(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プラットホームにおける鉄道車両の乗降口に対応する位置に設けられた開口部を開閉する扉体と、前記扉体を収納可能な戸袋体とを有するホームドア装置を備えたホームドアシステムであって、
前記扉体の開閉動作を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記扉体を閉じるときに、仮閉めとして、前記扉体を閉じる方向に所定の移動量だけ移動させて一部閉じた状態で前記扉体を一旦停止させ、その後に前記扉体が完全に閉じるように前記扉体を制御することを特徴とするホームドアシステム。
前記扉体を前記所定の移動量だけ移動させるときの速度は、前記扉体を全閉するときの速度よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のホームドアシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホームドア装置の開口部の間口を広くすると、その分扉体の移動量が大きくなるため、扉体の開閉に要する時間が長くなる。鉄道車両は、安全上、扉体が完全に閉まってから発車する。そのため、鉄道車両のドアの開閉時間に対して扉体の開閉時間が長くなると、鉄道車両の停車時間が長くなるので、ダイヤに影響を及ぼす懼れがある。この問題に関しては、扉体の開閉速度を速くすることにより、解決を図ることが考えられる。しかしながら、万が一扉体と乗客との接触が生じた場合、扉体の開閉速度が速いと接触した際の衝撃も大きくなるため、安全性の観点から好ましくない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされてものであり、扉体の閉動作を迅速且つ安全に行うことができるホームドアシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るホームドアシステムは、プラットホームにおける鉄道車両の乗降口に対応する位置に設けられた開口部を開閉する扉体と、扉体を収納可能な戸袋体とを有するホームドア装置を備えたホームドアシステムであって、扉体の開閉動作を制御する制御手段を備え、制御手段は、扉体を閉じるときに、扉体を閉じる方向に所定の移動量だけ移動させて一部閉じて、その後に扉体が完全に閉じるように扉体を制御することを特徴とする。
【0007】
このホームドアシステムでは、扉体を完全に閉じる前に、扉体を所定量だけ閉じる方向に予め移動させて一部閉じている。これにより、鉄道車両が発車するときには扉体が一部閉まっているため、扉体を全閉する際の時間を短縮できる。したがって、ホームドア装置において出入口の間口を広く確保した場合であっても、迅速に扉体の閉動作を行うことができる。また、扉体の開閉速度を速くすることなく扉体の閉動作の時間を短縮できるため、安全性も確保できる。したがって、ホームドアシステムでは、扉体の閉動作を迅速且つ安全に行うことができる。
【0008】
所定の移動量は、開口部の開口幅が乗降口の開口幅以上となるように設定されていることが好ましい。このような構成によれば、ホームドア装置において鉄道車両の乗降口の幅以上の開口部の間口が確保されるため、乗客の乗降に影響を与えることなく扉体の閉動作を行うことができる。
【0009】
鉄道車両の乗降口を通過する乗客を検出する検出手段を備え、制御手段は、検出手段による乗客の検出頻度に基づいて乗降口を通過する乗客が所定数よりも少ないと判断した場合に、扉体を閉じる方向に移動させることが好ましい。このような構成によれば、乗客の混雑状況に応じて扉体の閉動作を自動で制御することができる。
【0010】
扉体を所定の移動量だけ移動させるときの速度は、扉体を全閉するときの速度よりも小さいことが好ましい。このような構成によれば、扉体を一部閉じるときに、万が一乗客と扉体とが接触した場合であっても、衝撃を小さくでき、安全性を確保できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、扉体の閉動作を迅速且つ安全に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、一実施形態に係るホームドアシステムの構成を示す図である。
図2は、ホームドア装置の構成をプラットホーム側から示す斜視図である。
図3は、ホームドア装置をプラットホーム側から見た正面図である。
【0015】
図1に示すように、ホームドアシステム1は、総合制御部(制御手段)3と、ホームドア装置5と、乗務員操作盤7と、ホームドア個別制御部9とを備えている。ホームドアシステム1は、駅のプラットホームP(
図2参照)に設けられている。総合制御部3は、ホームドア装置5、乗務員操作盤7及びホームドア個別制御部9と信号(情報)の送受信が可能とされている。
【0016】
図2及び
図3に示すように、ホームドア装置5は、プラットホームPにおいて、軌道(線路)に沿って配置されている。ホームドア装置5は、プラットホームPにおける鉄道車両Cの乗降口Eに対応する位置に設けられた開口部K(
図5(a)参照)を開閉する扉体(ドアリーフ)10と、扉体10を収納可能な戸袋体12とを備えている。ホームドア装置5は、総合制御部3によりその動作が制御されている。
【0017】
