特許第5893916号(P5893916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5893916照明装置及びそれが備える配光制御部材の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5893916
(24)【登録日】2016年3月4日
(45)【発行日】2016年3月23日
(54)【発明の名称】照明装置及びそれが備える配光制御部材の作製方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20160310BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20160310BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20160310BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160310BHJP
【FI】
   F21S2/00 431
   G02B5/04 A
   G02B5/02 C
   F21Y101:02
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-287638(P2011-287638)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137901(P2013-137901A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】枝光 貴志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4614012(JP,B2)
【文献】 特開2007−041431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
G02B 5/02
G02B 5/04
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付け位置から離れた位置にある被照明面を照明するための照明装置であって、光源部と、傾斜面を有し前記光源部からの出射光の配光を二次元的に制御するために面状に配置された複数のプリズムを含むプリズム形成面を有する配光制御部材とを備え、前記複数のプリズムは、複数の凹状のプリズムからなり、前記プリズム形成面は、前記複数の凹状のプリズムの谷部及び頂部のいずれか一方または両方に曲面を有しており、前記配光制御部材は、前記プリズム形成面が前記光源部の出射面に対向するように配置されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
取付け位置から離れた位置にある被照明面を照明するための照明装置であって、光源部と、傾斜面を有し前記光源部からの出射光の配光を二次元的に制御するために面状に配置された複数のプリズムを含むプリズム形成面を有する配光制御部材とを備え、前記複数のプリズムは、複数の凸状のプリズムからなり、前記プリズム形成面は、前記複数の凸状のプリズムの谷部または谷部及び頂部の両方に曲面を有しており、前記配光制御部材は、前記プリズム形成面が前記光源部の出射面に対向するように配置されることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
前記プリズムは、四角錐状であることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の照明装置からなる照明ユニットを複数個隣接させて配置したことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
前記光源部は、導光板と、該導光板の側端面に配置された光源を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の照明装置が備える前記配光制御部材を作製する方法であって、
前記配向制御部材を成形するための金型を作製する工程を含んでおり、
前記金型を作製する工程は、
金型基材に、前記複数のプリズムの傾斜面に対応する傾斜面を形成する工程と、
前記金型基材に、前記複数のプリズムの谷部及び頂部のいずれか一方または両方の曲面に対応する曲面を形成する工程と、を含
前記傾斜面を形成する工程は、刃先に一対の傾斜面を有するバイトを用いて前記金型基材の表面を切削し、前記金型基材に、複数本の直線状の溝を、隣接する前記溝間に前記金型基材の表面を残さないように形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記金型基材に傾斜面を形成する工程は、異なる2以上の方向に延びる前記複数の直線状の溝を形成するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バイトの刃先の先端で前記一対の傾斜面を連結する面は、曲面から構成されており、前記金型基材に曲面を形成する工程のうち、前記複数のプリズムの頂部の曲面に対応する曲面を形成するステップは、前記金型基材に傾斜面を形成する工程において、前記複数の直線状の溝の底部が曲面として形成されることにより実施されることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照明面上の照度の均一性を向上させることが可能な配光制御部材を用いた照明装置、及び、配光制御部材を成形するための金型の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置は、その発光面の正面の光度が最も大きく、正面からの角度が増すにつれて光度が減少するような配光特性を有するのが一般的である。そして、このような配光特性を有する照明装置では、照明装置から離れた位置にある被照明面(例えば、このような照明装置を室内照明として天井に取り付けて使用した場合には、床面)における照度は、照明装置の直下のみが大きく、周辺にいくにしたがって急激に減少するといった問題がある。従来、この問題を回避して被照明面上の比較的広い領域において均一な照度を達成するために、照明装置の配光特性を後述するバットウィング状とすることが知られている。
【0003】
ここで、図9(a)は、室内空間106において、照明装置100を天井102に取り付け、床面104を照らすようにした配置構成を示す図である。また、図9(b)は、照明装置100の配光特性の基準軸qを含む一平面(例えば、P)内において、光軸qからの偏向角θに対する照明装置100の光度の分布L1、L2を示すグラフである。
ここで、配光特性の基準軸qは、通常、発光面の正面方向の中心軸である。以下、この基準軸を光軸ともいい、光軸qからの偏向角θを配光角、この配光角θに対する光度の分布を、光度角分布ともいう。
【0004】
図9(c)は、図9(b)に示す光度角分布L1、L2にそれぞれ対応する、床面104における照度の分布(以下、照度角分布という)E1、E2を示すグラフである。
図9(b)、(c)において、円周の周囲に示された数値(−90〜90)は配光角θを示すものであり、各配光角θにおける光度は、最も光度が大きくなる角度での値を1とする相対値で示され、照度は、それぞれ光軸q上の(すなわち、θ=0度における)照度を1とする相対値で示されている。
