【実施例】
【0019】
図1に示すように、ガスタービン用の燃焼器1は、予混合燃焼方式を採用したものであって、燃料Fと燃焼用の圧縮空気Aとを混合させる燃焼器内筒11と、この燃焼器内筒11の下流側端部(後端部)に接続された、燃焼室としての燃焼器尾筒12とを備えている。更に、燃焼器内筒11の上流側端部(前端部)には、パイロットバーナ13と複数のメインバーナ(予混合バーナ)14とが収納されている。
【0020】
パイロットバーナ13は、燃焼器内筒11と同軸上に配置されており、パイロットコーン21、パイロットノズル22、パイロットスワラ23から構成されている。パイロットコーン21内には、パイロットノズル22が、そのパイロットコーン21と同軸になるように挿入されている。そして、パイロットコーン21の内周面とパイロットノズル22の外周面との間には、パイロットスワラ23が介在されている。
【0021】
また、メインバーナ14は、パイロットバーナ13の径方向外側において、燃焼器内筒11の周方向に等角度間隔で設けられており、スワラ筒31、フィルムリング32、メインノズル(予混合ノズル)33、メインスワラ34から構成されている。スワラ筒31内及びフィルムリング32内には、メインノズル33が、そのスワラ筒31及びフィルムリング32と同軸になるように挿入されている。そして、スワラ筒31の内周面とメインノズル33の外周面との間には、メインスワラ34が介在されている。一方、フィルムリング32は、基板35を介して、燃焼器内筒11の内周面に支持されている。
【0022】
ここで、スワラ筒31とフィルムリング32とは、それぞれの端部同士を突き合わせて嵌合させることにより接続されている。次に、このような、スワラ筒31とフィルムリング32との間の嵌め合い構造について、
図2及び
図3を用いて詳細に説明する。
【0023】
図2及び
図3に示すように、スワラ筒31の外径は、フィルムリング32の外径よりも小径となるように形成されており、そのスワラ筒31の下流側端部は、フィルムリング32の上流側端部内に嵌合可能となっている。
【0024】
スワラ筒31は、大径部41と小径部42とから構成されている。大径部41は、スワラ筒31の上流側端部を構成するものであって、その下流側端部に下流側角部41aを有している。また、小径部42は、スワラ筒31の下流側端部を構成するものであって、その外径は、大径部41の外径よりも小径となるように形成されている。
【0025】
一方、フィルムリング32の上流側端部には、環状の上流側段部51及び複数の空気取込孔52が形成されている。上流側段部51は、フィルムリング32の内周面から径方向外側に向けて凹むように形成されており、スワラ筒31における大径部41の下流側角部41aと嵌合可能となっている。また、空気取込孔52は、メインバーナ14の周囲に供給された圧縮空気(外部空気)Aを取り込むものであって、フィルムリング32の周方向において等角度間隔に開口されると共に、凸状の下流側角部41aと凹状の上流側段部51とが嵌合したときには、小径部42と対向するように配置されている。なお、空気取込孔52の孔形状は、矩形となっている。
【0026】
そして、上述したように、スワラ筒31における大径部41の下流側角部41aと、フィルムリング32の上流側段部51とを嵌合させることにより、スワラ筒31の小径部42とフィルムリング32の上流側端部との間に、当該スワラ筒31及びフィルムリング32の周方向において均一な隙間(開口幅)となる空気通路61及び空気噴射孔62が、環状に形成される。
【0027】
即ち、空気通路61は、空気取込孔52と、スワラ筒31内及びフィルムリング32内とに連通するものであって、空気噴射孔62は、空気通路61の最下流側部分、即ち、小径部42の下流側端部とフィルムリング32の上流側端部との間の部分に、形成されることになる。
【0028】
これにより、空気取込孔52から取り込まれた圧縮空気Aは、空気通路61内を通過した後、その空気噴射孔62から噴射される。そして、このように、取り込んだ圧縮空気Aが空気通路61内を流れて空気噴射孔62から噴射されることにより、当該圧縮空気Aは、フィルム状に形成され、フィルム空気Afとして、フィルムリング32の内周面に沿うように、その下流側に向けて流れることになる。
【0029】
次に、燃焼器1の運転時における各動作について説明する。
【0030】
燃焼器1の運転時においては、高温・高圧の圧縮空気Aが、燃焼器内筒11の上流側端部内に流れ込んだ後、パイロットバーナ13内及びメインバーナ14内に供給されると共に、燃料Fがそれらのパイロットノズル22内及びメインノズル33内に供給されている。