戸袋体12は、乗客の出入口となる上記開口部Kを画成している。ホームドア装置5の開口部Kの間口は、例えば2400mm程度である。扉体10は、図示しない駆動手段により、戸袋体12に収納された位置と戸袋体12から引き出された位置との間を往復動する。扉体10が開くタイミングは、鉄道車両CのドアDが開くのと同時であってもよいし、鉄道車両CのドアDが開いた後に僅かに遅れてもよい。
【0018】
乗務員操作盤7は、ホームドア装置5における扉体10の開閉を操作する装置である。乗務員操作盤7は、ホームドア装置5の戸袋体12において、軌道側の側面に設けられている。
図4は、乗務員操作盤の構成を示す図である。同図に示すように、乗務員操作盤7には、開スイッチSW1と、閉スイッチSW2と、仮閉スイッチSW3とが設けられている。
【0019】
開スイッチSW1は、ホームドア装置5の扉体10を開けるときに押下されるスイッチである。閉スイッチSW2は、ホームドア装置5の扉体10を完全に閉めるときに押下されるスイッチである。仮閉スイッチSW3は、ホームドア装置5の扉体10を仮閉めするときに押下されるスイッチである。ホームドア装置5の扉体10の仮閉めの詳細については後述するが、仮閉めは、
図5に示すように、扉体10を一部だけ閉める状態のことを言う。乗務員操作盤7は、押下されたいずれかのスイッチSW1〜SW3に応じた信号を総合制御部3に出力する。
【0020】
ホームドア個別制御部9は、支障物センサ(検出手段)14と、制御部16とを含んで構成されている。ホームドア個別制御部9は、開口部Kの数、もしくはホームドア装置5の扉体10の設置数に応じて設置されている。支障物センサ14は、鉄道車両Cの位置及び乗降口Eを通過する乗客の有無などを検出するセンサである。支障物センサ14としては、例えばレーザーレーダを用いることができる。支障物センサ14は、ホームドア装置5の戸袋体12において、軌道側の側面に設置されている(
図5参照)。支障物センサ14は、検出した鉄道車両Cや乗客に係る信号を制御部16に出力する。
【0021】
制御部16は、支障物センサ14の動作を制御する部分である。制御部16は、支障物センサ14における対象物の検出、非検出を制御する。例えば、制御部16は、プラットホームPに鉄道車両Cが入線したときに、支障物センサ14において検出を開始するように支障物センサ14を制御する。制御部16は、支障物センサ14から出力された信号を総合制御部3に出力する。
【0022】
総合制御部3は、ホームドアシステム1の動作を統括する部分である。総合制御部3は、ハードウェア構成として、CPU(Central Processing Unite)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有している。
【0023】
総合制御部3は、ホームドア装置5の扉体10の開閉動作を制御する。総合制御部3は、乗務員操作盤7から出力された信号に応じて、扉体10の開閉を制御する。すなわち、総合制御部3は、乗務員操作盤7から出力された信号において開スイッチSW1が押下されたことを示している場合には、扉体10が開くように制御し、閉スイッチSW2が押下されたことを示している場合には、扉体10が閉まるように制御する。ここで、総合制御部3は、乗務員操作盤7から出力された信号において仮閉スイッチSW3が押下されたことを示している場合には、以下の処理を実行する。
【0024】
総合制御部3は、仮閉スイッチSW3が押下されたことを示す信号を受け取ると、支障物センサ14から出力された信号に基づいて、扉体10の移動量を設定する。総合制御部3は、支障物センサ14から出力された信号に基づいて鉄道車両Cの乗降口Eの位置を取得し、乗降口Eの内側に扉体10が位置しないように移動量を算出する。言い換えれば、扉体10,10により画成される間口(開口幅)が乗降口Eの間口(1300mm程度)以上となるように、扉体10の移動量を算出する。総合制御部3は、その移動量に応じて扉体10の閉動作を制御する。
【0025】
また、総合制御部3は、ホームドア装置5の扉体10の開閉速度を制御する。総合制御部3は、仮閉スイッチSW3が押下された際の扉体10の閉速度を、通常の閉速度(閉スイッチSW2が押下された際の閉速度)よりも遅くなるように制御する。
【0026】
続いて、ホームドアシステム1の動作について、
図5〜
図7を参照しながら説明する。
図5及び
図6は、ホームドアシステムの動作を説明する図であり、
図7は、ホームドアシステムの動作を説明するフローチャートである。
【0027】
図7に示すように、まず鉄道車両CがプラットホームPに入線して停車する(ステップS01)。鉄道車両Cが停車すると、乗務員によって乗務員操作盤7の開スイッチSW1が押下され、
図5(a)に示すように、ホームドア装置5において扉体10が全開とされる(ステップS02)。なお、本実施形態では、乗務員(車掌)が乗務員操作盤7を操作することによってホームドア装置5の扉体10を開閉する様態を一例に説明しているが、扉体10の開閉は、鉄道車両Cの状態に応じて自動で制御されてもよい。
【0028】
また、鉄道車両CがプラットホームPに停車すると、支障物センサ14によって、鉄道車両Cの乗降口Eの位置が検出される(ステップS03)。そして、検出された乗降口Eの位置に基づいて、総合制御部3により扉体10の移動量、つまり閉幅が設定される(ステップS04)。より具体的には、