【0005】
図9(b)に示す光度角分布L2は、上述した一般的な配光特性に相当し、この場合、面状照明装置100の光度は、θ=0度の方向で最大となり、配光角θの絶対値が増大するにつれて減少する。この際、床面104における照度は、図9(c)に示す対応する照度角分布E2から分かるように、(光度角分布L2が、−25度〜25度の範囲で比較的均一であるにもかかわらず)、配光角θの絶対値が増大するにつれて急激に減少する。
【0006】
一方、床面104における照度を、図9(c)に示す照度角分布E1のように比較的広い領域(例えば、−25度〜25度の範囲)で均一にしたい場合、照明装置100の配光特性を、図9(b)に示す光度角分布L1のように、θ=0度の方向から、その領域に対応する配光角の上下限値(例えば、±25度)の方向に向かって、光度が増大するような特性とする必要がある。この場合、光度角分布は、配光角θの上記上下限値にピーク値をとる2峰性の分布形状を有するものとなり、このような光度角分布を備えた配光特性を、バットウィング状の配光特性という。
【0007】
従来、配光特性をバットウィング状とするための配光制御部材を備えた照明装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の照明装置を、図10を参照して説明すれば、次の通りである。
【0008】
図10(a)に示す照明装置200は、光源202と、光源202から出射される光Lの配光態様を制御する配光制御部材203とを有している。配光制御部材203は、三角錐プリズム板231を備えており、これによって、光源202からの光Lをバットウィング状に拡散することが図られている。この三角錐プリズム板231は、光源202側を平面231a、他側の面を光拡散面231bとするように構成及び配置され、光拡散面231bは、図10(b)に示すように、隙間なく配列された複数の三角錐プリズムからなるものである。従来、このような配光制御部材として、四角錐プリズム等の他の多角錐プリズムを用いたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−266521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、照明装置において、その照明光による被照明面の照度の均一性をより優れたものとするには、バットウィング状の配光特性において、その光度角分布の分布形状をさらに精細に調整する必要がある。加えて、被照明面の照度の均一性を向上させるため、照明装置の配光特性は、光軸周り方向(図9(a)に示す方位角φ方向)に均一であること(すなわち、任意の方位角φについて、平面Pφにおける光度角分布が可能な限り等しいこと)が望ましい。
【0011】
そして、本発明者らによる調査、検討の結果、図10(b)に示す従来の配光制御部材203のように、隙間なく配列された複数の多角錐プリズムを備えた配光制御部材では、このような光度角分布の調整及び方位角φ方向の均一性の達成は困難であることが分かった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑み、容易かつ安価に製造可能でありながら、被照明面上の照度の均一性を向上させることが可能な配光制御部材を備えた照明装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、被照明面上の照度の均一性を向上させることが可能な配光制御部材を成形するための金型の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0015】
(1)取付け位置から離れた位置にある被照明面を照明するための照明装置であって、光源部と、傾斜面を有し前記光源部からの出射光の配光を二次元的に制御するために面状に配置された複数のプリズムを含むプリズム形成面を有する配光制御部材とを備え、前記複数のプリズムは、複数の凹状のプリズムからなり、前記プリズム形成面は、前記複数の凹状のプリズムの谷部及び頂部のいずれか一方または両方に曲面を有しており、前記配光制御部材は、前記プリズム形成面が前記光源部の出射面に対向するように配置されることを特徴とする照明装置(請求項1)。
(2)取付け位置から離れた位置にある被照明面を照明するための照明装置であって、光源部と、傾斜面を有し前記光源部からの出射光の配光を二次元的に制御するために面状に配置された複数のプリズムを含むプリズム形成面を有する配光制御部材とを備え、前記複数のプリズムは、複数の凸状のプリズムからなり、前記プリズム形成面は、前記複数の凸状のプリズムの谷部または谷部及び頂部の両方に曲面を有しており、前記配光制御部材は、前記プリズム形成面が前記光源部の出射面に対向するように配置されることを特徴とする照明装置(請求項2)。
【0016】
(1)及び(2)項に記載の照明装置によれば、配光制御部材のプリズム形成面が、複数のプリズムの谷部及び頂部のいずれか一方または両方に曲面を有することにより、バットウィング状の配光特性を実現するとともに、その特性を、被照明面上の均一な照度を達成するための理想的な分布に近づけることが可能となる。加えて、本項に記載の照明装置によれば、被照明面上の照度の、光軸回りの均一性を向上させることも可能となる。
【0018】
また、(1)及び(2)項に記載の照明装置によれば、光源部の出射面の反対側を向くようにプリズムを配置した構成と比較して、バットウィング状の配光特性を容易に実現することが可能となる。
【0019】
(3)(1)または(2)項に記載の照明装置において、前記プリズムは、四角錐状であることを特徴とする照明装置(請求項3)。
【0020】
本項に記載の照明装置によれば、被照明面上でほぼ均一な照度が実現される領域を、丸みを帯びた四角形状とすることが可能であるため、四角形状の被照明面(例えば、一般的な室内空間における床面)を照明するために好適な照明装置を提供することが可能となる。
【0021】
(4)(3)項に記載の照明装置からなる照明ユニットを複数個隣接させて配置したことを特徴とする照明装置(請求項4)。
【0022】
本項に記載の照明装置によれば、隣接する照明ユニットからの照明光が互いに重なる部分を少なくすることができるため、比較的広い面積を有する被照明面を効率的に照明することが可能となる。
【0023】
(5)(1)〜(4)項に記載の照明装置において、前記光源部は、導光板と、該導光板の側端面に配置された光源を含むことを特徴とする照明装置(請求項5)。
【0024】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載の照明装置が備える前記配光制御部材を作製する方法であって、前記配向制御部材を成形するための金型を作製する工程を含んでおり、前記金型を作製する工程は、金型基材に、前記複数のプリズムの傾斜面に対応する傾斜面を形成する工程と、前記金型基材に、前記複数のプリズムの谷部及び頂部のいずれか一方または両方の曲面に対応する曲面を形成する工程と、を含、前記傾斜面を形成する工程は、刃先に一対の傾斜面を有するバイトを用いて前記金型基材の表面を切削し、前記金型基材に、複数本の直線状の溝を、隣接する前記溝間に前記金型基材の表面を残さないように形成するステップを含むことを特徴とする方法(請求項6)。