【0031】
ここで、パイロットバーナ13内では、先ず、供給された圧縮空気Aが、パイロットスワラ23によって旋回されることにより、パイロットノズル22から噴射された燃料Fと混合される。次いで、このように混合された燃料混合気に対して着火を行うことにより、パイロットコーン21の内部及び下流側(燃焼器尾筒12の内部)において拡散燃焼が行われる。そして、その拡散燃焼によって発生した燃焼ガスは、燃焼器尾筒12の内部において、タービン側に供給される。
【0032】
一方、メインバーナ14内では、先ず、供給された圧縮空気Aが、メインスワラ34によって旋回されることにより、メインノズル33の燃料噴射孔33aから噴射された燃料Fと混合され、予混合気が生成される。次いで、旋回した予混合気は、フィルムリング32から燃焼器尾筒11内に向けて供給された後、パイロットバーナ13により生成された拡散炎によって燃焼され、予混合燃焼が行われる。
【0033】
このとき、上述したような、燃焼器1の運転時においては、燃焼器内筒11の周囲にも、圧縮空気Aが供給されているため、常に、その圧縮空気Aは、空気取込孔52によって、その燃焼器内筒11内に取り込まれている。即ち、空気取込孔52から取り込まれた圧縮空気Aが、空気通路61の空気噴射孔62から噴射されることにより、フィルム空気Afとなり、このフィルム空気Afが、フィルムリング32の内周面に沿うように、その下流側に向けて流れている。
【0034】
これにより、フィルムリング32の内周面近傍においては、予混合気の流速が低下するため、フラッシュバックが発生するおそれがあるが、そのフィルムリング32の内周面に沿って、フィルム空気Afを高流速で流すことにより、フラッシュバックの発生を抑制している。
【0035】
従って、本発明に係るガスタービン燃焼器によれば、スワラ筒31における大径部41の下流側角部41aと、フィルムリング32の上流側段部51とを嵌合させることにより、スワラ筒31の小径部42とフィルムリング32の上流側端部との間に、当該スワラ筒31及びフィルムリング32の周方向において、均一な開口幅を有する空気通路61及び空気噴射孔62を形成することができる。これにより、簡素な構成で、フィルム空気Afを均一に流すことができるので、フィルムリング32の内周面近傍における予混合気の高濃度領域及び低流速域を、噴射したフィルム空気Afの流れによって排除することができる。この結果、フラッシュバックの発生を抑制することができる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、空気通路61における径方向の開口幅と、空気噴射孔62における径方向の開口幅とを、同じ長さで形成するようにしているが、空気噴射孔62における径方向の開口幅を、空気通路61における径方向の開口幅よりも狭く(短く)するようにしても構わない。
【0037】
具体的には、
図4に示すように、フィルムリング32の周方向内側には、小径部(絞り)53が形成されている。この小径部53は、フィルムリング32における空気取込孔52よりも下流側に配置されている。これにより、スワラ筒31の小径部42とフィルムリング32の小径部53との間には、環状の空気噴射孔63が形成されることになる。
【0038】
従って、空気噴射孔63における径方向の開口幅を、空気通路61における径方向の開口幅よりも狭くすることができるので、空気噴射孔63の絞り作用によって、当該空気噴射孔63から噴射したフィルム空気Afの流速を速くすることができる。これにより、フラッシュの発生を更に抑制することができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、空気取込孔52をフィルムリング32の
周方向に1列に配置すると共に、その孔形状を矩形としているが、空気取込孔の配置及び孔形状は、それに限定されるものではない。そこで、他の空気取込孔の配置及び孔形状について、
図5乃至
図9を用いて、詳細に説明する。
【0040】
先ず、
図5に示すように、フィルムリング32には、複数の空気取込孔71が、空気通路61に対応した範囲において、千鳥状に配置されており、これら空気取込孔71の孔形状は、丸形となっている。このように、丸形の空気取込孔71を千鳥状に配置することにより、圧縮空気Aを空気通路61内に効率的に取り込むことができると共に、空気通路61内の空気取込孔71間において、圧縮空気Aのウェイク(低流速域)Awの発生を抑制することができる。