図5(b)に示すように、例えば鉄道車両Cの乗降口Eの中央とホームドア装置5の開口部Kの中央とが略一致している場合では、扉体10を450mm程度閉まる方向に移動させる。これにより、扉体10,10の間口は、乗降口Eの間口以上の幅を有する。
【0029】
また、
図6(a)に示すように、鉄道車両Cの乗降口Eがホームドア装置5の開口部Kに対して後方となる位置に鉄道車両Cが停車した場合には、一方の扉体10のみを移動させると共に他方の扉体10を移動させないようにし、乗降口Eの開口以上の間口が扉体10により画成されるような扉体10の閉幅(移動量)を設定する。
【0030】
図7に戻って、鉄道車両CがプラットホームPに停車して所定時間が経過した後、乗務員によって乗務員操作盤7の仮閉スイッチSW3が押下されると、
図5(b)又は
図6(a)に示すように、ステップS04において設定された閉幅に応じて扉体10が仮閉めされる(ステップS05)。
【0031】
ここで、扉体10の仮閉めについて詳細に説明する。
図5(b)に示すように、扉体10の仮閉めは、扉体10が全開の状態から扉体10が閉じる方向に所定の移動量だけ移動させて、一部だけ閉めた状態である。
【0032】
そして、鉄道車両Cの発車時刻となり、乗務員によって乗務員操作盤7の閉スイッチSW2が押下されると、
図6(b)に示すように、扉体10が全閉される(ステップS06)。扉体10が全閉された後、鉄道車両Cが発車する(ステップS07)。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、鉄道車両CがプラットホームPに停車して所定時間が経過し、乗務員によって乗務員操作盤7の仮閉スイッチSW3が押下されると、扉体10を所定の移動量だけ閉じる方向に移動させて扉体10を一部閉じる。これにより、鉄道車両Cが発車するときには扉体10が一部閉まっているため、扉体10を全閉する際の時間を短縮できる。したがって、ホームドア装置5において出入口の間口を確保して扉体10の移動量が多い場合であっても、迅速に扉体10の閉動作を行うことができる。また、扉体10の開閉速度を速くすることなく扉体10の閉動作の時間を短縮できるため、安全性も確保できる。したがって、ホームドアシステム1では、扉体10の閉動作を迅速且つ安全に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態では、扉体10を仮閉めするときに、扉体10、10同士の開口幅が鉄道車両Cの乗降口Eの間口以上となるように設定されている。これにより、乗客が鉄道車両Cに乗降するときであっても、乗客が乗り降りするための間口が確保される。したがって、乗客の乗降に影響を与えることなく扉体10の閉動作を行うことができる。
【0035】
また、本実施形態では、扉体10を仮閉めするときの速度を、通常時に扉体10を全閉するときの速度よりも遅くしている。扉体10を一部仮閉めするときには、乗客が鉄道車両Cから乗降していることがある。そこで、扉体10を一部仮閉めするときの速度を遅くすることにより、万が一乗客と扉体10とが接触した場合であっても、その衝撃を小さくでき、安全性を確保できる。
【0036】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、鉄道車両CがプラットホームPに停車して所定時間が経過したときに、乗務員操作盤7の仮閉スイッチSW3を押下することによって扉体10を閉じているが、扉体10の仮閉めは以下の様態であってもよい。
【0037】
例えば、ホームドアシステム1では、支障物センサ14により鉄道車両Cの乗降口Eを通過する乗客を検出し、その検出頻度に基づいて乗客の状態、すなわち乗客の混雑状態を判断して、その混雑状態に応じて扉体10の仮閉めの動作を行ってもよい。具体的には、総合制御部3は、支障物センサ14によって検出された乗客の検出頻度に基づいて、鉄道車両Cの乗降口Eを通過する(乗り降りする)乗客が所定数よりも少ないと判断した場合には、扉体10を仮閉めするように制御する構成であってもよい。
【0038】
また、プラットホームPに鉄道車両Cが停車して所定時間が経過したときに、タイマーにより自動で扉体10を一部閉める構成としてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、各開口部Kに対応して設置された支障物センサ14から出力された信号に基づいて乗降口Eの位置を取得して扉体10の移動量を設定しているが、扉体10の移動量の設定は以下の方法であってもよい。すなわち、鉄道車両Cの先頭車両の停止位置を検出し、この検出された位置に基づいて扉体10の移動量を設定してもよい。より具合的には、鉄道車両Cの先頭車両の定停車位置からのずれ量に基づいて、扉体10の移動量を設置する。
【0040】
また、上記実施形態では、乗務員操作盤7に開スイッチSW1、閉スイッチSW2、及び仮閉スイッチSW3が設けられている形態を一例に説明したが、各スイッチSW1〜SW3は、例えば、戸袋体12のプラットホーム側に設置される駅員用操作盤に設けられていてもよい。つまり、開スイッチSW1、閉スイッチSW2、及び仮閉スイッチSW3の操作は、駅員によって行われてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、ホームドア装置5の一例として可動式ホーム棚について説明したが、ホームドア装置5の形態はこれに限定されず、スクリーンドアなど、プラットホームPに設置されるホームドア装置であれば様々な様態のものに適用できる。