【0025】
本項に記載の方法によれば、金型基材に、複数本の溝を形成する工程において、金型基材の表面を残して溝を形成する場合と比較して、金型基材の表面の平行度、平坦度、金型基材の表面に対するバイトの位置決め精度、及び、金型加工時間の経過に伴う表面高さの変動等の影響を受けることなく、溝深さの加工精度を向上させることが可能となり、ひいては、本項に記載の作製方法により作製された金型を用いて成形される配光制御部材において、そのプリズム形成面が有する複数のプリズムの高さを高精度に揃えることが可能となる。
【0026】
(7)(6)項に記載の方法において、前記金型基材に傾斜面を形成する工程は、異なる2以上の方向に延びる前記複数の直線状の溝を形成するステップを含むことを特徴とする方法(請求項7)。
【0027】
本項に記載の方法によれば、光の配光を二次元的に制御するために面状に配置された複数のプリズムを含むプリズム形成面を有する配光制御部材を成形するための金型を、容易に作製することが可能となる。
【0028】
(8)(6)または(7)項に記載の方法において、前記バイトの刃先の先端で前記一対の傾斜面を連結する面は、曲面から構成されており、前記金型基材に曲面を形成する工程のうち、前記複数のプリズムの頂部の曲面に対応する曲面を形成するステップは、前記金型基材に傾斜面を形成する工程において、前記複数の直線状の溝の底部が曲面として形成されることにより実施されることを特徴とする方法(請求項8)。
【0029】
本項に記載の方法によれば、傾斜面を有し、かつ複数のプリズムの頂部に曲面を有するプリズム形成面を備えた配光制御部材を成形するための金型を、容易に作製することが可能となる。
また、本項に記載の方法によれは、溝の底部が曲面として形成されることにより、この金型を用いた成形加工において、形状の転写性が向上する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る照明装置は、上記のように構成したことにより、容易かつ安価に製造可能でありながら、被照明面上の照度の均一性を向上させることが可能となる。
【0032】
また、本発明に係る金型の作製方法は、上記のように構成したことにより、金型基材に形成される溝の深さの加工精度を向上させることが可能となり、ひいては、本項に記載の作製方法により作製された金型を用いて成形される配光制御部材において、そのプリズム形成面が有する複数のプリズムの高さを高精度に揃えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態における照明装置を模式的に示す側断面図、(b)は、(a)に示す照明装置で使用される配光制御部材の一例において、そのプリズム形成面の一部を模式的に示す平面図、(c)は、(b)のA−A断面図である。
図2】四角錐プリズムを使用した配光制御部材を備えた従来の照明装置の照度特性を示す図であり、(a)は、この照明装置による被照明面上の照度分布を濃淡の分布として示す図、(b)は、(a)に示す照度分布のうち、方位角0度及び45度における照度角分布を示すグラフである。
図3図1に示す照明装置の照度特性を示す図であり、(a)は、この照明装置による被照明面上の照度分布を濃淡の分布として示す図、(b)は、(a)に示す照度分布のうち、方位角0度及び45度における照度角分布を示すグラフである。
図4】本発明の第1の実施形態における照明装置で使用される配光制御部材の別の例について、そのプリズム形成面の一部を模式的に示す平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態における照明装置で使用される配光制御部材の別の例について、そのプリズム形成面の一部を模式的に示す平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。
図6】本発明の第1の実施形態における照明装置で使用される配光制御部材の別の例について、そのプリズム形成面の一部を模式的に示す平面図である。
図7】本発明の第1の実施形態における照明装置で使用される配光制御部材の別の例について、そのプリズム形成面の一部を模式的に示す平面図である。
図8】本発明の第2の実施形態における金型の作製方法を示す側面図である。
図9】一般的に照明装置の光度角分布と照度角分布の特性を示す図であり、(a)は照明装置の配置構成を示す図、(b)は、2つの異なる配光特性に対応する光度角分布の例を示すグラフ、(c)は、(b)に示す2つの光度角分布にそれぞれ対応する照度角分布を示すグラフである。
図10】従来の照明装置の一例を示す図であり、(a)は、照明装置を模式的に示す側断面図、(b)は、(a)に示す照明装置の配光制御部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。尚、添付図面において、配光制御部材及び照明装置の全体または部分を示す各図は、いずれも説明のために特徴を強調して示す模式図であって、図示された各部分の相対的な寸法は、必ずしも実際の縮尺を反映するものではない。
【0035】
本発明の第1の実施形態における照明装置1は、図1(a)に示すように、導光板12と、光源14と、反射部材16とを含む光源部10を備えている。導光板12は、メタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂材料を成形してなる板状の導光体であり、一方の主面を出射面12aとし、この出射面12aが光源部10の出射面となる。
【0036】
導光板12は、四角形状の主面を有するものであり、四方の側端面を入光面12cとして、各入光面12cに対向するように光源14が配置される。光源14は、例えば、各入光面12cの長手方向に沿って配列される複数の発光ダイオードからなる。また、導光板12の裏面12b側には、導光板12と光源14を覆うように、シート状の反射部材16が配置されている。
【0037】
光源部10は、光源14から各入光面12cを通じて導光板12の内部へと入射した光を、出射面12aと出射面12aとは反対側の主面(裏面)12bとの間で全反射を繰返しつつ導光板12内を伝播させ、その過程で、伝播光を出射面12aから均一に出射させるものである。また、導光板12の裏面12bには、裏面12bに入射した光の一部を反射して、臨界角以下の入射角でもって出射面12aに入射させるための拡散反射手段または正反射手段が設けられているものであってもよい。
【0038】
照明装置1は、光源部10の出射面12a側に配置される配光制御部材20を備えている。配光制御部材20は、所定の位置に配置したときに少なくとも光源部10の出射面12aを覆う形状及びサイズに形成されており、そのプリズム形成面20aが光源部10の出射面12aに対向するように配置されている。また、配光制御部材20のプリズム形成面20aとは反対側の主面(裏面)は、平坦面20bとして構成されている。
【0039】
照明装置1において、光源部10の出射面12aから出射された光は、配光制御部材20をプリズム形成面20a側から平坦面20b側へと透過し、これによって配光制御された平坦面20bからの出射光が照明光として利用される。
【0040】
