(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893902
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】鋲打機
(51)【国際特許分類】
B25C 1/08 20060101AFI20160310BHJP
【FI】
B25C1/08
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-255131(P2011-255131)
(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公開番号】特開2012-111034(P2012-111034A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2014年10月1日
(31)【優先権主張番号】10 2010 061 938.8
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ シーストル
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ロート
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0134960(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3121856(JP,U)
【文献】
実開昭60−091652(JP,U)
【文献】
特開2003−074592(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0251296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを燃料とする場合を含み、
前記燃料を貯蔵するためのタンク(2)と、
前記タンク(2)と接続され、かつ鋲打ちプランジャ(7)を推進する可動ピストン(6)を備えた燃焼室(1)と、
前記タンク(2)と燃焼室(1)との間に設けられ、内部の計量チャンバ(15)から燃料を送り出すために移動しうる移動部材(19)を具備する計量装置(4)とを備え、
前記移動部材(19)は、燃料の圧力に対向する押圧方向に働く、第1の力の供給源からの操作力によって移動可能になっている鋲打機において、
前記移動部材(19)には、第2の力の供給源から追加の押圧力が働くようになっており、
前記移動部材(19)は、前記計量チャンバ(15)の反対側において、第2の力の供給源から追加の押圧力として、燃料の圧力による力を受けることを特徴とする鋲打機。
【請求項2】
前記移動部材(19)に働く押圧力の第1の供給源は、作業員の力であり、前記作業員の力は、鋲打機を被鋲打ち材に押しつける際のものである場合を含むことを特徴とする請求項1に記載の鋲打機。
【請求項3】
前記追加の押圧力としての、移動部材(19)に対する燃料の圧力による力は、計量チャンバ(15)から弁(18)を介して離間されたカウンターチャンバ(20)において形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋲打機。
【請求項4】
前記移動部材(19)は、並進運動をするピストンであり、このピストンのカウンターチャンバ(20)内に突出している部分の断面積は、前記計量チャンバ(15)内に突出している部分の断面積よりも小さくなっていることを特徴とする請求項3に記載の鋲打機。
【請求項5】
前記移動部材(19)に、これを押圧するばねが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鋲打機。
【請求項6】
電気的なエネルギー供給源(13)を備えず、燃料が、前記鋲打ちプランジャ(7)を推進するための唯一のエネルギー源となっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鋲打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋲打機(ネイルガン)、特に請求項1に記載の特徴を有する手持ち式の鋲打機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料の供給を制御するための計量装置(移動可能なピストンを備えたチャンバを有している)の付いた鋲打機を開示している。この文献に開示されている態様によれば、ピストンは、鋲打機を押し付けることにより機械的に作動させるか、または電気的に駆動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第10260702号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、燃料の供給を制御する効率的な計量装置を備えた、鋲打機を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、冒頭に述べた鋲打機に対し、本発明に係る請求項1に記載の特徴を持たせることより解決される。本発明によれば、計量装置において燃料を計量するため、または計量装置から燃料を放出するために鋲打機を操作する(押しつける)のに必要とされる作業員の力は、第2の力の供給源により移動部材を付勢する追加の押圧力が発生するため、大幅に軽減される。しかも、これは、移動部材による燃料の正確な計量を妨げることなく行えるため、全般的に有利である。本発明においては、移動部材を付勢するための第1の力の供給源となるのは、作業員の筋力、電気式アクチュエータ、空気圧式アクチュエータ等(任意に制御しうる)である。
