、当該スワラ筒31及びフィルムリング32の周方向において、均一な開口幅を有する空気通路61及び空気噴射孔62を形成することができる。これにより、簡素な構成で、フィルム空気Afを均一に流すことができるので、フィルムリング32の内周面近傍における予混合気の高濃度領域及び低流速域を、噴射したフィルム空気Afの流れによって排除することができる。この結果、フラッシュバックの発生を抑制することができる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、空気通路61における径方向の開口幅と、空気噴射孔62における径方向の開口幅とを、同じ長さで形成するようにしているが、空気噴射孔62における径方向の開口幅を、空気通路61における径方向の開口幅よりも狭く(短く)するようにしても構わない。
【0037】
具体的には、図4に示すように、フィルムリング32の周方向内側には、小径部(絞り)53が形成されている。この小径部53は、フィルムリング32における空気取込孔52よりも下流側に配置されている。これにより、スワラ筒31の小径部42とフィルムリング32の小径部53との間には、環状の空気噴射孔63が形成されることになる。
【0038】
従って、空気噴射孔63における径方向の開口幅を、空気通路61における径方向の開口幅よりも狭くすることができるので、空気噴射孔63の絞り作用によって、当該空気噴射孔63から噴射したフィルム空気Afの流速を速くすることができる。これにより、フラッシュの発生を更に抑制することができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、空気取込孔52をフィルムリング32の周方向に1列に配置すると共に、その孔形状を矩形としているが、空気取込孔の配置及び孔形状は、それに限定されるものではない。そこで、他の空気取込孔の配置及び孔形状について、図5乃至図9を用いて、詳細に説明する。
【0040】
先ず、図5に示すように、フィルムリング32には、複数の空気取込孔71が、空気通路61に対応した範囲において、千鳥状に配置されており、これら空気取込孔71の孔形状は、丸形となっている。このように、丸形の空気取込孔71を千鳥状に配置することにより、圧縮空気Aを空気通路61内に効率的に取り込むことができると共に、空気通路61内の空気取込孔71間において、圧縮空気Aのウェイク(低流速域)Awの発生を抑制することができる。
【0041】
即ち、空気通路61内においては、フィルムリング32の周方向において隣接した2つの空気取込孔71の間に、取り込んだ圧縮空気AのウェイクAwが発生し易くなり、このウェイクAwは、フィルム空気Afの低流速化に繋がるおそれがある。そこで、空気取込孔71を千鳥状に配置することにより、上記問題を解決するようにしている。
【0042】
具合的には、図6(a)に示すように、隣接した2つの空気取込孔71間に発生したウェイクAwは、それら空気取込孔71間の上流側に配置された1つの空気取込孔71から取り込んだ圧縮空気Aの流れに吸収されることにより、排除される。更に、図6(b)に示すように、隣接した2つの空気取込孔71間に発生したウェイクAwは、それら空気取込孔71間の下流側に配置された1つの空気取込孔71から取り込んだ圧縮空気Aの流れに吸引されることにより、排除される。
【0043】
また、図7に示すように、フィルムリング32には、上述した空気取込孔71と空気取込孔72とが、その周方向において交互に配置されている。そして、空気取込孔72の孔形状は、台形となっている。
【0044】
ここで、図8(a)に示すように、空気取込孔72におけるフィルムリング32の周方向両側の端面72aは、その開口面積がフィルムリング32の径方向内側に向かうに従って拡がるように、それぞれ周方向両側に向けて傾斜している。一方、図8(b)に示すように、空気取込孔72におけるフィルムリング32の軸方向両側の端面72bは、フィルムリング32の径方向内側に向かうに従って、当該フィルムリング32の下流側に傾斜している。
【0045】
このように、空気取込孔72の端面72a,72bを傾斜させることにより、圧縮空気Aを、その動圧を低下させることなく、取り込むことができる。更に、空気取込孔72の端面72a,72bを傾斜させている分、圧縮空気Aを取り込む際に、その流れに乱れが生じることがないので、圧縮空気Aを整流状態で噴射させることができる。これにより、フィルム空気Afの膜厚を均一にすることができる。
【0046】
更に、図9に示すように、フィルムリング32は、上流側に配置された上流側フィルムリング部材32aと、下流側に配置された下流側フィルムリング部材32bとから構成されている。そして、上流側フィルムリング部材32aと下流側フィルムリング部材32bとは、複数の張り出しリブ部材81により接続されている。
【0047】
張り出しリブ部材81は、フィルムリング32の周方向において等角度間隔で設けられており、このように、張り出しリブ部材81を所定量の隙間を有して間隔的に設けることにより、各張り出しリブ部材81間には、スリット状の空気取込孔82が形成される。
【0048】
ここで、接続時の張り出しリブ部材81は、その内面がフィルムリング部材32a,32bの外周面よりも径方向外側に位置するように、張り出すことになる。これにより、空気取込孔82も、フィルムリング部材32a,32bの外周面よりも径方向外側に張り出すように形成されることになる。
【0049】
従って、空気取込孔82による圧縮空気Aの取込量を増大させることができるので、その取り込んだ圧縮空気Aを、フィルム空気Afとして、勢いよく噴射させることができる。
【0050】
更に、上述した実施形態では、スワラ筒31とフィルムリング32との間の嵌め合い構造を、スワラ筒31における凸状の下流側角部41aと、フィルムリング32における凹状の上流側段部51とにより構成しているが、図10に示すように、スワラ筒31における凹状の下流側段部43と、フィルムリング32における凸状の上流側角部54とにより構成しても構わない。
【0051】
即ち、図10に示すように、スワラ筒31における大径部41の下流側端部には、環状の下流側段部43が形成されている。この下流側段部43は、大径部41の外周面から径方向内側に向けて凹むように形成されている。一方、フィルムリング32は、その上流側端部に上流側角部54を有しており、この上流側角部54は、下流側段部43と嵌合可能となっている。
【0052】
これにより、スワラ筒31における大径部41の下流側段部43と、フィルムリング32の上流側角部54とを嵌合させることにより、スワラ筒31の小径部42とフィルムリング32の上流側端部との間に、当該スワラ筒31及びフィルムリング32の周方向において均一な隙間(開口幅)となる空気通路61及び空気噴射孔62が、環状に形成される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、燃焼器尾筒の内周面を高温の燃焼ガスから保護するようにしたガスタービン燃焼器に適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 燃焼器
11 燃焼器内筒
12 燃焼器尾筒
13 パイロットバーナ
14 メインバーナ
21 パイロットコーン
22 パイロットノズル
23 パイロットスワラ
31 スワラ筒
32 フィルムリング
32a 上流側フィルムリング部材
32b 下流側フィルムリング部材
33 メインノズル
33a 燃料噴射孔
34 メインスワラ
35 基板
41 大径部
41a 下流側角部
42 小径部
43 下流側段部
51 上流側段部
52,71,72,82 空気取込孔
53 小径部
54 上流側角部
61 空気通路
62,63 空気噴射孔
72a,72b 端面
81 張り出しリブ部材
A 圧縮空気
Af フィルム空気
Aw ウェイク
F 燃料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10