ここで、配光制御部材20は、メタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂材料を板状に成形してなるものであり、その一方の主面が、後述する複数のプリズムが設けられたプリズム形成面20aとして構成される。
【0041】
図1(b)、(c)に示すように、配光制御部材20のプリズム形成面20aには、互いに交差して延びる複数の線状プリズム32、33が形成されている。線状プリズム32は、一方向(以下、縦方向ともいう)に延び、縦方向と直交する方向(以下、横方向ともいう)に複数配列されており、線状プリズム33は、横方向に延び、縦方向に複数配列されて形成されている。
【0042】
ここで、線状プリズム32は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面32b、32bと、一対の傾斜面32b、32bを頂部で連結する凸状の曲面32aを有する凸状体として形成され、同様に、線状プリズム33は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面33b、33bと、一対の傾斜面33b、33bを頂部で連結する凸状の曲面33aを有する凸状体として形成されている。
【0043】
尚、図1(b)には、線状プリズム32、33の稜線が一点鎖線で示されている。また、図1(b)、(c)には、傾斜面32bと曲面32aとの境界、傾斜面33bと曲面33aとの境界位置に、その境界線が細線で示されている。但し、本発明において、線状プリズム32、33は、その傾斜面32b、33bと曲面32a、33aとが滑らかに連続し、実際には、その境界線が現れない場合を含むものである。
また、本発明は、線状プリズム32、33の頂部を構成する曲面32a、33aの形状によって限定されるものではないが、例えば、図1(c)に示す断面(稜線と直交する断面)の形状が円弧をなすものであってもよい。
これらの点については、後述する図4図7及びこれらの各図に示されるプリズム形成面についても同様である。
【0044】
配光制御部材20において、複数の線状プリズム32は、隣接する線状プリズム32との間に平坦面を置くことなく、それぞれの線状プリズム32の対向する傾斜面32b同士が連結するように配列され、同様に、複数の線状プリズム33は、隣接する線状プリズム33との間に平坦面を置くことなく、それぞれの線状プリズム33の対向する傾斜面33b同士が連結するように配列されている。
【0045】
この構成では、隣接する2つの線状プリズム32の稜線と、この2つの線状プリズム32と交差して延びる隣接する2つの線状プリズム33の稜線とで囲まれた各領域(以下、交差領域ともいう)に、四角錐状の凹部22が形成されることになる。
【0046】
1つの交差領域における凹部22は、四角錐状の形状の観点から言えば、次のような形状を有している。すなわち、1つの交差領域における凹部22は、線状プリズム32、33の稜線を含む仮想平面のうち、その交差領域に相当する部分を底面とし、4側面の底面側が、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム32の曲面32a、32a(のうち、その交差領域内で対向する部分)と、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム33の曲面33a、33a(のうち、その交差領域内で対向する部分)により、曲面で構成され、さらに、4側面の頂点側は、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム32の対向する傾斜面32b、32bと、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム33の対向する傾斜面33b、33bから構成されている。
【0047】
ここで、本発明において、「プリズム」という用語は、凹部22のように、傾斜面及び/または曲面により構成された凹部を含めて言うものとする。また、本発明において、「四角錐状」という用語は、凹部22のように、四角錐の4側面の一部が曲面で構成された形状に対して用いるものとする。これは、後述する三角錐、六角錐等の他の多角錐についても同様である。また、以下の説明において、凸状の線状プリズム32、33の交差領域に形成された凹部22を、単に、プリズム22ともいう。
【0048】
したがって、配光制御部材20において、そのプリズム形成面20aには、凹部として形成された四角錐状の複数のプリズム22が、各プリズム22の底面の外周を構成する4辺(そのプリズム22を形成する交差領域を囲む線状プリズム32、33の稜線)のそれぞれを、隣接するプリズム22の対向する1辺と共有するように、敷き詰められて配置されているものである。
【0049】
そして、各プリズム22の4側面の(四角錐状の形状の観点から言えば)底面側が複数のプリズム22の頂部を構成し、各プリズム22の4側面の(四角錐状の形状の観点から言えば)頂点側が、複数のプリズム22の谷部を構成するとともに、複数のプリズム22の頂部に、曲面32a、33aを有するものである。
【0050】
さらに、以上のように構成された複数のプリズム22には、横方向を向く傾斜面32b及び曲面32aと、縦方向を向く傾斜面33b及び曲面33aの、異なる2方向を向く傾斜面及び曲面が含まれており、これによって、光源部10からの出射光の配光を二次元的に制御するものである。本発明では、このように、プリズム形成面20aに形成された複数のプリズムのそれぞれに、少なくとも異なる2方向を向く傾斜面及び/又は曲面等の屈折面が含まれるように、複数のプリズムを配置した態様を、面状の配置という。
【0051】
尚、配光制御部材20において、線状プリズム32と線状プリズム33は全て同一の形状を有し、線状プリズム32は横方向に全て等しいピッチで配列され、線状プリズム33は縦方向に全て等しいピッチで配置されており、この横方向のピッチと、縦方向のピッチは同一である。したがって、複数のプリズム22は、全て合同であり、各プリズム22の形状は、正方形の底面を有する四角錐状をなすものである。
【0052】
次に、図2及び図3を参照して、照明装置1の作用効果について説明する。ここで、図2は、比較例として、従来の照明装置の照度特性を示す図であり、図3は、本実施形態における照明装置1の照度特性を示す図である。
【0053】
ここで、図2(a)、図3(a)は、それぞれの照明装置について、被照明面上の照度分布を濃淡の分布として示す図である。各図において、その中心位置は、光軸qと被照明面との交点に対応し、その中心位置回りの方向は、方位角φ(図9(a)参照)方向に対応する。また、各方位角φについて、図上中心位置を通る直線が、光軸qを含む平面Pφ図9(a)参照)と被照明面との交線であり、その直線上の濃淡の分布が、その平面Pφと被照明面との交線における照度角分布に対応する。
そして、図2(b)、図3(b)には、方位角0度(deg)及び45度(deg)の2例について、その照度角分布のグラフが示されている。尚、図2(b)、図3(b)において、横軸の照度角は、図9(a)の配光角θに対応し、各照度角における照度は、照度角0度(deg)における照度を1とする相対強度で示されている。
【0054】