【0041】
即ち、空気通路61内においては、フィルムリング32の周方向において隣接した2つの空気取込孔71の間に、取り込んだ圧縮空気AのウェイクAwが発生し易くなり、このウェイクAwは、フィルム空気Afの低流速化に繋がるおそれがある。そこで、空気取込孔71を千鳥状に配置することにより、上記問題を解決するようにしている。
【0042】
具合的には、
図6(a)に示すように、隣接した2つの空気取込孔71間に発生したウェイクAwは、それら空気取込孔71間の上流側に配置された1つの空気取込孔71から取り込んだ圧縮空気Aの流れに吸収されることにより、排除される。更に、
図6(b)に示すように、隣接した2つの空気取込孔71間に発生したウェイクAwは、それら空気取込孔71間の下流側に配置された1つの空気取込孔71から取り込んだ圧縮空気Aの流れに吸引されることにより、排除される。
【0043】
また、
図7に示すように、フィルムリング32には、上述した空気取込孔71と空気取込孔72とが、その周方向において交互に配置されている。そして、空気取込孔72の孔形状は、台形となっている。
【0044】
ここで、
図8(a)に示すように、空気取込孔72におけるフィルムリング32の周方向両側の端面72aは、その開口面積がフィルムリング32の径方向内側に向かうに従って拡がるように、それぞれ周方向両側に向けて傾斜している。一方、
図8(b)に示すように、空気取込孔72におけるフィルムリング32の軸方向両側の端面72bは、フィルムリング32の径方向内側に向かうに従って、当該フィルムリング32の下流側に傾斜している。
【0045】
このように、空気取込孔72の端面72a,72bを傾斜させることにより、圧縮空気Aを、その動圧を低下させることなく、取り込むことができる。更に、空気取込孔72の端面72a,72bを傾斜させている分、圧縮空気Aを取り込む際に、その流れに乱れが生じることがないので、圧縮空気Aを整流状態で噴射させることができる。これにより、フィルム空気Afの膜厚を均一にすることができる。
【0046】
更に、
図9に示すように、フィルムリング32は、上流側に配置された上流側フィルムリング部材32aと、下流側に配置された下流側フィルムリング部材32bとから構成されている。そして、上流側フィルムリング部材32aと下流側フィルムリング部材32bとは、複数の張り出しリブ部材81により接続されている。
【0047】
張り出しリブ部材81は、フィルムリング32の周方向において等角度間隔で設けられており、このように、張り出しリブ部材81を所定量の隙間を有して間隔的に設けることにより、各張り出しリブ部材81間には、スリット状の空気取込孔82が形成される。
【0048】
ここで、接続時の張り出しリブ部材81は、その内面がフィルムリング部材32a,32bの外周面よりも径方向外側に位置するように、張り出すことになる。これにより、空気取込孔82も、フィルムリング部材32a,32bの外周面よりも径方向外側に張り出すように形成されることになる。
【0049】
従って、空気取込孔82による圧縮空気Aの取込量を増大させることができるので、その取り込んだ圧縮空気Aを、フィルム空気Afとして、勢いよく噴射させることができる。
【0050】
更に、上述した実施形態では、スワラ筒31とフィルムリング32との間の嵌め合い構造を、スワラ筒31における凸状の下流側角部41aと、フィルムリング32における凹状の上流側段部51とにより構成しているが、
図10に示すように、スワラ筒31における凹状の下流側段部43と、フィルムリング32における凸状の上流側角部54とにより構成しても構わない。
【0051】
即ち、
図10に示すように、スワラ筒31における大径部41の下流側端部には、環状の下流側段部43が形成されている。この下流側段部43は、大径部41の外周面から径方向内側に向けて凹むように形成されている。一方、フィルムリング32は、その上流側端部に上流側角部54を有しており、この上流側角部54は、下流側段部43と嵌合可能となっている。
【0052】
これにより、スワラ筒31における大径部41の下流側段部43と、フィルムリング32の上流側角部54とを嵌合させることにより、スワラ筒31の小径部42とフィルムリング32の上流側端部との間に、当該スワラ筒31及びフィルムリング32の周方向において均一な隙間(開口幅)となる空気通路61及び空気噴射孔62が、環状に形成される。