【0006】
本発明の好ましい態様によれば、上記第1の力の供給源は、作業員の筋力である。特に好ましいのは、鋲打機を被鋲打ち材に押しつける際に発揮される作業員の筋力である(ただし、必須ではない)。この場合には、例えば、鋲打ちのための部材(鋲打機を安全に操作するための部材と連結されている)を、リンク部材を介して移動部材に連結する。
【0007】
本発明の好ましい態様によれば、移動部材は、計量チャンバの反対側において、燃料の圧力による力を受け、この力が前記追加の押圧力の供給源となる。このように、燃料の圧力によって移動部材に及ぼされる力は、移動部材が両側で燃料によって押圧されるために、少なくとも一部が打ち消される。その結果、計量チャンバに向かって移動部材を移動させるために必要な力も、軽減される。本発明の好ましい態様によれば、前記追加の押圧力となる移動部材に対する圧力は、計量チャンバから離間するとともに弁を介して連通するカウンターチャンバにおいて生ずる。移動部材は、構成を簡単にするには、直線的に移動しうるピストンとするのが好ましい。この際、移動部材としてのピストンのカウンターチャンバ内に突出している部分の断面積は、計量チャンバ内に突出している部分の断面積よりも小さくなっているのが好ましい(ただし、必須ではない)。移動部材は、所望により、少なくとも一方の側において、計量チャンバおよび/またはカウンターチャンバに対して、封止用の膜その他の公知の態様に従って封止することができる(詳細は、例えばドイツ国特許出願公開第10260702号明細書参照)。計量チャンバの側においては、適宜変更しうるが、主として、隔膜、ベローズ等によって封止される。本発明に係る移動部材とは、計量チャンバの容量を変化させるように駆動する部材を指す。
【0008】
移動部材に対する追加の押圧力は、上記の燃料に替えて、またはこれに追加して、ばねを設けることによって生起させることもできる。このようなばねは、追加の押圧力の唯一の供給源とすることもでき、この場合、移動部材を駆動するのに必要となる力は、ばねによる付勢力(追加の押圧力)と、燃料による押圧力の差である。ばねは、力の微調整を行うため、および/または移動部材を作動条件に従って所定の位置へ送るために、例えば請求項3ないし5に記載の態様に追加して設けることもできる。この外、ばねの付勢の程度を変化させて押圧力を適正なものに調整することによって、第1の力の供給源を調整可能にすることもできる。特に、押圧力を生み出すためのばねは、計量チャンバおよびカウンターチャンバ内において燃料の圧力等のさらなる力が加えられたときには、移動部材を解放方向に動かすようにすることもできる。
【0009】
本発明に係る鋲打機は、移動部材を付勢するための電気的なエネルギー源は装備していないのが好ましい。事情により異なるが、本発明に係る鋲打機は、作業員の力によって操作するのが特に好ましい。この場合は、作業員の力によって、計量チャンバにおける燃料の計量と、計量チャンバから燃焼室への燃料の放出も行われる。本来的には、本発明に係る鋲打機は、電気的に作動する計量装置とともに用いるのが好ましい。なぜならば、第2の押圧力の生起、または作業員に必要とされる力の大幅な軽減を通じて、計量装置を作動させるための電気的エネルギーの消費も節減されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鋲打機の一部を切り欠いた模式的な側面図である。
【
図2】
図1に示す鋲打機に備え付けられた計量装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記以外の本発明の効果および特徴は、以下の実施形態および添付の図面から明らかになるであろう。
【0012】
以下では、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、燃焼室1を備えた鋲打機を示す。燃料(液化ガス)は、燃料導入管3により、燃料タンク2から計量装置4を経て、供給量を制御されつつ燃焼室1へ送られる。燃焼室1において、燃料と空気の混合ガスを、点火プラグ5を介して点火させると、ピストン6は、これに連結された鋲打ちプランジャ7とともに押圧される。この結果、鋲等、ファスナが、マガジンケース8から押し出されて、被鋲打ち材(図示せず)に打ち込まれる。
【0014】
鋲打機の先端領域には、銃口部9が設けられている。銃口部9は、安全確保のため、最初は、作業員自身の力で被鋲打ち材に押し当てられる。鋲打機は、グリップ部11に設けられている作動スイッチ10を操作すると、点火を開始する。グリップ部11の内部における燃料タンク2の近傍には、電気的エネルギー源13(ここではバッテリ)が付設された制御用電子部品12が位置している。電子部品12は、燃料に点火する前に働くようになっている。電子部品12は、他の好ましい実施形態においては、エネルギー源を設けずに、電気機械的点火(例えばピエゾ素子等)により働かせることもできる。