尚、図2(a)、図3(a)では、それぞれ図2(b)、図3(b)との対比からも分かるように、最も淡く表された領域(以下、ハイライト領域ともいう)は最も照度が高い領域を表し、ハイライト領域の周囲に隣接して、ハイライト領域よりも濃く表現されている領域は、ハイライト領域よりも照度の小さい領域を表す。但し、図中の濃淡と照度の大小は、必ずしも図内全体にわたって(例えば、濃い領域程光度が小さいといったような)一定の関係を有するものではない。
【0055】
また、図2(a)、(b)に示す配光特性を有する従来の照明装置は、合同な正四角錐プリズムが隙間なく配列された、曲面を有しないプリズム形成面を有する配光制御部材を備えるものであり、その他の構成は、照明装置1と同一である。
【0056】
図2(a)から分かるように、従来の照明装置では、光軸q方向の照度がその周辺の照度よりも低いという形での不均一性が生じている。この不均一性は、図2(b)に示す照度角分布において、方位角0度と方位角45度のいずれの照度角分布についても、光軸q方向(照度角0度)から照度角(の絶対値)が増大するに従って照度が増大し、特定の照度角(方位角0度の照度角分布では、照度角±15度付近。方位角45度の照度角分布では、照度角±20度付近)でピーク値を取った後、さらに照度角(の絶対値)が増大するに従って照度が低下するといった、明瞭に双峰性を有する分布形状となっていることからも確認できる。このことは、従来の照明装置では、バットウィング状の配光特性は実現されるものの、その特性が、例えば図9(b)に示すような理想的な配光特性と比較して、光軸q方向の光度の相対強度が過度に低下していることを示すものである。
【0057】
さらに、図2(a)から、被照明面上の照度分布には、光軸q回り方向(方位角φ方向)に対して4回の回転対称性を備えた顕著な不均一性が生じていることが分かる。この不均一性は、図2(b)において、方位角0度の分布形状と、方位角45度の分布形状とが異なることに明瞭に現れている。例えば、方位角45度の照度角分布は、方位角0度の照度角分布と比較して、照度角の絶対値が大きい方向(被照明面上の周辺方向)に広がった分布形状を有しており、照度のピーク値も増大している。
【0058】
これに対して、本実施形態における照明装置1では、図3(b)から、方位角0度の照度角分布と方位角45度の照度角分布のいずれについても、分布形状の双峰性が改善され、被照明面の光軸q方向を含む広い領域(約−20度〜約20度の照度角範囲)にわたってほぼ均一な照度が達成されている。このことは、本実施形態における照明装置1では、理想的な特性に近いバットウィング状の配光特性が実現されていることを示すものである。
また、図3(b)において、方位角0度の照度角分布と方位角45度の照度角分布の分布形状は、ほぼ同様の分布形状を有しており、図3(a)に示すハイライト領域の形状からも分かるように、照明装置1では、その被照明面上の照度の光軸q回り方向(方位角φ方向)の均一性も大幅に改善されている。
【0059】
このように、照明装置1では、その配光制御部材20が、複数のプリズム22の頂部に曲面32a、33aを有するプリズム形成面20aを備えていることによって、バットウィング状の配光特性を実現するとともに、その特性を、被照明面上の均一な照度を達成するための理想的な分布に近づけることが可能となる。加えて、本項に記載の照明装置によれば、被照明面上の照度の、光軸回りの均一性を向上させることも可能となる。
【0060】
ここで、図3(a)から分かるように、本実施形態における照明装置1の場合にも、光軸q回り方向の照度の均一性に関して、4回の回転対称性を備えた不均一性は見て取れるものの、その不均一性は、比較的明るい領域(ハイライト領域とその周辺の領域)が丸みを帯びた四角形状となる程度に改善されている。
【0061】
したがって、照明装置1は、このような配光特性を活用して、四角形状の被照明面(例えば、一般的な室内空間における床面)を照明するために好適な照明装置として使用することができる。さらに、このような照明装置1を1つの照明ユニットとし、複数の照明ユニットを隣接させて配置して全体として広い出射面を有する多ユニット型の照明装置を構成した場合、各照明ユニットからの照明光が互いに重なる部分を少なくすることができるため、比較的広い面積を有する被照明面を効率的に照明することが可能となる。
【0062】
また、本発明者らの調査・研究により、図10に示した従来の照明装置200のように、配光制御部材231を、そのプリズム面(光拡散面231b)を光源202とは反対側に向けて配置した場合(いわゆる、正プリズムシート状の配置)、光軸q上に光度のピークを有する単峰性または3峰性の光度角分布となりやすく、バットウィング状の配光特性を得ることが実際には困難であることが分かった。
【0063】
これに対して、照明装置1のように、配光制御部材20を、プリズム形成面20aが光源部10の出射面12aに対向するように配置した構成(所謂、逆プリズムシート状の配置)は、2峰性の光度角分布を有するバットウィング状の配光特性が容易に得られる点で、被照明面上の照度の均一性を向上させる上で、有利なものである。
【0064】
また、配光制御部材20のように、そのプリズム形成面20aの頂部を曲面32a、33aとした構成は、プリズム形成面20aの頂部を鋭角なエッジとした場合と比較して、頂部自体の破損、及び、鋭角なエッジによる導光板12の傷つき等のおそれが低減または解消する点で、有利な構成である。
【0065】
但し、本実施形態における照明装置1において、その配光制御部材のプリズム形成面20aは、傾斜面を有し、かつ面状に配置された複数のプリズムの谷部及び頂部のいずれか一方または両方に曲面を有するものであれば、その光学的特性に関して図3を参照して上述したような作用効果を奏するものであり、そのプリズムの形状及び曲面の配置構成は、任意の適切な形状及び構成とすることができる。
【0066】
例えば、照明装置1が備える配光制御部材のプリズム形成面は、図1(b)に示すプリズム形成面20aに対して凹凸のパターンが反転した構成を備えるものであってもよい。この場合、複数のプリズム22’(図示は省略する)は、四角錐状の凸状体からなり、各プリズム22’の4側面の底面側が複数のプリズム22’の谷部を構成し、各プリズム22’の4側面の頂点側が、複数のプリズム22の頂部を構成するとともに、複数のプリズム22’の谷部に、凹状の曲面32a’、33a’(図示は省略する)を有するものである。
【0067】
さらに、照明装置1が備える配光制御部材は、図4に示す配光制御部材50のように、そのプリズム形成面50aに、四角錐状の凹部からなる複数のプリズム51を有しており、プリズム51の4側面の頂点側(この場合、複数のプリズム51の谷部)に、曲面52b、53bを有するものであってもよい。
【0068】
すなわち、プリズム形成面50aにおいて、縦方向に延びる線状プリズム52は、それぞれ平坦面からなるとともに頂部で直接連結される一対の傾斜面52a、52aと、一対の傾斜面52a、52aのそれぞれと連結される一対の凹状の曲面52b、52bとを有する凸状体として形成され、同様に、横方向に延びる線状プリズム53は、それぞれ平坦面からなるとともに頂部で直接連結される一対の傾斜面53a、53aと、一対の傾斜面53a、53aのそれぞれと連結される一対の凹状の曲面53b、53bとを有する凸状体として形成されている。
【0069】
この構成により、プリズム形成面50aには、隣接する2つの線状プリズム52の稜線と、この2つの線状プリズム52と交差して延びる隣接する2つの線状プリズム53の稜線とで囲まれた交差領域に、四角錐状の凹部からなるプリズム51が形成されることになる。プリズム形成面50aは、各プリズム51の4側面の底面側が複数のプリズム51の頂部を構成し、各プリズム51の4側面の頂点側が、複数のプリズム51の谷部を構成するとともに、複数のプリズム51の谷部に、凹状の曲面52b、53bを有するものである。
【0070】
また、照明装置1が備える配光制御部材のプリズム形成面は、図4に示すプリズム形成面50aに対して凹凸のパターンが反転した構成を備えるものであってもよい。この場合、複数のプリズム51’(図示は省略する)は、四角錐状の凸状体からなり、各プリズム51’の4側面の底面側が複数のプリズム51’の谷部を構成し、各プリズム51’の4側面の頂点側が、複数のプリズム51’の頂部を構成するとともに、複数のプリズム51’の頂部に、凸状の曲面52b’、53b’(図示は省略する)を有するものである。
【0071】
また、照明装置1が備える配光制御部材は、図5に示す配光制御部材70のように、四角錐状の凹部からなるプリズム71の4側面の底面側と頂点側の両方に、それぞれ曲面72a、73a及び72c、73cを有するものであってもよい。
【0072】
すなわち、プリズム形成面70aにおいて、縦方向に延びる線状プリズム72は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面72b、72bと、一対の傾斜面72b、72bを頂部で連結する凸状の曲面72aと、一対の傾斜面72b、72bのそれぞれに連結される一対の凹状の曲面72c、72cとを有する凸状体として形成され、同様に、横方向に延びる線状プリズム73は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面73b、73bと、一対の傾斜面73b、73bを頂部で連結する凸状の曲面73aと、一対の傾斜面73b、73bのそれぞれに連結される一対の凹状の曲面73c、73cとを有する凸状体として形成されている。
【0073】
この構成により、プリズム形成面70aには、隣接する2つの線状プリズム72の稜線と、この2つの線状プリズム72と交差して延びる隣接する2つの線状プリズム73の稜線とで囲まれた交差領域に、四角錐状の凹部からなるプリズム71が形成されることになる。プリズム形成面70aは、各プリズム71の4側面の底面側が複数のプリズム51の頂部を構成し、各プリズム71の4側面の頂点側が、複数のプリズム51の谷部を構成するとともに、複数のプリズム71の頂部に凸状の曲面72a、73aを有し、かつ、複数のプリズム71の谷部に凹状の曲面72c、73cを有するものである。
【0074】
また、照明装置1が備える配光制御部材のプリズム形成面は、図5に示すプリズム形成面70aに対して凹凸のパターンが反転した構成を備えるものであってもよい。この場合、複数のプリズム71’(図示は省略する)は、四角錐状の凸状体からなり、各プリズム71’の4側面の底面側が複数のプリズム71’の谷部を構成し、各プリズム71’の4側面の頂点側が、複数のプリズム71’の頂部を構成するとともに、複数のプリズム71’の頂部に、凸状の曲面72c’、73c’(図示は省略する)を有し、かつ、複数のプリズム71’の谷部に、凹状の曲面72a’、73a’(図示は省略する)を有するものである。
【0075】
さらに、照明装置1が備える配光制御部材のプリズム形成面が備える複数のプリズムの形状は、四角錐状に限定されず、任意の多角錐状のプリズムを備えるものであってもよい。
例えば、照明装置1が備える配光制御部材は、図6に示す配光制御部材80のように、そのプリズム形成面80aに、三角錐状の凹部からなる複数のプリズム81を有するものとすることができる。
【0076】
プリズム形成面80aは、それぞれ異なる三方向に延びる線状プリズム82、83、84を備えており、線状プリズム82は、図1(b)に示す線状プリズム32、33と同様に、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面82b、82bと、一対の傾斜面82b、82bを頂点で連結する凸状の曲面82aとを有する凸状体として形成される。同様に、線状プリズム83は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面83b、83bと、一対の傾斜面83b、83bを頂点で連結する凸状の曲面83aとを有する凸状体として形成され、線状プリズム84は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面84b、84bと、一対の傾斜面84b、84bを頂点で連結する凸状の曲面84aとを有する凸状体として形成される。
【0077】
そして、各線状プリズム82、83、84は、それぞれの稜線が全て一点で交わるにように配置されており、この配置により、各線状プリズム82、83、84の稜線に囲まれた各交差領域に、三角錐状の凹部からなるプリズム81が形成されることになる。
【0078】
1つの交差領域に形成されるプリズム81は、線状プリズム82、83、84の稜線を含む仮想平面のうち、その交差領域に相当する部分を底面とし、3側面の底面側が、その交差領域を囲む線状プリズム82、83、84の曲面82a、83a、84a(のうち、その交差領域内に存在する部分)により、曲面で構成され、さらに、3側面の頂点側は、その交差領域を囲む線状プリズム82、83、84の、その交差領域内に存在する側の傾斜面82b、83b、84bから構成されている。
【0079】
プリズム形成面80aは、このように、各プリズム81の3側面の底面側が複数のプリズム81の頂部を構成し、各プリズム81の3側面の頂点側が、複数のプリズム81の谷部を構成するとともに、複数のプリズム81の頂部に、凸状の曲面82a、83a、84aを有するものである。
【0080】
ここで、図示及び詳細な説明は省略するが、プリズム形成面が備える複数のプリズムを三角錐状とした場合にも、照明装置1が備える配光制御部材のプリズム形成面は、上述した四角錐状の場合と同様に、図6に示すプリズム形成面80aの凹凸のパターンを反転した構成、図4に示す構成と同様に、三角錐状の凹部であるプリズムの頂点側に曲面を有する構成並びにその凹凸のパターンを反転した構成、及び、図5に示す構成と同様に、三角錐状の凹部であるプリズムの頂点側及び底面側の両方に曲面を有する構成並びにその凹凸のパターンを反転した構成の、いずれであってもよい。
【0081】
尚、上述したいずれの場合にも、三角錐状の複数のプリズムは、全て合同であり、各プリズムの形状は、正三角形の底面を有する三角錐状であることが好ましい。
【0082】
また、照明装置1が備える配光制御部材は、図7に示す配光制御部材90のように、そのプリズム形成面90aに、六角錐状の凹部からなる複数のプリズム91と、三角錐状の凹部からなる複数のプリズム95とを有するものであってもよい。
【0083】