【0015】
図1に模式的に描かれている計量装置4には、燃料導入管3および燃料送給管3aがそれぞれ接続している。さらに、銃口部9の先端まで延びる押圧ロッド(模式的に描かれている)14で形成された押圧部14も、計量装置4と接続している。計量装置4は、鋲打機による被鋲打ち部材の押圧、または押圧ロッド14の移動に同期して働く。
【0016】
図2は、計量装置4の模式的な断面図である。計量装置4は、燃料注入口16と燃料排出口17を有する計量チャンバ15を備えている。燃料注入口16と燃料排出口17は、それぞれ、チェックバルブ18,18によって閉鎖されるようになっている。さらに、計量チャンバ15には、ピストン形状の移動部材19を挿入するための開口15aも設けられている。移動部材19の周りは、ガスケット21によって、開口15aの周壁に対して封止されている。
【0017】
燃料である液化ガスが、チェックバルブ18を経由して計量チャンバ15に流入すると、ピストン形状の移動部材19を計量チャンバ15から押し出そうとする力が、移動部材19に働く。この力の大きさは、移動部材19に及ぶ圧力と、開口15aの断面積または移動部材19の対応する断面積との積によって決まる。
【0018】
計量装置4の機能に従えば、液化ガスを計量チャンバ15から燃料排出口17を経由して送り出すために、移動部材19を計量チャンバ15に向かって移動させると、この移動量に対応する容量の液化ガス(特に液相のもの)が押し出される。
【0019】
移動部材19が計量チャンバに向かう推進力は、前述の例においては、鋲打機を被鋲打ち材に押しつける作業員の力が最初の力の供給源となり、この力が押圧ロッド14を介して移動部材19へ伝達される。
図2には、押圧ロッド14と移動部材19とを連結する要素19aが、移動部材19に付設される形で模式的に描いてある。
【0020】
移動部材19を押し戻そうとする計量チャンバ15内の圧力に抗して大きな仕事をするのに必要な作業員の力を軽減するため、本発明においては、第2の力(押圧力)の供給源を設ける。この第2の力とは、燃料である液化ガスが、移動部材19を計量チャンバ15へ向かって押し込む力である。
【0021】
上記押圧力は、計量チャンバ15内に突き出している移動部材19の端部の反対側に位置する下端部19bが、カウンターチャンバ20内に押し込まれると発生する。カウンターチャンバ20には、計量チャンバ15と同様に、移動部材19の下端部19bが挿入される開口20aが設けられている。また、移動部材19の周りは、ガスケット21によって封止されている。
【0022】
燃料導入管3は、一旦カウンターチャンバ20内に導入されるとともに、さらにここから導出されていて、この導出部の終端が計量チャンバ15の燃料注入口16と接続している。
【0023】
カウンターチャンバ20は、燃料タンク2内の圧力によって加圧される。この場合、移動部材19を計量チャンバ15から押し出そうとする力F1に対抗して、移動部材19の下端19bに働く力F2が生まれる。力F2の大きさは、カウンターチャンバ20内の圧力と、カウンターチャンバ20の開口20aの断面積との積で表される。
【0024】
本実施形態においては、移動部材19に働く力を生じさせるための要素(例えば、ばね)は設けていないので、カウンターチャンバ20の開口20aの断面積を、計量チャンバ15の開口15aのそれよりもいくらか小さくしてある。したがって、計量チャンバ15内の燃料による圧力と、カウンターチャンバ20内の燃料による圧力が釣り合っているならば、移動部材19は、比較的小さい力の差(F1−F2)により、カウンターチャンバ20の方向へ押圧される。
【0025】
本発明の鋲打機は、次のような機構で作動する。
計量装置4が働いていない状態では、燃料(液化ガス)は、燃料タンク2から、燃料導入管3およびカウンターチャンバ20を経て、計量チャンバ15が燃料で満たされるまで、計量チャンバ15へ向かう。このため、力F1は、力F2よりも幾分大きい。その結果、移動部材19は、計量チャンバ15の側から燃料の圧力を受けて、必要に応じて調整しうる停止点に至るまで押し出される。
【0026】
鋲打機が、第1の力の供給源である作業員の力によって、被鋲打ち材に押し付けられると、押圧ロッド14が動かされ、移動部材19は、図示されていない機械的連結要素を介して、計量チャンバ15に向かって押し出される。このようにして、計量チャンバ15内の液状の燃料が必要な圧縮を受けると、出口側のチェックバルブ18の弁口は、圧縮ばね18aの付勢力に抗して押し広がり、液化ガスは、さらに燃料送給管3aを介して燃焼室1に流入する。
【0027】
計量チャンバ15の側面に設けられているチェックバルブ18は、閉止する方向にも付勢され続けているため、移動部材19によって計量チャンバ15内で押圧される液化ガスは、燃焼室1へ送られ続ける訳ではない。移動部材19が計量チャンバ15の中に完全に押し込まれると、圧縮ばね18aはチェックバルブ18を閉止し、燃料を計量しつつ送り出すプロセスは終了する。
【0028】
ついで、作動スイッチ10を操作すると、点火プラグ5からスパークが発生し、燃焼室1内で、燃料と空気の混合ガスが公知の態様で燃焼する。