プリズム形成面90aは、図6に示すプリズム形成面80aと同様に、それぞれ異なる三方向に延びる線状プリズム92、93、94を備えており、線状プリズム92は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面92b、92bと、一対の傾斜面92b、92bを頂点で連結する凸状の曲面92aとを有する凸状体として形成される。同様に、線状プリズム93は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面93b、93bと、一対の傾斜面93b、93bを頂点で連結する凸状の曲面93aとを有する凸状体として形成され、線状プリズム94は、それぞれ平坦面からなる一対の傾斜面94b、94bと、一対の傾斜面94b、94bを頂点で連結する凸状の曲面94aとを有する凸状体として形成される。
【0084】
但し、プリズム形成面90aは、それぞれ異なる方向に延びる各線状プリズム92、93、94が、任意の2方向に延びる線状プリズム(例えば、線状プリズム92及び線状プリズム93)の稜線の交点と、残りの一方向の線状プリズム(例えば、線状プリズム94)の稜線とが交わらないように配置されている点で、図6に示すプリズム形成面80aと異なるものである。この配置によって、隣接する2つの線状プリズム92の稜線と、この2つの線状プリズム92と交差して延びる隣接する2つの線状プリズム93の稜線と、これらの線状プリズム92、93に交差して延びる隣接する2つの線状プリズム94の稜線とで囲まれた各交差領域に、六角錐状の凹部からなるプリズム91が形成され、かつ、それぞれ1つの線状プリズム92、93、94で囲まれた各交差領域に、三角錐状の凹部からなるプリズム95が形成される。
【0085】
1つの交差領域に形成される六角錐状のプリズム91は、線状プリズム92、93、94の稜線を含む仮想平面のうち、その交差領域に相当する部分を底面とし、6側面の底面側が、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム92の曲面92a、92a(のうち、その交差領域内で対向する部分)と、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム93の曲面93a、93a(のうち、その交差領域内で対向する部分)と、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム94の曲面94a、94a(のうち、その交差領域内で対向する部分)により、曲面で構成され、さらに、6側面の頂点側は、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム92の対向する傾斜面92b、92bと、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム93の対向する傾斜面93b、93bと、その交差領域を囲んで隣接する2つの線状プリズム94の対向する傾斜面94b、94bと、から構成されている。
【0086】
また、1つの交差領域に形成される三角錐状のプリズム95は、線状プリズム92、93、94の稜線を含む仮想平面のうち、その交差領域に相当する部分を底面とし、3側面の底面側が、その交差領域を囲む線状プリズム92、93、94の曲面92a、93a、94a(のうち、その交差領域内に存在する部分)により、曲面で構成され、さらに、3側面の頂点側は、その交差領域を囲む線状プリズム92、93、94の、その交差領域内に存在する側の傾斜面92b、93b、94bから構成されている。
【0087】
プリズム形成面90aは、このように、各プリズム91の6側面及び各プリズム95の3側面の底面側が複数のプリズム91、95の頂部を構成し、各プリズム91の6側面及び各プリズム91の3側面の頂点側が、複数のプリズム91、95の谷部を構成するとともに、複数のプリズム91、95の頂部に、凸状の曲面92a、93a、94aを有するものである。
【0088】
ここで、図示及び詳細な説明は省略するが、プリズム形成面が備える複数のプリズムを六角錐状及び三角錐状の混合型とした場合にも、照明装置1が備える配光制御部材のプリズム形成面は、上述した四角錐状の場合と同様に、図7に示すプリズム形成面90aの凹凸のパターンを反転した構成、図4に示す構成と同様に、六角錐状の凹部及び三角錐状の凹部であるプリズムの頂点側に曲面を有する構成並びにその凹凸のパターンを反転した構成、及び、図5に示す構成と同様に、六角錐状の凹部及び三角錐状の凹部であるプリズムの頂点側及び底面側の両方に曲面を有する構成並びにその凹凸のパターンを反転した構成の、いずれであってもよい。
【0089】
尚、上述したいずれの場合にも、六角錐状の複数のプリズムは、全て合同であり、各プリズムの形状は、正六角形の底面を有する六角錐状であり、かつ、三角錐状の複数のプリズムは、全て合同であり、各プリズムの形状は、正三角形の底面を有する三角錐状であることが好ましい。
【0090】
また、例えば配光制御部材20、80、90のプリズム形成面20a、80a、90a及びその凹凸のパターンを反転した構成を有するプリズム形成面のように、複数のプリズム22、81、91、95の底面側に曲面を設けた場合には、少なくとも一部の複数のプリズム22、81、91、95の頂部を平坦面として、プリズム22、81、91、95をそれぞれ対応する角錐台状のプリズムとするものであってもよい。
【0091】
また、例えば、配光制御部材50、70のプリズム形成面50a、70a及びその凹凸のパターンを反転した構成を有するプリズム形成面のように、複数のプリズム51、71の頂点側に曲面を設けた場合には、複数のプリズム51、71の少なくとも一部について、隣接するプリズム51、71の間に、平坦面を設けるものであってもよい。
【0092】
ここで、照明装置1が備える配光制御部材は、好ましくは、金型を用いてシート状に成形されるものであり、次に、図1(b)、(c)に示す配光制御部材20を成形するための金型を例として、本発明の第2の実施形態における金型の作製方法について説明する。
【0093】
尚、本実施形態における金型の作製方法は、その金型を用いて成形される配光制御部材20のプリズム形成面20aに対応する部分の加工工程に特徴を有するものであるため、以下では、このような本実施形態の特徴部分のみについて説明する。金型を作製するためのその他の必要な工程は、配光制御部材20のようなシート状部材を成形する金型を作製するための周知の工程と同様とすることができる。
【0094】
本実施形態における金型の作製方法には、図8に示すように、金型基材40に、線状プリズム32、33に対応する複数本の直線状の溝を形成する工程が含まれる。尚、図8は、紙面に直交する方向がプリズム形成面20aの縦方向、紙面の左右方向がプリズム形成面20aの横方向に対応し、線状プリズム32に対応する溝42のみを図示するものである。
【0095】
複数本の溝42は、バイト45を用いて、金型基材40の表面41を縦方向に延びる直線状に切削加工し、次いで、バイト45を送り方向(横方向)Bに所定の送りピッチだけ移動させて同様の切削加工を実施し、以後、この工程を繰返すことにより形成される。この際、複数の溝42は、隣接する溝42間に、金型基材40の表面41が残らないように形成される。言い換えれば、バイト45の金型基材40の表面41からの切削深さ及び送りピッチは、一本の溝42を切削する時にバイト45の刃先が占める領域と、隣接する次の溝42を切削する時に刃先が占める領域との間に、金型基材40の表面41の下方で重なる部分46が生じるように設定されている。
【0096】
また、溝42の切削加工に使用されるバイト45の刃先は、一対の傾斜面45bと、刃先の先端で一対の傾斜面45bを連結する曲面45aとで構成されており、金型基材40に形成される溝42は、バイト45の刃先形状に対応する一対の傾斜面42bと底部の曲面42aを備えるものとなる。このような溝42の傾斜面42b及び曲面42aは、配光向制御部材20の成形工程によりプリズム形成面20aに転写され、これによって、一対の傾斜面32bと、頂部で一対の傾斜面32bを連結する曲面32aとを有する線状プリズム32が形成される。
【0097】
そして、線状プリズム33に対応する複数本の直線状の溝(図示は省略する)は、バイト45による金型基材40の表面41の切削方向を横方向とし、バイト45の送り方向を縦方向とすることによって、溝42と同様の工程で形成される(以下、線状プリズム33に対応する溝、並びにその傾斜面及び曲面には、それぞれ符号43、43b、43aを付す)。
【0098】
これによって、隣接する2つの線状プリズム33の稜線に対応する溝42の谷底線と、この2つの線状プリズム32と交差して延びる隣接する2つの線状プリズム33の稜線に対応する溝43の谷底線とで囲まれた各交差領域に、プリズム22の形状と相補的な形状を有する四角錐状の凸状体が形成され、この金型を用いた成形加工により、複数のプリズム22を有するプリズム形成面20aを備えた配光制御部材20が形成される。
【0099】
本実施形態における金型の作製方法によれば、完成された金型のプリズム形成面20aに対応する部分に金型基材40の表面41が残存しないため、金型基材40の表面41の平行度、平坦度、金型基材40の表面41に対するバイト45の位置決め精度、及び、金型加工時間の経過に伴う表面41高さの変動等の影響を受けることなく、所定の深さdを有する溝42、43を高精度に形成することが可能となる。ひいては、この金型を用いて成形される配光制御部材20において、そのプリズム形成面20aが有する複数のプリズム22の高さを高精度に揃えることが可能となる。
【0100】
また、本実施形態における金型の作製方法では、切削加工に使用されるバイト45の刃先が、一対の傾斜面45bと刃先の先端で一対の傾斜面45bを連結する曲面45aとで構成されているため、プリズム22の傾斜面32bに対応する傾斜面42bと、プリズム22の曲面32aに対応する曲面42a、並びに、プリズム22の傾斜面33bに対応する傾斜面43bと、プリズム22の曲面33aに対応する曲面43aを、それぞれ単一の工程で形成することができる。
【0101】
これによって、傾斜面32b、33bを有し、かつ複数のプリズム22の頂部に曲面32a、33aを有するプリズム形成面20aを備えた配光制御部材20を成形するための金型を、容易に作製することが可能となるとともに、溝42、43の底部が曲面42a、43aとして形成されることにより、この金型を用いた成形加工において、形状の転写性が向上する。
【0102】
このような、本実施形態における金型の作製方法は、図6に示す配光制御部材80及び図7に示す配光制御部材90を成形するための金型に対しても好適に適用可能であり、それぞれ線状プリズム82、83、84に対応して異なる三方向に延びる直線状の溝、及び、線状プリズム92、93、94に対応して異なる三方向に延びる直線状の溝を、上述した工程により金型基材40に形成することによって、同様の効果を奏するものである。
【0103】
ここで、本実施形態では、金型基材40に、複数のプリズム22の傾斜面(例えば、32b)に対応する傾斜面(例えば、42b)を形成する工程と、金型基材40に、複数のプリズム22の頂部の曲面(例えば、32a)を形成する工程とが、バイト45による単一の切削加工により実施されるものとしたが、本発明に係る金型の作製方法は、複数のプリズムの傾斜面に対応する傾斜面を形成する工程に、刃先に一対の傾斜面45bを有するバイト45を用いて金型基材40の表面を切削し、金型基材40に、複数本の直線状の溝を、隣接する溝間に金型基材の表面を残さないように形成するステップが含まれている限り、金型基材40に、複数のプリズムの傾斜面に対応する傾斜面を形成する工程と、複数のプリズムの谷部及び頂部のいずれか一方または両方の曲面に対応する曲面を形成する工程とを、別の工程として実施するものであってもよい。
【0104】
この場合には、複数のプリズムの傾斜面に対応する傾斜面を形成する工程で使用されるバイトは、一対の傾斜面を刃先の先端で連結する面が平坦面からなる刃先形状を有するものであってもよく、または、一対の傾斜面が刃先の先端で直接連結されたV字状の刃先形状を有するものであってもよい。
【0105】
尚、上述したように、配光制御部材20、80、90を成形するための金型は、本実施形態における金型の作製方法により好適に作製されるものであるが、本発明の第1の実施形態における配光制御部材は、その製造方法によって限定されるものではない。例えば、配光制御部材20、80、90は、本発明に係る金型の作製方法とは異なる方法により作製された金型を用いて成形されるものであってもよく、あるいは、例えば、配光制御部材20、80、90の少なくともプリズム形成面20a、80a、90aは、シート状部材の表面を直接加工する等の方法により、金型を用いることなく形成されるものであってもよい。
【0106】
逆に、本発明の第1の実施形態における配光制御部材の上述した例のうち、配光制御部材20、80、90を除いた例について、その製造工程の少なくとも一部に金型を用いた成形工程が含まれるものであってもよく、その場合、成形工程に用いられる金型を作製する方法の少なくとも一部に、本発明に係る金型の作製方法、特に、本実施形態における金型の作製方法が含まれるものであってもよい。
【0107】
また、上述した実施形態では、本発明に係る金型の作製方法を、面状に配置された複数のプリズム(例えば、22)を有するプリズム形成面(例えば、20a)を備えた配光制御部材(例えば、20)を成形するための金型に対して適用した例を説明したが、本発明に係る金型の作製方法は、金型基材40に形成される複数の直線状の溝を一方向に延びるものとすることによって、一方向に延びる線状プリズムからなる複数のプリズムを有するプリズム形成面を備えた配光制御部材を成形するための金型に対しても、同様に適用可能である。この場合でも、金型基材40の表面41の上述したような影響を受けることなく、所定の深さを有する溝を高精度に形成することが可能である点で、同様の作用効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0108】
1:照明装置、10:光源部、20,50,70,80,90:配光制御部材、20a,50a,70a,80a,90a:プリズム形成面、22,51,71,81,91,95:プリズム、32b,33b,52b,53b,72b,73b,82b,83b,84b,92b,93b,94b:傾斜面、32a,33a,52a,53a,72a,73a,72c,73c,82a,83a,84a,92a,93a,94a:曲面、40:金型基材、41:表面
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